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特許7578945イミダゾールシラン処理シリカからなる胆汁酸吸着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】イミダゾールシラン処理シリカからなる胆汁酸吸着剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/695 20060101AFI20241030BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20241030BHJP
   A61K 9/62 20060101ALI20241030BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241030BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241030BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241030BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241030BHJP
【FI】
A61K31/695
A61K9/36
A61K9/62
A61K47/38
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P3/06
A61P1/16
A23L33/10
A23L5/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020179279
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070287
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 成紀
(72)【発明者】
【氏名】木村 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
(72)【発明者】
【氏名】田中 正喜
(72)【発明者】
【氏名】田中 直樹
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-523806(JP,A)
【文献】特許第3555845(JP,B2)
【文献】特許第3523804(JP,B2)
【文献】特開平5-039295(JP,A)
【文献】MAHKAM,M. et al.,Preparation of ionic liquid functionalized silica nanoparticles for oral drug delivery,Journal of Biomaterials and Nanobiotechnology,2012年,Vol.3,pp.391-395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A23L 5/00- 5/49
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物が結合したシリカ粒子からなる胆汁酸吸着剤。
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、ビニル基、フェニル基、またはベンジル基を表し、R4は、下記一般式(2)で示される基を表す。ただし、R1およびR3は、結合してベンゼン環を形成していてもよい。)
【化2】
(式中、Aは、ヘテロ原子、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、および/またはチオウレア結合を含んでいてもよい直鎖状または分岐状の二価連結基を表し、R5は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R6は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、nは、1~3の整数を表す。)
【請求項2】
4が、下記式(3)~(12)で表されるいずれかの基である請求項1記載の胆汁酸吸着剤。
【化3】
(式中、mは、1~12の整数を表し、R7は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、kは、1~12の整数を表し、lは、1~3の整数を表し、R1、R2、R3、R5、R6およびnは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
請求項1または2記載の胆汁酸吸着剤および腸溶性コーティングを含む製剤。
【請求項4】
腸溶性コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、およびカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含む請求項3記載の製剤。
【請求項5】
請求項1または2記載の胆汁酸吸着剤を含む食品。
【請求項6】
請求項1または2記載の胆汁酸吸着剤を含むサプリメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾールシラン処理シリカからなる胆汁酸吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満およびそれに関連する糖尿病をはじめとする代謝疾患が増加しており、これらは健康への影響のみならず、医療費の増大という意味でも大きな脅威となっている。
非特許文献1~3には、脂肪摂取に伴う胆汁酸の量の増加が、肥満、II型糖尿病、高脂血症、脂肪肝等の代謝疾患に影響を与えることが記載されている。また、急激にその患者数が増加してきている大腸癌に関しても、胆汁酸が発がんに関与している可能性が指摘されている。
【0003】
これらの疾患を予防または治療すべく、脂肪の吸収を促進する胆汁酸を吸着し、体外への排泄を促進するための胆汁酸吸着剤が報告されている。一般的には、塩基性陰イオン交換樹脂が胆汁酸吸着剤として使用され、例えば、特許文献1には、脂肪族第四級アンモニウム塩を官能基として有する陰イオン交換樹脂が記載されている。
しかし、コレスチラミンに代表される陰イオン交換樹脂製剤は、活性が低いため服用量が多くなるという欠点がある。また、第四級アンモニウム塩を有する陰イオン交換樹脂は、脂肪族アミンの悪臭があり、そのままでは実用に供することができない。そこで、実際には陰イオン交換樹脂にコーティングを施すことにより悪臭を低減しているが、表面コーティングにより陰イオン交換能が低下するために、服用量の増加が必要となる。一方で、吸水膨潤するため服用しづらく口腔内で残留して違和感が大きいことや、下痢、疼痛、胸焼け、嘔吐などの副作用があるため、用量に制限があり、処置に時間がかかるといった課題もある。
【0004】
特許文献2には、このような課題を克服した、イミダゾリル基を有する陰イオン交換樹脂が記載されている。この陰イオン交換樹脂は、従来のコレスチラミンよりも高い胆汁酸吸着能を有しているものの、依然、吸水膨潤や副作用の課題は残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第3,499,960号明細書
【文献】特開昭60-209523号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Jason M. Ridlon et.al., Gut Microbes. 2016, 7(3), 201-215.
【文献】M. Eslami et.al., Diabet Med. 2020 Oct 6;e14415.
【文献】渡辺光博, 糖尿病 54(3), 2011, 156-160.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吸水膨潤のない胆汁酸吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、イミダゾール構造を有する有機ケイ素化合物で処理されたシリカが、胆汁酸吸着効果を有し、かつ、吸水膨潤を示さないことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物が結合したシリカ粒子からなる胆汁酸吸着剤、
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、ビニル基、フェニル基、またはベンジル基を表し、R4は、下記一般式(2)で示される基を表す。ただし、R1およびR3は、結合してベンゼン環を形成していてもよい。)
【化2】
(式中、Aは、ヘテロ原子、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、および/またはチオウレア結合を含んでいてもよい直鎖状または分岐状の二価連結基を表し、R5は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R6は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、nは、1~3の整数を表す。)
2. R4が、下記式(3)~(12)で表されるいずれかの基である1の胆汁酸吸着剤、
【化3】
(式中、mは、1~12の整数を表し、R7は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、kは、1~12の整数を表し、lは、1~3の整数を表し、R1、R2、R3、R5、R6およびnは、前記と同じ意味を表す。)
3. 1または2の胆汁酸吸着剤および腸溶性コーティングを含む製剤、
4. 腸溶性コーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、およびカルボキシメチルエチルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含む3の製剤、
5. 1または2の胆汁酸吸着剤を含む食品、
6. 1または2の胆汁酸吸着剤を含むサプリメント
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のイミダゾールシラン処理シリカからなる胆汁酸吸着剤は、吸水膨潤性を示さないため、服用時の違和感や副作用が少なく、従来の製剤よりも多く服用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る胆汁酸吸着剤は、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物が結合したシリカからなることを特徴とする。
【0012】
【化4】
【0013】
式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、ビニル基、フェニル基、またはベンジル基を表す。ただし、R1およびR3は、結合してベンゼン環を形成していてもよい。
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1~R3は、水溶液でシリカを処理する場合には、水素原子、または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、特に、R1およびR3が水素原子で、R2が、炭素数1~3のアルキル基、特に、メチル基がより好ましい。
【0014】
上記R4は、下記一般式(2)で示される基を表す。
【0015】
【化5】
【0016】
式(2)中、Aは、N、S、O、Si等のヘテロ原子、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、および/またはチオウレア結合を含んでいてもよい直鎖状または分岐状の二価連結基を表し、R5は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R6は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表す。
nは、1~3の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
【0017】
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、上記R1で例示した基と同様のものが挙げられる。
これらの中でも、R5は、メチル基、エチル基が好ましく、R6は、メチル基が好ましい。
【0018】
上記二価連結基Aとしては、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のアルキレン基、アルキレン基の鎖中および/または末端に、上記ヘテロ原子、ウレタン結合、ウレア結合、チオウレタン結合、チオウレア結合を有する二価の基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子は、アルキレン基の二価連結基の置換基として存在していてもよく、そのような置換基としては、水酸基、アミノ基、オルガノシリル基、イミダゾリル基等が挙げられる。
なお、二価連結基中に水酸基が存在する場合、この水酸基が式(2)のケイ素原子と結合して環構造を形成していてもよい。
【0019】
本発明において、好適な二価連結基Aを含む上記式(2)で示される基としては、下記式(3)~(12)で表される基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
【化6】
(式中、R1、R2、R3、R5、R6およびnは、上記と同じ意味を表す。)
【0021】
上記各式において、R7は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。炭素数1~3のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等が挙げられる。
mは、1~12の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
kは、1~12の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
lは、1~3の整数を表すが、2または3が好ましく、3がより好ましい。
【0022】
上記有機ケイ素化合物は、イミダゾール化合物とアルコキシシリル基を含有した有機ケイ素化合物を加熱撹拌下で反応させて得ることができる。
【0023】
イミダゾール化合物の具体例としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-アリル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0024】
アルコキシシリル基を含有した有機ケイ素化合物の具体例としては、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
イミダゾール化合物と、アルコキシシリル基を含有した有機ケイ素化合物は、上記式(1)のイミダゾール基とアルコキシシリル基に対応してそれぞれ選択される。
例えば、式(3)の基を有する有機ケイ素化合物であれば、アルコキシシリル基を含有する有機ケイ素化合物として3-クロロプロピルトリメトキシシラン、イミダゾール化合物として2-メチルイミダゾールなどが選択される。
【0026】
これらの反応には溶媒を用いることができる。使用可能な溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性の極性溶媒;メタノール等のプロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0027】
これらの反応には触媒を用いることができる。
例えば、上記式(3)の基を有する有機ケイ素化合物の合成時には脱塩酸反応に使用される一般的な触媒(トリエチルアミンに代表される3級アミンなど)を使用することができる。
また、式(9)や式(10)の基を有する有機ケイ素化合物の合成時には、ウレタン化反応に使用される一般的な触媒(ジオクチルスズジラウレートに代表される有機錫化合物など)を使用することができる。
さらに、上記式(11)や式(12)の基を有する有機ケイ素化合物の合成時には、エンチオール反応に用いられる一般的な触媒(アゾビスイソブチロニトリルに代表されるラジカル発生剤など)を使用することができる。
【0028】
イミダゾール基を有する有機ケイ素化合物でのシリカ処理の容易さの観点から、処理されるシリカは、シラノール基を有することが好ましい。
【0029】
本発明の胆汁酸吸着剤は、上述したイミダゾール基を有する有機ケイ素化合物でシリカを処理することにより得ることができる。シリカの処理方法は、一般的な方法でよいが、均一な処理が可能である湿式法が好ましい。
【0030】
イミダゾール基を有する有機ケイ素化合物の処理量は特に制限はないが、シリカ100質量部に対して、0.001~20質量部が好ましく、0.01~15質量部がより好ましい。0.001質量部未満では期待する効果が不十分となる場合があり、20質量部を超えることは、コストの観点から好ましくない。
【0031】
湿式法でシリカの分散に使用する溶媒は、シリカが分散し易い極性溶媒であれば特に制限はない。そのような極性溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エーテル類;ケトン類などが挙げられるが、シリカ粒子にイミダゾール基を有する有機ケイ素化合物を反応させる観点から、水を含む溶媒が好ましい。
なお、シリカ粒子の安定性や分散性を向上させるために界面活性剤や極性溶媒等を少量添加してもよい。
【0032】
シリカ処理の温度に制限はないが、反応性の観点から加熱することが好ましく、40~60℃で1~10時間反応させることが好ましい。
【0033】
反応後は、濾紙濾過等によりシリカを取り出し、減圧乾燥にて残存している溶媒を除去することで、イミダゾール基を有する有機ケイ素化合物で処理されたシリカを得ることができる。得られたシリカは、粒子表面の少なくとも一部にイミダゾール基を有する有機ケイ素化合物が導入されている。
【0034】
本発明の胆汁酸吸着剤は、肥満、II型糖尿病、高脂血症、脂肪肝等の生活習慣病、炎症性腸疾患、腸管粘膜障害および大腸がんの予防、治療のために用いられる製剤に配合して使用することができる。その場合、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、等張剤、添加剤、被覆剤、可溶化剤、潤滑剤、滑走剤、溶解補助剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、溶剤、ゲル化剤、栄養剤等の配合成分がさらに添加されていてもよい。
これらの配合成分の具体例としては、水、生理食塩水、動物性脂肪および油、植物油、乳糖、デンプン、ゼラチン、結晶性セルロース、ガム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリン等が挙げられる。
【0035】
本発明の胆汁酸吸着剤を含有する製剤は、胃酸から保護する、あるいは、胃壁に対する刺激などから胃粘膜を保護する目的で、腸溶性コーティングを有する錠剤、カプセル剤等の形態が好ましい。
【0036】
腸溶性コーティングは、例えば、特許第3628401号公報に記載された方法等の一般的な手法で行うことができる。
具体的には、顆粒または細粒状の固形薬剤を、遠心流動コーティング装置で撹拌しつつ、液状可塑剤もしくは液体、または加熱溶融した液体状のワックス類を噴霧しながら腸溶性コーティング剤を散布し、固形薬剤を被覆する方法などである。
【0037】
腸溶性コーティングとしては、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース類;ポリビニルアルコールアセテートフタレート;メタアクリル酸とアクリル酸エチルとの共重合体などが挙げられる。
【0038】
上記腸溶性コーティングの中でも、pH応答性や耐加水分解性の観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース等の腸溶性メチルセルロースが好ましい。
【0039】
本発明の胆汁酸吸着剤の投与経路は経口が好ましく、その投与量は、年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定される。通常、投与量の範囲は、1μg~200mg/dayであり、好ましくは2μg~2,000μg/dayであり、より好ましくは3~200μg/dayであり、より一層好ましくは4~20μg/dayであり、一日あたり単回または複数回(例えば、2~4回)に分けて投与されるが、症状の改善状況に応じて投与量を調節してよい。
【0040】
本発明の胆汁酸吸着剤を含有する健康食品の摂取方法、形態は自由であり、特に制限されない。
例えば、本発明の胆汁酸吸着剤を含有する健康食品は、食事の代用、間食として食用することもできる。この場合、上記胆汁酸吸着剤と、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、およびパン粉からなる群から選択される少なくとも一種とを調合し、通常の料理に使用することもできる。また、これらを菓子類、そば、うどん、パスタ、パンなどに加工して使用することもできる。
さらに、健康食品の状態は、固体状(粉末、顆粒)、ゼリー状、液体、懸濁状のいずれでもよく、甘味料、酸味料などの各種成分を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の胆汁酸吸着剤を含有するサプリメントは、脂肪の吸収を抑える市販のサプリメントと同様の方法で使用できる。
本発明の胆汁酸吸着剤を含有するサプリメントに配合される配合成分は、特に限定されるものではない。配合成分の具体例としては、小麦澱粉、米澱粉、トウモロコシ澱粉、乳糖、麦芽糖、白糖、ブドウ糖、ゼラチン、植物油など、一般的に使用されているものが挙げられる。
【0042】
また、本発明の胆汁酸吸着剤を含有するサプリメントは、錠剤、カプセル状、液状、パウダー状、ソフトカプセル状であり、通常のサンプリメントの製造方法に従って製造することができる。
【実施例
【0043】
以下、合成例、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】
[1]有機ケイ素化合物の合成
[合成例1]
特開平5-39295号公報に開示された方法に従い、2-メチルイミダゾールと3-クロロプロピルトリメトキシシランから下記式(3-1)で表される有機ケイ素化合物を合成した。
【0045】
【化7】
【0046】
[合成例2]
特許第3555845号公報に開示された方法に従い、2-メチルイミダゾールと3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランから下記式(4-1)で表される有機ケイ素化合物を合成した。
【0047】
【化8】
【0048】
[合成例3]
特開平05-186479号公報に開示された方法に従い、2-メチルイミダゾールと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランから下記式(5-1)、(7-1)、(8-1)で表される有機ケイ素化合物の混合物を合成した。
【0049】
【化9】
【0050】
[合成例4]
特許第3523804号公報に開示された方法に従い、2-メチルイミダゾールと3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランから下記式(6-1)で表される有機ケイ素化合物を合成した。
【0051】
【化10】
【0052】
[合成例5]
特許第4372461号公報に開示された方法に従い、2-メチルイミダゾールと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランから下記式(7-1)、(9-1)、(10-1)、(13)で表される有機ケイ素化合物の混合物を合成した。
【0053】
【化11】
【0054】
[合成例6]
特許第3555802号公報に開示された方法に従い、1-ビニル-2-メチルイミダゾールと3-メルカプトプロピルトリメトキシシランから下記式(11-1)で表される有機ケイ素化合物を合成した。
【0055】
【化12】
【0056】
[合成例7]
特許第3555802号公報に開示された方法に従い、2-メチル-1-アリルイミダゾールと3-メルカプトプロピルトリメトキシシランから下記式(12-1)で表される有機ケイ素化合物を合成した。
【0057】
【化13】
【0058】
[2]有機ケイ素化合物が結合したシリカ粒子からなる胆汁酸吸着剤の製造
[実施例1~7]
水、メタノール1:9(質量比)の混合物100質量部とシリカ(Nipsil NS-KR、東ソーシリカ(株)製)30質量部を25℃で混合し、合成例1~7で得られた有機ケイ素化合物3質量部をそれぞれ加え、50℃で4時間撹拌した。撹拌終了後、溶媒を濾過し、メタノールで洗浄した後、減圧下110℃で1時間乾燥し、有機ケイ素化合物が結合したシリカ粒子からなる胆汁酸吸着剤を得た。
【0059】
上記実施例1~7で得られた胆汁酸吸着剤それぞれについて、下記の手順に従って胆汁酸吸着率および給水膨潤性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0060】
[胆汁酸吸着率の測定]
(1)胆汁酸サンプルとして、市販のグリコール酸0.1gを、1LのpH8トリスバッファーに溶かしたグリコール酸溶液(100μmol/L)を調製した。
(2)上記グリコール酸溶液と、実施例1~7で得られた胆汁酸吸着剤100mgとを混合し、振盪後に遠心分離し、上澄みのグリコール酸濃度を吸光度から算出して胆汁酸吸着率を求めた。
【0061】
[吸水膨潤性の評価]
上記胆汁酸吸着率の評価方法と同様に調製したグリコール酸溶液と実施例1~7で得られた胆汁酸吸着剤100mgとを混合した際の、胆汁酸吸着剤の膨潤の有無を目視で確認した。結果を併せて表1に示す。
【0062】
なお、下記比較例1,2についても胆汁酸吸着率および給水膨潤性を測定・評価した。結果を表1に併せて示す。
[比較例1]
実施例1~7で得られた胆汁酸吸着剤100mgに代えて、未処理のシリカ(Nipsil NS-KR、東ソーシリカ(株)製)100mgを用いた。
[比較例2]
実施例1~7で得られた胆汁酸吸着剤100mgに代えて、市販の胆汁酸吸着薬(コレバイン、田辺三菱製薬(株)製)100mgを用いた。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示されるように、本発明の胆汁酸吸着剤は、比較例1の未処理シリカと比べて高い胆汁酸吸着性能を示しており、また、水と混合しても膨潤することはなかった。
一方、比較例2のコレバインは、高い胆汁酸吸着性能を示したものの、吸水による膨潤がみられた。