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特許7579203摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステム
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20241030BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
B60T8/17 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021076019
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170116
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309014573
【氏名又は名称】日清紡ブレーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】矢田 智春
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 征幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宗
(72)【発明者】
【氏名】山口 慶之
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018101579(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014202078(DE,A1)
【文献】特開2014-178270(JP,A)
【文献】特表平09-510279(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0242450(US,A1)
【文献】米国特許第05668529(US,A)
【文献】特開2016-222174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00- 71/04
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の相手部材と、
摩擦材と前記摩擦材に重ねられた導電性の支持部材とを有し、前記相手部材と前記摩擦材が接触可能に配置された二つの摩擦部材と、
前記相手部材と前記二つの摩擦部材を構成する二つの前記支持部材とからなる三つの要素のうち二つの要素を一対の電極とし、前記二つの要素の間に位置する前記摩擦材を誘電体とした場合の前記二つの要素間の静電容量を検出する静電容量検出部と、
基準静電容量と前記静電容量検出部から出力される静電容量とを比較して前記摩擦部材の温度を算出し、摩擦部材温度情報信号を生成する演算部と、を備えたことを特徴とする摩擦部材センサ。
【請求項2】
請求項1記載の摩擦部材センサにおいて、
前記基準静電容量が変更可能であることを特徴とする摩擦部材センサ。
【請求項3】
導電性の相手部材と、摩擦材と前記摩擦材に重ねられた導電性の支持部材とを有し、前記相手部材と前記摩擦材が接触可能に配置された二つの摩擦部材と、前記相手部材と前記二つの摩擦部材を構成する二つの前記支持部材とからなる三つの要素のうち二つの要素を一対の電極とし、前記二つの要素の間に位置する前記摩擦材を誘電体とした場合の前記二つの要素間の静電容量を検出する静電容量検出部と、基準静電容量と前記静電容量検出部から出力される静電容量とを比較して前記摩擦部材の温度を算出し、摩擦部材温度情報信号を生成する演算部とを備えた摩擦部材センサと、
前記演算部から出力される前記摩擦部材温度情報信号が入力する制御部と、を備えていることを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項4】
請求項3記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記演算部は、前記静電容量検出部から出力された前記静電容量を新たな基準静電容量に変更し、前記新たな基準静電容量と前記静電容量検出部から出力される静電容量とを比較して前記摩擦部材の温度を算出し、前記摩擦部材温度情報信号を生成することを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【請求項5】
請求項4記載の摩擦部材センサシステムにおいて、
前記演算部は、前記静電容量検出部から出力される前記静電容量を周囲温度情報に基づき補正した静電容量を算出し、前記補正した静電容量を前記新たな基準静電容量に変更することを特徴とする摩擦部材センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道、産業機械等のブレーキ装置に使用される摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や鉄道、産業機械等のブレーキ装置としてディスクブレーキ装置やドラムブレーキ装置が使用されている。
【0003】
ディスクブレーキ装置は、摩擦部材として支持部材であるバックプレートに摩擦材を張り付けたブレーキパッドと、相手部材としてディスクロータを備えるブレーキ装置であり、車輪等と一体的に回転するディスクロータの両側に設けた一対のブレーキパッドをディスクロータ側にそれぞれ押圧して車輪等を制動するものである。
【0004】
またドラムブレーキ装置は、摩擦部材として支持部材であるシューリムに摩擦材を張り付けたブレーキシューと、相手部材としてブレーキドラムを備えるブレーキ装置であり、車輪等と一体的に回転するブレーキドラムの内側に設けた一対のブレーキシューをブレーキドラム側にそれぞれ押圧して車輪等を制動するものである。
【0005】
この種のブレーキ装置では、回転するディスクロータ等にブレーキパッドの摩擦材を押圧する際、ディスクロータ等の運動エネルギーが摩擦によって熱エネルギーに変換される。その結果、摩擦材の温度が上昇する。
【0006】
摩擦材の温度が上昇すると、摩擦材の摩擦係数が低下して制動力の低下を招いてしまう。即ちブレーキの効きが悪くなってしまう。そのため、例えば公知文献1には、温度センサを備え、ディスクロータあるいは摩擦材の温度に応じて摩擦材に加える押圧力を制御することで摩擦材の温度上昇を抑える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-222174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、摩擦材の温度は接触型の温度センサや非接触型の温度センサにより検出されている。しかしながら、近年、車両等に搭載されるセンサの数は増大しており、センサの削減が望まれている。
【0009】
本発明は、摩擦材の温度を検出するために、ブレーキ装置に付加的に温度センサを備えることなく温度の検出が可能な摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る摩擦部材センサは、導電性の相手部材と、摩擦材と前記摩擦材に重ねられた導電性の支持部材とを有し、前記相手部材と前記摩擦材が接触可能に配置された二つの摩擦部材と、前記相手部材と前記二つの摩擦部材を構成する二つの前記支持部材とからなる三つの要素のうち二つの要素を一対の電極とし、前記二つの要素の間に位置する前記摩擦材を誘電体とした場合の前記二つの要素間の静電容量を検出する静電容量検出部と、基準静電容量と前記静電容量検出部から出力される静電容量とを比較して前記摩擦部材の温度を算出し、摩擦部材温度情報信号を生成する演算部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本願請求項2に係る摩擦部材センサは、請求項1記載の摩擦部材センサにおいて、前記基準静電容量が変更可能であることを特徴とする。
【0012】
本願請求項3に係る摩擦部材センサシステムは、導電性の相手部材と、摩擦材と前記摩擦材に重ねられた導電性の支持部材とを有し、前記相手部材と前記摩擦材が接触可能に配置された二つの摩擦部材と、前記相手部材と前記二つの摩擦部材を構成する二つの前記支持部材とからなる三つの要素のうち二つの要素を一対の電極とし、前記二つの要素の間に位置する前記摩擦材を誘電体とした場合の前記二つの要素間の静電容量を検出する静電容量検出部と、基準静電容量と前記静電容量検出部から出力される静電容量とを比較して前記摩擦部材の温度を算出し、摩擦部材温度情報信号を生成する演算部とを備えた摩擦部材センサと、前記演算部から出力される前記摩擦部材温度情報信号が入力する制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
本願請求項4に係る摩擦部材センサシステムは、請求項3記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記演算部は、前記静電容量検出部から出力された前記静電容量を新たな基準静電容量に変更し、前記新たな基準静電容量と前記静電容量検出部から出力される静電容量とを比較して前記摩擦部材の温度を算出し、前記摩擦部材温度情報信号を生成することを特徴とする。
【0014】
本願請求項5に係る摩擦部材センサシステムは、請求項4記載の摩擦部材センサシステムにおいて、前記演算部は、前記静電容量検出部から出力される前記静電容量を周囲温度情報に基づき補正した静電容量を算出し、前記補正した静電容量を前記新たな基準静電容量に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムによれば、摩擦部材の近傍に温度センサを備える代わりに、ブレーキ装置を構成する部材を利用して摩擦材の静電容量の変化から摩擦部材の温度を簡便に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の摩擦部材センサの説明図である。
図2】本発明の実施形態の摩擦部材センサの説明図である。
図3】本発明の実施形態の摩擦部材センサシステムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の摩擦部材センサおよび摩擦部材センサシステムは、摩擦部材を構成する摩擦材の摩耗が少なくその温度が変化する場合(例えば市街地で車両を走行させる際に、低速走行で、頻繁にブレーキ装置による制動を繰り返す場合)に、摩擦材の静電容量の変化から摩擦部材の温度を検出するのに好適な構成としている。以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[摩擦部材センサの実施形態]
まず、本発明の摩擦部材センサの実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態の摩擦部材センサの説明図であり、本発明を車両のディスクブレーキ装置に適用した例を示している。
【0019】
図1に示すように本実施形態の摩擦部材センサは、ディスクロータ1(相手部材に相当)と、ディスクロータ1に接触する摩擦材2aとこの摩擦材2aを張り付けたバックプレート2b(支持部材に相当)からなるブレーキパッド2(摩擦部材に相当)と、静電容量検出部3と、演算部4で構成されている。一般的なディスクブレーキ装置同様、車輪と一体となって回転するディスクロータ1を、一対のブレーキパッド2で押圧することで、車輪を制動する。
【0020】
ディスクロータ1とバックプレート2bは、導電性を有する材料で構成されている。具体的にはディスクロータ1は、例えばFC150~FC250のネズミ鋳鉄等で構成され、バックプレート2bは、例えばSAPH(自動車構造用熱間圧延鋼板)鋼材(一例としてSAPH440鋼材)等で構成されている。
【0021】
摩擦材2aは、誘電体で構成されている。具体的には、例えばフェノール樹脂等の結合材、アラミドパルプ等の繊維基材、グラファイトや二硫化モリブデン等の潤滑材、酸化ジルコニウムやケイ酸ジルコニウム等の無機摩擦調整材、カシューダスト等の有機摩擦調整材、硫化バリウム等の充填材等を含む複合材料によって構成されている。
【0022】
このように構成されたディスクロータ1とブレーキパッド2を利用して、静電容量検出部3で誘電体である摩擦材2aの静電容量を検知する。具体的には、ディスクロータ1と一方のバックプレート2bを一対の電極として、この一対の電極で挟み込まれた摩擦材2aの静電容量を検出する。この静電容量検出部3から出力される検出結果に基づく信号S1は、演算部4へ出力される。
【0023】
静電容量検出部3から出力された信号S1が入力する演算部4は、ブレーキパッド2の温度に基づく信号S2(摩擦部材温度情報信号に相当)を生成するため、次のような演算を行う。
【0024】
まず演算部4には、摩擦材2aを含むブレーキパッド2の温度が変化した場合に静電容量検出部3から得られる静電容量に関するデータを記憶し、あるいは図示しない外部から入力可能としておく。例えばある材料からなる摩擦材2aを備えたブレーキパッド2について、図2に示す温度特性を示すというデータを記憶しておく。
【0025】
図2に示すグラフは、所定の材料からなる摩擦材2aを含むブレーキパッド2について、温度25℃における静電容量C0(基準静電容量に相当)を基準として、ブレーキパッド2の温度が変化した場合の静電容量の変化率(%)を示している。図2に示す静電容量変化率は、摩耗のない摩擦材2aの場合でも、摩耗して摩擦材2aが薄くなった場合でも同様の特性となる。
【0026】
演算部4では、静電容量検出部3から出力された信号S1から未知の温度t℃となった摩擦材2aの静電容量(実測値C1)が得られる。摩擦材2aの誘電率をε、摩擦材2aの面積をS、摩擦材2aの厚さをdとすると、
温度tにおける静電容量C1=ε×(S/d)
となる。
【0027】
一方温度25℃における基準静電容量C0についても、摩擦材2aの誘電率をε、摩擦材2aの面積をS、摩擦材2aの厚さをdとすると、
温度25℃における静電容量C0=ε×(S/d)
となる。
【0028】
摩耗材2aの面積Sの変化および摩擦材2aの厚さdの変化はなく、あるいは無視できるほど小さいため、静電容量の変化は摩擦材2aの温度の変化に伴う誘電率εの変動によることになる。換言すると、静電容量の変化は温度の変化のみに基づくことになる。
【0029】
そこで、摩擦材2aの25℃における静電容量C0が、温度t℃となった摩擦材2aの静電容量がC1に変化したときの静電容量変化率を求める。この静電容量変化率を図2に示す静電容量変化率と比較することで一致する温度を知ることができる。この温度が、摩擦材2aを含むブレーキパッド2の温度(温度t)となる。このように本実施形態の摩擦部材センサでは、静電容量を検知することのみで、ブレーキパッド2の温度を検知することが可能となる。
【0030】
演算部4は、検知した温度に基づく摩擦部材温度情報信号S2を出力する。この摩擦部材温度情報信号S2は、ブレーキパッド2の温度の上昇により影響を及ぼす車両の制御のための制御信号として使用したり、単に温度を表示するため等に使用することができる。例えば後述するように、摩擦部材温度情報信号S2を車両の制御装置に入力する構成とし、ブレーキパッド2の温度の変化に応じてブレーキパッド2に加えるブレーキ油圧の制御のために使用することができる。
【0031】
ところで、上記説明では摩擦材2aの厚さdは変化がない、あるいは無視できるほど小さいという条件下で摩擦材2aの温度を検知する場合について説明した。しかしながら摩擦材2aは徐々に摩耗して薄くなる。そこで、摩擦材2aに摩耗が生じた場合でも摩擦部材の温度を検出できる摩擦部材センサシステムの実施形態について説明する。
【0032】
[摩擦部材センサシステムの実施形態]
図3は本発明の実施形態の摩擦部材センサシステムの説明図である。図3に示すように本実施形態の摩擦部材センサシステムは、上述の摩擦部材センサと、この摩擦部材センサを含め車両の制御を行う制御部5で構成されている。一般的なディスクブレーキ装置同様、制御部5の制御により車両と一体となって回転するディスクロータ1を、一対のブレーキパッド2で押圧することで車輪を制動する。
【0033】
上述同様、ディスクロータ1とバックプレート2bは、導電性を有する材料で構成されている。摩擦材2aは、誘電体で構成されている。このように構成されたディスクロータ1とブレーキパッド2を利用して、静電容量検出部3で誘電体である摩擦材2aの静電容量を検知する。具体的には、ディスクロータ1と一方のバックプレート2bを一対の電極として、この一対の電極で挟み込まれた摩擦材2aの静電容量を静電容量検出部3で検出する。この静電容量検出部3から出力される検出結果に基づく信号S1は、演算部4へ出力される。
【0034】
静電容量検出部3から出力された信号S1が入力する演算部4は、ブレーキパッド2の温度に基づく信号S2を生成する。この演算部4の演算において、本実施形態の摩擦部材センサシステムでは、摩擦材2aが摩耗した場合でも誤差の少ない温度検知を可能としている。
【0035】
例えば、車両が長時間動いていない状態(ディスクブレーキ装置が長時間使用されていない状態)では、ブレーキパッド2の温度上昇はなく周囲温度とほぼ等しい状態となっている。本実施形態の摩擦部材センサシステムでは、ブレーキパッド2の温度上昇がない状態で、ブレーキパッド2の静電容量を検出する。車両の制動情報は、車両の制御部5の制動情報等から容易に得ることができる。
【0036】
周囲温度が25℃で摩擦材2aの摩耗がない場合、検出される静電容量は基準静電容量と等しくなる。しかしながら摩擦材2aが摩耗している場合、その摩耗の程度に応じて検出される静電容量は基準静電容量より大きくなる。そこで、静電容量検出部3で検出された静電容量を新たな基準静電容量とする。
【0037】
この基準静電容量の変更は、例えば、ブレーキパッド2の温度上昇のない状態において静電容量検出部3で検出される静電容量が予め設定した所定の値より大きくなった場合(予め設定した摩耗量に達した場合)に変更するように設定することができる。基準静電容量の変更を行うタイミングは、適宜設定可能で、誤差が5℃を超える場合に相当する静電容量の差が生じたとき、走行距離が所定の距離に達したとき等設定することができる。あるいは、ブレーキパッド2の温度上昇のない場合の走行開始前に、その都度、基準静電容量を変更するように設定することもできる。
【0038】
演算部4による演算は、基準静電容量を新たな基準静電容量とした点を除き、上述の演算と同じとなる。即ち、新たな基準静電容量と静電容量検出部3から出力される静電容量とを比較し、静電容量変化率から温度を検知し、検知した温度に基づく摩擦部材温度情報信号S2を出力する。この摩擦部材温度情報信号S2は、ブレーキパッド2の温度上昇により影響を及ぼす車両の制御のため制御部5に入力し、車両の制御が可能となる。例えば、ブレーキパッド2の温度の変化に応じてブレーキパッド2に加えるブレーキ油圧の制御が行われるように構成することができる。
【0039】
[摩擦部材センサシステムの別の実施形態]
次に別の実施形態の摩擦部材センサシステムについて説明する。上述の実施形態の摩擦部材センサシステムは、ブレーキパッド2の温度が25℃(図2のグラフの温度特性の基準温度)の場合について説明した。しかしながら車両の周囲温度が25℃で、ブレーキパッド2の温度が25℃とは限らない。そこで車両の周囲温度を考慮した補正を加えることもできる。
【0040】
一般的に車両には周囲温度を検知するセンサを搭載されており、容易に周囲温度情報を得ることができる。この周囲温度情報を考慮して基準静電容量を補正する。具体的には、上述の説明同様、車両が長時間動いていない状態でブレーキパッド2の温度上昇がない状態で、ブレーキパッド2の静電容量を検知する。
【0041】
まず、ブレーキバッド2の摩擦材2aが摩耗していない場合について説明する。摩擦材2aが摩耗していない状態では、摩擦材2aの温度が25℃であれば検出される静電容量は基準静電容量と等しくなる。しかしながら、周囲温度が25℃と異なる場合には、検知される静電容量は基準静電容量と相違する。
【0042】
そこで、ブレーキバッド2の温度は周囲温度と同じとして図2に示す静電容量変化率の温度特性から、周囲温度において検出された静電容量を25℃における静電容量に補正する演算を行う。この場合、摩擦部材2aは摩耗していないため、演算により得られた静電容量は既に設定している基準静電容量と一致する。従って、基準静電容量の変更は必要ない。
【0043】
次に、ブレーキパッド2の摩擦材2aが摩耗している場合について説明する。摩擦材2aが摩耗した状態では、摩擦部材2aの温度が25℃であっても検出される静電容量は基準静電容量と等しくなることはない。
【0044】
そこで、ブレーキバッド2の温度は周囲温度と同じとして、図2に示す静電容量変化率の温度特性から、周囲温度における検出された静電容量を25℃の静電容量に補正する演算を行う。この演算により算出された静電容量(補正した静電容量に相当)を新たな基準静電容量とする。
【0045】
演算部4による演算は、基準静電容量を新たな静電容量とした点を除き、上述の演算と同じとなる。即ち、新たな基準静電容量と静電容量検出部3から出力される静電容量とを比較し、静電容量変化率から温度を検知し、検知した温度に基づく摩擦部材温度情報信号S2を出力する。この摩擦部材温度情報信号S2は、ブレーキパッド2の温度上昇により影響を及ぼす車両の制御のため制御部5に入力し、車両の制御が可能となる。例えば、ブレーキパッド2の温度の変化に応じてブレーキパッド2に加えるブレーキ油圧の制御が行われるように構成することができる。
【0046】
なお周囲温度とブレーキパッド2の温度とに差がある場合には、その差も考慮して新たな基準静電容量を算出することもできる。
【0047】
以上説明したように本発明によれば、温度センサを付加的に備えることなく、温度の検知が可能となる。なお上記説明では、ディスクブレーキ装置に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えばドラムブレーキ装置に適用することも可能で、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更すればよい。
【符号の説明】
【0048】
1:ディスクロータ、2:ブレーキパッド、2a:摩擦材、2b:バックプレート、3:静電容量検出部、4:演算部、5:制御部
図1
図2
図3