(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】薬剤容器および薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/28 20060101AFI20241030BHJP
A61M 5/152 20060101ALI20241030BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
A61M5/28 510
A61M5/28 500
A61M5/152
A61J1/10 333A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081205
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2020521569の分割
【原出願日】2018-09-26
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・リシオ
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-543759(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0179473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20-5/28
A61M 5/152
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(10)であって
ハウジング(11)
と、
薬剤を含む薬剤容器(24)と、
該ハウジング(11)内に固定された二重先端注射針(17)と
を
含む、薬物送達デバイス(10)であって、
該薬剤容器(24)は、
近位端と、
遠位端と
、
遠位端に配置された出口ポートと、
ハウジング(11)内に固定されるように適用された平坦なセクション(29)であって、該平坦なセクションは、1つまたはそれ以上の孔(30)を含み、近位端に配置された、平坦なセクション(29)と、
楕円形の2つの対向する側面であって、それぞれ、出口ポート(25)から平坦なセクション(29)まで容器(24)の長手方向軸(X)に沿って延びており、該容器(24)の側面の輪郭は、平坦なセクション(29)に向かって、かつ容器の出口ポート(25)に向かって、長手方向軸(X)に沿って連続的に減少するような、楕円形の2つの対向する側面と
を含む可撓性バッグとして構成され、
該出口ポート(25)は、該針(17)によって穿孔されるように適用された薄膜(31)を含み、
該可撓性バッグは、潰れたとき、
平坦なセクション(29)と
出口ポート(25)の間で長さが増大し、それにより、出口ポート(25)が針(17)の近位先端(17.1)に向かって移動し、その後に近位先端(17.1)が、薄膜(31)を穿孔し、それにより容器(24)と針(17)との間で流体連通を確立するように構成され、
該可撓性バッグは、潰されたとき、近位端と遠位端との間で長さが増加するので、平坦なセクション(29)は、膜(31)が近位先端(17.1)に向かって移動する前、移動する間、および移動した後に、ハウジング(11)に対する平坦なセクション(29)の動きが阻止されるように、平坦なセクション(29)はハウジング(11)につながっている、前記薬物送達デバイス(10)。
【請求項2】
一連の形状が識別子を形成するように、少なくとも2つの異なる形状からのものをそれぞれの孔(30)が有する、少なくとも2つの孔(30)が設けられる、請求項1に記載の薬物送達デバイス(10)。
【請求項3】
薬剤容器(24)の内側は、該容器(24)の材料が薬剤と反応するのを阻止するためのコーティングを有する、請求項1または2に記載の薬物送達デバイス(10)。
【請求項4】
容器(24)は、プラスチック、アルミニウム、ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルニトリル、熱可塑性エラストマー-ビニルベース、熱可塑性加硫物、ポリオレフィンプラストマーおよび熱可塑性ポリエステル共重合体からなる群から選択される可撓性材料を含むバッグとして構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(10)。
【請求項5】
駆動機構(27)によって駆動されたとき、薬剤容器(24)を潰すように適用されたスクイーザ(26)をさらに含み、該薬剤容器(24)が潰れる前の初期状態において、針(17)の近位先端(17.1)は、薄膜(31)から離される、請求項1~4のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(10)。
【請求項6】
スクイーザ(26)は、少なくとも1つのローラ(26.1、26.2)を含み、該少なくとも1つのローラは、
長手方向軸(X)に沿って、遠位方向(D)に移動したとき、薬剤容器(24)を潰すように適用され、一方、容器(24)の近位端はハウジング(11)内の定位置に留まっており、したがって、可撓性バッグが、潰れたとき、近位端と遠位端との間で長さが増大するにつれて、薄膜(31)が近位先端(17.1)に向かって移動し、近位先端(17.1)が薄膜(31)を穿孔するようになる、請求項5に記載の薬物送達デバイス(10)。
【請求項7】
スクイーザ(26)は、遠位方向(D)に移動したとき、薬剤容器(24)を、それらの間で潰すように適用された2つのローラ(26.1、26.2)を含み、および、ハウジング(11)は、遠位方向(D)に動く間に、少なくとも1つのローラ(26.1、26.2)を案内するためのローラトラック(28)を含む、請求項6に記載の薬物送達デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、圧縮手段により圧縮可能な、出口を備えるバッグを含む薬剤容器に関する。さらに、本開示は、このような薬剤容器を受けるように適用された薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの薬剤は、体内に注入される必要がある。これは、例えば、タンパク質(インスリン、成長ホルモン、およびインターフェロンなど)、炭水化物(例えば、ヘパリン)、抗体、および大部分のワクチンなど、特に、経口投与により非活性化される、またはその効率が著しく低減される薬剤に対して適用される。このような薬剤は、主として、通常、ガラスもしくはプラスチックのシリンジ、またはカートリッジである薬剤容器により注入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
使用するのが簡単であり、信頼性のある改良された薬剤容器が求められている。
【0004】
本開示の目的は、改良された薬剤容器、および改良された薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的は、請求項1に記載の薬剤容器により、また請求項12に記載の薬物送達デバイスにより達成される。
【0006】
例示的な実施形態は、従属請求項で提供される。
【0007】
本開示の態様によれば、薬剤容器は、近位端と、出口ポートを有する遠位端とを含む可撓性バッグとして構成され、ここで、可撓性バッグは、潰れたとき、近位端と遠位端の間で長さが増大するように構成される。
【0008】
例示的な実施形態では、出口ポートは、例えば、中空の針など、中空の管によって穿孔されるように適用された薄膜を含む。
【0009】
例示的な実施形態では、薬剤容器の近位端は、平坦なセクションを、すなわち、バッグの2つの対向する壁が互いに接触して、この平坦なセクションにおいてこれらの2つの対向する壁の間に薬剤が存在しない、またはほとんどなくなるようにするセクションを含む。
【0010】
例示的な実施形態では、平坦なセクションは、容器の近位端を固定するための1つまたはそれ以上の孔を含む。
【0011】
例示的な実施形態では、少なくとも2つの孔が設けられ、各孔は、孔の一連の形状が、容器に対する、かつ/または容器に含まれる薬剤に対する識別子を形成するように、少なくとも2つの異なる形状からのものを有する。
【0012】
例示的な実施形態では、容器は、容器の近位端および/または遠位端に向けて減少する輪郭を有する。
【0013】
例示的な実施形態では、薬剤容器の内側は、薬剤が容器の材料を抽出する、または滲出させるのを阻止するためのコーティングを有する。
【0014】
例示的な実施形態では、容器は、例えば、プラスチック、アルミニウム、ポリエチレン、熱可塑性エラストマー(TPE)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVC/NBR(PVCニトリル)、TPE-MPR(熱可塑性エラストマー-溶融加工可能ゴム)、TPE-ビニルベース、TPE(Santoprene(登録商標)としても知られる熱可塑性加硫物)、POP(ポリオレフィンプラストマー)、Tee(熱可塑性ポリエステル共重合体)など、可撓性材料を含むバッグとして構成される。
【0015】
例示的な実施形態では、薬剤容器は、衝撃押出しにより、または射出成形もしくは吹込み成形により形成される。
【0016】
例示的な実施形態では、平坦なセクションは、最初は開口している近位端を折り畳むことにより、または接合、特に超音波溶接もしくは接着により形成される。
【0017】
例示的な実施形態では、薬剤容器は薬剤を含む。
【0018】
本開示の態様によれば、薬物送達デバイスは、上記で述べた薬剤容器を受けるように適用されたハウジングと、駆動機構によって駆動されたとき、薬剤容器を潰すように適用されたスクイーザと、ハウジング内に固定された二重先端注射針とを含み、ここで、薬剤容器が潰れる前の初期状態において、針の近位先端が、薄膜から離れている。スクイーザにより潰れたとき容器の長さが増大するので、針の近位先端が,容器が潰れたときに薄膜を穿孔する。したがって、容器は、潰れるまで滅菌状態が維持される。
【0019】
例示的な実施形態では、スクイーザは、遠位方向に移動したとき、容器の近位端はハウジング内の定位置に留まっているが、薬剤容器を潰すように適用された少なくとも1つのローラを含み、したがって、可撓性バッグが潰れたとき、近位端と遠位端の間で長さが増大するにつれて、薄膜が近位先端に向かって移動し、近位先端が薄膜を穿孔するようになる。
【0020】
例示的な実施形態では、スクイーザは、遠位方向に移動したとき、それらの間で薬剤容器を潰すように適用された2つのローラを含む。2つのローラは、高圧下であっても、容器から薬剤全体を絞り出すことになるため、1つのローラよりも良好な容量送達精度を提供することができる。単一のローラは、圧力下で、単一ローラの後方に液漏れを起こす可能性があり、したがって、ローラが遠位方向に進んだとき、薬剤がローラの後方に閉じ込められるおそれがある。
【0021】
例示的な実施形態では、ハウジングは、遠位方向に動く間に、少なくとも1つのローラを案内するためのローラトラックを含む。
【0022】
例示的な実施形態では、薬物送達デバイスは、上記で述べられた、薬剤を含む薬剤容器を含む。
【0023】
薬物送達デバイスは、自動注射器とすることができ、駆動機構は、機械的もしくはガスばねにより、または電気モータにより動作させることができる。他の実施形態では、薬物送達デバイスは、ペン型デバイスとすることができ、その場合、駆動機構は手動で操作されることになる。
【0024】
本明細書で述べられる薬物送達デバイスは、薬物または薬剤を患者に注射するように構成することができる。例えば、送達は、皮下に、筋肉内に、または静脈内に行うことができる。このようなデバイスは、患者により、または看護師もしくは医師などの介護者により操作され、様々なタイプの安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器を含むことができる。
【0025】
デバイスは、使用前に封止されたアンプルを穿孔する必要のあるカートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスを用いて送達される薬剤の容量は、約0.5mlから約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、「大」容量の薬剤(通常、約2mlから約10ml)を送達するために、ある時間期間(例えば、約5、15、30、60、または120分)の間、患者の皮膚に付着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0026】
特定の薬剤と組み合わせると、現在述べられているデバイスはまた、必要な仕様内で動作するようにカスタマイズすることもできる。例えば、デバイスは、一定の時間期間内で薬剤を注入するようにカスタマイズすることができる(例えば、自動注射器の場合、約3から20秒、またLVDの場合約10分から約60分)。他の仕様は、低もしくは最小レベルの不快さ、または人的要因、保存期間、有効期限、生体適合性、環境的な考慮事項などに関係するいくつかの条件を含むことができる。このような変動は、例えば、約3cPから約50cPの粘度の範囲の薬物など、様々な要因に起因して生ずる可能性がある。したがって、薬物送達デバイスは、サイズが、約25から約31ゲージの範囲の中空の針を含むことが多い。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
【0027】
本明細書で述べられる送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を含むことができる。例えば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退の1つまたはそれ以上のものを自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程に対するエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源により提供することができる。エネルギー源は、例えば、機械的、空気的、化学的、または電気的エネルギーを含むことができる。例えば、機械的なエネルギー源は、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを貯蔵もしくは解放するための他の機械的な機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単一のデバイスへと組み合わせることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きへと変換するための歯車、弁、または他の機構をさらに含むことができる。自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化される機能は、起動機構により起動することができる。このような起動機構は、ボタン、レバー、針スリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。起動は、1つの工程、または多段プロセスとすることができる。すなわち、ユーザは、自動化機能を生じさせるために、1つまたはそれ以上の起動機構を起動させる必要がある。例えば、ユーザは、薬剤を注射させるために、その体に対して針スリーブを押し下げることができる。他のデバイスでは、ユーザは、注射を行うために、ボタンを押下し、かつニードルシールドを後退させる必要がある。他のデバイスでは、ユーザは、デバイスを皮膚に対して押し付ける必要があり、センサを備えるデバイスは、わずかな時間遅延で自動的に起動することになる。
【0028】
加えて、このような起動は、1つまたはそれ以上の機構を起動することができる。例えば、起動シーケンスは、針挿入、薬剤の注射、および針の後退の少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を生じさせるために、特定シーケンスの工程が必要になり得る。他のデバイスは、シーケンスとは独立した工程を用いて動作することができる。
【0029】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器の1つま
たはそれ以上の機能を含むことができる。例えば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械的エネルギー源(通常、自動注射器に見られる)、および容量設定機構(通常、ペン型注射器に見られる)を含むこともできる。
【0030】
本開示の適用可能性のさらなる範囲は、以下で与えられる詳細な説明から明らかになろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本開示の例示的な実施形態を示しているが、例示のため示されているに過ぎず、当業者であれば、本開示の趣旨および範囲に含まれる様々な変更および修正は、この詳細な説明から明らかになるものであることを理解されたい。
【0031】
本開示は、例示のためだけに与えられ、かつ本開示を制限することのない以下で示される詳細な説明および添付図面から、より十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】薬物を送達する前の薬物送達デバイスの例示的な実施形態の概略図である。
【
図5】薬物を送達した後の薬物送達デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
対応する部材は、すべての図において、同じ参照記号で印付けされる。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が、
図1Aおよび
図1Bで示される。
【0035】
前述のデバイス10は、患者の体内に薬物または薬剤を注射するように構成される。
【0036】
デバイス10は、通常、注射予定の薬剤を含むリザーバ(例えば、シリンジまたは容器24)と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするのに必要な構成要素とを含むハウジング11を含む。
【0037】
デバイス10はまた、ハウジング11に、特に、デバイス10の遠位端または前端部Dに、取外し可能に取り付けることのできるキャップ組立体12を含むことができる。通常、ユーザは、デバイス10を動作できる前に、キャップ組立体またはキャップ12をハウジング11から取り外す必要がある。
【0038】
図示のように、ハウジング11は、実質的に円筒形であり、かつ長手方向軸Xに沿って実質的に一定の直径を有することができる。ハウジング11は、遠位領域20および近位領域21を有することができる。「遠位の」という用語は、注射部位に比較的近い場所を指し、また「近位の」という用語は、注射部位から比較的離れた場所を指す。
【0039】
デバイス10はまた、スリーブ13がハウジング11に対して動けるようにハウジング11に連結された針スリーブ13を含むことができる。例えば、スリーブ13は、長手方向軸Xに平行な長手方向に移動することができる。特に、近位方向へのスリーブ13の動きは、管または針17がハウジング11の遠位領域20から延びることができるようにする。針17の挿入は、いくつかの機構により行うことができる。例えば、針17は、ハウジング11に対して固定された位置にあり、また最初は、延ばされた針スリーブ13内に位置することができる。スリーブ13の遠位端を患者の体に対して押し付けることによる、かつハウジング11を遠位方向に移動させることによるスリーブ13の近位の動きが、
針17の遠位端を露出させることになる。このような相対的な動きは、針17の遠位端が、患者の体内に延びることを可能にする。針17が、スリーブ13に対するハウジング11の患者の手動の動きにより手動で挿入されるので、このような挿入は、「手動の」挿入と呼ばれる。
【0040】
挿入の別の形態は、「自動化」であり、それにより、針17は、ハウジング11に対して移動する。このような挿入は、スリーブ13の動きにより、または例えば、ボタン22など、別の形態の起動によりトリガすることができる。
図1Aおよび
図1Bで示されるように、ボタン22は、ハウジング11の近位端または後方端部Pに位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン22は、ハウジング11の側部に位置することもできる。さらなる実施形態では、ボタン22は削除されており、例えば、薬剤送達デバイスが、注射側に置かれたとき、針スリーブ13をハウジングの内側に押すことによって提供される、例えば、スリーブトリガ機構で置き換えられる。
【0041】
他の手動もしくは自動化機能は、薬物注射もしくは針後退、またはその両方を含むことができる。
【0042】
注射の後、針17は、スリーブ13またはハウジング11内に後退することができる。後退は、ユーザが、患者の体からデバイス10を取り外して、スリーブ13が遠位方向に移動したときに行うことができる。
【0043】
これは、針17が、ハウジング11に対して固定された位置のままであるので行うことができる。スリーブ13の遠位端が、針17の遠位端を通過して、針17が覆われた後、スリーブ13をロックすることができる。このようなロッキングは、ハウジング11に対するスリーブ13のどのような近位の動きもロックすることを含むことができる。
【0044】
針17がハウジング11に対して移動する場合に、別の形態の針の後退を行うことができる。ハウジング11内のシリンジが、ハウジング11に対して近位方向に移動する場合に、このような動きを行うことができる。この近位方向の動きは、遠位領域20に位置する後退ばね(図示せず)を用いることによって達成することができる。圧縮された後退ばねは、起動されたとき、容器24に対して十分な力を供給して、それを近位方向に移動させることができる。十分に後退させた後、針17とハウジング11の間の何らかの相対的な動きを、ロッキング機構を用いてロックすることができる。加えて、ボタン22、またはデバイス10の他の構成要素を、必要に応じてロックすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、窓部11aを含むことができ、それを通して、容器24をモニタすることができる。
【0046】
図2は、薬物を送達する前における薬物送達デバイス10の例示的な実施形態の概略図である。薬物送達デバイス10は、薬物で充填された容器24を備え、容器24は、出口ポート25を有する可撓性バッグとして構成される。比較的薄い表皮を有することが好ましい容器24は、駆動機構27により長手方向軸Xと平行に可動な1対のローラ26.1、26.2を備えるスクイーザ26により圧縮可能である。ローラ26.1、26.2が、長手方向軸Xに沿って遠位方向Dに移動したとき、容器24の近位端はハウジング11内の定位置に留まるが、容器24は、潰れるようにローラ26.1と26.2の間に配置される。ローラ26.1、26.2が容器24を潰すことにより、容器24の容積は、徐々に低下し、その結果、薬物が出口ポート25から絞り出される。例示的な実施形態では、ハウジング11は、ローラ26.1、26.2を案内し、かつそれらが前進するとき、2つのローラ26.1、26.2の間の距離を維持するように適用されたローラトラック28を含む。
【0047】
ローラ26.1、26.2は、容器24の壁厚を考慮に入れ、容器24が完全に潰れて、ローラ26.1、26.2が移動したとき、その後に薬剤が閉じ込められることのないように、互いに離すことができる。
【0048】
容器24は、プラスチック吹込み成形バッグとして、またはアルミニウムバッグとして構成することができる。出口ポート25は、例えば、成形により、容器24の遠位端に配置される。出口ポート25は、ハウジング11内に固定された二重先端注射針17の近位先端17.1により穿孔されるように適用された薄い壁の薄膜31を含むことができる。針17の遠位先端17.2は、キャップ組立体(図示せず)を外した後、またはスリーブ13を押下した後、ハウジング11から遠位方向に延びるように位置することができる。注射する前の初期状態では、針17の近位先端17.1は、容器24の内容物が滅菌した状態に、かつ容器の完全性が維持されるように、出口ポート25の薄膜31から離れている。容器24の近位端は、ハウジング11内に固定されるように適用された平坦なセクション29(
図3を参照のこと)を含む。ローラ26.1、26.2が、遠位方向Dに進むと、平坦なセクション29は、1つまたはそれ以上の孔30により保持されたハウジング11内の定位置に留まっており、一方、容器24は徐々に潰れ、したがって、長さが増大し、出口ポート25が針17の近位先端17.1に向かって移動し、その後に近位先端17.1は、薄膜31を穿孔し、したがって、容器24と針17の間で流体連通が確立される。
【0049】
例示的な実施形態では、バッグとして形成された容器24は、円形、楕円形、または矩形の輪郭を有することができる。例示的な実施形態では、輪郭は一様ではなく、容器24の近位端および遠位端に向かって、または少なくとも遠位端もしくは近位端に向かって減少する。
【0050】
アルミニウムバッグの場合、バッグは、衝撃押出しにより形成することができ、バッグは、アルミニウムの小部分から押し出される。平坦なセクション29は、1本の練り歯磨きと同様に、最初は開口している近位端を数回折り畳むことにより形成することができる。バッグは、したがって、密閉封止され、かつバッグの生産プロセス中の高温に起因してほぼ無菌である。バッグの内側は、バッグの材料が内容物と反応するのを阻止するためのコーティングがあることができる。
【0051】
プラスチックバッグの場合、平坦なセクション29は、例えば、接着剤を適用することにより、または溶接によるなど、接合することにより形成することができる。平坦なセクション29は、
図3で示される。
【0052】
プラスチックバッグの場合、出口ポート25は、薄膜31を形成するためのプリフォームの射出成形によって形成することができる。プリフォームは、バッグの小型のバージョンとして形成することができ、例えば、出口ポート25の最終形状およびサイズを有する首部を含み、場合により、ねじ山と、その後に最終形状へとブローされるバッグの本体部分を形成するための小さな、厚い壁のセクションを備える。プリフォームは、成形機へ投入され、吹込み成形ツールで加熱され、かつ加圧することができる。それを、最終形状を形成する吹込み成形ツールの形状へと形成するために、圧縮空気を使用することができる。プリフォームが作られるとき、首部およびねじ山は射出成形されるため、非常に正確に製作され、射出成形された、クロージャとも呼ばれるキャップを用いて優れた封止を可能にする。したがって、優れた漏れ止め封止を生成するために、クロージャの内側に挿入物または裏打ちを必要としない。
【0053】
平坦なセクション29は、容器24をハウジング11内に固定するために使用できる1
つまたはそれ以上の孔30を含むことができる。ハウジング11または駆動機構27は、孔30内に係合するように適用されたピンを有することができる。孔30は、例えば、星もしくはアステリスク、方形、円、菱形、三角形など様々な形状を有することができる。これらの形状のうちの1つをそれぞれが有する一連の孔30は、容器24に対する、かつ/または容器24に含まれる薬剤に対する一意の識別子を形成するために使用することができる。3つの孔30の場合、2つの異なる記号を用いて、8個の異なる識別子が存在し得る。3つの異なる記号を用いると、27個の異なる識別子となり、4つの異なる記号を用いると、64個の異なる識別子が存在することになるなどである。
【0054】
容器24は、例えば、ポリエチレンなどのプラスチック材料からなる、または含むことができる。
【0055】
図4は、出口ポート25を下にした状態で、容器24を受けるための容器ホルダ41を含む超音波封止器40の概略図である。容器24は、例えば、下から上に薬物で充填される。超音波溶接により、近位端を閉鎖し、かつ封止して、平坦なセクション29を形成するために、超音波ホーン42および取付け具43が、容器24の近位端に配置される。他の実施形態では、容器24の近位端は、熱により、または別の方法で封止することもできる。封止は、クリーンルームで行うことができる。
【0056】
図5は、薬物を送達した後の薬物送達デバイス10の概略図である。駆動機構27が、ローラ26.1、26.2を遠位方向Dに進めており、ここで、平坦なセクション29は、定位置に留まっており、一方、容器24は徐々に潰れ、したがって、長さが増大して、出口ポート25は針17の近位先端17.1に向かって移動し、近位先端17.1は薄膜31を穿孔して、容器24と針17の間に流体連通を確立している。ローラ26.1、26.2が容器24を潰すことにより、容器24の容積は、徐々に低減され、最終的に、薬物は、針17を通して出口ポート25から絞り出された。薬物送達の後、キャップ組立体は、ハウジング11に戻されて針17の遠位端17.2を覆うことができる。
【0057】
薬物送達デバイス10は、自動注射器とすることができ、駆動機構は、機械的もしくはガスばねにより、または電気モータにより動作させることもできる。他の実施形態では、薬物送達デバイス10は、ペン型デバイスとすることができ、駆動機構は、手動で操作されることになる。
【0058】
別の例示的な実施形態では、ローラ26.1、26.2に代えて、スクイーザ26は、容器24の近位端に係合する軸として配置され、軸が回転すると巻き上げるようにすることもできる。
【0059】
さらに別の実施形態では、スクイーザ26は、容器24が上に置かれる剛性のある支持体に対して作用する1つのローラ26.1だけを含むこともできる。
【0060】
別の例示的な実施形態では、二重先端針に代えて、管に連結される針を配置することもでき、管の他方の端部が、別の針またはカニューレに連結される。
【0061】
例示的な実施形態では、薄膜31は、容器24を再封止するように適用される、例えば、ピザ形状のセプタムなど、セプタムとすることができる。
【0062】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。
例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0063】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0064】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0065】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含むが、それらに限定されない。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0066】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物
を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0067】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0068】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0069】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0070】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0071】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0072】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0073】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0074】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本開示に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0075】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0076】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0077】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0078】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0079】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0080】
当業者であれば、本明細書で述べられた物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の変更(追加および/または除去)は、このような変更、およびその任意の、かつすべての等価な形態を包含する本開示の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行えることが理解されよう。
【符号の説明】
【0081】
10 薬物送達デバイス
11 ハウジング
11a 窓部
12 キャップ組立体
13 スリーブ
17 針
17.1 近位先端
17.2 遠位先端
20 遠位領域
21 近位領域
22 ボタン
24 容器
25 出口ポート
26 スクイーザ
26.1 ローラ
26.2 ローラ
27 駆動機構
28 ローラトラック
29 平坦なセクション
30 孔
31 薄膜
40 超音波封止器
41 容器ホルダ
42 超音波ホーン
43 取付け具
D 遠位端、遠位方向
P 近位端、近位方向
X 長手方向軸