(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】リソグラフィマスクをエッチングするための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/74 20120101AFI20241030BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20241030BHJP
【FI】
G03F1/74
G03F1/24
(21)【出願番号】P 2023507771
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2021072060
(87)【国際公開番号】W WO2022029315
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】102020120884.7
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】トゥ ファン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】バウアー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュピース ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】ラムラー マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマンス クリスチャン フェリクス
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0249564(US,A1)
【文献】特開2014-174552(JP,A)
【文献】特開2015-125166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィマスク(100)の粒子ビーム誘起エッチングのための方法であって、
a)プロセス雰囲気(ATM)内に前記リソグラフィマスク(100)を設けるステップ(S1)と、
b)前記リソグラフィマスク(100)上の標的位置(ZP)上に、集束した粒子ビーム(110)を発するステップ(S2)と、
c)少なくとも1つの第1のガス成分(GK1)を前記プロセス雰囲気(ATM)内の前記標的位置(ZP)に供給するステップ(S3)であって、ここで、前記第1のガス成分(GK1)は、活性化によって反応性形態に変換することができ、ここで、前記反応性形態は、前記リソグラフィマスク(100)の材料と反応して、揮発性化合物を形成する、ステップと、
d)少なくとも1つの第2のガス成分(GK2)を、前記プロセス雰囲気(ATM)内の前記標的位置(ZP)に供給するステップ(S4)であって、ここで、前記第2のガス成分(GK2)は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む、ステップと、
を有し、ステップc)およびd)は、時間的に、ステップb)よりも前におよび/またはステップb)と同時に実行される、方法。
【請求項2】
前記第2のガス成分(GK2)は、ケイ酸塩、シラン、シロキサン、シラザンおよび/またはケイ素イソシアネートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子ビーム(110)への曝露を伴う所定のプロセス条件下で、前記第2のガス成分(GK2)は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む堆積物を形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エッチングプロセス中に前記第2のガス成分(GK2)によって形成される堆積物は、前記リソグラフィマスク(100)の湿式化学洗浄のステップにおいて除去される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のガス成分(GK1)は、二フッ化キセノンXeF
2、六フッ化硫黄SF
6、四フッ化硫黄SF
4、三フッ化窒素NF
3、三フッ化リンPF
3、六フッ化タングステンWF
6、六塩化タングステンWCl
6、六フッ化モリブデンMoF
6、フッ化水素HF、窒素酸素フッ化物NOF、六フッ化三リン三窒素P
3N
3F
6のうちの1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のガス成分(GK2)の供給は、時間的に、前記標的位置(ZP)に対し前記粒子ビーム(110)を発する前に行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のガス成分(GK2)の供給は、前記標的位置(ZP)に対し前記粒子ビーム(110)を発している間に行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸化剤および/または還元剤を含む第3のガス成分を供給することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のガス成分(GK1)、前記第2のガス成分(GK2)および/または前記第3のガス成分を前記供給することは、
前記それぞれの成分の固相または液相を提供することと、
前記それぞれの成分の前記固相または液相の温度を、前記固相または液相にわたる前記それぞれの成分の義務付けられた蒸気圧を達成するように設定することと、
前記それぞれのガス成分(GK1、GK2)を、それぞれの供給ライン(232、242)を介して前記プロセス雰囲気(ATM)内に供給することと、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記それぞれの成分の質量流量および/または体積流量は、前記それぞれの供給ライン(232、242)のライン断面積を設定することおよび/または閉鎖弁のデューティサイクルを制御することによって制御される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子ビーム(110)は、荷電粒子からなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記リソグラフィマスク(100)は、EUVリソグラフィにおける使用のために具現化される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記リソグラフィマスク(100)はエッチング停止層(106)を有し、その表面側は、リソグラフィプロセスにおいて用いられる放射の吸収剤である材料から構成された、構造化された薄板(108)を担持し、ここで、前記エッチング停止層(106)に対する前記活性化された第1のガス成分(GK1)のエッチング速度は、前記構造化された薄板(108)に対するエッチング速度よりも、少なくとも2分の1、
及び/又は5分の1、
及び/又は10分の1に下がる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記リソグラフィマスク(100)は、複数の二重層から構成された多層膜ミラー(104)として具現化されたミラー層を有し、ここで、それぞれの二重層は、第1の化学組成から構成された第1の層と、第2の化学組成から構成された第2の層とを含み、前記第1の層および前記第2の層のそれぞれの層厚は、3~50nm、
及び/又は3~20nm、
及び/又は5~10nm、
及び/又は5~8nmの範囲にある、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子ビーム(110)は、1eV~100keV、
及び/又は3eV~30keV、
及び/又は10eV~10keV、
及び/又は30eV~3keV、
及び/又は100eV~1keVのエネルギーを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
リソグラフィマスク(100)の粒子ビーム誘起エッチングのための装置(200)であって、
プロセス雰囲気(ATM)の提供のためのハウジング(210)と、
前記リソグラフィマスク(100)上の標的位置(ZP)に、粒子ビーム(110)を集束させて発する手段(220)と、
第1のガス成分(GK1)を前記プロセス雰囲気(ATM)内の前記標的位置(ZP)において提供するための手段(230)であって、ここで、前記第1のガス成分(GK1)は、活性化によって反応性形態に変換することができ、ここで、前記反応性形態は、前記リソグラフィマスク(100)の材料と反応して、揮発性化合物を形成する、手段と、
第2のガス成分(GK2)を前記プロセス雰囲気(ATM)内の前記標的位置(ZP)において提供するための手段(240)であって、ここで、前記第2のガス成分(GK2)は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む、手段と、
標的位置(ZP)において粒子ビーム(110)を集束させて発するための手段(220)を活性化し、第1のガス成分(GK1)を前記標的位置(ZP)において提供するための手段(230)を活性化し、第2のガス成分(GK2)を前記標的位置(ZP)において提供するための手段(240)を活性化するために、前記第1のガス成分(GK1)および前記第2のガス成分(GK2)が、時間的に、前記標的位置(ZP)において粒子ビーム(110)を集束させて発する前に、および/または同時に提供されるように構成される、制御デバイス(270)と、
を有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィマスクをエッチングするための方法および装置に関する。
【0002】
優先出願番号DE 10 2020 120 884.7の内容全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路等の微細構造構成部品を製造するために用いられる。マイクロリソグラフプロセスは、照明システムおよび投影システムを有するリソグラフィ装置を用いて実行される。マスク構造を基板の感光コーティングに転写するために、照明システムによって照明されるマスク(レチクル)の像は、この場合、感光層(フォトレジスト)でコーティングされ、投影システムの像面に配置された、基板、例えばシリコンウェハに対し、投影システムによって投影される。
【0004】
小さな構造サイズを達成し、これにより微細構造の構成要素の集積密度を増大させるために、例えば深紫外(DUV)または極紫外(EUV)と呼ばれる非常に短い波長を有する光がますます使用されている。DUVは、例えば193nmの波長を有し、EUVは、例えば13.5nmの波長を有する。リソグラフィマスクは、これらの場合、それ自体が、5~100nmの範囲内にある構造サイズを有する。これらの種類のリソグラフィマスクの生成は非常に複雑であり、このため高価であり、特に、リソグラフィマスクは欠陥がない必要があるため、他の点では、リソグラフィマスクを用いて生成された構造が所望の機能を有する保証はない。この理由から、リソグラフィマスクは検証を受け、これは例えば、リソグラフィマスクにおける欠陥がないことが試験されることを意味する。この手順において、欠陥は検出および局所化され、欠陥の標的を絞った修復が可能になる。一般的な欠陥は、例えば、エッチング手順の実施の不成功に起因して、意図される構造がないこと、またはそうでない場合、例えば、過度に迅速なエッチング手順または誤った場所で行われたエッチング手順に起因して、意図されていない構造が存在することである。これらの欠陥は、該当の位置における余分な材料の標的を絞ったエッチング、または追加の材料の標的を絞った堆積によってなくすことができ、そのような動作は、例えば、集束電子ビーム誘起処理(FEBIP)によって、非常に標的を絞った方式で可能となる。
【0005】
DE 10 2017 208 114 A1は、フォトリソグラフィマスクの粒子ビーム誘起エッチングのための方法を開示し、この方法は、エッチングされる場所に活性化粒子ビームを提供するステップと、エッチングされる場所にエッチングガスを提供するステップとを含み、ここで、エッチングガスは、第1のガス成分と、第2のガス成分としての水蒸気とを含み、ここで、第1のガス成分は、窒素、酸素および塩素を1つの化合物内に含む。
【0006】
DE 10 2013 203 995 A1は、少なくとも1つの粒子ビームを用いて作用されている間、基板を保護するための方法および装置を開示している。この方法は、以下のステップ、すなわち、基板上に局所的に限定された保護層を取り付けるステップと、粒子ビームおよび少なくとも1つのガスによって、基板上に堆積された基板および/もしくは層をエッチングし、ならびに/または粒子ビームおよび少なくとも1つの前駆ガスによって基板上に材料を堆積するステップと、基板から局所的に制限された保護層を除去するステップとを含む。
【発明の概要】
【0007】
この背景に対し、本発明の目的は、リソグラフィマスクの作用を改善することである。
【0008】
第1の態様によれば、リソグラフィマスク、より具体的には非透過性EUVリソグラフィマスクの粒子ビーム誘起エッチングのための方法が提案される。第1のステップa)において、リソグラフィマスクはプロセス雰囲気内に設けられる。第2のステップb)において、リソグラフィマスク上の標的位置上に、集束した粒子ビームが発せられる。第3のステップc)において、少なくとも1つの第1のガス成分がプロセス雰囲気内の標的位置に供給され、ここで、第1のガス成分は、活性化によって反応性形態に変換することができ、ここで、反応性形態は、リソグラフィマスクの材料と反応して、揮発性化合物を形成する。第4のステップd)において、少なくとも1つの第2のガス成分がプロセス雰囲気内の標的位置に供給され、ここで、第2のガス成分は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む。
【0009】
この方法は、行われるエッチングプロセスをより効率的に制御することができ、したがってより標的を絞った特殊な方式で実行することができるという利点を有する。これによって、エッチングプロセスのプロセス分解能を全体的に増大させることが可能であることを意味する。したがって、より小さな構造を有するリソグラフィマスクに対し、標的を絞った方式で作用することができ、および/またはより小さなサイズを有する欠陥に対し作用することができる。
【0010】
特にステップb)~d)の個々の方法ステップの指定されたシーケンスは、必ずしも指定された順序で行う必要がなく、代わりに、ステップは、同時に、交互に、および/または異なる組み合わせもしくは時間的シーケンスで行うことができる。
【0011】
ステップc)およびd)は、特に、時間的に、ステップb)よりも前におよび/またはステップb)と同時に実行される。
【0012】
エッチングプロセスは、リソグラフィマスクをエッチングするためのプロセス雰囲気の適切な組成が存在し、粒子ビームが適切なエネルギーで標的位置上に発せられるときに開始する。粒子ビームが実際に発せられる前に2つのガス成分を供給することによって、(例えば、先行するプロセスステップからプロセス雰囲気内に依然として存在する)異質のガスが、除去されること、したがってプロセス雰囲気がエッチングプロセスの開始から所望の組成を有することを確実にすることが可能になる。粒子ビームが発せられている間のガス成分の継続的供給により、プロセス雰囲気の組成が一定であり、および/または定義された範囲内に留まることを確実にすることが可能になる。
【0013】
ステップc)およびd)は、同時に、または異なる時点に実行することができ、例えば、第1および第2のガス成分は、間欠的にまたは交互に供給することができる。第1および第2のガス成分は、より具体的には、標的位置におけるプロセス雰囲気の組成が所定の範囲内にあるように供給される。実施形態において、第1および第2のガス成分が、標的位置に供給される前に混合され、所望の組成物との混合物が標的位置に供給されることが可能である。
【0014】
粒子ビーム誘起エッチングは、有利には、実質的に、粒子ビームが、作用するリソグラフィマスクの表面に衝突する位置において行う。エッチングプロセスの空間的制限または分解能は、例えば、粒子ビームの性質に依拠する。粒子ビームは、例えば、光子、イオン、陽子、中性子またはそうでない場合、電子を含むことができる。電子ビームの使用は特に有利である。なぜなら、電子ビームは、非常に小さな衝突エリア上に集束させることができる一方で、同時に、電子は、ビームを受ける表面に実質的な損傷を引き起こさないためである。したがって、電子ビームを用いて達成可能な分解能は特に高い。
【0015】
原理上、分子レベルにおけるエッチングプロセスは、粒子ビームが、作用する表面に衝突するようになっており、この表面において、粒子ビームは、例えば衝突エリアの領域内の表面から発せられる例えば二次電子をトリガする。これらの二次電子のエネルギーは分子の解離をもたらすのに十分であり得る。この種の二次電子が、例えば表面上に吸着した、これまで活性化されていなかったエッチングガス分子上に衝突する場合、その分子は解離を受け、したがって反応性形態になる。反応性形態は、材料の表面における原子または分子と反応し、例えば揮発性化合物を形成する。したがって、このようにして表面が侵食される。ここで行われる厳密な物理化学プロセスは、非常に多種多様で複雑であり、現行の研究の論題となっている。
【0016】
エッチングプロセスに実質的に影響を及ぼし、したがってこのプロセスを制御するのに用いられる重要なパラメータは、例えば、温度、プロセス雰囲気の組成、標的位置における局所的ガス圧、成分の分圧、ならびに粒子ビームの強度およびエネルギーである。この列挙は網羅的でない。
【0017】
プロセス雰囲気は、例えば、制御された組成、および例えば10-2~10-8mBarの範囲にある制御された圧力を有する雰囲気である。プロセス雰囲気は、例えば、真空ハウジングによって提供される。それにもかかわらず、プロセス雰囲気は、空間および温度の変動を受ける。特に、作用領域内のプロセス雰囲気は、その組成において実質的な変動を有する。なぜなら、この組成は、プロセスガスの供給およびまた化学反応に依拠するためである。加えて、リソグラフィマスク作用を受けているときのプロセス雰囲気の圧力は、作用が生じていない時点と比較して、数桁高い場合がある。また、圧力は、真空ハウジングの他の場所の圧力と比較して、作用領域において数桁異なる場合がある。
【0018】
リソグラフィマスクは、より具体的には、EUVリソグラフィマスクである。EUVは、「極紫外線」を表し、0.1~30nmの範囲内の、より具体的には13.5nmの作用光波長を表す。これらの波長において、反射性光学素子を用いる必要があり、これは、リソグラフィマスクにも適用される。したがって、リソグラフィマスクは、EUV放射について反射性であり、より具体的にはブラッグミラーとして具現化される層を有し、反射面上に構造化された吸収層も有する。そのようなマスクは、バイナリリソグラフィマスクとも呼ばれる。構造化された吸収層の効果は、反射した放射の強度の空間変調を達成し、試料上の曝露において制御された局所的変動を最終的にもたらすことである。
【0019】
したがって、リソグラフィマスクは、例えば、入射放射線全体を可能な限り反射する領域、および放射線の或る特定の部分を吸収する他の領域を有する。放射線は、これらの領域において完全に吸収される必要はない。依然として許容可能な残留強度のレベルは、特定のリソグラフィプロセスに依拠する。好ましくは、入射強度の10%未満が反射される。
【0020】
構造化層の構造における任意の欠陥または障害は、リソグラフィプロセスにおける望ましくない曝露につながり、したがって、リソグラフィマスクが可能な限り少ない欠陥を有することが特に重要である。存在する欠陥は、定義された試験方法を用いて確認され、その後、可能な場合、標的を絞った修復を受ける。ここで提案される方法は、材料が存在すべきでない位置に残っている材料を除去するために特に適している。これは、不透明な欠陥とも呼ばれる。なぜなら、材料がEUV放射線を吸収し、したがって、反射された放射線の強度が過度に低いためである。これらの欠陥は、過剰な材料の標的を絞ったエッチングによって除くことができる。
【0021】
第3のステップc)において、少なくとも1つの第1のガス成分がプロセス雰囲気内の標的位置に供給される。この場合、第1のガス成分はエッチングガスを形成する。このガスの特徴は、比較的低い反応性を有する化合物における比較的高い反応性の構成物質である。反応性の構成物質は、特に、フッ素または塩素等のハロゲンを含む。エッチングガスは、活性化によって分解することができるか、または他の形で反応性の形態に変換することができる。
【0022】
エッチングガスは、プロセス雰囲気内の標的位置の可能な限り近くに供給される。エッチングガス自体は、例えば10-3~10-4mBarの範囲内の圧力を有する。エッチングガスの個々の分子は、リソグラフィマスクの表面に吸着する。吸着状態において、これらの分子は、短い距離で表面に結合されるが、表面上に拡散する場合もある。このようにして、例えば、分子の吸着型単分子層を、好ましくは標的位置の領域内でリソグラフィマスクの表面上に形成することができる。リソグラフィマスクの表面原子に対する吸着分子の物理的近接性の結果として、解離した反応性分子が表面の原子と反応する確率が大幅に増大する。
【0023】
エッチングガスは、粒子ビームを介して間接的に活性化される。既に説明したように、活性化は、例えば、粒子ビームの表面から誘発される二次電子によってトリガされる。活性化は、粒子ビームの粒子によって直接行うこともできるが、そのような反応の有効断面積は非常に小さく、したがってその寄与は僅かしかない。有効断面積は、例えば、これに影響を及ぼすために用いることができるビームエネルギーに依拠する。
【0024】
有利には、エッチングガスにおける活性種と表面原子との反応は、揮発性化合物を形成し、これは、標的位置からプロセス雰囲気を介してポンプオフすることができる。
【0025】
上記で説明した粒子ビーム誘起エッチングプロセスは、既に結果として高いプロセス分解能をもたらしたが、粒子ビームによって誘発されない自発反応、または標的位置以外の位置におけるエッチング反応等の望ましくない副作用も存在する場合がある。したがって、エッチングプロセスに対しより良好な制御を有するために、第2のガス成分がプロセス雰囲気内の標的位置に供給されることが提案される。第2のガス成分は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む。第2のガス成分は、より具体的には、化合物を含むことができ、この化合物は、粒子ビームへの曝露時に、所定のプロセス条件下で、シリコンと酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む堆積物を形成することができる。これらの所定のプロセス条件は、特に圧力を含み、また、標的位置における第2のガス成分の分圧を含み、また、標的位置におけるプロセス雰囲気の更なる組成を含む。第2のガス成分は、堆積ガスを含むと言うことも可能である。
【0026】
作用の目的は、材料をアブレーションすることであり、材料を構築することではないため、これは異例である。しかしながら、実験において、本出願人は、そのような堆積ガスを供給することによって、特にエッチング速度に対し、改善された制御で、また、標的位置のみでなく他の位置においてもリソグラフィマスクに対する損傷を大幅に低減させてエッチングプロセスを行うことができることを示した。
【0027】
第1のガス成分に対応して、第2のガス成分は、標的位置において可能な限り標的を絞った方式で供給される。第2のガス成分の分子は、同様にリソグラフィマスクの表面に吸着することができる。この場合、2つのガス成分が表面上の空いた部位を奪い合う。平衡状態において、例えば、分布は、気相における2つの成分の分圧、それぞれの表面における吸着の傾向、および分子の一部における個々の移動性を含む要因に依拠して生じる。
【0028】
表面上に吸着した第2のガス成分の分子が、例えば二次電子によって生じ得るように活性化されるとき、分子は分解することができ、この場合、SiOまたはSiO2等のシリコンおよび酸素を有する分子が表面に付着する。提案されるエッチング方法の間、プロセス条件は、好ましくは、堆積物が形成されないように、または堆積物がごく僅かな程度でのみ形成されるように設定される。これは、例えば、エッチング材料と堆積材料との比が少なくとも5:1、好ましくは10:1、より好ましくは20:1、更により好ましくは50:1、また更により好ましくは100:1であることを意味する。
【0029】
また、並列に大幅に低速に進行する堆積プロセスによって低速化したエッチングプロセスが行われること、およびエッチングプロセスを結果としてより効果的に制御することができることも述べることが可能である。しかしながら、これは、(上記で説明した粒子ビームまたは二次効果による活性化に続く、)第2のガス成分またはその反応性形態の有利に不活性化する効果を踏まえると、唯一の効果ではなく、代わりに、エッチングプロセスはより効果的に空間的に制限することもでき、粒子ビームを受けないリソグラフィマスクの位置における損傷の事例を回避することができる。
【0030】
エッチングプロセスに対する標的を絞った制御を得るために、第1および第2のガス成分の個々のガス流が好ましくは制御される。第1のガス成分のガス流は、例えば、0.1sccm~10sccm(sccm=標準立方センチメートル)の範囲内にある。第2のガス成分のガス流は、好ましくは、第1の成分のガス流に基づいて設定される。例えば、第1のガス成分対第2のガス成分の100:1~10000:1の比が設定される。第1および第2の成分のガス流の比は、標的位置の領域における成分の化学量論比を決定するため、特に関連度が高い。
【0031】
実施形態において、エッチングプロセスのプロセス条件は、材料の層形成または堆積の回避等のために、より具体的に設定される。そのような層形成は、例えば、プロセス雰囲気における第2のガス成分の存在の結果として得ることができる。この文脈における「層形成」は、より具体的には、例えば、1nm2のエリアにわたる個々の原子等の単に僅かな数の原子よりも多くが、表面上に沈殿するか、またはこれと反応することを意味する。層形成は、例えば、コヒーレント層が形成されないときに回避される。プロセス条件は、特に、プロセス雰囲気の圧力、標的位置における第1および第2のガス成分のそれぞれの分圧、標的位置におけるプロセス雰囲気の更なる組成、温度、ならびに粒子ビームのエネルギーおよび強度を含む。
【0032】
1つの実施形態において、第2のガス成分は、ケイ酸塩、シラン、シロキサン、シラザンおよび/またはケイ素イソシアネートを含む。
【0033】
ケイ酸塩は、オルトケイ酸Si(OH4)の塩およびエステルである。シランは、水素で飽和したケイ素骨格を有する。シロキサンおよびシラザンは、シランから導出された化合物であり、シロキサンは、一般実験式:R3Si-[O-SiR2]n-O-SiR3(ここで、Rは、水素原子またはアルキル基とすることができる基である)であり、シラザンは、一般実験式R3Si-[NH-SiR2]n-NH-SiR3を有する。
【0034】
ケイ酸塩の例は、テトラエチルオルトケイ酸塩Si(OC2H5)4であり、シランの例は、シクロペンタシランH10Si5であり、シロキサンの例は、ペンタメチルジシロキサンC5H15OSi2であり、シラザンの例は、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(CH3)2(SiH)2Oであり、ケイ素イソシアネートの例は、テトライソシアネートシランC4N4O4Siである。形成された任意の堆積物の特定の組成は、特に、作用プロセスにおいて供給される更なる追加のガスを含む要因に依拠する。例えば、シランをアンモニアNH3と併用する場合、窒化シリコンを含む堆積物が形成され得る。
【0035】
別の実施形態によれば、粒子ビームへの曝露を伴う所定のプロセス条件下で、第2のガス成分は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む堆積物を形成する。
【0036】
提案されるエッチングプロセスの文脈において、そのような堆積物の形成は、プロセス条件の適切な設定によって好ましくは回避されることに留意することができる。
【0037】
上記で既に言及したように、形成される任意の堆積物の厳密な化学組成は、作用プロセスにおいて供給される更なる追加のガスにも依拠する。例えば、シランをアンモニアNH3と併せる場合、窒化シリコンを含む堆積物が形成され得る。
【0038】
別の実施形態によれば、第2のガス成分によるエッチングプロセス中に形成される堆積物は、リソグラフィマスクの湿式化学洗浄のステップにおいて除去される。
【0039】
これは、粒子ビーム誘起エッチングプロセス中に保護効果を有する堆積物が、残留なしで除去され、したがって、作用を受けたリソグラフィマスクを用いたリソグラフィプロセスにおいて何ら影響を与えないという利点を有する。
【0040】
別の実施形態によれば、第1のガス成分は、二フッ化キセノンXeF2、六フッ化硫黄SF6、四フッ化硫黄SF4、三フッ化窒素NF3、三フッ化リンPF3、六フッ化タングステンWF6、六塩化タングステンWCl6、六フッ化モリブデンMoF6、フッ化水素HF、窒素酸素フッ化物(nitrogen oxygen fluoride)NOFおよび/または六フッ化三リン三窒素P3N3F6のうちの1つを含む。
【0041】
別の実施形態によれば、第2のガス成分は、時間的に、標的位置に対し粒子ビームを発する前および/または発した後に供給される。
【0042】
第2のガス成分は、例えばラインシステムを介して標的位置に渡される。この場合、第2のガス成分の供給に対する厳密な制御を有するために、ラインシステムにおける第2のガス成分の量または質量流量を設定する目的で、弁または類似の制御デバイスを提供することができる。例えば、標的位置が発せられたビームを受ける前に、第2のガス成分が、対応する弁を開くことによって供給される。次に、弁は閉じられ、粒子ビームが発せられる。弁から標的位置におけるノズルへのラインの長さに依拠して、弁が閉じた状態であっても、プロセス雰囲気内に依然として減少したガス流が存在する。更に、表面上に吸着したガス分子は、依然として、或る時間にわたって表面上に吸着されたままであり、このため、第2のガス成分がビームを発する間もはや供給されないにもかかわらず、プラスの効果が達成される。弁が閉じた後であっても、標的位置の領域内のプロセス雰囲気における第2のガス成分の分圧または化学量論的割合は、プラスの効果を達成するために或る特定の期間にわたって依然として十分高いと述べることもできる。
【0043】
別の実施形態によれば、第2のガス成分は、標的位置に対し粒子ビームを発している間に供給される。
【0044】
別の実施形態によれば、酸化剤および/または還元剤を含む第3のガス成分が更に供給される。
【0045】
第3のガス成分は、時間的に、標的位置に対し粒子ビームを発する前、発している間、および/または発した後に生じることができる。第3のガス成分は、時間的に第1および/もしくは第2のガス成分の供給の前、供給中および/もしくは供給後に、ならびに/または第1および/もしくは第2のガス成分に対し間欠的に供給することができる。この文脈における間欠的とは、それぞれの成分が交互に供給されることを意味する。
【0046】
酸化剤の例は、過酸化水素H2O2、一酸化二窒素N2Oである。還元剤の例は、酸化窒素NO、二酸化窒素NO2、硝酸HNO3、水素H2、アンモニアNH3および/またはメタンCH4である。酸化または還元されている他のそれぞれの成分の酸化または還元能力の強度に従って、酸化剤は還元剤として機能することもでき、還元剤は酸化剤として機能することもできることを指摘することができる。
【0047】
第3のガス成分によって、追加の反応経路を生成することによって、および/または平衡反応の化学的平衡に望ましい影響を及ぼすことによって、エッチングプロセスに対する更により効果的な制御を加えることが可能である。
【0048】
実施形態において、化学的不活性のバッファガスを供給することが更に可能であり、これは、空間的および時間的に実質的に均一なエッチング速度等のエッチングプロセスの安定化に特に寄与することができる。適切なバッファガスは、好ましくは、例えばアルゴン等の希ガスである。
【0049】
更なる実施形態によれば、第1のガス成分、第2のガス成分および/または第3のガス成分を供給することは、それぞれの成分の固相または液相を提供することと、それぞれの成分の固相または液相の温度を、固相または液相にわたってそれぞれの成分の義務付けられた蒸気圧が達されるように設定することと、それぞれのガス成分を、それぞれの供給ラインを介してプロセス雰囲気内に供給することと、
を含む。
【0050】
この実施形態は、それぞれの成分の個々のガス流の制御に関して特に有利である。例えば、供給される成分ごとに、別個の容器またはタンクが提供され、その中にそれぞれの固相または液相が格納される。各タンクは、タンク内容物の温度を設定するのに用いることができる専用の熱調整手段を有する。熱調整手段は、例えば、冷却または加熱のために用いることができるペルチェ素子等の電熱素子を含む。また、0℃をはるかに下回る温度を達成するために、冷却回路が設けられることも可能である。
【0051】
それぞれの成分の固相または液相の蒸気圧は、温度を介して非常に精密に制御することができる。プロセス雰囲気の低い圧力に起因して、それぞれのタンクからプロセス雰囲気内への圧力勾配が存在し、これにより、それぞれのガス成分が、タンクから供給ラインを介してプロセス雰囲気内に流れる。
【0052】
2つ以上のガス成分の別個のガス流は、例えば共通混合チャンバにおいて互いに混合される。共通混合チャンバは、それぞれの供給ラインの終点であり、ここから、プロセス雰囲気内に更なる供給ラインがつながり、このため、均一混合物が形成される。
【0053】
別の実施形態によれば、それぞれのガス成分の質量流量および/または体積流量は、それぞれの供給ラインのライン断面を設定することおよび/または閉鎖弁のデューティサイクルを制御することによって制御される。
【0054】
このようにして、ガス流量をより高い制御で制御し、ガス流における高速な変動を達成することが可能である。例えば、粒子ビームが発せられる前に、第1および第2のガス成分の第1のガス流比が選択される一方で、第2のガス流比はビームを発している間に選択され、第3のガス流比はビームを発した後に選択される。ここで、それぞれの持続時間は分の領域内にある。それぞれの成分の固相または液相の温度は、高速に変化することができない。なぜなら、熱伝導プロセス自体は、数分の領域内のタイムスケールで動作するためである。
【0055】
例えば、それぞれの供給ラインにおいて、それぞれのガス成分の質量流量および/または体積流量を制御するためのそれぞれの供給弁が存在し、それぞれの供給弁は、義務付けられたライン断面を設定するように構成される。
【0056】
代替的にまたは加えて、弁は、0~100の義務付けられたデューティサイクルまたはデューティファクタに従って閉位置と開位置との間で切り替えることができる。ここで、デューティサイクルは、供給弁の動作時間に対する供給弁の閉鎖時間の比を示し、ここで、0=常に開放、および100=常に閉鎖である。例えば、基本間隔として1秒を選択し、これは、可能な限り最短の開放または閉鎖時間が1秒であることを意味し、10のデューティサイクルは、供給弁が1秒間開き、次に10秒間閉じることを意味する。「チョッピング」とも呼ばれるこの方法は、特に、弁が閉じているときであっても、供給ラインの量がバッファの方式においてガス流を維持することに起因して、プロセス雰囲気内のそれぞれのガス成分の分圧における無視できる変動のみを結果的に生じる。
【0057】
別の実施形態によれば、粒子ビームは、荷電粒子、より具体的には電子からなる。
【0058】
電子の1つの利点は、ビームの下で、表面に対する損傷が非常に僅かであるかまたは全くないことである。なぜなら、これらは材料に深く貫入せず、単純に電流として流れることができるためである。更に、電子ビームは、10nmの領域における直径を有する、非常に小さな入射エリアに対し集束することができ、結果として、エッチングプロセスの分解能が特に高い。
【0059】
別の実施形態によれば、リソグラフィマスクは、EUVリソグラフィにおける使用のために具現化される。
【0060】
EUVリソグラフィマスクは、例えば、DUVリソグラフィ(DUV:深紫外、例えば作用光波長193nm)のためのリソグラフィマスク等の、透過的に利用することができるリソグラフィマスクと基本的に異なる構造を有する。DUVリソグラフィマスクは、例えば、透明石英基板と、例えば窒化シリコン等の、同様に透明であるが相に影響を及ぼす品質を有する構造化層とを特徴とする。EUVリソグラフィマスクの化学特性は、これとは基本的に異なる。なぜなら、材料の光学特性がEUV波長において基本的に異なるためである。
【0061】
例えば、EUVリソグラフィマスクは、例えば溶融シリカまたはシリコンからなることができる担体または基板によって基部が形成される層状構造を特徴とする。後の動作で作用光のビームを受ける側面上に、ブラッグミラーまたは多層膜ミラーが配設される。ブラッグミラーまたは多層膜ミラーは、作用光のそれぞれの波長に専用に具現化される。この構成において、作用光の波長に基づいて高い屈折率および低い屈折率を有し、作用光の波長の約半分の層厚を有する層が、互いに交互に配設される。作用光は、例えば13.5nmの波長を有する。その場合、適切なミラーは、例えば、(垂直入射の場合)ブラッグミラーの形態で各々が6.75nmの層厚を有するモリブデンおよびシリコンから構成される複数の二重薄板を含む多層膜ミラーである。多層膜ミラーは、化学気相蒸着(CVD)等の既知の堆積プロセスを用いて製造することができる。多層膜ミラーの上にはエッチング停止層が配設される。第1に、エッチング停止層は、多層膜ミラーが攻撃されないように、構造化された薄板を構造化するときに利用されるエッチング停止プロセスの機能を有する。第2に、エッチング停止層は、それ自体が多層膜ミラーの一部である。したがって、エッチング停止層は、特に、作用光に対し相応して適合される層厚を有する。エッチング停止層は、例えば、ルテニウムまたは別の貴金属からなる。エッチング停止層上の構造化層は、EUV放射線を吸収し、したがって、放射の空間的照明強度における変調をもたらす層である。
【0062】
EUVリソグラフィマスクの場合、表面均一性要件が特に厳しい。特に、サブナノメートル範囲の反射面の任意の粗さを制御する必要がある。なぜなら、そうでない場合、散乱損失が存在し、リソグラフィプロセスがそれに応じて損なわれるためである。
【0063】
別の実施形態によれば、リソグラフィマスクはエッチング停止層を有し、その表面側(facing side)は、リソグラフィプロセスにおいて用いられる放射線を吸収する材料から構成された、構造化された薄板を担持し、ここで、エッチング停止層に対する活性化された第1のガス成分のエッチング速度は、構造化された薄板に対するエッチング速度よりも、少なくとも2分の1、好ましくは5分の1、より好ましくは10分の1に下がる。
【0064】
特に、構造化された薄板は、例えば、窒化タンタルTaN、酸化タンタルTaO、酸窒化タンタルTaNO、窒化ホウ素タンタルTaBN等のタンタルの化合物を含む。しかしながら、ここで、リソグラフィプロセスにおける曝露に用いられる放射線を吸収する他の材料も同様に可能である。エッチング停止層は、特に、例えばルテニウム等の貴金属を含む。エッチングプロセスは、エッチング選択性を通じてより効果的に制御することができる。
【0065】
別の実施形態によれば、リソグラフィマスクは、複数の二重層から構成された多層膜ミラーとして具現化されたミラー層を有し、ここで、それぞれの二重層は、第1の化学組成から構成された第1の層と、第2の化学組成から構成された第2の層とを含み、第1の層および第2の層のそれぞれの層厚は、3~50nm、好ましくは3~20nm、より好ましくは5~10nm、非常に好ましくは5~8nm、更により好ましくは6~7nmの範囲にある。
【0066】
第1の化学組成および第2の化学組成の化学特性、特に屈折率は、リソグラフィプロセスにおいて用いられる放射線に関して異なる。
【0067】
多層膜ミラーは、例えば、50~100個の二重層、すなわち、100~200個の個々の層を含む。多層膜ミラーは、加えて、更なる中間層を有することができ、これは、例えば、多重層積層内の1つの層から隣接層内への原子の拡散を低減する効果を有する。そのような中間層は、好ましくは、光学的観点で実質的に知覚不可能な層厚、例えば、数個の原子層の厚みを有する。
【0068】
第1および第2の化学組成のそれぞれの組み合わせは、好ましくは、2つの化学組成の一部における屈折率コントラストに基づいて選択される。それぞれの層厚は、好ましくは、層の光学的に活性の厚みが、入射角を考慮に入れて、約半波長に対応するように選択される。例えば、中間層を補償するために、ここからの僅かな逸脱が存在し得る。
【0069】
別の実施形態によれば、粒子ビームは、1eV~100keV、好ましくは3eV~30keV、より好ましくは10eV~10keV、非常に好ましくは30eV~3keV、更により好ましくは100eV~1keVのエネルギーを有する。
【0070】
ビームエネルギーは、好ましくは、ビーム内の可能な限り多くの入射粒子が第1のガス成分の分子の活性化につながるように選択される。この目的では、非常に低減されたビームエネルギーが有利である。他方で、粒子ビームを介して電荷担体が供給される結果として生じ得るリソグラフィマスクの充電効果は、粒子ビームの分散およびこのため分解能の低減につながる場合がある。この効果を最小限にするためにより高いビームエネルギーが有利である。
【0071】
例えば、粒子ビームは、電子からなり、電子ビームは1~1000pA、好ましくは1~100pAの範囲、より好ましくは10~70pAの範囲、非常に好ましくは20~40pAの範囲の電流を有する。より高い電流は、より高い反応速度、このためエッチングプロセスの加速につながる場合があるが、より高い電流は、表面のより高い帯電にもつながる場合がある。
【0072】
第2の態様によれば、第1の態様による方法によって製造された、リソグラフィマスク、より具体的には非透過性EUVリソグラフィマスクが提案される。
【0073】
第3の態様によれば、リソグラフィマスク、より具体的には非透過性EUVリソグラフィマスクの粒子ビーム誘起エッチングのための装置が提案される。装置は、プロセス雰囲気の提供のためのハウジングと、リソグラフィマスク上の標的位置において粒子ビームを集束させて発するための手段とを備える。第1のガス成分をプロセス雰囲気内の標的位置に提供するための手段が更に提供され、ここで、第1のガス成分は、活性化によって反応性形態に変換することができ、ここで、反応性形態は、リソグラフィマスクの材料と反応して、揮発性化合物を形成する。第2のガス成分をプロセス雰囲気内の標的位置において提供するための手段が更に提供され、ここで第2のガス成分は、シリコンと、酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む。
【0074】
装置は、特に、標的位置において、粒子ビームを集束させて発するための手段を活性化し、第1のガス成分を標的位置において提供するための手段を活性化し、第2のガス成分を標的位置において提供するための手段を活性化するために、第1のガス成分および第2のガス成分が、時間的に、標的位置において粒子ビームを集束させて発する前に、および/または同時に提供されるように構成される、制御デバイスを備える。
【0075】
この装置は、好ましくは、第1の態様による方法に従って動作する。装置は、上記で説明した方法と同じ利点を有する。
【0076】
提案される方法について説明した実施形態および特徴は、提案される装置についても相応して有効であり、逆もまた同様である。
【0077】
例えば、装置は、試料ホルダ上に配設された試料に対し電子ビームを集束させて発するように構成された、真空ハウジング内に配設された電子カラムを備える。この装置は、例えば、変更された電子顕微鏡とすることができる。真空ハウジングは、有利にはプロセス雰囲気を提供し、提供される圧力は、例えば、10-5~10-8mBarの範囲内の圧力である。プロセス雰囲気における圧力は、空間および時間の変動を受ける場合がある。第1および第2のガス成分を提供するためのそれぞれの手段は、特に、大量のそれぞれの成分が保持される容器またはタンクを含む。それぞれの成分がガスの形態で格納される場合、手段は、好ましくは、数百バールの圧力下でガスを保持する高圧容器である。有利には、容器内には、それぞれの成分の液相または固相が提供され、成分の蒸気圧は、温度を介して制御される。この場合、個々のガス分子は、液相または固相から直接気相に蒸発または昇華する。それぞれの手段は、可能な限り標的位置に近いノズルにおいて終端する供給ラインを更に備える。このようにして、それぞれのガス成分は、リソグラフィマスク上の標的位置に非常に密接して標的を絞った方式で供給される。この供給ラインは、弁および/または他のプロセスエンジニアリングデバイスを含むことができる。
【0078】
制御デバイスは、特に、エッチングプロセス等の、装置を用いて実行されるプロセスの時間経過を制御するように構成される。例えば、制御デバイスは、電子顕微鏡を制御し、第1および第2のガス成分のための供給ラインにおける弁を制御する。制御デバイスは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアとして技術的に実装することができる。ハードウェアとして実装される場合、制御デバイスは、例えば、コンピュータまたはマイクロプロセッサとして具現化することができる。ソフトウェアとして実装される場合、制御デバイスは、コンピュータプログラム製品として、機能として、ルーチンとして、アルゴリズムとして、プログラムコードの一部として、または実行可能オブジェクトとして具現化することができる。
【0079】
「1つの」は、本事例において、必ずしも厳密に1つの要素に限定されるものとして理解されるべきでない。むしろ、例えば、2つ、3つまたはそれ以上等の複数の要素を提供することもできる。ここで用いられる任意の他の数も、要素の述べた数への厳密な制約が存在するという旨で理解されるべきでない。むしろ、特段の記載がない限り、上方および下方への数値のずれがあり得る。
【0080】
本発明の更なる可能な実施態様は、例示的な実施形態に関して上記または下記で説明される特徴または実施形態の明示的に言及されていない組み合わせも含む。この場合、当業者は、本発明のそれぞれの基本形態に対する改善または捕捉として、個々の態様も加える。
【0081】
本発明の更なる有利な構成および態様は、従属請求項の主題であり、以下に説明する本発明の例示的な実施形態の主題でもある。以下の文において、本発明は、添付の図面を参照して好ましい実施形態に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】粒子ビーム誘起処理動作を受けているリソグラフィマスクを通る断面を概略的に示す図である。
【
図2】リソグラフィマスクの粒子ビーム誘起エッチングのための装置の概略ブロック図である。
【
図3a】粒子ビーム誘起エッチングプロセスの前後のリソグラフィマスクの電子顕微鏡像を示す図である。
【
図3b】粒子ビーム誘起エッチングプロセスの前後のリソグラフィマスクの電子顕微鏡像を示す図である。
【
図4a】リソグラフィマスクに対する既知の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを示す図である。
【
図4b】リソグラフィマスクに対する既知の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを示す図である。
【
図4c】リソグラフィマスクに対する既知の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを示す図である。
【
図5a】既知のエッチングプロセスによるエッチングの前後のリソグラフィマスクの電子顕微鏡像のシーケンスを示す図である。
【
図5b】既知のエッチングプロセスによるエッチングの前後のリソグラフィマスクの電子顕微鏡像のシーケンスを示す図である。
【
図5c】既知のエッチングプロセスによるエッチングの前後のリソグラフィマスクの電子顕微鏡像のシーケンスを示す図である。
【
図6a】既知のエッチングプロセスによって生じる基板に対する損傷を示す図である。
【
図6b】既知のエッチングプロセスによって生じる基板に対する損傷を示す図である。
【
図6c】既知のエッチングプロセスによって生じる基板に対する損傷を示す図である。
【
図7a】リソグラフィマスクに対する本発明の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを示す図である。
【
図7b】リソグラフィマスクに対する本発明の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを示す図である。
【
図7c】リソグラフィマスクに対する本発明の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを示す図である。
【
図8a】本発明のエッチングプロセスを用いた作用を受けるリソグラフィマスクを示す図である。
【
図8b】本発明のエッチングプロセスを用いた作用を受けるリソグラフィマスクを示す図である。
【
図8c】本発明のエッチングプロセスを用いた作用を受けるリソグラフィマスクを示す図である。
【
図9】粒子ビーム誘起エッチングプロセスを用いてリソグラフィマスクに対し作用するための方法の概略ブロック図である。
【
図10】リソグラフィマスクの粒子ビーム誘起エッチングのための別の装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図面において、特に記載のない限り、同一の要素または同一の機能を持つ要素には同じ参照符号が付されている。また、図面における図は必ずしも縮尺通りではないことを理解されたい。
【0084】
図1は、粒子ビーム誘起処理動作を受けているリソグラフィマスク100を通る断面を概略的に示す。この動作は、より具体的には、材料がリソグラフィマスク100からアブレーションされる、局所的に誘起されたエッチングプロセスである。エッチングプロセスは、例えば、リソグラフィマスク100の表面上に沈殿した塵の粒子等の異物にも適用することができる(図示せず)。
【0085】
リソグラフィマスク100の示される例において、マスクは、例えば、反射性に基づいて動作する、EUVリソグラフィに適したマスクである。これは、動作時の作用光がリソグラフィマスク100に衝突し、同じ半空間内に反射して戻されることを意味する。ここで、EUVは、「極紫外線」を表し、0.1~30nmの作用光波長を表す。
【0086】
この例において、リソグラフィマスク100は層状構造を有し、ここで、基部は、例えば溶融石英からなることができる担体または基板102によって形成される。後に作用光を用いて動作時に照射される側面上に、多層膜ミラー104が配設される。多層膜ミラーは、ブラッグミラーとして、作用光のそれぞれの波長に専用に具現化される。この構成において、作用光の波長に基づいて高い屈折率および低い屈折率を有し、作用光の波長の約半分に、リソグラフィマスク100に対する作用光の入射角の正弦値を乗算した層厚を有する層が、互いに交互に配設される。作用光は、例えば13.5nmの波長を有する。その場合、90°の入射角に適した多層膜ミラーは、ブラッグミラーとして各々が6.75nmの層厚を有するモリブデンおよびシリコンの複数の二重薄板を含むミラー104である。光の入射が傾斜を有する場合、選択される層厚は、より小さくなくてはならない。多層膜ミラー104は、例えば、最大で100個のそのような二重薄板を含む。多層膜ミラー104は、化学気相蒸着(CVD)等の既知の堆積プロセスによって製造することができる。多層膜ミラー104の上にはエッチング停止層106が配設される。このエッチング停止層106の第1の機能は、構造化された薄板108の構造化において利用されるエッチングプロセスを停止し、多層膜ミラー104または基板102が攻撃されないようにすることである。更に、エッチング停止層106自体が多層膜ミラー104の一部であり、したがって多層膜ミラー104の第1の層を形成する。したがって、エッチング停止層106は、特に、作用光に対し相応して適合される層厚を有する。エッチング停止層106は、例えば、ルテニウムまたは別の貴金属からなる。
【0087】
この種の層構造は、例えば、EUV照射に対し、放射強度の約70%の反射率を達成する。リソグラフィに必要な照明強度の局所的変調を達成するために、構造化層108は、エッチング停止層106上に配設される。構造化層108は、例えば、窒化ホウ素タンタルTaBN、窒化タンタルTaN、酸化ホウ素タンタルTaBOおよび/または酸化タンタルTaOを含む。構造化層108を製造するために、例えば、まず、TaBNの層がエリア全体に施され、次に選択的にエッチングされる。TaBN層が残っている領域において、入射作用光は大幅に減衰される。反射ビーム束は、TaBN層を2回通過するため、入射強度の約10%未満がTaBN層の領域において反射される。
【0088】
リソグラフィマスク100の製造中、欠陥が生じる場合がある(例えば、
図3を参照)。強度変調リソグラフィマスクの場合、特に、透明な欠陥と不透明な欠陥との区別が行われる。透明な欠陥の結果は、低い強度のみのまたは強度がない位置における曝露時に、強度が過度に高くなることである。不透明な欠陥の結果は逆であり、換言すれば、それぞれの位置において、強度は存在しないか、所望の強度と比較して過度に低い。
【0089】
この例において、可能性のある誤差源は、特に、エッチング停止層106を含む多層膜ミラー104の構造における誤差であり、また、構造化層108の構造化中の誤差である。後者は、非常に標的を絞った方式で修復することができる。なぜなら、これらの欠陥は表面上にあり、したがって直接アクセス可能であるためである。この目的のための1つの適切な技法は、粒子ビーム誘起プロセスである。なぜなら、これらは標的を絞った局所的作用を可能にするためである。この文脈で企図される粒子は、イオン、電子および光子(レーザ等)を含む。特に有利なのは、電子ビームである。なぜなら、一方で、これらは非常に小さな標的点上に集束させることができ、他方で、これらは、例えばビームを受ける表面に対する構造的変化等の比較的非常に小さな損傷のみを引き起こすかまたは損傷を全く引き起こさないためである。この理由は、特に、電子が比較的低い貫入深度を有することを含む。対照的に、イオンは特に、材料により深く貫入し、ここで、イオンは場合によってはドーピングをもたらし、このため、材料の構造的変化をもたらし、可能性のある有害な結果を伴う。レーザビームは、電子ビームに比べて、非常に小さなエリア上に集束することができず、このため、空間的選択性、したがって作用プロセスの分解能がより低いという不利点を有する。この例における放射線は、電子ビーム110である。
【0090】
この例において、構造化層108のTaBN層の未除去部分の形態で不透明な欠陥112が存在する。欠陥112は、局所的に誘起されたエッチングプロセスを用いて除去される。この目的で必要とされるのは、第1に、活性化電子ビーム110(包括的に、粒子ビーム110)であり、第2に、活性化によって反応性形態に変換することができる第1のガス成分GK1である。
【0091】
集束した電子ビーム110は、特に、標的位置ZPにわたって走査される。標的位置ZPは、例えば5nm~2μmの範囲の広がりを有する。衝突点において、集束した粒子ビーム110は、好ましくは、1~50nmの範囲内の半値全幅で概ねガウス型のビームプロファイル(強度に基づく)を有する。集束は、有利には調整することができる。電子ビーム110は、各事例における義務付けされた滞留時間にわたって、衝突点のサイズを有する点を照射するように偏向される。ここで、「ピクセル」という用語を用いることも可能である。標的位置ZPは、例えば、電子ビーム110によって連続して照射されるピクセルに分割される。滞留時間は、例えば、数百ピコ秒からマイクロ秒までの範囲内にある。標的位置ZPおよびピクセルのサイズに依拠して、完全なパスのための定義されたサイクル時間が存在する。106個のピクセルおよび1000psの滞留時間の場合、サイクル時間は例えば1msとなる。エッチングプロセスにおいて、例えば、数百万個のサイクルが標準位置ZPに適用される。これは、電子ビーム110が標的位置ZP上を数百万回走査することを意味する。
【0092】
第1のガス成分GK1、例えばXeF2は、好ましくは、標的を絞った方式で標的位置ZPに供給される。この場合、個々のXeF2分子は、リソグラフィマスク100の表面上に吸着することができる。吸着状態において、吸着した分子と表面原子との間の相互作用は比較的強力である。活性化電子ビーム110の結果として、および/または標的点ZPにおいて電子ビーム110によってトリガされた二次プロセスの結果として、特に、近表面原子からの二次電子によって、第1のガス成分GK1の分子が活性化される。XeF2の例において、この分子は、例えば解離され、結果として得られるフッ素原子またはフッ素基が、TaBN層の表面原子に反応し、プロセス雰囲気ATMを介して揮発する揮発性ガス化合物を形成する。このようにして、材料が局所的にアブレーションされる。
【0093】
XeF2は比較的反応性の物質であるため、粒子ビーム110による活性化がなくても、或る程度まで、表面原子との自発的反応が存在し、これは制御されないエッチングにつながり得る。これは、第1のガス成分GK1(エッチングガス)と、自由表面の化学的性質との間で利用される組み合わせに大きく依拠する。エッチングプロセスに対しより効率的な制御を得るために、バッファ機能または不活性化機能を満たす様々な追加のガスを供給することが可能である。この文脈において既知であるのは、エッチングプロセスにおける、不活性化効果を有する水の使用である。しかしながら、水に伴う問題は、例えばルテニウムまたは別の貴金属からなるエッチング停止層106を攻撃する場合があることである。この例において第2のガス成分GK2として供給される水に対する代替は、テトラエチルオルトシリケート(Si(OC2H5)4、テトラエトキシシラン、以下に略してTEOSとも呼ばれる)。TEOSは、粒子ビーム誘起プロセスにおける既知の堆積ガスであり、例えば、酸化シリコンの層の局所的生成のために用いられる。第1に、TEOSは不活性化効果を有し、それによって、自発的エッチングプロセスは実質的に生じないか、または全く生じず、第2に、エッチング停止層106は攻撃されない。電子ビーム110への曝露下で、TEOSは、酸化シリコン、窒化シリコンおよび炭化シリコンを含む堆積物、ならびにまたこれらの化合物の混合相をもたらす場合がある。これは、エッチングプロセスの選択性または制御に寄与することができる。更に、酸化シリコン、窒化シリコンおよび炭化シリコンにより、EUV放射線の僅かな減衰しか生じず、このため、この事例において酸化シリコン、窒化シリコンおよび炭化シリコンにより形成される可能性がある薄層は無視することができる。
【0094】
本発明のエッチングプロセスにおいて、第1のおよび第2のガス成分GK1、GK2は、好ましくは、時間的に、標的位置ZPに電子ビーム110を発する前および/または発している間に標的位置ZPに供給される。したがって、プロセス雰囲気ATMの組成は、電子ビーム110が標的位置ZPに対し発せられている間、制御することができ、それによって、エッチングプロセスにおける第2のガス成分GK2の使用を通じて、上記および下記で説明される有利な効果が達成される。
【0095】
図2は、
図1からのリソグラフィマスク100、例えばEUVリソグラフィマスク100の粒子ビーム誘起エッチングのための装置200の概略ブロック図を示す。装置200は、ハウジング210内にプロセス雰囲気ATMを生成するために、真空ポンプ250によって、10
-2~10
-8mBarの範囲内の圧力まで排気されるハウジング210を有する。装置200は、集束した粒子ビーム110の提供のために、真空ハウジング210内に配設された手段220を有する。手段220はビーム準備ユニット222を有し、粒子ビーム110を望ましい方式で標的点ZPまで方向付ける1つまたは複数のビーム誘導および/またはビーム成形手段224、225も有する。ここで該当するデバイスは、例えば、集束した電子ビーム110を提供するように構成された電子カラム220である。ビーム誘導およびビーム成形要素224、225は、この場合、特にマルチポールとして具現化される。有利には、後方散乱電子および/または二次電子を検出し、したがって、リソグラフィマスク100の電子顕微鏡像を捕捉するように構成された検出器226が更に提供される。このようにして、in situでリソグラフィマスク100に対し作用する動作に従うことが可能である。
【0096】
装置200は、作用を受けるリソグラフィマスク100を保持および位置決めするための試料台202を有し、この試料台は、好ましくは、空間内で2つ、より好ましくは3つの方向で作動させることができる。更に、試料台202は、手段220に対し、より具体的には粒子ビーム110に対し可能な限り最大の精度でリソグラフィマスク100を位置合わせするために(図示せず)、傾斜可能および回転可能であるように取り付けることができる。試料台202は、有利には、振動を減衰させて取り付けられ、構造の残りの部分から機械的に分離される(図示せず)。
【0097】
ハウジング210の外側には、第1のガス成分GK1を提供するための手段230と、第2のガス成分GK2を提供するための手段240とが配設される。それぞれの手段230、240の実施形態は、好ましくは、それぞれのガス成分GK1、GK2の蒸気圧を設定するために、それぞれの成分の固相または液相の温度を制御するようになっている。このようにして、有利には、弁等を用いることなくそれぞれのプロセスについて最適化されたそれぞれのガス成分GK1、GK2のガス流を達成することが可能である。しかしながら、これは、弁等の追加の提供を排除するものではない。なぜなら、弁は有利には、ガス流の非常に高速な変更を可能にするためである。手段230、240の各々は、それぞれのノズル内に開いたハウジング210内への供給ライン232、242を有する。ノズルは、有利には標的点ZPに向けられ、それによって供給されるガスGK1、GK2は、標的点ZPにおいて、リソグラフィマスク100の表面と、標的を絞った方式で接触する。これによりプロセス制御が増大し、エッチングプロセスの効率も増大する。手段230、240に対し更に、プロセス雰囲気ATM内へのバッファガス、酸化または還元ガス等の、更なるガス成分を供給するための、同様の方式で具現化された更なる手段(図示せず)が提供される場合がある。
【0098】
また、標的点ZPの領域からの吸引下で、余分なガス、およびまた、特に、揮発性反応生成物を引き出すように構成された吸引回収ユニット260も示され、これは、例えば更なる真空ポンプ250を用いて行われる。これは、プロセス雰囲気ATMの組成がより効果的に制御されることを可能にし、特に、リソグラフィマスク100上の他の場所で反応性生成物が沈殿すること、または他の未知のプロセスが余分なガスにより生じることを防ぐ。
【0099】
図3aおよび
図3bは、粒子ビーム誘起エッチングプロセスの前後のリソグラフィマスク100の電子顕微鏡像を示す。ここで示す例は、並列構造を有するが、これは単なる例であり、何ら制限を課すものと解釈されるべきでない。他のリソグラフィマスクは、様々な他の幾何学的形状を有することができる。示されるリソグラフィマスク100は、特に、例えば
図1に示す層構造を有するEUVリソグラフィマスクである。
【0100】
図3aは、この点において意図されていない、吸収領域の形態の欠陥を有するリソグラフィマスク100を示す。白い破線を有するボックスは欠陥領域を強調する役割を果たす。EUVリソグラフィマスク100は、
図2の装置200を用いて、例えば提案される粒子ビーム誘起エッチングプロセスにかけられ、指定される標的位置ZP(
図1を参照)は、材料が除去されるリソグラフィマスク100の領域である。
【0101】
図3bは、エッチングプロセスが実行された後のEUVリソグラフィマスク100を示す。欠陥の除去に成功し、リソグラフィマスク100上のラインがここで互いに全て別個であることが明らかである。白色のボックスは、修復部位を強調する役割を果たす。ここで、リソグラフィマスク100は、意図される構造を有し、例えば、EUVリソグラフィプロセスにおいて用いることができる。
【0102】
図4a~
図4cは、リソグラフィマスク100に対する既知の粒子ビーム誘起エッチングプロセスを概略的に示す。既知のプロセスを用いると、以下で解明されるように、望ましくない副作用が存在する。
図4aは、リソグラフィマスク100がプロセス雰囲気ATM1内に配設された初期状況を示す。実質的に、例えば窒化タンタルTaN等の第1の材料108aからなる構造化層108がエッチングされている。層108の表面は、例えば、酸化タンタルTaOおよび/または酸窒化タンタルTaONを含む異なる材料108bからなる。この種の近表面層108bは、それ自体自発的に形成することができ、この場合、層108bは、数ナノメートルの厚みを有するか、または、この種の近表面層108bは、標的を絞った方式で堆積させることができ、この場合、例えば、層厚は任意に設定することができる。リソグラフィマスク100は、
図1に示すように更なる層を有することができるが、明確にするために、ここでは示されていない。エッチングプロセスは、例えば、
図2の装置200によって実行される。
【0103】
図4a~
図4cにおけるプロセスは、例えば、エッチングガスとしてXeF
2を含み、不活性化ガスとしてH
2Oを含むプロセス雰囲気ATM1を用いて実行される。この意図は、例えば、
図3aに示すように欠陥112を除去することである。ここで、欠陥112は破線によって境界を画される。それに応じて、標的位置ZPは欠陥112の領域内に配置される。
【0104】
図4bに示すように、エッチングプロセスは、粒子ビーム110によって標的を絞った方式で実行され、標的位置ZPにおける層108は基板101まで除去される。標的位置ZPは、例えばピクセルに分割され、1つのピクセルは層108上の集束した粒子ビーム110の衝突のエリアに対応し、粒子ビーム110は標的位置上をピクセルごとに走査する。各サイクルにおいて、層108の原子の複数の層がアブレーションされる。この場合、まず外側層108b、次に内側層108aが断面において曝露される。
【0105】
エッチングプロセス中、損傷DMG1、DMG2の望ましくない事例が存在する場合がある。このため、例えば、リソグラフィマスク100の基板101は、粗い表面DMG1によって表されるように、損傷を受ける場合がある。エッチング手順は、標的位置ZPの全てのピクセルにおいて常に厳密に同じ速度で行われるわけではないため、基板101が或る特定のピクセルにおいて既に曝露されているのに対し、他の場所ではアブレーションされるべき材料が残っているという状況が生じる。したがって、エッチングプロセスは継続され、これにより、基板101が既に開いている領域において、結果として粒子ビーム110によって、およびまた特に活性化した形態の攻撃性エッチングガスによって、および/またはプロセス雰囲気ATM1内の不活性化ガスとして存在する水によって、損傷DMG1の事例が生じる場合がある。
【0106】
更に、エッチング手順が進行するにつれ層108の側壁が曝露される、標的位置ZPの縁部において、損傷DMG2の更なる事例が存在する場合がある。この例は、層108の曝露された側壁を攻撃し、場合によっては側壁の劣化をもたらすエッチングプロセスである。
【0107】
示される標的位置ZPにおけるこのエッチングプロセスの終了後、エッチングプロセスは、例えばリソグラフィマスク100の別の位置において実行される(図示せず)。この手順中、プロセス雰囲気ATM1におけるガスは、曝露された層108aと直接接触し続ける。このシナリオにおいて、曝露した材料108aが攻撃される自発的反応が存在する場合がある。結果として、望ましくないエッチングプロセスが生じる場合があり、
図4cに示すように、表面層108bの過小エッチングの形態の更なる損傷DMG3につながる場合がある。したがって、制御なしで進行するこのプロセスは、標的を絞ったエッチングプロセスの妨げになる場合がある。損傷DMG3は、例えば、第1のガス成分GK1によって近表面層108bが攻撃されないか、または僅かにのみ攻撃されるのに対し、材料108aが大きく攻撃されるときに生じる。
【0108】
図5a~
図5cは、
図4a~
図4cを参照して説明したエッチングプロセスを用いた粒子ビーム誘起エッチングの前(
図5a)および後(
図5bおよび
図5c)のリソグラフィマスク100の電子顕微鏡像のシーケンスを示す。リソグラフィマスク100は、例えば、
図1に示すような構造を有する。
【0109】
基板106および構造化層108は、電子顕微鏡像において明確に見ることができる。
図5aは、破線のボックスの形態の標的位置ZPを示す。この場合、標的位置ZPは基板106上に位置する。
図1を参照して説明したように、集束した粒子ビーム110は、標的位置ZP上を走査する(
図1または
図2を参照)。
【0110】
図5bは、エッチングプロセス後の作用を受けた領域を示す。像は、600Vの電子ビームエネルギーを用いて捕捉された。このエネルギーを用いて、特に、トポロジー構造を捕捉することが可能である。粒子ビーム110を受ける領域において、僅かな退色が知覚可能である、これは、この領域において、基板表面が損傷を受けたことを示す。損傷領域は、破線DMG1によって強調される。更に、層108の縁部と
図5aとの比較により、これらの縁部が同様に損傷DMG2を呈し、もはやあまり先鋭に画定されていないことを示す。
【0111】
図5cは、作用を受けた領域の更なる像を示し、像はより高い電子ビームエネルギーで捕捉され、材料のコントラストを、特に見えるようになるように生じさせる。暗点DMG1は、これらの部位においてエッチング停止層106が完全にエッチング除去されたことを示す。また、これらの部位において、例えば多層膜ミラー104に対する更に深い損傷を排除することが可能でない(
図1を参照)。
【0112】
示す損傷DMG1、DMG2の事例は、例えば、リソグラフィプロセスにおけるEUV放射線の反射の低減につながり、結果としてマイクロ構造化された構成要素の生成において誤差が生じる可能性がある。すり減った縁部において、更なる放射が散乱し、これは、同様に曝露プロセスを損なう場合がある。
【0113】
図6a~
図6cは、例えば
図1に示すリソグラフィマスクと同じ構造を有するEUVリソグラフィマスク100上のエッチング停止層106に対し、既知のエッチングプロセスによって生じる更なる損傷を示す。この場合、例えば、用いられるエッチングプロセスは、エッチングガスとしてのXeF
2、不活性化ガスとしてのH
2O、およびバッファガスとしてのNO
2の供給を伴った。エッチングプロセスは、標的位置ZPの領域内に位置する窒化ホウ素タンタルTaBNのカラムを除去するのに用いられた。
【0114】
図6aは、リソグラフィマスク100の作用を受けた領域の電子顕微鏡像を示す。別個の照明は、標的位置ZPの領域内で見ることができ、損傷DMG1を示唆する。4つの位置マーカDCもはっきり見える。明確にするために、1つのみが参照符号をラベル付けされている。位置マーカDCの目的は、ビームを発するプロセス中に集束した粒子ビーム110(
図1または
図2を参照)を提供するために、リソグラフィマスク100と手段220(
図2を参照)との間の相対シフトを視覚化および補償することである。この場合、位置マーカDCは、エッチングプロセス中に定期的に走査され、この理由から、照明され、損傷を受けた領域もそれらの周りに見ることができる。
【0115】
図6bは、化学線放射を用いて捕捉されたリソグラフィマスク100の像を示す。
図6bは、例えば、リソグラフィマスク100を用いたリソグラフィプロセスにおいて試料に対して生じる反射放射の二次元強度分布を示す。光度の差は強度の差に対応する。反射強度は、エッチング停止層106の領域において約70%であり、構造化層108の領域において10%未満である。損傷を受けた領域DMG1は、同様に、明るくなっているとみなすことができる。損傷を受けた領域DMG1を通過する関心領域ROIが示される。
図6cにおいて、関心領域ROIの強度値が、位置の関数としてプロットされ、マーカ(「z」および「0」)は
図6bと一致する。
【0116】
図6cの図面は、関心領域ROIにおけるEUV放射の反射強度Rを、位置の関数として示す。位置「z」および「0」は
図6bに一致する。垂直軸は、強度Iを示し、これは、例えば最高値に対し正規化される。測定により、位置「z」において反射強度の最小値が存在することが示される。これは、エッチング停止層106に対する損傷が、EUV放射線の反射率の低下につながり、このためリソグラフィプロセスの劣化につながることを示す。
【0117】
図7a~
図7cは、
図4a~
図4cに類似して、エッチングプロセスを示しているが、ここではエッチングプロセスは本発明に従って実行される。結果として、
図4a~
図4cを参照して解明される望ましくないまたは制御されていない副作用が、実質的に抑制される。
【0118】
図7a~
図7cの例において、プロセス雰囲気ATMは、例えば、エッチングガスとしてXeF
2を含み、追加のガスとしてTEOSを含む。エッチングプロセスは、
図4bの例の場合のように、および
図7bに示すように、標的を絞った方式で進行する。しかしながら、
図4bと対照的に、プロセス雰囲気ATMにおけるTEOSの存在は、実質的に例えば酸化シリコンまたは二酸化シリコンからなる不活性化層109の形成につながる。この不活性化層109は、例えば、プロセス雰囲気ATMからの第2のガス成分GK2の堆積によって、および/または第2のガス成分GK2の分子の、曝露された材料108aとの化学反応によって生成することができる。不活性化層109は、基板101およびまた層108aの曝露された表面が封止または不活性化され、このため、
図3bを参照して説明した種類の損傷が生じないか、または僅かにしか生じないという有利な効果を有する。層109も、活性化されたエッチングプロセスによってアブレーションすることができることに留意することができる。したがって、有利には、層109の高い層厚は形成されない。プロセスは、特に、標的位置ZPの領域におけるプロセス雰囲気ATMの組成を決定する、ガス供給の制御によって制御される。
【0119】
したがって、不活性化層109は、基板101に対する損傷が低減されるかまたは完全に抑制されるという利点を有する。更に、同様にリソグラフィマスク100の品質を制限する場合がある自発的エッチング反応が阻止される。したがって、非常に標的が絞られ、明快なエッチングが可能である。
【0120】
特に、統合された層109が形成されず、代わりに、第2のガス成分GK2の複数の原子のみがプロセス雰囲気ATMからエッチングプロセスによってアブレーションされた表面上に堆積され、および/または表面層からの原子と反応する場合があり得る。したがって、層の形成が回避される。
【0121】
図8a~
図8cは、本発明のエッチングプロセスを用いた作用を受けるリソグラフィマスク100を示す。リソグラフィマスク100は、
図1を参照して解明した層構造を有する。上側には、部分的に構造化層108、および部分的にエッチング停止層106が見える。リソグラフィマスク100はエッチングプロセスを受け、エッチングプロセスにおいて、供給された第1のガス成分GK1(
図1または
図2を参照)はXeF
2であり、供給された第2のガス成分(
図1または
図2を参照)はTEOSであった。更なる追加のガスは用いられなかった。ガス流は、成分のそれぞれの液相または固相の温度を介して制御され、XeF
2はこの例において-20℃の温度に保持され、TEOSは-33℃の温度に保持された。第1のガス成分GK1を活性化するために、集束された電子ビーム110(
図2を参照)が用いられた。エッチングプロセスは、曝露されたエッチング停止層106上の2つの隣接した矩形標的位置ZP上で実行された。
【0122】
ここで、
図8aは、600Vの電子エネルギーを用いて捕捉されたリソグラフィマスク100の作用を受けた領域の電子顕微鏡像を示し、これは、表面構造が容易に明らかであることを意味する。2つの標的位置ZPの領域において、非常に僅かな明るさが知覚可能であり、表面構造に対する、例えば表面の粗さ変更が僅かであることを示唆する。
【0123】
図8bは、より高い電子エネルギーを用いて捕捉され、材料の鮮明なコントラストを生じる、リソグラフィマスク100の作用を受けた領域の電子顕微鏡像を示す。この像において、
図5cに見られるように、堆積物がエッチング停止層106上に形成された場合、またはエッチング停止層106がエッチング除去された場合、これが明らかとなる。
図8bは、本質的に堆積物が形成されなかったこと、およびまた、エッチング停止層106がエッチングプロセス中に実質的に攻撃を受けなかったことを示す。
【0124】
図8cは、反射強度を示す、化学線放射を用いて取得されたリソグラフィマスク100の像を示す。反射強度は、エッチング停止層106の領域において約70%であり、構造化層108の領域において10%未満である。標的位置ZPの領域において、エッチング停止層106の残りの放射されていない表面と比較して、非常に僅かな逸脱のみを見ることができる。
【0125】
この場合、損傷につながる(
図5a~
図5c、および
図6a~
図6cを参照)従来のプロセスと比較して、エッチング停止層106は損傷を受けない。
【0126】
図9は、粒子ビーム誘起エッチングプロセスを用いてリソグラフィマスク100(
図1~
図8を参照)に対し作用するための方法の概略ブロック図を示す。第1のステップS1において、リソグラフィマスク100はプロセス雰囲気ATM(
図1、
図2および
図7を参照)内に設けられる。例えば、リソグラフィマスク100は装置200の試料台202上に配置され、ハウジング210は、10
-6-10
-8mBarの圧力まで排気される。第2のステップS2において、リソグラフィマスク100上の標的位置ZP(
図1~
図8を参照)上に、集束した粒子ビーム110(
図1または
図2を参照)が発せられる。第3のステップS3において、第1のガス成分GK1(
図1または
図2を参照)がプロセス雰囲気ATM内の標的位置ZPに供給される。第1のガス成分GK1は、活性化によって反応性形態に変換することができ、反応性形態は、揮発性化合物を形成するようにリソグラフィマスク100の材料と反応する。第1のガス成分GK1は、特に、粒子ビーム110によっておよび/または粒子ビーム110によりトリガされた二次効果によって活性化される。第4のステップS4において、少なくとも1つの第2のガス成分GK2(
図1または
図2を参照)がプロセス雰囲気ATM内の標的位置ZPに供給される。所定のプロセス条件下で、粒子ビーム110への曝露時に、第2のガス成分GK2は、シリコンと酸素、窒素および/または炭素との化合物を含む堆積物を形成する。エッチングプロセスにおけるプロセス条件は、好ましくは、堆積物が形成されないか、または非常に僅かな堆積物のみが形成されるように選択される。
【0127】
方法において、第3のステップS3および第4のステップS4は、特に、第2のステップS2の時間的に前に、および/または第2のステップS2と同時に実行される。
【0128】
図10は、リソグラフィマスク100の粒子ビーム誘起エッチングのための装置200の別の実施形態の概略ブロック図を示す。
図10の装置200は、
図2を参照して解明した装置200の全ての特徴を有し、この理由から、これらの特徴はここで再び解明されない。装置200は、特に、
図9を参照して解明した方法によって動作する。
【0129】
加えて、
図10における装置200は制御デバイス270を有する。制御デバイス270は、例えば、装置200を制御するための制御コンピュータの一部として具現化される。制御デバイス270は、標的位置ZPにおいて粒子ビーム110を集束させて発するための手段220を作動させ、標的位置ZPにおいて第1のガス成分GK1を提供するための手段230を作動させ、標的位置ZPにおいて第2のガス成分GK2の提供のための手段240を作動させるように構成される。この配置において、制御デバイス270は、第1のガス成分GK1および第2のガス成分GK2が、時間的に、標的位置ZPにおいて粒子ビーム110を集束させて発する前に、および/またはこれと同時に提供されるように、手段230および手段240を作動させる。
【0130】
それぞれの手段を作動させる制御デバイス270の概念は、例えば、制御デバイス270がそれぞれの手段に、より具体的にはそれぞれの手段のコントローラに制御コマンドを送信することを意味するように理解され、この制御コマンドは、本方法におけるそれぞれの時点に意図されるそれぞれの手段の設定を含む。制御コマンドは、有線で送信することができるか、またはそうでない場合、例えば光送信セクションを介して無線で送信することができる。
【0131】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて説明されたが、様々な方式で変更可能である。
【符号の説明】
【0132】
100 リソグラフィマスク
101 基板
102 基板
104 多層膜ミラー
106 エッチング停止層
108 構造化層
108a 層
108b 層
109 層
110 粒子ビーム
112 欠陥
200 装置
202 試料台
210 ハウジング
220 手段
222 ビーム準備ユニット
224 ビーム誘導手段
225 ビーム成形手段
226 検出器
230 手段
240 手段
250 真空ポンプ
260 吸引回収ユニット
270 制御デバイス
ATM プロセス雰囲気
ATM1 プロセス雰囲気
DC 位置マーカ
DMG1 損傷
DMG2 損傷
DMG3 損傷
GK1 ガス成分
GK2 ガス成分
I 強度
POS 位置
R 反射強度
ROI 関心領域
S1 方法ステップ
S2 方法ステップ
S3 方法ステップ
S4 方法ステップ
z 位置
ZP 標的点