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特許7579427ガスレーザ装置、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】ガスレーザ装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/104 20060101AFI20241030BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20241030BHJP
   H01S 3/134 20060101ALI20241030BHJP
   H01S 3/23 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
H01S3/104
H01S3/10 D
H01S3/134
H01S3/23
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023508349
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012707
(87)【国際公開番号】W WO2022201467
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】石田 啓介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-078372(JP,A)
【文献】特表2015-523739(JP,A)
【文献】特開2006-080279(JP,A)
【文献】国際公開第2016/142995(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/098985(WO,A1)
【文献】特開2003-318831(JP,A)
【文献】特表2008-515230(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0157760(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び前記光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、
前記レーザ側共振器を透過する前記光を増幅する増幅部及び前記増幅部で増幅される前記光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって反射される前記光を検出する光センサと、
前記光センサの出力に基づいて前記電圧を制御するプロセッサと、
を備え、
前記増幅側共振器は、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を透過し、前記レーザ側共振器からの前記光の他の一部を前記レーザ側共振器に向かって反射し、前記増幅部で増幅される前記光の一部を前記レーザ側共振器に向かって透過し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を反射するリアミラーと、
前記増幅部で増幅される前記光の一部を反射し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、
を含み、
前記レーザ側共振器は、
前記レーザガスから発生する前記光を反射するグレーティングと、
前記レーザガスから発生する前記光の一部を反射し、前記レーザガスから発生する前記光の他の一部を前記ビームスプリッタに向けて透過し、前記リアミラーからの前記光の一部を前記ビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、
を含み、
前記プロセッサは、前記電圧が前記電圧の閾値を下回る場合に、前記電圧を前記閾値以上の一定値に維持する
ガスレーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
前記一定値は、前記閾値よりも大きい値である。
【請求項3】
請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
前記一定値は、前記閾値と同じ値である。
【請求項4】
請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記電圧の移動平均値が前記閾値を下回る場合に、前記電圧を前記一定値に維持する。
【請求項5】
請求項1に記載のガスレーザ装置であって、
前記一定値への前記電圧の維持の開始を通知する表示部をさらに備える。
【請求項6】
請求項5に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサには、前記光センサから前記光のパルス数を示す信号が入力され、
前記プロセッサは、前記通知の開始以降における前記パルス数の積算値が前記積算値の閾値である積算閾値よりも大きい場合に、前記電圧の印加を停止する。
【請求項7】
請求項6に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記積算値が前記積算閾値よりも大きい場合に、前記増幅側出力結合ミラーからの前記光が入射する露光装置にエラーを示す信号を出力する。
【請求項8】
互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び前記光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、
前記レーザ側共振器を透過する前記光を増幅する増幅部及び前記増幅部で増幅される前記光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって反射される前記光を検出する光センサと、
前記光センサの出力に基づいて前記電圧を制御するプロセッサと、
を備え、
前記増幅側共振器は、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を透過し、前記レーザ側共振器からの前記光の他の一部を前記レーザ側共振器に向かって反射し、前記増幅部で増幅される前記光の一部を前記レーザ側共振器に向かって透過し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を反射するリアミラーと、
前記増幅部で増幅される前記光の一部を反射し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、
を含み、
前記レーザ側共振器は、
前記レーザガスから発生する前記光を反射するグレーティングと、
前記レーザガスから発生する前記光の一部を反射し、前記レーザガスから発生する前記光の他の一部を前記ビームスプリッタに向けて透過し、前記リアミラーからの前記光の一部を前記ビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、
を含み、
前記プロセッサは、前記電圧が前記電圧の閾値を下回る場合に、前記電圧を前記閾値よりも大きい所定値に上げる
ガスレーザ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記電圧の移動平均値が前記閾値を下回る場合に、前記電圧を前記所定値に上げる。
【請求項10】
請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
前記所定値への前記電圧の上げの開始を通知する表示部をさらに備える。
【請求項11】
請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記所定値に上げた前記電圧が前記閾値を下回る場合に、前記電圧を前記所定値に再び上げる。
【請求項12】
請求項11に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記電圧が前記閾値を下回る度に前記光のパルスエネルギーの目標値を上げ、前記目標値が前記目標値の閾値である目標閾値よりも大きい場合に、前記電圧の印加を停止する。
【請求項13】
請求項12に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記目標値が前記目標閾値よりも大きい場合に、前記増幅側出力結合ミラーからの前記光が入射する露光装置にエラーを示す信号を出力する。
【請求項14】
請求項8に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記所定値に上がった後における前記電圧の移動平均値が前記閾値を下回る場合に、前記電圧の印加を停止する。
【請求項15】
請求項14に記載のガスレーザ装置であって、
前記プロセッサは、前記移動平均値が前記閾値を下回る場合に、前記増幅側出力結合ミラーからの前記光が入射する露光装置にエラーを示す信号を出力する。
【請求項16】
電子デバイスの製造方法であって、
互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び前記光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、
前記レーザ側共振器を透過する前記光を増幅する増幅部及び前記増幅部で増幅される前記光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって反射される前記光を検出する光センサと、
前記光センサの出力に基づいて前記電圧を制御するプロセッサと、
を備え、
前記増幅側共振器は、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を透過し、前記レーザ側共振器からの前記光の他の一部を前記レーザ側共振器に向かって反射し、前記増幅部で増幅される前記光の一部を前記レーザ側共振器に向かって透過し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を反射するリアミラーと、
前記増幅部で増幅される前記光の一部を反射し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、
を含み、
前記レーザ側共振器は、
前記レーザガスから発生する前記光を反射するグレーティングと、
前記レーザガスから発生する前記光の一部を反射し、前記レーザガスから発生する前記光の他の一部を前記ビームスプリッタに向けて透過し、前記リアミラーからの前記光の一部を前記ビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、
を含み、
前記プロセッサは、前記電圧が前記電圧の閾値を下回る場合に、前記電圧を前記閾値以上の一定値に維持するガスレーザ装置によってレーザ光を生成し、
前記レーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記レーザ光を露光すること
を含む電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
電子デバイスの製造方法であって、
互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び前記光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、
前記レーザ側共振器を透過する前記光を増幅する増幅部及び前記増幅部で増幅される前記光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって反射される前記光を検出する光センサと、
前記光センサの出力に基づいて前記電圧を制御するプロセッサと、
を備え、
前記増幅側共振器は、
前記レーザ側共振器からの前記光の一部を透過し、前記レーザ側共振器からの前記光の他の一部を前記レーザ側共振器に向かって反射し、前記増幅部で増幅される前記光の一部を前記レーザ側共振器に向かって透過し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を反射するリアミラーと、
前記増幅部で増幅される前記光の一部を反射し、前記増幅部で増幅される前記光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、
を含み、
前記レーザ側共振器は、
前記レーザガスから発生する前記光を反射するグレーティングと、
前記レーザガスから発生する前記光の一部を反射し、前記レーザガスから発生する前記光の他の一部を前記ビームスプリッタに向けて透過し、前記リアミラーからの前記光の一部を前記ビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、
を含み、
前記プロセッサは、前記電圧が前記電圧の閾値を下回る場合に、前記電圧を前記閾値よりも大きい所定値に上げるガスレーザ装置によってレーザ光を生成し、
前記レーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記レーザ光を露光すること
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスレーザ装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体露光装置においては、半導体集積回路の微細化及び高集積化につれて、解像力の向上が要請されている。このため、露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。例えば、露光用のガスレーザ装置としては、波長約248.0nmのレーザ光を出力するKrFエキシマレーザ装置、ならびに波長約193.4nmのレーザ光を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられる。
【0003】
KrFエキシマレーザ装置及びArFエキシマレーザ装置の自然発振光のスペクトル線幅は、350pm~400pmと広い。そのため、KrF及びArFレーザ光のような紫外線を透過する材料で投影レンズを構成すると、色収差が発生してしまう場合がある。その結果、解像力が低下し得る。そこで、ガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を、色収差が無視できる程度となるまで狭帯域化する必要がある。そのため、ガスレーザ装置のレーザ共振器内には、スペクトル線幅を狭帯域化するために、狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を含む狭帯域化モジュール(Line Narrow Module:LNM)が備えられる場合がある。以下では、スペクトル線幅が狭帯域化されるガスレーザ装置を狭帯域化ガスレーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4364757号公報
【文献】特許第5513653号公報
【文献】米国特許第7382816号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様によるガスレーザ装置は、互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、レーザ側共振器を透過する光を増幅する増幅部及び増幅部で増幅される光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、レーザ側共振器からの光の一部を反射するビームスプリッタと、ビームスプリッタによって反射される光を検出する光センサと、光センサの出力に基づいて電圧を制御するプロセッサと、を備え、増幅側共振器は、レーザ側共振器からの光の一部を透過し、レーザ側共振器からの光の他の一部をレーザ側共振器に向かって反射し、増幅部で増幅される光の一部をレーザ側共振器に向かって透過し、増幅部で増幅される光の他の一部を反射するリアミラーと、増幅部で増幅される光の一部を反射し、増幅部で増幅される光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、を含み、レーザ側共振器は、レーザガスから発生する光を反射するグレーティングと、レーザガスから発生する光の一部を反射し、レーザガスから発生する光の他の一部をビームスプリッタに向けて透過し、リアミラーからの光の一部をビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、を含み、プロセッサは、電圧が電圧の閾値を下回る場合に、電圧を閾値以上の一定値に維持してもよい。
【0006】
本開示の一態様によるガスレーザ装置は、互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、レーザ側共振器を透過する光を増幅する増幅部及び増幅部で増幅される光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、レーザ側共振器からの光の一部を反射するビームスプリッタと、ビームスプリッタによって反射される光を検出する光センサと、光センサの出力に基づいて電圧を制御するプロセッサと、を備え、増幅側共振器は、レーザ側共振器からの光の一部を透過し、レーザ側共振器からの光の他の一部をレーザ側共振器に向かって反射し、増幅部で増幅される光の一部をレーザ側共振器に向かって透過し、増幅部で増幅される光の他の一部を反射するリアミラーと、増幅部で増幅される光の一部を反射し、増幅部で増幅される光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、を含み、レーザ側共振器は、レーザガスから発生する光を反射するグレーティングと、レーザガスから発生する光の一部を反射し、レーザガスから発生する光の他の一部をビームスプリッタに向けて透過し、リアミラーからの光の一部をビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、を含み、プロセッサは、電圧が電圧の閾値を下回る場合に、電圧を閾値よりも大きい所定値に上げてもよい。
【0007】
本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、レーザ側共振器を透過する光を増幅する増幅部及び増幅部で増幅される光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、レーザ側共振器からの光の一部を反射するビームスプリッタと、ビームスプリッタによって反射される光を検出する光センサと、光センサの出力に基づいて電圧を制御するプロセッサと、を備え、増幅側共振器は、レーザ側共振器からの光の一部を透過し、レーザ側共振器からの光の他の一部をレーザ側共振器に向かって反射し、増幅部で増幅される光の一部をレーザ側共振器に向かって透過し、増幅部で増幅される光の他の一部を反射するリアミラーと、増幅部で増幅される光の一部を反射し、増幅部で増幅される光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、を含み、レーザ側共振器は、レーザガスから発生する光を反射するグレーティングと、レーザガスから発生する光の一部を反射し、レーザガスから発生する光の他の一部をビームスプリッタに向けて透過し、リアミラーからの光の一部をビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、を含み、プロセッサは、電圧が電圧の閾値を下回る場合に、電圧を閾値以上の一定値に維持するガスレーザ装置によってレーザ光を生成し、レーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にレーザ光を露光してもよい。
【0008】
本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、互いに対向して配置され電圧の印加によってレーザガスから光を発生する一対の放電電極及び光が共振するレーザ側共振器を含むレーザ発振器と、レーザ側共振器を透過する光を増幅する増幅部及び増幅部で増幅される光が共振する増幅側共振器を含む増幅器と、レーザ側共振器からの光の一部を反射するビームスプリッタと、ビームスプリッタによって反射される光を検出する光センサと、光センサの出力に基づいて電圧を制御するプロセッサと、を備え、増幅側共振器は、レーザ側共振器からの光の一部を透過し、レーザ側共振器からの光の他の一部をレーザ側共振器に向かって反射し、増幅部で増幅される光の一部をレーザ側共振器に向かって透過し、増幅部で増幅される光の他の一部を反射するリアミラーと、増幅部で増幅される光の一部を反射し、増幅部で増幅される光の他の一部を透過する増幅側出力結合ミラーと、を含み、レーザ側共振器は、レーザガスから発生する光を反射するグレーティングと、レーザガスから発生する光の一部を反射し、レーザガスから発生する光の他の一部をビームスプリッタに向けて透過し、リアミラーからの光の一部をビームスプリッタに向けて反射するレーザ側出力結合ミラーと、を含み、プロセッサは、電圧が電圧の閾値を下回る場合に、電圧を閾値よりも大きい所定値に上げるガスレーザ装置によってレーザ光を生成し、レーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にレーザ光を露光してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2図2は、比較例のガスレーザ装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3図3は、比較例のプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
図4図4は、図3に示すMO発振制御処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図5図5は、図3に示すPO発振制御処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図6図6は、図3に示すMOエネルギー制御処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図7図7は、図3に示すPOエネルギー制御処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図8図8は、比較例におけるレーザ発振器のパルスパワーモジュールの電圧と電圧が変化する時刻との関係を示す図である。
図9図9は、実施形態1におけるレーザ発振器のパルスパワーモジュールの電圧と電圧が変化する時刻との関係を示す図である。
図10図10は、実施形態1のプロセッサの制御フローチャートの一例を示す図である。
図11図11は、図10に示すMO発振制御処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図12図12は、図10に示す縮退制御モード移行処理の引き上げ制御モードにおけるプロセッサの制御フローチャートである。
図13図13は、図10に示す縮退制御モード移行処理の据え置き制御モードにおけるプロセッサの制御フローチャートである。
図14図14は、図10に示す縮退制御モード終了判定処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図15図15は、実施形態2におけるレーザ発振器のパルスパワーモジュールの電圧と電圧が変化する時刻との関係を示す図である。
図16図16は、実施形態2の発振制御処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図17図17は、実施形態2の縮退制御モード移行処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図18図18は、実施形態2の縮退制御モード終了判定処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図19図19は、実施形態3におけるレーザ発振器のパルスパワーモジュールの電圧と電圧が変化する時刻との関係を示す図である。
図20図20は、実施形態3の縮退制御モード移行処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
図21図21は、実施形態3の縮退制御モード終了判定処理におけるプロセッサの制御フローチャートである。
【実施形態】
【0010】
1.電子デバイスの露光工程で使用される電子デバイスの製造装置の説明
2.比較例のガスレーザ装置の説明
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.実施形態1のガスレーザ装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 作用・効果
4.実施形態2のガスレーザ装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態3のガスレーザ装置の説明
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.電子デバイスの露光工程で使用される電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイスの露光工程で使用される電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。図1に示すように、露光工程で使用される製造装置は、ガスレーザ装置100及び露光装置200を含む。露光装置200は、複数のミラー211,212,213を含む照明光学系210と、投影光学系220とを含む。照明光学系210は、ガスレーザ装置100から入射するレーザ光によって、レチクルステージRTのレチクルパターンを照明する。投影光学系220は、レチクルを透過するレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置される不図示のワークピースに結像させる。ワークピースは、フォトレジストが塗布される半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映するレーザ光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスである半導体デバイスを製造することができる。
【0013】
2.比較例のガスレーザ装置の説明
2.1 構成
比較例のガスレーザ装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0014】
図2は、本例のガスレーザ装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。ガスレーザ装置100は、例えば、アルゴン(Ar)、フッ素(F)、及びネオン(Ne)を含む混合ガスを使用するArFエキシマレーザ装置である。この場合、ガスレーザ装置100は、中心波長が約193.4nmのパルスレーザ光を出力する。ガスレーザ装置100は、ArFエキシマレーザ装置以外のガスレーザ装置であってもよく、例えば、クリプトン(Kr)、F、及びNeを含む混合ガスを使用するKrFエキシマレーザ装置であってもよい。この場合、ガスレーザ装置100は、中心波長が約248.0nmのパルスレーザ光を出射する。レーザ媒質であるAr、F、及びNeを含む混合ガスやレーザ媒質であるKr、F、及びNeを含む混合ガスは、レーザガスと呼ばれる場合がある。
【0015】
本例のガスレーザ装置100は、筐体110と、マスターオシレータであるレーザ発振器130と、光伝送ユニット141と、発振側の第1検出部である検出部151と、パワーオシレータである増幅器160と、光伝送ユニット143と、増幅側の第2検出部である検出部153と、表示部180と、プロセッサ190と、を主な構成として含む。レーザ発振器130と、光伝送ユニット141,143と、検出部151,153と、増幅器160と、表示部180と、プロセッサ190とは、筐体110の内部空間に配置される。
【0016】
レーザ発振器130は、チャンバ装置CHと、充電器41と、パルスパワーモジュール43と、狭帯域化モジュール60と、レーザ側出力結合ミラーである出力結合ミラー70と、を主な構成として含む。
【0017】
図2においては、レーザ光の進行方向に略垂直な方向からみたチャンバ装置CHの内部構成が示されている。チャンバ装置CHは、筐体30と、一対のウインドウ31a,31bと、一対の電極32a,32bと、絶縁部33と、フィードスルー34と、電極ホルダ部36と、を主な構成として備える。
【0018】
筐体30は、不図示のレーザガス供給装置から不図示の配管を介して筐体30の内部空間に上記のレーザガスを供給され、内部空間においてレーザガスを封入する。内部空間は、レーザガスの励起によって光が発生する空間である。
【0019】
ウインドウ31a及びウインドウ31bは、筐体30における互いに対向する位置に設けられている。ウインドウ31aはガスレーザ装置100から露光装置200へのレーザ光の進行方向におけるフロント側に位置し、ウインドウ31bは当該進行方向におけるリア側に位置している。ウインドウ31a,31bは、レーザ光のP偏光の反射が抑制されるように、レーザ光の進行方向に対してブリュースター角をなすように傾けられている。ウインドウ31aは筐体30のフロント側の壁面の孔に配置され、ウインドウ31bは筐体30のリア側の壁面の孔に配置される。
【0020】
電極32a,32bの長手方向はレーザ光の進行方向に沿っており、電極32a,32bは筐体30の内部空間において互いに対向して配置されている。筐体30における電極32aと電極32bとの間の空間は、ウインドウ31aとウインドウ31bとにより挟まれている。電極32a,32bは、グロー放電によりレーザ媒質を励起するための放電電極である。本例では、電極32aがカソードであり、電極32bがアノードである。
【0021】
電極32aは、絶縁部33によって支持されている。絶縁部33は、筐体30に連続する開口を塞いでいる。絶縁部33は、絶縁体を含む。絶縁体には、例えば、Fガスとの反応性が低いアルミナセラミックスを挙げることができる。また、絶縁部33には、導電部材からなるフィードスルー34が配置されている。フィードスルー34は、パルスパワーモジュール43から供給される電圧を電極32aに印加する。電極32bは、電極ホルダ部36に支持されていると共に、電極ホルダ部36に電気的に接続されている。
【0022】
充電器41は、パルスパワーモジュール43の中に設けられる不図示のコンデンサを所定の電圧で充電する直流電源装置である。充電器41は、筐体30の外部に配置されており、パルスパワーモジュール43に接続されている。パルスパワーモジュール43は、プロセッサ190によって制御される不図示のスイッチを含む。スイッチがプロセッサ190の制御によってOFFからONになると、パルスパワーモジュール43は、充電器41から印加される電圧を昇圧してパルス状の高電圧を生成し、この高電圧を電極32a,32bに印加する。高電圧が印加されると、電極32aと電極32bとの間の絶縁が破壊され、放電が起こる。この放電のエネルギーにより、筐体30内のレーザガスが励起されて高エネルギー準位に移行する。励起されるレーザガスが、その後低エネルギー準位に移行するとき、そのエネルギー準位差に応じた光を放出する。放出される光は、ウインドウ31a,31bを透過して筐体30の外部に出射する。
【0023】
狭帯域化モジュール60は、プリズム61と、グレーティング63と、不図示の回転ステージと、筐体65とを含む。プリズム61と、グレーティング63と、回転ステージとは、筐体65の内部空間に配置される。筐体65には開口が連続しており、筐体65は開口を介して筐体30のリア側に接続されている。
【0024】
プリズム61は、ウインドウ31bから出射する光のビーム幅を拡大させて、当該光をグレーティング63に入射させる。また、プリズム61は、グレーティング63からの反射光のビーム幅を縮小させると共に、その光を、ウインドウ31bを介して、筐体30の内部空間に戻す。プリズム61は、回転ステージに支持されており、回転ステージによって回転する。プリズム61の回転により、グレーティング63に対する光の入射角が変更される。従って、プリズム61を回転させることにより、グレーティング63からプリズム61を介して筐体30に戻る光の波長を選択することができる。図2では、1つのプリズム61が配置されている例を示しているが、プリズムは少なくとも1つ配置されていればよい。
【0025】
グレーティング63の表面は高反射率の材料によって構成され、表面に多数の溝が所定間隔で設けられている。グレーティング63は、分散光学素子である。各溝の断面形状は、例えば、直角三角形である。プリズム61からグレーティング63に入射する光は、これらの溝によって反射されると共に、光の波長に応じた方向に回折させられる。グレーティング63は、プリズム61からグレーティング63に入射する光の入射角と、所望波長の回折光の回折角とが一致するようにリトロー配置されている。これにより、所望の波長付近の光がプリズム61を介して筐体30に戻される。
【0026】
出力結合ミラー70は、ウインドウ31aと対向している。出力結合ミラー70には、部分反射膜がコートされている。出力結合ミラー70は、ウインドウ31aを介して筐体30から出射するレーザ光のうちの一部を透過させて、他の一部を反射させてウインドウ31aを介して筐体30の内部空間に戻す。例えば、出力結合ミラー70の反射率は、概ね40%から60%であってもよい。出力結合ミラー70は、例えば、フッ化カルシウムの基板に誘電体多層膜が成膜される素子で構成される。また、出力結合ミラー70は、筐体30のフロント側に接続されている光路管70aの内部空間に不図示のダンパを介して固定される。
【0027】
筐体30を挟んで設けられるグレーティング63と出力結合ミラー70とで、上記のレーザガスから放出される光が共振するレーザ側共振器が構成される。筐体30はレーザ側共振器の光路上に配置されており、筐体30から出射する光はグレーティング63と出力結合ミラー70との間を往復する。往復する光は、電極32aと電極32bとの間のレーザゲイン空間を通過する度に増幅される。増幅される光の一部は、パルスレーザ光として出力結合ミラー70を透過する。
【0028】
光伝送ユニット141は、筐体141aと、高反射ミラー141b,141cとを主な構成として含む。筐体141aのうちの光路管70aとの接続部は開口しており、この開口を通じて筐体141aは光路管70aと連通している。また、筐体141aのうちの後述する光路管171aとの接続部は開口しており、この開口を通じて筐体141aは光路管171aと連通している。高反射ミラー141b,141cは、それぞれの傾き角度が調整された状態で、筐体141aの内部空間に配置されている。高反射ミラー141b,141cの構成として、例えば、合成石英やフッ化カルシウムで形成された透明基板の表面に、パルスレーザ光を高反射する反射膜がコートされている。高反射ミラー141b,141cは、出力結合ミラー70からのパルスレーザ光の光路上に配置される。当該パルスレーザ光は、高反射ミラー141b,141cで反射して、増幅器160のリアミラー171に進行する。このレーザ光の少なくとも一部は、リアミラー171を透過する。
【0029】
検出部151は、筐体151aと、ビームスプリッタ151bと、光センサ151cとを主な構成として含む。筐体151aには開口が連続しており、筐体151aの開口の縁が筐体141aに連続する開口を囲むように接続されている。このため、筐体151aは、この開口を通じて筐体141aと連通している。
【0030】
ビームスプリッタ151bは、筐体141aの内部空間において高反射ミラー141bと高反射ミラー141cとの間においてパルスレーザ光の光路上に配置される。また、ビームスプリッタ151bは、筐体151aの内部空間と連続する筐体141aの開口に隣り合うように配置される。ビームスプリッタ151bは、レーザ発振器130の出力結合ミラー70側から進行して高反射ミラー141bによって反射するパルスレーザ光の一部を光センサ151cの受光面に向けて反射する。また、ビームスプリッタ151bは、当該パルスレーザ光の他の一部を高い透過率で高反射ミラー141cに透過させる。
【0031】
光センサ151cは、筐体151aの内部空間に配置される。光センサ151cは、光センサ151cの受光面に入射するパルスレーザ光のパルスエネルギーを計測する。光センサ151cは、プロセッサ190に電気的に接続されており、計測するパルスエネルギーを示す信号をプロセッサ190に出力する。プロセッサ190は、当該信号を基にレーザ発振器130の電極32a,32bの電圧を制御する。
【0032】
増幅器160は、レーザ発振器130から出力されたパルスレーザ光のエネルギーを増幅する増幅器である。増幅器160の基本的な構成は、レーザ発振器130と同様であり、チャンバ装置CH、充電器41、及びパルスパワーモジュール43を備えている。増幅器160の電極32a,32bは、レーザ発振器130からのパルスレーザ光を増幅する増幅部である。
【0033】
また、増幅器160は、増幅器160の電極32a,32bで増幅されるパルスレーザ光が共振するファブリペロー型の共振器を備えている。当該共振器は、増幅側出力結合ミラーである出力結合ミラー170とリアミラー171とで構成される。リアミラー171は増幅器160のウインドウ31b及び高反射ミラー141cの間に設けられ、出力結合ミラー170は増幅器160のウインドウ31a及び光伝送ユニット143の高反射ミラー143bの間に設けられる。例えば、出力結合ミラー170の反射率は概ね10%から30%であり、リアミラー171の反射率は概ね50%から90%である。リアミラー171は、レーザ発振器130からのパルスレーザ光の一部を電極32a,32bに向かって透過させ、電極32a,32bで増幅されるパルスレーザ光の一部を電極32a,32bの間の空間に向けて反射する。また、出力結合ミラー170は、電極32a,32bで増幅されるパルスレーザ光の一部を電極32a,32bの間の空間に向けて反射し、当該パルスレーザ光の他の一部を透過させる。リアミラー171は、光路管171aの内部空間に配置されている。光路管171aは、増幅器160のウインドウ31bを囲うように、増幅器160の筐体30に接続されている。出力結合ミラー170は、光路管170aの内部空間に配置されている。光路管170aは、増幅器160のウインドウ31aを囲うように、増幅器160の筐体30に接続されている。
【0034】
光伝送ユニット143は、筐体143aと、高反射ミラー143b,143cとを主な構成として含む。筐体143aのうちの光路管170aとの接続部は開口しており、この開口を通じて筐体143aは光路管170aと連通している。また、筐体143aのうちの後述する筐体153aとの接続部は開口しており、この開口を通じて筐体143aは筐体153aと連通している。高反射ミラー143b,143cは、それぞれの傾き角度が調整された状態で、筐体143aの内部空間に配置されている。高反射ミラー143b,143cの構成は、高反射ミラー141b,141cの構成と同じである。出力結合ミラー170を透過するレーザ光は、高反射ミラー143b,143cで反射して、検出部153に進行する。
【0035】
検出部153は、筐体153aと、ビームスプリッタ153bと、光センサ153cとを主な構成として含む。筐体153aには開口が連続し、この開口を囲むように筐体143aが接続されている。このため、筐体153aは、この開口を通じて筐体143aと連通している。筐体153aの内部空間には、ビームスプリッタ153b、及び光センサ153cが配置されている。
【0036】
ビームスプリッタ153bは、出力結合ミラー170を透過するパルスレーザ光の光路上に配置される。ビームスプリッタ153bは、出力結合ミラー170を透過するパルスレーザ光を高い透過率で出射ウインドウ173に透過させると共に、パルスレーザ光の一部を光センサ153cの受光面に向けて反射する。
【0037】
光センサ153cは、光センサ153cの受光面に入射するパルスレーザ光のパルスエネルギーを計測する。光センサ153cは、プロセッサ190に電気的に接続されており、計測するパルスエネルギーを示す信号をプロセッサ190に出力する。プロセッサ190は、当該信号を基に増幅器160の電極32a,32bの電圧を制御する。
【0038】
検出部153のうちの筐体153aにおける筐体143aが接続される側と反対側には、開口が連続しており、この開口を囲むように光路管173aが接続されている。このため、筐体153aと光路管173aとは、互いに連通している。また、光路管173aは、筐体110に接続されている。筐体110における光路管173aに囲まれる位置には、出射ウインドウ173が設けられている。検出部153のビームスプリッタ153bを透過する光は、出射ウインドウ173から筐体110の外部の露光装置200に出射する。
【0039】
光路管70a,170a,171aや、筐体30,141a,143a,151a,153aの内部空間には、パージガスが充填されている。パージガスには、酸素等の不純物の少ない高純度窒素等の不活性ガスが含まれる。パージガスは、筐体110の外に配置されている不図示のパージガス供給源から、不図示の配管を通じて光路管70a,170a,171aや、筐体30,141a,143a,151a,153aの内部空間に供給される。
【0040】
表示部180は、プロセッサ190からの信号を基にプロセッサ190による制御の状態を表示するモニタである。
【0041】
本開示のプロセッサ190は、制御プログラムが記憶される記憶装置と、制御プログラムを実行するCPUとを含む処理装置である。プロセッサ190は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。また、プロセッサ190は、ガスレーザ装置100全体を制御する。また、プロセッサ190は、露光装置200の不図示の露光プロセッサに電気的に接続されており、露光プロセッサとの間で各種信号を送受信する。
【0042】
2.2 動作
次に、比較例のガスレーザ装置100のプロセッサ190の動作について説明する。
【0043】
図3は、比較例のプロセッサ190の制御フローチャートの一例を示す図である。図3に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP11~ステップSP15を含む。図3に示す開始の状態では、プロセッサ190は、露光装置200の露光プロセッサからレーザ発振器130及び増幅器160の発振指示信号を受信している。
【0044】
(ステップSP11)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130の後述する発振制御処理に移行する。以下では、当該処理をMO発振制御処理と呼ぶ場合がある。MO発振制御処理が終了すると、プロセッサ190は、制御フローをステップSP12に進める。
【0045】
(ステップSP12)
本ステップでは、プロセッサ190は、増幅器160の後述する発振制御処理に移行する。以下では、当該処理をPO発振制御処理と呼ぶ場合がある。PO発振制御処理が終了すると、プロセッサ190は、制御フローをステップSP13に進める。なお、プロセッサ190は、制御フローをステップSP12,SP11の順で進めてもよいし、ステップSP11及びステップSP12を同時に進めてもよい。
【0046】
(ステップSP13)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130の後述するエネルギー制御処理に移行する。以下では、当該処理をMOエネルギー制御処理と呼ぶ場合がある。MOエネルギー制御処理が終了すると、プロセッサ190は、制御フローをステップSP14に進める。
【0047】
(ステップSP14)
本ステップでは、プロセッサ190は、増幅器160の後述するエネルギー制御処理に移行する。以下では、当該処理をPOエネルギー制御処理と呼ぶ場合がある。POエネルギー制御処理が終了すると、プロセッサ190は、制御フローをステップSP15に進める。なお、プロセッサ190は、ステップSP13及びステップSP14を同時に進めてもよい。
【0048】
(ステップSP15)
本ステップでは、プロセッサ190は、露光装置200の露光プロセッサから次の発振指示信号が入力される場合には制御フローをステップSP13に戻す。また、プロセッサ190は、露光プロセッサから次の発振指示信号が入力されていない場合には、電圧の印加が停止するようにレーザ発振器130及び増幅器160を制御し、制御フローを終了する。次の発振指示信号とは、開始の状態で受信した発振指示信号の次の信号である。
【0049】
図4は、ステップSP11のMO発振制御処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図4に示すように当該制御フローチャートは、ステップSP21~ステップSP23を含む。
【0050】
(ステップSP21)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130から出射するパルスレーザ光のパルスエネルギーの初期値EMO0を設定する。当該光を以下において、MO注入光と呼ぶ場合がある。プロセッサ190は、初期値EMO0を設定すると、制御フローをステップSP22に進める。
【0051】
(ステップSP22)
本ステップでは、プロセッサ190は、パルスエネルギーが初期値EMO0であるMO注入光がレーザ発振器130から出射するように、レーザ発振器130の電極32a,32bに印加される電圧VMOの初期値VMO0を設定する。プロセッサ190は、初期値VMO0を設定すると、制御フローをステップSP23に進める。
【0052】
(ステップSP23)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130の電極32a,32bに印加される電圧VMOの目標値VMOtを初期値VMO0に設定する。プロセッサ190は、目標値VMOtを設定すると、MO発振制御処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP12に進める。
【0053】
図5は、ステップSP12のPO発振制御処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図5に示すように当該制御フローチャートは、ステップSP31~ステップSP33を含む。PO発振制御処理は、MO発振制御処理のステップSP21における初期値EMO0、ステップSP22における初期値VMO0、及びステップSP23における目標値VMOtのそれぞれの設定を、増幅器160側でも設定する処理である。各ステップを以下において簡単に説明する。
【0054】
(ステップSP31,SP32,SP33)
ステップSP31では、プロセッサ190は、増幅器160から出射するパルスレーザ光のパルスエネルギーの初期値EPO0を設定する。当該光を以下において、増幅レーザ光と呼ぶ場合がある。ステップSP32では、プロセッサ190は、パルスエネルギーが初期値EPO0である増幅レーザ光が増幅器160から出射するように、増幅器160の電極32a,32bに印加される電圧VPOの初期値VPO0を設定する。ステップSP33では、プロセッサ190は、増幅器160の電極32a,32bに印加される電圧VPOの目標値VPOtを初期値VPO0に設定する。
【0055】
プロセッサ190は、目標値VPOtを設定すると、PO発振制御処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP13に進める。
【0056】
図6は、ステップSP13のMOエネルギー制御処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図6に示すように当該制御フローチャートは、ステップSP41~ステップSP49を含む。
【0057】
(ステップSP41)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130から出射するMO注入光のパルスエネルギーの目標値EMOtを設定する。プロセッサ190は、目標値EMOtを設定すると、制御フローをステップSP42に進める。
【0058】
(ステップSP42)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130のパルスパワーモジュール43におけるスイッチをONにする。スイッチがONとなると、プロセッサ190は、パルスエネルギーが目標値EMOtであるMO注入光がレーザ発振器130から出射するように、パルスパワーモジュール43を制御する。具体的には、プロセッサ190は、ステップSP23で設定した目標値VMOtで電圧VMOが電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。目標値VMOtは、目標値EMOtを基に設定される値である。プロセッサ190は、目標値VMOtとなっている電圧VMOが印加されると、制御フローをステップSP43に進める。
【0059】
目標値VMOtとなっている電圧VMOが印加されると、電極32aと電極32bとの間の絶縁が破壊され放電が起こる。この放電のエネルギーにより、電極32aと電極32bとの間のレーザガスに含まれるレーザ媒質は励起状態とされて、基底状態に戻る際に自然放出光を放出する。この光の一部は、紫外線であり、ウインドウ31bを透過する。透過した光は、プリズム61を透過すると光の進行方向に拡大される。また、光は、プリズム61を透過すると波長分散され、グレーティング63に導かれる。光は所定の角度でグレーティング63に入射して回折し、所定波長の光が入射角度と同じ反射角度でグレーティング63で反射される。グレーティング63で反射された光は、プリズム61を介して、再びウインドウ31bから筐体30の内部空間に伝搬する。筐体30の内部空間に伝搬する光は、狭帯域化されている。この狭帯域化された光により、励起状態のレーザ媒質は誘導放出を起こし、光が増幅される。光は、ウインドウ31aを透過して、出力結合ミラー70に進行する。光の一部は出力結合ミラー70を透過して、光の残りの一部は出力結合ミラー70によって反射されてウインドウ31aを透過して筐体30の内部空間に伝搬する。筐体30の内部空間に伝搬した光は、上記したようにウインドウ31b及びプリズム61を透過してグレーティング63に進行する。こうして、所定の波長の光がグレーティング63と出力結合ミラー70との間を往復する。光は筐体30の内部空間における放電空間を通過するたびに増幅され、レーザ発振が起こる。そして、レーザ光の一部は、パルスレーザ光であるMO注入光として筐体30から出射して出力結合ミラー70を透過して、高反射ミラー141bによって反射されてビームスプリッタ151bに進行する。
【0060】
ビームスプリッタ151bに進行したMO注入光のうちの一部は、ビームスプリッタ151bを透過して高反射ミラー141cによって反射されてリアミラー171に進行する。リアミラー171に進行するMO注入光の上記一部は、リアミラー171及び増幅器160のウインドウ31bを透過して筐体30の内部に進行する。また、ビームスプリッタ151bに進行したMO注入光のうちの他の一部は、ビームスプリッタ151bによって反射されて光センサ151cに進行する。
【0061】
光センサ151cは、MO注入光を含むパルスレーザ光のパルスエネルギーの実測値EMOを計測する。光センサ151cは、実測値EMOを示す信号をプロセッサ190に出力する。
【0062】
(ステップSP43)
本ステップでは、プロセッサ190は、光センサ151cからの信号によって実測値EMOを取得する。プロセッサ190は、実測値EMOを取得すると、制御フローをステップSP44に進める。
【0063】
(ステップSP44)
本ステップでは、プロセッサ190は、パルスエネルギーの目標値EMOtと実測値EMOとの差である制御量ΔEMOを算出する。プロセッサ190は、制御量ΔEMOを算出すると、制御フローをステップSP45に進める。
【0064】
(ステップSP45)
本ステップでは、プロセッサ190は、制御量ΔEMOを基に電圧VMOの制御量ΔVMOを算出する。プロセッサ190は、制御量ΔVMOを算出すると、制御フローをステップSP46に進める。
【0065】
(ステップSP46)
本ステップでは、実測値EMOが目標値EMOtよりも小さければ、プロセッサ190は制御フローをステップSP47に進める。実測値EMOが目標値EMOtと同じであれば、プロセッサ190は制御フローをステップSP48に進める。また、実測値EMOが目標値EMOtよりも大きければ、プロセッサ190は制御フローをステップSP49に進める。
【0066】
(ステップSP47,SP48,SP49)
ステップSP47では、プロセッサ190は、電圧VMOの新たな目標値VMOtをステップSP23における目標値VMOtに制御量ΔVMOを加算した値に設定する。ステップSP48では、プロセッサ190は、電圧VMOの新たな目標値VMOtをステップSP23における目標値VMOtに設定する。ステップSP49では、プロセッサ190は、電圧VMOの新たな目標値VMOtをステップSP23における目標値VMOtから制御量ΔVMOを減算した値に設定する。
【0067】
プロセッサ190は、ステップSP47,SP48,SP49において新たな目標値VMOtを設定すると、MOエネルギー制御処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進める。ここで、制御フローがステップSP14,SP15,SP13,SP14の順で進む場合について説明する。この場合、プロセッサ190は、ステップSP47,SP48,SP49において設定した新たな目標値VMOtで電圧VMOがステップSP42において電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。従って、プロセッサ190は、実測値EMOを基に、電極32a,32bに印加される電圧VMOを制御している。
【0068】
図7は、ステップSP14のPOエネルギー制御処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図7に示すように当該制御フローチャートは、ステップSP51~ステップSP59を含む。POエネルギー制御処理は、MOエネルギー制御処理のステップSP41~ステップSP49における制御を、増幅器160側でも制御する処理である。POエネルギー制御処理の開始の状態では、高反射ミラー141cによって反射されるMO注入光であるパルスレーザ光の一部は、リアミラー171及びウインドウ31bを透過して、増幅器160の筐体30の内部空間に進行している。
【0069】
(ステップSP51)
本ステップでは、プロセッサ190は、増幅器160から出射する増幅レーザ光のパルスエネルギーの目標値EPOtを設定する。
【0070】
(ステップSP52)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130からのMO注入光が増幅器160の筐体30内の放電空間に進行したときに放電が生じるようにパルスパワーモジュール43におけるスイッチをONにする。スイッチがONとなると、プロセッサ190は、パルスエネルギーが目標値EPOtである増幅レーザ光がレーザ発振器130から出射するように、パルスパワーモジュール43を制御する。具体的には、プロセッサ190は、ステップSP33における目標値VPOtで電圧VPOが電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。目標値VPOtは、目標値EPOtを基に設定される値である。
【0071】
目標値VPOtとなっている電圧VPOが印加されると、増幅器160に入射するMO注入光は、増幅器160において増幅発振する。また、増幅器160の筐体30の内部空間に伝搬したMO注入光は、上記したようにウインドウ31a,31bを透過してリアミラー171及び出力結合ミラー170に進行する。こうして、所定の波長の光がリアミラー171と出力結合ミラー70との間を往復する。光は筐体30の内部空間における放電空間を通過するたびに増幅され、レーザ発振が起こり、光の一部は増幅レーザ光となる。
【0072】
また、増幅器160からの増幅レーザ光の上記一部は、出力結合ミラー170を透過して、高反射ミラー143b,143cによって反射されてビームスプリッタ153bに進行する。
【0073】
ビームスプリッタ153bに進行する増幅レーザ光のうちの一部はビームスプリッタ153b及び出射ウインドウ173を透過して露光装置200に進行し、他の一部はビームスプリッタ153bによって反射されて光センサ153cに進行する。
【0074】
光センサ153cは、増幅レーザ光のパルスエネルギーの実測値EPOを計測する。光センサ153cは、実測値EPOを示す信号をプロセッサ190に出力する。
【0075】
(ステップSP53,SP54,SP55)
ステップSP53では、プロセッサ190は、光センサ153cからの信号によって実測値EPOを取得する。ステップSP54では、プロセッサ190は、パルスエネルギーの目標値EPOtと実測値EPOとの差である制御量ΔEPOを算出する。ステップSP55では、プロセッサ190は、制御量ΔEPOを基に電圧VMOの制御量ΔVPOを算出する。
【0076】
(ステップSP56)
本ステップでは、実測値EPOが目標値EPOtよりも小さければ、プロセッサ190は制御フローをステップSP57に進める。実測値EPOが目標値EPOtと同じであれば、プロセッサ190は制御フローをステップSP58に進める。また、実測値EPOが目標値EPOtよりも大きければ、プロセッサ190は制御フローをステップSP59に進める。
【0077】
(ステップSP57,SP58,SP59)
ステップSP57では、プロセッサ190は、電圧VPOの新たな目標値VPOtをステップSP33における目標値VPOtに制御量ΔVPOを加算した値に設定する。ステップSP58では、プロセッサ190は、電圧VPOの新たな目標値VPOtをステップSP33における目標値VPOtに設定する。ステップSP59では、プロセッサ190は、電圧VPOの新たな目標値VPOtをステップSP33における目標値VPOtから制御量ΔVPOを減算した値に設定する。
【0078】
プロセッサ190は、ステップSP57,SP58,SP59において新たな目標値VPOtを設定すると、POエネルギー制御処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP15に進める。ここで、制御フローがステップSP15,SP13,SP14の順で進む場合について説明する。この場合、プロセッサ190は、ステップSP57,SP58,SP59において設定した新たな目標値VPOtで電圧VPOがステップSP52において電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。従って、プロセッサ190は、実測値EPOを基に、電極32a,32bに印加される電圧VPOを制御している。
【0079】
2.3 課題
比較例のガスレーザ装置100は、レーザ発振器130から出射する光を増幅器160で増幅して露光装置200に出射するMOPA型のレーザ装置である。このようなガスレーザ装置100では、増幅器160から露光装置200に進行する増幅レーザ光のパルスエネルギーの実測値EPOが所定範囲に収まるように、レーザ発振器130及び増幅器160のそれぞれが独立して制御される。以下では、このような制御を露光量一定制御モードと呼ぶ場合がある。
【0080】
また、レーザ発振器130では、MO注入光のパルスエネルギーの実測値EMOが所定範囲に収まるように、電圧VMOの目標値VMOtが制御される。また、増幅器160においても、増幅レーザ光のパルスエネルギーの実測値EPOが所定範囲に収まるように、電圧VPOの目標値VPOtが制御される。以下では、このような制御を出力変動制御モードと呼ぶ場合がある。
【0081】
ところで、露光量一定制御モードを出力変動制御モードで実現する場合に以下の課題が生じてしまう。
【0082】
レーザ発振器130からリアミラー171に進行するMO注入光の一部は、リアミラー171によって反射される。この光を、MO戻り光と呼ぶ場合がある。また、増幅器160で増幅される増幅レーザ光の一部は、リアミラー171を透過する。この光を、PO抜け光と呼ぶ場合がある。MO戻り光及びPO抜け光であるリアミラー171からの光は、高反射ミラー141cによって反射され、ビームスプリッタ151bを透過し、高反射ミラー141bによって反射されて、出力結合ミラー70に進行する。出力結合ミラー70に進行する光の一部は、出力結合ミラー70及びレーザ発振器130のウインドウ31bを透過して筐体30の内部に進行する。筐体30の内部に進行した光は、上記したように出力結合ミラー70とグレーティング63との間を往復し、再び出力結合ミラー70を透過し、高反射ミラー141bによって反射されて再びビームスプリッタ151bに進行する。また、出力結合ミラー70に進行する光の他の一部は、出力結合ミラー70によって反射され、上記したように高反射ミラー141bによって反射されて再びビームスプリッタ151bに進行する。再びビームスプリッタ151bに進行する光の一部は、ビームスプリッタ151bによって反射されて再び光センサ151cに進行する。また、再びビームスプリッタ151bに進行する光の他の一部はビームスプリッタ151bを透過して、高反射ミラー141cを介して再びリアミラー171に進行する。当該光の一部はリアミラー171を透過し再び出力結合ミラー170に進行し、他の一部はリアミラー171によって反射されて再び出力結合ミラー70に戻る。
【0083】
増幅レーザ光のパルスエネルギーの実測値EPOが目標値EPOtよりも低下すると、プロセッサ190は、当該パルスエネルギーが上昇するように、増幅器160におけるパルスパワーモジュール43の電圧VPOに制御量ΔVPOを加算する。これにより、PO抜け光のパルスエネルギーが上昇してしまう。
【0084】
上記したようにPO抜け光は、ビームスプリッタ151bによって反射されて光センサ151cに進行する。PO抜け光が光センサ151cに進行すると、光センサ151cに進行するMO注入光及びMO戻り光と共に、光センサ151cは、PO抜け光、MO注入光、及びMO戻り光を含むパルスレーザ光のパルスエネルギーの実測値EMOを計測する。この実測値EMOは、電圧VPOに制御量ΔVPOが加算される前の実測値EMOよりも上昇してしまう。実測値EMOが上昇すると、実測値EMOが目標値EMOtよりも大きくなってしまう場合がある。この場合、プロセッサ190は、MO注入光のパルスエネルギーが減少するように、レーザ発振器130のパルスパワーモジュール43の電圧VMOの目標値VMOtから制御量ΔVMOを減算する。
【0085】
上記のプロセッサ190の動作の概念を図8に示しており、図8は比較例におけるレーザ発振器130のパルスパワーモジュール43の電圧VMOと電圧VMOが変化する時刻との関係を示す図である。図8に示す実線L1は、目標値VMOtの変化の様子を示す。電圧VMOの閾値VMOthminiは、初期値VMO0の概ね70%である。上記の動作が繰り返されると、目標値VMOtは初期値VMO0から制御量ΔVMOで徐々に小さくなり、これによりレーザ発振器130から出射するMO注入光の光量が徐々に少なくなる。目標値VMOtが電圧VMOの閾値VMOthminiよりもさらに小さくなると、MO注入光の光量が不安定化し、狭帯域化モジュール60による波長制御や線幅制御が不安定化する。また、MO注入光の光量が不安定化すると、増幅レーザ光のパルスエネルギーも不安定化する。上記の不安定化により露光装置200から要求される性能を増幅レーザ光が満たさなくなり、ガスレーザ装置100の信頼性が低下するという懸念が生じる。
【0086】
そこで、以下の実施形態では、ガスレーザ装置100の信頼性の低下が抑制され得るチャンバ装置CHが例示される。
【0087】
3.実施形態1のガスレーザ装置の説明
次に、実施形態のガスレーザ装置100について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0088】
3.1 構成
本実施形態のガスレーザ装置100の構成は、比較例のガスレーザ装置100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
3.2 動作
図9は、本実施形態におけるレーザ発振器130のパルスパワーモジュール43の電圧VMOと電圧VMOが変化する時刻との関係を示す図である。図9に示す実線L2は、目標値VMOtの変化の様子を示す。図9では、本実施形態と比較例とを比較するため、図8において実線L1で示した目標値VMOtの変化を一点鎖線L1として示している。
【0090】
電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthよりも小さくなる場合、プロセッサ190が電圧VMOの制御モードを縮退制御モードに移行する点で、本実施形態の動作は、比較例の動作とは異なる。閾値VMOthは、閾値VMOthminiよりも大きく初期値VMO0よりも小さい値であり、予め設定されてプロセッサ190の記憶装置に記憶されている。閾値VMOthは、ガスレーザ装置100の信頼性が低下した状態で稼働しないよう閾値VMOthminiよりも大きい値に設定される。また、閾値VMOthは、初期値VMO0の70%を超え80%の範囲の値に設定されてもよい。縮退制御モードとは、ガスレーザ装置100の寿命を犠牲にして寿命を想定よりも短くさせてでも、或いはガスレーザ装置100から出射するパルスレーザ光の安定性を低下させてでも、露光装置200の稼働を継続させる制御モードである。本実施形態の縮退制御モードでは、プロセッサ190は、目標値VMOtが閾値VMOthよりも小さくなる場合、光センサ151cによって計測されるパルスレーザ光のパルスエネルギーの実測値EMOの大きさに関わらず、目標値VMOtを一定値に維持する。一定値は、閾値VMOth以上の値である。縮退制御モードには、引き上げ制御モードと据え置き制御モードとのいずれかが挙げられる。引き上げ制御モードでは、プロセッサ190は、目標値VMOtを閾値VMOthよりも加算量ΔVMOαだけ大きい一定値である電圧VMOαに引き上げると共に電圧VMOαに維持する。また、据え置き制御モードでは、プロセッサ190は、目標値VMOtを一定値である閾値VMOthに維持する。縮退制御モードにおいて、引き上げ制御モードと据え置き制御モードとのどちらが行われるかが予め設定されている。縮退制御モードでは、プロセッサ190は、増幅器160とは独立してレーザ発振器130を制御する。縮退制御モードにおいても、露光装置200は所定期間駆動する。
【0091】
図10は、本実施形態のプロセッサ190の制御フローチャートの一例を示す図である。図10に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP13及びステップSP14の間にステップSP16及びステップSP17を含む点で、比較例のフローチャートとは異なる。
【0092】
(ステップSP16,SP17)
ステップSP16では、プロセッサ190は、後述する縮退制御モード移行処理に移行する。縮退制御モード移行処理が終了すると、プロセッサ190は、制御フローをステップSP17に進める。ステップSP17では、プロセッサ190は、後述する縮退制御モード終了判定処理に移行する。縮退制御モード終了判定処理が終了すると、プロセッサ190は、制御フローをステップSP14に進める。
【0093】
縮退制御モード移行処理及び縮退制御モード終了判定処理は、レーザ発振器130において行われ、増幅器160において行われない。これは、増幅器160では、出力変動制御モードのみが行われるためである。
【0094】
また、本実施形態の制御フローでは、ステップSP13のMOエネルギー制御処理は、比較例のMOエネルギー制御処理とは異なる。
【0095】
図11は、本実施形態のステップSP13のMOエネルギー制御処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。本実施形態の制御フローチャートは、ステップSP43及びステップSP44の間にステップSP71を含む点で、比較例のフローチャートとは異なる。
【0096】
(ステップSP71)
本ステップでは、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードでなければ、制御モードが出力変動制御モードであることとなり、制御フローをステップSP44に進める。また、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードであれば、MOエネルギー制御処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP16に進める。現在の制御モードが縮退制御モードであるかどうかは、図12及び図13に示す縮退制御モード移行処理の後述するステップSP108において説明する。
【0097】
図12は、ステップSP16の縮退制御モード移行処理の引き上げ制御モードにおけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図12に示すように当該制御フローチャートは、ステップSP101~ステップSP109を含む。
【0098】
(ステップSP101)
本ステップでは、プロセッサ190は、制御モードが縮退制御モードであれば、縮退制御モード移行処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。また、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードでなければ、制御モードが出力変動制御モードであることとなり、制御フローをステップSP102に進める。現在の制御モードが縮退制御モードであるかどうかは、ステップSP108において説明する。
【0099】
(ステップSP102)
本ステップでは、プロセッサ190は、閾値VMOthを設定する。プロセッサ190は、閾値VMOthを設定すると、制御フローをステップSP103に進める。なお、閾値VMOthは、より長い期間に生じる目標値VMOtの差に基づいて定義されてもよいし、放電回数によって生じる目標値VMOtの差に基づいて定義されてもよい。
【0100】
(ステップSP103)
本ステップでは、プロセッサ190は、目標値VMOtの移動平均値VMOtaveを算出する。移動平均値VMOtaveは、所定期間における目標値VMOtの平均値である。目標値VMOtは外乱によって意図しない値に変動してしまうことがあり、当該値によって制御モードが意図せずに縮退制御モードとなることを抑制するために、プロセッサ190は移動平均値VMOtaveを算出する。プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveを算出すると、制御フローをステップSP104に進める。
【0101】
(ステップSP104)
本ステップでは、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOth以上である場合では、制御モードが出力変動制御モードであるため、縮退制御モード移行処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。また、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合、制御モードを縮退制御モードに移行することとなり、制御フローをステップSP105に進める。
【0102】
(ステップSP105)
本ステップでは、プロセッサ190は、ステップSP44において算出される制御量ΔEMOを設定する。プロセッサ190は、制御量ΔEMOを設定すると、制御フローをステップSP106に進める。
【0103】
(ステップSP106)
本ステップでは、プロセッサ190は、パルスエネルギーの目標値EMOtをステップSP41における目標値EMOtに制御量ΔEMOを加算した値に再設定する。プロセッサ190は、目標値EMOtを再設定すると、制御フローをステップSP107に進める。
【0104】
(ステップSP107)
本ステップでは、プロセッサ190は、ステップSP106において再設定した目標値EMOtを基に電圧VMOαを算出する。電圧VMOαは、初期値VMO0よりも小さい値である。プロセッサ190は、電圧VMOαを算出すると、制御フローをステップSP108に進める。
【0105】
(ステップSP108)
本ステップでは、プロセッサ190は、電圧VMOの目標値VMOtを一定値である電圧VMOαに設定する。プロセッサ190は、電圧VMOαを設定すると、制御モードが縮退制御モードとなり、制御フローをステップSP109に進める。なお、制御フローがステップSP109,SP17,SP14,SP15,SP13の順で進むとする。この場合、ステップSP42において、プロセッサ190は、ステップSP108において設定した電圧VMOαである新たな目標値VMOtで電圧VMOが電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。従って、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合において、電圧VMOを一定値である電圧VMOαに維持する。また、制御フローがさらにステップSP42,SP43,SP71の順で進むと、制御モードが縮退制御モードとなっているため、プロセッサ190は、MOエネルギー制御処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP16に進める。
【0106】
(ステップSP109)
本ステップでは、プロセッサ190は、一定値である電圧VMOαへの電圧VMOの維持の開始、つまり縮退制御モードの開始を示す信号を表示部180に出力し、表示部180は縮退制御モードの開始を通知する。表示部180が通知しても、露光装置200は駆動している。プロセッサ190は、信号を表示部180に出力すると、縮退制御モード移行処理の引き上げ制御モードにおける制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。
【0107】
例えば、図9に示す時刻t1は、ステップSP104において移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る時刻である。この場合、ステップSP106において、新たな目標値EMOtは目標値EMOtに所定量である加算量ΔEMOαを加算した値となり、ステップSP108における目標値VMOtは閾値VMOthに加算量ΔVMOαを加算した電圧VMOαとなる。図9では、目標値VMOtが電圧VMOαとなる時刻をt11として示している。また、時刻t1は、ステップSP109において表示部180が縮退制御モードの開始を通知する時刻である。
【0108】
図13は、ステップSP16の縮退制御モード移行処理の据え置き制御モードにおけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図13に示すように当該制御フローチャートは、図12にて説明した引き上げ制御モードとは、ステップSP105~ステップSP108の代わりにステップSP111を含む点で異なる。ステップSP104において、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合、制御モードを縮退制御モードに移行することとなり、制御フローをステップSP111に進める。
【0109】
(ステップSP111)
本ステップでは、プロセッサ190は、電圧VMOの目標値VMOtを一定値である閾値VMOthに設定する。プロセッサ190は、閾値VMOthを設定すると、制御モードが縮退制御モードとなり、制御フローをステップSP109に進める。据え置き制御モードのステップSP109では、プロセッサ190は、一定値である閾値VMOthへの電圧VMOの維持の開始を示す信号を表示部180に出力し、表示部180は縮退制御モードの開始を通知する。なお、制御フローがステップSP109,SP17,SP14,SP15,SP13の順で進むとする。この場合、ステップSP42において、プロセッサ190は、ステップSP108において設定した閾値VMOthである新たな目標値VMOtで電圧VMOが電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。従って、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合において、電圧VMOを一定値である閾値VMOthに維持する。
【0110】
図14は、ステップSP17の縮退制御モード終了判定処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。図14に示すように当該制御フローチャートは、ステップSP121~ステップSP127を含む。
【0111】
(ステップSP121)
本ステップでは、プロセッサ190は、制御モードが縮退制御モードでなければ、縮退制御モード終了判定処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進める。また、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードであれば、制御フローをステップSP122に進める。
【0112】
(ステップSP122)
本ステップでは、プロセッサ190は、光センサ151cからパルスレーザ光のパルス数PLSを示す信号が入力されると、縮退制御モードのうちのパルス数PLSを計測する。計測の期間は、縮退制御モードの開始からの所定期間、或いは縮退制御モード中における所定期間であってもよい。プロセッサ190は、パルス数PLSを計測すると、制御フローをステップSP123に進める。
【0113】
(ステップSP123)
本ステップでは、プロセッサ190は、露光装置200が露光中であることを露光装置200からの信号が示す場合、縮退制御モード終了判定処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進める。また、プロセッサ190は、露光装置200が露光中ではないことを露光装置200からの信号が示す場合、或いは露光装置200からの信号が入力されない場合、制御フローをステップSP124に進める。なお、プロセッサ190は、レーザ発振器130から出射するパルスレーザ光の特性を調整することを露光装置200からの信号が示す場合、制御フローをステップSP14に進めてもよい。当該信号は、例えば、不図示のレーザガス供給装置から筐体30の内部空間へのレーザガスの供給量の調整を指示する信号である。
【0114】
(ステップSP124)
本ステップでは、プロセッサ190は、プロセッサ190の記憶装置に予め記憶されるパルス数閾値PLSthを読み込む。パルス数閾値PLSthは、縮退制御モードにおいてガスレーザ装置100及び露光装置200の稼働を許容できるパルス数の最大値である。プロセッサ190は、パルス数閾値PLSthを読み込むと、制御フローをステップSP125に進める。
【0115】
(ステップSP125)
本ステップでは、プロセッサ190は、ステップSP122にて計測したパルス数PLSの積算値ΣPLSを算出する。プロセッサ190は、積算値ΣPLSを算出すると、制御フローをステップSP126に進める。積算値ΣPLSは、ステップSP122において説明した所定期間における積算値であってもよいし、計測が開始してからの積算値であってもよい。
【0116】
(ステップSP126)
本ステップでは、プロセッサ190は、積算値ΣPLSがパルス数閾値PLSth以下であれば、縮退制御モード終了判定処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進める。また、プロセッサ190は、積算値ΣPLSがパルス数閾値PLSthよりも大きければ、制御フローをステップSP127に進める。
【0117】
(ステップSP127)
本ステップでは、プロセッサ190は、レーザ発振器130における電圧の印加を停止させて縮退制御モードを終了し、増幅器160における電圧の印加を停止させる。また、プロセッサ190は、エラーを示す信号を露光装置200に出力する。当該エラーは、例えば、稼働の停止やメンテナンスの通知を示す。当該信号が露光装置200に入力されると、露光装置200は停止する。プロセッサ190は、電圧の印加を停止させると共にエラーを示す信号を露光装置200に出力すると、縮退制御モード終了判定処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進める。露光装置200は、当該信号を受信すると、発振指示信号をガスレーザ装置100に出力しない。従って、制御フローがステップSP14,SP15に進むと、プロセッサ190は、制御フローを終了する。
【0118】
3.3 作用・効果
本実施形態のガスレーザ装置100では、プロセッサ190は、レーザ発振器130における電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthを下回る場合において、電圧VMOの目標値VMOtを閾値VMOth以上の一定値に維持する。これにより、増幅器160からのPO抜け光が増加して、光センサ151cによって検出されるパルスレーザ光のパルスエネルギーの実測値EMOが上昇しても、電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthを下回ることが抑制され得る。電圧VMOの目標値VMOtの低下が抑制されると、MO注入光の光量の不安定化が抑制され得る。当該光量の不安定化が抑制されると、増幅レーザ光のパルスエネルギーの不安定化が抑制され得、ガスレーザ装置100は露光装置200が要求する性能を満たした状態で稼働し続け得、ガスレーザ装置100の信頼性の低下が抑制され得る。
【0119】
本実施形態のガスレーザ装置100では、一定値は、閾値VMOthよりも大きい電圧VMOαである。この場合、縮退制御モードは引き上げ制御モードであり、据え置き制御モードに比べて、レーザ発振器130から出射するMO注入光の光量は増加し得、増幅レーザ光のパルスエネルギーの不安定化が抑制され得る。或いは、一定値は、閾値VMOthと同じ値である。この場合、縮退制御モードは据え置き制御モードであり、引き上げ制御モードにおける閾値VMOthを電圧VMOαに引き上げるための加算量ΔVMOαの算出が据え置き制御モードでは不要となり得る。従って、上記の構成では、引き上げ制御モードに比べてプロセッサ190の負担が軽減し得る。
【0120】
本実施形態のガスレーザ装置100では、プロセッサ190は、ステップSP104で説明したように移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合、ステップSP108,SP111で説明したように電圧VMOの目標値VMOtを一定値に設定する。また、プロセッサ190は、電極32a,32bに印加される目標値VMOtの電圧VMOを当該一定値に維持する。目標値VMOtは、外乱によって意図しない値に変動してしまうことがある。上記のように移動平均値VMOtaveが用いられることによって、目標値VMOtが外乱によって一時的に閾値VMOthを下回ることによる出力変動制御モードから縮退制御モードへの不要な移行が抑制され得る。なお、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveを用いずに、目標値VMOtが閾値VMOthを下回る場合において、電極32a,32bに印加される目標値VMOtの電圧VMOを一定値に維持してもよい。
【0121】
本実施形態のガスレーザ装置100では、ステップSP109で説明したように、表示部180は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合、一定値である電圧VMOαまたは閾値VMOthへの電圧VMOの目標値VMOtの維持開始を通知する。これにより、ガスレーザ装置100のユーザは、当該開始を知り得る。
【0122】
本実施形態のガスレーザ装置100では、ステップSP127において説明したようにパルス数の積算値ΣPLSがパルス数閾値PLSthよりも大きい場合に、プロセッサ190は電圧VMOの印加を停止させる。露光装置200が縮退制御モードの開始と同時に停止する場合、露光装置200は半導体ウエハ等ワークピースが完成する途中で製造を停止してしまい、ワークピースが無駄となる場合がある。上記の構成では、縮退制御モードが開始された後でも、積算値ΣPLSがパルス数閾値PLSthよりも大きくなるまで露光装置200は所定期間稼働し得る。従って、ワークピースが完成してから露光装置200は停止し得、ワークピースの無駄が抑制され得る。
【0123】
本実施形態のガスレーザ装置100では、ステップSP127において説明したように、プロセッサ190は、パルス数の積算値ΣPLSがパルス数閾値PLSthよりも大きい場合に、露光装置200にエラーを示す信号を出力する。当該エラーは、例えば、稼働の停止やメンテナンスの通知を示す。これにより、露光装置200側に、例えば、稼働の停止やメンテナンスが通知され得る。
【0124】
ビームスプリッタ151bは、出力結合ミラー70から出射するパルスレーザ光の光路上に配置されていればよい。また、検出部153は、出力結合ミラー170から出射するパルスレーザ光の光路上に配置されていればよい。従って、検出部153は、露光装置200の内部に配置されていてもよい。例えば、検出部153は、投影光学系220とワークピーステーブルWTとの間に配置されてもよい。縮退制御モード終了判定処理において、プロセッサ190は、光センサ153cからのパルス数PLSを示す信号を基に縮退制御モードのうちのパルス数PLSを計測してもよい。縮退制御モード終了判定処理において、プロセッサ190は、縮退制御モードが開始されてから制御フローが縮退制御モード終了判定処理に移行した回数を基に、エラーを示す信号を露光装置200に出力してもよい。縮退制御モード終了判定処理において、プロセッサ190は、ステップSP122において制御フローがステップSP122に進む回数を計測し、当該回数が閾値よりも大きい場合に制御フローをステップSP127に進めてもよい。また、プロセッサ190は、当該回数が閾値以下である場合に制御フローをステップSP14に進めてもよい。縮退制御モード終了判定処理において、プロセッサ190は、ステップSP122において縮退制御モードの開始からの時間を計測し、当該時間が閾値よりも大きい場合に制御フローをステップSP127に進めてもよい。また、プロセッサ190は、当該時間が閾値以下である場合に制御フローをステップSP14に進めてもよい。
【0125】
4.実施形態2のガスレーザ装置の説明
次に、実施形態2のガスレーザ装置100について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0126】
4.1 構成
本実施形態のガスレーザ装置100の構成は、比較例及び実施形態1のガスレーザ装置100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0127】
4.2 動作
図15は、本実施形態におけるレーザ発振器130のパルスパワーモジュール43の電圧VMOと電圧VMOが変化する時刻との関係、及びパルスエネルギーの目標値EMOtと目標値EMOtが変化する時刻との関係を示す図である。
【0128】
本実施形態の縮退制御モードは、縮退制御モードであっても出力変動制御モードのように電圧VMOが制御量ΔVMOで徐々に減少する傾向にある点において、実施形態1の縮退制御モードとは異なる。本実施形態の縮退制御モードは、縮退制御モードの終了判定の基準がパルスエネルギーの変動する目標値EMOtに基づく点において、実施形態1の縮退制御モードとは異なる。
【0129】
本実施形態の縮退制御モードでは、プロセッサ190は、目標値VMOtの移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る度に、目標値VMOtを閾値VMOthよりも加算量ΔVMOαだけ大きい所定値である電圧VMOαに上げる。また、プロセッサ190は、当該電圧VMOαが電極32a,32bに印加されるよう、パルスパワーモジュール43を制御する。プロセッサ190は、上記設定と印加とを繰り返す。
【0130】
縮退制御モードの終了判定では、プロセッサ190は、実施形態1では、パルスレーザ光のパルス数PLSに基づいて縮退制御モードの終了を判定している。これに対して、本実施形態では、プロセッサ190は、レーザ発振器130の別途設定されるパルスエネルギーの目標値EMOtの上限の閾値EMOtthを基準に縮退制御モードの終了を判定する。本実施形態では、プロセッサ190は、縮退制御モード中において、目標値VMOtの移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る度に、目標値EMOtに加算量ΔEMOαを加算した新たな目標値EMOtを設定する。次に、プロセッサ190は、新たな目標値EMOtが閾値EMOtthを超えた時点で、縮退制御モードを終了させる。
【0131】
図16は、本実施形態のステップSP13のMOエネルギー制御処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。本実施形態の制御フローチャートは、ステップSP71の位置が開始の状態とステップSP41の間に変更される点で、比較例のフローチャートとは異なる。
【0132】
(ステップSP71)
本ステップでは、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードでなければ、制御モードが出力変動制御モードであることとなり、制御フローをステップSP41に進める。また、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードであれば、制御フローをステップSP42に進める。縮退制御モードであれば、後述するステップSP133にて説明するように新たな目標値EMOtが設定されている。従って、プロセッサ190は、縮退制御モードでは、パルスエネルギーが当該目標値EMOtであるMO注入光が出射するように、パルスパワーモジュール43を制御する。具体的には、プロセッサ190は、当該目標値EMOtを基に設定される目標値VMOtで電圧VMOがレーザ発振器130の電極32a,32bにステップSP42において印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。
【0133】
図17は、本実施形態のステップSP16の縮退制御モード移行処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。当該制御フローチャートは、図12にて説明した引き上げ制御モードとは、ステップSP131と、ステップSP105~ステップSP108の代わりにステップSP132~ステップSP134とを含む点で異なる。
【0134】
(ステップSP101)
本ステップでは、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードでなければ、制御フローをステップSP102に進める。また、プロセッサ190は、制御モードが縮退制御モードであれば、制御フローをステップSP131に進める。
【0135】
(ステップSP131)
本ステップでは、プロセッサ190は、縮退制御モード中における電圧VMOの目標値VMOtの移動平均値VMOtaveを算出する。ステップSP104における移動平均値VMOtaveは縮退制御モード前のモード、つまり出力変動制御モード中における値であるが、本ステップにおける移動平均値VMOtaveは縮退制御モード中における値である。本ステップの移動平均値VMOtaveは、例えば50パルス以上200パルス以下である。当該移動平均値VMOtaveは、出力変動制御モード中であるステップSP103において算出される移動平均値VMOtaveとは異なる値である。従って、プロセッサ190は、出力変動制御モードにおいて算出される移動平均値VMOtaveを縮退制御モードにおける平均値として利用しない。プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveを算出すると、制御フローをステップSP104に進める。
【0136】
(ステップSP104)
ステップSP104において、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOth以上である場合、縮退制御モード移行処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。また、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合、制御フローをステップSP132に進める。
【0137】
(ステップSP132)
本ステップでは、プロセッサ190は、加算量ΔEMOαを設定し、制御フローをステップSP133に進める。加算量ΔEMOαは、プロセッサ190の記憶装置に予め記憶されている。
【0138】
(ステップSP133)
本ステップでは、プロセッサ190は、目標値EMOtに加算量ΔEMOαを加算した新たな目標値EMOtを設定する。制御フローがステップSP133に進む度に、新たな目標値EMOtは階段状に増加していく。プロセッサ190は、設定した新たな目標値EMOtをプロセッサ190の記憶装置に記憶し、制御フローをステップSP134に進める。
【0139】
ところで、制御フローが縮退制御モード移行処理の後にステップSP17,SP14,SP15,SP13の順で進むとする。この場合、ステップSP71で説明したように、プロセッサ190は、新たな目標値EMOtを基に設定される目標値VMOtで電圧VMOがレーザ発振器130の電極32a,32bにステップSP42で印加されるよう、パルスパワーモジュール43を制御する。例えば、図15に示す時刻t1,t2,t3は、ステップSP104において移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る時刻である。この場合、ステップSP133において、新たな目標値EMOtは目標値EMOtに加算量ΔEMOαを加算した値となり、ステップSP42における目標値VMOtは閾値VMOthに加算量ΔVMOαを加算した電圧VMOαとなる。図15では、目標値VMOtが電圧VMOαとなる時刻をt11,t21として示している。時刻t11と時刻t2の間、及び時刻t21と時刻t3の間とにおいて、出力変動制御モードと同様にPO抜け光のパルスエネルギーが上昇するため、目標値VMOtは制御量ΔVMOで徐々に減少していく傾向にある。従って、プロセッサ190は、所定値である電圧VMOαに上げた目標値VMOtが閾値VMOthを下回る場合において、目標値VMOtを電圧VMOαに再び上げる。また、縮退制御モードにおいて、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る度に、ステップSP133において、目標値EMOtに加算量ΔEMOαで上げていく。
【0140】
(ステップSP134)
本ステップでは、プロセッサ190は、ステップSP109にて説明したように縮退制御モードの開始を示す信号が表示部180に出力されていなければ、縮退制御モードであることを通知していないこととなり、制御フローをステップSP109に進める。また、プロセッサ190は、信号が表示部180に出力されており、縮退制御モードであることを通知していれば、縮退制御モード移行処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。
【0141】
図18は、本実施形態のステップSP17の縮退制御モード終了判定処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。当該制御フローチャートは、図14にて説明した縮退制御モード終了判定処理とは、ステップSP122が不要となる点と、ステップSP124~ステップSP126の代わりにステップSP141~ステップSP143を含む点とで異なる。なお、本実施形態の縮退制御モード終了判定処理は、実施形態1の縮退制御モード終了判定処理であってもよい。
【0142】
(ステップSP121,SP123)
ステップSP121では、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードであれば、制御フローをステップSP123に進める。ステップSP123では、プロセッサ190は、露光装置200が露光中であれば、制御フローをステップSP141に進める。
【0143】
(ステップSP141)
本ステップでは、プロセッサ190は、プロセッサ190の記憶装置に予め記憶される閾値EMOtthを読み込む。閾値EMOtthは、パルスレーザ光が狭帯域化モジュール60に損傷を与えないと予測される電圧値である。プロセッサ190は、閾値EMOtthを読み込むと、制御フローをステップSP142に進める。
【0144】
(ステップSP142)
本ステップでは、プロセッサ190は、ステップSP133にてプロセッサ190の記憶装置に記憶されているパルスエネルギーの目標値EMOtを読み込む。プロセッサ190は、目標値EMOtを読み込むと、制御フローをステップSP143に進める。
【0145】
(ステップSP143)
本ステップでは、プロセッサ190は、目標値EMOtが閾値EMOtth以下である場合、縮退制御モード終了判定処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進める。また、プロセッサ190は、目標値EMOtが閾値EMOtthよりも大きい場合、制御フローをステップSP127に進める。なお、本ステップでは、プロセッサ190は、ステップSP133における加算量ΔEMOαの加算回数が所定回数未満の場合に、制御フローを終了し、制御フローをステップSP14に進めてもよい。また、プロセッサ190は、加算回数が所定回数以上の場合に、制御フローをステップSP127に進めてもよい。
【0146】
4.3 作用・効果
本実施形態のガスレーザ装置100では、プロセッサ190は、レーザ発振器130における電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthを下回る場合において、電圧VMOの目標値VMOtを閾値VMOthよりも大きい所定値である電圧VMOαに上げる。これにより、増幅器160からのPO抜け光が増加して、光センサ151cによって検出されるパルスレーザ光のパルスエネルギーの実測値EMOが上昇しても、電圧VMOが閾値VMOthを下回ることが抑制され得る。電圧VMOの低下が抑制されると、MO注入光の光量の不安定化が抑制され得る。光量の不安定化が抑制されると、増幅レーザ光のパルスエネルギーの不安定化が抑制され得、ガスレーザ装置100は露光装置200が要求する性能を満たした状態で稼働し続け得、ガスレーザ装置100の信頼性の低下が抑制され得る。
【0147】
本実施形態のガスレーザ装置100では、プロセッサ190は、所定値である電圧VMOαに上げた電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthを下回る場合において、電圧VMOの目標値VMOtを所定値である電圧VMOαに再び上げる。電圧VMOが電圧VMOαに上がった後において、PO抜け光のパルスエネルギーが増加してしまい、実測値EMOが上昇し、電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthよりも下がってしまうことがある。上記の構成では、プロセッサ190は電圧VMOの目標値VMOtを所定値である電圧VMOαに再び上げるため、電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthを下回ることが抑制され得る。電圧VMOの目標値VMOtの低下が抑制されると、MO注入光の光量の不安定化が抑制され得る。
【0148】
本実施形態のガスレーザ装置100では、プロセッサ190は、電圧VMOαに上げた電圧VMOの目標値VMOtが閾値VMOthを下回る度にパルスエネルギーの目標値EMOtを上げる。また、プロセッサ190は、目標値EMOtが閾値Emotthよりも大きい場合に、電圧VMOの印加を停止させる。上記の構成では、縮退制御モードが開始された後でも、目標値EMOtが閾値Emotthよりも大きくなるまで露光装置200は所定期間稼働し得る。従って、ワークピースが完成してから露光装置200は停止し得、ワークピースの無駄が抑制され得る。
【0149】
本実施形態のガスレーザ装置100では、ステップSP143,SP127において説明したように、プロセッサ190は、目標値EMOtが閾値EMOtthよりも大きい場合、露光装置200にエラーを示す信号を出力する。これにより、露光装置200側に、例えば、稼働の停止やメンテナンスが通知され得る。
【0150】
5.実施形態3のガスレーザ装置の説明
次に、実施形態3のガスレーザ装置100について説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0151】
5.1 構成
本実施形態のガスレーザ装置100の構成は、比較例及び実施形態1,2のガスレーザ装置100の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0152】
5.2 動作
図19は、本実施形態におけるレーザ発振器130のパルスパワーモジュール43の電圧VMOと電圧VMOが変化する時刻との関係、及びパルスエネルギーの目標値EMOtと目標値EMOtが変化する時刻との関係を示す図である。
【0153】
本実施形態の縮退制御モードでは、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOth以下となると電圧VMOの目標値VMOtを所定値である電圧VMOmaxに設定する。また、プロセッサ190は、当該電圧VMOαがレーザ発振器130の電極32a,32bに印加されるように、パルスパワーモジュール43を制御する。プロセッサ190は、上記設定と印加とをそれぞれ1度のみ行う点で、上記設定と印加とが繰り返される実施形態2の縮退制御モードと異なる。電圧VMOmaxは、閾値VMOthよりも加算量ΔVMOαだけ大きく、また初期値VMO0よりも大きい値である。また、電圧VMOmaxは、パルスレーザ光が狭帯域化モジュール60に損傷を与えないと予測される電圧の最大値である。
【0154】
また、本実施形態の縮退制御モードの終了判定は、終了判定の基準が電圧VMOの変動する目標値VMOtに基づく点において、実施形態2の縮退制御モードの終了判定とは異なる。縮退制御モードの終了判定では、プロセッサ190は、実施形態2では、パルスエネルギーの目標値EMOtに基づいて縮退制御モードの終了を判定している。これに対して、本実施形態では、プロセッサ190は、縮退制御モード中における電圧VMOの移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回ると、縮退制御モードを終了する。この判定は、電圧VMOの移動平均値VMOtaveの他に、実施形態1の図14に示すパルス数、時間経過、これらの組み合わせに基づいて行われてもよい。
【0155】
図20は、本実施形態のステップSP16の縮退制御モード移行処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。当該制御フローチャートは、図17にて説明した実施形態2の縮退制御モード移行処理とは、ステップSP104とステップSP132の間にステップSP151を含む点と、ステップSP134が不要となる点とで異なる。
【0156】
(ステップSP104)
本ステップでは、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合、制御フローをステップSP151に進める。
【0157】
(ステップSP151)
本ステップでは、プロセッサ190は、制御モードが縮退制御モードであれば、縮退制御モード移行処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。また、プロセッサ190は、現在の制御モードが縮退制御モードでなければ、制御フローをステップSP132に進める。
【0158】
ところで、制御フローが縮退制御モード移行処理の後にステップSP17,SP14,SP15,SP13の順で進むとする。この場合、ステップSP71で説明したように、プロセッサ190は、新たな目標値EMOtを基に設定される目標値VMOtで電圧VMOがレーザ発振器130の電極32a,32bにステップSP42で印加されるよう、パルスパワーモジュール43を制御する。例えば、図19に示す時刻t1は、ステップSP104において移動平均値VMOtaveが閾値VMOthよりも小さくなった時刻である。この場合、ステップSP133において、新たな目標値EMOtは目標値EMOtに加算量ΔEMOαを加算したEMOmaxとなり、ステップSP42における目標値VMOtは閾値VMOthに加算量ΔVMOαを加算した電圧VMOmaxとなる。図19では、目標値VMOtが電圧VMOmaxとなる時刻をt13として示している。時刻t13以降において、電圧VMOαは、出力変動制御モードと同様にPO抜け光のパルスエネルギーが上昇するため、制御量ΔVMOで徐々に減少していく傾向にある。
【0159】
図21は、本実施形態のステップSP17の縮退制御モード終了判定処理におけるプロセッサ190の制御フローチャートである。当該制御フローチャートは、図18にて説明した実施形態2の縮退制御モード終了判定処理とは、ステップSP121が不要となる点と、ステップSP141~ステップSP143の代わりにステップSP104を含む点で異なる。
【0160】
(ステップSP104)
本ステップでは、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOth以上である場合、縮退制御モード終了判定処理における制御フローを終了し、制御フローをステップSP17に進める。また、プロセッサ190は、移動平均値VMOtaveが閾値VMOthよりも小さくなる場合、制御フローをステップSP127に進める。
【0161】
5.3 作用・効果
本実施形態のガスレーザ装置100では、プロセッサ190は、所定値である電圧VMOmaxに上がった後における電圧VMOの目標値VMOtの移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る場合において、電圧VMOの印加を停止させる。上記の構成では、実施形態2のように、電圧VMOの移動平均値VMOtaveが閾値VMOthを下回る度に、パルスエネルギーの目標値EMOtを上げる必要がなくなる。従って、上記の構成では、プロセッサ190の負担が少なくなり得る。
【0162】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
本明細書及び請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
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