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特許7579468大豆含有乾燥麺類、麺セット及び大豆含有乾燥麺類の製造方法
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  • 特許-大豆含有乾燥麺類、麺セット及び大豆含有乾燥麺類の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】大豆含有乾燥麺類、麺セット及び大豆含有乾燥麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20241030BHJP
   A23L 11/00 20210101ALI20241030BHJP
【FI】
A23L7/109 B
A23L11/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024013108
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023105513
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 靖隆
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 正則
(72)【発明者】
【氏名】中山 大地
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-065946(JP,A)
【文献】特開2022-097951(JP,A)
【文献】特開2018-074986(JP,A)
【文献】特開2007-215415(JP,A)
【文献】特開2019-129823(JP,A)
【文献】特開2019-129732(JP,A)
【文献】特開2018-057290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉全質量に対して、
大豆粉を40質量%以上と、
かんすいを0.01~2質量%と、
サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%と
を含有すると共に、
小麦粉を含有し、
前記かんすい含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.02~4.14質量部であり、
前記サイリウムシードガム、前記アルギン酸エステル及び前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの総含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.2~14.5質量部である大豆含有乾燥麺類。
【請求項2】
グルテンを含有する請求項1に記載の大豆含有乾燥麺類。
【請求項3】
記グルテンの一部が前記小麦粉由来のグルテンである請求項2に記載の大豆含有乾燥麺類。
【請求項4】
前記多糖類としてサイリウムシードガムとアルギン酸エステルを含有し、
その配合比が、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3である請求項1に記載の大豆含有乾燥麺類。
【請求項5】
前記多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸エステルを含有し、
その配合比が、質量比で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3である請求項1に記載の大豆含有乾燥麺類。
【請求項6】
原料粉全質量に対する大豆粉含有率をx質量%としたとき、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法による測定値から求めたn-ヘキサナール濃度が(0.27×x)ppm以下である請求項1に記載の大豆含有乾燥麺類。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の大豆含有乾燥麺類と、調味液とを備える麺セット。
【請求項8】
大豆粉を40質量%以上と、かんすいを0.01~2質量%と、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%含有すると共に、小麦粉を含有し、前記かんすい含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.02~4.14質量部であり、サイリウムシードガム、前記サイリウムシードガム、前記アルギン酸エステル及び前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの総含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.2~14.5質量部である原料粉を用いて生地を調製する工程と、
該生地を成形して麺類を得る製麺工程と、
前記麺類を乾燥させる乾燥工程と、
を有する大豆含有乾燥麺類の製造方法。
【請求項9】
前記原料粉はグルテンを含有する請求項8に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
【請求項10】
記グルテンの一部が前記小麦粉由来のグルテンである請求項9に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
【請求項11】
前記原料粉は、前記多糖類としてサイリウムシードガムとアルギン酸エステルを含有し、その配合比が、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3である請求項8に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
【請求項12】
前記原料粉は、前記多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸エステルを含有し、その配合比が、質量比で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3である請求項8に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
【請求項13】
原料粉全質量に対する大豆粉含有率をx質量%としたとき、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法による測定値から求めたn-ヘキサナール濃度が(0.27×x)ppm以下である大豆含有乾燥麺類を得る請求項8~12のいずれか1項に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆粉を含む原料を用いて製造された大豆含有乾燥麺類、この大豆含有乾燥麺類を備える麺セット及び大豆粉を含む原料を用いて大豆含有乾燥麺類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、高たんぱく低糖質の食品が求められており、麺類も原料粉に大豆粉を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1~4参照。)。例えば、特許文献1には、小麦全粒粉を15質量%以上22質量%以下、大豆粉を3質量%以上15質量%以下、米糠を3質量%以上6質量%以下含有する麺が記載されている。また、特許文献2には、粒径255μm以上の粒子を3質量%以上含み、且つ中位径が70μm未満である大豆粉砕物を5質量%以上含む麺類用組成物を用いた麺類が記載されている。
【0003】
更に、特許文献3には、大豆臭さやエグミを抑制するため、大豆由来たんぱく質含有材料と、タピオカ澱粉とを含み、大豆由来たんぱく質含有材料の量が、大豆由来たんぱく質含有材料と澱粉質原料との合計量100質量部に対して、40質量部以上である大豆麺が記載されている。一方、特許文献4には、大豆含有麺質量比で1倍量の水との攪拌混合物をレオメータにより直径1.8mmの円錐型プランジャーを用いて測定した付着性が300J/m以下である大豆粉を7~50質量%の範囲で含有する原料穀粉を用いて製造することで、製麺適性を良好にした大豆含有麺が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2022/004126号
【文献】特開2022-097951号公報
【文献】特開2022-110419号公報
【文献】特開2022-155950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の大豆含有麺類は、原料粉中の大豆粉量を多くすればより高たんぱくで低糖質な麺類が得られるが、大豆含有量が多くなると、大豆特有の臭い(以下、大豆臭という。)が強くなって風味が低下したり、硬くなりすぎて食感が劣化したりするといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、原料粉に大豆粉が30質量%以上含まれていても、大豆臭が抑制され、湯戻しや茹で調理後の食感が良好な大豆含有乾燥麺類、麺セット及び大豆含有乾燥麺類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る大豆含有乾燥麺類は、原料粉全質量に対して、大豆粉を40質量%以上と、かんすいを0.01~2質量%と、サイリウムシードガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA:Propylene Glycol Alginate;以下、「アルギン酸エステル」と略す。)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:Hydroxypropyl Methylcellulose)のうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%含有すると共に、小麦粉を含有し、前記かんすい含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.02~4.14質量部であり、前記サイリウムシードガム、前記アルギン酸エステル及び前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの総含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.2~14.5質量部である。
本発明の大豆含有乾燥麺類は、前述した各成分に加えて、グルテンを含有していてもよい。その場合、前記グルテンの一部を前記小麦粉由来のグルテンとすることができる。
大豆粉含有量は、原料粉全質量に対して、84質量%未満とすることができる。
また、本発明の大豆含有乾燥麺類は、前記多糖類としてサイリウムシードガムとアルギン酸エステルを含有していてもよく、その場合、配合比は、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3とすればよい。
又は、本発明の大豆含有乾燥麺類は、前記多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸エステルを含有していてもよく、その場合、配合比は、質量比で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3とすればよい。
【0008】
本発明に係る麺セットは、前述した大豆含有乾燥麺類と、調味液とを備える。
【0009】
本発明に係る大豆含有乾燥麺類の製造方法は、大豆粉を40質量%以上と、かんすいを0.01~2質量%と、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%を含有すると共に、小麦粉を含有し、前記かんすい含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.02~4.14質量部であり、前記サイリウムシードガム、前記アルギン酸エステル及び前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースの総含有量が前記大豆粉100質量部あたり0.2~14.5質量部である原料粉を用いて生地を調製する工程と、該生地を成形して麺類を得る製麺工程と、前記麺類を乾燥させる乾燥工程とを行う。
前記原料粉はグルテンを含有していてもよい。その場合、前記グルテンの一部が前記小麦粉由来のグルテンでもよい。
また、前記原料粉は、前記多糖類としてサイリウムシードガムとアルギン酸を含有し、その配合比を、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3とすることができる。
又は、前記原料粉は、前記多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸を含有し、その配合比を、質量比で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3とすることができる。
【0010】
前述した本発明の大豆含有乾燥麺類は、原料粉全質量に対する大豆粉含有率をx質量%としたとき、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法による測定値から求めたn-ヘキサナール濃度(0.27×x)ppm以下とすることができる。
また、前述した本発明の大豆含有乾燥麺類の製造方法では、原料粉全質量に対する大豆粉含有率をx質量%としたとき、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法による測定値から求めたn-ヘキサナール濃度が(0.27×x)ppm以下である大豆含有乾燥麺類が得られる。
【0011】
ここで、本発明における「原料粉」には、粉状の全ての原料が含まれ、主原料である穀粉(大豆粉や小麦粉など)の他に、グルテン粉、多糖類、澱粉類、食塩、かんすい、野菜粉末、マンナン粉、粉末油脂、増粘多糖類、色素、アミノ酸類、糖類、デキストリン、乾燥卵白、pH調整剤、日持向上剤など副原料も含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、大豆粉を30質量%以上含有する原料粉を用いても、大豆臭が抑制され、湯戻しや茹で調理を行うことにより適度な柔らかさで食感が良好な麺類が得られる大豆含有乾燥麺類、麺セット及び大豆含有乾燥麺類の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態の大豆含有乾燥麺類の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係る大豆含有乾燥麺類(以下、単に「乾燥麺類」ともいう。)について説明する。本実施形態の乾燥麺類は、原料粉全質量に対して、大豆粉を30質量%以上、かんすいを0.01~2質量%含有すると共に、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%含有する。
【0016】
[大豆粉]
大豆粉は、本実施形態の乾燥麺類における主原料の1つであり、原料粉中に30質量%以上配合されている。原料粉中の大豆粉量の下限値は、製麺適性や麺線の結着性の観点からは特に限定されるものではないが、大豆粉含有量が少ないと、大豆粉配合の効果(麺類の高たんぱく・低糖質化)が十分に得られないため、本実施形態の乾燥麺類では、原料粉全質量に対する大豆粉含有率は30質量%以上とする。なお、大豆臭抑制効果が顕著に感じられることから、本発明は大豆粉含有率が40質量%以上の場合に特に好適である。
【0017】
また、大豆粉量の上限も、特に限定されるものではないが、原料粉全質量に対して大豆粉含有率が84質量%以上になると、つながり強度が低下して麺線が切れやすくなったりする。このため、原料粉における大豆粉含有率は84質量%未満が好ましく、より好ましくは81質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0018】
本実施形態の乾燥麺類に配合される大豆粉は、全脂大豆粉及び脱脂大豆粉のいずれでもよく、また、加熱大豆粉及び生大豆粉のいずれでもよいが、全脂大豆粉を用いると麺の風味が向上し、生大豆粉を用いると製麺適性が向上する。更に、大豆の種類も特に限定されるものではなく、黄大豆、黒大豆、赤大豆、青大豆、白大豆、大粒種、中粒種及び小粒種などの各種大豆を用いることができ、リポキシゲナーゼ欠失大豆を用いてもよい。
【0019】
[かんすい]
かんすいは、本実施形態の乾燥麺類において必須の成分であり、大豆含有麺類において大豆臭の原因となるn-ヘキサナールの発生を抑制する作用と、吸水性を向上させて湯戻しや茹で調理後(以下、「茹で上げ後」という。)の麺類を柔らかくする作用がある。このため、原料粉にかんすいを配合することで、大豆粉を30質量%以上含有していても、大豆臭がなく、適度な柔らかさの麺類が得られる。
【0020】
ただし、乾燥麺類におけるかんすい含有率が原料粉全質量に対して0.01質量%未満の場合、前述した効果が十分に得られず、また、乾燥麺類におけるかんすい含有率が2質量%を超えると、かんすい臭が強くなって風味が低下する。そこで、本実施形態の乾燥麺類では、かんすい含有率を、原料粉全質量に対して0.01~2質量%とする。なお、かんすい含有率は、原料粉全質量に対して0.02~1.2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.13~0.19質量%である。かんすい含有率をこの範囲にすることにより、大豆臭やかんすい臭が感じられず、食感や吸水性も良好な大豆含有乾燥麺類が得られる。
【0021】
本実施形態の乾燥麺類に配合されるかんすいは、食品添加物として認められているものであれば特に限定されるものではなく、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム(無水、結晶)及び炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を有効成分とするもの、リン酸二水素ナトリウム(無水、結晶)、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム(無水、結晶)、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム(無水、結晶)及びリン酸三カリウムなどの正リン酸塩、ピロリン酸四ナトリウム(無水、結晶)、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム及びメタリン酸カリウムなどの縮合リン酸塩を有効成分とするものなどを用いることができる。これらのかんすいは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上のかんすいを使用する場合、その合計量が前述した範囲になるように配合すればよい。
【0022】
また、「かんすい」には、粉末かんすいと液体かんすいがあり、本実施形態の乾燥麺類にはそのどちらを用いてもよい。液体かんすいを用いる場合、その配合量を乾燥質量に換算して原料粉全質量及びかんすい含有率を求めればよく、乾燥質量換算で0.01~2質量%となるよう配合すればよい。
【0023】
[多糖類]
サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCなどの多糖類には、大豆含有麺類に適度な硬さを付与する作用がある。そして、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCから選択される1種又は2種以上の多糖類を、前述したかんすいと共に配合することで、茹で上げ後の大豆含有麺類の食感を良好にすることができる。更に、前述した多糖類には、大豆含有麺類の製麺適性や結着性を向上させる作用もある。
【0024】
ただし、乾燥麺類における多糖類の含有率が原料粉全質量に対して0.1質量%未満の場合、前述した効果が十分に得られず、茹で上げ後の食感が低下したり、製麺適性が低下したりする。一方、乾燥麺類における多糖類の含有率が原料粉全質量に対して7質量%を超えると、麺類が硬くなりすぎて食感が低下する。そこで、本実施形態の乾燥麺類では、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCのうち少なくとも1種の多糖類を、原料粉全質量に対して0.1~7質量%の範囲で配合する。
【0025】
多糖類含有率は、原料粉全質量に対して0.2~3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~1.9質量%である。多糖類含有率をこの範囲にすることにより、食感や吸水性に優れた大豆含有乾燥麺類が得られる。なお、ここでいう多糖類の含有率は、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCの合計量である。
【0026】
本実施形態の乾燥麺類に添加される多糖類は、サイリウムシードガム又はHPMCが好ましく、サイリウムシードガム又はHPMCとアルギン酸エステルの併用がより好ましい。大豆含有麺類にサイリウムシードガムやHPMCを添加すると、結着性が向上し、コシのある食感が良好な麺類が得られる。一方、大豆含有麺類にアルギン酸エステルを添加すると、つるっとした滑らかな食感の麺類が得られる。
【0027】
そして、大豆含有麺類にアルギン酸エステルと、サイリウムシードガム又はHPMCを組み合わせて使用すると、適度なコシとなめらかでつるっとした食感の麺類が得られる。具体的には、サイリウムシードガム又はHPMCとアルギン酸エステルを併用する場合、その配合比は、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3又はHPMC:アルギン酸エステル=1:0.01~3とすることが好ましく、これにより、茹で上げ後の大豆含有麺類の食感をより好適なものとすることができる。
【0028】
また、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCの種類は、特に限定されるものではなく、大豆粉配合量やその他の配合成分、求められる食感などに応じて適宜設定することができるが、例えば粘度(溶液での粘度)が高いものを用いると、多糖類の配合量を少なくすることができる。
【0029】
[グルテン]
小麦に含まれるたんぱく質であるグルテンは、麺線の結着性を良好にする作用があり、本実施形態の乾燥麺類では、必要に応じて配合される。本実施形態の乾燥麺類におけるグルテン量は、特に限定されるものではないが、製麺適性向上の観点から、原料粉中に5~15質量%の割合で配合されているか、又は、前述した大豆粉100質量部に対して10~29質量部配合されていることが好ましい。
【0030】
本実施形態の乾燥麺類においてグルテンは、主にグルテン粉として添加されるが、原料粉として小麦粉を配合する場合には、小麦粉中のグルテン(たんぱく質)も含む。グルテン粉のみ配合する(小麦粉が含まれない)場合は、グルテン粉中のたんぱく質の量が前述した範囲になるよう配合すればよく、更に原料粉に小麦粉が含まれる場合は、グルテン粉中のたんぱく質と小麦粉中のたんぱく質の総量が前述した範囲になるようにそれぞれ配合すればよい。
【0031】
[その他の原料]
本実施形態の乾燥麺類に用いられる原料粉には、前述した各成分の他に、大豆粉以外の穀粉や澱粉類が配合されていてもよい。大豆粉以外の穀粉としては、例えば小麦、大麦及びライ麦などの麦類、米、蕎麦及びトウモロコシなどの穀物を、必要に応じて精選、洗浄又は精白し、生のまま又は熱加工してアルファー化した後、製粉(粉化)したものなどが挙げられる。
【0032】
これらの穀粉は、用途や目的に応じて適宜選択して使用すればよく、単独で用いても、複数の穀粉を組み合わせて使用してもよい。例えばうどん、冷や麦、そうめん、中華麺及びパスタなどを製造する場合は小麦粉、そばを製造する場合はそば粉又はそば粉と小麦粉、ビーフンやフォーなどを製造する場合は米粉が用いられる。
【0033】
また、澱粉類としては、例えばコーンスターチ、馬鈴薯、かんしょ、タピオカ、サゴ椰子、小麦、米、葛、わらび、蓮根、緑豆及びその他の豆類由来の澱粉が挙げられ、生澱粉の他、α化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉及び架橋澱粉などの加工澱粉でもよい。これらの澱粉類は、麺の食感改善、麺線の表面をなめらかにする、調理の際の茹で時間短縮などの目的で、必要に応じて添加される。
【0034】
更に、原料粉には、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMC以外の増粘多糖類、食塩、野菜粉末、マンナン粉、粉末油脂、色素、アミノ酸類、糖類、デキストリン、乾燥卵白、pH調整剤、日持向上剤などが添加されていてもよい。
【0035】
本実施形態の乾燥麺類には、前述した原料粉以外に、例えば、水、醸造酢、酒精、酵母、香料、しょうゆ、豆乳、牛乳及びその加工品、昆布やかつおなどのダシ原料が配合されていてもよい。原料粉以外の原料及びその配合量は、麺の種類や目的などに応じて適宜選択し設定することができる。
【0036】
[麺厚]
本実施形態の乾燥麺類の厚さは、特に限定されるものではなく、目的や調理方法に応じて適宜選択することができるが、麺厚を1.5mm以下にすることが好ましく、これにより短時間調理や電子レンジ調理が可能となる。本実施形態の乾燥麺類は、製麺適性に優れるため、麺厚を1.5mm以下にしても圧延により麺帯を形成でき、麺線のつながりも良好である。
【0037】
[製造方法]
次に、本実施形態の乾燥麺類の製造方法について説明する。図1は本実施形態の大豆含有乾燥麺類の製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の乾燥麺類の製造方法では、生地調製工程S1と、製麺工程S2と、乾燥工程S3とを行う。
【0038】
〔生地調製工程S1〕
生地調製工程S1では、原料粉にその他の原料を加えて混練し、生地を調製する。その際、大豆粉を30質量%以上と、かんすいを0.01~2質量%と、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%含有する原料粉を用いる。特に、サイリウムシードガム又はHPMCとアルギン酸エステルを、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3又はHPMC:アルギン酸エステル=1:0.01~3の割合で配合した原料粉を用いることが好ましい。これにより、茹で上げ後の食感がより好適な大豆含有麺類が得られる。
【0039】
本実施形態の乾燥麺類を製造する際は、本発明の効果を阻害しない範囲で、原料粉にグルテンを配合してもよい。その場合、原料粉にグルテン粉を配合してもよく、また、グルテン粉と共に、小麦粉を配合し、グルテンの一部を小麦粉由来のグルテンとしてもよい。
【0040】
生地調製工程S1における生地の調製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法や装置を適用することができる。また、原料の混練は、減圧下で行ってもよい。
【0041】
〔製麺工程S2〕
製麺工程S2では、生地調製工程S1で調製した生地を成形して麺類とする。製麺方法は、特に限定されるものではなく、公知の手法や装置を用いることができるが、生産性の観点から、生地を圧延して麺帯を形成し、該麺帯から麺線を切り出す方法が好適である。なお、生地の圧延は1段で行ってもよく、また、複数対のローラを用いて多段で行ってもよい。
【0042】
又は、圧延に代えて、押出機を用いて麺帯や麺線を形成してもよく、その場合、例えば、生地調製工程S1において真空押出機を用いて原料を混練して生地を調製し、引き続き、製麺工程S2において真空押出機から生地を押し出して麺帯を形成してもよい。
【0043】
〔乾燥工程S3〕
乾燥工程S3では、製麺工程S2で得た麺類を乾燥させる。麺類の乾燥方法は、特に限定されるものではなく、麺類の種類や調理方法に応じて、熱風乾燥法、低温乾燥法、高温高速気流乾燥法、フライ乾燥法及びフリーズドライ法などの公知の方法から適宜選択することができる。
【0044】
〔その他の工程〕
本実施形態の乾燥麺類の製造方法では、前述したS1~S3の各工程に加えて、熟成工程を行ってもよい。熟成工程の時期及び回数は、特に限定されるものではなく、麺帯形成後に行ってもよく、また、麺線形成後に麺塊の状態で行ってもよい。熟成の方法及び条件は、麺の種類に応じて適宜選択することができ、常圧下、減圧下又は加圧下のいずれで行ってもよい。
【0045】
[n-ヘキサナール濃度]
本実施形態の乾燥麺類は、原料粉全質量に対する大豆粉含有率をx質量%としたとき、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法により測定した値から求めたn-ヘキサナール濃度が(0.27×x)ppm以下である。n-ヘキサナールは、大豆臭の原因とされている臭気成分であり、原料粉に配合される大豆粉の量が多くなるほど、乾燥麺類におけるn-ヘキサナール濃度は高くなるが、n-ヘキサナール濃度を(0.27×x)ppm以下にすることで、大豆粉を原料粉全質量に対して30質量以上含有していても、大豆臭が感じられない大豆含有麺類を実現することができる。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態の乾燥麺類は、かんすいと共に、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCのうち少なくとも1種の多糖類を、特定量含有しているため、原料粉中の大豆粉含有率が30質量%以上であっても、大豆臭の発生が抑制され、茹で上げ後にも適度な柔らかさがあり、食感も良好である。また、本実施形態の乾燥麺類は、製麺適性も優れ、麺線のつながりも良好である。そして、本実施形態の乾燥麺類は、短時間調理や電子レンジ調理を行うことを目的に麺厚を薄くした麺類に特に好適である。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態の第2の実施形態に係る麺セットについて説明する。本実施形態の麺セットは、前述した第1の実施形態の大豆含有乾燥麺類と、調味液とを備える。本実施形態の麺セットに用いられる麺類は、前述した第1の実施形態の乾燥麺類であればよく、その種類は特に限定されず、うどん、そば、中華麺、パスタ及びビーフンなどの各種麺類を用いることができる。また、調味液は、麺類を調味するものであればよく、めんつゆ、濃縮スープ、パスタソースなどが挙げられ、液体成分の他に具材を含んでいてもよい。
【0048】
また、乾燥麺類の調理方法も特に限定されるものではなく、湯戻しや茹で調理など麺類の種類や麺セットの形態に応じて、適宜選択することができる。また、麺厚が薄い麺類を用いることで、短時間調理や電子レンジでの調理も可能である。
【0049】
本実施形態の麺セットは、大豆粉と共に、かんすいと、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びHPMCのうち少なくとも1種の多糖類を特定量含有する大豆含有乾燥麺類を用いているため、その麺類は、大豆臭が抑制され、茹で上げ後の食感も良好である。
【実施例
【0050】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。
【0051】
(第1実施例)
本発明の第1実施例として、多糖類にサイリウムシードガムを用い、かんすいの含有率を変えて大豆含有乾燥麺を作製し、風味(大豆臭・かんすい臭の有無)、吸水性及び茹で上げ後の食感を評価した。
【0052】
<乾燥麺の作製方法>
評価用麺は、図1に示す方法で作製した。具体的には、先ず、下記表1~3に示す原料組成物を手で1分間攪拌混合し、得られた生地を製麺ロールにて圧延を繰り返し、1.3mmの厚さになるよう調整して麺帯を形成した。その際、大豆粉には非加熱の全脂大豆粉(大豆粉A)と加熱全脂大豆粉(大豆粉B)を用い、グルテン粉は乾燥状態でのたんぱく質含有量が75質量%以上のバイタルグルテン、小麦粉は乾燥状態でのたんぱく質含有量が12質量%の強力粉を用いた。かんすいは、No.15の試料はリン酸二ナトリウムを用い、その他の試料には炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの混合粉末を用いた。サイリウムシードガムは、25℃の0.5%水溶液における粘度が100mPa・sのものを用いた。
【0053】
次に、圧延成形した麺帯から麺線を切刃にて切り出し、恒温恒湿機により乾燥して実施例及び比較例の乾燥麺を得た。
【0054】
<評価用試料の調製>
実施例及び比較例の各乾燥麺68gを、800ml~1Lのお湯で5~7分間茹でて評価用試料とした。
【0055】
<評価方法>
(1)大豆臭
「大豆臭」の評価は、5~7名の専門パネル(訓練期間:1~5年)により下記の5段階で官能評価し、平均点が4点以上のものを○(良)、平均点が2点以上4点未満のものを△(可)、平均点が2点未満のものを×(不可)とした。
5点:大豆の香りが全く感じられない。
4点:大豆の香りがわずかに(大豆粉と小麦粉を、質量比で、25:75で混合したものと同程度)感じられる。
3点:大豆の香りがやや(大豆粉と小麦粉を、質量比で、50:50で混合したものと同程度)感じられる。
2点:大豆の香りが(大豆粉と小麦粉を、質量比で、75:25で混合したものと同程度)感じられる。
1点:大豆の香りが強く(大豆粉そのものと同程度)感じられる。
【0056】
(2)かんすい臭
「かんすい臭」の評価は、5~7名の専門パネル(訓練期間:1~5年)により下記の3段階で官能評価し、平均点が2.5点以上のものを○(良)、平均点が1.5点以上2.5点未満のものを△(可)、平均点が1.5点未満のものを×(不可)とした。
3点:かんすいの臭いが全くしない。
2点:かんすいの臭いが感じられるが、許容できる範囲内である。
1点:かんすいの臭いが強く感じられる。
【0057】
(3)麺の食感
「食感」の評価は、城北麺工株式会社製 無塩 羽黒そば(以下、「基準麺」という。)68gを、800ml~1Lのお湯で所定時間茹でたものを基準として、下記の5段階で官能評価し、平均点が2.5点以上3.5点未満のものを○(良)、平均点が1.5点以上2.5点未満のもの及び平均点が3.5点以上4.5点未満のものを△(可)、平均点が1.5点未満及び平均点が4.5点以上のものを×(不可)とした。
5点:柔らかい(9分を超え10分以下の範囲で基準麺を茹でたときの食感と同程度)。
4点:やや柔らかい(8分を超え9分以下の範囲で基準麺を茹でたときの食感と同程度)。
3点:丁度よい硬さ(7分を超え8分以下の範囲で基準麺を茹でたときの食感と同程度)。
2点:やや硬い(5分を超え6分以下の範囲で基準麺を茹でたときの食感と同程度)。
1点:硬い(4分を超え5分以下の範囲で基準麺を茹でたときの食感と同程度)。
【0058】
(4)吸水性
「吸水性」は、実施例及び比較例の各乾燥麺68gを5分間茹で、ざるで湯切りした後、得られた茹で麺の質量を計測し、170g以上185g以下であったものを○(良)、155g以上170g未満又は185gを超え195g未満であったものを△(可)、155g未満又は195g以上のものを×(不可)とした。
【0059】
(5)総合評価
「総合評価」は、前述した「大豆臭」、「かんすい臭」、「食感」及び「吸水性」の評価点のうち、1つでも×があるものは×(不可)、×はないが△が3~4個のものを△(可)、×がなく△が1~2個のものを○(良)、全て○のものを◎(優)とした。
【0060】
以上の結果を、下記表1~3に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
上記表1~3に示すように、かんすいを配合していないNo.1の試料は、大豆臭が強く、麺の食感も劣っていた。また、かんすい含有量が2質量%を超えているNo.12の試料は、大豆臭は抑制できたが、かんすい臭が強くなり、風味が劣っていた。また、No.12の試料は、茹で上げ後の麺が適性範囲よりも軟らかくなり、食感や吸水性も劣っていた。多糖類を添加していないNo.16の試料は、大豆臭は抑制できたが、茹で上げ後の麺が適性範囲よりも軟らかくなり、食感が劣っていた。
【0065】
これに対して、かんすいを0.01~2質量%、サイリウムシードガムを0.2~7質量%の範囲で含有するNo.2~11,13~15,17~23の試料は、大豆臭が抑制され、食感も良好であった。
【0066】
(第2実施例)
本発明の第2実施例として、多糖類の種類を変えて大豆含有乾燥麺を作製し、大豆臭、吸水性及び茹で上げ後の麺類の食感を評価した。具体的には、前述した第1実施例と同様の方法及び条件で評価用麺を作製し、第1実施例と同様の方法及び基準で風味(大豆臭・かんすい臭の有無)、吸水性及び茹で上げ後の食感を評価した。
【0067】
その際、多糖類には、25℃の0.5%水溶液における粘度が100mPa・sのサイリウムシードガム、20℃の2%水溶液における粘度が75000~140000mPa・sのHPMC、20℃の1%水溶液における粘度が100~150mPa・sのアルギン酸エステルを用い、その他の原料は第1実施例と同じにした。その評価結果を、下記表4,5に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
上記表4,5に示すように、7質量%を超えて多糖類を添加したNo.33の試料は、茹で上げ後の麺が硬く、食感が劣っていた。これに対して、かんすいを0.01~2質量%、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%の範囲で含有するNo.30~32,34~37の試料は、大豆臭が抑制され、食感も良好であった。
【0071】
また、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3であるNo.36,42,43の試料、及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3であるNo.37,39,40,41の試料は、他の試料よりも麺のつるみが増し、もっちりとした食感であった。この結果から、サイリウムシードガム又はヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸エステルの比を上記範囲にすることにより、茹で上げ後の大豆含有麺類の食感が更に好適なものとなることが確認された。
【0072】
(第3実施例)
本発明の第3実施例として、かんすい含有率が異なる大豆含有乾燥麺類(第1実施例のNo.1,4~8の試料)について、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法により、大豆の青臭さの原因と言われている「n-ヘキサナール」の濃度を測定した。
【0073】
測定は、粉砕した大豆含有乾燥麺類1gと3mlの純水を20mlのバイアルに封入し、トラップ温度を40℃/240℃(脱離 温度)とし、キャリアガスは水素を用いて行った。カラムはメタルキャピラリーカラム(MXT-5・MXT-WAX)を用い、カラム昇温条件は初期温度40℃、初期恒温時間10秒、昇温速度は1.5℃/秒にて40℃から250℃に到達させ、FID温度は260℃にて検出を行った。この測定を同一サンプルについて3回ずつ行い、その平均値をとった。n-ヘキサナールの各濃度は、クロマトグラム上のピーク面積から、n-ヘキサナール標準品(Sigma-Aldrich社製)を外部標準とした検量線にて算出した。この方法で測定した各試料のn-ヘキサナール濃度を下記表6に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
上記表6に示すように、多糖類と共に、かんすいを0.01~2質量%の範囲内で配合したNo.4~8の試料(大豆粉含有率:約52質量%)は、いずれもn-ヘキサノール濃度が0.27×52=14ppm以下であり、かんすいを配合していないNo.1の試料(大豆粉含有率:約52質量%)に比べてn-ヘキサノール濃度が低下していた。この結果から、かんすいの添加により大豆臭が抑制されていることが確認された。
【0076】
以上の結果から、本発明によれば、原料粉に大豆粉が30質量%以上含まれていても、大豆臭が抑制され、茹で上げ後の食感が良好な大豆含有乾燥麺類が得られることが確認された。
【0077】
なお、本発明は、以下の構成を採ることもできる。
〔1〕
原料粉全質量に対して、
大豆粉を30質量%以上と、
かんすいを0.01~2質量%と、
サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%と
を含有する大豆含有乾燥麺類。
〔2〕
グルテンを含有する〔1〕に記載の大豆含有乾燥麺類。
〔3〕
更に、小麦粉を含有し、前記グルテンの一部が前記小麦粉由来のグルテンである〔2〕に記載の大豆含有乾燥麺類。
〔4〕
大豆粉含有量が、原料粉全質量に対して、40質量%以上84質量%未満である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の大豆含有乾燥麺類。
〔5〕
前記多糖類としてサイリウムシードガムとアルギン酸エステルを含有し、
その配合比が、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の大豆含有乾燥麺類。
〔6〕
前記多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸エステルを含有し、
その配合比が、質量比で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の大豆含有乾燥麺類。
〔7〕
〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の大豆含有乾燥麺類と、調味液とを備える麺セット。
〔8〕
大豆粉を30質量%以上と、かんすいを0.01~2質量%と、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%含有する原料粉を用いて生地を調製する工程と、
該生地を成形して麺類を得る製麺工程と、
前記麺類を乾燥させる乾燥工程と、
を有する大豆含有乾燥麺類の製造方法。
〔9〕
前記原料粉はグルテンを含有する〔8〕に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
〔10〕
前記原料粉は、更に、小麦粉を含有し、前記グルテンの一部が前記小麦粉由来のグルテンである〔9〕に記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
〔11〕
前記原料粉は、前記多糖類としてサイリウムシードガムとアルギン酸を含有し、
その配合比が、質量比で、サイリウムシードガム:アルギン酸エステル=1:0.01~3である〔8〕~〔10〕のいずれかに記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
〔12〕
前記原料粉は、前記多糖類としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルギン酸エステルを含有し、その配合比が、質量比で、ヒドロキシプロピルメチルセルロース:アルギン酸エステル=1:0.01~3である〔8〕~〔10〕のいずれかに記載の大豆含有乾燥麺類の製造方法。
〔13〕
原料粉全質量に対する大豆粉含有率が30質量%以上である大豆含有乾燥麺類であって、
前記大豆粉含有率をx質量%としたとき、ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィー法による測定値から求めたn-ヘキサナール濃度が(0.27×x)ppm以下である大豆含有乾燥麺類。
【要約】
【課題】原料粉に大豆粉が30質量%以上含まれていても、大豆臭が抑制され、食感が良好な大豆含有乾燥麺類、麺セット及び大豆含有乾燥麺類の製造方法を提供する。
【解決手段】大豆粉を30質量%以上と、かんすいを0.01~2質量%と、サイリウムシードガム、アルギン酸エステル及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうち少なくとも1種の多糖類を合計で0.1~7質量%含有する原料粉を用いて調製された生地を成形した後、乾燥させて大豆含有乾燥麺類とする。
【選択図】図1
図1