IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-29
(45)【発行日】2024-11-07
(54)【発明の名称】変形可能な基板チャック
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20241030BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241030BHJP
【FI】
B24B37/30 E
H01L21/304 622K
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024017728
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2022544713の分割
【原出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2024069195
(43)【公開日】2024-05-21
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】63/045,023
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ズニガ, スティーブン エム.
(72)【発明者】
【氏名】グルサミー, ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲンガスト, アンドリュー ジェー.
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0073381(US,A1)
【文献】特開2015-168015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアヘッドであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに対して垂直方向に可動であるように前記ハウジングに接続された支持アセンブリであって、支持プレートと、流体不透過性の複数の可撓性パーツとを含み、流体不透過性の前記複数の可撓性パーツは、前記支持プレートよりも可撓性が高く、前記支持プレートに固定され、且つ前記支持プレートの下方に延びて、基板に圧力を加えるように前記支持プレートの下方に複数の個別に加圧可能な下方チャンバを提供するためのものである、支持アセンブリと、
少なくとも1つの上方バリアであって、前記少なくとも1つの上方バリアは、複数の第1のゾーンにおいて前記支持プレートの上面に圧力を加えるために前記支持プレートと前記ハウジングとの間の空間を複数の個別に加圧可能な上方チャンバに分割するものであり、前記支持プレートが、前記上方チャンバ間の圧力差のもとで曲がるように十分に可撓性がある、少なくとも1つの上方バリアと、
を備えた、キャリアヘッド。
【請求項2】
前記支持プレートは、0.4~10Pa・mの曲げ剛性を有する、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項3】
前記支持プレートは金属またはプラスチックであり、前記複数の可撓性パーツはエラストマである、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項4】
前記支持プレートはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であり、2.5mmと7.0mmの間の厚さを有する、または、前記支持プレートはステンレス鋼であり、0.6mmと1.8mmの間の厚さを有する、請求項3に記載のキャリアヘッド。
【請求項5】
前記エラストマが、ゴム又はシリコーンを含む、請求項3に記載のキャリアヘッド。
【請求項6】
前記複数の可撓性パーツが、ショアA硬度30~60を有する、請求項3に記載のキャリアヘッド。
【請求項7】
前記複数の可撓性パーツが、単一の成形部品によって設けられる、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項8】
前記下方チャンバは、前記上方チャンバよりも狭い、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項9】
前記上方チャンバよりも前記下方チャンバのゾーンの数が多い、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項10】
前記支持プレートと前記ハウジングの間の空間は、2から10の上方チャンバに分割される、請求項9に記載のキャリアヘッド。
【請求項11】
前記複数の可撓性パーツは、4~100の個別に加圧可能な下方チャンバを提供する、請求項9に記載のキャリアヘッド。
【請求項12】
各上方チャンバの下方の領域は、複数の下方チャンバに分割される、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項13】
前記支持プレートは、曲げ剛性が、ケイ素で形成され前記キャリアヘッド上で適合するよう成形された平面的な基板の曲げ剛性の1~25倍である、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項14】
前記複数の可撓性パーツは、前記支持プレートの底部から突出し、前記基板が前記キャリアヘッド内にロードされたとき、前記複数の可撓性パーツが前記基板と接触して前記支持プレートと前記基板との間の空間を前記下方チャンバに分割するように、配置され構成された、請求項1に記載のキャリアヘッド。
【請求項15】
化学機械研磨システムであって、
研磨面を有するプラテンと、
キャリアヘッドであって、
ハウジングと、
前記ハウジングに対して垂直方向に可動であるように前記ハウジングに接続された支持アセンブリであって、支持プレートと、流体不透過性の複数の可撓性パーツとを含み、流体不透過性の前記複数の可撓性パーツは、前記支持プレートよりも可撓性が高く、前記支持プレートに固定され、且つ前記支持プレートの下方に延びて、基板に圧力を加えるように前記支持プレートの下方に複数の個別に加圧可能な下方チャンバを提供するためのものである、支持アセンブリと、
少なくとも1つの上方バリアであって、前記少なくとも1つの上方バリアは、複数の第1のゾーンにおいて前記支持プレートの上面に圧力を加えるために前記支持プレートと前記ハウジングとの間の空間を複数の個別に加圧可能な上方チャンバに分割するものであり、前記支持プレートが、前記上方チャンバ間の圧力差のもとで曲がるように十分に可撓性がある、少なくとも1つの上方バリアと、
を備えた、キャリアヘッドと、
前記上方チャンバ及び前記下方チャンバに接続された1つ以上の圧力源と、
前記基板の形状を測定するよう構成されたインシトゥ監視システムと、
前記インシトゥ監視システム及び前記1つ以上の圧力源に接続されたコントローラであって、前記基板の前記形状に基づいて圧力を制御するよう構成されたコントローラと、
を備えた、化学機械研磨システム。
【請求項16】
前記コントローラは、前記基板を変形させるための前記下方チャンバへの圧力を制御するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記インシトゥ監視システムは、光学的監視システムを備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、基準形状に対する前記基板の変形を測定するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)で使用するためのキャリアヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、半導体ウエハ上に導電層、半導体層、又は絶縁層を順次堆積させることによって、基板上に形成される。様々な製造プロセスでは、基板上の層の平坦化が必要となる。例えば、1つの製造ステップは、平面的ではない表面上に充填層を堆積させ、充填層を平坦化することを含む。特定の用途のために、充填層は、パターン層の上面が露出するまで平坦化される。例えば、パターニングされた絶縁層上に金属層を堆積させて、絶縁層内のトレンチ及び孔を充填することが可能である。平坦化の後で、パターニングされた層のトレンチ内及び孔内に残っている金属の部分によって、基板上の薄膜回路間の導電経路を提供するビア、プラグ、及び線が形成される。他の例として、パターニングされた導電層の上に誘電体層を堆積させ、次いで、後続のフォトリソグラフィステップを可能にするために平坦化することが可能である。
【0003】
化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)は、認められた平坦化方法の1つである。この平坦化方法では、典型的に、キャリアヘッド上に基板を取り付けることが必要となる。基板の露出表面が、典型的に、回転する研磨パッドに当たるように配置される。キャリアヘッドが、制御可能な荷重を基板にかけて、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨粒子を含む研磨スラリが、典型的に、研磨パッドの表面に供給される。
【発明の概要】
【0004】
一態様において、キャリアヘッドが、ハウジングと、ハウジングに対して垂直方向に可動であるようにハウジングにフレキシブルに接続された支持プレートを有する支持アセンブリと、支持プレートの底部から突出した、支持プレートの底部側で開口する複数の凹部を画定する複数の流体不透過性バリアと、空気圧制御線と、を備える。支持プレートとハウジングとの間の空間が、1つ以上の第1のゾーン内で支持プレートの上面に圧力を加えるための1つ以上の個別に加圧可能な第1のチャンバを含む。バリアは、平面的な基板がキャリアヘッド内へとロードされたときには、バリアが基板と接触して支持プレートと基板との間の空間を複数の第2のチャンバに分割するように、配置され構成される。空気圧制御線が、複数の個別に加圧可能な第2のゾーンを提供するよう複数の凹部と接続されている。
【0005】
想定される利点として以下のうちの1つ以上が挙げられるが、これらには限定されない。変形可能な基板チャックは、追加のプロセス調整パラメータを提供し、圧力分解能を改善することが可能である。というのは、複数のマイクロゾーンが、圧力及び真空を使用して、基板形状を制御する(例えば、基板における屈曲又は湾曲の度合いを制御する)ことが可能であり、1つ以上のマクロゾーンが、基板に対して研磨圧力を加えることが可能であるからである。
【0006】
変形可能な基板チャックは、基板の形状及び研磨パッドの剛性に従って基板全体に圧力を分散させることによって、例えば、付加的な圧力が必要な基板の部分において印加する圧力を増大させることによって、かつより小さな圧力が必要な基板の部分において印加する圧力を低減することによって、ウエハ内の均一性を改善することが可能である。さらに、基板の形状及び研磨パッドの剛性に従って圧力が分散されるため、各基板に適用される研磨プロファイルを調整することによって、ウエハ間の均一性を改善することが可能である。インシトゥ(In-situ)計測を使用して、基板の形状を測定することが可能であり、このデータをコントローラへのフィードバックとして使用して、目標の形状を実現するために圧力を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】研磨システムの概略的な断面図である。
図2】キャリアヘッドの概略的な断面図である。
図3A】支持アセンブリ及び基板の概略的な断面図である。
図3B】支持アセンブリによって図3Aの基板に加えられる力の概略的な断面図である。
図3C】研磨パッド上の図3Bの変形した基板の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
幾つかの研磨処理では、基板の表面に亘って厚さの不均一性が生じる。不均一性の原因の1つは、基板の形状のばらつきである。研磨される基板が均一な厚さを有していると仮定しても、基板全体が非平面的であり、例えば、凹状又は凸状の湾曲を有し又はポテトチップのように湾曲しているということが起こりうる。この曲率はわずか、例えば最大数十ミクロンでありうるが、作製される構造よりもはるかに大きなスケールで、例えば1~10cmの横方向距離に亘って生じる。このような非平面的な基板が研磨パッドに押し付けられると、湾曲又は凸凹がもたらす基板の「ピーク」が、研磨パッドに対してより強く押し付けられ、従って研磨中により高い圧力を受ける。従って、キャリアヘッドによって均一な圧力がウエハの裏面に加えられていたとしても、基板の一部の領域がより高い割合で研磨され、これらの領域が過度に研磨されることに繋がりうる。
【0009】
この問題に対処するために、「形状ベースの(shape-based)」アプローチを使用して、基板の形状及び研磨支持パッドの剛性に従って圧力を分散させることが可能である。1つ以上のマクロゾーンが、研磨支持パッドに圧力を加えるために使用可能であり、圧力入力及び真空入力を含む複数のマイクロゾーンが、基板の形状を制御するために使用可能である。
【0010】
図1は、1つ以上のキャリアヘッド140(1つだけ図示)を含む研磨システム100の一例を示している。各キャリアヘッド140は、ウエハといった基板10を、研磨のために研磨パッド110に当てて保持するよう動作可能である。各キャリアヘッド140は、各対応する基板と関連付けられた研磨パラメータ、例えば圧力を個別に制御することが可能である。
【0011】
各キャリアヘッド140は、例えばカルーセル又はトラックといった支持構造150から懸架されており、かつ駆動シャフト152によってキャリアヘッドの回転モータ154に接続されており、これにより、キャリアヘッドは、軸155の周りを回転することが可能である。任意選択的に、各キャリアヘッド140は、カルーセル自体の回転振動によって又はトラックに沿ってキャリアヘッド140を支持する運び台の動きによって、例えばカルーセル150のスライダ上を横方向に振動することが可能である。
【0012】
研磨システム100に含まれるプラテン120は、回転可能なディスク形状のプラテンであり、当該プラテン上に研磨パッド110が位置している。プラテンは、軸125の周りを回転するよう動作可能である。例えば、モータ121が、駆動シャフト124を回してプラテン120を回転させることが可能である。研磨パッド110は二層の研磨パッドとすることができ、外側の研磨層112が、研磨面113と、より柔らかいバッキング層114と、を有する。
【0013】
研磨システム100は、スラリといった研磨液132を、研磨パッド110上のパッドへと分注するためのポート130を含みうる。研磨装置は、研磨パッド110を研磨して当該研磨パッド110を一定の研磨状態に維持する研磨パッドコンディショナも含みうる。コンディショニングは、一定の速度で研磨パッドを磨耗させる可能性もある。
【0014】
稼働時には、プラテンは、自身の中心軸125の周りを回転させられ、各キャリアヘッドは、自身の中心軸155の周りを回転させられ研磨パッドの上面全体を横方向に平行移動させられる。
【0015】
キャリアヘッド140が1つだけ示されているが、より多くのキャリアヘッドを設けて追加の基板を保持することが可能であり、これにより、研磨パッド110の表面積が効率良く使用されうる。従って、同時の研磨プロセスのために基板を保持するよう適合されたキャリアヘッドアセンブリの数が、少なくとも部分的には、研磨パッド110の表面積に基づきうる。
【0016】
幾つかの実現において、研磨装置は、インシトゥ(in-situ)監視システム160を含む。インシトゥ監視システムは、研磨中の基板から反射された光のスペクトルを測定するために使用しうる光学的な監視システム、例えば分光学的監視システムとすることができる。研磨パッドを通る光アクセスが、開穴(すなわちパッドを貫通する孔)又は中実の窓118を含むことによって設けられる。インシトゥ監視システムは、代替的又は追加的に、渦電流監視システムを含みうる。
【0017】
幾つかの実現において、監視システム160が、2つの研磨装置間又は研磨装置と移送ステーションとの間に配置されたプローブ(図示せず)を有するインシーケンス(in-sequence、順次)光学的監視システムである。監視システム160は、研磨中に、基板のゾーンの1つ以上の特徴を連続的又は周期的に監視することが可能である。例えば、1つの特徴は基板の各ゾーンの厚さである。
【0018】
インシトゥ又はインシーケンスのいずれの実施形態においても、監視システム160は、光源162、光検出器164、及び、遠隔コントローラ190、例えばコンピュータと、光源162と、光検出器164と、の間で信号を送受信するための回路166を含みうる。1つ以上の光ファイバ170を使用して、光源162からの光を研磨パッド内の光アクセスへと伝送し、さらに、基板10から反射された光を検出器164へと伝送することが可能である。
【0019】
図1図2を参照すると、キャリアヘッド140が、ハウジング102、保持リング142、及びハウジング102内の支持アセンブリ200を含む。
【0020】
保持リング142は、支持アセンブリ200の下方に基板10を保持するよう構成されている。保持リング142は、垂直方向に可動にハウジング102に接続された浮動する保持リングでありうる。シール206、例えば、環状のフレクチャ、回転ダイヤフラム、又はベローズを使用して、保持リング142をハウジング102に接続し、加圧可能なチャンバ215を形成することが可能であり、この加圧可能なチャンバ215が、保持リング142の垂直位置の制御、及び保持リング142への下向きの圧力の制御を可能とする。加圧可能なチャンバ215は、個別に制御可能な圧力源220に接続されうる。例えば、各チャネル222上の弁224が、加圧可能なチャンバ215に流入するガスの流量を調節することが可能である。
【0021】
支持アセンブリ200は、支持プレート202を含む。支持プレート202は、基板10全体に及ぶように十分に広くすることが可能である。支持プレートがしなやか過ぎる場合、支持プレートは、基板に対する形状変更を強化することができない。しかしながら、支持プレートが硬すぎる場合、背面の圧力分散に対する応答を抑え過ぎている。支持プレート202の最適な剛性は、形状の制御可能性と、印加される圧力の分解能と、の間のトレードオフである。
【0022】
ハウジング102と支持プレート202との間の空間が、フレキシブルで流体不透過性の1つ以上の第1のバリア208によって、例えば、環状のフレクチャ、回転ダイヤフラム、又はベローズによって、複数の上方チャンバ210に分割される。第1のバリア208によって、支持プレート202は、ハウジング102に対して垂直方向に移動することが可能となる。第1のバリア208はまた、支持プレート202をハウジング102に固定するために役立ちうるが、ハウジング又は他の機構から内方に突出するフランジが、支持プレート202の下方への動きを制限するため及び/又はフレキシブルなバリア208が伸長し過ぎることを防止するために、使用されうる。1~10個の上方チャンバ210が存在しうる。上方チャンバの数は、支持プレート202の剛性に基づいて選択されうる。一般に、プレートの剛性が高いほど、必要とされる上方チャンバが少なくなる。強固な支持プレートの場合、1つ又は2つの上方チャンバが適切でありうる。上方チャンバ210は、1つ以上の圧力源220を使用してチャネル222を介して加圧されうる。各上方チャンバ210は、個別に制御可能な圧力源220に接続することが可能である。例えば、各チャネル222上の圧力調整器224が、各上方チャンバ210内の圧力を調整することが可能である。
【0023】
複数の流体不透過性の第2のバリア204が、支持プレート202の底面に固定されうる。第2のバリア204は、支持プレート202の底面からほぼ垂直方向に下方に、例えば支持プレート202から直角に延在しうる。支持プレート202より下方の第2のバリア間の間隙が、支持プレート202の底端で開口する凹部を画定する。
【0024】
幾つかの実現において、第2のバリア204が、第2のバリア204と同じ材料で形成された裏当て膜から下方に延在する。膜の裏面は、支持プレートに当接することができ、例えば接着剤によって、又はクランプといった機械的固定具によって取り付けられうる。第2のバリア204は、単一の成形部品によって設けることが可能であり、例えば、裏当て膜から下方に延びる隆起部として又は裏当て膜を必要としない相互接続したメッシュとして、設けられうる。代替的に、第2のバリア204が、支持プレート202に個別に固定される別々のパーツとして設けられうる。
【0025】
流体不透過性の第2のバリア204は、軟質で圧縮性を備えうる。例えば、流体不透過性の第2のバリア204は、ショアA硬度30~60及び/又は弾性率が50MPa未満の材料から形成されうる。第2のバリア204は、エラストマ、例えば熱可塑性エラストマとすることができる。第2のバリアは、シリコーンゴムといったゴム材料とすることができる。幾つかの実現において、第2のバリアは、支持プレート202よりも高い弾性及び/又は圧縮性を備える。
【0026】
第2のバリア204は軟質で圧縮性を備えるが、キャリアヘッド140のための3つの構成が、支持プレート202の曲げ剛性に従って可能であり、そのそれぞれが、関連付けられた動作モードを有する。
【0027】
第1に、キャリアヘッド140が、基板を変形させず印加する圧力を分散させて基板を真空チャックするために使用されうる。この場合、コンプライアントな(compliant、柔な)シール層及びコンプライアントな支持プレート202が使用されうる。これは、コンプライアント/コンプライアントの組合せと称しうる。この場合、支持プレート202の曲げ剛性は、基板の曲げ剛性の0.1~1倍の範囲内にありうる。
【0028】
第2に、キャリアヘッド140が、基板を変形させ印加する圧力を分散させて基板を真空チャックするために使用されうる。このケースでは、コンプライアントなシール層及び半硬質の(semi-rigid)支持プレート202が使用されうる。これは、半硬質/コンプライアントの組合せと称しうる。このケースでは、支持プレート202の曲げ剛性は、基板の曲げ剛性の1~25倍の範囲内にありうる。支持プレート202が硬すぎる場合には、支持プレート202は、圧力分散が基板の前面に伝達されるように、基板の背面に対して圧力分散を適用することができない。
【0029】
例えば、支持プレート202は、金属、例えばステンレス鋼、又はプラスチック、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から作製されうる。先に記載の曲げ剛性を実現するために、PEEKで形成された支持プレートは、約2.5mmと7.0mmとの間の厚さを有することができ、ステンレス鋼で形成された支持プレートは、約0.6mmと1.8mmとの間の厚さを有することができる。支持プレートが、基板を変形させるためではなく、基板をチャックするためにのみ使用される場合には、支持プレートはより一層可撓性を備えてよく、例えば基板の剛性の0.01~1.0倍でありうる。先に記載の曲げ剛性を実現するために、PEEKで形成された支持プレートは、約0.5mmと2.5mmとの間の厚さを有しうる。
【0030】
第3に、キャリアヘッド140が、基板を変形させるが印加する圧力を分散させずに基板を真空チャックするために使用されうる。この場合、コンプライアントなシール層及び硬質の支持プレート202を使用されうる。この最後のケースでは、支持プレート202に対して均一な圧力が加えられる。これは、硬質/コンプライアントの組合せと称しうる。このケースでは、支持プレート202の曲げ剛性は、基板の曲げ剛性の少なくとも25倍でありうる。
【0031】
曲げ剛性(又は剛性)は、D=Et/12*(1-nu^2)と計算することができ、ここで、Eは曲げ弾性率であり、tは厚さであり、nuはポアソン比である。第1の近似として、基板の曲げ剛性は、下にあるケイ素ウエハの曲げ剛性によって支配される。直径300mmのウエハは、112GPaのヤング率を有する。従って、コンプライアント/コンプライアントの組合せでは、支持プレート202は、約0.02~0.40Pa・mの曲げ剛性を有しうる。半硬質/コンプライアントの組合せでは、支持プレート202は、約0.4~10Pa・mの曲げ剛性を有しうる。硬質/コンプライアントの組合せでは、支持プレート202は、10Pa・mより大きな曲げ剛性を有しうる。
【0032】
第2のバリア204が基板と接触したときには、当該バリアは、支持プレート202と基板10との間の空間を複数の下方チャンバ212に分離する流体密シールを形成することが可能であり、各下方チャンバ212が凹部のうちの1つに対応している。下方チャンバ212は、基板10をキャリアヘッド140にチャックするために減圧されうる。
【0033】
第2のバリア204は、支持プレート202と基板10との間の空間を、複数の下方チャンバ212に分離する。支持プレート202に固定された2~100個の第2のバリア204が存在しうる。特に、各上方チャンバ210より下方の領域が、複数の下方チャンバ212、例えば、2~10個の下方チャンバ212に分割されうる。従って、少なくとも幾つかの第2のバリア204は、上方チャンバを画定する隣り合う第1のバリア202の間に横方向(ただし、隣り合う第1のバリア202より垂直方向に下方)に位置している。第2のバリア204は、環状でありうる。第2のバリア204は、2~100mmの間隔を置いて配置されうる。支持プレート202より下の、中央の下方チャンバは、直径が20~200mmでありうる。例えば、単一の大きな中心ゾーンと、単一の狭い外側ゾーンと、が存在する場合に、(直径300mmの基板について)中心ゾーンは直径200mmを有することができ、外側ゾーンは幅50mmを有することができる。その一方で、下方チャンバ212が10個ある場合、中心ゾーンは直径60mmを有することができ、残りのチャンバはそれぞれ30mmの幅を有することができる。当然のことながら他の構成も可能であり、例えば、キャリアヘッドの外縁に向かって下方チャンバを次第に狭くすることが可能である。
【0034】
図3A図3Cも参照すると、1つ以上の下方チャンバ212は、1つ以上の圧力源220を使用してチャネル222を介して加圧又は減圧することが可能である。各下方チャンバ212は、個別に制御可能な圧力源220に接続することが可能である。例えば、各チャネル222上の弁又は圧力調整器224が、各下方チャンバ212に入るガスの流量を調整することが可能である。マイクロゾーン212が1つだけ圧力源220に接続されているのが示されているが、各下方チャンバ212は、対応する個別に制御可能な圧力源220に接続可能である。しかしながら、幾つかの実現において、複数の下方チャンバ、例えば隣り合う下方チャンバ212の一群が、共通の圧力源220に接続されうる。このケースでは、第2のバリア204は、基板が第2のバリア204に対してチャックされたときに、基板のための支持を提供することが可能である。
【0035】
1つ以上の下方チャンバ212は、1つ以上の真空源230を使用して真空チャネル232を介して減圧することが可能である。各下方チャンバ212は、個別に制御可能な真空源230に接続することが可能である。例えば、各真空チャネル232上の弁234が、各下方チャンバ212から吸引され又は吸い出されるガスの流量を調節することが可能である。下方チャンバ212が1つだけ真空源230に接続されているのが示されているが、各下方チャンバ212が真空源230に接続可能であると理解されたい。
【0036】
1つ以上の下方チャンバ212を減圧することで、対応する下方チャンバ212内に真空を発生させて、キャリアヘッド140内の支持プレート202に基板10をチャックすることが可能である。
【0037】
キャリアヘッドの半硬質/コンプライアントの構成、及び硬質/コンプライアントの構成では、下方チャンバ212は、基板10を変形させるよう制御されうる。例えば、支持プレートは、一部の下方チャンバ212を減圧すると同時に他の下方チャンバ212を加圧することによって基板を曲げさせることが可能な十分な剛性を有する(支持プレート202は、相対的な曲げ剛性に従って基板よりも小さく曲がった状態にある)。
【0038】
キャリアヘッドのコンプライアント/コンプライアントの構成、及び半硬質/コンプライアントの構成では、マクロゾーン210を、圧力源220によって様々な圧力に加圧して、様々な研磨圧力を基板10の様々な領域に加えることが可能である。特に、支持プレート202は、マクロゾーン内で印加された圧力に基づいてわずかに曲がることができ、この圧力差が、第2のバリア204を介して基板に伝達される。支持プレート202が硬すぎる場合には、マクロゾーン210からのいかなる圧力差も、支持プレート202によって吸収される。
【0039】
幾つかの実現において、下方チャンバ212が、基板に対して正味ゼロの下向き力が存在するように、加圧される。
【0040】
インシトゥ(In-situ)計測を使用して、基板の形状を測定することが可能であり、このデータをコントローラへのフィードバックとして使用して、目標の形状を実現するために圧力を調整することが可能である。図1を参照すると、監視システム160が、基板10の形状を測定するために使用されうる。例えば、基準形状に対する基板の変形を測定することが可能である。測定値は、コントローラ190に送信することが可能であり、コントローラ190はその後、研磨のために、1つ以上の圧力源220及び/又は1つ以上の真空源230を制御して、下方チャンバ212を加圧及び/又は減圧して基板10を変形させることが可能である。圧力又は真空のいずれかが基板10を変形させるために使用されうることに注意されたい。幾つかの実現において、公称真空が、(基板を固定するために)全ての下方チャンバ212に対して適用可能であり、「より高度の(higher)」真空、すなわちより低い圧力さえも、基板10を変形させるために、特定の下方チャンバに印加されうる。
【0041】
本明細書に記載のシステムのコントローラ及び他の計算装置部分は、デジタル電子回路で、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、若しくはハードウェアで実装されうる。例えば、コントローラは、コンピュータプログラム製品に、例えば非一過性の機械可読な記憶媒体に格納されたコンピュータプログラムを実行するプロセッサを含みうる。このようなコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても知られる)は、コンパイルされ又は解釈された言語を含む任意の形式のプログラミング言語で書くことができ、スタンドアロンプログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、又は計算環境で使用するのに適した他のユニットとして、を含めた任意の形式で導入されうる。
【0042】
本明細書は特定の実現の詳細を多数含むが、これらは、いかなる発明の範囲、又は特許請求されうるものの範囲も限定すると解釈すべきでなく、特定の発明の特定の実施形態に固有の特徴の説明であると解釈すべきである。別々の実施形態に関連して本明細書に記載された特定の特徴は、1つの実施形態で組み合わせて実行することも可能である。反対に、1つの実施形態に関連して記載された様々な特徴は、複数の実施形態において、別々に又は任意の適切なサブコンビネーション(構成要素の組み合わせ、subcombination)において実現することも可能である。さらに、特徴は、特定の組み合わせにおいて機能するものとして先に記載され、そのようなものとして当初は特許請求されうるが、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴が、場合によっては、その組み合わせから削除されてよく、特許請求される組み合わせが、サブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形例を対象としてよい。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態が記載されてきた。それにかかわらず、様々な変更を行えることが分かるであろう。例えば、
・下方のチャンバは、上側のチャンバよりも大きくてよく又は小さくてよい。
・シール部は、同心円状にある必要はない。例えば、シール部は、パイ形状のゾーンを形成しうる。
・シール部及び支持プレートは、単一の成形体、例えば熱可塑性エラストマ(TPE)から形成されうる。
【0044】
これに対応して、他の実現が以下の特許請求の範囲に入る。
図1
図2
図3A-3C】