IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧 ▶ 長岡パワーエレクトロニクス株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人東京海洋大学の特許一覧

<>
  • 特許-充電器 図1
  • 特許-充電器 図2
  • 特許-充電器 図3
  • 特許-充電器 図4
  • 特許-充電器 図5
  • 特許-充電器 図6
  • 特許-充電器 図7
  • 特許-充電器 図8
  • 特許-充電器 図9
  • 特許-充電器 図10
  • 特許-充電器 図11
  • 特許-充電器 図12
  • 特許-充電器 図13
  • 特許-充電器 図14
  • 特許-充電器 図15
  • 特許-充電器 図16
  • 特許-充電器 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241031BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02J7/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022130165
(22)【出願日】2022-08-17
(65)【公開番号】P2024027398
(43)【公開日】2024-03-01
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514007047
【氏名又は名称】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】田口 範高
(72)【発明者】
【氏名】權藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】前▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大沼 喜也
(72)【発明者】
【氏名】宅間 春介
(72)【発明者】
【氏名】米田 昇平
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-034820(JP,A)
【文献】特開2020-010594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
前記制御部による前記DC/DCコンバータのスイッチングの制御は、前記DC/DCコンバータのスイッチのすべてがオフである第1のモードと、前記DC/DCコンバータのスイッチの少なくともいずれかがオンである複数の第2のモードと、を含み、
前記制御部は、
前記第1のモードから前記複数の第2のモードのうちの1つのモードに切り替える際に、当該2つのモードの間にデッドタイムを設けず、
前記複数の第2のモードに含まれる2つのモードのうちの一方のモードから他方のモードに切り替える際に、前記DC/DCコンバータのスイッチのいずれかがオフからオンに切り替えられるならば、当該一方のモードと当該他方のモードの間にデッドタイムを設ける、充電器
【請求項2】
前記制御部は、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御するための制御信号を三角波比較法で生成し、
前記三角波比較法において用いる三角波を、前記第1のモードの開始時に最大値または最小値になるように設定する、請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
前記制御部による前記DC/DCコンバータのスイッチングの制御は、前記DC/DCコンバータのスイッチのすべてがオフである第1のモードと、前記DC/DCコンバータのスイッチの少なくともいずれかがオンである複数の第2のモードと、を含み、
前記制御部は、
前記第1のモードから前記複数の第2のモードのうちの1つのモードに切り替える際に、当該2つのモードの間にデッドタイムを設けず、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御するための制御信号を三角波比較法で生成し、
前記三角波比較法において用いる三角波を、前記第1のモードの開始時に最大値または最小値になるように設定する、充電器
【請求項4】
制御部は、交流電源から出力される電圧を昇圧する際に、前記交流電源から出力される電力と前記コンデンサから出力される電力との和が一定になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項1に記載の充電器。
【請求項5】
前記制御部は、前記コンデンサにかかる電圧が前記整流器の出力電圧よりも大きくなるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項4に記載の充電器。
【請求項6】
前記制御部は、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも高い期間である充電期間において、前記交流電源から出力される電力の一部を前記コンデンサに充電するように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御し、
前記交流電源から出力される瞬時電力が前記交流電源から出力される電力の平均電力よりも低い期間である放電期間において、前記コンデンサに充電された電力を放電するように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチとを制御する、請求項5に記載の充電器。
【請求項7】
前記制御部は、前記放電期間において、前記第2のスイッチをオフの状態に保つ、請求項6に記載の充電器。
【請求項8】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータのインダクタの動作波形が方形波形により近似可能な動作波形になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチングを制御する、請求項7に記載の充電器。
【請求項9】
前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、請求項1から8のいずれか一項に記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車向け充電器として,種々の絶縁形単相AC/DCコンバータが検討されている。一般的には、電気自動車向け充電器として、力率改善(Power factor Correction(PFC))回路付きのダイオード整流器、直流リンク部の大容量コンデンサ、高周波絶縁形DC/DCコンバータからなる回路構成が用いられる。直流リンク部の大容量コンデンサは単相交流電源による電力の脈動を吸収するだけの容量が必要であり、このような回路構成では、小型化が困難であった。
【0003】
電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器として、非特許文献1には、Dual-Active-Bridge(DAB)コンバータに電力脈動吸収用のアクティブバッファを付加した充電回路とその制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米田昇平,大沼喜也,「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの検討」,半導体電力変換研究会資料,2021, SPC-21-003, pp. 13-18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DABコンバータは、1次側と2次側の両方に、フルブリッジ回路を含んでいる。一般的に、フルブリッジ回路を含んだ回路では、スイッチをオフからオンに切り替える前に、切り替わるスイッチを含むレグのすべてのスイッチがオフになるデッドタイムが設けられる。しかしながら、非特許文献1に開示された充電回路の制御において、DABコンバータのスイッチをオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムを設けた場合、リアクトル電流や出力電流に歪みが生じ、伝送電力の実測値が指令値に比べて小さくなり、効率が落ちてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る一実施形態に係る充電器は、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御部による前記DC/DCコンバータのスイッチングの制御は、前記DC/DCコンバータのスイッチのすべてがオフである第1のモードと、前記DC/DCコンバータのスイッチの少なくともいずれかがオンである複数の第2のモードと、を含み、前記制御部は、前記第1のモードから前記複数の第2のモードのうちの1つのモードに切り替える際に、当該2つのモードの間にデッドタイムを設けない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。
図2】交流電源から出力される瞬時電力pとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pとの関係を示す図である。
図3】各モードにおける各スイッチの状態を示す図である。
図4】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形iとその等価方形波i′を示す図である(降圧シーケンス)。
図5】従来の制御方法による各期間のデューティー比の計算例を示す図である。
図6】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形iとその等価方形波i′を示す図である(昇圧シーケンスI)。
図7】各モードにおける各スイッチの状態を示す図である。
図8】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形iとその等価方形波i′を示す図である(昇圧シーケンスII)。
図9】降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスIIの3つの制御を用いて充電器100を動作させたときのデューティー比を示す図である。
図10】DC/DCコンバータ120のインダクタLの電流iとスイッチS21~S28のスイッチングを説明する図である。
図11】DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合の出力電流Iを説明する図である。
図12】本実施形態におけるデッドタイムTの設定を説明する図である。
図13】本実施形態における出力電流Iを説明する図である。
図14】DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合の波形を得るための三角波と変調波m~mを説明する図である。
図15】変調波m~mの変形を説明する図である。
図16】本実施形態における三角波と変調波m~mを説明する図である。
図17図15の三角波と変調波m~mを用いた際の出力電流Iを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<充電器100>
図1は、本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。充電器100は、整流器110と、DC/DCコンバータ120と、電力脈動吸収回路130と、制御部140と、を有する。充電器100は、単相交流電源200から入力された単相交流電圧vを直流電圧Vdcに変換し、バッテリ300に出力する。
【0011】
整流器110は、DC/DCコンバータ120に接続されたカソード端子111、アノード端子112と、交流電源200に接続するための2つの入力端子113と、を有する。整流器110は、例えば、図1に示すように、4つのダイオードから成るブリッジダイオード整流器であり、交流電源に接続した2つの入力端子111間から入力された交流電流を、直流電流に変換し、カソード端子111から出力する。整流器110は、図1に示すように、インダクタLacとコンデンサCacを有するフィルタFを介して、交流電源200と接続されるようにしても良い。
【0012】
DC/DCコンバータ120は、例えば、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである。DC/DCコンバータ120は、整流器110のカソード端子111に接続した第1の端子121と、整流器110のアノード端子112に接続した第2の端子122と、バッテリ300の正極に接続するための第3の端子123と、バッテリ300の負極に接続するための第4の端子124と、を有する。DC/DCコンバータ120は、変圧器Trと、変圧器Trを挟んで、入力端側(1次側)に4つのスイッチ、第1のスイッチS21、第2のスイッチS22、第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を含むフルブリッジ回路を有し、出力側端側(2次側)に4つのスイッチ、第5のスイッチS25、第6のスイッチS26、第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を含むフルブリッジ回路を有する。8つのスイッチS21~S28の各々は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETは、図1に示すように、スナバコンデンサを有するようにしても良い。
【0013】
DC/DCコンバータ120の1次側のフルブリッジ回路は、第1の端子121と第2の端子122との間に接続された2つのレグ(第1のスイッチS21、第2のスイッチ22を含むレグと第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を含むレグ)を有し、DC/DCコンバータ120の2次側のフルブリッジ回路は、第3の端子123と第4の端子124との間に接続された2つのレグ(第5のスイッチS25、第6のスイッチ26を含むレグと第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を含むレグ)を有する。
【0014】
DC/DCコンバータ120は、変圧器Trの1次側にインダクタLを有する。このインダクタLは、例えば、変圧器Trの漏れインダクタである。
【0015】
また、DC/DCコンバータ120の第3の端子123と第4の端子124との間には、直流コンデンサCdcが接続されている。DC/DCコンバータ120の第3の端子123とバッテリ300の正極との間に、インダクタLdcを接続するようにしても良い。
【0016】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第1のスイッチS31と、第2のスイッチS32と、を有する。
【0017】
電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の一方との間に接続され、電力脈動吸収回路130の第2のダイオードD32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の他方との間に接続されている。このとき、電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31、第2のダイオードD32の各々は、整流器110の入力端子113からインダクタLbへの方向が順方向となるように、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の入力端子113の間に接続されている。このため、整流器110の入力端子113に交流電源200が接続されたとしても、電力脈動吸収回路130のインダクタLbには、直流電流が入力される。
【0018】
電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31は、整流器110のカソード端子111とDC/DCコンバータ120の第1の端子121とを接続する第1のラインLHと、整流器110のアノード端子112とDC/DCコンバータ120の第2の端子122とを接続する第2のラインLLと、の間に、直列に接続されている。バッファコンデンサCbufは、第2のラインLL側に配置され、第1のスイッチ31は、第1のラインLH側に配置されている。第1のスイッチS31は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが、第1のラインLHに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインがバッファコンデンサに接続するようにすると良い。
【0019】
電力脈動吸収回路130の第3のダイオードD33は、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31とを接続するラインと電力脈動吸収回路130のインダクタLbとの間に、インダクタLbからこのラインへの方向が順方向になるように接続されている。
【0020】
電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインと、第2のラインLLと、の間に接続されている。第2のスイッチS32は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインが電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが第2のラインLLに接続するようにすると良い。
【0021】
制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、32のスイッチングを制御する。
【0022】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第2のスイッチS32と、を有しているため、力率改善回路(PFC)として機能することが可能である。このため、本実施形態では、下記のような正弦波電圧v、正弦波電流iが、交流電源200から充電器100に、入力されるように制御することが可能である。
【数1】
ここで、Vは、電源電圧の実効値であり、Iは、電源電流の実効値である。
【0023】
このとき、交流電源200から出力される瞬時電力pは、下記のように、平均電力P(=V)と脈動部分prip(t)(=-Vcos2ωt)の和となり、図2の実線に示すように、平均電力P(図2の破線)を挟んで、交流の角周波数ωの2倍の角周波数で脈動する。
【数2】
【0024】
そこで、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、32のスイッチングを制御することで、電力脈動吸収回路130で交流電源による電力の脈動を吸収し、DC/DCコンバータ120に入力される電力を一定にする。
【0025】
このとき、本実施形態に係る充電器100では、交流電源200から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも高いとき(p>P)と、交流電源200から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも低いとき(p<P)と、で制御を変える。
【0026】
交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも高いとき(p>P)は、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~28と電力脈動吸収回路130の2つのスイッチS31、32のスイッチングを制御することにより、交流電源200から出力される瞬時電力pのうちの脈動部分pripを電力脈動吸収回路130のインダクタLbを介してバッファコンデンサCbufに充電することで、交流電源から出力された電力のうちの平均電力PのみがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも高い期間は、バッファコンデンサCbufが充電される期間(充電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pは、図2の一点鎖線に示すように、マイナスになる。
【0027】
一方、交流電源200から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも低いとき(p<P)は、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、オフの状態に保ちつつ、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御することにより、バッファコンデンサCbufを第1のスイッチS31を介して積極的に放電し、交流電源200から出力される瞬時電力pと平均電力Pの差である脈動部分pripを補償することで、平均電力PがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力pが平均電力Pよりも低い期間は、バッファコンデンサCbufが放電する期間(放電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pは、図2の一点鎖線に示すように、プラスになる。
【0028】
つまり、本実施形態では、制御部140は、交流電源200から出力される瞬時電力pとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pとの和が一定になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31~32のスイッチングを制御する。
【0029】
このように、本実施形態では、放電期間において、積極的に、バッファコンデンサCbufを放電している。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに蓄えられる電力量(つまり、バッファコンデンサCbufの容量)を抑えることが可能であり、バッファコンデンサCbufの小型化が可能である。
【0030】
また、本実施形態では、第2のスイッチS32は、充電期間だけ作動する。このため、本実施形態では、インダクタLbに蓄えられる電力量(つまり、インダクタLbのインダクタンス)を抑えることが可能であり、インダクタLbの小型化が可能である。
【0031】
また、本実施形態では、DC/DCコンバータ120に入力される電力には脈動がない。このため、本実施形態では、DC/DCコンバータ120の変圧器Tr、直流コンデンサCdcの小型化が可能である。
【0032】
以上のように、本実施形態では、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化することが可能である。このため、本実施形態では、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能である。
【0033】
<スイッチングモードと動作波形>
制御部140は、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形iが方形波形により近似可能な動作波形になるように、7つのモードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する。図3は、7つのモードの各々における各スイッチの状態を示す図である。7つのモードには、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のすべてのスイッチがオフになるモード(モード5)が含まれている。
【0034】
図4は、本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形iとその等価方形波i′を示す図である。この動作波形iは、図3に示す7つのモードを、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる。このとき、7つのモードの各々における電流iは、下記のようになる(非特許文献1参照)。
【数3】
ここで、tcn(n=1~7)は、モードnに切り替えられた時間である。
【0035】
本実施形態では、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンであるときにバッファコンデンサCbufをより積極的に放電するために、制御部140は、バッファコンデンサCbufにかかる電圧vが整流器110から出力される瞬時電圧vrecよりも常に大きくなるように制御する。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufにかかる電圧vが整流器110の瞬時電圧vrecと異なる値を持っており、モード2とモード3での動作波形iの傾きが異なる。同様に、モード6とモード7での動作波形iの傾きが異なる。このため、本実施形態では、図4に示されているように、正での波形と負での波形がi=0に対して非対称である動作波形を生成することができる。
【0036】
図4に示した動作波形iにおいて、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|となるようにt~t10を設定し、|t-t|=|tS1-t|=|tS2-t|となるように、tとtの間にtS1を、tとtの間にtS2を設定すると、動作波形iは、等価方形波形i′により近似することができる。
【数4】
【0037】
等価方形波形i′のt≦t<t、tS1≦t<t、t≦t<t、tS2≦t<tの期間を無効電流期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<tの期間をバッファコンデンサ放電電流期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<tの期間を電源電流期間Trecと定義し、t≦t<tS1、t≦t<tS2の期間を電流バランス期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<t10の期間を零電流期間Tと定義すると、スイッチング周期TSWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数5】
指令値として、irec、i、v、Vdc、I′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、図4の動作波形iに対する制御則を求めることができる。この指令値のうち、irecおよびiの指令値irec *、i *は、次のように、放電期間と充電期間で切り替え、電力脈動吸収回路130を、PFC回路として機能させ、かつ、電力の脈動を吸収する回路として機能させる。
【数6】
【0038】
<昇圧動作時のスイッチング制御>
上述した制御により充電器100を動作させるためには、上記式(2)のすべてのデューティー比が正である必要がある。降圧動作時(つまり、V≧Vdcであるとき)、上記式(2)のすべてのデューティー比が正であるが、昇圧動作時(つまり、V<Vdcであるとき)、図5に示すように、電流バランス期間Tのデューティー比D、バッファコンデンサ放電電流期間Tのデューティー比Dが負になることがある。図5に示した例では、交流電源電圧vの位相ωStが0度であるときは、電流バランス期間Tのデューティー比D、バッファコンデンサ放電電流期間Tのデューティー比Dともに、正であるが、交流電源電圧vの位相ωStが15度になるあたりで、電流バランス期間Tのデューティー比Dが負になり、交流電源電圧vの位相ωStが45度になるあたりで、バッファコンデンサ放電電流期間Tのデューティー比Dが負になっている。電流バランス期間Tのデューティー比Dが負であるとき、上記式(2)より、
【数7】
であり、バッファコンデンサ放電電流期間Tのデューティー比Dが負であるとき、
【数8】
である。
【0039】
そこで、本実施形態では、電流バランス期間Tのデューティー比Dが負になったときに(つまり、上記式(3)が成り立つようになったときに)、スイッチング制御を変更し、バッファコンデンサ放電電流期間Tのデューティー比Dが負になったときに(つまり、上記式(4)が成り立つようになったときに)、さらに、スイッチング制御を変更する。以降、上記式(3)、(4)がいずれも成り立たないときの制御を、つまり、上述した制御を、降圧シーケンスと呼び、上記式(3)が成り立ち、上記式(4)が成り立たないときの制御を、昇圧シーケンスIと呼び、上記式(3)、(4)がいずれもが成り立つときの制御を、昇圧シーケンスIIと呼ぶ。
【0040】
(昇圧シーケンスI)
図4の示した動作波形i(降圧シーケンス時の動作波形)では、i(t)≦i(t)である。しかしながら、電流バランス期間Tのデューティー比Dが負になると(つまり、上記式(3)が成り立つようになると)、動作波形iは、図6に示すように、i(t)>i(t)となる。そこで、本実施形態では、上記式(3)が成り立ち、上記式(4)が成り立たないとき、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|となるようにt~t10、を設定し、|t-tS1|=|t-t|=|t-tS2|となるように、tとtの間にtS1、tとtの間にtS2を設定し、動作波形iを、次の等価方形波形i′により近似する。
【数9】
【0041】
等価方形波形i′のt≦t<tS1、t≦t<t、t≦t<tS2、t≦t<tの期間を無効電流期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<tの期間をバッファコンデンサ放電電流期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<tの期間を電源電流期間Trecと定義し、tS1≦t<t、tS2≦t<tの期間を電流バランス期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<t10の期間を零電流期間Tと定義すると、スイッチング周期TSWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数10】
昇圧シーケンスIにおいても、指令値として、irec、i、v、Vdc、I′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、図6の動作波形i(昇圧シーケンスI)に対する制御則を求めることができる。
【0042】
(昇圧シーケンスII)
また、本実施形態では、上記式(3)、(4)がいずれもが成り立つとき、図3に示した7つのモードに加えた2つのモードを加えた、図7の示した9つのモードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する。このように制御することで、図8に示すような動作波形iを得る。図8に示した動作波形iは、図7に示した9つのモードを、モード1、モード8、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード9、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる。
【0043】
そして、図8に示した動作波形iにおいて、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t-t10|、|t-t|=|t-t|、|t-t|=|t10-t11|、|t-t|=|t11-t12|となるようにt~t12を設定すると、動作波形iは、等価方形波形i′により近似することができる。
【数11】
【0044】
等価方形波形i′のt≦t<t、t≦t<t、t≦t<t、t≦t<t11の期間を無効電流期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<t10の期間をバッファコンデンサ放電電流期間Tと定義し、t≦t<t、t≦t<tの期間を電源電流期間Trecと定義し、t≦t<t、t≦t<tの期間を電流バランス期間Tと定義し、t≦t<t、t11≦t<t12の期間を零電流期間Tと定義すると、スイッチング周期TSWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数12】
昇圧シーケンスIIにおいても、指令値として、irec、i、v、Vdc、I′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、図8の動作波形i(昇圧シーケンスII)に対する制御則を求めることができる。
【0045】
(充電器100の動作)
図9は、降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスIIの3つの制御を用いて充電器100を動作させたときのデューティー比を示す図である。図9に示すように、降圧シーケンス、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスII、降圧シーケンス、昇圧シーケンスII、昇圧シーケンスIの順で、スイッチング制御を変更していくことで、昇圧動作時においても、充電器100を動作することが可能になる。
【0046】
<デッドタイムの設定>
DABコンバータは、1次側と2次側の両方に、フルブリッジ回路を含んでいる。一般的に、フルブリッジ回路を含んだ回路では、同一レグのすべてのスイッチがオンになり、回路が短絡することを防ぐために、スイッチをオフからオンに切り替えるときに、切り替えられるスイッチを含むレグのすべてのスイッチがオフになるデッドタイムが設けられる。このため、本実施形態に係る充電器100では、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてに、切り替えられるスイッチを含むレグのスイッチのすべてがオフになるデッドタイムが設けることが考えられる。
【0047】
図10は、DC/DCコンバータ120のインダクタLの電流iとスイッチS21~S28のスイッチングを説明する図である。図10において、破線は、図4に示した降圧シーケンス時の動作波形iとその際のスイッチS21~S28のスイッチングを示している。図3図10の破線)に示したように、図4に示した降圧シーケンス時の動作波形iとでは、モード5からモード1に切り替わるとき(t=t)に、スイッチS21、S24、S26、S27がオフからオンに切り替わり、モード1からモード2に切り替わるとき(t=t)に、スイッチS25、S28がオフからオンに切り替わり、モード3からモード4に切り替わるとき(t=t)に、スイッチS22、S23がオフからオンに切り替わり、モード5からモード4に切り替わるとき(t=t)に、スイッチS22、S23、S25、S28がオフからオンに切り替わり、モード4からモード6に切り替わるとき(t=t)に、スイッチS26、S27がオフからオンに切り替わり、モード7からモード1に切り替わるとき(t=t)に、スイッチS21、S24がオフからオンに切り替わる。
【0048】
そこで、降圧シーケンス時には、図10において実線で示したように、t=t、t、t、t、t、tに、デッドタイムTが設けることが考えられる。つまり、モード5とモード1との間、モード1とモード2との間、モード3とモード4との間、モード5とモード4との間、モード4とモード6との間、モード7とモード1との間にデッドタイムTを設けることが考えらえる。
【0049】
上記のように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合、t=t+Tdにモード1が開始される。モード1の直前のモードであるモード5では、インダクタLの電流iの値はゼロである。このため、モード1の開始が遅れることで、インダクタLに電流が流れ始めるのが遅れる。結果、上記のように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合、図10において実線で示したように、モード1の終了時(t=t)におけるインダクタLの電流iの値は、下記のようになる。
【数13】
この値は、図4に示した動作波形i図10に破線で示した波形)のt=tにおける値
【数14】
より小さい。このため、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合のインダクタLの電流iの波形(図10において実線で示した波形)は、デッドタイムTを設ける前の波形(図10において破線で示した波形)に比べ、波形が歪み、伝送電力の値が小さくなってしまう。また、上記のように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合、図11に示すように、DC/DCコンバータ120の第3の端子123から出力される出力電流Idcの歪みも大きくなってしまう。
【0050】
そこで、本実施形態では、図12の実線に示すように、t=t、tにデッドタイムを設けず、t=t、t、t、tにのみにデッドタイムを設ける。つまり、本実施形態において、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のすべてがオフである第1のモード(モード5)と、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28の少なくともいずれかがオンである複数の第2のモード(モード1~モード4、モード6、モード7)のいずれかに切り替える際に(t=t、t)、当該2つにモードの間(モード5とモード1との間、モード5とモード4との間)にデッドタイムを設けない。そして、制御部140は、複数の第2のモードに含まれる2つのモードの一方のモードから他方のモードに切り替える際に(t=t~t、t~t)、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のいずれかがオフからオンに切り替えられるならば(t=t、t、t、t)、当該一方のモードと当該他方のモード間(モード1とモード2との間、モード3とモード4との間、モード4とモード6との間、モード7とモード1との間)にデッドタイムを設ける。
【0051】
このようにすることで、図12に示されているように、モード1の終了時(t=t)におけるインダクタLの電流iの値は、
【数15】
となり、インダクタLの電流iの波形の歪みが解消し、伝送電力の減少も解消される。また、また、図13に示すように、出力電流Idcの歪みも抑制される。
【0052】
以上のように、本実施形態では、リアクトル電流、出力電流に歪みが生じず、伝送電力が減少しないように、デッドタイムが設定される。このため、本実施形態では、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することが可能である。
【0053】
上記では、降圧シーケンスを例にして、デッドタイムの設定を説明したが、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスIIにおいても、同様に、リアクトル電流、出力電流に歪みが生じず、伝送電力が減少しないように、デッドタイムを設定することが可能である。
【0054】
昇圧シーケンスI(図6の波形)時にも、降圧シーケンスI(図4の波形)時と同様に、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のすべてがオフである第1のモード(モード5)と、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28の少なくともいずれかがオンである複数の第2のモード(モード1~モード4、モード6、モード7)のいずれかに切り替える際に(t=t、t)、当該2つにモードの間(モード5とモード1との間、モード5とモード4との間)にデッドタイムを設けない。制御部140は、複数の第2のモードに含まれる2つのモードの一方のモードから他方のモードに切り替える際に(t=t~t、t~t)、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のいずれかがオフからオンに切り替えられるならば(t=t、t、t、t)、当該一方のモードと当該他方のモード間(モード1とモード2との間、モード3とモード4との間、モード4とモード6との間、モード7とモード1との間)にデッドタイムを設ける。
【0055】
昇圧シーケンスII(図8の波形)時は、降圧シーケンスI(図4の波形)時と異なり、充電器100は、9つのモードにより制御される。そこで、昇圧シーケンスII(図8の波形)時に、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のすべてがオフである第1のモード(モード5)と、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28の少なくともいずれかがオンである複数の第2のモード(モード1~モード4、モード6~モード9)のいずれかに切り替える際に(t=t、t)、当該2つにモードの間(モード5とモード1との間、モード5とモード4との間)にデッドタイムを設けない。制御部140は、複数の第2のモードに含まれる2つのモードの一方のモードから他方のモードに切り替える際に(t=t~t、t~t10)、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28のいずれかがオフからオンに切り替えられるならば(t=t、t、t、t10)、当該一方のモードと当該他方のモード間(モード8とモード2との間、モード3とモード4との間、モード9とモード6との間、モード7とモード1との間)にデッドタイムを設ける。
【0056】
<制御信号の生成>
制御部140は、例えば、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31のスイッチングを制御するための制御信号を、三角波比較法を用いて生成する。本実施形態では、6つの変調波m~mを用いる。降圧シーケンス時に、制御部140は、変調波m~mを、三角波の上り期間において、変調波mが三角波と交差するときに、零電流期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、バッファコンデンサ放電電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、バッファコンデンサ放電電流期間Tが終了し、電源電流期間Trecが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電源電流期間Trecが終了し、電流バランス期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電流バランス期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、零電流期間Tが開始するように設定し、三角波の下り期間において、変調波mが三角波と交差するときに、零電流期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、電源電流期間Trecが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電源電流期間Trecが終了し、バッファコンデンサ放電電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、バッファコンデンサ放電電流期間Tが終了し、電流バランス期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電流バランス期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、零電流期間Tが開始するように設定する。
【0057】
図14は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28をオフからオンに切り替えるタイミングのすべてにデッドタイムTを設けた場合の波形(図10において実線で示した波形)を得るための三角波と変調波m~mを説明する図である。図14において、三角波は、t≦t<tの零電流期間Tの中間(t=t+T/2)において最大値(=1)になり、t≦t<t10の零電流期間Tの中間(t=t+T/2)において最小値(=0)になるように設定されている。そして、三角波の上り期間(t-T/2≦t<t+T/2)において三角波の傾きはで2/TSWあるので、変調波m~mは、次のように設定されている。
【数16】
三角波の下り期間(t+T/2≦t<t+T/2)において三角波の傾きはで-2/TSWあるので、変調波m~mは、次のように設定されている。
【数17】
【0058】
t=t、tにデッドタイムを設けない場合の波形(図12の波形)では、図10の実線の波形に比べ、インダクタLに電流が流れ始めるタイミングがデッドタイムTだけ早くなる。そこで、図14において、三角波の上り期間における変調波mと三角波の下り期間におけるmを変形することで、t=t、tにデッドタイムを設けない場合の波形(図12の波形)を得るための変調波m~mが得られる。つまり、図15の実線で示すように、三角波の上り期間において、変調波m1、を、
【数18】
と設定し、三角波の下り期間において、変調波m6、を、
【数19】
と設定することで、t=t、tにデッドタイムを設けない場合の波形(図12の波形)が得られる。
【0059】
しかしながら、図15の実線で示すように、三角波、変調波m~mを設定した場合、図17に示すように、出力電流Idcに歪みが残ってしまう。また、変調波mが三角波と交差するためには、0≦m≦1である必要がある。よって、上記式(7)から、下記の式(8)が成り立つ必要がある。
【数20】
零電流期間Tのデューティー比Dの値は、バッファコンデンサCbufにかかる電圧vの最大値を適切に与えることで調整可能であるが、上記式(8)が成り立つようにするためには、バッファコンデンサCbufにかかる電圧vの最大値を大きくする必要がある。つまり、図14、15に示した三角波を用いる場合、バッファコンデンサCbufにかかる電圧vの最大値を大きくする必要がある。
【0060】
そこで、本実施形態では、制御部140は、図16に示すように、三角波を、第1のモードの開始時(モード5の開始時(t=t、t))に最大値(例えば、1)または最小値(例えば、0)になるように設定する。図16は、本実施形態に係る三角波と変調波m~mを説明する図である。図16において、三角波は、t=tにおいて最大値(=1)になり、t=tにおいて最小値(=0)になるように設定されている。そして、三角波の上り期間(t-T/2≦t<t+T/2)において、変調波m~mは、次のように設定されている。
【数21】
三角波の下り期間(t+T/2≦t<t+T/2)において、変調波m~mは、次のように設定されている。
【数22】
また、変調波mが三角波と交差するためには、0≦m≦1である必要がある。よって、下記の式(9)が成り立つ必要がある。
【数23】
【0061】
このように、三角波を第1のモードの開始時(モード5の開始時)に最大値または最小値になるように設定することで、図13に示すように、出力電流Idcも歪みが抑制される。また、このように、三角波を第1のモードの開始時(モード5の開始時)に最大値または最小値になるように設定することで、変調波m~mに対するデッドタイムTの影響は(8)式の条件に比べ半減する。その結果、バッファコンデンサCbufにかかる電圧vの最大値を(8)式の条件まで高くする必要がない。
【0062】
上記では、降圧シーケンスを例にして、三角波、変調波の設定を説明したが、昇圧シーケンスI、昇圧シーケンスIIにおいても、同様に、出力電流に歪みが生じず、バッファコンデンサにかかる電圧の最大値を大きくする必要がない三角波、変調波を設定することが可能である。
【0063】
昇圧シーケンスI(図6の波形)時、および昇圧シーケンスII(図8の波形)時にも、降圧シーケンス(図4の波形)時と同様に、制御部140は、三角波を、第1のモードの開始時(モード5の開始時)に最大値(例えば、1)または最小値(例えば、0)になるように設定する。
【0064】
昇圧シーケンスI(図6の波形)時、および昇圧シーケンスII(図8の波形)時の電流バランス期間Tの位置は、降圧シーケンス(図4の波形)時の電流バランス期間Tの位置と異なる。そこで、昇圧シーケンスI(図6の波形)時、および昇圧シーケンスII(図8の波形)時に、制御部140は、変調波m~mを、三角波の上り期間において、変調波mが三角波と交差するときに、零電流期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、電流バランス期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電流バランス期間Tが終了し、バッファコンデンサ放電電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、バッファコンデンサ放電電流期間Tが終了し、電源電流期間Trecが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電源電流期間Trecが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、零電流期間Tが開始するように設定し、三角波の下り期間において、変調波mが三角波と交差するときに、零電流期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、電流バランス期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電流バランス期間Tが終了し、電源電流期間Trecが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、電源電流期間Trecが終了し、バッファコンデンサ放電電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、バッファコンデンサ放電電流期間Tが終了し、無効電流期間Tが開始し、変調波mが三角波と交差するときに、無効電流期間Tが終了し、零電流期間Tが開始するように設定する。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 充電器
110 整流器
120 DC/DCコンバータ
S21~S28 DC/DCコンバータのスイッチ
130 電力脈動吸収回路
D31 第1のダイオード
D32 第2のダイオード
D33 第3のダイオード
Lb インダクタ
Cbuf バッファコンデンサ
S31 第1のスイッチ
S32 第2のスイッチ
200 交流電源
300 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17