(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】測位装置、測位方法および測位プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/28 20100101AFI20241031BHJP
G01S 19/22 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
G01S19/28
G01S19/22
(21)【出願番号】P 2020124159
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】久保 信明
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-321364(JP,A)
【文献】特開2013-083532(JP,A)
【文献】特開2019-168257(JP,A)
【文献】特表2021-515205(JP,A)
【文献】特開2017-173137(JP,A)
【文献】特開平08-297158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測位衛星からの信号を用いて測位を行う測位装置であって、
測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する入力部と、
前記信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、前記信号強度が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、
NLOS信号が支配的な測位衛星の信号強度が閾値を上回る状態が維持される継続期間の最大値よりも長いガード期間の間は前記測位衛星を測位に利用しないことを決定する衛星判定部と、
を備えることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記測位衛星から受信した信号の信号強度が前記閾値を上回る場合、前記測位衛星を測位に利用することを決定することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記測位衛星から受信した信号の信号強度が前記閾値以下の場合、さらに前記ガード期間の間前記測位衛星を利用しないことを決定することを決定することを特徴とする請求項2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記信号として、L1帯信号の第1の信号強度と、L2帯信号の第2の信号強度を入力し、
前記衛星判定部は、前記第1の信号強度および前記第2の信号強度が前記閾値以下であるかどうかを判定し、前記第1の信号強度および前記第2の信号強度のうち少なくともいずれか一方が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外し、前記ガード期間の間は前記測位衛星を利用しないことを決定することを特徴とする請求項1に記載の測位装置。
【請求項5】
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記測位衛星から受信した第1の信号強度および第2の信号強度がいずれも前記閾値を上回る場合、前記測位衛星を測位に利用することを決定することを特徴とする請求項4に記載の測位装置。
【請求項6】
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記第1の信号強度および前記第2の信号強度のうち少なくともいずれか一方が前記閾値以下の場合、さらに前記ガード期間の間前記測位衛星を利用しないことを決定することを特徴とする請求項5に記載の測位装置。
【請求項7】
前記閾値は前記測位衛星の仰角に応じた値であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の測位装置。
【請求項8】
前記閾値は、前記測位衛星から受信する信号の信号強度の平均値から8dB-Hz~10dB-Hz引いた値であることを特徴とする請求項7に記載の測位装置。
【請求項9】
前記ガード期間は、少なくとも3分間であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の測位装置。
【請求項10】
前記衛星判定部は、前記ガード期間として、前記測位装置とビルとの間の距離が長いほど短い値を用いることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の測位装置。
【請求項11】
前記測位装置は移動体に設けられ、前記移動体が停止または低速で移動しているときに測位を行うことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の測位装置。
【請求項12】
複数の測位衛星からの信号を用いて測位を行う測位方法であって、
測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する工程と、
前記信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、前記信号強度が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、
NLOS信号が支配的な測位衛星の信号強度が閾値を上回る状態が維持される継続期間の最大値よりも長いガード期間の間は前記測位衛星を測位に利用しないことを決定する工程と、
を備えることを特徴とする測位方法。
【請求項13】
コンピュータを、
測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する入力手段、および
前記信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、前記信号強度が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、
NLOS信号が支配的な測位衛星の信号強度が閾値を上回る状態が維持される継続期間の最大値よりも長いガード期間の間は前記測位衛星を測位に利用しないことを決定する衛星判定手段として機能させる測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置、測位方法および測位プログラムに関し、より詳しくは、複数の測位衛星から受信した信号に基づいて測位を行う測位装置、測位方法および測位プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の人工衛星を利用して位置を計測する衛星測位システム(Navigation Satellite System:NSS)が知られている。NSSのうち、全地球を利用可能範囲とするシステムを全地球航法衛星システム(Global NSS:GNSS)と呼び、特定地域向けのシステムを地域測位衛星システム(Regional NSS:RNSS)と呼ぶことがあるが、本願ではこれらの区別をせずに、まとめてGNSSという。
【0003】
近年、米国のGPS以外に、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDou、日本のみちびき等、各国・地域でGNSSの整備が進んだことにより、複数のNSSを利用可能なマルチGNSS環境が実現されている。これにより、測位に利用可能な衛星の数が飛躍的に増加し、測位精度の向上が図られている。
【0004】
従来の測位方法として、特許文献1には、GNSS衛星から送信された信号について、搬送波位相の値の連続性の有無を判定し、連続性がないと判定された場合にサイクルスリップが発生したと検知する測位方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、疑似雑音コードにより変調された測位用衛星からの受信信号と、所定の位相差により出力された疑似雑音コードのレプリカ信号との相関値を算出し、相関値のばらつきを比較評価することによってマルチパス信号の有無を判定するマルチパス検出装置が記載されている。
【0006】
特許文献3には、測位を行う際、各測位衛星の信号について基準局と移動局の受信強度を比較し、その差が閾値以上である場合、マルチパスの影響を受けた信号であると判定し、測位用衛星信号から除くことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-224402号公報
【文献】特開2013-181803号公報
【文献】特許第5232994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数のGNSSを利用可能であっても、高層ビル街など、衛星信号の受信環境が悪い場所においては、衛星信号がマルチパスで測位装置(アンテナ)に到来するため、測位精度が低下する。
【0009】
ここで、
図9を参照して、衛星信号がマルチパスでアンテナに到達するマルチパス環境について、いくつかの典型例を説明する。
【0010】
図9(a)に示す場合、測位衛星SはビルBにより遮られ、測位装置100から直接見ることができない。この場合、測位衛星Sから送信された信号W1はビルBにより完全にブロックされて測位装置100に到達しないため、測位衛星Sの信号を測位に利用することはできない。
【0011】
図9(b)に示す場合は、測位装置100はビルB1とビルB2に挟まれた位置にあり、測位衛星Sは測位装置100から直接見えない位置にある。この場合、測位衛星Sから送信された信号は、測位装置100に直接届かないものの、ビルB1で回折して測位装置100に届いたり(信号W2)、ビルB2で反射して測位装置100に届く(信号W3)。このような信号W2やW3をNLOS(Non Line Of Sight)信号という。NLOS信号は測位精度の低下を引き起こすため、測位に利用しないことが望ましい。
【0012】
図9(c)に示す場合は、測位装置100と測位衛星SはビルBに対して同じ側に位置し、測位装置100から測位衛星Sを直接見ることができる。このように測位衛星Sと測位装置100との間に障害物が存在せず、直接波を受信可能な場合は、LOS(Line Of Sight)と呼ばれる。この場合、測位衛星Sから送信された信号は、測位装置100に直接届くものに加えて(信号W4)、ビルBで反射して測位装置100に届くものもある(信号W5)。直接波を受信するため、測位精度の誤差はある程度緩和できることが多い。
【0013】
図9(b)の場合のようにNLOS信号が支配的である測位衛星は測位に用いないことが望ましいが、従来そのような衛星を高精度に識別することは困難であった。
【0014】
本発明者は、以前に、特許文献3において、ある測位衛星の信号について基準局と移動局の信号強度の差が閾値以上である場合は、信号がマルチパスの影響を受けていると判定し、その測位衛星を測位に用いないことを提案した。しかしながら、この方法によっても、金属を含有する強化ガラスを使用した高層ビル等により衛星信号の反射が大きい場合や、高層ビルと中層ビルが周囲に混在しており、高低差が大きい場合等の、NLOS信号が支配的な場合においては、測位計算から除外すべき衛星を正しく判定することが困難であり、測位精度を十分に改善するには到らなかった。
【0015】
図10(a)は、東京都中央区八重洲のビル街の2DマップM1および3DマップM2を示している。位置Pは、高層ビル(高さ150m、210m)と中層ビル(高さ35m)に挟まれた位置を示している。
図10(b)は、位置Pにおける測位衛星のスカイプロットであり(仰角マスクは15°)、3Dマップに基づいて推定された各衛星のタイプ(LOSまたはNLOS)を示している。
【0016】
図10(a)および
図10(b)に示すように、ビル間の道路の方向に沿ってLOSの衛星(直接波が支配的な衛星)が分布するものの、それ以外はNLOSの衛星となっている。このことから、ビル街のマルチパス環境の測位精度を改善するには、NLOSの衛星を適確に判別し、測位から除外する必要があることが分かる。
【0017】
本発明は上記の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、マルチパス環境であってもGNSSのみで測位精度を向上させることが可能な測位装置、測位方法および測位プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る測位装置は、
複数の測位衛星からの信号を用いて測位を行う測位装置であって、
測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する入力部と、
前記信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、前記信号強度が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間は前記測位衛星を測位に利用しないことを決定する衛星判定部と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
また、前記測位装置において、
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記測位衛星から受信した信号の信号強度が前記閾値を上回る場合、前記測位衛星を測位に利用することを決定してもよい。
【0020】
また、前記測位装置において、
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記測位衛星から受信した信号の信号強度が前記閾値以下の場合、さらに前記ガード期間の間前記測位衛星を利用しないことを決定してもよい。
【0021】
また、前記測位装置において、
前記入力部は、前記信号として、L1帯信号の第1の信号強度と、L2帯信号の第2の信号強度を入力し、
前記衛星判定部は、前記第1の信号強度および前記第2の信号強度が前記閾値以下であるかどうかを判定し、前記第1の信号強度および前記第2の信号強度のうち少なくともいずれか一方が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外し、前記ガード期間の間は前記測位衛星を利用しないことを決定してもよい。
【0022】
また、前記測位装置において、
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記測位衛星から受信した第1の信号強度および第2の信号強度がいずれも前記閾値を上回る場合、前記測位衛星を測位に利用することを決定してもよい。
【0023】
また、前記測位装置において、
前記衛星判定部は、前記ガード期間の経過後、前記第1の信号強度および前記第2の信号強度のうち少なくともいずれか一方が前記閾値以下の場合、さらに前記ガード期間の間前記測位衛星を利用しないことを決定してもよい。
【0024】
また、前記測位装置において、
前記閾値は前記測位衛星の仰角に応じた値であってもよい。
【0025】
また、前記測位装置において、
前記閾値は、前記測位衛星から受信する信号の信号強度の平均値から8dB-Hz~10dB-Hz引いた値であるようにしてもよい。
【0026】
また、前記測位装置において、
前記ガード期間は、少なくとも3分間であるようにしてもよい。
【0027】
また、前記測位装置において、
前記衛星判定部は、前記ガード期間として、前記測位装置とビルとの間の距離が長いほど短い値を用いてもよい。
【0028】
また、前記測位装置において、
前記測位装置は移動体に設けられ、前記移動体が停止または低速で移動しているときに測位を行うようにしてもよい。
【0029】
本発明に係る測位方法は、
複数の測位衛星からの信号を用いて測位を行う測位方法であって、
測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する工程と、
前記信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、前記信号強度が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間は前記測位衛星を測位に利用しないことを決定する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る測位プログラムは、
コンピュータを、
測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する入力手段、および
前記信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、前記信号強度が前記閾値以下の場合、前記測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間は前記測位衛星を測位に利用しないことを決定する衛星判定手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、測位衛星から受信した信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、信号強度が閾値以下の場合、当該測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間は当該測位衛星を測位に利用しないようにする。これにより、本発明によれば、NLOS信号が支配的な測位衛星の利用を抑制できるため、マルチパス環境であってもGNSSのみで測位精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)は主にLOS信号を受信している場合における信号強度の時間変化の一例を示すグラフであり、(b)は主にNLOS信号を受信している場合における信号強度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図2】実施形態に係る測位衛星の使用/不使用の決定方法を説明するための図である。
【
図3】実施形態に係る測位装置の概略的な構成図である。
【
図4】閾値の設定方法の一例を説明するためのグラフである。
【
図5】ガード期間の設定方法の一例を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る測位方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】(a)は比較例の測位方法による測位結果を示し、(b)は本実施形態の測位方法による測位結果を示す図である。
【
図8】(a)は経度方向の誤差の時間変化を示し、(b)は緯度方向の誤差の時間変化を示す図である。
【
図9】GNSSのマルチパス環境について説明するための図である。
【
図10】(a)は東京中央区八重洲のビル街の2Dマップおよび3Dマップを示し、(b)は位置Pにおける測位衛星のスカイプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について説明する前に、
図1(a),(b)および
図2を参照して本実施形態における測位衛星の使用/不使用の決定方法について説明する。
【0034】
図1(a)は、測位衛星(QZSSみちびきのJ03番)から主にLOS信号を受信している場合における信号強度の時間変化の一例を示すグラフである。これに対し、
図1(b)は、測位衛星(GPSの3番)から主にNLOS信号を受信している場合における信号強度の時間変化の一例を示すグラフである。なお、各グラフの横軸TOWは、Time Of Week(週初めからの時間)の略である。
【0035】
図1(a)に示すように、LOS信号(直接波)を安定して受信している場合は、信号強度(C/N
0)が基準値(ここでは35dB)よりも高く、ほとんど時間変動せずに安定している。このような衛星信号を用いて測位すれば位置を高精度に算出することができる。
【0036】
他方、
図1(b)に示すように、主にNLOS信号を受信している場合は、信号強度(C/N
0)が基準値を跨いで上下に大きく変動する。このような衛星信号を用いると測位精度が低下する。
【0037】
このように、NLOS信号が支配的である場合、受信信号の信号強度は基準値を挟んで大きくレベル変動するとともに、局所的に非常に大きく低下するという特徴がある。かかる知見に基づいて、本発明者は、測位に利用する衛星を判定するための閾値を設け、測位衛星から受信した信号の信号強度が閾値以下となった場合、この測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ある期間(以下、「ガード期間」という。)、当該測位衛星を利用しないようにする手法を考案した。この手法について
図2を参照して具体的に説明する。
【0038】
図2の例では、測位衛星(GPSの3番)から受信した信号の信号強度が時刻t
1で閾値(ここでは30dB-Hz)以下となったので、当該測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間、不使用状態とする。その後、時刻t
2において信号強度が閾値を上回るものの、ガード期間が経過していないので不使用状態を継続させる。さらにその後、ガード期間が経過した時刻t
3において信号強度が閾値を上回ったため、当該測位衛星を使用状態に変更する。時刻t
4で再び信号強度が閾値以下となったため、当該測位衛星をふたたび不使用状態に変更する。
【0039】
なお、
図2ではガード期間中は信号強度と閾値の比較を行わず、ガード期間経過後に比較を行っているが、これに限らず、ガード期間中に信号強度と閾値の比較を行ってもよい。この場合、ガード期間中に信号強度が再び閾値以下になったときは、その時刻からガード期間を新たに開始してもよい(すなわち、その時刻から新たな不使用状態が開始されるとしてもよい)。
【0040】
上記のように、測位衛星から受信した信号の信号強度、閾値およびガード期間に基づいて当該測位衛星を測位に利用するか否かを決定する。すなわち、測位衛星からの信号強度が閾値以下となったときに当該測位衛星を除外するとともに、ガード期間中は信号強度が閾値よりも高くなったとしてもすぐには測位に利用しないことで、受信強度が一時的に回復した測位信号を測位に利用することを回避することができる。これにより、NLOS信号が支配的な測位衛星の信号を測位に使用することが抑制される。その結果、マルチパス環境であっても、GNSSのみで測位精度を向上させることができるようになる。
【0041】
さらに、上記のように、ガード期間の経過後、信号強度が閾値を上回る場合は測位衛星を使用状態に戻すことで、測位に利用可能な衛星の数を出来るだけ多く確保することができる。
【0042】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0043】
<測位装置1>
図3を参照して、実施形態に係る測位装置1について詳しく説明する。
【0044】
測位装置1は、複数の測位衛星からの信号を用いて測位を行う。測位装置1は、GPS,GLONASS,Galileo,BeiDou,QZSS等、複数の衛星測位システムを利用可能である。この測位装置1は、市販の受信器(たとえばu-blox社のZED-F9P測位モジュール)をベースに構成することが可能である。
【0045】
測位装置1は、静止状態または低速移動状態において測位を行うものである。たとえば、測位装置1はビルやダム等の静止体に設けられ、地震時の揺れ等を観測するのに用いられる。
【0046】
測位装置1は、
図3に示すように、制御部11と、通信部12と、衛星信号受信部13と、表示部14と、記憶部15と、アンテナ16とを備えている。
【0047】
制御部11は、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される。このプロセッサにプログラムを実行させることにより、後述の入力部111、衛星判定部112等の各機能部が実現される。
【0048】
通信部12は、無線または有線により、通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。通信部12の用いる通信規格は特に限定されない。測位装置1は、通信部12を介して、基準局(図示せず)との間で測位に必要な情報のやりとりを行ったり、出力部114から出力された情報(位置情報等)を他の外部装置(図示せず)に送信してもよい。
【0049】
衛星信号受信部13は、アンテナ16を介して測位衛星からの電波信号を受信する。この衛星信号受信部13は、複数のGNSSの測位衛星からの信号を同時受信可能に構成されてもよい。受信した信号の情報(信号強度など)は記憶部15に書き込まれる。
【0050】
表示部14は、各種情報(算出された位置等)を表示するためのディスプレイである。なお、外部ディスプレイを用いる場合は、表示部14は省略されてもよい。
【0051】
記憶部15は、半導体メモリ等の記憶装置により構成される。この記憶部15には、制御部11で実行されるプログラムや、衛星信号受信部13により受信された信号のデータなどが記憶される。その他、地図情報などが記憶部15に記憶されてもよい。
【0052】
アンテナ16は、測位衛星からの電波信号を受信するように構成されている。たとえば、アンテナ16として、u-blox社のマルチバンド・アクティブアンテナ(ANN-MBシリーズ)を適用可能である。
【0053】
次に、制御部11の各部の詳細について説明する。
【0054】
図3に示すように、制御部11は、入力部111と、衛星判定部112と、位置算出部113と、出力部114と、を有している。本実施形態では、制御部11の各部は、測位装置1内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されるが、制御部11の各部のうち少なくとも一つがハードウェアにより構成されてもよい。
【0055】
入力部111は、測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する。たとえば、入力部111は、測位衛星から受信した信号の信号強度を記憶部15から読み出して取得する。
【0056】
入力部111は、衛星信号受信部13が受信可能な複数の衛星信号の各々について信号強度を入力する。
【0057】
なお、ある測位衛星から送信されたL1帯の信号およびL2帯の信号を信号受信部13が受信可能な場合、入力部111は、L1帯信号の信号強度と、L2帯信号の信号強度の両方を取得してもよい。その他の周波数の信号(L5帯など)も受信可能な場合は当該信号を取得してもよい。
【0058】
衛星判定部112は、測位衛星を測位に利用するかどうかを判定する。具体的には、衛星判定部112は、測位衛星から受信した信号の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定する。なお、閾値としては、正しい搬送波位相を出力可能な最低値(たとえば30~32dB-Hzの範囲内の値)を使用する。
【0059】
そして、信号強度が閾値以下の場合、衛星判定部112は、当該測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間は当該測位衛星を測位に利用しないことを決定する。すなわち、衛星判定部112は、信号強度が閾値以下の場合、当該測位衛星の状態を不使用状態とし、ガード期間の間は衛星使用状態の変更を行わない。
【0060】
ガード期間の経過後、衛星判定部112は、測位衛星から受信した信号の信号強度が閾値以下の場合、さらにガード期間の間、当該測位衛星を利用しないことを決定する(すなわち、不使用状態を継続する)。一方、信号の信号強度が閾値を上回る場合、衛星判定部112は当該測位衛星を測位に利用することを決定する(すなわち、当該測位衛星の状態を不使用状態から使用状態に変更する)。
【0061】
なお、入力部111がL1帯信号の信号強度(第1の信号強度)と、L2帯信号の信号強度(第2の信号強度)の両方を入力する場合、衛星判定部112は、第1の信号強度および第2の信号強度が閾値以下であるかどうかを判定し、第1の信号強度および第2の信号強度のうち少なくともいずれか一方が閾値以下の場合、当該測位衛星を測位に利用する衛星から除外し、ガード期間の間は当該測位衛星を利用しないことを決定する。このように2つの信号強度に基づいて、測位衛星を判定することで、衛星の判定精度を向上させることができる。なお、入力部111がL1帯、L2帯以外の周波数の信号(たとえばL5帯信号)を入力する場合は、当該信号も利用して測位衛星の判定を行ってもよい。
【0062】
また、衛星判定部112は、ガード期間の経過後、測位衛星から受信した第1の信号強度および第2の信号強度のうち少なくともいずれか一方が閾値以下の場合、さらにガード期間の間当該測位衛星を利用しないことを決定する。一方、第1の信号強度および第2の信号強度がいずれも閾値を上回る場合、衛星判定部112は、当該測位衛星を測位に利用することを決定する。
【0063】
なお、閾値として2つの閾値(すなわち、L1帯信号用の閾値とL2帯信号用の閾値)を用いて、上記の判定処理を行ってもよい。
【0064】
位置算出部113は、衛星判定部112によって除外されていない測位衛星(すなわち、使用状態の測位衛星)から受信した信号に基づいて、公知の方法により、測位装置1の位置(たとえば、経度、緯度および高さ)を算出する。
【0065】
出力部114は、位置算出部113により算出された位置を出力する。この出力部114は、位置情報を出力部114は表示部14に出力する。なお、出力部114は、位置情報以外の情報(たとえば、周辺の地図情報など)を表示部14に出力してもよい。また、出力部114は、通信部12を介して外部の装置に位置情報等の情報を出力してもよい。
【0066】
次に、信号強度の判定に用いる閾値について詳しく説明する。
【0067】
図4は、測位衛星から受信した信号(GPS L1-C/A)の信号強度の測定値を示している。
図4では、測定された信号強度の平均値を示す曲線と、閾値を示す曲線も示されている。
【0068】
信号強度の測定は、マルチパスが生じないオープンスカイ環境において、仰角マスク15°の設定で24時間行った。
図4に示すように、信号強度の最小値は32dB-Hzであり、信号強度の最大値は50dB-Hzであった。
【0069】
信号強度の平均値を示す曲線から分かるように、信号強度は測位衛星の仰角に依存している。このため、本実施形態の閾値も測位衛星の仰角に応じた値とすることが好ましい。これにより、測位衛星の仰角に応じた適切な閾値を設定することができる。その結果、ガード期間をできるだけ短く設定することができる。
【0070】
図4では、信号強度の平均値から10dB-Hzだけ引いた値を閾値としている。閾値をこれよりも高く設定した場合(たとえば平均値から5~6dB-Hz引いた値とした場合)、測位に使用すべき衛星を不使用状態にしてしまうおそれがある。他方、これよりも閾値を低く設定した場合(たとえば平均値から14~15dB-Hz引いた値とした場合)、測位に使用すべきでない衛星を使用状態にするおそれがある。したがって、閾値は測位衛星から受信する信号の信号強度の平均値から6dB-Hz~14dB-Hzとする必要がある。本発明者の経験に基づけば、8dB-Hz~10dB-Hz引いた値を閾値とすることが好ましい。
【0071】
次に、測位衛星の不使用状態の期間を規定するガード期間について説明する。ガード期間は、衛星信号の受信強度の継続期間よりも長い期間として設定する必要がある。ここで、継続期間は、受信強度が閾値を上回る状態が維持される期間のことをいう。厳密には継続期間はある程度の幅で変動するので、ガード期間は継続期間の最大値よりも長くすることが好ましい。本発明者が東京都内の高層ビル街で行った実験によれば、継続期間は最大で164秒(GPSの22番)であった。このことから、少なくとも3分間のガード期間を設ければ、NLOS信号が支配的な測位衛星を効果的に除外することができる。各種マージンを考慮して、ガード期間は3分間~5分間の範囲内の期間とすることが好ましい。
【0072】
なお、ガード期間は、測位装置1と周辺のビル間の距離に応じて設定されてもよい。具体的には、衛星判定部112は、ガード期間として、測位装置1と周辺ビルとの間の距離が長いほど短い値を用いてもよい。たとえば、ガード期間は、当該距離が20メートル以下の場合は5分間に設定し、当該距離が60メートル以上の場合は3分間に設定し、当該距離が20メートルと60メートルの間の場合は3分間~5分間のあいだで線形補間等により求められた値に設定する。なお、測位装置1とビル間の距離は、たとえば、測位装置1周辺の地図情報から取得される。
【0073】
測位装置1と周辺のビル間の距離と、信号強度の継続期間との関係については、たとえば以下のような幾何学的な観点による説明が可能である。
図5に示すように、測位装置1がビルBから距離D(m)を隔てた場所に位置している状況を考える。
【0074】
仰角45°の電波の受信については、直接波DW1を受信する場合と、ビルBで反射した反射波RW1を受信する場合とがある。反射波RW1の直接波DW1に対する遅延距離は、√2×D(m)である。仰角0°の電波の受信については、直接波DW2を受信する場合と、ビルBで反射した反射波RW2を受信する場合とがある。反射波RW2の直接波DW2に対する遅延距離は、2×D(m)である。したがって、仰角45°と仰角0°との遅延距離の差は、(2-√2)×D(m)である。測位装置1とビルB間の距離Dが長いほど、遅延距離の差が大きくなる。この遅延距離の差が大きいほど、より多くの波長の異なる電波が干渉することから、信号強度の変動回数が増加する。変動回数が増加すると、継続期間は短くなる。したがって、測位装置1とビルB間の距離Dが長いほど、信号強度の継続期間が短くなるといえる。
【0075】
また、測位装置1をビル間の距離に限らず、ビル間の距離や道路幅に着目してガード期間を設定してもよい。道路幅が広いほど継続期間が短くなる傾向にあるので、それに応じて短いガード期間を設定するようにしてもよい。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る測位装置1では、衛星判定部112が、測位衛星から受信した信号の信号強度が閾値以下の場合、当該測位衛星を測位に利用する衛星から除外するとともに、ガード期間の間は当該測位衛星を測位に利用しないことを決定する。これにより、NLOS信号が支配的な測位衛星を測位に使用することが抑制ないし回避されるため、マルチパス環境であってもGNSSのみで測位精度を向上させることができる。
【0077】
なお、測位装置1は、ビルやダム等の静止体に設けられる場合に限らず、車両、建設機械、船舶等の移動体に設けられてもよい。この場合、測位装置1は、移動体が停止または低速(たとえば1~2m/秒程度)で移動しているときに測位を行うようにしてもよい。たとえば、車両が赤信号等により一時停止している場合や、駐車場から入出庫する際に測位を行う。これにより、ビル街等の受信状態の悪い環境下においても、現在位置を精度良く把握することができる。
【0078】
<測位方法>
次に、
図6のフローチャートを参照しつつ、上述の測位装置1による測位方法の一例について説明する。
【0079】
まず、衛星信号を受信可能な複数の測位衛星の各々についてステップS1を行って、各測位衛星を測位に利用するか否かを決定する。ステップS1は、以下のステップS11~ステップS15を有する。
【0080】
ステップS11:入力部111は、測位衛星から受信した信号の信号強度を入力する。
【0081】
ステップS12:衛星判定部112は、ステップS11で入力された信号強度が閾値以下であるかどうかを判定する。信号強度が閾値以下の場合(S12:Yes)はステップS13に進み、反対に、信号強度が閾値を上回る場合はステップS14に進む。
【0082】
ステップS13:衛星判定部112は、当該測位衛星を測位に利用しないと決定し、当該測位衛星に係るステップS1を終了する。本ステップでは、たとえば、当該測位衛星の状態を示すフラグの値を、不使用状態であることを示す値(たとえば“1”)とするとともに、不使用状態になってからの時間を示す変数に現在時刻を示す値(TOW値など)を入力する。
【0083】
ステップS14:衛星判定部112は、当該測位衛星の不使用状態の期間がガード期間に達したかどうかを判定する。不使用状態の期間がガード期間に達した場合(S14:Yes)、ステップS15に進み、不使用状態の期間がガード期間に達していない場合(S14:No)、当該測位衛星に係るステップS1を終了する。なお、不使用状態の期間がガード期間に達したかどうかは、不使用状態になってからの時間を示す変数の値が、ガード期間に達したかどうかにより判定する。
【0084】
ステップS15:衛星判定部112は、当該測位衛星を測位に利用すると決定する。本ステップでは、たとえば、当該測位衛星の状態を示すフラグの値を、使用状態であることを示す値(たとえば“0”)とする。
【0085】
上記のようにして各測位衛星について測位に利用するかどうかを決定した後、位置算出部113は、使用状態の測位衛星からの信号を用いて測位装置1の位置を算出する(ステップS2)。その後、出力部114は、位置算出部113で算出された位置情報を表示部14に出力する。なお、ステップS2において、位置の算出は、RTKLIB等のオープンソースのライブラリを用いて行ってもよい。また、ディファレンシャル測位(DGNSS)、リアルタイムキネマティック測位(RTK-GNSS)により位置の算出を行ってもよい。
【0086】
<測位結果>
実際の測位結果について説明する。
図7(a)は、比較例の測位方法による測位結果を示している。
図7(b)は、本実施形態の測位方法による測位結果を示している。
図8(a)は経度方向の誤差の時間変化を示し、
図8(b)は緯度方向の誤差の時間変化を示している。
【0087】
比較例の測位方法では、35dB-Hzの閾値を設け、信号強度がこの閾値以下となった測位衛星を除外して位置の算出を行った。これに対し、本実施形態の測位方法では、32dB-Hzの閾値および5分間のガード期間を設け、前述の方法により位置の算出を行った。いずれの測位実験も、東京都中央区八重洲のビル街において静止状態で30分間行った。また、位置の算出はDGNSSにより行った。
【0088】
図7(a)に示すように、比較例の方法では、算出された位置は原点(真値)から数十メートル離れた地点を中心に大きくばらついている。これに対して、本実施形態によれば、
図7(b)に示すように、算出された位置は原点の近く(ほぼ10メートル以内)に分布している。この理由として、比較例の測位方法では、NLOS信号が支配的な測位衛星をいちど除外しても、
図1(b)で説明したように信号強度はすぐに回復するため、ふたたび測位に利用してしまうことが考えられる。また、比較例の場合は閾値が少し高いため、測位に使用すべき衛星を除外している可能性がある。これに対し、本実施形態の測位方法の場合、ガード期間が設けられるため、一度除外された測位衛星がすぐに利用されることが回避され、信号強度の安定している衛星のみを利用して測位を行うことができる。また、測位に使用すべき衛星を除外しないよう適切な閾値を
設定していることも測位精度の向上に寄与していると考えられる。
【0089】
また、
図8(a),(b)に示すように、比較例の場合、経度方向および緯度方向ともに誤差が収まらないのに対し、本実施形態の場合、いずれの方向も測定開始から10~20秒以内に安定し、その後も高精度を維持している。これは、本実施形態ではNLOS信号が支配的な品質の低い衛星が順次除外され、その後も品質が改善しない限り、除外された衛星を測位に利用しないことによると考えられる。このように本実施形態によれば、短時間で正確な位置を算出できることから、静止体の測位に限らず、赤信号などで一時停止している車両等の移動体の測位を行うのにも好適である。
【0090】
上記の測位結果はDGNSSによるものであるが、DGNSSの精度が向上することで、RTK-GNSSの利便性の向上を図ることもできる。
【0091】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0092】
測位装置1の制御部11の各部は測位装置1内のプロセッサが所定のプログラムを実行してソフトウェアによる処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されるものであってもよいし、実装されているハードウェア自身により実現されるものであってもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御部11の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0093】
また、制御部11の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 測位装置
11 制御部
111 入力部
112 衛星判定部
113 位置算出部
114 出力部
12 通信部
13 衛星信号受信部
14 表示部
15 記憶部
16 アンテナ
100 測位装置
B,B1,B2 ビル
D 距離
DW1,DW2 直接波
RW1,RW2 反射波
M1,M2 マップ
S 測位衛星