(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】超電導限流器の冷却システム、超電導限流器及び超電導限流器の冷却システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/81 20230101AFI20241031BHJP
【FI】
H10N60/81
(21)【出願番号】P 2019234129
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000155986
【氏名又は名称】株式会社鈴木商館
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】仲村 直子
(72)【発明者】
【氏名】小暮 孝之
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】小室 旭
(72)【発明者】
【氏名】上岡 紀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-273740(JP,A)
【文献】特開2009-283679(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114507(WO,A1)
【文献】米国特許第05450266(US,A)
【文献】特開2009-027843(JP,A)
【文献】国際公開第99/062127(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0045987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導ケーブルを流れる過大な電流を抑制又は遮断するための超電導限流器であって、
超電導限流素子と、
前記超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクと、
前記冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間に配置される凝縮器と、
前記凝縮器で液化された凝縮液を前記冷媒タンクの液相部に戻すための液戻し流路と、
を備え、
前記凝縮器は、前記超電導ケーブルの上流側において前記超電導ケーブルを冷却するための第2冷媒の循環路から分岐
して前記超電導ケーブルをバイパスする分岐路に設けられ
、前記第1冷媒が凝縮するように前記空間内の前記第1冷媒と前記分岐路を流れる前記第2冷媒とを熱交換する熱交換器を含む
超電導限流器。
【請求項2】
前記凝縮器は前記冷媒タンクの上方に配置され、
前記液戻し流路は、前記凝縮液を前記冷媒タンクの前記液相部に滴下させるように構成された請求項1に記載の超電導限流器。
【請求項3】
超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間に配置される凝縮器と、
前記凝縮器で液化された凝縮液を前記冷媒タンクの液相部に戻すための液戻し流路と、
を備え、
前記凝縮器は前記冷媒タンクの上方に配置され、
前記液戻し流路は、前記凝縮液を前記冷媒タンクの前記液相部に滴下させるように構成され、
前記凝縮器は、
前記冷媒タンクの上方に設けられたハウジングと、
前記ハウジングと前記冷媒タンクとの間を連通させる連通管と
を備え、
前記連通管の下端が前記冷媒タンクの天井面よりも下方へ突出するように構成された超電導限流器の冷却システム。
【請求項4】
超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間に配置される凝縮器と、
前記凝縮器で液化された凝縮液を前記冷媒タンクの液相部に戻すための液戻し流路と、
を備え、
前記凝縮器は、前記第1冷媒と第2冷媒とを熱交換する熱交換器を含み、
前記熱交換器に供給される前記第2冷媒の流量を制御する流量調整弁を備えた超電導限流器の冷却システム。
【請求項5】
前記気相部又は前記気相部に連通する前記空間の圧力を検出するための圧力センサと、
前記圧力センサの検出値に基づいて前記流量調整弁の開度を制御する制御部と、
を備える請求項4に記載の超電導限流器の冷却システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1冷媒の温度を前記超電導限流器の転移温度に近い温度に制御するように構成された請求項5に記載の超電導限流器の冷却システム。
【請求項7】
超電導限流素子と、
前記超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクと、
請求項3乃至6の何れか一項に記載の超電導限流器の冷却システムと、
を備える超電導限流器。
【請求項8】
超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間に配置される凝縮器と、
前記凝縮器で液化された凝縮液を前記冷媒タンクの液相部に戻すための液戻し流路と、
を備える超電導限流器の冷却システムの制御方法であって、
前記冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間の圧力値を検出する圧力検出ステップと、
前記圧力値に応じて前記凝縮器に流入する第2冷媒の流量を制御する流量制御ステップと、
を備える超電導限流器の冷却システムの制御方法。
【請求項9】
前記冷媒タンクの内部は前記第1冷媒が飽和状態に維持され、
前記流量制御ステップにおいて、前記冷媒タンク内の前記第1冷媒が冷却目標温度Tgに一義的に対応する目標圧力Pgとなるように、前記凝縮器に流入する前記第2冷媒の流量を制御する請求項8に記載の超電導限流器の冷却システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超電導限流器の冷却システム、超電導限流器及び超電導限流器の冷却システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルを用いた電力ケーブルシステムは、超電導ケーブルの軸線方向に沿って液体窒素などの極低温冷媒を循環させて超電導ケーブルを冷却し、超電導状態を維持している。万一の事故時など、定格電流以上の過大な電流が電力系統に流れ、常電導状態に転移しようとした時、瞬時に電流を遮断する機能をもった限流器が必要となるが、従来、超電導ケーブルと限流器とを組み合せて使用された例はあまり見当たらない。
【0003】
特許文献1(特に
図35)には、超電導ケーブルと超電導限流器とを組み合わせ、これらをSN転移温度(臨界温度)以下の温度に保持するための冷却システムが開示されている。超電導限流器は、超電導状態が破れて常電導状態に転移した時発生する電気抵抗を利用して電流を抑制する装置である。特許文献2には、超電導限流器を構成する超電導限流素子を冷却するための専用の冷凍機を備えた例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超電導限流器は、超電導状態が破れて常電導状態に転移した際に、速やかに超電導状態に復帰する必要があるが、常電導状態から超電導状態に復帰する際に瞬間的に冷却負荷が高まるため、これに抗して速やかな復帰を可能にしなければならない。
【0006】
超電導ケーブルは、運転中臨界温度を超えないように臨界温度未満で臨界温度から安全幅をもたせた冷却温度に冷却される。一方、超電導限流器は、超電導ケーブルに定格電流以上の短絡電流が発生した時、超電導限流素子が即座に転移して短絡電流を抑制する必要があるために、臨界温度に近い温度に冷却される。このように、両者は冷却温度が異なるために、通常、両者を組み合わせて使用する場合でも、夫々専用の冷凍機を設けざるを得ないと考えられている。そのため、冷却システムが複雑かつ高コストとなるおそれがある。
【0007】
本開示は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、低コストでかつ超電導限流器の転移時に速やかな復帰を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る超電導限流器の冷却システムは、超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間に配置される凝縮器と、前記凝縮器で液化された凝縮液を前記冷媒タンクの液相部に戻すための液戻し流路と、を備える。
【0009】
また、本開示に係る超電導限流器は、超電導限流素子と、前記超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクと、上述の超電導限流器の冷却システムと、を備える。
【0010】
さらに、本開示に係る超電導限流器の冷却システムの制御方法は、超電導限流素子を冷却するための第1冷媒が貯留される冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間に配置される凝縮器と、前記凝縮器で液化された凝縮液を前記冷媒タンクの液相部に戻すための液戻し流路と、備える超電導限流器の冷却システムの制御方法であって、前記冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間の圧力値を検出する圧力検出ステップと、前記圧力値に応じて前記凝縮器に流入する前記第2冷媒の流量を制御する流量制御ステップと、備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る超電導限流器及びその冷却システムによれば、超電導限流器専用の冷凍機が不要であるので簡素化かつ低コスト化できると共に、転移後に速やかな復帰を可能にし、かつ凝縮器における第1冷媒の再凝縮量を制御することで、超電導限流器をその冷却に適した所望の温度に冷却できる。また、超電導限流器の冷却システムの制御方法によれば、超電導ケーブルに定格電流以上の短絡電流が流れた時の超電導限流器の応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る超電導限流器を超電導ケーブルに用いた電力ケーブルシステムに適用した系統図である。
【
図2】一実施形態に係る超電導限流器の冷却システムの断面図である。
【
図3】一実施形態に係る超電導限流器の冷却システムの断面図である。
【
図4】一実施形態に係る超電導限流器の冷却システムの制御方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0014】
図1は、一実施形態に係る超電導限流器を、超電導ケーブルを用いた電力ケーブルシステムに適用した系統図である。電力ケーブルシステム10は、冷媒r2(第2冷媒)が循環する循環路12に、冷凍機20、リザーバ22及び冷媒ポンプ24が設けられ、極低温に冷却された、例えば液体窒素のような冷媒r2が循環路12を循環する。循環路12の一部は、超電導ケーブル16の軸線方向に沿って配置され、超電導ケーブル16は、循環路12を流れる冷媒によって超電導状態に冷却される。超電導ケーブル16の上流側で分岐路14が循環路12から分岐し、分岐路14は超電導ケーブル16をバイパスして超電導限流器18を経由し、リザーバ22に接続される。
【0015】
万一の事故時など、定格電流以上の過大な電流が電力系統に流れ、超電導ケーブル16及び超電導限流器18の超電導状態が破れ、常電導状態に転移すると、超電導限流器18は、転移時に発生する電気抵抗を利用して超電導ケーブル16を流れる電流を抑制又は遮断する。
【0016】
一実施形態に係る超電導限流器18は、
図2又は
図3に示すように、超電導限流素子50と、超電導限流素子50を冷却するための冷媒r1(第1冷媒)が貯留される冷媒タンク52と、超電導限流器18の冷却システム30と、を備える。超電導限流素子50は冷媒r1の液相部Lに浸漬されて冷却される。
【0017】
幾つかの実施形態に係る超電導限流器の冷却システム30(30a、30b)は、
図2又は
図3に示すように、冷媒タンク52の内部に形成された冷媒r1の気相部G又は気相部Gに連通する空間Sに凝縮器31(31a、31b)が配置されている。超電導限流器18の作動中、超電導限流器18を冷却する冷媒r1は、超電導限流素子50からの受熱で一部が蒸発する。凝縮器31では、冷媒r2と蒸発した冷媒r1とが熱交換し、冷媒r1が冷却されて凝縮する。液化した凝縮液は液戻し流路32を通って冷媒タンク52の液相部Lに戻される。このように、凝縮器31で再凝縮した冷媒r1を液戻し流路32から冷媒タンク52に速やかに戻すことで、凝縮器31における再凝縮量を増加できる。従って、再凝縮を効率的に行うことができるので、転移時に瞬間的に高まる冷却負荷に抗して速やかな復帰が可能になる。
【0018】
また、冷却システム30は、基本的に凝縮器31及び液戻し流路32とで構成され、超電導限流器専用の冷凍機を必要としないので簡素化かつ低コスト化できる。さらに、凝縮器31で冷媒r1を冷却する冷媒r2の流量を調整することで、冷媒r1の再凝縮量を制御できる。気相部G又は連通空間Sは飽和状態となっているため、冷媒r1の再凝縮量を制御することで、気相部G又は連通空間Sの圧力(飽和圧力)を制御でき、さらに、気相部G又は連通空間Sの圧力を制御することで、気相部G又は連通空間Sの冷媒r1の温度(飽和温度)を制御できる。これによって、冷媒r1の液相部Lを超電導限流器18の冷却に適した温度に制御できる。
【0019】
電力ケーブルシステム10において、超電導ケーブル16は、臨界温度を超えないように臨界温度から安全幅をもたせた冷却温度に保持される。一方、超電導限流器18は、超電導ケーブル16に定格電流以上の短絡電流が発生した時、即座に短絡電流を遮断するために、臨界温度に近い温度に冷却される。従って、両者の冷却温度は異なる。従って、通常、両者を組み合わせて使用する場合でも、夫々専用の冷凍機を設けざるを得ないと考えられている。これに対し、本実施形態によれば、冷凍機20によって冷媒r2を超電導ケーブル16に適した冷却温度に制御できると共に、冷媒r1を超電導限流器18に適した冷却温度に制御できる。
【0020】
超電導ケーブル16に定格電流以上の短絡電流が流れると、超電導限流器18に含まれる超電導限流素子50が転移し、電気的抵抗が生じることで加熱され、超電導限流素子50を冷却する冷媒
r1の圧力が上昇する。冷媒
r1の圧力上昇に対して、凝縮器31に流入する冷媒
r2の流量を増大させて、冷媒
r1の温度上昇を防いでいる。この場合でも、
図1に示す電力ケーブルシステム10では、リザーバ22を備えているため、超電導ケーブル16を通過してリザーバ22に流入する冷媒
r2の流量や流体圧力に影響されず、超電導ケーブル16の冷却負荷に必要な冷媒r2の流量を凝縮器31からリザーバ22に戻すことができる。
【0021】
一実施形態では、リザーバ22は循環路12と分岐路14との合流点に設けられる。そして、分岐路14の冷媒r2はリザーバ22の気相部に戻される。仮に、リザーバ22の上流側で循環路12と分岐路14とが合流すると、冷媒r2の流量が多い循環路12から分岐路14に冷媒r2が逆流するおそれがある。この実施形態によれば、分岐路14を流れる冷媒r2はリザーバ22の気相部に戻されるため、そのおそれはない。
【0022】
なお、
図2に示す実施形態では、凝縮器31(31a)は冷媒タンク52の気相部Gに配置されているので、凝縮器31(31a)で液化した冷媒r1の凝縮液は重力により気相部Gから直接液相部Lの液面に落下する。従って、この実施形態では、液戻し流路32は気相部Gに形成されているとみなすことができる。凝縮器31(31a)は、気相部Gに配置されるため、ハウジングなどを必要としな
い。従って、冷却システム30(30a)を簡素化かつ低コスト化できる。
【0023】
例えば、冷媒r1及び冷媒r2として液体窒素が用いられる。超電導ケーブル16及び凝縮器31に、例えば、超電導ケーブル16の冷却に適した温度67Kの液体窒素が供給される。超電導限流器18では、冷媒タンク52が例えば大気圧に保持されるとき、冷媒r1の液相部Lは液体窒素の沸点である77K近くの温度に制御される。
【0024】
一実施形態では、
図3に示すように、凝縮器31(31b)は、冷媒タンク52の上方に配置される。そして、液戻し流路32は、凝縮器31(31b)で凝縮した凝縮液を冷媒タンク52の液相部Lに滴下させるように構成される。凝縮器31(31b)が冷媒タンク52の上方に配置されるため、再凝縮した冷媒r1は重力で冷媒タンク52の液相部Lに自動的に戻る。そのため、再凝縮した冷媒r1を冷媒タンク52に戻すための動力が不要になる。
【0025】
一実施形態では、
図3に示すように、凝縮器31(31b)は、冷媒タンク52の上方に設けられたハウジング34を備えている。そして、液戻し流路32として、ハウジング34の内部と冷媒タンク52の内部とを連通させる連通管35を備え、連通管35の下端部35aは冷媒タンク52の天井面54よりも下方へ突出するように構成されている。凝縮器31(31b)で再凝縮した冷媒r1は、連通管35を伝って下端部35aまで落下する
。そのため、再凝縮した冷媒r1は、
連通管35を伝って冷媒タンク52に貯留された冷媒r1の液相部Lの液面近傍まで落下させることができる。連通管35を伝うことで、気相部Gとの接触を避けることができ、これによって、落下途中での再蒸発を抑制できる。連通管35の下端部35aが冷媒タンク52の天井面54よりも下方へ突出するように構成されていないとき、凝縮液が再気化するおそれがある。
【0026】
図3に示す凝縮器31(31b)は、連通管35を介して冷媒タンク52の上面より上方に配置されているが、別な実施形態では、ハウジング34を冷媒タンク52の上面に接して載置するように配置してもよい。
【0027】
一実施形態では、
図2及び
図3に示すように、凝縮器31(31a、31b)は、冷媒r1と冷媒r2とを熱交換する熱交換器36を備え、さらに、熱交換器36に供給される冷媒r2の流量を制御する流量調整弁38を備えている。この実施形態では、流量調整弁38の開度を制御することで、熱交換器36に供給される冷媒r2の流量を制御でき、これによって、冷媒r2と熱交換される冷媒r1の凝縮量を制御できる。冷媒タンク52は密閉構造を有する容器であり、冷媒タンク52の内部は飽和状態になっているため、冷媒r1の凝縮量を制御することで、冷媒タンク52の圧力(飽和圧力)を制御できる。該飽和圧力を制御することで該飽和圧力から一義的に対応する飽和温度を制御できる。これによって、冷媒r1を超電導限流素子50の冷却に適した温度に制御できる。
【0028】
図2及び
図3に示す実施形態では、熱交換器36は、冷媒タンク52の気相部G又は連通空間Sに設けられた熱交換管で構成されている。該熱交換管の内部を冷媒r2が流れ、該熱交換管の外側は冷媒r1の気相部Gが形成され、冷媒r1と冷媒r2とは該熱交換管を介して間接熱交換される。そのため、気相部G又は連通空間Sは密閉空間を形成でき、飽和状態を保持できる。これによって、気相部G又は連通空間Sの圧力を制御することで、これらの温度制御が可能になるため、超電導限流素子50の冷却温度を臨界温度に近い温度に制御できる。
【0029】
図2又は
図3に示す実施形態では、流量調整弁38は凝縮器31の上流側の分岐路14に設けられているが、代わりに、凝縮器31の下流側の分岐路14に設けるようにしてもよい。
また、一実施形態では、
図2及び
図3に示すように、循環路12及び分岐路14を構成する配管は、外側から熱が侵入しないように、断熱層44で被覆されている。また、冷媒タンク52の内部に貯留した液相部Lの液面は液面計56によって検出できる。これによって、液相部Lの冷媒液量の把握が可能になる。
【0030】
一実施形態では、
図2又は
図3に示すように、冷媒タンク52の気相部G又は凝縮器31(31b)の連通空間Sの圧力を検出するための圧力センサ40が設けられている。圧力センサ40の検出値は制御部42に送られ、制御部42は、圧力センサ40の検出値に基づいて流量調整弁38の開度を制御する。冷媒タンク52の気相部G及び連通空間Sは飽和状態であるので、これらの圧力(飽和圧力)を検出することで、気相部G又は連通空間Sの温度(飽和温度)を求めることができる。従って、気相部G又は連通空間Sの圧力を制御することで、冷媒r1を超電導限流素子50の冷却に適した温度に精度良く制御できる。
【0031】
一実施形態では、制御部42は、冷媒r1の温度を超電導限流器18の転移温度に近い設定範囲内温度に制御するように構成される。超電導限流器18が超電導ケーブル16を用いた電力ケーブルシステム10に組み合せて使用される場合に、超電導ケーブル16に定格電流以上の短絡電流が流れて転移した時の超電導限流器18の応答性を高めることができる。
【0032】
また、超電導限流器18は、上記構成の冷却システム30を備えているので、超電導ケーブル16の転移時に瞬間的に高まる冷却負荷に抗して、速やかな復帰を可能にすると共に、凝縮器31で冷媒r1を冷却する冷媒r2の流量を調整することで、冷媒r1の液相部Lの温度を制御でき、これによって、超電導限流素子50をその冷却に適した所望の温度に冷却できる。
【0033】
一実施形態に係る超電導限流器の冷却システムの制御方法は、
図4に示すように、まず、冷媒タンク52の気相部G又は連通空間Sの圧力値を検出する(圧力検出ステップ
S10)。次に、検出した圧力値に応じて凝縮器31に流入する冷媒r2の流量を制御する(流量制御ステップS12)。
これによって、冷媒タンク52の気相部G又は連通空間Sを目標圧力とすることができるので、冷媒タンク52の液相部Lによって超電導限流素子50の冷却温度を転移温度に近い温度に制御できる。これによって、超電導ケーブル16に定格電流以上の短絡電流が流れた時の超電導限流器18の応答性を高めることができる。
【0034】
冷媒タンク52の内部は冷媒r1が飽和状態に維持されている。一実施形態では、流量制御ステップS12において、冷媒タンク52内の冷媒r1が冷却目標温度Tgに一義的に対応する目標圧力Pgとなるように、凝縮器31に流入する冷媒r2の流量を制御する。制御パラメータとして制御しやすい冷媒タンク52内の冷媒r1の圧力を対象とし、冷媒r1の圧力が目標圧力Pgとなるように、凝縮器31に流入する冷媒r2の流量を制御するので、目標圧力Pgに一義的に対応する冷媒r1の冷却目標温度Tgに精度良く制御できる。
【0035】
図4は、
図2又は
図3に示す実施形態において、流量調整弁38の開度制御によって気相部G又は連通空間Sの圧力を制御する方法の一例を説明する。なお、
図4において、符号Vは流量調整弁38の開度(%)を示す。この制御例では、気相部G又は連通空間Sの目標圧力Pgを圧力幅P1~P2の範囲内としている。
ここで圧力制御の目的は、超電導限流器18に含まれる超電導限流素子50を冷却するために貯留される冷媒
r1の液温を、冷却目標温度Tgに冷却することにある。冷媒
r1の冷却目標温度TgをT1≦冷却目標温度Tg≦T2の範囲内とすると、飽和圧力に相当する圧力値の目標圧力PgはP1≦目標圧力Pg≦P2の範囲内とすることができる。温度T1は冷却目標温度Tgの下限値であり、圧力P1は飽和状態下で温度T1に一義的に対応する圧力である。また、温度T2は冷却目標温度Tgの上限値であり、圧力P2は飽和状態下で温度T2に一義的に対応する圧力である。
【0036】
なお、
図4において、圧力センサ40の検出値P、目標圧力Pg(圧力幅P1~P2)及び制御時の圧力値P1、P2の関係、及び流量調整弁38の開度V(%)の範囲は、次のとおりである。
目標圧力:P1≦Pg≦P2
目標圧力を下回る条件:P<P1
目標圧力を上回る条件:P2<P
0≦V≦100
【0037】
まず、圧力センサ40により気相部G又は連通空間Sの圧力値Pを検出する(ステップS10)。次に、圧力値Pが目標圧力Pg(圧力幅P1~P2)を下回って減少したとき(P<P1)(ステップ12a)、冷媒r1の圧力が降下して冷媒r1の液温が低いので、流量調整弁38の開度Vを減少させ、凝縮器31に流入する冷媒r1の流量を低減する(ステップS14a)。圧力値Pが目標圧力Pgの範囲(P1≦Pg≦P2)内で安定しているとき(ステップS12b)、流量調整弁38の開度Vは一定のまま変化させない(ステップS14b)。圧力値Pが増加したとき(P2<P)(ステップS12c)、冷媒r1の圧力上昇で冷媒r1の液温が高くなるので、流量調整弁38の開度Vを増加させ、凝縮器31に流入する冷媒r2の流量を増加させる(ステップS14c)。このような操作を行うことで、気相部G又は連通空間Sの圧力を目標圧力Pgに保持できる。また、目標圧力Pgを大気圧付近に設定することができる。
【0038】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)一つの態様に係る超電導限流器の冷却システム(30)は、超電導限流素子(50)を冷却するための第1冷媒(r1)が貯留される冷媒タンク(52)の気相部(G)又は該気相部(G)に連通する空間(S)に配置される凝縮器(31(31a、31b))と、前記凝縮器(31)で液化された凝縮液を前記冷媒タンク(52)の液相部(L)に戻すための液戻し流路(32)と、を備える。
【0040】
このような構成によれば、超電導限流器の作動中、超電導限流素子からの受熱で一部が蒸発した第1冷媒を上記凝縮器で再凝縮し、再凝縮した第1冷媒を上記液戻し流路から冷媒タンクに速やかに戻すことで、再凝縮量を増加できる。従って、再凝縮を効率的に行うことができるので、転移時に瞬間的に高まる冷却負荷に抗して速やかな復帰が可能になる。
【0041】
また、本開示に係る冷却システムは、基本的に上記凝縮器及び上記液戻し流路とで構成され、超電導限流器専用の冷凍機を必要としないので低コスト化できる。さらに、凝縮器で第1冷媒を冷却する第2冷媒の流量を調整することで、再凝縮後の第1冷媒の温度を制御できるので、第1冷媒を超電導限流器の冷却に適した温度に制御できる。
【0042】
(2)別な態様に係る超電導限流器の冷却システム(30)は、(1)に記載の超電導限流器の冷却システムであって、前記凝縮器(31)は前記冷媒タンク(52)の上方に配置され、前記液戻し流路(32)は、前記凝縮液を前記冷媒タンク(52)の前記液相部(L)に滴下させるように構成される。
【0043】
このような構成によれば、凝縮器が冷媒タンクの上方に配置されるため、再凝縮した第1冷媒は重力で冷媒タンクの液相部に自動的に戻る。そのため、再凝縮した第1冷媒を冷媒タンクに戻すための動力が不要になる。
【0044】
(3)さらに別な態様に係る超電導限流器の冷却システム(30)は、(2)に記載の超電導限流器の冷却システムであって、前記凝縮器(31(31b))は、前記冷媒タンク(52)の上方に設けられたハウジング(34)と、前記ハウジング(34)と前記冷媒タンク(52)との間を連通させる連通管(35)と、を備え、前記連通管(35)の下端(35a)が前記冷媒タンク(52)の天井面(54)よりも下方へ突出するように構成される。
【0045】
このような構成によれば、凝縮器で再凝縮した第1冷媒は、上記連通管を伝って冷媒タンクに貯留された第1冷媒の液相部の液面近傍まで落下するため、該連通管を伝うことで気相部との接触を避けることができる。これによって、落下途中での再蒸発を抑制できる。
【0046】
(4)さらに別な態様に係る超電導限流器の冷却システムは、(1)乃至(3)の何れかに記載の超電導限流器の冷却システム(30)であって、前記凝縮器(31)は、前記第1冷媒(r1)と第2冷媒(r2)とを熱交換する熱交換器(36)を含み、前記熱交換器(36)に供給される前記第1冷媒(r1)の流量を制御する流量調整弁(38)を備える。
【0047】
このような構成によれば、上記熱交換器に供給される第2冷媒の流量を上記流量調整弁で制御できるため、第2冷媒の流量を制御することで、凝縮器における第1冷媒の再凝縮量を制御できる。これによって、飽和状態にある冷媒タンクの飽和圧力及び該飽和圧力に一義的に対応する飽和温度を制御できる。そのため、第1冷媒の液相部を超電導限流器の冷却に適した温度に制御できる。
【0048】
(5)さらに別な態様に係る超電導限流器の冷却システム(30)は、(4)に記載の超電導限流器の冷却システムであって、前記冷媒タンク(52)の前記気相部(G)又は前記気相部(G)に連通する前記空間(S)の圧力を検出するための圧力センサ(40)と、前記圧力センサ(40)の検出値に基づいて前記流量調整弁(38)の開度を制御する制御部(42)と、を備える。
【0049】
このような構成によれば、上記圧力センサの検出値に基づいて流量調整弁の開度を制御することで、飽和状態にある気相部又は該気相部に連通する空間の飽和圧力を制御できる。該飽和圧力を制御することで、冷媒タンク内の第1冷媒の飽和温度を精度良く制御できる。これによって、第1冷媒の液相部を超電導限流素子の冷却に適した温度に精度良く制御できる。
【0050】
(6)さらに別な態様に係る超電導限流器の冷却システム(30)は、(5)に記載の超電導限流器の冷却システムであって、前記制御部(42)は、前記第1冷媒(r1)の温度を転移温度に近い設定範囲内温度に制御するように構成される。
【0051】
このような構成によれば、超電導限流器が超電導ケーブルを用いた電力ケーブルシステムに組み合せて使用される場合に、超電導ケーブルに定格電流以上の短絡電流が流れて転移した時の超電導限流器の応答性を高めることができる。また、上述のように、第2冷媒によって超電導ケーブルを超電導ケーブルに適した温度に冷却できると共に、凝縮器で第1冷媒を冷却する第2冷媒の流量を調整することで、再凝縮後の第1冷媒の温度を制御し、第1冷媒を超電導限流器の冷却に適した温度に制御できる。
【0052】
(7)一つの態様に係る超電導限流器(18)は、超電導限流素子(50)と、前記超電導限流素子(50)を冷却するための第1冷媒(r1)が貯留される冷媒タンク(52)と、(1)乃至(6)の何れかに記載の冷却システム(30)と、を備える。
【0053】
このような構成によれば、超電導限流器は、上記構成の冷却システムを備えているので、凝縮器において蒸発した第1冷媒の再凝縮を効率的に行うことができるので、転移後に速やかな復帰を可能にすると共に、凝縮器で第1冷媒を冷却する第2冷媒の流量を調整することで、第1冷媒の気相部の温度を制御できるので、超電導限流器をその冷却に適した所望の温度に冷却できる。
【0054】
(8)本開示に係る超電導限流器の冷却システムの制御方法は、超電導限流素子(50)を冷却するための第1冷媒(r1)が貯留される冷媒タンク(52)の気相部(G)又は該気相部(G)に連通する空間(S)に配置される凝縮器(31)と、前記凝縮器(31)で液化された凝縮液を前記冷媒タンク(52)の液相部(L)に戻すための液戻し流路(32)と、を備える超電導限流器の冷却システムの制御方法であって、前記冷媒タンク(52)の気相部(G)又は該気相部(G)に連通する空間(S)の圧力値を検出する圧力検出ステップ(S10)と、前記圧力値に応じて前記凝縮器(31)に流入する第2冷媒(r2)の流量を制御する流量制御ステップ(S12)と、を備える。
【0055】
このような構成によれば、冷媒タンクの気相部又は該気相部に連通する空間を目標圧力とすることができるので、冷媒タンクの液相部によって超電導限流器の冷却温度を転移温度に近い温度に制御できる。これによって、超電導ケーブルに定格電流以上の短絡電流が流れた時の超電導限流器の応答性を高めることができる。
【0056】
(9)一態様に係る超電導限流器の冷却システムの制御方法は、(8)に記載の冷却システムの制御方法であって、前記冷媒タンク(52)の内部は前記第1冷媒(r1)が飽和状態に維持され、前記流量制御ステップ(S12)において、前記冷媒タンク(52)内の前記第1冷媒(r1)が冷却目標温度Tgに一義的に対応する目標圧力Pgとなるように、前記凝縮器(31)に流入する第2冷媒(r2)の流量を制御する。
【0057】
このような構成によれば、制御パラメータとして制御しやすい冷媒タンク内の第1冷媒の圧力を対象とし、該圧力が目標圧力Pgとなるように、凝縮器に流入する第2冷媒の流量を制御するので、目標圧力Pgに一義的に対応する第1冷媒の冷却目標温度Tgに精度良く制御できる。
【符号の説明】
【0058】
10 電力ケーブルシステム
12 循環路
14 分岐路
16 超電導ケーブル
18 超電導限流器
20 冷凍機
22 リザーバ
24 冷媒ポンプ
30(30a、30b) 冷却システム
31(31a、31b) 凝縮器
32 液戻し流路
34 ハウジング
35 連通管
35a 下端部
36 熱交換器
38 流量調整弁
40 圧力センサ
42 制御部
44 断熱層
50 超電導限流素子
52 冷媒タンク
54 天井面
56 液面計
r1 冷媒(第1冷媒)
r2 冷媒(第2冷媒)
G 気相部
L 液相部
S 連通空間