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特許7579707バイオ系反応性可塑剤、およびそれを含有する接着剤及びシール剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バイオ系反応性可塑剤、およびそれを含有する接着剤及びシール剤
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20241031BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241031BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241031BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C07F7/18 Q CSP
C09J201/00
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020568026
(86)(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019053523
(87)【国際公開番号】W WO2019166224
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】18158865.8
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン・ブラント
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト・ベック
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・クライン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-エリク・ダムケ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・クックス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ヘラルドゥス・デ・フリース
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ・ヒンツェ
(72)【発明者】
【氏名】リシャルト・ファン・ヘック
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-502254(JP,A)
【文献】特開2012-158617(JP,A)
【文献】特表2016-521682(JP,A)
【文献】国際公開第2016/055693(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0345412(US,A1)
【文献】特表2007-514033(JP,A)
【文献】特表2009-509015(JP,A)
【文献】特開2016-121075(JP,A)
【文献】特表2008-546879(JP,A)
【文献】特表2012-528204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、m=0~25;
n=0~25;
q=0~50;
p=0~5;
r=1~3;
各単位pまたはrにおいて、それぞれのm、nおよびqは独立して選択され、
Xは、独立して、Hまたは-SRから選択され;
=-(CH1-10Si(O(CH0-8CHである、ただし、2個以上の-SRが存在する場合、それらは隣接する炭素原子に結合しておらず、かつ、前記-SR基は二重結合によって隣接する炭素原子に結合した炭素原子に結合していない、
ここで、1~10個の-SRが存在する;および
=置換または非置換の脂肪族C1-12炭化水素基であり、ここで置換基は、-OH、-OCH、-F、-Cl、-Br、-I、=O、-NOおよび-NHからなる群から選択される]
の化合物。
【請求項2】
p=1~3;
m=1~25;
n=1~25;および
q=0
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
p=0;
q=2~50
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
r=1である、請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
r=3である、請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
1~5個の-SRが存在する、請求項1~5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
式(II):
【化2】
[式中、s=0~25;
t=0~25;
u=1~5;
v=1~3;および
は、請求項1と同様に定義される]
の化合物を、Rが請求項1と同様に定義される化合物HSRと、触媒の存在下で反応させる工程
を含む、請求項1~のいずれかに記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項8】
前記反応を、30~100℃の温度で行う、請求項に記載の方法。
【請求項9】
反応性可塑剤としての、請求項1~のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項10】
A)少なくとも1つのシリル末端ポリマー;
B)少なくとも1つの請求項1~のいずれかに記載の化合物;
C)場合により、少なくとも1つの充填剤;および
D)場合により、1つ以上の補助物質
を含む、接着剤組成物またはシール剤組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの化合物Bの量は、前記組成物の総重量に基づいて0.1~30重量%である、請求項10に記載の接着剤組成物またはシール剤組成物。
【請求項12】
10~80重量%のA;
0.1~30重量%のB;
0~70重量%のC;および
0~60重量%のD
を含む、またはそれらからなる、請求項10または11に記載の接着剤組成物またはシール剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規反応性(湿気硬化性)可塑剤、およびそれを含有する、基材を接着およびシールするための接着剤およびシール剤に関する。本発明の反応性可塑剤は、メルカプトアルコキシシランで官能化された植物油由来のバイオ系可塑剤である。本発明による新規反応性可塑剤を用いることにより、可塑剤の移行が減少する、または可塑剤が移行しない接着剤およびシール剤を得ることができる。さらに、可塑剤に含まれるアルコキシシラン基の量に応じて、機械的特性を選択的に調整できるため、接着剤およびシール剤の改善につながる。
【背景技術】
【0002】
一般に、接着剤およびシール剤用可塑剤には、反応性可塑剤と非反応性可塑剤との2種類がある。一般的に可塑剤は、湿気反応性官能基を有していない石油化学製品ベースである。反応性可塑剤の技術的な利点は、接着の困難さをもたらす、古典的な可塑剤の、表面への移行が回避されることである。これは、反応性(官能化された)可塑剤と接着剤の他の成分との化学反応によって達成される。
【0003】
最近では、再生可能な原材料に基づく、持続可能な製品が市場で求められている。特に、再生可能な原料を多量に含む接着剤およびシール剤のニーズがある。このような材料を使用することにより、カーボンフットプリントのような持続可能性の目標に本質的に貢献し得る。さらに、これらの製品の性能は、少なくとも非持続可能な製品と同等のものである必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シリル末端ポリマーをベースポリマーとして含む接着剤またはシール剤に使用し得る、再生可能(バイオ)材料系反応性可塑剤を提供することにある。
【0005】
今日まで、メルカプトアルコキシシラン変性植物油に基づく反応性可塑剤は知られていない。メルカプトアルコキシシランを用いた植物油の官能化が困難であることは当業者の常識であった。この点について、硫黄含有化合物が反応中の触媒と相互作用して触媒活性を阻害することが想定されていた。さらに、最終的な接着剤またはシール剤をより高い温度で保管すると、使用された成分間の望ましくない副反応(例えば、アルコキシシランとトリグリセリドとの間のエステル交換反応)が起こり、結果としてカートリッジ内で望ましくない硬化が起こることが想定されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の式(I)の新規化合物によって解決される。本発明の式(I)の特定の化合物は、反応性の、したがって非移行性の可塑剤として適していることが、本発明の発明者らによって見出された。従来の可塑剤と比較して有利な特性は、新たに同定された化合物の移行が大幅に減少していることである。さらに、従来の可塑剤を本発明による可塑剤で部分的または完全に置換した場合、従来の可塑剤の使用量を低減し得る。さらに、本発明の化合物は、本発明の特定の接着剤組成物およびシール剤組成物に好適であることがわかった。驚くべきことに、本発明の特定の接着剤およびシール剤は、硬化することなく長期保存が可能であることがわかった。驚くべきことに、引張強度や引張伸びを選択的に増加させたり、変更したりすることができる。さらに、驚くべきことに、本発明の化合物は、接着剤組成物やシール剤組成物に使用された場合に、同時に酸化防止剤として機能することがわかった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「組成物」は、本発明の文脈において、少なくとも2つの成分/化合物の混合物として理解される。
【0008】
用語「硬化性」は、外部条件の影響下で、特に環境中に存在する水分の影響下および/またはこの目的のために供給された水分の影響下で、組成物が、比較的柔軟な状態、場合により塑性延性を有する状態から、より硬い状態へと変化し得ることを意味すると理解される。一般に、架橋は、化学的および/または物理的な影響、すなわち、既に述べた湿気に加えて、例えば、熱、光または他の電磁放射の形でのエネルギーの供給によってだけでなく、単に組成物を空気または反応性成分と接触させることによっても行われ得る。
【0009】
本発明におけるマーカッシュ式では、表現の容易さのために二重結合におけるトランス配置のみが描かれているが、分子中のすべての二重結合は、互いに独立して、シスまたはトランス配置を有し得る。さらに、式中で与えられた数値はすべて整数であり、例えば、rが1~3の場合、rは1、2または3である。
【0010】
数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、本発明によれば、スチレン標準物質を用いて23℃でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、SECとしても知られている)によって決定される。この方法は当業者に知られている。多分散度は、平均分子量MwおよびMnから導出される。PD=Mw/Mnとして算出される。
【0011】
BET値はDIN ISO 9277:2014-01に従って決定される。
【0012】
本明細書において、用語「a」および「an」および「少なくとも1つ(at least one)」は、用語「1つ以上(one or more)」と同じであり、互換的に使用し得る。「少なくとも1つ」は、1つ以上、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上を意味する。本明細書で任意の成分に関して使用される「少なくとも1つ」は、化学的に異なる分子の数、すなわち、参照される種の異なる種類の数を指し、分子の総数を指すのではない。例えば「少なくとも1つのポリオール」は、ポリオールの定義に該当する少なくとも1種類の分子が使用されることを意味し、この定義に該当する2つ以上の異なる種類の分子が存在し得ることを意味し、前記ポリオールの1分子のみが存在することを意味しない。
【0013】
組成物または配合物に関連して本明細書に記載されているすべての割合は、特に明記されていない場合には、それぞれの組成物または配合物の総重量に対する重量%に関するものである。
【0014】
本発明において、基が置換されていると記載されている場合、好ましい置換基は、-OH、-OCH、-F、-Cl、-Br、-I、=O、-NOおよび-NHから選択される。
【0015】
本発明は、特に、以下に関するものである。
【0016】
〔1〕式(I):
【化1】
[式中、m=0~25;
n=0~25;
q=0~50;
p=0~5;
r=1~3;
各単位pまたはrにおいて、それぞれのm、nおよびqは独立して選択され、
Xは、独立して、Hまたは-SRから選択され;
=-(CH1-10Si(O(CH0-8CH、好ましくは-(CH1-5Si(O(CH0-3CH、より好ましくは-(CHSi(OCHまたは-(CHSi(O(CHCHである、ただし、2個以上の-SRが存在する場合、それらは隣接する炭素原子に結合しておらず、かつ、前記-SR基は二重結合によって隣接する炭素原子に結合した炭素原子に結合しておらず、好ましくは二重結合に対するα位の炭素原子に結合していない;および
=置換または非置換の脂肪族C1-12炭化水素基、好ましくは飽和非置換の脂肪族C1-12炭化水素基;より好ましくは飽和非置換の脂肪族C1-6炭化水素基、最も好ましくは飽和非置換の脂肪族C1-3炭化水素基である]
の化合物。
〔2〕
p=1~3、好ましくは1または2、より好ましくは1;
m=1~25、好ましくは2~15、より好ましくは3~10;
n=1~25、好ましくは2~15、より好ましくは3~10;および
q=0
である、〔1〕に記載の化合物。
〔3〕
p=0;
q=2~50、好ましくは5~40、より好ましくは10~20
である、〔1〕に記載の化合物。
〔4〕
r=1である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の化合物。
〔5〕
r=3である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の化合物。
〔6〕
1~10個の-SR、好ましくは1~5個の-SR、より好ましくは1個または2個の-SR、最も好ましくは1個の-SRが存在する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔7〕
式(I)の化合物は、菜種油、大豆油、ヒマシ油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、トール油、ジャトロファ油、キャンドルナッツ油、グレープシード油、ヒマワリ油、中オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、キャノーラ油、コーン油、カシューナッツ油、または藻類油またはトリオレイン酸塩のような化学的/生物学的に作られたトリグリセリドからなる群から選択される油に由来する、〔1〕に記載の化合物。
〔8〕
式(II):
【化2】
[式中、s=0~101;
t=0~101;
u=1~20;
v=1~3;および
は、〔1〕と同様に定義される]
の化合物を、Rが〔1〕と同様に定義される化合物HSRと、触媒の存在下で反応させる工程
を含む、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の式(I)の化合物の製造方法。
〔9〕
前記反応を、30~100℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは70~85℃の温度で行う、〔8〕に記載の方法。
〔10〕
反応性可塑剤としての、好ましくは接着剤組成物中の反応性可塑剤としての、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の化合物の使用。
〔11〕
A)少なくとも1つのシリル末端ポリマー;
B)少なくとも1つの〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の化合物;
C)場合により、少なくとも1つの充填剤;および
D)場合により、1つ以上の補助物質
を含む、接着剤組成物またはシール剤組成物。
〔12〕
前記少なくとも1つの化合物Bの量は、前記組成物の総重量に基づいて0.1~30重量%である、〔11〕に記載の接着剤組成物またはシール剤組成物。
〔13〕
10~80重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~35重量%のA;
0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは1~10重量%のB;
0~70重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは30~50重量%のC;および
0~60重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは1~10重量%のD
を含む、またはそれらからなる、〔11〕または〔12〕に記載の接着剤組成物またはシール剤組成物
【0017】
添加するシリル基の数やトリグリセリドまたはメチルエステルなどの反応性可塑剤の性質(塩基構造)に応じて、引張強度が変化し得ることがわかった。特に、アルコキシシリル基の数が少ないと、接着剤が柔軟になり、数が多いと、脆性が増加した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、反応性可塑剤が組成物の他の成分との部分的なエステル交換を受けたと想定される。前記エステル交換は、組成物の粘度が著しく上昇することなく起こり、貯蔵中の望ましくない硬化は観察されなかった。本発明の化合物の化学修飾により、貯蔵中に、組成物の他の成分とのより良好な取り込みおよび結合が起こるようである。したがって、アルコキシシリル基の量および反応性可塑剤の性質に応じて、機械的特性を軟質で弾性のあるものから硬質で脆いものまで選択的に調整することが可能である。機械的特性を調整するための別の選択肢として、完全に飽和していない、すなわち構造中にまだ二重結合が残っている、本発明の化合物を用いることが挙げられる。それらは、必要な原材料の量を減らすことによって、より持続可能であるというさらなる利点を有する。本発明の化合物のさらなる技術的利点は、それらのチオエーテル基を介して、抗酸化剤としても作用し得ることである。特に、チオエーテル基は、ラジカルと接触するとスルホン類に酸化され得る。したがって、接着剤またはシール剤において一般的に使用される酸化防止剤の添加量を、より低い量にし得る、またはそれらの使用を完全に回避し得る。
【0018】
本発明の化合物を得るために、少なくとも1つの二重結合を含む化合物を、上記で定義された式HSRのメルカプトアルコキシシリル化合物と反応させる。これは、触媒の存在下で行われる。好適な一般的に知られている触媒としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、アゾベンゼンのようなアゾ化合物、およびジベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、過酸化アセトン、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩のような過酸化物が挙げられ、また、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ベンゾイルシクロヘキサノール、メチルエチルケトン等も使用し得る。しかし、紫外線および一般的な光重合開始剤も使用し得る。熱誘起ラジカル反応が好ましい。
【0019】
参照すると、「-SR基は、二重結合によって隣の炭素原子に結合した炭素原子に結合していない」ことを特徴としている。これは、式-HC=CH-の二重結合構造要素において、-SRは、二重結合を形成する炭素原子に結合している水素原子を置換することができないことを意味する。同様に、-SR基は「二重結合に対するα位の炭素原子に結合していない」という特徴は、式-C-CR=CR-C-(RはHまたはアルキル)の構造要素において、アスタリスクでマークされた炭素原子に結合していないことを意味する。
【0020】
本発明はまた、本発明の特定の化合物を含む接着剤組成物またはシール剤組成物(以下、単に「組成物」称する)に関する。接着剤組成物またはシール剤組成物は、好ましくは硬化性組成物である。
【0021】
組成物は、本発明に従った化合物とは異なる、当業者に一般的に知られている反応性または非反応性の可塑剤をさらに含み得るが、好ましい実施形態では、追加の可塑剤の存在は、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.001重量%以下である。さらなる好ましい実施形態では、組成物は、任意の追加の可塑剤を含まない。
【0022】
組成物は、少なくとも1つの塩基性ポリマーを含む。好適なポリマーは、例えば、一般式(III):
-A-R-SiXYZ (III)
[式中、
Aは、少なくとも1つのヘテロ原子を含む2価または3価の結合基であり、
Rは、1~12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基から選択され、
X、Y、Zは、独立して、ヒドロキシル基、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、およびC~Cアシルオキシからなる群から選択される、ここで、X、Y、Zは、Si原子と直接結合している置換基、または置換基X、Y、Zのうちの2つは、それらが結合しているSi原子と共に環を形成しており、置換基X、Y、Zのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、およびC~Cアシルオキシ基からなる群から選択される、および
nは0または1である]
の少なくとも1つの末端基を有するポリマーである
【0023】
好ましい実施形態では、ポリマーは、一般式(III)の少なくとも2つの末端基を有する。
【0024】
一般式(III)の少なくとも1つの末端基を有するポリマーは、好ましくは、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、またはポリウレタンである。
【0025】
「ポリエーテル」は、有機繰り返し単位が主鎖中にエーテル官能基C-O-Cを含むポリマーであると理解される。セルロースエーテル、デンプンエーテルおよびビニルエーテルポリマーなどのラテラルエーテル基を有するポリマー、ならびにポリオキシメチレン(POM)などのポリアセタールは、ポリエーテルには含まれない。
【0026】
「ポリ(メタ)アクリル酸エステル」は、(メタ)アクリル酸エステルをベースとするポリマーであると理解される。したがって、繰り返し単位として構造モチーフ-CH-CR(COOR)-を有する、ここで、Rは水素原子(アクリル酸エステル)またはメチル基(メタクリル酸エステル)を示し、Rは直鎖状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル基および/または官能性置換基を含むアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシルまたは2-ヒドロキシエチル基を示す。
【0027】
「ポリウレタン」は、主鎖に少なくとも2つのウレタン基-NH-CO-O-を有するポリマーであると理解される。
【0028】
一般式(III)の少なくとも1つの末端基を含むポリマーは、好ましくはポリエーテルである。ポリエーテルは、柔軟性および弾性を有する構造を有しており、優れた弾性特性を有する組成物を製造することができる。ポリエーテルは、その骨格が柔軟であるだけでなく、同時に強度もある。したがって、ポリエーテルは、例えばポリエステルとは対照的に、例えば、水やおよび細菌に攻撃されたり、分解されたりすることがない。
【0029】
ポリマーが基づくポリエーテルの数平均分子量Mnは、好ましくは2000~100,000g/モル(ダルトン)、特に好ましくは少なくとも6000g/モル、特に好ましくは少なくとも8000g/モルである。そのような最小分子量を有するポリエーテルに基づく本発明による組成物は、有意なフィルム形成特性を有するため、本発明で使用されるポリエーテルは、少なくとも2000g/モルの数平均分子量が有利である。例えば、ポリエーテルの数平均分子量Mnは、4000~100,000、好ましくは8000~50,000、特に好ましくは10,000~30,000、特に10,000~25,000g/モルである。これらの分子量は、対応する組成物が粘度(加工の容易さ)、強度および弾性のバランスのとれた比率を有するので、特に有利である。
【0030】
分子量分布が狭く、したがって多分散性が低いポリエーテルが使用される場合、特に有利な粘弾性特性を達成し得る。これらは、例えば、いわゆる複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)によって得ることができる。この方法で製造されたポリエーテルは、分子量分布が特に狭いこと、平均分子量が高いこと、およびポリマー鎖の末端にある二重結合の数が非常に少ないことによって区別される。
【0031】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、ポリマーが基づくポリエーテルの最大多分散度Mw/Mnは、3、より好ましくは1.7、および最も好ましくは1.5である。
【0032】
比Mw/Mn(多分散性)は、分子量分布の幅を示し、したがって、多分散性ポリマーにおける個々の鎖の重合度の違いを示す。多くのポリマーやおよび重縮合物には、約2の多分散度が適用される。厳密な単分散性は1の値で存在する。例えば、1.5未満の低い多分散性は、比較的狭い分子量分布を示し、したがって、例えば、粘度などの分子量に関連する特性の特定の表現(expression)を示す。したがって、特に、本発明の文脈において、ポリマーAが基づくポリエーテルは、1.3未満の多分散性(Mw/Mn)を有する。
【0033】
好ましい実施形態では、一般式(III)の少なくとも1つの末端基を有するポリマーは、少なくともi)1つのポリオールまたは2つ以上のポリオールの混合物と、ii)1つのポリイソシアネートまたは2つ以上の混合物との反応により得られるポリウレタンであってよい。
【0034】
「ポリオール」は、化合物が他の官能基を含むかどうかに関係なく、少なくとも2つのOH基を含む化合物であると理解される。しかし、本発明に従って使用されるポリオールは、官能基としてOH基のみを含むか、または他の官能基が存在する場合、これらの他の官能基はいずれも、ポリオールおよびポリイソシアネートの反応中に優勢な条件下では、少なくともイソシアネートと反応しないことが好ましい。
【0035】
本発明によるポリウレタンを調製するのに適したポリオールは、好ましくはポリエーテルポリオールである。ポリエーテルの分子量および多分散性に関する上記の説明は、ポリエーテルポリオールに適用される。ポリエーテルポリオールは、好ましくはポリアルキレンオキシド、特に好ましくはポリエチレンオキシドおよび/またはポリプロピレンオキシドである。好ましい実施形態では、ポリエーテルまたは2つのポリエーテルの混合物が使用される。
【0036】
本発明に従って使用されるポリオールは、好ましくは約5~約15、より好ましくは約10のOH価を有する。第1級OH基の含有率は、すべてのOH基に基づいて、約20%未満であることが好ましく、より好ましくは約15%未満である。特に有利な一実施形態では、使用されるポリエーテルの酸価は、約0.1未満、好ましくは約0.05未満、より好ましくは約0.02未満である。
【0037】
ポリエーテルの他に、ポリオール混合物は他のポリオールを含有してよい。例えば、約200~約30,000g/モルの分子量を有するポリエステルポリオールを含有してよい。
【0038】
「ポリイソシアネート」は、少なくとも2つのイソシアネート基-NCOを有する化合物であると理解される。この化合物はポリマーである必要はなく、代わりに低分子化合物であることが多い。
【0039】
本発明によるポリウレタンの製造に適したポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメトキシブタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-および-1,4-ジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、2,4-および2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,3-または-1,4-フェニレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-または2,6-トルイレンジイソシアネート(TDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその異性体混合物が挙げられる。
以下のものも適している:MDIの部分的または完全に水素化されたシクロアルキル誘導体、例えば完全に水素化されたMDI(H12-MDI)、アルキル置換ジフェニルメタンジイソシアネート、例えばモノ-、ジ-、トリ-、またはテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネートおよびそれらの部分的または完全に水素化されたシクロアルキル誘導体、4,4’-ジイソシアナトフェニルペルフルオロエタン、フタル酸-ビス-イソシアナトエチルエステル、1 クロロメチルフェニル-2,4-または-2,6-ジイソシアネート、1-ブロモメチルフェニル-2,4-または-2,6-ジイソシアネート、3,3’-ビス-クロロメチルエーテル-4,4’-ジフェニルジイソシアネート、硫黄含有ジイソシアネート、例えば2モルのジイソシアネートと1モルのチオジグリコールまたはジヒドロキシジヘキシルスルフィドと反応させることにより得られるもの、ダイマー脂肪酸のジイソシアネート、または2つ以上のジイソシアネートの混合物。
ポリイソシアネートは、好ましくはIPDI、TDIまたはMDIである。
【0040】
本発明に従って使用するのに適した他のポリイソシアネートは、例えばジイソシアネートのオリゴマー化によって、より具体的には上記のイソシアネートのオリゴマー化によって得ることができる3つ以上の官能価を有するイソシアネートである。このようなトリおよびそれ以上のイソシアネートの例は、HDIまたはIPDIのトリイソシアヌレート、またはそれらの混合物、またはそれらの混合トリイソシアヌレートおよびアニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化により得られるポリフェニルメチレンポリイソシアネートである。
【0041】
ポリオールのヒドロキシル基に対して、存在するポリイソシアネートのNCO基が化学量論的に過剰な存在することが好ましい。「ポリオール」および「ポリイソシアネート」は、いずれの場合にも、ただ1つのポリオールおよび/またはただ1つのポリイソシアネートの存在を包含する。この化学量論的過剰はプロセス条件下で存在する必要がある。すなわち、過剰分が名目的に存在する場合には不十分である。ポリイソシアネートのNCO基の一部がポリオールのOH基以外の反応物、例えば単官能アルコールと反応するため、ポリオールのOH基に対するポリイソシアネートのNCO基の事実上の不足が生じる。ポリオールのOH基の数とポリイソシアネートのNCO基の数の比は、特に好ましくは1:3~1:1.1、特に1:2.5~1:1.5である。
【0042】
式(III):
-A-R-SiXYZ (III)
の末端基を有するさらに適切なポリマーは、式中、Aが少なくとも1つのヘテロ原子を含む2価または3価の結合基であり、Rが1~12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基から選択され、X、Y、Zが、互いに独立して、ヒドロキシル基、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、およびC~Cアシルオキシ基からなる群から選択され、ここで、X、Y、Zは、Si原子と直接結合している置換基、または置換基X、Y、Zのうちの2つは、それらが結合しているSi原子と共に環を形成しており、置換基X、Y、Zのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシル基、C~Cアルコキシ基、およびC~Cアシルオキシ基からなる群から選択される、nが0または1のものである。
【0043】
この文脈において、少なくとも1つのヘテロ原子を含む2価または3価の結合基Aは、シラン末端ポリマーのポリマー骨格を式(III)の基Rと連結する2価または3価の化学基であると理解される。例えば、2価または3価の連結基Aは、例えばアルコキシシランおよび/またはアシルオキシシラン末端ポリマーの製造中に、例えば、ヒドロキシル基で官能化されたポリエーテルとイソシアナトシランとの反応により、アミド基またはウレタン基として形成され得る。連結基は、下にあるポリマー骨格に生じる構造的特徴と区別することができるか、またはできないかのいずれかであり得る。後者は、例えば、それがポリマー骨格の繰り返し単位の連結点と同一である場合である。
【0044】
インデックス「n」は0(ゼロ)または1に対応する、すなわち、2価の連結基Aはポリマー骨格を基R(n=1)に連結する、またはポリマー骨格は基Rに直接結合または連結(n=0)する。
【0045】
いくつかの実施形態では、一般式(III)の2価または3価の連結基Aは、好ましくは酸素原子、または基
【化3】
である、ここで、R’’は、水素原子、および1~12個の炭素原子を有するアルキルまたはアリール基からなる群から選択されるか、または置換または非置換のアミド、カルバメート、ウレタン、ウレア、イミノ、カルボキシレート、カルバモイル、アミジノ、カーボネート、スルホネートまたはスルフィネート基である。連結基Aとして特に好ましいのは、プレポリマーの特定の官能基と、さらなる官能基を有するオルガノシランとを反応させることにより得られ得るウレタン基およびウレア基である。ウレタン基は、例えば、ポリマー骨格が末端ヒドロキシ基を含み、イソシアナトシランがさらなる成分として使用される場合、または逆に、末端イソシアネート基を有するポリマーが末端ヒドロキシ基を含むアルコキシシランと反応する場合のいずれかで形成され得る。同様に、ウレア基は、シランまたはポリマーのいずれかでの、末端の第1級アミノ基または第2級アミノ基の使用により得られ、これは、それぞれの反応物に存在する末端イソシアネート基と反応する。これは、アミノシランが末端イソシアネート基を有するポリマーと反応するか、またはアミノ基で末端置換されているポリマーがイソシアナトシランと反応することを意味する。
【0046】
ウレタン基およびウレア基は、ポリマー鎖の強度および全体的な架橋ポリマーの強度を有利に増加させる。
【0047】
基Rは、1~12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基である。炭化水素基は、直鎖状、分枝鎖状または環状アルキレン基であってよい。炭化水素基は、飽和または不飽和であってよい。Rは、好ましくは、1~6個の炭素原子を有する2価の炭化水素基である。組成物の硬化速度は、結合リンクの1つまたはポリマー骨格とシリル基との間の結合リンク(binding link)を形成する炭化水素基の長さに影響を受ける可能性がある。特に好ましくは、Rはメチレン、エチレンまたはn-プロピレン基、特にメチレンまたはn-プロピレン基である。
【0048】
ポリマー骨格に対する結合リンクとしてメチレン基を有するアルコキシシラン末端化合物(いわゆる「アルファシラン」)は、末端シリル基の反応性が特に高く、硬化時間を短縮し、そのためこれらのポリマーに基づく配合物の非常に迅速な硬化をもたらす。
【0049】
一般に、結合する炭化水素鎖が長くなると、ポリマーの反応性は低下する。特に、結合リンクとして分枝状プロピレン基を含む「ガンマシラン」は、必要な反応性(許容可能な硬化時間)と遅延した硬化(開放時間、結合後の修正の可能性)とのバランスがとれている。したがって、アルファおよびガンマアルコキシシラン末端ビルディングブロックを注意深く組み合わせることにより、システムの硬化速度に、必要に応じて影響を与え得る。
【0050】
本発明の文脈の中で、Rは最も特に好ましくはn-プロピレン基である。
【0051】
X、Y、Zは、互いに独立して、ヒドロキシル基、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、およびC~Cアシルオキシ基からなる群から選択さる、ここで、置換基X、Y、Zの少なくとも1つは加水分解性基、好ましくはC~CアルコキシまたはC~Cアシルオキシ基である必要があり、ここで、置換基X、Y、ZはSi原子と直接結合しているか、置換基X、Y、Zのうちの2つは、それらが結合しているSi原子と一緒に環を形成している。好ましい実施形態では、X、YおよびZは、Si原子と直接結合している置換基である。加水分解性基として、好ましくはアルコキシ基、特にメトキシ、エトキシ、i-プロピルオキシおよびi-ブチルオキシ基が選択される。アルコキシ基を含む組成物の硬化中に、粘膜を刺激する物質が放出されないので、これは有利である。基の加水分解によって形成されたアルコールは、放出される量では無害であり、蒸発する。したがって、これらの組成物は、特にDIY分野に適している。しかしながら、アセトキシ基-O-CO-CHなどのアシルオキシ基も、加水分解性基として使用し得る。
【0052】
好ましい実施形態では、アルコキシ末端および/またはアシルオキシシラン末端ポリマーは、一般式(III)の少なくとも2つの末端基を有する。したがって、各ポリマー鎖は、ポリマーの縮合を完了し得る少なくとも2つの連結点を含み、大気中の水分の存在下で加水分解された残留物を分離する。このようにして、定期的かつ迅速な架橋性が達成され、良好な強度を有する結合が得られる。さらに、加水分解性基の量および構造によって、例えばジまたはトリアルコキシシリル基、メトキシ基またはより長い基を使用することにより、長鎖システム(熱可塑性樹脂)、比較的ワイドメッシュ3次元ネットワーク(エラストマー)、または高度に架橋されたシステム(熱硬化性樹脂)として達成し得るネットワークの構成を制御し得るため、特に完成した架橋組成物の弾性、柔軟性および耐熱性にこのように影響し得る。
【0053】
好ましい実施形態において、一般式(III)におけるXは、好ましくはアルキル基であり、YおよびZは、互いに独立して、アルコキシ基、またはX、YおよびZは互いに独立してアルコキシ基である。一般に、ジまたはトリアルコキシシリル基を含むポリマーは、反応性の高い連結点を有しているため、迅速な硬化、高度な架橋、したがって良好な最終強度が得られる。ジアルコキシシリル基の特定の利点は、硬化後、対応する組成物がトリアルコキシシリル基を含むシステムよりも弾性があり、柔らかく、柔軟性があるという事実にある。したがって、それらは特にシール剤としての使用に適している。さらに、それらは硬化中にさらに少ないアルコールを分離するため、放出されるアルコールの量を減らす場合に特に重要である。
【0054】
一方、トリアルコキシシリル基を使用すると、より高い架橋度を達成し得る。これは、硬化後に、より硬く、強い材料が必要な場合に特に有利である。さらに、トリアルコキシシリル基はより反応性が高く、したがって、より迅速に架橋するため、必要な触媒量を低減でき、「コールドフロー」、すなわち、力と温度の影響下での対応する接着剤の寸法安定性に利点がある。
【0055】
特に好ましくは、一般式(III)中の置換基X、YおよびZは、それぞれ独立して、ヒドロキシル基、メチル基、エチル基、メトキシ基またはエトキシ基から選択され、置換基の少なくとも1つはヒドロキシル基、またはメトキシ基またはエトキシ基であり、好ましくはメトキシ基である。比較的小さな加水分解性基であるメトキシ基およびエトキシ基は、立体バルクが低く反応性が高いため、触媒の使用量が少なくても迅速な硬化が可能である。したがって、それらは、例えば、高い初期接着力が必要とされる接着剤などの、迅速な硬化が望ましいシステムにとって特に重要である。
【0056】
前記2つの基の組み合わせによって、興味深い構成の可能性も開かれる。同一のアルコキシシリル基の中で、例えばXにメトキシ、Yにエトキシが選択される場合、メトキシ基のみを担持するシリル基の反応性が高すぎ、エトキシ基を担持するシリル基の反応性が十分でないと判断される場合には、末端シリル基の所望の反応性を特に細かく調整し得る。
【0057】
メトキシ基およびエトキシ基に加えて、当然、加水分解性基としてより大きな基を使用することも可能であり、それは本来より低い反応性を示す。これは、遅延硬化もアルコキシ基の配置によって達成される場合に特に重要である。
【0058】
本発明による組成物中の一般式(III)の少なくとも1つのシリコーン含有基、好ましくは少なくとも1つの末端基を有するポリマーの総割合は、いずれの場合も組成物の総重量を基準にして、好ましくは10~80重量%、より好ましくは10~60重量%、最も好ましくは20~60重量%である。
【0059】
さらに適切なポリマーは、一般式(IV)のものである:
R-[A-R-SiR (OR3-x (IV)
式中、Rは有機基本構造であり、Aは酸素原子、例えばメチレン基などのアルキレン基、またはカルボキシ基、カルバメート基、カーボネート基、ウレイド基、ウレタン基、またはスルホネート基であり、Rは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1~4個の炭素原子を有するアルキル基または1~4個の炭素原子を有するアシル基であり、Rは1~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の置換または非置換のアルキレン基であり、Rは1~8個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状の置換または非置換のアルキレン基であり、x=0~2、およびn=1~10,000であり、ここで、シリル基は同一または異なっており、複数のRおよび/またはR基が存在する場合には、後者はそれぞれ同一または異なっている。WO 2005/047394 A1およびEP 1 093 482 A1に記載のシリル末端ポリマーが好ましい。
【0060】
充填剤
本発明による組成物は、さらに少なくとも1つの充填剤を含んでもよく、前記少なくとも1つの充填剤は、例えば、チョーク、粉末石灰岩、沈降および/または熱分解法シリカ、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土(珪藻土)、アルミナ、粘土、獣脂、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、粉末ガラス、およびその他のミネラルから選択される。さらに適切な充填剤は、特に、ケイ酸塩、例えば、天然層状ケイ酸マグネシウム水和物、天然ケイ酸アルミニウム水和物、および天然カリウムアルミニウム水和物など;炭酸塩、例えば、結晶形または殻残渣由来の天然炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、および天然炭酸カルシウムマグネシウム;硫酸塩、例えば、天然または合成バリウム塩など;および、複数のさらなる物質、例えば、グラファイトまたは雲母質ヘマタイトなどである。好ましい実施形態では、充填剤は、沈殿および/または熱分解法シリカである。さらに、有機充填剤、特にカーボンブラック、グラファイト、木質繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、木材チップ、みじん切りのわら、もみ殻、クルミの殻、および他の短繊維も使用し得る。さらに、ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維などの短繊維も添加してよい。アルミニウム粉末もフィラーとして適している。さらに、ミネラルシェルまたはプラスチックシェルを備えた中空球は、フィラーとして適している。これらは、例えば、GlassBubbles(登録商標)の商品名で市販されている中空ガラス球であり得る。プラスチックベースの中空球は、Expancel(登録商標)またはDualite(登録商標)という名前で市販されている。これらは、好ましくは無機または有機物質から構成され、それぞれの直径は1mm以下、好ましくは500μm以下である。用途によっては、配合物をチキソトロピーにする充填剤が好ましい。これらの充填剤は、レオロジー助剤、例えば水素化ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVCなどの膨潤性プラスチックとしても記載されている。それらが適切な計量装置(例えば、チューブ)から容易に絞り出されることができるように、これらの調製物は、好ましくは、3000~15,000mPas、好ましくは4000~8,000mPasまたは5000~6000mPasの粘度を有する。
【0061】
充填剤は、本発明の組成物の総重量に基づいて、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、例えば25~55重量%、特に35~50重量%の量で使用される。個々のフィラーまたは複数のフィラーの組み合わせを使用し得る。
【0062】
一態様では、10~500m/gのBET表面積を有する高分散性シリカを充填剤として使用してもよい。そのようなシリカの使用は、本発明による組成物の粘度の実質的な増加をもたらさないが、硬化した調製物の強化に寄与する。この補強により、例えば、使用される本発明による組成物の初期強度、引張剪断強度および接着力が改善される。好ましくは、100m/g未満、より好ましくは65m/g未満のBET表面積を有する非被覆シリカ、および/または100~400m/g、より好ましくは100~300m/g、特に150~300m/g、最も特に好ましくは、200~300m/gのBET表面積を有する被覆シリカが使用される。
【0063】
別の態様では、ゼオライトが使用される。ゼオライトとして、好ましくはアルカリアルミノケイ酸塩、例えば一般的な実験式aKbNaAl 2SiOnHO(0<a、b<1およびa+b=1、n=0~10)のナトリウム-カリウムアルミノケイ酸塩が使用される。使用されるゼオライトの細孔開口部は、水分子を受け入れるのに十分な大きさである。したがって、有効細孔開口が0.4nm未満のゼオライトが好ましい。特に好ましくは、有効細孔開口は、0.3nm±0.02nmである。ゼオライトは、好ましくは粉末の形態で使用される。
【0064】
チョークは好ましくは充填剤として使用される。炭酸カルシウムの立方、非立方、無定形および他の変更はチョークとして使用し得る。好ましくは、使用されるチョークは、表面処理またはコーティングされている。コーティング剤として、好ましくは脂肪酸、脂肪酸石鹸および脂肪酸エステル、例えばラウリン酸、パルミチン酸またはステアリン酸、そのような酸のナトリウムまたはカリウム塩またはそれらのアルキルエステルが使用される。しかしながら、加えて、他の界面活性物質、例えば長鎖アルコールの硫酸エステルまたはアルキルベンゼンスルホン酸またはそれらのナトリウムまたはカリウム塩またはシランまたはチタン酸塩に基づくカップリング試薬も適している。チョークの表面処理は、しばしば、組成物の加工性および接着強度および耐候性の改善に関連している。好ましいのは、組成物の総重量に基づいて、0.1~20重量%、好ましくは1~5重量%の量である。
【0065】
所望の特性プロファイルに応じて、沈降または粉砕したチョークまたはそれらの混合物を使用し得る。粉砕されたチョークは、例えば、天然石灰、石灰石または大理石から、乾式法または湿式法のいずれかを使用して、機械的粉砕により製造し得る。粉砕方法に応じて、平均粒径の異なる画分を得られ得る。有利な比表面積値(BET)は、1.5m/g~50m/gの間である。
【0066】
充填剤のさらなる適切な例は、例えば、Omya社のOmyacarbチョークグレード、またはアンダルサイト、シリマナイト、カイアナイト、ムライト、パイロフィライト、イモゴライト、またはアロフェンで作られた充填剤粒子である。アルミン酸ナトリウムまたはケイ酸カルシウムに基づく化合物も適している。排煙脱硫装置に由来せず、無水石膏、半水和物、または二水和物の形の珪質土、硫酸カルシウム(石膏)などのミネラルも適している。石英粉、シリカゲル、硫酸バリウム、二酸化チタン、ゼオライト、白雲母、長石カリ、黒雲母、ソロ-、シクロ-、イノ-、フィロ-、およびテクトシリケートのグループ、石膏などの難溶性硫酸塩のグループ、無水石膏、または硫酸バリウム、ならびに方解石やチョーク(CaCO)などのカルシウムミネラル。前述の無機材料は、個別に使用し得る。しかしながら、前述の化合物の2つ以上の混合物を使用することも同様に可能である。
【0067】
補助物質
本発明による組成物は、1つ以上の補助物質をさらに含み得る。以下に、適切な補助物質を開示する。
【0068】
本発明による組成物は、追加の成分として、一般式(V):
【化4】
の少なくとも1つの化合物を含み得る。式中、R’は同じまたは異なり、互いに独立して、水素原子および1~12個の炭素原子を有する炭化水素基からなる群から選択され、Arは、アリール基から選択される。好ましい実施形態では、アリール基はフェニル基であり、および/または一般式(V)のR’はメチル基またはエチル基から選択され、より好ましくはメチル基である。最も好ましいのは、ジフェニルテトラメトキシジシロキサンである。上記の一般式(V)の少なくとも1つの化合物を使用する場合、本発明による組成物は、改善された引張強度および伸びを有する。
【0069】
本発明による組成物中の一般式(V)の化合物の割合は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~60重量%、より好ましくは2~50重量%である。好ましい実施形態では、本発明による組成物は、一般式(V)の少なくとも1つの化合物を、組成物の総重量に基づいて、20~60重量%、より好ましくは20~50重量%、最も好ましくは30~50重量%の量で含む。別の好ましい実施形態では、本発明による組成物は、一般式(V)の少なくとも1つの化合物を、組成物の総重量に基づいて、1~50重量%、より好ましくは2~40重量%、最も好ましくは4~30%の量で含む。
【0070】
本発明による組成物は、一般式(VI):
【化5】
の少なくとも1つのシリコーンオリゴマーをさらに含んでよい。
式中、R’は同じかまたは異なり、互いに独立して、水素原子および1~12個の炭素原子を有する炭化水素基、好ましくはメチル基またはエチル基、より好ましくはメチル基からなる群から選択され、Arは、アリール基、好ましくはフェニル基から選択され、nは、2~10、好ましくは2~4、より好ましくは2~3、最も好ましくは3から選択される整数である。
【0071】
本発明による組成物の粘度を低下させるために、溶媒を使用してもよい。溶媒として適切なのは、脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、エステルアルコール、ケトアルコール、ケトエーテル、ケトエステルおよびエーテルエステルである。しかしながら、貯蔵安定性が増加するので、好ましくは、アルコールが使用される。C~C10アルコール、特にメタノール、エタノール、i-プロパノール、イソアミルアルコールおよびヘキサノールが特に好ましい。
【0072】
本発明による組成物は、接着促進剤をさらに含み得る。接着促進剤は、表面の接着層の接着特性を改善する物質であると理解される。当業者に知られている従来の接着促進剤(粘着付与剤)を個別に、またはいくつかの化合物の組み合わせとして使用することが可能である。適切な例は、樹脂、テルペンオリゴマー、クマロン/インデン樹脂、脂肪族、石油化学樹脂および変性フェノール樹脂である。本発明の範囲内で適切なものは、例えば、テルペン、主にα-またはβ-ピネン、ジペンテンまたはリモネンの重合によって得られるような炭化水素樹脂である。これらのモノマーの重合は一般に、フリーデル-クラフツ触媒による開始でカチオン的に行われる。テルペン樹脂はまた、テルペンと他のモノマー、例えばスチレン、α-メチルスチレン、イソプレンなどとのコポリマーを含む。上記の樹脂は、例えば、感圧接着剤およびコーティング材料の接着促進剤として使用される。テルペンまたはロジンへのフェノールの酸触媒添加により製造されるテルペン-フェノール樹脂も適している。テルペンフェノール樹脂は、ほとんどの有機溶媒および油に溶解し、他の樹脂、ワックス、ゴムと混和する。同様に、本発明の範囲内で、ロジンおよびその誘導体、例えばそれらのエステルまたはアルコールは、上記の意味で接着促進剤として適している。シラン接着促進剤、特にアミノシランが特に適している。
【0073】
本発明による組成物の特別な実施形態において、組成物は、接着促進剤として、一般式(VII):
’R’N-R’-SiXYZ (VII)
のシランを包含する。ここで、R’およびR’は、互いに独立して、水素またはC~Cアルキル基であり、R’は、1~12個の炭素原子を有する、必要に応じてヘテロ原子を含む、2価の炭化水素基であり、X、Y、Zは、互いに独立して、ヒドロキシル基またはC~Cアルキル、C~CアルコキシまたはC~Cアシルオキシ基から選択され、置換基X、Y、Zの少なくとも1つはC~CアルコキシまたはC~Cアシルオキシ基である。この種類の化合物は、本来、本発明による組成物の結合ポリマー成分に対して高い親和性を示すだけでなく、広い範囲の極性および非極性表面に対しても高い親和性を示し、したがって、接着剤組成物と接着される特定の基材との間の特に安定した結合の形成に寄与する。連結基R’は、例えば、直鎖状、分枝状または環状、置換または非置換のアルキレン基であり得る。窒素(N)または酸素(O)がヘテロ原子として、それらに含まれていてもよい。X、Yおよび/またはZがアシルオキシ基である場合、これは、例えば、アセトキシ基-OCO-CHであり得る。
【0074】
1つ以上の接着促進剤は、本発明による組成物中に、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.2~5重量%、特に0.3~3重量%の量で含まれる。
【0075】
本発明による組成物は、UV安定剤をさらに含み得る。好ましくは、本発明による組成物中のUV安定剤の割合は、最大約2重量%、特に最大1重量%である。いわゆるヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、UV安定剤として特に適している。例えば、シリル基を有し、架橋または硬化中に最終製品に組み込まれるUV安定剤を使用し得る。さらに、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ベンゾエート、シアノアクリレート、アクリレート、立体障害フェノール、リン、および/または硫黄を添加してもよい。本発明による組成物は、好ましくは、少なくとも1つのビス(ピペリジル)ジカルボン酸ジエステル、例えばビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートを含む。
【0076】
貯蔵寿命をさらに長くするために、本発明による組成物を水分浸透に対してさらに安定化することがしばしば有用である。このような貯蔵寿命の改善は、例えば、乾燥剤の使用により達成し得る。乾燥剤として適切なのは、水と反応して、組成物中に存在する反応性基に対して不活性でありながら、分子量の変化が可能な限り小さい基を形成し得るすべての化合物である。さらに、組成物中に浸透した水分に対する乾燥剤の反応性は、組成物中に存在する本発明によるシリル基含有ポリマーの末端基の反応性よりも高くなければならない。例えば、イソシアネートは乾燥剤として適している。
【0077】
有利には、シラン、例えば、3-ビニルプロピルトリエトキシシランなどのビニルシラン、メチル-O,O’,O’’-ブタン-2-オン トリオキシモシラン、またはO,O’,O’’,O’’’-ブタン-2-オン テトラオキシモシラン(CAS番号:022984-54-9および034206-40-1)などのオキシムシラン、またはビス(N-メチルベンズアミド)メチルエトキシシラン(CAS番号:16230-35-6)などのベンズアミドシラン、またはカルバマトメチルトリメトキシシランなどのカルバマトシランも乾燥剤として使用し得る。しかしながら、メチル-、エチル-またはビニルトリメトキシシラン、テトラメチル-またはテトラエチルエトキシシランの使用も可能である。ここで特に好ましいのは、効率およびコストの観点から、ビニルトリメトキシシランおよびテトラエトキシシランである。また、乾燥剤として好適なのは、分子量(Mn)が約5000g/モル未満であり、浸透性水分との反応性が本発明に従ったシリル基含有ポリマーの反応性基と少なくとも同じくらい、好ましくはそれ以上の反応性を有する末端基を有することを条件として、上記の反応性希釈剤である。最後に、アルキルオルトホルメートまたはオルトアセテートもまた、乾燥剤として使用することができ、例えばメチルまたはエチルオルトホルメートまたはメチルまたはエチルオルトアセテートが挙げられる。一般に、本発明に従う組成物は、好ましくは、組成物の全重量に基づいて、0.01~10重量%の乾燥剤を含む。
【0078】
「補助物質」という用語は、硬化触媒、接着促進剤、水スカベンジャー、UV安定剤、老化防止剤、レオロジー助剤、顔料または顔料ペースト、殺菌剤、難燃剤、溶剤など、少量の成分をカバーする。
【0079】
本発明による構造用接着剤に使用される増粘剤は、好ましくは、高分子量の、通常、例えば水および/または有機溶媒などの液体を吸収し、それにより膨潤または分子間格子構造を形成する有機物質である。液体を吸収し、それにより膨潤または分子間格子構造を形成する、すなわち、増粘剤(thickening agent)または増粘剤(thickener)として作用する充填剤は、本発明の文脈において増粘剤と見なされる。
【0080】
言及される増粘剤は、特に、有機天然化合物、例えば、寒天、カラギーナン、トラガカント、アラビアゴム、アルギン酸塩、ペクチン、ポリオース、グアール粉、ローカストビーン粉、デンプン、デキストリン、ゼラチンおよびカゼインなど;変性有機天然物質、例えば、カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど、ならびに種子粉エーテル、硬化ヒマシ油、ステアリン酸など;完全に合成された有機化合物、例えばポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ビニルポリマー、ポリカルボン酸、ポリエーテル、ポリイミン、ポリアミドなど;および無機化合物、例えば、ポリケイ酸、ケイ酸などである。
【0081】
有機増粘剤の例は、とりわけ、例えば、油画分、特に鉱油画分に乳化された、アクリル酸および/またはアクリルアミドに基づくコポリマー(の水溶液)でもある。w/o乳化剤の具体例は、BASF社のCollacral HP、およびScott-Bader社のTexipolグレードである。さらなる商業的に入手可能な増粘剤は、例えば、Disparlon(登録商標)グレード、例えば、Disparlon(登録商標)6500である。他の有機増粘剤は、例えば、コグニスからの水溶性ポリウレタン増粘剤Nopco DSX 3290、会合性増粘剤、例えば、Indulor Chemie社のIndunal T 112、これは、アクリレートおよびメタクリレート、およびカルボキシル基含有コモノマーのターポリマーの水溶液(これはアニオン性会合増粘剤である)、アルカリ膨潤性増粘剤、例えば、Rohm&Haas社からのアクリレートポリマー分散体Acrysol TT 615(これは、約30重量%の固形分含有量を有するアルカリ膨潤性アニオン性分散体である)などのアルカリ膨潤性増粘剤、およびアクリル酸およびアクリルアミドをベースとするポリマー分散体である。
【0082】
アミドワックスのような非反応性増粘剤、例えばCray ValleyのCrayvallac SLXは、有機増粘剤として特に適している。
【0083】
無機増粘剤の例は、好ましくは、親水性または疎水性のいずれかの形態で高度に分散した、特に熱分解ケイ酸である。好ましい親水性ケイ酸は水湿潤性であり、火炎加水分解で生じる。それから、例えばオルガノシランとの反応により、疎水性ケイ酸が得られる。表面積は、DIN ISO 9277:2014-01に準拠したBET法で測定して、125~400m/gの範囲が好ましい。高度に分散したケイ酸は、粉末としても水性分散液としても使用し得る。例としては、Wacker社のHDKおよびDegussa-Huls社のAerosilがある。
【0084】
増粘剤の好ましい濃度は、組成物の総重量に基づいて、5~50重量%、特に好ましくは5~40、非常に特に好ましくは8~40重量%または10~35重量%である。
【0085】
組成物の流動限界は、少なくとも1500Paの値に少なくとも調整されることが好ましい。しかしながら、上記のように、この値は、好ましくはより高く、例えば、少なくとも1800Pa、特に好ましくは少なくとも2000Pa、2500Pa、3000Pa、4000Pa、6000Pa、8000Pa、または10,000Paを超える、たとえば、12,000Paであり得る。
【0086】
好ましくは、組成物は、その粘度(consistency)が寸法的に安定し、構造用接着剤化合物が混練可能になるまで、増粘剤で増粘される。増粘剤および充填剤は通常構造用接着剤に含まれるバインダーよりも安価であるため、増粘剤および/または充填剤の追加は、経済的な理由から推奨される。上限は、接着結合される基板の濡れ性の結果としてのみ達成される。増粘剤および/または充填剤の濃度が高すぎると、結合される基材の濡れ性が低下し、接着結合の結果が不十分になる。上限は、数回の実験で各基質について簡単に確認できる。
【0087】
さらなる添加剤として、本発明による組成物は、例えば、ジブチルスズジラウレート(DBTL)などの硬化触媒、染料、および顔料を含み得る。液体を吸収し、それにより膨潤または分子間格子構造を形成する、すなわち増粘剤または増粘剤で作用する顔料は、本発明の文脈において増粘剤と見なされる。
【0088】
本発明による組成物の製造は、適切な分散装置、例えば高速ミキサー中での成分の緊密な混合による既知の方法により行われる。
【0089】
本明細書に開示されるすべての組成物は、本明細書に記載されるように、例えば、本明細書に開示される方法において使用することができる。
【実施例
【0090】
試薬および溶媒は、特に明記しない限り、商業的供給源から入手し、受け取ったまま使用した。
29Si NMRスペクトルは、Bruker AV400で記録した。29Si-NMRスペクトルに関してはテトラメチルシラン(TMS)を参照した。化学シフトはppm単位である。
HR-MS測定は、Agilent 6210飛行時間型LC/MS(ESI)で記録され、リストされているピークは、最も豊富なピークに対応しており、期待される同位体パターンである。
C/H/N/Sの定量には、Leco社製のマイクロアナライザーTruSpec CHNSを使用した。
引張特性(破断までの伸び)は、DIN EN ISO 8339:2005-09に従って測定した。材料は、硬化後7日後にZwick社製の機械、例えばZwick Z010で測定した。
ショアA硬度は、DIN EN ISO 868:2003-10に準拠して測定した。プローブはコーティングナイフ(幅2cm/高さ1cm)で塗布した。硬化後1日目と7日目にデュロメーターで硬度を測定し、ノギスで無心焼入(through hardening)を測定した。
指触乾燥時間(Skin over time、SOT):スキンの構築(指触乾燥時間)を以下のように測定した。平らな表面(シート)上に組成物のフィルムをスパチュラで塗布し(長さ5cm/幅3cm/高さ2mm)、2~3分ごとにスキンが形成されているかどうかを試験した。これは、指、またはフィルムに注意深く配置されたポリエチレンフィルムを介して、5秒間20gの重さを加えて行うことができる。指またはポリエチレンフィルムにフィルムが残っていない場合は、スキン形成時間に達している。手順全体は、23℃、湿度50%で行われる。使用される単位は分である。
【0091】
〔実施例1(化合物A)〕
メチル((3-(トリメトキシシリル)プロピル)チオ)オクタデカノエート-オレイン酸メチルエステル付加物
【化6】
【0092】
アルゴン下、オーブン乾燥した250mLのシュレンク丸底フラスコに、オレイン酸メチル(MO、100g、337mmol)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTSM、125.4mL、132.5g、675mmol、MOに対して2当量)、および(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル))(AIBN、1.46g、0.9mmol、MOに対して2.4mol%)を加え、85℃に予熱したオイルバス中で18時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で過剰のMPTSMを除去した。生成物は、さらなる精製をすることなく、黄色がかった油として収率84%(155g、314.5mmol)で得られた。
29Si NMR (79.5MHz,CDCl):δ=-42.29ppm.
HRMS(ESI+):C25H52O5SSiについて計算されたm/z:492.3305;found:515.3195[M+Na]+.
C25H52O5SSiについて計算されたEA:C,60.93;H,10.64;S,6.50found:C,61.01;H,10.36;S,6.37.
【0093】
〔実施例2(化合物B)〕
トリオレイン酸グリセリル-MPTSM付加物
【化7】
【0094】
アルゴン下、オーブン乾燥した50mLのシュレンクフラスコに、トリオレイン酸グリセリル(GTO、14mL、12.74g、14.39mmol)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTSM、16.0mL、16.9g、86.34mmol、GTOに対して6当量)、および(2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル))(AIBN、72mg、0.43mmol、MOに対して3mol%)を加え、85℃に予熱したオイルバス中で25時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で過剰のMPTSMを除去した。生成物は、さらなる精製をすることなく、黄色がかった油として94%の収率(20g、13.6mmol)で得られた。
29Si NMR(79.5MHz,CDCl):δ=-42.24ppm.
HRMS(ESI+):C75H152O15S3Si3について計算されたm/z:1472.9601;found:1495.9484[M+Na]+.
C75H152O15S3Si3について計算されたEA:C,61.10;H,10.39;S,6.52;found:C,61.01;H,10.68;S,6.45.
【0095】
〔実施例3(化合物C)〕
亜麻仁油-MPTSMアダクト
【化8】
【0096】
アルゴン下で、オーブンで乾燥させた500mLシュレンクフラスコに、亜麻仁油(LSO、35mL、32.6g)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTSM、350mL、370g、1.88mol)、および(2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル))(AIBN、6.2g、37.8mmol、LSOに対して20重量%)を加え、85℃に予熱したオイルバス中で撹拌した。反応の進行をH NMRでモニターした。16時間後、追加のAIBN(3.1g)を反応混合物に加えた。85℃で41時間後、反応混合物を室温まで冷却し、減圧下で過剰のMPTSMを除去した。黄色の油106gが生成物として得られた。
C93H194O24S6Si6について計算されたEA:C,54.29;H,9.50;O,18.66;S,9.35;found:C,54.07;H,10.45;S,9.86.
【0097】
〔調製例1〕
ポリマー1(ガンマ-シラン末端ポリマー):282g(15mmol)のポリプロピレングリコール18000(ヒドロキシル価=6.0)を、500mlの3つ口フラスコ中で80~90℃の真空下乾燥させた。窒素雰囲気下、80℃で、0.1gのラウリン酸ジブチルスズを加え、次いで、7.2g(32mmol)の3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(%NCO=18.4)を加えた。80℃で1時間撹拌した後、得られたポリマーを冷却した。3gの光安定剤(Tinuvin 770 DF)および6gのGeniosil XL 10を反応器に加え、80℃で10~30分間撹拌および均質化した後、得られたポリマーを、組成物にさらに加工する前に、窒素雰囲気下で防湿ガラス容器に保存した。
【0098】
〔実施例4(接着剤)〕
配合物(組成物)は、Hauschild EngineeringのSpeedMixer DAC 400 FVZなどのスピードミキサーで調製した。
リマー1(22.5g)、およびそれぞれの可塑剤(比較DIUP(フタル酸ジイソデシル)、19.8g)(A);または実施例1~3の反応性可塑剤(化合物A-C)の1つ(19.8g)を、600mlのスピードミキサー缶内でスパチュラにより均質化した。その後、炭酸カルシウム(Eskal 30、92.5g)、レオロジー調整剤(Rilanit Micro Spezial(硬化ヒマシ油;(12R)-12-ヒドロキシオクタデカン酸、9.8g)、および安定剤(Tinuvin 328、0.3g)を添加し、組成物を2300rpmで60秒間混合した。缶が約37℃(体温)に到達し得るかどうかをテストし、到達しない場合は、混合工程を繰り返した。その後、組成物を室温に15分間冷却した。その後、ビニルトリメトキシシラン(Geniosil XL10、2.6g)およびアミノシラン(Geniosil GF96、1.4g)を組成物に加え、それぞれ2300rpmで60秒間混合した。最後に、触媒(DOTL;オクチルスズラウレート触媒、1.1g)を前記組成物に加え、前記組成物を150mlのPEカートリッジに充填した。
【0099】
実施例1~3の化合物はすべて、前記組成物の他の化合物と相溶性があった。前記組成物を混合し、事前の保管期間なしに室温で7日間硬化させた。硬化後、特定の特性およびさまざまな基材への接着性を評価した(表1)。
【0100】
さらなる例では、少なくとも1年の老化をシミュレートするために、同一の組成物を40℃で4週間保管した。その後、サンプルを室温で7日間硬化させた。硬化後、特定の特性およびさまざまな基材への接着性を評価した(表2)。
【0101】
目視観察の結果、保管されたものと保管されなかったものに違いはなかった。しかし、驚くべきことに、40℃で4週間保管した後の硬化物の機械的特性(引張強度および伸び)は、硬化前に保管していないものと比較して、異なる機械的特性を示すことがわかった。新規反応性可塑剤は、化合物Aを使用する場合には弾性が高くなり、化合物BおよびCを使用する場合には引張強度が高くなるいずれかの結果となる。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
本明細書の好ましい態様は、少なくとも下記を包含する。
[1]式(I):
【化3】
[式中、m=0~25;
n=0~25;
q=0~50;
p=0~5;
r=1~3;
各単位pまたはrにおいて、それぞれのm、nおよびqは独立して選択され、
Xは、独立して、Hまたは-SR から選択され;
=-(CH 1-10 Si(O(CH 0-8 CH 、好ましくは-(CH 1-5 Si(O(CH 0-3 CH 、より好ましくは-(CH Si(OCH または-(CH Si(O(CH CH である、ただし、2個以上の-SR が存在する場合、それらは隣接する炭素原子に結合しておらず、かつ、前記-SR 基は二重結合によって隣接する炭素原子に結合した炭素原子に結合しておらず、好ましくは二重結合に対するα位の炭素原子に結合していない;および
=置換または非置換の脂肪族C 1-12 炭化水素基、好ましくは飽和非置換脂肪族C 1-12 炭化水素基;より好ましくは飽和非置換脂肪族C 1-6 炭化水素基、最も好ましくは飽和非置換脂肪族C 1-3 炭化水素基である]
の化合物。
[2]p=1~3、好ましくは1または2、より好ましくは1;
m=1~25、好ましくは2~15、より好ましくは3~10;
n=1~25、好ましくは2~15、より好ましくは3~10;および
q=0
である、[1]に記載の化合物。
[3]p=0;
q=2~50、好ましくは5~40、より好ましくは10~20
である、[1]に記載の化合物。
[4]r=1である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]r=3である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[6]1~10個の-SR 、好ましくは1~5個の-SR 、より好ましくは1または2個の-SR 、最も好ましくは1個の-SR が存在する、[1]~[5]のいずれかに記載の化合物。
[7]式(I)の化合物は、菜種油、大豆油、ヒマシ油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、トール油、ジャトロファ油、キャンドルナッツ油、グレープシード油、ヒマワリ油、中オレイン酸ヒマワリ油、高オレイン酸ヒマワリ油、キャノーラ油、コーン油、カシューナッツ油、または藻類油またはトリオレイン酸塩のような化学的/生物学的に作られたトリグリセリドからなる群から選択される油に由来する、[1]に記載の化合物。
[8]式(II):
【化4】
[式中、s=0~101;
t=0~101;
u=1~20;
v=1~3;および
は、[1]と同様に定義される]
の化合物を、R が[1]と同様に定義される化合物HSR と、触媒の存在下で反応させる工程
を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の式(I)の化合物の製造方法。
[9]前記反応を、30~100℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは70~85℃の温度で行う、[8]に記載の方法。
[10]反応性可塑剤としての、好ましくは接着剤組成物中の反応性可塑剤としての、[1]~[7]のいずれかに記載の化合物の使用。
[11]A)少なくとも1つのシリル末端ポリマー;
B)少なくとも1つの[1]~[7]のいずれかに記載の化合物;
C)場合により、少なくとも1つの充填剤;および
D)場合により、1つ以上の補助物質
を含む、接着剤組成物またはシール剤組成物。
[12]前記少なくとも1つの化合物Bの量は、前記組成物の総重量に基づいて0.1~30重量%である、[11]に記載の接着剤組成物またはシール剤組成物。
[13]10~80重量%、好ましくは10~50重量%、より好ましくは15~35重量%のA;
0.1~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは1~10重量%のB;
0~70重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは30~50重量%のC;および
0~60重量%、好ましくは1~30重量%、より好ましくは1~10重量%のD
を含む、またはそれらからなる、[11]または[12]に記載の接着剤組成物またはシール剤組成物。