(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】非水系電解液及び非水系電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0525 20100101AFI20241031BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241031BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/0525
H01M10/0567
H01M4/525
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2021012987
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2020012440
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 藍子
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-014379(JP,A)
【文献】特開2011-048987(JP,A)
【文献】特開2015-144104(JP,A)
【文献】特開2002-008719(JP,A)
【文献】特開2011-028860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0330610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0525-10/0569
H01M 4/525
H01M 4/587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、を備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、
下記一般式(1)で示されるイソシアネート化合物を含有することを特徴とする非水系電解液。
【化1】
(式(1)中、m、nはm+n=6を満たす整数であり、nが2である。Xは単結合、又は互いに同一でも異なっていてもよいヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)中、Xがメチレン基又はジメチルメチレン基である、請求項
1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、を備える非水系電解液二次電池に用いられる
非水系電解液であって、
下記一般式(2)で示されるイソシアネート化合物を含有することを特徴とする非水系電解液。
【化2】
(式(2)中、p、q、r、sはp+q=5、r+s=5を満たす整数であり、s=p=1である。Rは互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の有機基を表す。X’は単結合、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。)
【請求項4】
前記非水系電解液が、P-F結合を有する化合物、及びSO
2構造を有する化合物の少なくとも1種を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
金属イオンを吸蔵および放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、
を備える非水系電解液二次電池であって、
該正極が、遷移金属酸化物を含有し、かつ遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiであり、
該非水系電解液が、請求項
1~4のいずれか1項に記載の非水系電解液である、非水系電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液、及び非水系電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の小型機器用の電源や、電気自動車用等の駆動用車載電源等の広範な用途において、リチウム二次電池等の非水系電解液二次電池が実用化されている。
【0003】
非水系電解液電池の電池特性を改善する手段として、正極や負極の活物質、非水系電解液の添加剤分野において数多くの検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電池寿命に優れた非水電解液およびそれを使用した二次電池の提供を目的とし、イソシアナト基を含有する化合物を含む非水溶媒と電解質とからなる非水電解液、およびこの電解液を使用した二次電池が開示されている。実施例には、正極としてLiCoO2電極、負極には黒鉛、電解液にはエチレンカーボネート(EC)とメ
チルエチルカーボネート(MEC)を、EC:MEC=4:6(重量比)の割合で混合し、イソシアナト基を含有する化合物として1,3-ジイソシアナト-4-メチルベンゼン(実施例1~3)、ジ(イソシアナトノルボルニル)ウレチジン-2,4-ジオン(実施例4~6)またはジ(イソシアナトノルボルニル)1,3,5-オキサジアジン-2,4,6-トリオン(実施例7~9)を用いた非水系電解液二次電池の高温保存後の負荷特性について開示されている。
特許文献2には、ガス発生が少なく、電池特性に優れた非水電解液電池を提供することを目的とし、正極活物質を備える正極と、リチウム吸蔵・放出電位が1.0V(vs L
i/Li+)より貴な負極活物質を備える負極と、非水電解液を有する非水電解液電池において、前記非水電解液にイソシアナト基を有する有機化合物を添加する非水電解液電池が開示されている。実施例では、正極活物質としてLiMn2O4を含有する正極を用いた非水系電解液二次電池について、1,6-ジイソシアナトヘキサンを含む非水電解液を用い、ガス発生量、ハイレート特性及び残存容量率の検討がなされている。
特許文献3には、溶媒の分解及び電池の変形を抑制し、高温サイクル時の電池特性が改善された電池の提供を目的とし、正極及び負極と、電解質と、セパレータを備えた非水電解質電池であって、正極に水分が1000ppm~50ppm含有され、電解質が、特定のイソシアナート化合物と、特定の芳香族化合物を、含有することが開示されている。実施例では、正極活物質としてコバルト酸リチウムを含有する正極を用いた非水電解質電池について、正極活物質層中の水分濃度やイソシアネート化合物の種類や含有量を変化させ、高温保存容量維持率の検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-8719号公報
【文献】特開2009-54319号公報
【文献】特開2011-28860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電気自動車の車載用電源や、スマートフォン等の携帯電話用電源等用に、リチウム電池の高容量化がより一層求められている。高容量な正極活物質として、Ni含有量の高い遷移金属酸化物正極が注目されているが、本発明者らは、Ni含有量の高い正極では
充電時に電解液との表面反応が起こり、入力特性が低下するという問題があることを見出した。
【0007】
上記に鑑み、本発明は、遷移金属酸化物を含む正極を用い、該正極が少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである正極と、炭素系材料を含む負極を用いる非水系電解液二次電池において、低入力抵抗を実現する非水系電解液及び係る非水系電解液を用いた、低入力抵抗を有する、Ni含有量の高い正極を備える非水系電解液二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池において、一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示されるイソシアネート化合物から選択される化合物の少なくとも1種を含有する非水系電解液を用いることにより、非水系電解液二次電池の低入力抵抗を実現できることに想到し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下の態様等を提供する。
<1> 金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極と、
金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、を備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、
下記一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物から選択されるイソシアネート化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする非水系電解液。
【化1】
(式(1)中、m、nはm+n=6を満たす整数であり、n≧2である。Xは単結合、又は互いに同一でも異なっていてもよいヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基を表す。)
【化2】
(式(2)中、p、q、r、sはp+q=5、r+s=5を満たす整数であり、p≧1、s≧1である。Rは互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の有機基を表す。X’は単結合、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。)
<2> 前記非水系電解液が前記式(1)で示される化合物を含有し、前記式(1)中、nが2である、<1>に記載の非水系電解液。
<3> 前記非水系電解液が前記式(1)で示される化合物を含有し、前記式(1)中、
Xがメチレン基又はジメチルメチレン基である、<1>又は<2>に記載の非水系電解液。
<4>前記非水系電解液が前記式(2)で示される化合物を含有し、前記式(2)中、s=p=1である、<1>に記載の非水系電解液。
<5>前記非水系電解液が、P-F結合を有する化合物、及びSO
2構造を有する化合物の少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の非水系電解液。
<6>金属イオンを吸蔵および放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、
を備える非水系電解液二次電池であって、
該正極が、遷移金属酸化物を含有し、かつ遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiであり、
該非水系電解液が、<1>~<5>のいずれかに記載の非水系電解液である、非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Ni含有量の高い正極を備える非水系電解液二次電池において、低入力抵抗を実現できる非水系電解液が提供される。また、係る非水系電解液を用いた、低入力抵抗を有するNi含有量の高い正極を備える非水系電解液二次電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0012】
<1.非水系電解液>
本実施形態に係る非水系電解液は、金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な炭素系材料を含有する負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、を備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、下記一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物から選択されるイソシアネート化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【化3】
(式(1)中、m、nはm+n=6を満たす整数であり、n≧2である。Xは単結合、又は互いに同一でも異なっていてもよいヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基を表す。)
【化4】
(式(2)中、p、q、r、sはp+q=5、r+s=5を満たす整数であり、p≧1、s≧1である。Rは互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、又はヘ
テロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基を表す。X’は単結合、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。)
【0013】
一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物を含有する非水系電解液を用いることで、金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極を備える非水系電解液二次電池を低入力抵抗とするメカニズムは明らかではないが、以下の様に推測される。
正極材中、正極活物質に用いられる代表的な遷移金属であるMn、Co、Feは充電時における価数変化が+1である。これに対し、含Ni正極では充電時にNiの価数が+2から+4へと変化するが、含有するNiの割合が高まるにつれ、不安定な+3価が増える。Niの3価は不安定であるために電解液との表面反応が起こり、表面のLi挿入点が失活することで入力特性が低下すると推測される。本発明者らは、Ni含有量の多い正極において、多く存在する不安定なNiの表面活性を下げることに想到した。本実施形態においては、電解液に芳香環を含む化合物を含むことで、芳香環π電子と表面に存在する不安定なNiが相互作用し、活性点に優先的に吸着、さらには安定化させると予想される。さらに式(1)又は式(2)で示される化合物は、二つ以上のイソシアネート(NCO)基を有することで、電解液中に含まれる求核剤を起点としてNCO基同士が重合し、添加剤による活性点被覆効果がより強靭なものとなり、本発明の効果を奏すると推測される。このとき、電解液中に含まれる求核剤は、電解液成分が還元されて生成するものであり、本発明においては、電解液成分が還元されうる電位を有する負極材料(炭素系材料に代表される)を用いる。
さらに、NCO基が芳香環に直結せずに炭化水素基を介するイソシアネート化合物を用いることで、該化合物自体の分解を抑制しつつ、活性点への保護効果が発揮されやすくなると推測される。
【0014】
<1-1.イソシアネート化合物>
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、下記一般式(1)で示される化合物及び下記一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物を含有することを特徴とする。
【0015】
<1-1-1.一般式(1)で示される化合物>
【化5】
(式(1)中、m、nはm+n=6を満たす整数であり、n≧2である。Xは単結合、又は互いに同一でも異なっていてもよいヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。Yは水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基を表す。)
【0016】
一般式(1)に係るXは単結合、又は互いに同一でも異なっていてもよいヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。
ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基としては、例えば、炭素数10以下の、置換基を有していてもよい炭化水素基;カルボニル基;又は2以上の、置換基を有していてもよい炭化水素基と、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル基(-CO-)及びアミノ基(-NH-)から選択された少なくとも1種の基からなる基;が挙げられる。
【0017】
このような基としては、置換基を有していてもよい炭化水素基と酸素原子(-O-)とからなるエーテル基;置換基を有していてもよい炭化水素基と酸素原子(-O-)とカルボニル基(-CO-)とからなるエステル基;置換基を有していてもよい炭化水素基と硫黄原子(-S-)とからなるチオエーテル基;置換基を有していてもよい炭化水素基とアミノ基(-NH-)とカルボニル基(-CO-)とからなるアミド基が挙げられる。
【0018】
炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等の炭素数1~10のアルキレン基;ビニレン等の炭素数2~10のアルケニレン基;エチニレン基等の炭素数2~10のアルキニレン基;シクロペンチレン、シクロヘキシレン基等のシクロアルケニレン基;フェニレン基等の炭素数6~10のアリーレン基;が挙げられる。
なかでも、電池の入力抵抗の観点から、置換基を有していてもよい炭素数1~10の2価の炭化水素基が好ましい。なお、炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数は、この炭素数に含まない。
より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1~6の2価の直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の2価の直鎖又は分岐の脂肪炭化水素基である。このような炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましく挙げられる。
【0019】
ここで、ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、リン原子、ケイ素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられ、中でも、電池の入力抵抗を低くする観点、電気化学的な副反応が少ない観点から、フッ素原子が好ましい。
ヘテロ原子は、炭化水素基の炭素原子と置換されていてもよいし、炭化水素基の水素原子と置換されていてもよい。
【0020】
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Ra)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)、スルホニル基(-SO2-Ra)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Ra)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Ra)、アルコキシスルホニルオキシ基(-O-(SO2)-O-Ra)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Ra)、アルコキシ基(-O-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Raは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。Raがアルキレン基の場合は置換している炭化水素基の一部と結合し環を形成していてもよい。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、更に好ましくは、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、特に好ましくは、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基である。
【0021】
一般式(1)に係るXは、正極表面への被覆密度を高める観点から、芳香環とNCO基との距離がより短い、単結合、メチレン基及びジメチルメチレン基がより好ましく、一般式(1)で示される化合物自体の分解を抑制しつつ、活性点への保護効果の観点から、メチレン基及びジメチルメチレン基が特に好ましい。
一般式(1)に係るXは、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが、化合物の合成が容易である点で好ましい。
非水系電解液二次電池の入力抵抗を十分低くする観点から、式(1)中、nが2であるジイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0022】
一般式(1)に係るYは水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、電気化学的な副反応が少ない観点から、フッ素原子である。
ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の1価の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられ、より具体的には、置換基を有していてもよい直鎖又は分岐の脂肪族炭化水素基、並びに置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基が挙げられる。
炭素数1~10の炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1~4の炭化水素基である。
炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基が挙げられる。
【0023】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。上述のアルキル基であると、正極活物質及び/又は負極活物質の表面近傍へ一般式(A)で表される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
【0024】
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-メチル2-ブテニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、特に好ましくは、ビニル基又はアリル基が挙げられる。上述のアルケニル基であると、正極活物質の表面近傍へ一般式(1)で示される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
【0025】
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、さらに好ましくは、2-プロピニル基、3-ブチニル基、特に好ましくは、2-プロピニル基が挙げられる。上述のアルキニル基であると、正極活物質及び/又は負極活物質の表面近傍へ一般式(1)で示される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
【0026】
アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。なかでも、正極活物質の表面近傍へ一般式(1)で示される化合物が局在化する傾向にある観点から、フェニル基が好ましい。
ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、リン原子、ケイ素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられ、中でも、電気化学的な副反応が少ない観点から、フッ素原子が好ましい。
ヘテロ原子は、炭化水素基の炭素原子と置換されていてもよいし、炭化水素基の水素原子と置換されていてもよい。
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Ra)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)、スルホニル基(-SO2-Ra)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Ra)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Ra)、アルコキシスルホニ
ルオキシ基(-O-(SO2)-O-Ra)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Ra)、アルコキシ基(-O-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Raは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。Raがアルキレン基の場合は置換している炭化水素基の一部と結合し環を形成していてもよい。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、更に好ましくは、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、特に好ましくは、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基である。
Yは、非水系電解液二次電池の入力抵抗を十分低くする観点から、好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基であり、特に好ましくは、水素原子、又はメチル基である。
【0027】
式(1)で示される化合物としては、具体的には、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネートが挙げられる。中でも、電池の入力抵抗を低くする観点から、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、トルエンジイソシアネートが好ましい。また、化合物自体の分解を抑制しつつ、活性点への保護効果が発揮されやすくなることから、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼンが好ましい。
【0028】
<1-1-2.一般式(2)で示される化合物>
【化6】
(式(2)中、p、q、r、sはp+q=5、r+s=5を満たす整数であり、p≧1、s≧1である。Rは互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の有機基を表す。X’は単結合、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の2価の有機基を表す。)
【0029】
一般式(2)中、Rは互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の有機基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。好ましくは、電気化学的な副反応が少ない観点でフッ素原子である。
ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の有機基のヘテロ原子としては、ハロゲン原子、リン原子、ケイ素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルコキシ基、アミノ基、アミド基が挙げられる。
なかでも、置換基を有していてもよい炭素数1~10の炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルコキシ基が好ましい。なお、炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数も、この炭素数に含まれる。
炭化水素基は、炭素-炭素不飽和結合を有する炭素数2~10の炭化水素基であってもよい。炭素-炭素不飽和結合を有する炭素数2~10の炭化水素基とは、後述する炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基又は炭素数6~10のアリール
基が挙げられる。
一般式(2)に係るRが複数存在する場合、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが、化合物の合成が容易である点で好ましい。
炭素数1~10の炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~6の炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1~4の炭化水素基である。
炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、式(1)で示される化合物の説明で例示した基と同様の基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
【0030】
アルケニル基の具体例としては、式(1)で示される化合物の説明で例示した基と同様の基が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、特に好ましくは、ビニル基又はアリル基が挙げられる。上述のアルケニル基であると、正極活物質の表面近傍へ一般式(2)で示される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
【0031】
アルキニル基の具体例としては、式(1)で示される化合物の説明で例示した基と同様の基が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、さらに好ましくは、2-プロピニル基、3-ブチニル基、特に好ましくは、2-プロピニル基が挙げられる。上述のアルキニル基であると、正極活物質の表面近傍へ一般式(2)で示される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
【0032】
アリール基の具体例としては、式(1)で示される化合物の説明で例示した基と同様の基が挙げられる。なかでも、正極活物質の表面近傍へ一般式(2)で示される化合物が局在化する傾向にある観点から、フェニル基が好ましい。
炭素数1~10のアルコキシ基として、好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基である。
炭素数1~10のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基及びメトキシエトキシ基等が挙げられる。なかでもメトキシ基及びエトキシ基が一般式(1)で表される化合物の立体障害が少なく活物質表面に好適に濃縮される点で好ましい。
【0033】
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Ra)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Ra)、スルホニル基(-SO2-Ra)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Ra)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Ra)、アルコキシスルホニルオキシ基(-O-(SO2)-O-Ra)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Ra)、アルコキシ基(-O-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Raは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。Raがアルキレン基の場合は置換している炭化水素基の一部と結合し環を形成していてもよい。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、更に好ましくは、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、特に好ましくは、アシルオキシ基(-O(C=O)-Ra)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原
子)、トリフルオロメチル基である。
式(2)で示される化合物としては、具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル) ジメチルメタンが挙げられる。電池の入
力抵抗を低くする観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態に係る非水系電解液全量に対する、一般式(1)で示される化合物及び式(2)で示されるイソシアネート化合物の含有量の合計は、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下であり、さらに好ましくは4.0質量%以下、殊更に好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下、最も好ましくは1.0質量%以下である。
非水系電解液全量に対する一般式(1)又は(2)で表される、イソシアネート化合物の含有量の合計が、上記の範囲であれば、NCO基の重合が好適に進行し、正極上の活性点被覆効果が十分得られ、入力抵抗が小さい非水系電解液二次電池の作製が可能となる。
なお、本発明の電解液に、一般式(1)で示される化合物又は式(2)で示される化合物を含有させる方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。
【0035】
<1-2.電解質>
本実施形態の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその成分として、電解質を含有する。本実施形態の非水系電解液に用いられる電解質について特に制限は無く、公知の電解質を用いることができる。以下、電解質の具体例について詳述する。
【0036】
<1-2-1.リチウム塩>
本実施形態に係る非水系電解液が用いられる非水系電解液二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを1種以上用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0037】
例えば、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7等の無機リチウム塩類;
LiPF6等のフルオロリン酸リチウム塩類;
LiWOF5等のタングステン酸リチウム塩類;
CF3CO2Li等のカルボン酸リチウム塩類;
CH3SO3Li等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO2)3等のリチウムメチド塩類;
リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等のリチウムオキサラート塩類;
その他、LiPF4(CF3)2等の含フッ素有機リチウム塩類;
等が挙げられる。
【0038】
本発明で得られる耐久性向上効果に加え、充放電レート特性、インピーダンス特性の向上効果を更に高める点から、無機リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムオキサラート塩類、の中から選ばれるものが好ましく、充放電特性向上の点から、無機リチウム塩、リチウムイミド塩、リチウムオキサラート塩がより好ましい。
【0039】
非水系電解液中のこれらの電解質の総濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り特
に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、好ましくは0.5mol/L以上であり、より好ましくは0.6mol/L以上であり、更に好ましくは0.7mol/L以上であり、一方、好ましくは3mol/L以下であり、より好ましくは2mol/L以下であり、更に好ましくは1.8mol/L以下である。リチウム塩の含有量が上記範囲内であることによりイオン電導度を適切に高めることができる。
電解質の総濃度が上記範囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となるため、十分な出力特性が得られる傾向にある。
なお、以上に挙げたリチウム塩の含有量を測定する方法としては特に制限はなく、公知の方法を任意に用いることができる。このような方法としては例えば、イオンクロマトグラフィー、核磁気共鳴分光法等が挙げられる。
【0040】
<1-3.非水溶媒>
本実施形態に用いる非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、後述する電解質を溶解する非水溶媒を含有する。ここで用いる非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、好ましくは、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、及びスルホン系化合物から選ばれる少なくとも1つが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
<1-3-1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられる。具体的には、炭素数2~4の飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
【0042】
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、下限は、非水溶媒100体積%中、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また上限は、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の入出力特性を更に向上させたり、サイクル特性や保存特性といった耐久性が更に向上させたりできるために好ましい。
【0043】
<1-3-2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素数3~7のものが好ましい。具体的には、炭素数3~7の鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが特に好ましい。
【0044】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
【0045】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0046】
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上である。また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。また、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の入出力特性や充放電レート特性を良好な範囲としやすくなる。
【0047】
<1-3-3.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3~7のものが挙げられる。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸-n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸-n-プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸-n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上、及びサイクルや保存といった耐久試験時の電池膨れの抑制の観点から好ましい。非水溶媒としての鎖状カルボン酸エステルの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常5体積%以上であり、また、通常50体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。なお、鎖状カルボン酸エステルを非水溶媒100体積%中5体積%未満の量で、添加剤として用いることもできる。
【0048】
<1-3-4.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3~12のものが挙げられる。具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。非水溶媒としての環状カルボン酸エステルの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常5体積%以上であり、また、通常50体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。なお、環状カルボン酸エステルを、非水溶媒100体積%中5体積%未満の量で、添加剤として用いることもできる。
【0049】
<1-3-5.エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、炭素数3~10の鎖状エーテル、及び炭素数3~6の環状
エーテルが好ましい。
【0050】
炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン
、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。これらの中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、リチウムイオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
非水溶媒としての環状エーテルの含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常5体積%以上であり、また、通常50体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。なお、環状エーテルを、非水溶媒100体積%中5体積%未満の量で、添加剤として用いることもできる。
【0052】
<1-3-6.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素数3~6の環状スルホン、及び炭素数2~6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
【0053】
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。これらの中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0054】
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0055】
これらの中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジフルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチルスルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロメチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、
3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0056】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-t-ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0058】
非水溶媒としてのスルホン系化合物の含有量は特に限定されないが、非水溶媒100体積%中、通常10体積%以上であり、また、通常50体積%以下、好ましくは30体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。なお、スルホン系化合物を、非水溶媒100体積%中10体積%未満の量で、添加剤として用いることもできる。
【0059】
<1-4.添加剤>
本実施形態に用いる非水系電解液は、以上に挙げた各種化合物の他に、
ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート又はエチニルエチレンカーボネート等の不飽和環状カーボネート;
モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート等のフッ素化環状カーボネート;
メトキシエチル-メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
メチル-2-プロピニルオギザレート等のスピロ化合物;
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のシクロアルキレン基を有するジイソシアネート等のイソシアネート化合物;
1-メチル-2-ピロリジノン等の含窒素化合物;
シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン等の含フッ素芳香族化合物;
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、テトラビニルシラン等のシラン化合物;
2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2-プロピニル等のエステル化合物;
リチウムエチルメチルオキシカルボニルホスホネート等のリチウム塩;
トリアリルイソシアヌレート等のイソシアン酸エステル;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、ヘキサントリカルボニトリル等のシアノ基を有する化合物;
アクリル酸無水物、2-メチルアクリル酸無水物、3-メチルアクリル酸無水物、安息香酸無水物、2-メチル安息香酸無水物、4-メチル安息香酸無水物、4-tert-ブチル安息香酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、無水コハク酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物化合物;
フルオロスルホン酸リチウム塩(LiFSO3)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(FSO2)2)、メタンスルホン酸メチル、1,3-プロパンスルトン、硫酸ジメチル、エチレンスルファート等のSO2構造を有する化合物;
ジフルオロリン酸リチウム等のP-F結合を有する化合物;等が添加されていてもよい。ただし、ここで挙げたジフルオロリン酸リチウムはリチウム塩に該当するものであるが、非水系電解液に使用される非水溶媒に対する電離度の観点から電解質として扱わず、添加剤と位置付けるものとする。また、過充電防止剤として、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の各種添加剤を本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することができる。これらの化合物は適宜組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本実施形態に用いる非水系電解液において、添加効果が特に高く、効果が相乗的に発揮される、特に好ましい添加剤として、(A)P-F結合を有する化合物、(B)SO2構造を有する化合物が挙げられる。これらは式(1)又は式(2)で示されるイソシアネート化合物の重合過程で取り込まれることで、入力抵抗を抑制しながら正極での副反応をさらに抑制し、初回充放電効率を高めるものと考えられる。
【0061】
<1-4-1.(A)P-F結合を有する化合物>
(A)P-F結合を有する化合物としては、分子内にP-F結合を有する化合物であれば特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを用いることができる。その中でも、P-F結合を有するリン酸塩が好ましい。P-F結合を有するリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13R14R15R16(式中、R13~R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~12の有機基を示す。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。その中でもリチウムが特に好ましい。また、酸化電位が高まることから、分子内に含まれるP-F結合の数は2以上が好ましい。具体的にはジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムが特に好ましい。
P-F結合を有する化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及
び比率で併用してもよい。また、P-F結合を有する化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
P-F結合を有する化合物の含有量がこの範囲内であれば、非水系電解液二次電池の入力抵抗を抑制しながら、初回充放電効率を高めることが可能となる。
【0062】
<1-4-2.(B)SO2構造を有する化合物>
(B)SO2構造を有する化合物としては、分子内にSO2構造を有する化合物であれば特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを用いることができる。その中でも、SO2構造を有するリチウム塩、又はSO2構造を有するエステル化合物が好ましい。
SO2構造を有するリチウム塩としては、
フルオロスルホン酸リチウム塩(LiFSO3);
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(FSO2)2)、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2等のフルオロスルホニルイミドリチウム塩類;
LiC(FSO2)3等のフルオロスルホニルメチドリチウム塩類;
LiBF3(FSO3)、LiB(FSO2)4等のフルオロスルホニルボレートリチウム類;等が挙げられる。
また、SO2構造を有する化合物の中でも、F-S結合を有するLi塩が好ましい。中でも、分子構造が小さく正極近傍に接近しやすい点で、LiFSO3、LiN(FSO2)2が特に好ましい。
SO2構造を有するエステルとしては、
メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル等の鎖状スルホン酸エステル;
1,3-プロパンスルトン、1-プロペン1,3-スルトン等の環状スルホン酸エステル;
硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の鎖状硫酸エステル;
エチレンスルファート、プロピレンスルファート等の環状硫酸エステル;等が挙げられる。
SO2構造を有する化合物は、なかでも、炭素数が2~10であるものが好ましく、さらに、分子構造が小さく正極近傍に接近しやすい点で、炭素数2~4の鎖状スルホン酸エステル、炭素数2~4の鎖状硫酸エステル、加えて構造安定性の観点で、炭素数3~4の環状スルホン酸エステル、炭素数2~3の環状硫酸エステルが特に好ましい。さらに好ましくは、炭素数3~4の環状スルホン酸エステル、炭素数2~3の環状硫酸エステルであり、具体的には、1,3-プロパンスルトン、エチレンスルファートである。
SO2構造を有する化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。またSO2構造を有する化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
SO2構造を有する化合物の含有量がこの範囲内であれば、非水系電解液二次電池の入力抵抗を抑制しながら、初回充放電効率を高めることが可能となる。
ただし、LiN(FSO2)2は主たる塩として用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。また、例えば、スルホン系化合物等のSO2構造を有する化合物を非水溶媒として用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。
【0063】
このように、本実施形態に係る非水系電解液は(A)P-F結合を有する化合物、及び
(B)SO2構造を有する化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、(A)P-F結合を有する化合物及び(B)SO2構造を有する化合物は、2種以上組み合わせて用いてもよい。少なくとも1種の(A)P-F結合を有する化合物及び少なくとも1種の(B)SO2構造を有する化合物を組み合わせた際に、非水系電解液電池の初回充放電効率を高める効果がより顕著なものとなるため、好ましい。
また、本実施形態に係る非水系電解液においては、不飽和環状カーボネート及びフッ素原子を有する環状カーボネートから選択される一種以上を併用することで、初期コンディショニング時のガス発生がさらに抑制され、膨れにくい電池が得られる点で好ましい。
以下、「不飽和環状カーボネート」及び「フッ素化環状カーボネート」について詳細に説明する。
【0064】
<1-4-3.不飽和環状カーボネート>
本明細書において「不飽和環状カーボネート」とは、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネートであり、炭素-炭素二重結合や炭素-炭素三重結合等の炭素-炭素不飽和結合を有するカーボネートであれば、特に限定されず、任意の不飽和環状カーボネートを用いることができる。
不飽和環状カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート類、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類の具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート等が挙げられる。
炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、プロパルギルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートが好ましく、特にビニレンカーボネートは、安定な被膜状の構造物の形成に寄与することができ、より好適に用いられる。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは80以上であり、また通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。不飽和環状カーボネートの含有量が上記範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分な高温保存特性やサイクル特性向上効果を発現しやすい。
【0065】
<1-4-4.フッ素化環状カーボネート>
本明細書において「フッ素化環状カーボネート」とは、フッ素原子を有する環状カーボネートである。
フッ素化環状カーボネートとしては、炭素原子数2~6のアルキレン基を有する環状カーボネートの誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネート誘導体である。エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1~4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1~8個のものが好ましい。
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-
5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
尚、フッ素化環状カーボネートは、非水系電解液の添加剤として用いても、非水溶媒として用いてもよい。非水溶媒として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、また、通常85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、放電容量維持率が低下することを回避しやすい。添加剤として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。フッ素化環状カーボネートの含有量が上記範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分な高温保存特性やサイクル特性向上効果を発現しやすい。
本発明の一実施形態に係る非水系電解液において、前記不飽和環状カーボネート又はフッ素化環状カーボネートが、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0066】
フッ素化環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)を用いることができる。フッ素化不飽和環状カーボネートは、特に制限されない。中でもフッ素原子が1個又は2個のものが好ましい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
ビニレンカーボネート誘導体としては、4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素-炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体としては、4-フルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-フェニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく
損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは80以上であり、また、通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすい。
【0067】
(A)P-F結合を有する化合物、(B)SO2構造を有する化合物、不飽和環状カーボネート及びフッ素化環状カーボネート以外の添加剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の全量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。この範囲であれば、その他添加剤の効果が十分に発現させやすく、高温保存安定性が向上する傾向にある。(A)P-F結合を有する化合物、(B)SO2構造を有する化合物、不飽和環状カーボネート及びフッ素化環状カーボネート以外の添加剤を2種以上併用する場合には、それら添加剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0068】
本明細書において、非水系電解液の組成とは、非水系電解液製造時、非水系電解液の電池への注液時点又は電池として出荷された何れかの時点での組成を意味する。
すなわち、非水系電解液は、非水系電解液を調製する際に各構成成分の比率が予め既定した組成となるように混合すればよい。また、非水系電解液を調製した後で、非水系電解液そのものを分析に供して組成を確認することができる。また、完成した非水系電解液二次電池から非水系電解液を回収して、分析に供してもよい。非水系電解液の回収方法としては、電池容器の一部又は全部を開封し、或いは電池容器に孔を設けることにより、電解液を採取する方法が挙げられる。開封した電池容器を遠心分離して電解液を回収してもよいし、抽出溶媒(例えば、水分量が10ppm以下まで脱水したアセトニトリル等が好ましい)を開封した電池容器に入れて又は電池素子に抽出溶媒を接触させて電解液を抽出してもよい。このような方法にて回収した非水系電解液を分析に供することができる。また、回収した非水系電解液は分析に適した条件とするために希釈して分析に供してもよい。
【0069】
非水系電解液の分析方法としては、具体的には核磁気共鳴(以下、NMRと省略することがある)、ガスクロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィー等の液体クロマトグラフィー等による分析が挙げられる。以下、NMRによる分析方法を説明する。不活性雰囲気下で、非水系電解液を10ppm以下まで脱水した重溶媒中に溶解させ、NMR管に入れてNMR測定を行う。また、NMR管として二重管を用い、一方に非水系電解液を入れ、もう一方に重溶媒を入れて、NMR測定を行ってもよい。重溶媒としては、重アセトニトリルや重ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。非水系電解液の構成成分の濃度を決定する場合は、重溶媒中に規定量の標準物質を溶解させて、スペクトルの比率から各構成成分の濃度を算出することができる。また、予め非水系電解液を構成する成分の一種以上の濃度を、ガスクロマトグラフィーのような別の分析手法で求めておき、濃度既知の成分とそれ以外の成分とのスペクトル比から濃度を算出することもできる。用いる核磁気共鳴分析装置は、400MHz以上の磁場を有するものが好ましい。測定核種としては1H、31P、19F等が挙げられる。
これらの分析手法は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0070】
<2.非水系電解液二次電池>
本発明の一実施形態に係る非水系電解液二次電池は、金属イオンを吸蔵および放出可能な正極と、金属イオンを吸蔵および放出可能な負極と、非水溶媒と該非水溶媒に溶解される電解質を含む非水系電解液と、を備える非水系電解液二次電池であって、該正極が、遷移金属酸化物を含有し、かつ遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiであり、該負極が、炭素系材料を含有し、該非水系電解液が、上述の一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物を含有する。
【0071】
<2-1.電池構成>
本実施形態の非水系電解液二次電池は、上記の非水系電解液及び正極及び負極以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様である。通常は上記の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本実施形態の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0072】
<2-2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本発明の一実施形態に係る非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を配合して用いることも可能である。
【0073】
<2-3.正極>
本発明の一実施形態においては、正極は集電体及び該集電体上に設けられた正極活物質層を有する。
以下に本実施形態の非水系電解液二次電池に使用される正極について詳細に説明する。
【0074】
<2-3-1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
(1)組成
正極活物質は、金属イオンを吸蔵および放出可能な遷移金属酸化物であって、かつ遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである。例えば、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものが好ましく、リチウムと少なくともNiとCoを含有し、遷移金属のうち50モル%以上がNiであることが好ましく、60モル%以上がNiであることがより好ましい。Ni及びCoは、酸化還元の電位が二次電池の正極材として用いるのに好適であり、高容量用途に適しているためである。
【0075】
リチウム遷移金属酸化物の遷移金属成分としては、必須元素として、NiとCoが含まれるが、その他の金属としてMn、V、Ti、Cr、Fe、Cu、Al、Mg、Zr、Er等が挙げられ、Mn、Ti、Fe、Al、Mg、Zr等が好ましい。リチウム遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、、LiNi0.7Co0.15Mn0.15O2、、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、Li1.05Ni0.50Co0.21Mn0.29O2、LiNi0.5Co0.3Mn0.2O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等が挙げられる。
【0076】
中でも、下記組成式(α)で示される遷移金属酸化物である態様が好ましい。
Lia1Nib1Coc1Md1O2・・・(α)
(上記式(α)中、a1、b1、c1及びd1は、0.90≦a1≦1.10、0.4≦b1<1.0、b1+c1+d1=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(α)中、0.10≦d1<0.40の数値を示すことが好ましい。また、0.50≦b1≦0.96の数値を示すことが好ましい。
NiおよびCoが主成分であり、かつNiの組成比がCoの組成比より大きいことで、非水系電解液電池の正極として用いた際に、安定であり、かつ高容量を取り出すことが可能となるからである。
【0077】
中でも、下記組成式(β)で示される遷移金属酸化物である態様が好ましい。
Lia2Nib2Coc2Md2O2・・・(β)
(式(β)中、0.90≦a2≦1.10、0.50≦b2≦0.94、0.05≦c2≦0.2、0.01≦d2≦0.3の数値を示し、b2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(β)中、0.10≦d2≦0.3の数値を示すことが好ましい。
上記の組成であることで、非水系電解液二次電池の正極として用いた際に、特に高容量を取り出すことが可能となるからである。
【0078】
また、上記の正極活物質のうち2種類以上を混合して使用してもよい。同様に、上記の正極活物質のうち少なくとも1種以上と他の正極活物質を混合して使用してもよい。他の正極活物質の例としては、上記に挙げられていない遷移金属酸化物、遷移金属燐酸化合物、遷移金属ケイ酸化合物、遷移金属ホウ酸化合物が挙げられる。
中でも、スピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物やオリビン型構造を有するリチウム含有遷移金属燐酸化合物が好ましい。具体的にはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物として、LiMn2O4、LiMn1.8Al0.2O4、LiMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。中でも最も構造が安定であり、非水系電解液電池の異常時にも酸素放出しにくく、安全性に優れるためである。
また、リチウム含有遷移金属燐酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等の燐酸鉄類、LiCoPO4等の燐酸コバルト類、LiMnPO4等の燐酸マンガン類、これらのリチウム遷移金属燐酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、W等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
中でも、リチウム鉄燐酸化合物が好ましい。鉄は資源量も豊富で極めて安価な金属であり、かつ有害性も少ないためである。すなわち、上記の具体例のうち、LiFePO4をより好ましい具体例として挙げることができる。
【0079】
本発明の一実施形態においては、正極がNMC正極であり、該NMC正極中、ニッケル元素の含有量が40モル%以上であり、50モル%以上である態様が非水系電解液二次電池の高容量化の観点からより好ましい。
ここで、本明細書において、NMC正極とは、正極活物質がニッケル・マンガン・コバルト(NMC)を含み下記式(I)で表される材料である、正極を意味する。
LiaNibCocMndO2・・・(I)
(上記式(I)中、a、b、c及びdは、0.90≦a≦1.10、0.40≦b<1.0、b+c+d=1を満たす。)
【0080】
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物
質(以後、適宜「表面付着物質」という)が付着したものを用いることもできる。表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;炭素等が挙げられる。
【0081】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることができる。
【0082】
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量に対して、好ましくは0.1ppm以上であり、1ppm以上がより好ましく、10ppm以上が更に好ましい。また、好ましくは20%以下であり、10%以下がより好ましく、5%以下が更に好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。また、付着量が上記範囲内にあると、その効果を十分に発現することができ、リチウムイオンの出入りを阻害することなく抵抗も増加し難くなる。
【0083】
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であってもよい。
【0084】
(4)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0085】
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0086】
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0087】
<2-3-2.正極構造と作製法>
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
(正極の作製法)
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知のいずれの方法でも作製することができる。例えば、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
【0088】
正極活物質層中の正極活物質の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは99.9質量%以下であり、99質量%以下がより好ましい。正極活物質の含有量が、上記範囲内であると、電気容量を十分確保できる。さらに、正極の強度も十分なものとなる。なお、本発明における正極活物質粉体は、遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである正極が作製されれば、1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0089】
<導電材>
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素系材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0090】
正極活物質層中の導電材の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは50質量%以下であり、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。導電材の含有量が上記範囲内であると、導電性を十分確保できる。さらに、電池容量の低下も防ぎやすい。
【0091】
<結着剤>
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば特に限定されないが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物;等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0092】
正極活物質層中の結着剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは80質量%以下であり、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。結着剤の割合が、上記範囲内であると、正極活物質を十分保持でき、正極の機械的強度を確保できるため、サイクル特性等の電池性能が良好となる。さらに、電池容量や導電性の低下を回避することにもつながる。
【0093】
<液体媒体>
正極活物質層を形成するためのスラリーの調製に用いる液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0094】
<増粘剤>
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、燐酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0095】
増粘剤を使用する場合には、正極活物質に対する増粘剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上であり、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、好ましくは5質量%以下であり、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。正極活物質に対する増粘剤の割合が上記範囲内であると、スラリーの塗布性が良好となり、さらに、正極活物質層に占める活物質の割合が十分なものとなるため、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題を回避し易くなる。
【0096】
<圧密化>
集電体への上記スラリーの塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.5g・cm-3以上がより好ましく、2g・cm-3以上が更に好ましく、また、4g・cm-3以下が好ましく、3.5g・cm-3以下がより好ましく、3g・cm-3以下が更に好ましい。
正極活物質層の密度が、上記範囲内であると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下することなく、特に高電流密度での充放電特性が良好となる。さらに、活物質間の導電性が低下し難くなり、電池抵抗が増大し難くなる。
【0097】
<集電体>
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素系材料;等が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0098】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素系材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、好ましくは1μm以上であり、3μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、好ましくは1mm以下であり、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、上記範囲内であると、集電体として必要な強度を十分確保することができる。さらに、取り扱い性も良好となる。
【0099】
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(非水系電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が、好ましくは150以下であり、20以下がより好ましく、10以下が特に好ましく、また、好ましくは0.1以上であり、0.4以上がより好ましく、1以上が特に好ましい。
集電体と正極活物質層の厚さの比が、上記範囲内であると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じ難くなる。さらに、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し難くなり、電池容量の低下を防ぐことができる。
【0100】
<電極面積>
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、非水系電解液電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和を、面積比で20倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0101】
<放電容量>
上記の非水系電解液を用いる場合、非水系電解液電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、1アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため好ましい。そのため、正極(「正極板」ともいう。)は、放電容量が満充電で、好ましくは3Ah(アンペアアワー)以上であり、より好ましくは4Ah以上、また、好ましくは100Ah以下であり、より好ましくは70Ah以下であり、特に好ましくは50Ah以下になるように設計する。
【0102】
上記範囲内であると、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり過ぎず、電力効率の悪化を防ぐことができる。さらに、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きくなり過ぎず、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなるといった現象を回避することができる。
【0103】
<正極板の厚さ>
正極板の厚さは、特に限定されないが、高容量かつ高出力、高レート特性の観点から、正極板から集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。
【0104】
<2-4.負極>
本発明の一実施形態においては、負極は集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有する。
以下に本実施形態の非水系電解液二次電池に使用される負極について詳細に説明する。
【0105】
<2-4-1.負極活物質>
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能な炭素系材料を含む。負極活物質は1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0106】
<炭素系材料>
前記炭素系材料としては、(1)天然黒鉛、(2)人造黒鉛、(3)非晶質炭素、(4)炭素被覆黒鉛、(5)黒鉛被覆黒鉛、(6)樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。
【0107】
(1)天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛及び/又はこれらの黒鉛を原料に球形化や緻密化等の処理を施して得られた黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性や充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛が特に好ましい。
【0108】
前記球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。
【0109】
具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された天然黒鉛(1)の原料に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、球形化処理を行なう装置が好ましい。また、原料を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有する装置が好ましい。
【0110】
例えば前述の装置を用いて球形化処理する場合は、回転するローターの周速度を30~100m/秒に設定するのが好ましく、40~100m/秒に設定するのがより好ましく、50~100m/秒に設定するのが更に好ましい。また、球形化処理は、単に原料を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0111】
(2)人造黒鉛としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサイルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の有機化合物を、通常2500℃以上、通常3200℃以下の範囲の温度で黒鉛化し、必要に応じて粉砕及び/又は分級して製造されたものが挙げられる。
【0112】
この際、ケイ素含有化合物やホウ素含有化合物等を黒鉛化触媒として用いることもでき
る。また、ピッチの熱処理過程で分離したメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化して得た人造黒鉛が挙げられる。更に一次粒子からなる造粒粒子の人造黒鉛も挙げられる。例えば、メソカーボンマイクロビーズや、コークス等の黒鉛化可能な炭素系材料粉体とタール、ピッチ等の黒鉛化可能な結着剤と黒鉛化触媒を混合し、黒鉛化し、必要に応じて粉砕することで得られる、扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した黒鉛粒子が挙げられる。
【0113】
(3)非晶質炭素としては、タール、ピッチ等の易黒鉛化性炭素前駆体を原料に用い、黒鉛化しない温度領域(400~2200℃の範囲)で1回以上熱処理した非晶質炭素粒子や、樹脂等の難黒鉛化性炭素前駆体を原料に用いて熱処理した非晶質炭素粒子が挙げられる。
【0114】
(4)炭素被覆黒鉛としては、以下のようにして得られるものが挙げられる。天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の有機化合物である炭素前駆体とを混合し、400~2300℃の範囲で1回以上熱処理する。得られた天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、これを非晶質炭素により被覆して炭素黒鉛複合体を得る。この炭素黒鉛複合体が炭素被覆黒鉛(4)として挙げられる。
【0115】
また、前記複合の形態は、核黒鉛の表面全体又は一部を非晶質炭素が被覆した形態でも、複数の一次粒子を前記炭素前駆体起源の炭素を結着剤として複合させた形態であってもよい。また、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛にベンゼン、トルエン、メタン、プロパン、芳香族系の揮発分等の炭化水素系ガス等を高温で反応させ、黒鉛表面に炭素を堆積(CVD)させることでも、前記炭素黒鉛複合体を得ることができる。
【0116】
(5)黒鉛被覆黒鉛としては、以下のようにして得られるものが挙げられる。天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の易黒鉛化性の有機化合物の炭素前駆体とを混合し、2400~3200℃程度の範囲で1回以上熱処理する。得られた天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、黒鉛化物でその核黒鉛の表面全体又は一部を被覆して黒鉛被覆黒鉛(5)が得られる。
【0117】
(6)樹脂被覆黒鉛は、例えば、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、樹脂等を混合し、400℃未満の温度で乾燥して得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、樹脂等でその核黒鉛を被覆することで得られる。
【0118】
また、以上説明した(1)~(6)の炭素系材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0119】
上記(2)~(5)の炭素系材料に用いられるタール、ピッチや樹脂等の有機化合物としては、石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機化合物等が挙げられる。また、原料有機化合物は混合時の粘度を調整するため、低分子有機溶媒に溶解させて用いてもよい。
【0120】
また、核黒鉛の原料となる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛としては、球形化処理を施した天然黒鉛が好ましい。
【0121】
<Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質>
負極活物質は、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有するものであってもよい。本明細書において、「Liと合金化可能な金属粒子」とは、具体的に例示した材料から明らかなように、「Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する
粒子」を意味する。Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質は、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とが互いに独立した粒子の状態で混合されている混合物でもよいし、Liと合金化可能な金属粒子が黒鉛粒子の表面及び/又は内部に存在している複合体でもよい。
【0122】
上記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との複合体(複合粒子ともいう)とは、Liと合金化可能な金属粒子及び黒鉛粒子が含まれている粒子であれば特に制限はないが、好ましくは、Liと合金化可能な金属粒子及び黒鉛粒子が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化した粒子である。より好ましい形態としては、Liと合金化可能な金属粒子及び黒鉛粒子が、少なくとも複合粒子表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各々の固体成分が粒子内で分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、黒鉛粒子が存在しているような形態である。更に具体的な好ましい形態は、少なくともLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子から構成される複合材であって、黒鉛粒子、好ましくは、天然黒鉛が曲面を有する折り畳まれた構造を持つ粒子内に、該構造内の間隙にLiと合金化可能な金属粒子が存在していることを特徴とする複合材(負極活物質)である。また、間隙は空隙であってもよいし、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、前記間隙中に存在していてもよい。
【0123】
(Liと合金化可能な金属粒子の含有割合)
Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属粒子の含有割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上である。また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲であると、Si表面での副反応の制御が可能であり、非水系電解液電池において十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
【0124】
<Liと合金化可能な金属粒子>
合金系材料は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金は、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズの単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物であり、更に好ましくはケイ素及びスズの単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物などの、ケイ素又はスズを構成元素として有るものである。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0125】
リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物を負極活物質として使用する場合、Liと合金化可能な金属は、粒子形態である。粒子形態は、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であってもよい。金属粒子が、Liと合金化可能な金属粒子であることを確認するための手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察及び元素分析、蛍光X線による元素分析等が挙げられる。
【0126】
Liと合金化可能な金属粒子としては、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、非水系電解液電池の容量とサイクル寿命の点から、前記金属粒子は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、As、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物であることが好ましい。また、Liと合金化可能な金属粒子が金属を2種以上含有する場合、当該粒子は、これらの金属の合金からなる合金粒子であってもよい。これらの中でも、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその金属化合物が好ましい。
【0127】
Liと合金化可能な金属の化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。また、該化合物はLiと合金化可能な金属を2種以上含有していてもよい。
【0128】
Liと合金化可能な金属粒子の中でも、Si又はSi含有化合物が好ましい。Si又はSi含有化合物は、電池の高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi含有化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiOx、SiNx、SiCx、SiZxOy(Z=C、N)等が挙げられる。Si化合物としては、Si酸化物(SiOx)が、黒鉛と比較して理論容量が大きい点で好ましく、非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶が、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能である点で好ましい。
【0129】
この一般式SiOxは、二酸化ケイ素(SiO2)と金属Si(Si)とを原料として得られ、xは通常0<x<2であり、より好ましくは、0.2以上1.8以下、更に好ましくは、0.4以上1.6以下、特に好ましくは、0.6以上1.4以下である。この範囲であれば、電池が高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
【0130】
(Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量)
Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01質量%以上8質量%以下であり、0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましい。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在のいずれでもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量が前記範囲内であると、金属粒子とO(酸素原子)との強い結合により、非水系電解液二次充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
【0131】
<被覆率>
本実施形態において、負極活物質は、炭素質物又は黒鉛質物で被覆されていてもよい。この中でも非晶質炭素質物で被覆されていることが、リチウムイオンの受入性の点から好ましい。この被覆率は、通常0.5%以上30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは、2%以上20%以下である。被覆率の上限は、電池を組んだ際の可逆容量の観点から、被覆率の下限は、核となる炭素系材料が非晶質炭素によって均一にコートされ強固な造粒がされるという観点、焼成後に粉砕した際、得られる粒子の粒径の観点から、上記範囲とすることが好ましい。
【0132】
なお、最終的に得られる負極活物質の有機化合物由来の炭化物の被覆率(含有率)は、負極活物質の量と、有機化合物の量及びJIS K 2270に準拠したミクロ法により測定される残炭率により、下記式で算出することができる。
【0133】
式:有機化合物由来の炭化物の被覆率(%)=(有機化合物の質量×残炭率×100)/{負極活物質の質量+(有機化合物の質量×残炭率)}
【0134】
<内部間隙率>
負極活物質の内部間隙率は通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましく5%以上、更に好ましくは7%以上である。また通常50%未満、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。この内部間隙率が小さすぎると、非水系電解液電池において負極活物質の粒子内の液量が少なくなる傾向がある。一方、内部間隙率が大きすぎると、電極にした場合に粒子間間隙が少なくなる傾向にある。内部間隙率の下限は充放電特性の観点から、上限は非水系電解液の拡散の観点から上記範囲とすることが好ましい。また、上述したように、この間隙は空隙であってもよいし、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、間隙中に存在又は間隙がこれらにより満たされていてもよい。
【0135】
<2-4-2.負極の構成と作製法>
負極(以下、「負極板」ともいう。)の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法をも用いることができる。例えば、負極活物質に、結着剤、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0136】
また、合金系材料からなる負極は、公知のいずれの方法を用いても製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0137】
負極集電体の材質としては、鋼、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
【0138】
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、非水系電解液電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
【0139】
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
【0140】
また、負極集電体の質量を低減させて電池の質量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、質量も自在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
【0141】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
【0142】
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上であり、好ましくは75質量%以上、また、通常97質量%以下であり、好ましくは95質量%以下である。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に導電材の含有量が不足することにより、負極としての電気伝導性を確保しづらい傾向にある。なお、二以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0143】
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、好ましくは5質量%以上、また、通常30質量%以下であり、25質量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となる。なお、二以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0144】
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常10質量部以下であり、8質量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となる。なお、二以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0145】
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0146】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や結着剤、増粘剤を混合して、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N-メチルピロリドン等の環状アミド類等の有機溶媒を、水に対して30質量%以下の範囲で併用することもできる。また、有機溶媒としては、N-メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N-メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ま
しい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0147】
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成され、負極が得られる。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【0148】
<電極密度>
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質層の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がさらに好ましく、1.3g・cm-3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm-3以下が好ましく、2.1g・cm-3以下がより好ましく、2.0g・cm-3以下がさらに好ましく、1.9g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質層の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、非水系電解液電池の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0149】
<平均動作電位>
上述したように、負極上で電解液成分が還元されることで発生する求核剤を起点として、より高い抵抗低減効果をもたらす反応が進行し、本発明の効果を奏すると推定される。したがって、電解液成分の還元を十分に進行させるため、負極の平均動作電位(vs.Li/Li+)は1V以下であることが好ましい。
【0150】
<2-5.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0151】
(材料)
セパレータの材料としては、非水系電解液に対し安定な材料であれば特に制限されないが、好ましくは、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類、ガラス繊維からなるガラスフィルター等の無機物;ポリオレフィン等の樹脂;等が挙げられ、より好ましくはポリオレフィンであり、特に好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。また上記材料を積層させて用いてもよい。
【0152】
(厚み)
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上、50μm以下である。
【0153】
(形態)
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが好ましく用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着材を用いて無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いてもよい。保液性に優れるため、微多孔性フィルム又は不織布からなるセパレータが好ましい。
【0154】
(空孔率)
セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの
空孔率は任意であるが、通常20%以上、90%以下である。
【0155】
(透気度)
セパレータの透気度は、ガーレ値で把握することができる。ガーレ値とは、フィルム厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、100mLの空気が該フィルムを通過するのに必要な秒数で表される。セパレータのガーレ値は、任意ではあるが、通常10~1000秒/100mLである。
【0156】
<2-6.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する。)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。電極群占有率の下限は、電池容量の観点から、上記範囲とすることが好ましい。また、電極群占有率の上限は、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性の観点、内部圧力を外に逃がすガス放出弁の作動回避の観点から、間隙スペースを確保するために上記範囲とすることが好ましい。間隙スペースが少な過ぎると、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0157】
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、上記の非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、上記の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0158】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0159】
[保護素子]
保護素子として、過大電流等による発熱とともに抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)素子、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0160】
[外装体]
本実施形態の非水系電解液電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
【0161】
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的に、ニッケルメッキ鋼板、ステンレス、アルミニウム若しくはアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、又は、樹脂とアルミ
箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が好適に用いられる。
【0162】
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0163】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【実施例】
【0164】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0165】
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
<実施例1~7、比較例10~13>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.0Ni0.5Co0.2Mn0.3O2)90質量部と、導電材としてアセチレンブラック7質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0180】
<比較例1~3>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.0Ni1/3Co1/3Mn1/3O2)90質量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例1~3の正極を作製した。
【0181】
<比較例4~6>
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)90質量部を使用した以外は、実施例11と同様の方法にて比較例4~6の正極を作製した。
【0182】
<比較例7~9>
正極活物質としてリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4)90質量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例7~9の正極を作製した。
【0183】
[負極の作製]
天然黒鉛98質量部に、増粘剤及び結着剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に塗布して乾燥した後、プレスして負極とした。
【0184】
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)の混合物(体積比EC:DMC:EMC=3:3:4)に、電解質として十分に乾燥させたLiPF6を1.0mol/L(12.3質量%、非水系電解液中の濃度として)溶解させた(以下、これを基準電解液1と呼ぶ)。基準電解液1に対して、下記表1に記載の含有量となるように化合物1~8をそれぞれ加えて、実施例1~7及び比較例1~13の非水系電解液を調製した。なお、表中の「含有量(質量%)」は、各非水系電解液全体を100質量%とした時の含有量である。
【0185】
[非水系電解液電池の製造]
上記の正極、負極及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に、正極と負極の端子が突設するように挿入した後、上記調製後の非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、ラミネート型の非水系電解液電池を作製した。
【0186】
<非水系電解液電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、0.05Cに相当する電流で3.72Vまで充電した後、0.2Cで2.8Vまで放電した。0.2Cで4.1Vまで充電を行った。その後、60℃、12時間の条件でエージングを実施した。その後、25℃で0.2Cで2.8Vまで放電し、ラミネート型電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.3Vまで充電を行った後、0.2Cで2.8Vまで放電し、初期コンディショニングを行った。
[入力抵抗の測定]
25℃の恒温槽中、上記の方法で初期コンディショニングを行った非水系電解液電池の入力抵抗を次のように測定した。初期コンディショニング後の非水系電解液電池に対して、3.72Vまで0.2Cで充電した。これを25℃において25mA、50mA、100mAで充電し、その10秒時の電圧を測定した。得られた電流-電圧直線の傾きから入力抵抗値(Ω)を求めた。
【0187】
【0188】
表1から、実施例1~7のように、特定の芳香族イソシアネート化合物を含有する非水系電解液と、遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を有する正極を備える非水系電解液二次電池は、比較例1~9(特定の芳香族イソシアネート化合物を含有する非水系電解液を備えるが、特定の遷移金属酸化物を含有しない正極を備える非水系電解液二次電池)や比較例10~13(正極は特定の遷移金属酸化物を含有するが、特定の芳香族イソシアネート化合物でない、ジイソシアネートを含有する非水系電解液を備える非水系電解液二次電池)と比較して、入力抵抗が著しく低下したことが判る。
【0189】
<実施例8~15>
実施例2において、さらに化合物9~13を表2に記載の通り非水系電解液に添加した以外は、実施例2と同様に電池を作製し、上述の入力抵抗値及び後述の初回充放電効率を測定した。結果を表2に記載した。
【0190】
[初回充放電効率の測定]
上記の初期コンディショニングにおいて、(初回の放電容量)/(初回の充電容量)×1
00から初回充放電効率(%)を求めた。
【0191】
<実施例16~17>
実施例5において、さらに化合物9又は13を表2に記載の通り非水系電解液に添加した以外は、実施例5と同様に電池を作製し、上述の入力抵抗値及び初回充放電効率を測定した。結果を表2に記載した。
【0192】
【0193】
表2から、実施例8~17のように、特定の芳香族イソシアネート化合物に、さらにP-F結合を有する化合物及びSO2構造を有する化合物の少なくとも1種を含有する非水系電解液と、遷移金属として少なくともNi及びCoを含有し、遷移金属のうち40モル%以上がNiである遷移金属酸化物を含有する正極を備える非水系電解液二次電池は、入力抵抗が著しく低下する効果だけでなく初回充放電効率を向上させる効果を奏することが判る。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明に係る非水系電解液によれば、非水系電解液二次電池の入力抵抗を低くでき、高容量化された電池の劣化を改善でき、有用である。
また、本発明に係る非水系電解液及びこれを用いた非水系電解液二次電池は、非水系電解液二次電池を用いる公知の各種用途に用いることが可能である。具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用バックアップ電源、事業所用バックアップ電源、負荷平準化用電源、自然エネルギー貯蔵電源等が挙げられる。