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特許7579766プラズマ処理装置及びプラズマ処理用コイル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-30
(45)【発行日】2024-11-08
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理用コイル
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/302 101C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021125392
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2022061463
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2020168909
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山澤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 武尚
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 香
(72)【発明者】
【氏名】倉科 大輔
(72)【発明者】
【氏名】保坂 勇貴
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/065744(WO,A1)
【文献】特開2011-119659(JP,A)
【文献】特開2016-091812(JP,A)
【文献】特許第5160717(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバの上部又は上方に設けられたメインコイルと、
前記メインコイルの径方向内側又は径方向外側に設けられたサブコイルアセンブリであり、前記サブコイルアセンブリは、1以上のターンを有する第1の螺旋状コイルと1以上のターンを有する第2の螺旋状コイルとを含み、前記第1の螺旋状コイルの各ターン及び前記第2の螺旋状コイルの各ターンは、鉛直方向に交互に配置され、前記第1の螺旋状コイルは、上端に第1の上側端子を有し、下端に第1の下側端子を有し、前記第1の上側端子は、1以上のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第1の下側端子は、グランド電位に接続され、前記第2の螺旋状コイルは、上端に第2の上側端子を有し、下端に第2の下側端子を有し、前記第2の上側端子は、前記1以上のコンデンサ又は1以上の他のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第2の下側端子は、グランド電位に接続される、前記サブコイルアセンブリと、
前記メインコイルにRF電力を供給するように構成されたRF電力供給部と、を有する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記メインコイルは、当該メインコイルを構成する線路の両端が開放され、前記線路の中点又は当該中点の近傍に前記RF電力供給部から給電され、前記中点の近傍で接地され、前記RF電力供給部から供給されたRF電力の1/2波長で共振するように構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記プラズマ処理チャンバの上部中央に設けられ、前記プラズマ処理チャンバ内に処理ガスを導入するように構成されたガス導入部を有し、
前記サブコイルアセンブリは、前記ガス導入部と前記メインコイルとの間に設けられる、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記1以上のコンデンサは可変容量コンデンサを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2の上側端子は、前記1以上のコンデンサを介してグランド電位に接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記サブコイルアセンブリの下面は、前記第1の螺旋状コイルの下面からなる第1の下面部分と、前記第2の螺旋状コイルの下面からなる第2の下面部分とを有し、前記第1の下面部分及び前記第2の下面部分は、互いに対称に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記サブコイルアセンブリの上面は、前記第1の螺旋状コイルの上面からなる第1の上面部分と、前記第2の螺旋状コイルの上面からなる第2の上面部分とを有し、前記第1の上面部分及び前記第2の上面部分は、互いに対称に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1の螺旋状コイルの各ターンの径は同じであり、前記第2の螺旋状コイルの各ターンの径は同じである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記サブコイルアセンブリは、1以上のターンを有する第3の螺旋状コイルを含み、
前記第1の螺旋状コイルの各ターン、前記第2の螺旋状コイルの各ターン、及び前記第3の螺旋状コイルの各ターンは、鉛直方向に順に配置され、
前記第3の螺旋状コイルは、上端に第3の上側端子を有し、下端に第3の下側端子を有し、前記第3の上側端子は、前記1以上のコンデンサ又は1以上の他のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第3の下側端子は、グランド電位に接続される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1の螺旋状コイルの各ターン及び前記第2の螺旋状コイルの各ターンは、板状である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
鉛直方向に隣り合う前記第1の螺旋状コイルのターンと前記第2の螺旋状コイルのターンとの間隔は、1mm~10mmである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1の螺旋状コイルにおいてターン間を接続する接続部材は、鉛直方向に延在しており、
前記第2の螺旋状コイルにおいてターン間を接続する接続部材は、鉛直方向に延在している、請求項1~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
プラズマ処理装置で使用するアンテナアセンブリであって、
RF電力供給部との接続点を有するメインコイルと、
前記メインコイルの径方向内側又は径方向外側に設けられたサブコイルアセンブリであり、前記サブコイルアセンブリは、1以上のターンを有する第1の螺旋状コイルと1以上のターンを有する第2の螺旋状コイルとを含み、前記第1の螺旋状コイルの各ターン及び前記第2の螺旋状コイルの各ターンは、鉛直方向に交互に配置され、前記第1の螺旋状コイルは、上端に第1の上側端子を有し、下端に第1の下側端子を有し、前記第1の上側端子は、1以上のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第1の下側端子は、グランド電位に接続され、前記第2の螺旋状コイルは、上端に第2の上側端子を有し、下端に第2の下側端子を有し、前記第2の上側端子は、前記1以上のコンデンサ又は1以上の他のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第2の下側端子は、グランド電位に接続される、前記サブコイルアセンブリと、を有する、アンテナアセンブリ。
【請求項14】
前記1以上のコンデンサは可変容量コンデンサを含む、請求項13に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項15】
前記第2の上側端子は、前記1以上のコンデンサを介してグランド電位に接続されている、請求項13又は14に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項16】
前記サブコイルアセンブリの下面は、前記第1の螺旋状コイルの下面からなる第1の下面部分と、前記第2の螺旋状コイルの下面からなる第2の下面部分とを有し、前記第1の下面部分及び前記第2の下面部分は、互いに対称に配置されている、請求項13~15のいずれか一項に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項17】
プラズマ処理装置で使用するアンテナアセンブリであって、
1以上のターンを有する第1の螺旋状コイルと、
1以上のターンを有する第2の螺旋状コイルと、
第1の導電性部材と、
第2の導電性部材と、
第3の導電性部材と、を有し、
前記第1の螺旋状コイルの各ターン及び前記第2の螺旋状コイルの各ターンは、鉛直方向に交互に配置され、
前記第1の螺旋状コイルは、上端に第1の上側端子を有し、下端に第1の下側端子を有し、
前記第2の螺旋状コイルは、上端に第2の上側端子を有し、下端に第2の下側端子を有し、
前記第1の上側端子及び前記第2の上側端子は、前記第1の導電性部材に接続され、
前記第1の下側端子は、前記第2の導電性部材に接続され、
前記第2の下側端子は、前記第3の導電性部材に接続され
前記第2の導電性部材は、前記第1の下側端子から第1の高さまで延在しており、
前記第3の導電性部材は、前記第2の下側端子から前記第1の高さまで延在しており、
前記第1の高さは、前記第1の螺旋状コイル及び前記第2の螺旋状コイルの高さよりも高い、アンテナアセンブリ。
【請求項18】
前記第1の導電性部材は、RF電位又はグランド電位に接続される、請求項17に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項19】
前記第2の導電性部材及び前記第3の導電性部材は、グランド電位に接続される、請求項17又は請求項18に記載のアンテナアセンブリ。
【請求項20】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバの上部又は上方に設けられる導電性筐体と、
前記導電性筐体内に設けられたアンテナアセンブリと、を有し、
前記アンテナアセンブリは、
1以上のターンを有する第1の螺旋状コイルと、
1以上のターンを有する第2の螺旋状コイルと、
第1の導電性部材と、
第2の導電性部材と、
第3の導電性部材と、を有し、
前記第1の螺旋状コイルの各ターン及び前記第2の螺旋状コイルの各ターンは、鉛直方向に交互に配置され、
前記第1の螺旋状コイルは、上端に第1の上側端子を有し、下端に第1の下側端子を有し、
前記第2の螺旋状コイルは、上端に第2の上側端子を有し、下端に第2の下側端子を有し、
前記第1の上側端子及び前記第2の上側端子は、前記第1の導電性部材に接続され、
前記第1の下側端子は、前記第2の導電性部材に接続され、
前記第2の下側端子は、前記第3の導電性部材に接続され、
前記第1の導電性部材、前記第2の導電性部材及び前記第3の導電性部材は、前記第1の螺旋状コイル及び前記第2の螺旋状コイルの最上部よりも高い位置で前記導電性筐体に接続され、
前記導電性筐体は、グランド電位に接続される、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理用コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、チャンバ内に高周波を供給することによりチャンバ内に処理ガスのプラズマを生成するアンテナと、アンテナに高周波電力を供給する電力供給部と、を備えたプラズマ処理装置が開示されている。アンテナは、外側コイルと、当該外側コイルと誘導結合する内側コイルとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-67503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理を行う際の電界強度を低減させつつ、基板に対するプラズマ分布の均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバの上部又は上方に設けられたメインコイルと、前記メインコイルの径方向内側又は径方向外側に設けられたサブコイルアセンブリであり、前記サブコイルアセンブリは、1以上のターンを有する第1の螺旋状コイルと1以上のターンを有する第2の螺旋状コイルとを含み、前記第1の螺旋状コイルの各ターン及び前記第2の螺旋状コイルの各ターンは、鉛直方向に交互に配置され、前記第1の螺旋状コイルは、上端に第1の上側端子を有し、下端に第1の下側端子を有し、前記第1の上側端子は、1以上のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第1の下側端子は、グランド電位に接続され、前記第2の螺旋状コイルは、上端に第2の上側端子を有し、下端に第2の下側端子を有し、前記第2の上側端子は、前記1以上のコンデンサ又は1以上の他のコンデンサを介してグランド電位に接続され、前記第2の下側端子は、グランド電位に接続される、前記サブコイルアセンブリと、前記メインコイルにRF電力を供給するように構成されたRF電力供給部と、を有する、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理を行う際の電界強度を低減させつつ、基板に対するプラズマ分布の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システムの構成の概略を示す断面図である。
図2】アンテナの構成の概略を示す断面図である。
図3】アンテナの構成の概略を模式的に示す斜視図である。
図4】サブコイルアセンブリの構成の概略を示す斜視図である。
図5】サブコイルアセンブリの構成の概略を示す上方から見た平面図である。
図6】サブコイルアセンブリの構成の概略を示す下方から見た平面図である。
図7】サブコイルアセンブリの構成の概略を示す側面図である。
図8】サブコイルアセンブリの構成の概略を示す側面図である。
図9】比較例の実験結果を示すグラフである。
図10】本実施形態の実験結果を示すグラフである。
図11】他の実施形態にかかるサブコイルアセンブリの構成の概略を示す斜視図である。
図12】他の実施形態にかかるサブコイルアセンブリの構成の概略を示す斜視図である。
図13】他の実施形態にかかるサブコイルアセンブリの構成の概略を示す斜視図である。
図14】他の実施形態にかかるサブコイルアセンブリの構成の概略を示す斜視図である。
図15】他の実施形態の第1例にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図16】他の実施形態の第2例にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図17】他の実施形態の第3例にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図18】他の実施形態の第4例にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図19】他の実施形態の第5例にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図20】他の実施形態の第6例にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図21】他の実施形態にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
図22】他の実施形態にかかるアンテナの構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)に対してエッチングや成膜処理などのプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによってウェハを処理する。
【0009】
プラズマ源の一つとして、例えば誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いることができる。上述した特許文献1に開示のプラズマ処理装置は、この誘導結合型のプラズマ処理装置であって、外側コイルと内側コイルを備えたアンテナを有している。
【0010】
外側コイルは、2周以上、略円形の渦巻き状に形成されており、外側コイルの外形の中心軸がZ軸に一致するように、誘電体窓の上方に配置されている。外側コイルは、外側コイルを構成する線路の両端が開放され、線路の中点またはその近傍に電力供給部から給電され、中点の近傍で接地され、電力供給部から供給された高周波電力の1/2波長で共振するように構成されている。
【0011】
内側コイルは、略円形のリング状に形成されており、内側コイルの中心軸がZ軸に一致するように、誘電体窓の上方に配置されている。内側コイルは、内側コイルを構成する線路の両端がコンデンサを介して接続されており、外側コイルと誘導結合する。
【0012】
本発明者らは、上記特許文献1に開示のアンテナを用いた場合、共振機構の端点電界が高くなることを認識している。端点電界は誘電体窓の下面、すなわち、チャンバ内のプラズマの密度分布(以下、「プラズマ分布」という。)に影響を与え、これによりエッチレートの不均衡が生じる場合がある。このため、誘導磁場による均一なプラズマ生成の観点より、プラズマ着火に必要な電界強度を低減させることが望ましい。
【0013】
一方、上記特許文献1に開示のようなメインコイルとサブコイルを含むアンテナアセンブリにおいては、より高速なエッチレートやより高い制御性が要求されており、この要求は、RF電力の大出力化により対処可能である。RF電力の大出力化は、チャンバ内のプラズマ密度の増大に寄与する一方で、プラズマ密度の均一化のためにメインコイルを介してサブコイルに流れる電流を増大させる必要がある。この場合、サブコイルの温度が上昇するため、高い耐熱性を考慮した設計が必要になる。このため、発熱を抑えたコイルの設計と中心部に引き込んだ時にプラズマ分布の均一性を保った設計が必要となる。
【0014】
本開示にかかる技術は、プラズマ処理を行う際の電界強度を低減させつつ、基板に対するプラズマ分布の均一性を向上させる。以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<プラズマ処理装置の構成>
先ず、一実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成について説明する。図1は、プラズマ処理システムの構成の概略を示す断面図である。プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御装置50を含む。なお、本実施形態のプラズマ処理装置1は誘導結合型プラズマを用いたプラズマ処理装置である。
【0016】
プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電力供給部30及び排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓10a及び側壁10bを含み、基板(ウェハ)Wを収容する。誘電体窓10aはプラズマ処理チャンバ10の上部を構成し、側壁10bの上部開口に設けられる。誘電体窓10a及び側壁10bは、プラズマ処理チャンバ10内のプラズマ処理空間10sを規定する。
【0017】
また、プラズマ処理装置1は、基板(ウェハ)支持部11、ガス導入部13及びアンテナ14を含む。基板支持部11は、プラズマ処理空間10s内に配置される。アンテナ14は、プラズマ処理チャンバ10(誘電体窓10a)の上部又は上方に配置される。なお、アンテナ14の構成は後述する。
【0018】
基板支持部11は、本体部111及び環状部材(エッジリング)112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、環状部材112を支持するための環状領域(エッジリング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、環状部材112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、静電チャック及び導電部材を含む。導電部材は、静電チャックの下に配置される。導電部材は、RF(Radio Frequency)電力の供給によりRF電極として機能し、静電チャックの上面は、基板支持面111aとして機能する。また、図示は省略するが、一実施形態において、基板支持部11は、静電チャック及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、冷媒、伝熱ガスのような温調流体が流れる。
【0019】
ガス導入部13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に供給(導入)するように構成される。一実施形態において、ガス導入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓10aに形成された中央開口部に取り付けられる中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)を含んでもよい。代わりに又は加えて、ガス導入部13は、側壁10bに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0020】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、1又はそれ以上の処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0021】
電力供給部30は、RF電力供給部を含む。RF電力供給部は、少なくとも1つのRF信号(RF電力、例えばソースRF信号及びバイアスRF信号)を、基板支持部11の導電部材及びアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。
【0022】
一実施形態において、RF電力供給部は、第1のRF生成部及び第2のRF生成部を含む。第1のRF生成部は、アンテナ14の後述するメインコイル200に接続され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、27MHz~100MHzの範囲内の周波数を有する。生成されたソースRF信号は、アンテナ14のメインコイル200に供給される。第2のRF生成部は、基板支持部11の導電部材に接続され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。生成されたバイアスRF信号は、基板支持部11の導電部材に供給される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つのRF信号の振幅がパルス化又は変調されてもよい。振幅変調は、オン状態とオフ状態との間、あるいは、2又はそれ以上の異なるオン状態の間でRF信号振幅をパルス化することを含んでもよい。
【0023】
また、電力供給部30は、DC電力供給部を含んでもよい。DC電力供給部は、バイアスDC生成部を含む。一実施形態において、バイアスDC生成部は、基板支持部11の導電部材に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、基板支持部11の導電部材に印加される。一実施形態において、バイアスDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。また、バイアスDC生成部は、RF電力供給部に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部に代えて設けられてもよい。
【0024】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられた排気口(ガス出口)に接続され得る。排気システム40は、圧力弁及び真空ポンプを含んでもよい。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、粗引きポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0025】
制御装置50は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御装置50は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御装置50の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御装置50は、例えばコンピュータを含んでもよい。コンピュータは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)、記憶部、及び通信インターフェースを含んでもよい。処理部は、記憶部に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0026】
<アンテナの構成>
次に、プラズマ生成用のアンテナ14の構成について説明する。図2は、アンテナ14の構成の概略を示す断面図である。図3は、アンテナ14の構成の概略を模式的に示す斜視図である。
【0027】
図2及び図3に示すようにアンテナ14は、誘導結合プラズマ励起用アンテナであって、メインコイル200とサブコイルアセンブリ210とを有するアンテナアセンブリである。サブコイルアセンブリ210は、略円筒状のガス導入部13を囲むようにガス導入部13の周囲に設けられ、且つ、メインコイル200の径方向内側に設けられている。すなわち、サブコイルアセンブリ210は、ガス導入部13とメインコイル200との間に配置される。メインコイル200は、ガス導入部13及びメインコイル200を囲むようにガス導入部13及びメインコイル200の周囲に設けられている。メインコイル200の外形とサブコイルアセンブリ210の外形はそれぞれ、後述するように平面視において略円形に形成されている。そして、メインコイル200とサブコイルアセンブリ210は、それぞれの外形が同心円となるように配置されている。
【0028】
また、メインコイル200とサブコイルアセンブリ210はそれぞれ、誘電体窓10aから離れて誘電体窓10aの上方に配置されるように、図示しない支持機構によって支持されている。なお、サブコイルアセンブリ210は、誘電体窓10aから離れていることに限定されない。例えばサブコイルアセンブリ210は、誘電体窓10aの上面に接していてもよい。
【0029】
[メインコイル]
図3に示すようにメインコイル200は、2周以上、略円形の渦巻き状に形成され、メインコイル200の外形の中心軸がZ軸に一致するように配置されている。また、メインコイル200は、平面コイルであり、中央領域111aに支持される基板Wの面と略平行となるように、誘電体窓10aの上方に配置されている。
【0030】
メインコイル200を構成する線路の両端は開放されている。また、メインコイル200を構成する線路の中点又は当該中点の近傍には、RF電力供給部の第1のRF生成部が接続されており、メインコイル200には、第1のRF生成部からRF電力が供給される。また、メインコイル200を構成する線路の中点の近傍はグランド電位に接続されて接地される。メインコイル200は、第1のRF生成部から供給されたRF電力の波長λに対し、λ/2で共振するように構成されている。メインコイル200を構成する線路に発生する電圧は、線路の中点付近で最小となり、線路の両端で最大となるように分布する。また、メインコイル200を構成する線路に発生する電流は、線路の中点付近で最大となり、線路の両端で最小となるように分布する。メインコイル200にRF電力を供給する第1のRF生成部は、周波数および電力の変更が可能である。
【0031】
[サブコイルアセンブリ]
図4は、サブコイルアセンブリ210の構成の概略を示す斜視図である。図5は、サブコイルアセンブリ210の構成の概略を示す上方から見た平面図である。図6は、サブコイルアセンブリ210の構成の概略を示す下方から見た平面図である。図7及び図8はそれぞれ、サブコイルアセンブリ210の構成の概略を示す側面図である。
【0032】
図4に示すようにサブコイルアセンブリ210は、第1の螺旋状コイル211、第2の螺旋状コイル212及び接続部材213~215を有している。第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212は、それぞれらせん構造を有する。第1の螺旋状コイル211は、1以上のターン211tを有し、第2の螺旋状コイル212は、1以上のターン212tを有する。第1の螺旋状コイル211の各ターン211tと第2の螺旋状コイル212の各ターン212tは、側面視において鉛直方向に交互に配置されている。第1の螺旋状コイル211の外形の中心軸と第2の螺旋状コイル212の外形の中心軸はそれぞれZ軸に一致し、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212は同軸上に配置されている。第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212はそれぞれ、平面視において略円形に形成されている。また、第1の螺旋状コイル211の各ターン211tの径は同じであり、第2の螺旋状コイル212の各ターン212tの径は同じである。このようにサブコイルアセンブリ210は、略円筒形の2重らせん構造を有している。
【0033】
図7及び図8に示すように、第1の螺旋状コイル211の各ターン211tと第2の螺旋状コイル212の各ターン212tは、板状である。例えば、各ターン211tと各ターン212tはそれぞれ、厚みに対して幅が2倍以上である。第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212において電流を多く流すためには、各ターン211t、212tの断面積が大きい方が良い。一方、サブコイルアセンブリ210では下部に比べて上部の方がプラズマに対する結合が小さくなるため、効率よくプラズマ処理を行うためには、サブコイルアセンブリ210の高さは低い方が良い。すなわち、各ターン211t、212tの厚みは小さいほうが良い。かかる場合、各ターン211t、212tの断面積を確保しつつ、厚みを小さく抑えるためには、本実施形態のように各ターン211t、212tが板状であるのが好ましい。
【0034】
図8に示すように、鉛直方向に隣り合う第1の螺旋状コイル211のターン211tと第2の螺旋状コイル212のターン212tとの間隔Dは、1mm~10mmである。このように間隔Dが1mm以上であるため、真空雰囲気において隣り合うターン211t、212tが絶縁破壊するのを抑制することができる。また、間隔Dが10mm以下であるため、電流に対するプラズマ生成効率を維持することができる。
【0035】
第1の螺旋状コイル211においてターン211t間を接続する接続部材211sは、鉛直方向に延在している。第2の螺旋状コイル212においてターン212t間を接続する接続部材212sは、鉛直方向に延在している。かかる場合、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212の製造がしやすく、また加工精度も向上する。
【0036】
なお、図示の例においては第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212のターン数(巻き数)は1.5ターンであるが、これに限定されず、1以上の任意のターン数に設定できる。例えば、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212のターン数は、2ターン以上であってもよい。
【0037】
サブコイルアセンブリ210は、図5に示すように、第1の螺旋状コイル211の上面からなる第1の上面部分と、第2の螺旋状コイル212の上面からなる第2の上面部分とを有する。第1の上面部分は、第1の上側端子211aを含み、第2の上面部分は、第2の上側端子212aを含む。第1の上面部分及び第2の上面部分は、互いに対称に配置されている。すなわち、第1の上面部分及び第2の上面部分はそれぞれ、中心角が約180度の略半円形状を有している。
【0038】
また、サブコイルアセンブリ210は、図6に示すように第1の螺旋状コイル211の下面からなる第1の下面部分と、第2の螺旋状コイル212の下面からなる第2の下面部分とを有する。第1の下面部分は、第1の下側端子211bを含み、第2の下面部分は、第2の下側端子212bを含む。第1の下面部分及び第2の下面部分は、互いに対称に配置されている。すなわち、第1の下面部分及び第2の下面部分はそれぞれ、中心角が約180度の略半円形状を有している。
【0039】
図4に示すように、第1の螺旋状コイル211は、上端部に第1の上側端子211aを有し、下端部に第1の下側端子211bを有する。第2の螺旋状コイル212は、上端部に第2の上側端子212aを有し、下端部に第2の下側端子212bを有する。第1の上側端子211aと第2の上側端子212aはサブコイルアセンブリ210の中心に対して対称位置、すなわち隣接する上側端子の中心角が約180度の位置に配置されている。第1の下側端子211bと第2の下側端子212bもサブコイルアセンブリ210の中心に対して対称位置、すなわち隣接する下側端子の中心角が約180度の位置に配置されている。
【0040】
第1の上側端子211aと第2の上側端子212aは、第1の導電性部材である接続部材213によって接続されている。接続部材213は、平面視において略Y字に形成されている。接続部材213は、1以上のコンデンサ220を介してグランド電位に接続されて接地される。すなわち、第1の上側端子211aと第2の上側端子212aは、共通のコンデンサ220を介してグランド電位に接続されている。1以上のコンデンサ220は可変容量コンデンサを含む。なお、1以上のコンデンサ220は本実施形態に限定されず、固定の容量を有するコンデンサであってもよい。また、1以上のコンデンサ220は、可変容量コンデンサ及び/又は固定容量コンデンサを含む複数のコンデンサを含んでもよい。
【0041】
第1の下側端子211bは、第2の導電性部材である接続部材214を介してグランド電位に接続されて接地される。第2の下側端子212bは、第3の導電性部材である接続部材215を介してグランド電位に接続されて接地される。このようにサブコイルアセンブリ210は電力供給部30に接続されておらず、したがって、当該サブコイルアセンブリ210にはRF電力が直接供給されない。なお、接続部材214と接続部材215は、図示のように別に設けられていてもよいし、あるいは一体に設けられていてもよい。
【0042】
図7に示すように接続部材214は、第1の下側端子211bから第1の高さHまで延在している。接続部材215は、第2の下側端子212bから第1の高さHまで延在している。すなわち、接続部材214、215の高さは同じである。また、第1の高さHは、第1の螺旋状コイル211及び第2の螺旋状コイル212の高さよりも高い。
【0043】
なお、平面視における第1の上側端子211a及び第2の上側端子212aと、第1の下側端子211b及び第2の下側端子212bとの配置は特に限定されない。但し、第1の上側端子211a及び第2の上側端子212aと、第1の下側端子211b及び第2の下側端子212bとの間では電圧差が大きいため、実用上は、ある程度の間隔を維持するのが好ましい。
【0044】
サブコイルアセンブリ210はメインコイル200と誘導結合し、サブコイルアセンブリ210には、メインコイル200に流れる電流によって発生した磁界を打ち消す向きの電流が流れる。コンデンサ220の容量を制御することによって、メインコイル200に流れる電流に対してサブコイルアセンブリ210に流れる電流の向きや大きさを制御することができる。
【0045】
<アンテナの作用>
以上のように構成されたアンテナ14では、メインコイル200に流れる電流と、サブコイルアセンブリ210に流れる電流とによって、Z軸方向に磁界が発生し、発生した磁界により、プラズマ処理チャンバ10内に誘導電界が発生する。プラズマ処理チャンバ10内に発生した誘導電界により、ガス導入部13からプラズマ処理チャンバ10内に供給された処理ガスがプラズマ化する。そして、プラズマに含まれるイオンや活性種によって、中央領域111a上の基板Wに対して、エッチングや成膜処理などのプラズマ処理が施される。
【0046】
<アンテナの効果>
次に、以上のように構成されたアンテナ14の効果について説明する。本実施形態では、アンテナ14の一次的な効果として、次の4つを享受することができる。
(1)サブコイルアセンブリ210の電界強度を低減することができる。
(2)サブコイルアセンブリ210の下面のコイル構造の対称性を向上させることができる。
(3)メインコイル200の端点の電界強度を低減させることができる。
(4)サブコイルアセンブリ210を流れる電流(以下、「引き込み電流」という。)を小さく抑えつつ、基板Wに対するプラズマ分布の均一性を向上させることができる。
【0047】
(1)サブコイルアセンブリ210の電界低減
従来のように、例えばアンテナの電界強度が高く、誘電体窓の下面の電位が高い場合、誘電体窓の下面、すなわちプラズマ処理空間側の面に対してプラズマが衝突し、消耗を生じさせパーツの寿命を短くする。この現象は、天板材料のコンタミとして計測することができる。また、同様に電界強度がプラズマに影響を及ぼす領域では、電界によるプラズマ密度の変化によりウェハに対するプラズマ分布に不均一性が生じる。したがって、誘電体窓の下面を低い電位に抑える必要がある。
【0048】
この点、本実施形態では、サブコイルアセンブリ210において、第1の螺旋状コイル211の第1の下側端子211bはグランド電位に接続され、第2の螺旋状コイル212の第2の下側端子212bはグランド電位に接続されている。すなわち、サブコイルアセンブリ210の下面がグランド電位に接続されているので、サブコイルアセンブリ210の電界強度を低減することができる。したがって、誘電体窓10aの下面を低い電位に抑えることができ、その結果、コンタミの発生を抑制することができる。また、基板Wに対するプラズマ分布を周方向に均一にすることも可能となる。
【0049】
また、本実施形態のサブコイルアセンブリ210において、第1の螺旋状コイル211の下面と第2の螺旋状コイル212の下面は、サブコイルアセンブリ210の中心に対して対称形状に形成されている。したがって、サブコイルアセンブリ210において下面のグランド電位を周方向に均一にすることができる。
【0050】
(2)サブコイルアセンブリ210の下面の対称性向上
本実施形態では、サブコイルアセンブリ210は2重らせん構造を有し、さらに第1の螺旋状コイル211の下面と第2の螺旋状コイル212の下面は、サブコイルアセンブリ210の中心に対して対称形状に形成されている。したがって、サブコイルアセンブリ210において、周方向に流れる電流を一様にすることができ、誘電体窓10aの下面の電位を周方向に均一にすることができる。その結果、基板Wに対するプラズマ分布を周方向に均一にすることができる。
【0051】
本発明者らは、従来の特許文献1に記載された内側コイル(1重リング状のコイル)を比較例として、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合について、プラズマ処理時に誘電体窓10aの下面を流れる電流を調べる実験を行った。この電流は、誘電体窓10aの下面に設置された面内分布計測用の電流分布センサーにより計測した。本実験では、比較例の外側コイルに供給するRF電力と、本実施形態のメインコイル200に供給するRF電力とを同じにした。その結果、比較例の誘電体窓を流れる電流分布の面内対称性が不均一であったのに対し、本実施形態の本実施形態の誘電体窓10aの下面に流れる電流分布の面内対称性を均一にすることができた。
【0052】
具体的には、本実施形態の誘電体窓10aに流れる電流値の周方向の最大標準偏差は、比較例に対して約55%に抑えることができた。なお、本実施形態のサブコイルアセンブリ210において第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212のターン数は1.5ターンであったが、2.5ターンの場合についても調べたところ、上記最大標準偏差を約53%にさらに抑えることができた。
【0053】
また、上記実験において電流値を比較したところ、本実施形態の誘電体窓10aに流れる電流値は、比較例に対して約45%に抑えることができた。換言すれば、本実施形態によれば、従来に比較して、誘電体窓10aの下面の電流値を抑えつつ、サブコイルアセンブリ210に流れる引き込み電流を同等にすることができる。その結果、アンテナ14に供給するRF電力を大きくすることができる。
【0054】
(3)メインコイル200の端点電界低減
本発明者らは、従来の特許文献1に記載された内側コイルを比較例として、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合について、プラズマ処理時の、誘電体窓10aの下面におけるイオンのエネルギーを調べる実験を行った。本実験では、従来の内側コイルと本実施形態のサブコイルアセンブリ210のそれぞれに対して、引き込み電流を流した場合と流さない場合について比較を行った。図9は比較例の実験結果を示し、図10は本実施形態の実験結果を示す。図9及び図10において、横軸(Energy)は誘電体窓10aの下面におけるイオンのエネルギーを示し、縦軸(Population)は誘電体窓10aの下面に到達するイオンの個数を示す。なお、イオンのエネルギーと個数の測定点は、比較例では外側コイルの端部下方における誘電体窓の下面であり、本実施形態ではメインコイル200の端部下方における誘電体窓10aの下面である。
【0055】
比較例では図9を参照すると、内側コイルに引き込み電流を流した場合と流さない場合において、イオンのエネルギーが大きい側のグラフピーク(図中の点)は、ほとんど変化がない(図中の矢印)。したがって、外側コイルの端点の電界強度を低減することができなかった。
【0056】
一方、本実施形態では図10を参照すると、サブコイルアセンブリ210に引き込み電流を流した場合、引き込み電流を流さない場合に比べて、イオンのエネルギーが大きい側のグラフピーク(図中の点)は、イオンのエネルギーが小さくなるようにシフトする(図中の矢印)。したがって、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合、メインコイル200の端点の電界強度を低減することができた。
【0057】
さらに本発明者らは、従来の特許文献1に記載された内側コイルを比較例として、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合について、プラズマ処理時のコンタミ量を調べる実験を行った。比較例と本実施形態において誘電体窓10aの材料にはイットリアが含まれており、本実験では、誘電体窓10aがスパッタされることによって発生するイットリア系のコンタミ量を測定した。その結果、本実施形態における単位面積当たりのコンタミ量(コンタミ個数)は、比較例に対して約20%に抑えられていた。換言すれば、本実施形態では、メインコイルの端点の電界強度を低減させることができ、その結果、コンタミ量を減少させることができた。
【0058】
なお、本実験では、比較例の外側コイルと本実施形態のメインコイル200はそれぞれ、誘電体窓10aから離間して配置されている。この点、本発明者らが鋭意検討したところ、比較例の外側コイルを誘電体窓10aに接触させて設けた場合、外側コイルを離間させた場合に比べて、単位面積当たりのコンタミ量が増加することが分かった。したがって、かかる観点から、本実施形態のメインコイル200は、誘電体窓10aから離間して上方に配置されているのが好ましい。
【0059】
(4)小さい引き込み電流でのプラズマ分布の均一性向上
本実施形では、サブコイルアセンブリ210は2重らせん構造を有しているので、サブコイルアセンブリ210のインダクタンスを増加させることができる。その結果、サブコイルアセンブリ210を流れる引き込み電流を小さく抑えつつ、基板Wに対するプラズマ分布の均一性を向上させることができる。
【0060】
本発明者らは、従来の特許文献1に記載された内側コイルを比較例として、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合について、プラズマ処理時に内側コイル、サブコイルアセンブリ210のそれぞれを流れる電流を調べる実験を行った。本実験では、比較例の外側コイルに供給するRF電力と、本実施形態のメインコイル200に供給するRF電力とが同じにした。その結果、比較例の内側コイルの電流値に比べて、本実施形態のサブコイルアセンブリ210の電流値を小さく抑えることができた。
【0061】
また本発明者らは、従来の特許文献1に記載された内側コイルを比較例として、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合について、プラズマ処理時の引き込み電流と、基板Wに対するイオンの分布(ウェハ径方向のイオン分布)との関係を調べる実験を行った。本実験では、イオン分布として、基板Wを流れる電流値を測定した。かかる場合、比較例では、内側コイルを流れる引き込み電流の電流値を変動させても、ウェハに入射するイオン分布にはほぼ変動がなかった。一方、本実施形態では、サブコイルアセンブリ210を流れる引き込み電流の電流値を変動させた場合、基板Wに対するイオンの量が増加し、イオン分布が変動した。ここで、基板W上のイオン電流の大きさは、基板W上のプラズマの密度と相関がある。したがって、本実施形態では、引き込み電流の電流値を調整することで、基板Wに対するイオン分布、すなわちプラズマ分布を制御することができた。換言すれば、基板Wに対するプラズマ分布の周方向に均一性を確保するための、プラズマを制御する幅を広げることができ、プラズマ分布のコントロール性を向上させることができる。
【0062】
また本発明者らは、従来の特許文献1に記載された内側コイルを比較例として、本実施形態のサブコイルアセンブリ210を用いた場合について、プラズマ処理時の引き込み電流と、基板Wに対するイオン分布との関係を調べる実験を行った。本実験では、イオン分布として、基板Wを流れる電流値の3σを算出した。そして本実験においては、上記3σが最小となる場合の引き込み電流の電流値、すなわちイオン分布が均一となる場合の引き込み電流の電流値が最適値になる。その結果、本実施形態において最小3σに対応する引き込み電流の最適電流値は、比較例に対して小さく抑えることができた。換言すれば、本実施形態では、小さい引き込み電流で、基板Wに対するプラズマ分布の周方向に均一性を向上させることができた。
【0063】
なお、本実施形態のサブコイルアセンブリ210において、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212のターン数(巻き数)は1.5ターンであったが、上述したように1以上の任意のターン数に設定できる。特に小さい引き込み電流でプラズマ分布の均一性を向上させるという観点からは、ターン数は多い方が好ましく、例えば1.5ターン~2.5ターンであってもよい。
【0064】
以上の実施形態によれば、サブコイルアセンブリ210が2重らせん構造を有し、サブコイルアセンブリ210の下面がグランド電位に接続されているので、メインコイル200の端点の電界強度を低減することができ、またプラズマ分布のコントロール性を向上させることができる。したがって、プラズマ処理を行う際のコンタミの発生を抑制しつつ、基板Wに対するプラズマ分布の均一性を向上させることができる。
【0065】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、サブコイルアセンブリ210は略円筒形の2重らせん構造を有していたが、サブコイルアセンブリ210の構成はこれに限定されない。図11図13は、他の実施形態にかかるサブコイルアセンブリ210の構成の概略を示す斜視図である。
【0066】
図11に示すようにサブコイルアセンブリ210は、多重らせん構造を有していてもよい。サブコイルアセンブリ210は、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212に加えて、第3の螺旋状コイル230を有している。第3の螺旋状コイルは少なくとも1つのターン230tを有する。側面視において第1の螺旋状コイル211の各ターン211t、第2の螺旋状コイル212の各ターン212t、及び第3の螺旋状コイル230の各ターン230tは鉛直方向に順に配置されている。第3の螺旋状コイル230の外形の中心軸はZ軸に一致し、第1の螺旋状コイル211、第2の螺旋状コイル212及び第3の螺旋状コイル230は同軸上に配置されている。第3の螺旋状コイル230は、平面視において略円形に形成されている。また、第3の螺旋状コイル230の径は、鉛直方向に第1の螺旋状コイル211の径及び第2の螺旋状コイル212の径と同じである。このようにサブコイルアセンブリ210は、略円筒形の3重らせん構造を有している。
【0067】
第1の螺旋状コイル211の上面、第2の螺旋状コイル212の上面及び第3の螺旋状コイル230の上面は、サブコイルアセンブリ210の中心に対して対称形状に形成されている。すなわち、第1の螺旋状コイル211の上面、第2の螺旋状コイル212の上面及び第3の螺旋状コイル230の上面はそれぞれ、中心角が約120度の略円弧形状を有している。
【0068】
また、第1の螺旋状コイル211の下面、第2の螺旋状コイル212の下面及び第3の螺旋状コイル230の下面は、サブコイルアセンブリ210の中心に対して対称形状に形成されている。すなわち、第1の螺旋状コイル211の下面、第2の螺旋状コイル212の下面及び第3の螺旋状コイル230の下面の下面はそれぞれ、中心角が約120度の略円弧形状を有している。
【0069】
第3の螺旋状コイル230は、上端部に第3の上側端子230aを有し、下端部に第3の下側端子230bを有する。第1の上側端子211a、第2の上側端子212a及び第3の上側端子230aはサブコイルアセンブリ210の中心に対して対称位置、すなわち隣接する上側端子の中心角が約120度の位置に配置されている。第1の下側端子211b、第2の下側端子212b及び第3の下側端子230bもサブコイルアセンブリ210の中心に対して対称位置、すなわち隣接する下側端子の中心角が約120度の位置に配置されている。
【0070】
第1の上側端子211a、第2の上側端子212a及び第3の上側端子230aは、図示しないが、接続部材213によって接続されている。接続部材213は、接続部材213は、コンデンサ220を介してグランド電位に接続されて接地される。すなわち、第1の上側端子211a、第2の上側端子212a及び第3の上側端子230aは、共通のコンデンサ220を介してグランド電位に接続されている。
【0071】
第3の下側端子230bは、接続部材231を介してグランド電位に接続されて接地される。
【0072】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。すなわち、サブコイルアセンブリ210が3重らせん構造を有し、サブコイルアセンブリ210の下面がグランド電位に接続されているので、メインコイル200の端点の電界強度を低減することができ、またプラズマ分布のコントロール性を向上させることができる。なお、本実施形態では、サブコイルアセンブリ210は3重らせん構造を有していたが、4重らせん構造以上の多重らせん構造を有していてもよい。
【0073】
図12に示すようにサブコイルアセンブリ210は、略円錐形状を有していてもよい。このサブコイルアセンブリ210では、同一高さにおいて、第1の螺旋状コイル211の径と第2の螺旋状コイル212の径は同じである。また、第1の螺旋状コイル211の各ターン211tの径と第2の螺旋状コイル212の各ターン212tの径は鉛直方向に異なる。図12に示す例では、第1の螺旋状コイル211及び第2の螺旋状コイル212の径は、下方に向かって徐々に小さくなっている。なお、第1の螺旋状コイル211の下面と第2の螺旋状コイル212の下面は、サブコイルアセンブリ210の中心に対して対称形状に形成されている。
【0074】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。すなわち、サブコイルアセンブリ210が2重らせん構造を有し、サブコイルアセンブリ210の下面がグランド電位に接続されているので、メインコイル200の端点の電界強度を低減することができ、またプラズマ分布のコントロール性を向上させることができる。なお、本実施形態では、サブコイルアセンブリ210は略円錐形状を有していたが、サブコイルアセンブリ210の形状はこれに限定されない。
【0075】
図13に示すようにサブコイルアセンブリ210は、同一高さ位置において第1の螺旋状コイル211の径と第2の螺旋状コイル212の径が異なっていてもよい。図示の例においては、第1の螺旋状コイル211の径は上方から下方に向けて徐々に大きくなっている。一方、第2の螺旋状コイル212の径は上方から下方に向けて徐々に小さくなっている。なお、サブコイルアセンブリ210の下面においては、第1の螺旋状コイル211の径と第2の螺旋状コイル212の径は同じである。また、第1の螺旋状コイル211の下面と第2の螺旋状コイル212の下面は、サブコイルアセンブリ210の中心に対して対称形状に形成されている。
【0076】
本実施形態においても、上記実施形態と同様の効果を享受することができる。すなわち、サブコイルアセンブリ210が2重らせん構造を有し、サブコイルアセンブリ210の下面がグランド電位に接続されているので、メインコイル200の端点の電界強度を低減することができ、またプラズマ分布のコントロール性を向上させることができる。
【0077】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、サブコイルアセンブリ210はメインコイル200の径方向内側に配置されていたが、径方向外側に配置されていてもよい。また、サブコイルアセンブリ210は、メインコイル200の径方向内側と径方向外側の双方に配置されていてもよい。すなわち、アンテナアセンブリは、メインコイル200の径方向内側に配置される第1のサブコイルアセンブリと径方向外側に配置される第2の螺旋状コイルアセンブリとを有してもよい。さらに、サブコイルアセンブリ210は、メインコイル200の下方及び/又は上方に配置されていてもよい。
【0078】
<他の実施形態>
以上の実施形態のサブコイルアセンブリ210では、第1の螺旋状コイル211の第1の上側端子211aと第2の螺旋状コイル212の第2の上側端子212aは、接続部材213を介して共通のコンデンサ220に接続されていたが、別々のコンデンサ(図示せず)に接続されていてもよい。かかる場合、第1の上側端子211aは第1のコンデンサ(図示せず)を介してグランド電位に接続され、第2の上側端子212aは第2のコンデンサ(図示せず)を介してグランド電位に接続される。
【0079】
<他の実施形態>
以上の実施形態のサブコイルアセンブリ210では、接続部材213は平面視において略Y字に形成されていたが、接続部材213の平面形状はこれに限定されない。例えば、接続部材213の平面形状は略U字であってもよい。また、上述したように、サブコイルアセンブリ210はメインコイル200と誘導結合し、サブコイルアセンブリ210には、メインコイル200に流れる電流によって発生した磁界を打ち消す向きの電流が流れる。そこで、接続部材213は、この磁界を妨げないように、第1の上側端子211aと第2の下側端子212bから鉛直上方に延伸し、十分な離間距離を確保して配置されていてもよい。
【0080】
<他の実施形態>
以上の実施形態のプラズマ処理装置1では、誘電体窓10aの中央開口部に設けられたガス導入部13からプラズマ処理空間10sに処理ガスが供給されるが、ガス導入部13に加えて、Z軸へ向かって処理ガスを噴射する複数の噴射口が、プラズマ処理チャンバ10の側壁に沿って周方向に設けられてもよい。
【0081】
<他の実施形態>
以上の実施形態のサブコイルアセンブリ210では、接続部材213はコンデンサ220を介してグランド電位に接続され、接続部材214、215はグランド電位に接続されていたが、これら接続部材213~215の接続先はこれに限定されない。図14は、他の実施形態にかかるサブコイルアセンブリ210の構成の概略を示す斜視図である。
【0082】
図14に示すようにサブコイルアセンブリ210は、導電性筐体250内に設けられる。導電性筐体250は、プラズマ処理チャンバ10の上部又は上方に設けられる。導電性筐体250は、グランド電位に接続される。導電性筐体250は、天板251と側壁252を有する。なお、図14の例では、技術の理解を容易にするため、サブコイルアセンブリ210の左右2つの側壁252を図示し、サブコイルアセンブリ210の前面と後面の側壁252の図示を省略している。
【0083】
サブコイルアセンブリ210の接続部材213~215はそれぞれ、導電性筐体250の天板251に接続される。すなわち、接続部材213~215は、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212の最上部よりも高い位置で導電性筐体250に接続される。接続部材213は、コンデンサ253を介して天板251に接続される。なお、接続部材214、215は、第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212の最上部よりも高い位置において、側壁252に接続されてもよい。
【0084】
かかる場合、サブコイルアセンブリ210は導電性筐体250を介してグランド電位に接続され、当該導電性筐体250を電流の分配機構として用いることができる。
【0085】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態にかかるアンテナ14の構成について説明する。上記実施形態のプラズマ処理装置1では、径方向外側に配置されたメインコイル200がRF電位に接続され、径方向内側に配置されたサブコイルアセンブリ210がグランド電位に接続された。これに対して、他の実施形態では、径方向内側に配置されたメインコイルアセンブリがRF電位に接続され、径方向外側に配置された少なくとも1つのサブコイルがグランド電位に接続される。
【0086】
図15図20は、他の実施形態にかかるアンテナ14の構成の概略を示す斜視図であり、それぞれ他の実施形態の第1例~第6例を示している。図15図20に示すようにアンテナ14は、メインコイルアセンブリ300と少なくとも1つのサブコイル(第1のサブコイル310、第2のサブコイル320)を有するアンテナアセンブリである。
【0087】
メインコイルアセンブリ300は、第1例~第6例に共通に設けられる。メインコイルアセンブリ300は、上記実施形態におけるサブコイルアセンブリ210と同じ構成を有する。すなわち、メインコイルアセンブリ300は、第1の螺旋状コイル301、第2の螺旋状コイル302及び接続部材303~305を有している。これら第1の螺旋状コイル301、第2の螺旋状コイル302及び接続部材303~305はそれぞれ、上記実施形態における第1の螺旋状コイル211、第2の螺旋状コイル212及び接続部材213~215に対応している。
【0088】
第1の螺旋状コイル301は、1以上のターン301tを有し、第2の螺旋状コイル302は、1以上のターン302tを有する。第1の螺旋状コイル301の各ターン301tと第2の螺旋状コイル302の各ターン302tは、側面視において鉛直方向に交互に配置されている。
【0089】
第1の螺旋状コイル301は、上端部に第1の上側端子301aを有し、下端部に第1の下側端子301bを有する。第2の螺旋状コイル302は、上端部に第2の上側端子302aを有し、下端部に第2の下側端子302bを有する。第1の上側端子301aと第2の上側端子302aは、第1の導電性部材である接続部材303によって接続されている。接続部材303は、RF電力供給部の第1のRF生成部に接続されており、すなわちRF電位に接続される。第1の下側端子301bは、第2の導電性部材である接続部材304を介してグランド電位に接続されて接地される。第2の下側端子302bは、第3の導電性部材である接続部材305を介してグランド電位に接続されて接地される。なお、接続部材304と接続部材305は、図示のように別々に設けられていてもよいし、あるいは一体に設けられていてもよい。
【0090】
なお、第1の螺旋状コイル301と第2の螺旋状コイル302のその他の構成は、上記実施形態における第1の螺旋状コイル211と第2の螺旋状コイル212の構成と同様であるので説明を省略する。
【0091】
以上のように第1例~第6例のいずれにおいても、メインコイルアセンブリ300は、上記実施形態におけるサブコイルアセンブリ210と同じ構成を有するので、当該実施形態の上記(1)~(4)と同様の効果を享受することができる。
【0092】
少なくとも1つのサブコイル(サブコイル310、320)は、メインコイルアセンブリ300を囲うように、当該メインコイルアセンブリ300の径方向外側に配置される。サブコイル310、320は、第1例~第6例のそれぞれにおいて異なる構成を有する。以下、これら第1例~第6例について説明する。なお、図15図20に示す例では、技術の理解を容易にするため、サブコイル310、320を線で表現しているが、実際には任意の断面形状を有するコイルである。
【0093】
[他の実施形態の第1例]
第1例では、図15に示すように少なくとも1つのサブコイルは、第1のサブコイル310を含む。第1のサブコイル310は、略円形に形成された平面コイルである。第1のサブコイル310の外形の中心軸はZ軸に一致し、メインコイルアセンブリ300と同軸上に配置されている。
【0094】
第1のサブコイル310は、第1の端子310aと第2の端子310bを有する。第1の端子310aと第2の端子310bは、コンデンサ330を介して接続される。コンデンサ330は、可変容量コンデンサである。
【0095】
第1のサブコイル310はメインコイルアセンブリ300と誘導結合し、第1のサブコイル310には、メインコイルアセンブリ300に流れる電流によって発生した磁界を打ち消す向きの電流が流れる。コンデンサ330の容量を制御することによって、メインコイルアセンブリ300に流れる電流に対して第1のサブコイル310に流れる電流の向きや大きさを制御することができる。
【0096】
[他の実施形態の第2例]
第2例では、図16に示すように少なくとも1つのサブコイルは、第1のサブコイル310を含む。第1のサブコイル310は、第1例と同様の構成を有し、第1の端子310aと第2の端子310bを有する。
【0097】
第1の端子310aは、コンデンサ331を介してグランド電位に接続される。コンデンサ331は、可変容量コンデンサである。第2の端子310bは、コンデンサ332を介してグランド電位に接続される。コンデンサ332は、固定容量コンデンサである。なお、コンデンサ332は、可変容量コンデンサであってもよい。また、コンデンサ332は必ずしも必要ではなく、省略可能である。
【0098】
[他の実施形態の第3例]
第3例では、図17に示すように少なくとも1つのサブコイルは、第1のサブコイル310と第2のサブコイル320を含む。第1のサブコイル310は、第1例と同様の構成を有し、第1の端子310aと第2の端子310bを有する。第1の端子310aと第2の端子310bは、コンデンサ330を介して接続される。
【0099】
第2のサブコイル320は、略円形に形成された平面コイルである。第2のサブコイル320は、第1のサブコイル310と同じ形であり、且つ、同じ径を有する。第2のサブコイル320の外形の中心軸はZ軸に一致し、第1のサブコイル310と同軸上に配置されている。
【0100】
第2のサブコイル320は、第3の端子320aと第4の端子320bを有する。第3の端子320aと第4の端子320bは、コンデンサ333を介して接続される。コンデンサ333は、可変容量コンデンサである。
【0101】
第2のサブコイル320は、第1のサブコイル310と同様に、メインコイルアセンブリ300と誘導結合し、第2のサブコイル320には、メインコイルアセンブリ300に流れる電流によって発生した磁界を打ち消す向きの電流が流れる。コンデンサ333の容量を制御することによって、メインコイルアセンブリ300に流れる電流に対して第2のサブコイル320に流れる電流の向きや大きさを制御することができる。
【0102】
第1のサブコイル310は、第1のコイル部分311と第2のコイル部分312を有する。第1のコイル部分311は、第1の端子310aから第1のサブコイル310の中点までの半円部分である。第2のコイル部分312は、第2の端子310bから第1のサブコイル310の中点までの半円部分である。第2のサブコイル320は、第3のコイル部分321と第4のコイル部分322を有する。第3のコイル部分321は、第3の端子320aから第2のサブコイル320の中点までの半円部分である。第4のコイル部分322は、第4の端子320bから第2のサブコイル320の中点までの半円部分である。第1のコイル部分311は、第3のコイル部分321の径方向外側に配置される。第2のコイル部分312は、第4のコイル部分322の径方向内側に配置される。
【0103】
第1のサブコイル310における第1の端子310a及び第2の端子310bと、第2のサブコイル320における第3の端子320a及び第4の端子320bとは、中心を挟んで対称位置(中心角が約180度の位置)に配置されている。すなわち、第1のサブコイル310(第1の端子310a及び第2の端子310b)と第2のサブコイル320(第3の端子320a及び第4の端子320b)は、シンメトリーに配置されている。また、第1のサブコイル310及び第2のサブコイル320は、同じ大きさ及び同じ形を有し、これらが等間隔で入れ子状に配置されている。
【0104】
ここで、第1の端子310a及び第2の端子310bと、第3の端子320a及び第4の端子320bは特異点となり、電流が当該特異点に向かって偏るおそれがある。この点、上記のように特異点がシンメトリーに配置されていれば、第1のサブコイル310と第2のサブコイル320に流れる電流の偏りを抑制でき、磁界強度の周方向均一性を向上させることができる。
【0105】
[他の実施形態の第4例]
第4例では、図18に示すように少なくとも1つのサブコイルは、第1のサブコイル310と第2のサブコイル320を含む。第3例と同様に、第1のサブコイル310は第1の端子310aと第2の端子310bを有し、第2のサブコイル320は第3の端子320aと第4の端子320bを有する。また第3例と同様に、第1の端子310a及び第2の端子310bと、第3の端子320a及び第4の端子320bはシンメトリーに配置されている。
【0106】
第2の端子310bと第3の端子320aはそれぞれ、第1の導電性プレート340に接続される。第1の導電性プレート340は、平面視において略円環形状を有する。第1の端子310aと第4の端子320bはそれぞれ、第2の導電性プレート341に接続される。第2の導電性プレート341は、平面視において略円環形状を有し、第1の導電性プレート340の径方向外側に配置される。第1の導電性プレート340の外形の中心軸と第2の導電性プレート341の外形の中心軸はそれぞれZ軸に一致し、同軸上に配置される。なお、第1の導電性プレート340と第2の導電性プレート341の平面形状は、本例に限定されない。
【0107】
第1の導電性プレート340は、コンデンサ342を介してグランド電位に接続される。コンデンサ342は、可変容量コンデンサである。第2の導電性プレート341は、コンデンサ343を介してグランド電位に接続される。コンデンサ343は、固定容量コンデンサである。なお、コンデンサ343は、可変容量コンデンサであってもよい。また、コンデンサ343は必ずしも必要ではなく、省略可能である。
【0108】
第1のサブコイル310に流れる電流は、第1の導電性プレート340と第2の導電性プレート341に分配される。また、第2のサブコイル320に流れる電流も、第1の導電性プレート340と第2の導電性プレート341に分配される。そして、分配された電流は、第1の導電性プレート340と第2の導電性プレート341を周方向に流れるので、電流の周方向の偏りを抑制でき、磁界強度の周方向均一性をさらに向上させることができる。
【0109】
[他の実施形態の第5例]
第5例では、図19に示すように少なくとも1つのサブコイルは、第1のサブコイル310と第2のサブコイル320を含む。第3例と同様に、第1のサブコイル310は第1の端子310aと第2の端子310bを有し、第2のサブコイル320は第3の端子320aと第4の端子320bを有する。
【0110】
第1のサブコイル310において、第1の端子310aは開放される。また、第2の端子310bは、コンデンサ350を介してグランド電位に接続される。コンデンサ350は、可変容量コンデンサである。また、第2のサブコイル320において、第3の端子320aは、コンデンサ351を介してグランド電位に接続される。コンデンサ351は、可変容量コンデンサである。また、第4の端子320bは開放される。
【0111】
第1のサブコイル310の第1の端子310aが開放端であるので、当該第1の端子310aでは電圧が上昇し、プラズマ着火が容易になる。同様に、第2のサブコイル320の第4の端子320bが開放端であるので、当該第4の端子320bでは電圧が上昇し、プラズマ着火が容易になる。
【0112】
また、第1のサブコイル310の第2の端子310bと、第2のサブコイル320の第3の端子320aは、中心を挟んで対称位置、すなわちシンメトリーに配置されている。したがって、第1のサブコイル310と第2のサブコイル320に流れる電流の偏りを抑制でき、磁界強度の周方向均一性を向上させることができる。
【0113】
[他の実施形態の第6例]
第6例では、図20に示すように少なくとも1つのサブコイルは、第1のサブコイル310と第2のサブコイル320を含む。第5例と同様に、第1のサブコイル310は第1の端子310aと第2の端子310bを有し、第2のサブコイル320は第3の端子320aと第4の端子320bを有する。また第5例と同様に、第1の端子310a及び第4の端子320bは開放端であり、第2の端子310bと第3の端子320aはシンメトリーに配置されている。
【0114】
第2の端子310bと第3の端子320aはそれぞれ、導電性プレート360に接続される。導電性プレート360は、平面視において略円環形状を有する。導電性プレート360の外形の中心軸はZ軸に一致し、メインコイルアセンブリ300と同軸上に配置されている。導電性プレート360は、コンデンサ361を介してグランド電位に接続される。コンデンサ361は、可変容量コンデンサである。
【0115】
第6例においては、第5例と同様の効果を享受することができる。しかも、高価な可変容量コンデンサの数を減らすことができるので、装置コストを低廉化することができる。
【0116】
なお、以上の他の実施形態の第1例~第6例において、メインコイルアセンブリ300は導電性プレートを介してRF電力供給部の第1のRF生成部に接続されていてもよい。以下、図21に示すように、第1例において導電性プレート370を設けた場合について説明するが、第2例~第5例においても同様である。
【0117】
図21に示すようにメインコイルアセンブリ300の接続部材303は、導電性プレート370を介して、RF電力供給部の第1のRF生成部に接続される。導電性プレート370は、ガス導入部13における略円筒状の中央ガス注入部を囲むように中央ガス注入部の周囲に配置される。導電性プレート370は平面視において略円形状を有し、中央開口部371が形成される。なお、導電性プレート370の形状は特に限定されるものではなく、例えば矩形状であってもよい。
【0118】
かかる場合、第1のRF生成部からRF電力が供給されると、導電性プレート370において周方向に電流が流れる。したがって、磁界強度の周方向均一性をさらに向上させることができる。
【0119】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態にかかるアンテナ14の構成について説明する。上記実施形態のプラズマ処理装置1では、メインコイル200又はメインコイルアセンブリ300がRF電位に接続され、サブコイルアセンブリ210又はサブコイル310、320がグランド電位に接続された。これに対して、他の実施形態では、メインコイルアセンブリとサブコイルともにRF電位に接続される。図22は、他の実施形態にかかるアンテナ14の構成の概略を示す斜視図である。
【0120】
図22に示すように、アンテナ14は、メインコイルアセンブリ300、第1のサブコイル310及び第2のサブコイル320を有するアンテナアセンブリである。メインコイルアセンブリ300は、上記他の実施形態の第1例~第6例のメインコイルアセンブリ300と同じ構成を有する。第3例と同様に、第1のサブコイル310は第1の端子310aと第2の端子310bを有し、第2のサブコイル320は第3の端子320aと第4の端子320bを有する。また第3例と同様に、第1の端子310a及び第2の端子310bと、第3の端子320a及び第4の端子320bはシンメトリーに配置されている。
【0121】
第1のサブコイル310において、第1の端子310aは、コンデンサ380を介してグランド電位に接続される。コンデンサ380は、可変容量コンデンサである。また、第2の端子310bは、RF電力供給部の第1のRF生成部に接続される。第2のサブコイル320において、第3の端子320aは、RF電力供給部の第1のRF生成部に接続される。また、第4の端子320bは、コンデンサ381を介してグランド電位に接続される。コンデンサ381は、可変容量コンデンサである。なお、第2の端子310b及び第3の端子320aが接続される第1のRF生成部は、メインコイルアセンブリ300の接続部材303が接続される第1のRF生成部と共通している。また、第1の端子310aと第4の端子320bは、共通の導電性プレート(図示せず)に接続され、共通のコンデンサ(図示せず)を介してグランド電位に接続されてもよい。
【0122】
かかる場合、第1のサブコイル310及び第2のサブコイル320は、メインコイルアセンブリ300と誘導結合しない。そして、メインコイルアセンブリ300にRF電力が供給されて電流が流れるとともに、第1のサブコイル310及び第2のサブコイル320にもRF電力が供給されて電流が流れる。
【0123】
なお、本実施形態では、メインコイルアセンブリ300と、第1のサブコイル310及び第2のサブコイル320は、共通のRF電力供給部に接続されたが、それぞれ別々のRF電力供給部に接続されてもよい。
【0124】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
10a 誘電体窓
30 電力供給部
200 メインコイル
210 サブコイルアセンブリ
211 第1の螺旋状コイル
212 第2の螺旋状コイル
220 コンデンサ
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22