(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241101BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241101BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241101BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241101BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/205
H01L21/31 C
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2019138077
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2022-04-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂木 卓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信峰
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】中野 浩昌
【審判官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-126197(JP,A)
【文献】特開2018-37584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0051312(US,A1)
【文献】国際公開第2000/75972(WO,A1)
【文献】特開2018-10992(JP,A)
【文献】特開2019-114790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/3065
H01L21/205
H01L21/31
H05H1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
被処理基板を搬入するための開口部を有する円筒状のチャンバと、
前記チャンバ内に配置されるサセプタと、
前記チャンバ内に配置された前記サセプタの上面周囲に位置するエッジリングと、
前記エッジリングの周囲に位置するカバーリングと、
前記開口部を開閉するシャッタ機構と、を有し、
前記シャッタ機構は、
前記チャンバ上部の内壁に沿って設けられた導電性の
環状の上部部材と接触する導通面に、
環状に配置される導電性部材を有する
環状の弁体と、
前記弁体の下部に接続され、前記弁体を昇降させる2つ以上の昇降機構と、
を備え、
前記開口部は、前記カバーリングを搬送可能な寸法を有し、
前記導電性部材は、前記弁体の上端部に設けられ、
前記弁体と前記上部部材とは、前記弁体を上昇させて前記開口部を閉じた場合に、前記導通面は前記上部部材と上下方向に当接し、前記導電性部材により電気的に導通する、
基板処理装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、3つ以上である、
請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、等間隔で配置される、
請求項1
または2に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャッタ機構および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス用の被処理基板であるウエハに所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理装置は、例えばウエハを収容するチャンバを備え、チャンバ内には、ウエハを載置し下部電極として機能する載置台と、載置台に対向する上部電極とが配置されている。また、載置台および上部電極の少なくとも一方には高周波電源が接続され、載置台および上部電極は処理室内空間に高周波電力を印加する。プラズマ処理装置では、処理室内空間に供給された処理ガスを高周波電力によってプラズマにしてイオン等を発生させ、発生させたイオン等をウエハに導いて、ウエハに所望のプラズマ処理、例えばエッチング処理を施す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、開口部を拡大できるとともに、弁体を均一な力で押し付けることができるシャッタ機構および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるシャッタ機構は、基板処理装置の円筒状のチャンバの開口部を開閉するシャッタ機構であって、弁体と、昇降機構とを有する。弁体は、チャンバの内周のうち、半分以上の長さを有する。昇降機構は、弁体の下部に接続され、弁体を昇降させる2つ以上の昇降機構である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、開口部を拡大できるとともに、弁体を均一な力で押し付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるシャッタ機構の断面の一例を示す部分拡大図である。
【
図3】
図3は、本実施形態におけるシャッタ機構の外観の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態におけるチャンバの外観の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態におけるチャンバの外観の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態におけるチャンバの外観の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示するシャッタ機構および基板処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0009】
プラズマ処理装置では、チャンバの側壁に、半導体ウエハの搬入・搬出用の開口部が設けられ、開口部を開閉するゲートバルブが配置される。ゲートバルブの開閉により半導体ウエハの搬入および搬出が行われる。チャンバ内には、エッチング副生物(デポ)が付着することを防止するデポシールドがチャンバの内壁に沿って設けられ、チャンバの開口部の位置に合わせて、デポシールドにも開口部が設けられる。
【0010】
ゲートバルブは、チャンバの外側(搬送室側)に配置されているので、開口部が搬送室側に突出した空間が形成される。チャンバ内で生成されたプラズマが開口部の空間まで拡散すると、プラズマの均一性が悪化したり、そのプラズマによりゲートバルブのシール部材が劣化する。そのため、チャンバおよびデポシールドの開口部は、シャッタによって遮断されるように構成される。また、シャッタは、例えばシャッタの駆動部が開口部の下方に配置され、駆動部により開閉駆動される。
【0011】
ところが、近年、チャンバの開口部からウエハの外径を超えるチャンバ内パーツ等を搬送することが求められ、開口部の拡大およびシャッタの弁体の大型化が求められている。しかしながら、シャッタの弁体を大型化すると、弁体が押し付けられるデポシールドとの接触面積が増加し、弁体とデポシールドとの間の導通を十分に確保出来ない場合がある。そこで、開口部を拡大できるとともに、弁体を均一な力で押し付けることが期待されている。
【0012】
[基板処理装置の構成]
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の一例を示す図である。なお、以下では、基板処理装置がプラズマ処理装置である場合を例に説明するが、これに限定されるものではなく、シャッタ部材を有する任意の基板処理装置であってもよい。
【0013】
図1において、プラズマ処理装置1は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば、表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる円筒形のチャンバ(処理室)10を備える。チャンバ10は保安接地されている。ただし、これに限定されるものではなく、プラズマ処理装置1は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置に限られず、誘導結合プラズマICP(Inductively Coupled Plasma)、マイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマなど、任意の形式のプラズマ処理装置であってよい。
【0014】
チャンバ10の底部には、セラミック等の絶縁板11を介して円柱状のサセプタ支持台12が配置され、このサセプタ支持台12の上に、導電性の、例えばアルミニウム等からなるサセプタ13が配置されている。サセプタ13は下部電極として機能する構成を有し、エッチング処理が施される基板、例えば半導体ウエハであるウエハWを載置する。
【0015】
サセプタ13の上面にはウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック(ESC)14が配置されている。静電チャック14は、導電膜からなる電極板15と、電極板15を狭持する一対の絶縁層、例えば、Y2O3、Al2O3、AlN等の誘電体からなり、電極板15には直流電源16が接続端子を介して電気的に接続されている。この静電チャック14は、直流電源16によって印加された直流電圧に起因するクーロン力またはジョンソン・ラーベック(Johnsen-Rahbek)力によってウエハWを吸着保持する。
【0016】
また、静電チャック14の上面においてウエハWが吸着保持される部分には、静電チャック14の上面から突出自在なリフトピンとしての複数のプッシャーピン(例えば3つ)が配置されている。これらのプッシャーピンは、モータ(図示せず)にボールねじ(図示せず)を介して接続され、ボールねじによって直線運動に変換されたモータの回転運動に起因して静電チャック14の上面から自在に突出する。これにより、プッシャーピンは、静電チャック14およびサセプタ13を貫通して、内側空間において突没上下動する。ウエハWにエッチング処理を施す場合において静電チャック14がウエハWを吸着保持するときには、プッシャーピンは静電チャック14に収容される。エッチング処理が施されたウエハWをプラズマ生成空間Sから搬出するときには、プッシャーピンは静電チャック14から突出してウエハWを静電チャック14から離間させて上方へ持ち上げる。
【0017】
サセプタ13の周囲上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコン(Si)からなるエッジリング17が配置され、エッジリング17の周囲には、エッジリング17の側部を保護するカバーリング54が配置されている。また、サセプタ13およびサセプタ支持台12の側面は、例えば石英(SiO2)からなる円筒状の部材18で覆われている。
【0018】
サセプタ支持台12の内部には、例えば円周方向に延在する冷媒室19が配置されている。冷媒室19には、外付けのチラーユニット(図示しない)から配管20a、20bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給される。冷媒室19は冷媒の温度によってサセプタ13上のウエハWの処理温度を制御する。
【0019】
また、伝熱ガス供給機構(図示しない)から伝熱ガス、例えばヘリウム(He)ガスをガス供給ライン21を介して静電チャック14の上面およびウエハWの裏面の間に供給することで、ウエハWとサセプタ13との熱移動が効率良く均一に制御される。
【0020】
サセプタ13の上方には、サセプタ13と平行且つ対向するように上部電極22が配置されている。ここで、サセプタ13および上部電極22の間に形成される空間はプラズマ生成空間S(処理室内空間)として機能する。上部電極22は、サセプタ13と所定の間隔を置いて対向配置されている環状またはドーナツ形状の外側上部電極23と、外側上部電極23の半径方向内側に外側上部電極23と絶縁して配置されている円板形状の内側上部電極24とで構成される。また、プラズマ生成に関して、外側上部電極23が主で、内側上部電極24が補助となる関係を有している。
【0021】
外側上部電極23と内側上部電極24との間には、例えば0.25~2.0mmの環状ギャップ(隙間)が形成され、ギャップに、例えば石英からなる誘電体25が配置される。また、このギャップには石英からなる誘電体25の代わりにセラミック体を配置してもよい。外側上部電極23と内側上部電極24とが誘電体25を挟むことによってコンデンサが形成される。コンデンサのキャパシタンスC1は、ギャップの大きさと誘電体25の誘電率とに応じて所望の値に選定または調整される。また、外側上部電極23とチャンバ10の側壁との間には、例えば、アルミナ(Al2O3)若しくはイットリア(Y2O3)からなる環状の絶縁性遮蔽部材26が気密に配置されている。
【0022】
外側上部電極23は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体、例えばシリコンで構成されることが好ましい。外側上部電極23には、上部整合器27、上部給電棒28、コネクタ29および給電筒30を介して上部高周波電源31が電気的に接続されている。上部整合器27は、上部高周波電源31の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させ、チャンバ10内にプラズマが生成されているときに、上部高周波電源31の出力インピーダンスと負荷インピーダンスとが見かけ上一致するように機能する。また、上部整合器27の出力端子は上部給電棒28の上端に接続されている。
【0023】
給電筒30は、略円筒状または円錐状の導電板、例えばアルミニウム板または銅板からなり、下端が周回方向で連続的に外側上部電極23に接続され、上端がコネクタ29を介して上部給電棒28の下端部に電気的に接続されている。給電筒30の外側では、チャンバ10の側壁が上部電極22の高さ位置よりも上方に延出して円筒状の接地導体10aを構成している。円筒状の接地導体10aの上端部は筒状の絶縁部材69によって上部給電棒28から電気的に絶縁されている。本構成においては、コネクタ29から見た負荷回路において、給電筒30、外側上部電極23および接地導体10aによって給電筒30および外側上部電極23を導波路とする同軸線路が形成される。
【0024】
内側上部電極24は、上部電極板32と、電極支持体33とを有する。上部電極板32は、例えば、シリコンや炭化珪素(SiC)等の半導体材料で構成され、図示しない多数の電極板ガス通気孔(第1のガス通気孔)を有する。電極支持体33は、上部電極板32を着脱可能に支持する導電材料であり、例えば表面にアルマイト処理が施されたアルミニウムで構成される。上部電極板32はボルト(図示しない)によって電極支持体33に締結される。ボルトの頭部は上部電極板32の下部に配置された環状のシールドリング53によって保護される。
【0025】
上部電極板32において各電極板ガス通気孔は上部電極板32を貫通する。電極支持体33の内部には、後述する処理ガスが導入されるバッファ室が形成される。バッファ室は、例えばOリングからなる環状隔壁部材43で分割された2つのバッファ室、すなわち、中心バッファ室35および周辺バッファ室36からなり、下部が開放されている。電極支持体33の下方には、バッファ室の下部を閉塞するクーリングプレート(以下、「C/P」という。)34(中間部材)が配置されている。C/P34は、表面にアルマイト処理が施されたアルミニウムからなり、図示しない多数のC/Pガス通気孔(第2のガス通気孔)を有する。C/P34において各C/Pガス通気孔はC/P34を貫通する。
【0026】
また、上部電極板32およびC/P34の間には、シリコンや炭化珪素等の半導体材料からなるスペーサー37が介在する。スペーサー37は円板状部材であり、C/P34に対向する表面(以下、単に「上面」という。)において円板と同心に形成された多数の上面環状溝と、スペーサー37を貫通し且つ各上面環状溝の底部において開口する多数のスペーサーガス通気孔(第3のガス通気孔)を有する。
【0027】
内側上部電極24は、後述する処理ガス供給源38からバッファ室に導入された処理ガスを、C/P34のC/Pガス通気孔、スペーサー37のスペーサーガス流路および上部電極板32の電極板ガス通気孔を介して、プラズマ生成空間Sに供給する。ここで、中心バッファ室35と、その下方に存在する複数のC/Pガス通気孔、スペーサーガス流路および電極板ガス通気孔とは中心シャワーヘッド(処理ガス供給経路)を構成する。また、周辺バッファ室36と、その下方に存在する複数のC/Pガス通気孔、スペーサーガス流路および電極板ガス通気孔とは周辺シャワーヘッド(処理ガス供給経路)を構成する。
【0028】
また、
図1に示すように、チャンバ10の外部には処理ガス供給源38が配置されている。処理ガス供給源38は、中心バッファ室35および周辺バッファ室36に処理ガスを所望の流量比で供給する。具体的には、処理ガス供給源38からのガス供給管39が途中で2つの分岐管39aおよび39bに分岐して中心バッファ室35および周辺バッファ室36にそれぞれ接続される。分岐管39aおよび39bはそれぞれ流量制御弁40a、40b(流量制御装置)を有する。処理ガス供給源38から中心バッファ室35および周辺バッファ室36までの流路のコンダクタンスは、等しくなるように設定されている。このため、流量制御弁40a、40bの調整により、中心バッファ室35および周辺バッファ室36に供給する処理ガスの流量比を任意に調整できるようになっている。さらに、ガス供給管39にはマスフローコントローラ(MFC)41および開閉バルブ42が配置されている。
【0029】
以上の構成により、プラズマ処理装置1は、中心バッファ室35と周辺バッファ室36とに導入する処理ガスの流量比を調整することで、中心シャワーヘッドより噴出されるガスの流量FCと周辺シャワーヘッドより噴出されるガスの流量FEとの比率(FC/FE)を任意に調整する。なお、中心シャワーヘッドおよび周辺シャワーヘッドよりそれぞれ噴出させる処理ガスの単位面積当たりの流量を個別に調整することも可能である。さらに、分岐管39a、39bのそれぞれに対応する2つの処理ガス供給源を配置することによって中心シャワーヘッドおよび周辺シャワーヘッドよりそれぞれ噴出させる処理ガスのガス種またはガス混合比を独立または別個に設定することも可能である。ただし、これに限定されるものではなく、プラズマ処理装置1は、中心シャワーヘッドより噴出されるガスの流量FCと周辺シャワーヘッドより噴出されるガスの流量FEとの比率が調整できないものであってもよい。
【0030】
また、内側上部電極24の電極支持体33には、上部整合器27、上部給電棒28、コネクタ29および上部給電筒44を介して上部高周波電源31が電気的に接続されている。上部給電筒44の途中には、キャパシタンスを可変調整できる可変コンデンサ45が配置されている。なお、外側上部電極23および内側上部電極24にも冷媒室または冷却ジャケット(図示しない)を設けて、外部のチラーユニット(図示しない)から供給される冷媒によって電極の温度を制御してもよい。
【0031】
チャンバ10の底部には排気口46が設けられている。この排気口46には、排気マニフォールド47を介して可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(Automatic Pressure Control Valve)(以下、「APCバルブ」という。)48およびターボ分子ポンプ(Turbo Molecular Pump)(以下、「TMP」という。)49が接続されている。APCバルブ48およびTMP49は協働して、チャンバ10内のプラズマ生成空間Sを所望の真空度まで減圧する。また、排気口46およびプラズマ生成空間Sの間には、複数の通気孔を有する環状のバッフル板50がサセプタ13を取り巻くように配置され、バッフル板50はプラズマ生成空間Sから排気口46へのプラズマの漏洩を防止する。
【0032】
また、チャンバ10の外側の側壁には、ウエハWの搬入・搬出用の開口部51が設けられ、開口部51を開閉するゲートバルブ52が配置される。チャンバ10内には、チャンバ10の内壁に沿って第1デポシールド71と、第2デポシールド72とが着脱自在に設けられている。第1デポシールド71は、デポシールドの上部部材であり、チャンバ10の開口部51より上部に設けられている。第2デポシールド72は、デポシールドの下部部材であり、バッフル板50の下部に設けられている。第1デポシールド71の下部は、後述するシャッタ機構80の弁体81の上部と接触することで開口部51を閉じる。第1デポシールド71および第2デポシールド72は、例えばアルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。なお、第1デポシールド71の下部は、接触する弁体81と導通可能なように導電性の材質、例えばステンレススチールやニッケル合金等で被覆されている。
【0033】
ウエハWは、ゲートバルブ52を開閉させて搬入・搬出される。ただし、ゲートバルブ52はチャンバ10の外側(搬送室側)に配置されているため、開口部51が搬送室側に突出した空間が形成されている。そのため、チャンバ10内で生成したプラズマがその空間まで拡散して、プラズマの均一性の悪化や、ゲートバルブ52のシール部材の劣化が起こる。そのため、弁体81によって第1デポシールド71と、第2デポシールド72との間を遮断することで、チャンバ10の開口部51とプラズマ生成空間Sとを遮断する。また、弁体81を駆動する昇降機構82が、例えば第2デポシールド72の下方に配置される。弁体81は、昇降機構82により上下に駆動され、第1デポシールド71と、第2デポシールド72との間、つまり開口部51を開閉する。なお、弁体81および昇降機構82を、まとめてシャッタ機構80と称してもよい。
【0034】
また、プラズマ処理装置1では、下部電極としてのサセプタ13に下部整合器58を介して下部高周波電源(第1高周波電源)59が電気的に接続されている。下部整合器58は、下部高周波電源59の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内のプラズマ生成空間Sにプラズマが生成されているときに下部高周波電源59の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。また、下部電極には、別の第2の下部高周波電源(第2高周波電源)を接続してもよい。
【0035】
また、プラズマ処理装置1では、内側上部電極24に、上部高周波電源31からの高周波電力をグランドに通さずに、下部高周波電源59からの高周波電力をグランドへ通すローパスフィルタ(LPF)61が電気的に接続されている。このLPF61は、好ましくは、LRフィルタまたはLCフィルタで構成されることが好ましい。ただし、1本の導線でも上部高周波電源31からの高周波電力に対して十分大きなリアクタンスを付与することが可能なので、LRフィルタまたはLCフィルタの代わりに1本の導線を内側上部電極24に電気的に接続するのみでもよい。一方、サセプタ13には、上部高周波電源31からの高周波電力をグランドへ通すためのハイパスフィルタ(HPF)62が電気的に接続されている。
【0036】
次に、プラズマ処理装置1においてエッチングを行う場合には、まずゲートバルブ52および弁体81を開状態にして加工対象のウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ13の上に載置する。そして、処理ガス供給源38より処理ガス、例えばC4F8ガスおよびアルゴン(Ar)ガスの混合ガスを所定の流量および流量比で中心バッファ室35および周辺バッファ室36に導入する。また、APCバルブ48およびTMP49によってチャンバ10内のプラズマ生成空間Sの圧力をエッチングに適した値、例えば数mTorr~1Torrの範囲内のいずれかの値に設定する。
【0037】
さらに、上部高周波電源31によってプラズマ生成用の高周波電力を所定のパワーで上部電極22(外側上部電極23、内側上部電極24)に印加するとともに、下部高周波電源59からバイアス用の高周波電力を所定のパワーでサセプタ13の下部電極に印加する。また、直流電源16より直流電圧を静電チャック14の電極板15に印加して、ウエハWをサセプタ13に静電吸着する。
【0038】
そして、シャワーヘッドより噴出された処理ガスによってプラズマ生成空間Sにプラズマが生成され、このとき生成されるラジカルやイオンによってウエハWの被処理面が物理的または化学的にエッチングされる。
【0039】
プラズマ処理装置1では、上部電極22に対して高い周波数領域(イオンが動けない周波数領域)の高周波を印加することにより、プラズマが好ましい解離状態で高密度化される。また、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
【0040】
一方、上部電極22においては、プラズマ生成のための高周波電極として外側上部電極23を主、内側上部電極24を副とし、上部高周波電源31および下部高周波電源59によって上部電極22直下の電子に与える電界強度の比率を調整可能にしている。したがって、イオン密度の空間分布を径方向で制御し、反応性イオンエッチングの空間的な特性を任意且つ精細に制御することができる。
【0041】
[シャッタ機構80の詳細]
図2は、本実施形態におけるシャッタ機構の断面の一例を示す部分拡大図である。
図3は、本実施形態におけるシャッタ機構の外観の一例を示す図である。
図2および
図3に示すように、シャッタ機構80は、チャンバ10の内周のうち、半分以上の長さを有する弁体81と、弁体81を昇降させる2つ以上の昇降機構82とを有する。弁体81は、例えば
図3に示すように、チャンバ10の内周に沿う円環状の弁体を用いることができる。弁体81は、開口部51を閉じたときに第1デポシールド71と当接する導電性部材83と、第2デポシールド72と当接する導電性部材84とを有する。
【0042】
弁体81は、例えば、アルミニウム材等により断面が略L字状に形成される。弁体81の表面は、例えば、Y2O3等でコーティングされている。弁体81の上端部には、導電性部材83が配置されている。また、弁体81の段差部には、導電性部材84が配置されている。導電性部材83,84は、コンダクタンスバンドやスパイラルとも呼ばれ、導電性の弾性部材である。また、導電性部材83,84は、例えば、ステンレススチールやニッケル合金等を用いることができる。導電性部材83,84は、例えば、帯状の部材を螺旋状に巻いて形成される。また、導電性部材83,84は、例えば、U字状のジャケット付きの斜め巻きコイルスプリングを用いてもよい。つまり、導電性部材83,84は、弁体81が第1デポシールド71および第2デポシールド72と当接した際に、押し潰される状態となる。
【0043】
昇降機構82は、ロッドを有し、ロッドは、弁体81の下部にネジ等により固定され接続される。昇降機構82は、例えば、エアシリンダやモータ等によりロッドを上下に昇降させる。昇降機構82は、エアシリンダを用いる場合、各昇降機構82に供給されるドライエアの流量が同等となるように制御される。
図3の例では、3つの昇降機構82が120度ごとに等間隔に配置されている。各昇降機構82は、同じタイミングおよび速度で昇降することで、弁体81が撓んだり傾いたりすることなく、弁体81を昇降させることができる。また、例えば、弁体81がチャンバ10の内周に沿う半円状である場合、両端部に昇降機構82を設けることで、同様に昇降させることができる。
【0044】
シャッタ機構80では、弁体81が昇降機構82によって上方に押し上げられることにより開口部51を閉じ、昇降機構82により下方に引き下げられることにより開口部51を開ける。弁体81が開口部51を閉じた状態において、弁体81の上部および下部に配置された導電性部材83,84がそれぞれ第1デポシールド71と第2デポシールド72に当接することにより、弁体81が導電性部材83,84を介して第1デポシールド71および第2デポシールド72と電気的に接続される。第1デポシールド71および第2デポシールド72は、接地されているチャンバ10に接触している。このため、弁体81は、開口部51を閉じた状態において、第1デポシールド71および第2デポシールド72を介して接地される。
【0045】
また、シャッタ機構80では、弁体81が従来のデポシールドの一部に対応するため、従来のデポシールドを複数に分割した状態の一部に相当する。従来のデポシールドは、重いためメンテナンス時の作業が大変であったが、本実施形態では、第1デポシールド71と、第2デポシールド72と、弁体81とに分割されているため、メンテナンス時に作業しやすくなる。
【0046】
[チャンバ10の外観]
図4から
図6は、本実施形態におけるチャンバの外観の一例を示す図である。なお、
図4から
図6では、説明のために、サセプタ13、上部電極22、給電筒30および弁体81等を除いた状態を示している。
図4から
図6に示すように、チャンバ10には、例えば、120度ごとに等間隔で昇降機構82が3つ設けられている。開口部51は、ウエハWだけでなく、例えば、エッジリング17やカバーリング54が搬送可能な幅を有する。開口部51の外部側には、ゲートバルブ52が接続可能となっている。開口部51は、円環状の弁体81が上方向に移動することで閉じられる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、シャッタ機構80は、基板処理装置(プラズマ処理装置1)の円筒状のチャンバ10の開口部51を開閉するシャッタ機構であって、弁体81と、昇降機構82とを有する。弁体81は、チャンバ10の内周のうち、半分以上の長さを有する。昇降機構82は、弁体81の下部に接続され、弁体81を昇降させる2つ以上の昇降機構である。その結果、開口部51を拡大できるとともに、弁体81を第1デポシールド71に均一な力で押し付けることができる。また、弁体81と第1デポシールド71との導通の偏りを解消することができる。また、1つあたりの昇降機構82の負荷を小さくすることができる。つまり、昇降機構82を小型化できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、弁体81は、円環状である。その結果、弁体81が傾くことなく、弁体81を第1デポシールド71に均一な力で押し付けることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、昇降機構82は、3つ以上である。その結果、弁体81が傾くことなく、弁体81を第1デポシールド71に均一な力で押し付けることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、昇降機構82は、等間隔で配置される。その結果、弁体81が傾くことなく、弁体81を第1デポシールド71に均一な力で押し付けることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、弁体81は、チャンバ10上部の内壁に沿って設けられた上部部材(第1デポシールド71)と接触する導通面に、導電性部材83を有する。その結果、弁体81と第1デポシールド71との導通の偏りを解消することができる。
【0052】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の各実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形体で省略、置換、変更されてもよい。
【0053】
また、上記した実施形態では、基板処理装置の一例として、プラズマ処理装置1を挙げたが、これに限定されない。例えば、プラズマを用いずに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法のような複数の処理ガスを交互に繰り返して処理を行う基板処理装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 プラズマ処理装置
10 チャンバ
13 サセプタ
14 静電チャック
17 エッジリング
22 上部電極
51 開口部
52 ゲートバルブ
54 カバーリング
71 第1デポシールド
72 第2デポシールド
80 シャッタ機構
81 弁体
82 昇降機構
83,84 導電性部材
W ウエハ