(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】床用緩衝材および床構成材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/98 20060101AFI20241101BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241101BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20241101BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
E04B1/98 S
B32B7/022
E04F15/02 102P
E04F15/18 601A
E04F15/18 601E
E04F15/18 602F
E04F15/18 602H
E04F15/18 602J
E04F15/18 602K
(21)【出願番号】P 2019177014
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-05-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】松下 和宏
(72)【発明者】
【氏名】松島 康臣
(72)【発明者】
【氏名】小池 長
【合議体】
【審判長】古屋野 浩志
【審判官】蔵野 いづみ
【審判官】▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-216928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床用緩衝材と板材で少なくとも構成される床構成材であって、
前記床用緩衝材は、第1の緩衝層と、第1の緩衝層の下側に配設される第2の緩衝層とで少なくとも構成されるとともに、前記板材の下側に前記第1の緩衝層が配設され、
前記第1の緩衝層を10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率が、0.01~29kPaであり、
前記第2の緩衝層を2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率が、30~12,000kPaであり、 かつ
前記板材の曲げ弾性率が500~4000MPaである、床構成材。
【請求項2】
請求項1に記載の床構成材であって、第2の緩衝層を2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率は、第1の緩衝層を10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率よりも50kPa以上高い値である、床構成材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の床構成材であって、第2の緩衝層の曲げ強さが、0.2N/mm
2以上である、床構成材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の床構成材であって、第1の緩衝層の厚みが20mm以下であり、第1の緩衝層の厚みに対する第2の緩衝層の厚みが0.8倍以上である、
床構成材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の床構成材であって、第1緩衝層が、見かけ密度30~70kg/m
3の不織繊維構造体である、床構成材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の床構成材であって、第1の緩衝層と第2の緩衝層とが連結手段で一体化可能である、床構成材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の床構成材であ
って、JIS A 5917(2018)に準じて測定した転倒衝突時の衝撃時加速度G値が、45G以下である、床構成材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の床構成材であって、第1の緩衝層が、湿熱接着性繊維の融着により繊維同士が固定されている不織繊維構造体である、床構成材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の床構成材であって、第2の緩衝層が、天然繊維の成形板、合成繊維の成形板、無機繊維の成形板、および発泡プラスチックボードからなる群から選択される少なくとも一種である、床構成材。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の床構成材であって、JIS A 5917(2018)に準じて測定した日常的な動作時の硬さが0.6~2.0である、床構成材。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の床構成材であって、厚みが100mm以下であり、JIS A 6519に準じて測定した衝撃時加速度G値が、45G以下である、床構成材。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の床構成材であって、床構成材が、畳床、木質床、高分子シート床、セラミック床、またはカーペット床である、床構成材。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の床構成材に用いられる床用緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃を緩和するのに有用な床用緩衝材および床構成材に関し、特に転倒衝突時の衝撃を緩和することができる床用緩衝材および床構成材に関する。
【背景技術】
【0002】
床構成材には、薄さ、軽量性、衝撃緩和性などが求められ、例えば、特許文献1(特開2016-216928号公報)には、最下層に配置された緩衝層と、当該緩衝層の上側に隣接して配置された板材と、前記板材を介して前記緩衝層とは反対側の最上層に配置された緩衝層とを備える床構成材であって、最上層に配置された緩衝層は、圧縮弾性率が100~2500kPa、厚みが0.5~4mmの範囲内であり、最下層に配置された緩衝層は、圧縮弾性率が10~500kPaの範囲内であり、板材は、曲げ弾性率と厚みとの積が1.0×104以上である、衝撃緩和床構成材が開示されている。
【0003】
特許文献1においては、板材の上に配置された緩衝層と板の下に配置された緩衝層との圧縮弾性率と、板材の曲げ弾性率と厚みとの積を特定の範囲に調整することにより、薄くて、優れた衝撃緩和性を有する衝撃緩和床構成材を実現している。
【0004】
例えば、日本建築学会では、幼稚園、病院、高齢者施設、運動競技施設などの中で転倒衝突に対する配慮が望まれる床に対する転倒衝突時の硬さの推奨値は100G以下であることが規定され、特許文献1では、前記推奨値を充足している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、衝撃緩和型畳床で規定される転倒衝突時に対するさらなる改良が求められ、JIS A 5917(2018)に規定される衝撃緩和型畳床では、硬さの推奨値として50G以下であることが求められている。一方で、体操競技で使用するような、単に柔らかい緩衝材では、底着きを防ぐために厚さを大きくする必要があり、歩行感が悪いという問題もある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、転倒衝突時の衝撃に対する衝撃緩和性をさらに向上することができる床用緩衝材を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記衝撃緩和性を達成できるだけでなく、硬すぎず柔らかすぎない踏み心地や座り心地を兼ねそろえる床構成材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率が特定の小さな範囲である第1の緩衝層と、2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率が特定の大きな範囲である第2の緩衝層とを組み合わせ、前記第1の緩衝層の下側に前記第2の緩衝層を配設した緩衝材では、理由は定かではないが、驚くべきことに特許文献1を上回る衝撃緩和性を達成できることを見出し、さらに、このような床用緩衝材を備える床構成材は、良好な衝撃緩和性だけでなく、良好な踏み心地や座り心地を兼ねそろえることも可能であることをも見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様で構成されうる。
〔態様1〕
第1の緩衝層と、第1の緩衝層の下側に配設される第2の緩衝層とで少なくとも構成される床用緩衝材であって、
前記第1の緩衝層を10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率が、0.01~29kPa(好ましくは、0.1~20kPa、より好ましくは0.5~15kPa)であり、
前記第2の緩衝層を2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率が、30~12,000kPa(好ましくは、50~11,000kPa、より好ましくは80~10,500kPa)である、床用緩衝材。
〔態様2〕
態様1に記載の床用緩衝材であって、第2の緩衝層を2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率は、第1の緩衝層を10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率よりも50kPa以上高い値(好ましくは80kPa以上高い値)である、床用緩衝材。
〔態様3〕
態様1または2に記載の床用緩衝材であって、第2の緩衝層の曲げ強さが、0.2N/mm2以上(好ましくは0.3~3N/mm2)である、床用緩衝材。
〔態様4〕
態様1~3のいずれか一態様に記載の床用緩衝材であって、第1の緩衝層の厚みが20mm以下(好ましくは1~18mm、より好ましくは3~15mm)であり、第1の緩衝層の厚みに対する第2の緩衝層の厚みが0.8倍以上(好ましくは0.8~6倍、より好ましくは0.8~5倍)である、床用緩衝材。
〔態様5〕
態様1~4のいずれか一態様に記載の床用緩衝材であって、第1の緩衝層が、見かけ密度30~70kg/m3(好ましくは35~65kg/m3、より好ましくは40~60kg/m3)の不織繊維構造体である、床用緩衝材。
〔態様6〕
態様1~5のいずれか一態様に記載の床用緩衝材であって、第1の緩衝層と第2の緩衝層とが連結手段で一体化可能である、床用緩衝材。
〔態様7〕
態様1~6のいずれか一態様に記載の床用緩衝材であって、厚み5.5mmのシナ合板を介して、JIS A 5917(2018)に準じて測定した転倒衝突時の衝撃時加速度G値が、45G以下(好ましくは42G以下であってもよく、さらに好ましくは39G以下)である、床用緩衝材。
〔態様8〕
態様1~7のいずれか一態様に記載の床用緩衝材であって、第1の緩衝層が、湿熱接着性繊維の融着により繊維同士が固定されている不織繊維構造体である、床用緩衝材。
〔態様9〕
態様1~8のいずれか一態様に記載の床用緩衝材であって、第2の緩衝層が、天然繊維の成形板、合成繊維の成形板、無機繊維の成形板、および発泡プラスチックボードからなる群から選択される少なくとも一種である、床用緩衝材。
〔態様10〕
態様1~9のいずれか一態様に記載の床用緩衝材と板材で少なくとも構成され、前記板材の下側に第1の緩衝層が配設される、床構成材。
〔態様11〕
態様10に記載の床構成材であって、JIS A 5917(2018)に準じて測定した日常的な動作時の硬さが0.6~2.0(好ましくは0.6~1.5であってもよく、より好ましくは0.7~1.4、さらに好ましくは0.8~1.3)である、床構成材。
〔態様12〕
態様10または11に記載の床構成材であって、板材の曲げ弾性率が500~4000MPa(好ましくは550~3000MPa)である、床構成材。
〔態様13〕
態様10~12のいずれか一態様に記載の床構成材であって、厚みが100mm以下(好ましくは厚みが80mm以下、より好ましくは、65mm以下)であり、JIS A 6519に準じて測定した衝撃時加速度G値が、45G以下(好ましくは42G以下、さらに好ましくは39G以下)である、床構成材。
〔態様14〕
態様10~13のいずれか一態様に記載の床構成材であって、床構成材が、畳床、木質床、高分子シート床、セラミック床、またはカーペット床である、床構成材。
本明細書において、下側とは、直接接した状態で下側に配置される場合、および直接接することなく下側に配置される場合の双方が含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床用緩衝材は、ある程度圧縮された状態からさらに圧縮する際の圧縮弾性率が適度に小さい第1の緩衝層と、その下側に配設され、圧縮し始めの際の圧縮弾性率が適度に大きい第2の緩衝層とを組み合わせることにより、前記床用緩衝材を備える床構成材に対して、転倒衝突時の衝撃に対する良好な衝撃緩和性を与えることができる。
また、本発明の床用緩衝材を備えると、衝撃緩和性を達成できるだけでなく、硬すぎず柔らかすぎない踏み心地や座り心地を兼ねそろえる床構成材をも得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。
【
図1】本発明の一実施形態である床用緩衝材と板材との積層体(または床構成材)を説明するための概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である床用緩衝材を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態である床構成材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の床用緩衝材は、第1の緩衝層と、第1の緩衝層の下側に配設される第2の緩衝層とで少なくとも構成される。また、本発明の床構成材は、板材と、前記床用緩衝材とで少なくとも構成され、前記板材の下側に第1の緩衝層が配設される。
【0013】
本発明の一実施形態を
図1に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である床用緩衝材と、板材との積層体(または床構成材)を説明するための概略断面図である。
図1において、床用緩衝材10は、第1の緩衝層2と、第1の緩衝層2の下側に配設された第2の緩衝層3とで構成される。また、床用緩衝材10の上側、すなわち、第1の緩衝層2を介して第2の緩衝層3と反対側に板材1が配設され、床構成材20を形成している。
【0014】
例えば、転倒などの衝撃により局部的に板材1に圧力がかかると、変形しにくい材料である板材1は、受けた圧力を大きな面積で第1の緩衝層2に伝える。すると、第1の緩衝層2は受けた圧力をある程度緩和しつつ、第2の緩衝層3へ板材からの圧力の一部を伝播する。
【0015】
第2の緩衝層3は、第1の緩衝層2より大きい圧縮弾性率を有するので、第2の緩衝層3に衝撃が加わった場合の底付きを防ぐことができ、その結果衝撃時加速度G値を低減することができる。さらに、理由は定かではないが、第1の緩衝層2および第2の緩衝層3をそれぞれ単独で用いる場合と比べると、第1の緩衝層2の下側に、第2の緩衝層3を配置することにより、衝撃時加速度G値をそれぞれ単独の場合と比べて際立って大きく低減できる。本発明の床用緩衝材を備える床構成材では、衝撃時加速度G値を低減できるため、転倒衝突時の安全性を高めることができる。
【0016】
なお、板材1、第1の緩衝層2、および第2の緩衝層3の間には、それぞれ、本発明の効果を抑制しない範囲で、適宜、別の層(例えば、防水シート、除湿シート、防カビシート、防虫シート、ずれ防止シートなどのシート状物や切片状物)が存在していてもよい。
【0017】
また、板材1、第1の緩衝層2、および第2の緩衝層3からなる構成部材は、互いに、連結手段により固定されていてもよいし、互いに固定されていなくてもよい。固定される場合は、着脱自在であってもよい。
【0018】
例えば、
図1において、(i)板材1と第1の緩衝層2とが一体化され、これを第2の緩衝層3の上に固定せずに載置してもよいし、(ii)第1の緩衝層2と第2の緩衝層3とが一体化され、第1の緩衝層2の上に板材1を固定せずに載置してもよいし、(iii)板材1と第1の緩衝層2と第2の緩衝層3とが一体化されてもよい。取り扱い性の観点からは、上記(iii)が好ましい。また、板材1や第1の緩衝層2、第2の緩衝層3の大きさは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、面積の小さい第1の緩衝層2及び第2の緩衝層3を面積の大きい板材1で覆うように載置してもよいし、面積の大きい第1の緩衝層2及び第2の緩衝層3の上に面積の小さい板材1を載置してもよい。また、第1の緩衝層2と第2の緩衝層3の面積も異なっていてもよい。
【0019】
連結手段は接着や粘着でも良いが、面ファスナーを使い、着脱自在となされることが好ましい。また、一般的に畳の製造方法として採用されている縫合による方法でもよい。各部材が着脱自在の連結手段で一体化される場合、各構成部材を別々に製造したり、別々に保管しておくことができるだけでなく、使用前に必要に応じて一体化することにより、取り扱い性を向上させることができる。
【0020】
また、
図2に、本発明の一実施形態である床用緩衝材を示す概略断面図を示す。
図2には、
図1に示す板材1を除いた部分である床用緩衝材10が示されており、床用緩衝材10は、第1の緩衝層2と、その下側に配設された第2の緩衝層3とで構成されている。このような床用緩衝材10は、各種仕上げ材と組み合わせて、塗り床、張り床、敷き床で用いられる床構成材の芯材や下地材として用いることができる。
【0021】
図3に、本発明の一実施形態である床構成材を示す概略断面図を示す。床構成材30は、第1の緩衝層2と、その下側に配設された第2の緩衝層3とで構成されている床用緩衝材10を含んでおり、床用緩衝材10の上に板材1が、板材1の上にクッション材5が、クッション材5の上に表面化粧材4が配置されている。
【0022】
なお、表面化粧材4、クッション材5、板材1、第1の緩衝層2、および第2の緩衝層3の間には、それぞれ、本発明の効果を抑制しない範囲で、適宜、別の層(例えば、防水シート、除湿シート、防カビシート、防虫シート、ずれ防止シートなどのシート状物や切片状物)が存在していてもよい。
【0023】
また、表面化粧材4、クッション材5、板材1、第1の緩衝層2、および第2の緩衝層3からなる構成部材は、互いに、連結手段により固定されていてもよいし、互いに固定されていなくてもよい。固定される場合は、着脱自在であってもよい。
【0024】
例えば、
図3において、
図1と同様に、各構成部材は、互いに固定されず載置しているだけでもよいし、互いに、連結手段により固定されていてもよい。例えば、クッション材5と板材1とが一体化され、これを床用緩衝材10の上に載置してもよいし、表面化粧材4とクッション材5と板材1とが一体化され、これを床用緩衝材10の上に載置してもよい。または、表面化粧材4とクッション材5と板材1と第1の緩衝層2とが一体化され、これを第2の緩衝層3の上に載置してもよいし、表面化粧材4とクッション材5とが一体化され、これを板材1の上に載置してもよい。
【0025】
取り扱い性の観点から、床構成材30では、表面化粧材4、クッション材5、板材1、第1の緩衝層2、および第2の緩衝層3が、例えば、必要に応じて着脱自在の連結手段により、一体化されるのが好ましい。
【0026】
本発明の床用緩衝材および床構成材は、
図1~3に示す実施形態に限定されず、様々な構成であってもよいが、以下に、代表的に用いられる各構成部材について説明する。
【0027】
(第1の緩衝層)
第1の緩衝層は、10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率が、0.01~29kPaであり、好ましくは、0.1~20kPa、より好ましくは0.5~15kPaであってもよい。なお、ここで、10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率とは、JIS K 7181に準じて、たとえば直径29mmの円盤形状に切り出した試験体を用いて、試験速度10mm/分にて加圧板により歪み10%から20%へと圧縮した時の弾性率として測定された数値を指す。
【0028】
第1の緩衝層では、圧縮し始めの圧縮弾性率ではなく、ある程度圧縮された状態から、さらに圧縮する際に測定される圧縮弾性率を測定することで、転倒衝突時にかかる大きな衝撃に対する衝撃緩和性を評価することが可能となる。
【0029】
第1の緩衝層の厚みは、例えば20mm以下であってもよく、好ましくは1~18mm、より好ましくは3~15mmであってもよい。ここで、厚みは、例えば、JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定された厚みであってもよい。
【0030】
第1の緩衝層の見掛け密度は、例えば30~70kg/m3であってもよく、好ましくは35~65kg/m3、より好ましくは40~60kg/m3であってもよい。ここで、見掛け密度は発泡体の外形寸法から計算された体積に基づく密度であり、素材に応じて慣用される測定方法で測定されればよい。例えば、第1の緩衝層が不織繊維構造体である場合、密度は、JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定された厚みと、JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定された目付量とから、算出されてもよい。
【0031】
このような性質を示す限り、第1の緩衝層としては、プラスチックフォーム(たとえば、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォームなど)、繊維構造体(例えば、不織繊維構造体、フェルト)など様々な材料を用いることができる。これらの材料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、ある程度大きな歪みに対しても、所定の圧縮弾性率を示すだけでなく、度重なる衝撃に対する耐久性に優れる観点から、繊維構造体が好ましく用いられる。
【0032】
繊維構造体としては、フェルトなどの物理的交絡繊維構造体、不織布を機械的圧縮処理(ニードルパンチなど)した不織繊維構造体、不織布を部分的に熱圧融着処理(熱エンボス加工など)した不織繊維構造体、バインダー成分による接着または融着処理などにより繊維同士が固定した不織繊維構造体が挙げられる。繊維構造体を構成する繊維としては、天然繊維であっても、合成繊維であってもよいが、合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維、(メタ)アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリスチレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリウレタン系繊維などが挙げられる。これらの繊維のうち、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維またはこれらの繊維を含む複合繊維などが汎用される。
【0033】
不織繊維構造体を構成する主体繊維および/またはバインダー繊維の平均繊度は、第1の緩衝層に求められる圧縮弾性率を充足することができる限り、適宜設定することができる。例えば、平均繊度は0.1~30dtexの範囲内であってもよく、0.5~20dtexの範囲内であることが好ましい。
【0034】
本発明では、特に、不織繊維構造体の中でも、バインダー成分(特に、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系などの熱接着性樹脂で構成された熱接着性繊維で構成されたバインダー繊維)の融着により、繊維同士が固定された繊維構造体が好ましく、衝撃緩和性と強度とを両立できる観点から、湿熱接着性繊維を含み、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維同士が固定された構造体(湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体)が特に好ましい。湿熱接着性繊維を含み、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された構造体(以下、「湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体」と称することがある)は、たとえば、高温水蒸気の噴射によって得ることができる。高温水蒸気の噴射によって得られた不織繊維構造体の内部構造は厚み方向で均一に接着されているため、繊維構造を保持しながら、高い強度を確保することができる。
【0035】
湿熱接着性繊維は、高温水蒸気の噴射の際に接着機能を発現可能な湿熱接着性樹脂を少なくとも含むように構成される。具体的な湿熱接着性樹脂としては、熱水(たとえば、80~120℃、特に95~100℃)で軟化して自己接着または他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、たとえば、エチレン-ビニルアルコール系共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。さらに、高温水蒸気の噴射の際に接着機能を発現可能なエラストマー(たとえば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマーなど)などであってよい。これらの湿熱接着性樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、特に、エチレンやプロピレンなどのα-C2-10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン-ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
【0036】
複合繊維の場合、湿熱接着性樹脂同士を組み合わせてもよいが、非湿熱接着性樹脂と組み合わせてもよい。非湿熱接着性樹脂としては、非水溶性または疎水性樹脂、たとえばポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの非湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0037】
これらの非湿熱接着性樹脂のうち、耐熱性および寸法安定性の点から、融点が湿熱接着性樹脂(特にエチレン-ビニルアルコール系共重合体)よりも高い樹脂、たとえば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、フタル酸、α,β-(4-カルボフェノキシ)エタン、4,4-ジカルボキシジフェニル、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのジオールからなる繊維形成性のポリエステル系樹脂を挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。またポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミドなどを挙げることができ、少量の第3成分を含有するポリアミドでもよい。
【0038】
湿熱接着性繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面(偏平状、楕円状、多角形状など)に限定されず、中空断面形状などであってもよい。湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂を含む複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。複合繊維は、湿熱接着性樹脂を少なくとも繊維表面の一部に有していればよいが、接着性の観点から、繊維表面において長さ方向に連続する湿熱接着性樹脂を有するのが好ましい。
【0039】
湿熱接着性樹脂が表面を占める複合繊維の横断面構造としては、たとえば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型などが挙げられる。これらの横断面構造のうち、接着性が高い構造である点から、湿熱接着性樹脂が繊維の全表面を被覆する構造である芯鞘型構造(すなわち、鞘部が湿熱接着性樹脂で構成された芯鞘型構造)が好ましい。芯鞘型構造は、他の繊維形成性重合体で構成された繊維の表面に湿熱接着性樹脂をコーティングした繊維であってもよい。
【0040】
不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維に加えて、さらに非湿熱接着性繊維を含んでいてもよい。非湿熱接着性繊維としては、前記複合繊維を構成する非湿熱接着性樹脂で構成された繊維の他、セルロース系繊維(たとえば、レーヨン繊維、アセテート繊維など)などが挙げられる。これらの非湿熱接着性繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの非湿熱接着性繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの非湿熱接着性繊維は、目的の特性に応じて選択でき、レーヨンなどの半合成繊維と組み合わせると、相対的に高密度で機械的特性の高い繊維構造体が得られる。
【0041】
湿熱接着性繊維と非湿熱接着性繊維との割合(質量比)は、特に制限されるものではないが、湿熱接着性繊維/非湿熱接着性繊維=100/0~20/80であるのが好ましく、100/0~50/50であるのがより好ましい。
【0042】
このような湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体は、株式会社クラレより「フェリベンディ」として上市されている。
【0043】
(第2の緩衝層)
第2の緩衝層は、2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率が、30~12,000kPaであり、好ましくは、50~11,000kPa、より好ましくは80~10,500kPaであってもよい。なお、ここで、2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率とは、JIS K 7181に準じて、たとえば直径29mmの円盤形状に切り出した試験体を用いて、試験速度10mm/分にて加圧板により歪み2.5%から5.0%へと圧縮した時の弾性率として測定された数値を指す。
【0044】
第2の緩衝層では、主として圧縮し始めの圧縮弾性率を測定することで、第1の緩衝層から受ける歪に対する反応性を正確に評価することができる。柔らかめの特定の圧縮弾性率を有する第1の緩衝層の下側に、やや硬めの圧縮弾性率を有する第2の緩衝層を配設すると、驚くべきことに、第1の緩衝層および第2の緩衝層の積層状態における衝撃時加速度G値を、従来よりも大きく低減することが可能である。これは、第1の緩衝層および第2の緩衝層のそれぞれの衝撃時加速度G値が従来程度の衝撃時加速度G値であることを考慮すると、予測することができない、意外な効果である。
【0045】
好ましくは、第2の緩衝層を2.5%から5.0%へ圧縮する際の圧縮弾性率は、第1の緩衝層を10%から20%へ圧縮する際の圧縮弾性率よりも50kPa以上高い値であってもよく、より好ましくは80kPa以上高い値であってもよい。
【0046】
第2の緩衝層の厚みは、例えば5~50mmであってもよく、好ましくは7~45mm、より好ましくは9~40mmであってもよい。ここで、厚みは、材料に応じて適当な方法で測定すればよいが、例えば、不織繊維構造体の場合、JIS L 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定された厚みであってもよい。
【0047】
また、第1の緩衝層の厚みに対する第2の緩衝層の厚みは、例えば、0.8倍以上であってもよく、好ましくは0.8~6倍、より好ましくは0.8~5倍であってもよい。
【0048】
第1の緩衝層からの圧力を受け止める観点から、第2の緩衝層の曲げ強さは、例えば、0.2N/mm2以上であってもよく、好ましくは0.3~3N/mm2であってもよい。ここで、方向により曲げ強さが異なる場合は、曲げ強さが大きい方向の曲げ強さとする。また、曲げ強さは、後述する実施例に記載された方法により測定される値である。
【0049】
このような性質を示す限り、第2の緩衝層としては各種材料を用いることができ、天然繊維(好ましくは植物繊維)の成形板、合成繊維の成形板、無機繊維の成形板、発泡プラスチックボードなど様々な材料を用いることができる。天然繊維や合成繊維の成形板としては、例えば、中密度繊維板(MDF)、インシュレーションファイバーボード(特にJIS A 5905で規定されているタタミボード)、ヤシボード、ケナフボード、稲わら畳床などが挙げられる。無機繊維の成形板としては、炭素繊維ボード、ガラス繊維ボードなどが挙げられる。発泡プラスチックボードとしては、発泡硬質ウレタンボード、発泡ポリスチレンボード(特にJIS A 9511で規定されている押出発泡法ポリスチレンボード)、発泡ポリオレフィンボード、発泡フェノール樹脂ボードなどが挙げられる。これらの材料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0050】
前記第2の緩衝層としてはJIS A 5905で規定されているタタミボードを好適に使用することができる。また、必要に応じて、第2の緩衝層(例えばタタミボード)の下にJIS A 9511で規定されている押出法ポリスチレンフォーム又はそれらの同等品以上のものを使用することができる。
【0051】
(板材)
板材としては、緩衝層とは異なり、局部的な衝撃に対して局所的な変形を生じない材料であれば、各種材料を用いることができ、例えば、各種天然板、合板、植物繊維成形板、プラスチック板、金属板、セラミック板、複合板などが挙げられる。
【0052】
板材の局所的な変形を抑制する観点から、板材の曲げ弾性率は、例えば、500~4000MPaであってもよく、好ましくは550~3000MPaであってもよい。曲げ弾性率は、JIS K 7171の規定に準じて、試験速度10m/分で0.25%から0.5%まで変化させて測定した場合の値である。なお、曲げ弾性率が方向によって異なる場合は、曲げ弾性率の高い方を採用する。
【0053】
板材の厚みは局所的な変形を抑制できる限り特に限定されるものではないが、例えば、3~15mmであってもよく、好ましくは4~13mmであってもよい。また、板材の上には、必要に応じてクッション材や表面化粧材を配設してもよい。
【0054】
クッション材は、板材に対するクッション性を向上させつつ、板材に対して衝撃を伝播する、すなわち衝撃を緩和したり、座り心地をよくしたりする観点から、第1の緩衝層より薄手であり、クッション材の厚みは、例えば、1~5mm程度が適度なクッション性を得られて好ましい。なお、クッション材の厚みは板材の厚みより厚くてもよいし、同じであってもよいし、薄くてもよいが、薄いのが好ましい。
【0055】
クッション材を構成する材料としては、クッション性を発現できる限り特に限定されず、例えば、第1の緩衝層の材料や、ゴムまたはエラストマー成形体、繊維構造体(織物、編物、不織布などで構成された構造体)などであってもよい。
【0056】
表面化粧材としては、床構成材に用いられる材料を適宜目的に応じて選択することができ、例えば、各種畳表(イ草畳表、樹脂畳表、和紙畳表)、ソフトフロアー、布地(繊維の織物)、コルク板、軟質または硬質プラスチックシートなどが挙げられる。
【0057】
仕上げ材としては、板材や表面化粧材などをそのまま仕上げ材として利用してもよいし、複数の床構成材(または床用緩衝材)の表面をまとめて施工する場合は、仕上げ材として利用されている各種材料を利用してもよい。仕上げ材としては、塗り床には、合成塗料、天然塗料などが挙げられ、張り床には、高分子シート材料、木質ボード材料、木質ブロック材料、プラスチックタイル材料、セラミックタイル材料、自然石材料、人造石材料、積層床材料などが挙げられ、敷き床には、カーペット材料が挙げられる。
【0058】
(床用緩衝材および床構成材)
本発明の床用緩衝材は、薄くとも耐衝撃性に優れるため、例えば、厚みが80mm以下であってもよく、好ましくは厚みが60mm以下、より好ましくは、45mm以下であってもよい。厚みの下限値は、耐衝撃性を発揮することができる限り限定されないが、例えば、20mm程度であってもよい。
【0059】
本発明の床構成材は、床用緩衝材と板材で少なくとも構成され、前記板材の下側に第1の緩衝層が配設されているが、薄くとも耐衝撃性に優れるため、例えば、厚みが100mm以下であってもよく、好ましくは厚みが80mm以下、より好ましくは、65mm以下であってもよい。厚みの下限値は、耐衝撃性を発揮することができる限り限定されないが、例えば、40mm程度であってもよい。
【0060】
また、本発明の床構成材および床用緩衝材は、耐衝撃性を示す数値である、転倒衝突時の衝撃時加速度G値が、JIS A 5917(2018)の規定に準じて測定した値として、45G以下であってもよく、好ましくは42G以下であってもよく、さらに好ましくは39G以下であってもよい。G値の下限は特に限定されないが、20G程度であってもよく、好ましくは25G程度であってもよく、より好ましくは30G程度であってもよい。
【0061】
なお、床構成材の場合、G値は直接測定した値であり、床用緩衝材の場合、サンプルの上側に厚み5.5mmの合板(曲げ弾性率:5.5×103MPa程度)を載置して測定した値である。ここで、合板の曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して、試験片(幅10mm、長さ100mm)の支点間距離を80mm、試験速度10mm/分において測定した値である。
【0062】
本発明の床構成材は、硬すぎず柔らかすぎない性能を達成できるため、JIS A 5917(2018)の規定に準じて測定した日常的な動作時の硬さ試験において算出される値が、例えば、0.6~2.0であってもよく、好ましくは0.6~1.5であってもよく、より好ましくは0.7~1.4、さらに好ましくは0.8~1.3であってもよい。
【0063】
なお、床構成材の場合、日常的な動作時の硬さ試験の値は直接測定した値である。また、床用緩衝材により付与可能な値については、サンプルの上側に厚み5.5mmの合板(曲げ弾性率:5.5×103MPa程度)を載置して測定した値である。ここで、合板の曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して、試験片(幅30mm、長さ200mm)の支点間距離を160mm、試験速度10mm/分において測定した値である。
このようにして得られた床構成材は、畳床、木質床、高分子シート床、セラミック床、、カーペット床などとして、各種建築物(例えば、居宅、共同住宅、店舗、寄宿舎、事務所、旅館、校舎、講堂、研究所、病院、診療所、集会所、公会堂、競技場、茶室など)の床を用途に応じて形成することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明の各種特性の評価は次の方法で行った。
【0065】
[圧縮弾性率]
JISK7181に準じて、直径29mmの円盤形状に切り出した第1の緩衝層を用いて、試験速度10mm/分にて加圧板により、前記第1緩衝層の当初の厚みを基準にして、歪み10%から20%へと圧縮した時の弾性率として測定された数値を、10%から20%へ圧縮する際の第1の緩衝層の圧縮弾性率として評価した。
また、JISK7181に準じて、直径29mmの円盤形状に切り出した第2の緩衝層を用いて、試験速度10mm/分にて加圧板により、前記第2緩衝層の当初の厚みを基準にして、歪み2.5%から5.0%へと圧縮した時の弾性率として測定された数値を、2.5%から5.0%へ圧縮する際の第2の緩衝層の圧縮弾性率として評価した。
【0066】
[曲げ弾性率]
JIS K 7171の規定に準じて、試験速度10m/分で0.25%から0.5%まで変化した時の弾性率として測定された数値である。なお、曲げ弾性率が方向(例えば、MD方向、CD方向)によって異なる場合は、曲げ弾性率の高い方を採用した。
【0067】
[厚み(mm)、見かけ密度(kg/m3)]
JIS L 1913「一般不織布試験方法」の6.1に準じて、不織繊維構造体の目付(g/m2)を測定し、JIS L 1913「一般不織布試験方法」の6.2に準じて、不織繊維構造体の厚み(mm)を測定し、目付けと厚みの値から見かけ密度(kg/m3)を算出した。
【0068】
[曲げ強さ]
JIS K 7171の規定に準じて、試験片幅を30mm、長さを200mm、支点間距離を160mm、試験速度を10mm/分に設定して、3点曲げ試験法により曲げ強さを測定した。
【0069】
[転倒衝突時の衝撃時加速度G値]
JIS A 5917(2018)に準じて、試験体直上から鋼製ヘッド(3.75±0.10kg)を落下高さ200±5mmで垂直に落下させ、試験体に衝突した際の最大加速度G値を測定し、転倒衝突時の硬さの指標とした。なお、床用緩衝材のみを試験体とした場合、試験体としては、第1の緩衝層の下側に第2の緩衝層を配置し、第1の緩衝層の上側に厚み5.5mmのシナ合板(曲げ弾性率:5545MPa)を配置したものを使用すればよい。なおこの場合に得られる値は、実施例の床構成材で得られた値と同程度になると考えられる。
【0070】
[日常的な動作時の硬さ]
JIS A 5917(2018)に準じて、試験体直上から質量40kgの重りを荷重板を介して試験体に荷重をかけた際、試験体の変形量が最大に達する時点までの変形エネルギーUF(N・cm)、復元量DR(cm)、復元時間TR(s)を測定し、JIS A 5917(2018)に定められた下記式(1)で算出した値を日常的な動作時の硬さとした。
log(UF/9.8-8DR・DR・TR
-1) (1)
なお、床用緩衝材のみを試験体とした場合、試験体としては、第1の緩衝層の下側に第2の緩衝層を配置し、第1の緩衝層の上側に厚み5.5mmのシナ合板(曲げ弾性率:5545MPa)を配置したものを使用すればよい。なおこの場合に得られる値は、実施例の床構成材で得られた値と同程度になると考えられる。
【0071】
[実施例1]
表面化粧材としてイ草製の畳表、クッション材5として厚み2mm、密度10kg/m
3の不織繊維構造体(株式会社クラレ製「フェリベンディ」ボードタイプ)を使用し、板材1として厚み7mmの光洋産業株式会社製「高粱麻ボード」(曲げ弾性率:700MPa)を使用し、第1の緩衝層2として厚み12mm、見かけ密度50kg/m
3の湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体(株式会社クラレ製「フェリベンディ」ボードタイプ)を使用し、第2の緩衝層3として厚み15mmのヤシボード(アゼアス株式会社製)を使用し、これらの材料を
図3に示す積層状態で接着剤により接着して床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0072】
[実施例2]
第2の緩衝層3として、厚み30mmのヤシボード(アゼアス株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0073】
[実施例3]
第2の緩衝層3として、厚み10mmのケナフボード(山中産業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0074】
[実施例4]
第2の緩衝層3として、厚み20mmのケナフボード(山中産業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0075】
[実施例5]
第2の緩衝層3として、厚み30mmのタタミボード(大建工業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0076】
[実施例6]
第1の緩衝層2として、厚み8mm、見かけ密度50kg/m3の湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体(株式会社クラレ製「フェリベンディ」ボードタイプ)を使用し、第2の緩衝層3として、厚み30mmのタタミボード(大建工業株式会社製)を使用した以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値を表1に示す。
【0077】
[実施例7]
第2の緩衝層3として、厚み30mmの押出発泡法ポリスチレンボード(デュポン・スタイロ株式会社製、「スタイロフォーム」(TM))を使用した以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層および第2の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0078】
[比較例1]
第2の緩衝層3を配置しない以外は実施例1と同様にして、床構成材(薄畳)を得た。第1の緩衝層の物性、および得られた床構成材の転倒衝突時の衝撃時加速度G値および日常的な動作時の硬さを表1に示す。
【0079】
[比較例2~6]
実施例1~5で用いた第2の緩衝層3について測定された転倒衝突時の衝撃時加速度G値を表1に示す。
【0080】
[比較例7]
実施例7で用いた第2の緩衝層3について測定された転倒衝突時の衝撃時加速度G値を表1に示す。
【0081】
【0082】
表1に示すように、比較例1は、第2の緩衝層を使用しない以外は実施例1と同じ構成であるが、その転倒衝突時の硬さ試験で示されたG値は52Gであった。そして、比較例2は、実施例1で使用された第2の緩衝層単独であるが、その転倒衝突時の硬さ試験で示されたG値は78Gであった。実施例1は、比較例1と比較例2との組み合わせにもかかわらず、そのG値は34Gであり、比較例1および2で得られたG値を大きく下回った。
【0083】
同様に、実施例2~7は、いずれも、第2の緩衝層を使用しない以外は実施例1と同じ構成である比較例1で得られたG値、およびそれぞれが使用する第2の緩衝層単独のG値のいずれも大きく下回るG値であり、いずれも、優れた耐衝撃性を示していた。
【0084】
また、日常的な動作時の硬さについても、いずれの実施例においても、0.6~2.0の範囲に入っており、硬すぎず柔らかすぎない硬さを示していた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の床用緩衝材は、様々な床構成材に対して良好な耐衝撃性を付与することができる。例えば、床構成材は、敷き床(例えば、畳床、タイルカーペットなど)として有用に用いることができるだけでなく、張り床(例えば、フローリングなどの木質床、クッションフロアなどの高分子シート床、各種タイルなどのタイル床など)、塗り床(例えば、合成塗料や天然塗料により塗装される木質系床など)などとして有用に用いることができる。
【0086】
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 板材
2 第1の緩衝層
3 第2の緩衝層
4 表面化粧材
5 クッション材
10 床用緩衝材
20 床構成材
30 床構成材