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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20241101BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C23C16/44 J
H01L21/302 101H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020211353
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098040
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 翔
(72)【発明者】
【氏名】中根 由太
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-123900(JP,A)
【文献】特開2015-122486(JP,A)
【文献】特開2014-187248(JP,A)
【文献】国際公開第2020/226110(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/081303(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/050596(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
21/302-21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チャンバ内に配置されたチャンバ内パーツにプリコート膜を形成する工程と、
(b)前記工程(a)の後に、1以上の基板を処理する工程と、
を含み、
前記工程(a)は、
(a1)応ガスから生成された第1のプラズマを用いて、前記チャンバ内パーツと前記第1のプラズマとのポテンシャル差は100V以下として、前記チャンバ内パーツに第1の膜を形成する工程と、
(a2)第2のプラズマを用いて、前記第1の膜の表面に第2の膜を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、
(1)前記工程(a2)で供給されるプラズマ生成用の高周波電力は、前記工程(a1)で供給されるプラズマ生成用の高周波電力よりも大きい、
(2)前記工程(a2)で供給されるバイアス用の高周波電力は、前記工程(a1)で供給されるバイアス用の高周波電力よりも大きい、
(3)前記工程(a2)におけるチャンバ内の温度は、前記工程(a1)におけるチャンバ内の温度よりも高い、及び
(4)前記反応ガスはハロゲン含有ガスを含み、前記工程(a2)における前記ハロゲン含有ガスの濃度は、前記工程(a1)における前記ハロゲン含有ガスの濃度よりも高い、
の少なくとも1つ満足する条件で実行される、
請求項に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記工程(a1)において、前記チャンバ内パーツと前記第1のプラズマとのポテンシャル差は50V以下である、
請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記工程(a1)は、プラズマ生成用の高周波電力を段階的に大きくする条件で実行する、
請求項1~3の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記反応ガスは、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを含み、
前記工程(a1)は、
前記チャンバ内に第1の反応ガスを供給し、前記チャンバ内パーツに第1の反応ガスを吸着させる工程と、
前記チャンバ内に第2の反応ガスを供給し、前記チャンバ内パーツに吸着した前記第1の反応ガスと前記第2の反応ガスから生成した前記第1のプラズマを反応させることにより、前記第1の膜を形成する工程と、
を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記工程(a1)は、
前記第1のプラズマの発光状態に関する情報を、検出器を用いて取得する工程と、
前記取得した情報から前記チャンバ内パーツに堆積した前記第1の膜の膜厚を推定する工程と、
をさらに含む、請求項1~5の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記工程(a1)は、前記取得した情報に基づいて、成膜条件を調整する工程をさらに含む、
請求項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)チャンバ内に配置されたチャンバ内パーツにプリコート膜を形成する工程と、
(b)前記工程(a)の後に、1以上の基板を処理する工程と、
を含み、
前記工程(a)は、
(a1)プラズマを用いずに前記チャンバ内パーツに第1の膜を形成する工程と、
(a2)第2のプラズマを用いて、前記第1の膜の表面に第2の膜を形成する工程と、
を含み、
前記工程(a1)は、
前記チャンバ内に第1の有機化合物を含むガスを供給し、前記チャンバ内パーツに前記第1の有機化合物を吸着させる工程と、
前記チャンバ内に第2の有機化合物を含むガスを供給し、前記チャンバ内パーツに吸着した前記第1の有機化合物と前記第2の有機化合物とを重合させることにより、前記第1の膜を形成する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項9】
前記工程(a1)は、前記第1の膜が前記第2のプラズマから前記チャンバ内パーツを保護可能な厚さとなるまで実行する、
請求項1~の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1の膜と前記第2の膜とは、同じ種類の膜である、
請求項1~の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記工程(a)は、予め定めた前記基板の処理時間、前記基板の処理枚数又は前記基板の処理ロット数に応じて実行する
請求項1~10の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記工程(a2)は、
前記第2のプラズマの発光状態に関する情報を、検出器を用いて取得する工程と、
前記取得した情報から前記チャンバ内パーツに堆積した前記第2の膜の膜厚を推定する工程と、
をさらに含む、
請求項1~11の何れか1つに記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記工程(a2)は、前記取得した情報に基づいて、成膜条件を調整する工程をさらに含む、
請求項12に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板処理前にチャンバ内壁にシリコン含有膜をコーティングして、パーティクルを低減する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7204913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、パーティクルの発生を抑えつつチャンバ内をプリコートする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理方法は、(a)チャンバ内に配置されたチャンバ内パーツにプリコート膜を形成する工程と、(b)工程(a)の後に、1以上の基板を処理する工程と、を含む。工程(a)は、(a1)プラズマを用いずに、又は、前記チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制可能な条件で反応ガスから生成された第1のプラズマを用いて、前記チャンバ内パーツに第1の膜を形成する工程と、(a2)第2のプラズマを用いて、前記第1の膜の表面に第2の膜を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、パーティクルの発生を抑えつつチャンバ内をプリコートできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、従来のプリコートの際のチャンバ内の状態を模式的に示した図である。
図4図4は、実施形態に係る基板処理方法におけるプリコートする工程の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係るエッチングレートの一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係るプリコートする工程でのチャンバ内の状態を模式的に示した図である。
図7図7は、従来のプリコートにおける膜厚の変化の一例を示した図である。
図8図8は、実施形態に係るプリコートにおける膜厚の変化の一例を示した図である。
図9図9は、実施形態に係るプリコートする工程での膜厚の変化の他の一例を示した図である。
図10図10は、実施形態に係るプリコートする工程でプラズマ生成用の高周波電力を増加させた一例を示した図である。
図11図11は、実施形態に係るプリコートする工程でプラズマ生成用の高周波電力を増加させた他の一例を示した図である。
図12図12は、プリコート膜の膜厚とプリコート膜を貫通するイオンのイオンエネルギーの関係の一例を示した図である。
図13図13は、プリコート膜の膜厚とプリコート膜を貫通するイオンのイオンエネルギーの関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示する基板処理方法の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示する基板処理方法が限定されるものではない。
【0009】
半導体デバイスの製造では、半導体ウエハ等の基板をチャンバ内に配置してプラズマエッチングなどの基板処理を実施する。チャンバは、例えば、Al(アルミニウム)やY(イットリウム)等の金属化合物で内壁が覆われている。チャンバで基板処理が実施されると、チャンバ内壁を覆う金属化合物が剥がれ、剥がれた金属化合物のパーティクルによって半導体デバイスに形状異常が発生する場合がある。そこで、基板処理を実施する前に、チャンバ内をプリコートして金属化合物による汚染を抑制することが行われている。プリコートは、チャンバ内に供給した成膜材料からプラズマを生成することにより行われる。この際、プリコート膜が形成される前にチャンバ内のパーツにイオンが入射し、パーティクルが発生する場合がある。
【0010】
そこで、パーティクルの発生を抑えつつチャンバ内をプリコートする新たな技術が期待されている。
【0011】
[実施形態]
[成膜装置の構成]
実施形態について説明する。以下では、基板処理としてプラズマエッチングなどのプラズマ処理を実施する場合を主な例に説明する。図1は、実施形態に係る基板処理装置10の概略構成を示す図である。基板処理装置10は、実施形態に係る基板処理装置の一例である。図1に示す基板処理装置10は、実施形態に係る基板処理方法を実現するために使用できる。図1に示す基板処理装置10は、いわゆる誘導結合型プラズマ(Inductively-coupled plasma:ICP)装置であり、誘導結合型プラズマを生成するためのプラズマ源を有する。ただし、実施形態に係る基板処理装置は、他の手法で生成されるプラズマを利用してもよい。例えば、実施形態に係る基板処理装置は、容量結合型プラズマ(CCP)、ECRプラズマ(electron-cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP)、または、表面波プラズマ(SWP)等を利用する装置であってもよい。
【0012】
基板処理装置10は、チャンバ12を備える。チャンバ12は、Al(アルミニウム)やY(イットリウム)等を含んだ金属で形成される。例えば、チャンバ12は、Alや、Yで形成される。チャンバ12は、例えば、略円筒形状である。チャンバ12内には、処理が実行される空間12cが設けられている。
【0013】
空間12cの下方には、基板支持体14が配置されている。基板支持体14は、上に載置される基板Wを保持するよう構成されている。基板Wは、例えば、半導体ウエハである。
【0014】
基板支持体14は、支持機構13により支持可能である。支持機構13は、空間12c内でチャンバ12の底部から上方に向けて延在する。支持機構13は、略円筒形であってよい。支持機構13は石英等の絶縁材料で構成できる。
【0015】
基板支持体14は、静電チャック16と下部電極18とを備える。下部電極18は、第1プレート18aと第2プレート18bとを含む。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、アルミニウム等の金属で構成される。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、例えば、略円筒形である。第2プレート18bは、第1プレート18a上に配置される。第2プレート18bは、第1プレート18aと電気的に接続されている。
【0016】
静電チャック16は、第2プレート18b上に配置される。静電チャック16は、絶縁層と当該絶縁層内に配置される薄膜電極とを備える。静電チャック16の薄膜電極には、スイッチ23を介して直流電源22が電気的に接続されている。静電チャック16は、直流電源22の直流電圧から静電力を生成する。静電チャック16は生成した静電力により基板Wを吸着保持する。
【0017】
基板処理装置10では、基板Wと静電チャック16の外周を囲むように、エッジリングERが第2プレート18bの上かつ第2プレート18bの周囲に配置される。エッジリングERは、プロセスの均一性を高める役割を有する。エッジリングERは、例えば、シリコン製である。
【0018】
第2プレート18b内には、流路24が形成されている。流路24には、チャンバ12外部に配置される温度調節部(例えば、チラーユニット)から温度制御のため冷媒等の熱交換媒体が供給される。温度調節部は、熱交換媒体の温度を調節する。熱交換媒体は、温度調節部からパイプ26aを通って流路24に供給される。温度調節部からパイプ26aを通り流路24に供給された熱交換媒体は、パイプ26bを通って温度調節部に送り返される。熱交換媒体は、温度調節部による温度調節の後、基板支持体14内の流路24に戻される。このようにして、基板支持体14の温度すなわち基板Wの温度を調節することができる。
【0019】
基板処理装置10は、さらに、基板支持体14の中を通って静電チャック16の上表面まで延びる気体供給ライン28を備える。静電チャック16の上表面と基板Wの下表面との間の空間には、熱交換ガス供給機構から気体供給ライン28を通って、ヘリウム(He)ガス等の熱交換ガスが供給される。熱交換ガスにより、基板支持体14と基板Wとの間での熱交換が促進される。
【0020】
また、ヒータHTが基板支持体14内に配置されてもよい。ヒータHTは、加熱装置である。ヒータHTは、例えば、第2プレート18bまたは静電チャック16内に埋め込まれている。ヒータHTは、ヒータ電源HPに接続される。ヒータ電源HPがヒータHTに電力を供給することで、基板支持体14の温度ひいては基板Wの温度が調整される。
【0021】
基板支持体14の下部電極18には、整合器32を介して高周波(Radio Frequency:RF)電源30が接続されている。高周波電源30は、バイアス用の高周波電源の一例である。高周波電源30は、下部電極18にバイアス用の高周波電力を供給し、基板支持体14上に載置される基板Wにイオンを引き込む。高周波電源30が生成する高周波電力の周波数は、例えば、400kHzから40.68MHzの範囲内である。一例では、高周波電力の周波数は13.56MHzである。
【0022】
整合器32は、高周波電源30からの出力インピーダンスと負荷側すなわち下部電極18側のインピーダンスとの間のマッチングを行う回路を含む。
【0023】
基板処理装置10はさらに、チャンバ12の内壁に着脱可能に取り付けられたシールド34を備える。シールド34はまた、支持機構13の外周を囲むように配置される。シールド34は、処理によって生成される副生成物のチャンバ12への付着を防止する。シールド34は、Y等のセラミックスでコーティングされたアルミニウム部材であってもよい。
【0024】
基板支持体14とチャンバ12の側壁との間には、排気路が形成されている。排気路は、チャンバ12の底部に形成された排気口12eに接続されている。排気口12eは、パイプ36を介して排気装置38に接続されている。排気装置38は、圧力調整部と、ターボ分子ポンプ(TMP)等の真空ポンプと、を含む。バッフル板40は、排気路内、すなわち、基板支持体14とチャンバ12の側壁との間に配置される。バッフル板40は厚さ方向にバッフル板40を貫通する複数の貫通穴を有する。バッフル板40は、Y等のセラミックスで表面がコーティングされたアルミニウム部材であってもよい。
【0025】
チャンバ12の上側には開口が形成されている。開口は誘電体窓42によって閉鎖される。誘電体窓42は石英等で形成される。誘電体窓42は、例えば、平らな板である。
【0026】
チャンバ12の側壁にはガス供給口12iが形成されている。ガス供給口12iはガス供給管46を介してガス供給部44に接続されている。ガス供給部44は処理に使用される種々のガスを空間12cに供給する。ガス供給部44は、複数のガス源44a、複数の流量制御器44b、および複数のバルブ44cを備える。図1には明示していないが、供給するガスごとに異なるガス供給口を設けて、ガスが混じり合わないようにしてもよい。
【0027】
複数のガス源44aは、後述する種々のガスのガス源を含む。1のガス源が1以上のガスを供給してもよい。複数の流量制御器44bは、マスフローコントローラ(MFC)であってもよい。流量制御器44bは、圧力制御により流量制御を実現する。複数のガス源44aに含まれる各ガス源は、複数の流量制御器44bのうち対応する一つの流量制御器および複数のバルブ44cのうち対応する一つのバルブを介してガス供給口12iに接続されている。ガス供給口12iの位置は、特に限定されない。例えば、ガス供給口12iはチャンバ12の側壁ではなく誘電体窓42内に形成されてもよい。
【0028】
チャンバ12の側壁内には、開口12pが形成されている。開口12pは、基板Wの搬入出経路となる。基板Wは、開口12pを介して、外部からチャンバ12の空間12cに搬入され、空間12c内からチャンバ12の外へと搬出される。チャンバ12の側壁上には、ゲートバルブ48が設けられ、開口12pを開放および閉塞可能となっている。
【0029】
チャンバ12および誘電体窓42上には、アンテナ50とシールド60が配置されている。アンテナ50およびシールド60は、チャンバ12の外側に配置される。一実施形態においては、アンテナ50は、内側アンテナ素子52Aと外側アンテナ素子52Bとを含む。内側アンテナ素子52Aは、誘電体窓42の中央に配置されるスパイラルコイルである。外側アンテナ素子52Bは、誘電体窓42上かつ内側アンテナ素子52Aの外周側に配置されるスパイラルコイルである。内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは各々、銅、アルミニウム、ステンレススチール等の導電性材料で構成される。
【0030】
内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは、複数のクランプ54により把持され、まとめて保持されている。複数のクランプ54は各々棒状である。複数のクランプ54は、内側アンテナ素子52Aの略中央から外側アンテナ素子52Bの外周側へ径方向に延びている。
【0031】
アンテナ50は、シールド60で覆われている。シールド60は、内側シールド壁62Aと外側シールド壁62Bとを備える。内側シールド壁62Aは円筒形状である。内側シールド壁62Aは、内側アンテナ素子52Aと外側アンテナ素子52Bとの間に配置され、内側アンテナ素子52Aを包囲する。外側シールド壁62Bは、円筒形状である。外側シールド壁62Bは外側アンテナ素子52Bの外側に配置され、外側アンテナ素子52Bを包囲する。
【0032】
内側アンテナ素子52A上には、円盤状の内側シールド板64Aが配置されている。内側シールド板64Aは、内側シールド壁62Aの開口を覆っている。外側アンテナ素子52Bの上には、平らなリング形状の外側シールド板64Bが配置されている。外側シールド板64Bは、内側シールド壁62Aと外側シールド壁62Bとの間の開口を覆っている。
【0033】
シールド60に含まれるシールド壁およびシールド板の形状は、上記したものに限定されない。例えば、シールド60のシールド壁は、断面4角形の角柱状であってもよい。
【0034】
内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは、高周波電源70Aおよび高周波電源70Bにそれぞれ接続されている。高周波電源70A及び高周波電源70Bは、プラズマ生成用の高周波電源の一例である。内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは、高周波電源70Aおよび高周波電源70Bからそれぞれ、同一または異なる周波数の電力供給を受ける。高周波電力が高周波電源70Aから内側アンテナ素子52Aに供給されると、誘導磁界が空間12c内に発生し、空間12c内の気体を励起して基板Wの中心上方にプラズマを発生させる。他方、高周波電力が高周波電源70Bから外側アンテナ素子52Bに供給されると、空間12c内に誘導磁界が発生して空間12c内の気体を励起して基板Wの外周部上方にリング状にプラズマを発生させる。
【0035】
内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52B各々の電気長は、高周波電源70Aおよび高周波電源70Bから出力される周波数に応じて調整される。このため、内側シールド板64Aおよび外側シールド板64Bのz軸方向の位置は、アクチュエータ68Aおよび68Bにより各々独立して調整される。
【0036】
基板処理装置10は、さらにコントローラ80を備える。コントローラ80は、例えば、プロセッサ、メモリ等の記憶部、入力部、ディスプレイ等を備えるコンピュータである。コントローラ80は、記憶部に記憶された制御プログラムやレシピデータに基づき動作し、基板処理装置10の各部を制御する。例えば、コントローラ80は、複数の流量制御器44b、複数のバルブ44c、排気装置38、高周波電源70A,70B、高周波電源30、整合器32、ヒータ電源HP等を制御する。コントローラ80は、プログラムやデータを記憶部から読み出して基板処理装置10の各部を制御することで、後述する、実施形態に係る基板処理方法の基板処理を実施する。
【0037】
[基板処理方法の処理の流れの一例]
基板処理装置10は、以下に説明する基板処理方法により基板処理を実施する。また、基板処理装置10は、以下に説明する基板処理方法により基板処理を実施する前に基板Wが配置されるチャンバ12内をプリコートする。以下では、基板処理装置10が基板処理としてプラズマエッチングなどのプラズマ処理を実施する場合を例に説明する。
【0038】
図2は、実施形態に係る基板処理方法の一例を示すフローチャートである。実施形態に係る基板処理装置10は、基板処理方法により半導体基板等の基板Wにプラズマ処理を実施する。
【0039】
ステップS1では、チャンバ12内が基板処理に適した状態となるようシーズニングを行う。シーズニングでは、例えば、最初の基板Wに対するプラズマ処理を開始する前に、基板支持体14にダミーウェハを設置した後、プラズマを生成して、チャンバ12の内表面温度を上昇させる。
【0040】
ステップS2では、チャンバ12内をプリコートする。このプリコートする工程の詳細は、後述する。
【0041】
ステップS3では、開口12pを介して基板Wをチャンバ12内に搬入し、基板Wを基板支持体14に載置する。ステップS4では、基板Wに対してプラズマ処理を実施する。例えば、ステップS4では、基板Wに対してプラズマエッチングを実施する。ステップS5では、プラズマ処理済みの基板Wを開口12pを介してチャンバ12から搬出する。ステップS6では、プリコートした膜をチャンバ12内から除去する。
【0042】
ステップS7では、基板処理のシーケンスを終了するか否かを判定する。例えば、ロット内に未処理の基板Wがある場合、シーケンスを終了しないと判定し(ステップS7:No)、ステップS2へ移行して未処理の基板Wを搬入してプラズマ処理を実施する。一方、ロット内の全ての基板Wにプラズマ処理を実施した場合、シーケンスを終了すると判定し(ステップS7:Yes)、処理を終了する。
【0043】
なお、ステップS6のプリコート膜を除去する工程は、実施しなくてもよい。また、ステップS6のプリコート膜を除去する工程は、シーケンスを終了する際に1回だけ実施してもよい。また、ステップS2のプリコートの工程は、プリコート膜が複数回の基板処理に耐えられる場合、基板Wごとに実施せず、プリコートした膜が耐えられる複数回の基板処理ごとに実施してもよい。
【0044】
[プリコートの第1例]
ところで、従来のプリコートでは、成膜材料を含むガスから生成したプラズマにより、チャンバ12内にプリコート膜を形成する。しかし、プリコートの開始後、プリコート膜が形成される前に、プラズマ中のイオンがチャンバ12内のパーツに入射すると、パーティクルが発生する。
【0045】
図3は、従来のプリコートの際のチャンバ12内の状態を模式的に示した図である。図3には、チャンバ12の内部が簡略化して示されている。チャンバ12は、基板支持体14が内部に配置されている。チャンバ12内にプラズマを生成すると、チャンバ12の内壁、基板支持体14及び誘電体窓42などのチャンバ内に配置されたパーツ(以下、「チャンバ内パーツ」という。)にイオンが入射し、チャンバ12内にパーティクルが発生する。例えば、チャンバ内パーツをスパッタするイオンフラックスΓは、プラズマ密度N及び電子温度Teと以下の式(1)に示す関係がある。
【0046】
Γ∝ N×(Te)1/2 ・・・(1)
【0047】
したがって、プラズマ密度Nが高くなるとイオンフラックスΓが増加するため、パーティクルの発生量が増加することとなる。
【0048】
そこで、実施形態に係る基板処理方法では、以下のようにプリコートする工程を実施する。図4は、実施形態に係る基板処理方法におけるプリコートする工程の一例を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS11では、排気装置38を制御し、チャンバ内パーツをプリコートに適した所定の圧力に調整する。チャンバ12内の圧力は、例えば100mTorr以上とする。
【0050】
ステップS12では、ガス供給部44から第1の膜の成分を含む反応ガスをチャンバ12内に供給することによりチャンバ内パーツにプリコート膜の第1の膜を形成する。ステップS12では、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)により、チャンバ内パーツにプリコート膜の第1の膜を形成する。具体的には、高周波電源70A及び高周波電源70Bよりプラズマ生成用の高周波電力を供給し、反応ガスから第1のプラズマを生成することにより、第1の膜を形成してもよい。この際、第1のプラズマを、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制可能な条件で生成する。例えば、ステップS12では、プラズマ生成用の高周波電力、バイアス用の高周波電力、チャンバ内圧力及びチャンバ内の温度の少なくとも1つを制御することにより、第1のプラズマによるチャンバ内パーツのスパッタリングを抑制してよい。また、反応ガスがハロゲン含有ガスを含む場合には、ハロゲン含有ガスの濃度により、第1のプラズマによるチャンバ内パーツのスパッタリングを抑制してもよい。一例では、プラズマ生成用の高周波電力を制御し、チャンバ内パーツとプラズマとのポテンシャル差が100V以下又は50V以下となるように調整することで、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制することができる。
【0051】
ステップS12において、第1の膜は、ALD(Atomic Layer Deposition)により形成してもよい。ALDの場合、チャンバ12内に第1の反応ガスを供給し、第1の反応ガスをチャンバ内にパーツに吸着させる。この際、チャンバ内パーツに吸着しなかった余剰の第1の反応ガスは、チャンバ12からパージしてもよい。その後、チャンバ12内に第2の反応ガスを供給し、第2の反応ガスから生成したプラズマ(第1のプラズマ)と、チャンバ内パーツに吸着した第1の反応ガスとを反応させることにより、第1の膜を形成する。ALDによれば、CVDと比べて低いプラズマ密度Nで、チャンバ内パーツにムラなく第1の膜を形成することができる。
【0052】
ステップS12は、第1の膜の膜厚が、次のステップS12において、プラズマによるスパッタリングからチャンバ内パーツを保護可能な所定の厚さとなるまで実施する。
【0053】
ステップS13では、ガス供給部44から第2の膜の成分を含む反応ガスをチャンバ12内に供給し、この反応ガスから生成した第2のプラズマを用いて、第1の膜の表面に第2の膜を形成する。第1の膜と第2の膜は、同じ種類の膜であってもよく、異なる種類の膜であってもよい。第2の膜は、例えば、CVDにより形成することができる。具体的には、チャンバ12内に第2の膜の成分を含む反応ガスを供給し、この反応ガスからプラズマ(第2のプラズマ)を生成することにより、第2の膜を形成する。この際、ステップS12で形成した第1の膜が、第2のプラズマによるスパッタリングからチャンバ内パーツを保護する。このため、ステップS13では、プリコート実施時のパーティクルの発生を抑制することができる。
【0054】
なお、ステップS13におけるプリコートの条件は、第2のプラズマによるスパッタリングから第1の膜によりチャンバ内パーツが保護される限り特に制限されることはない。例えば、ステップS12において、第1の膜をCVDにより形成した場合、ステップS12におけるプリコートの条件に応じて、例えば、以下の(1)~(4)の少なくとも1つを満たすような条件を選択することができる。
(1)ステップS13で供給されるプラズマ生成用の高周波電力は、ステップS12で供給されるプラズマ生成用の高周波電力よりも大きい。
(2)ステップS13で供給されるバイアス用の高周波電力は、ステップS12で供給されるバイアス用の高周波電力よりも大きい。
(3)ステップS13におけるチャンバ内の温度は、ステップS12におけるチャンバ内の温度よりも高い。
(4)反応ガスがハロゲン含有ガスを含む場合、ステップS13におけるハロゲン含有ガスの濃度は、ステップS12におけるハロゲン含有ガスの濃度よりも高い。
【0055】
ステップS13は、第1の膜及び第2の膜によるプリコートの膜の膜厚がプラズマ処理からチャンバ内パーツを保護可能な厚さとなるまで実施した後、図2のステップS3へ移行する。
【0056】
プリコート膜としては、例えば、シリコン含有膜、有機膜、金属含有膜を使用することができる。シリコン含有膜としては、例えば、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を使用することができる。金属含有膜としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)もしくはスズ(Sn)などの金属を含む膜、又は、これらの金属の酸化物、窒化物、硫化物もしくはハロゲン化物を含む膜を使用することができる。
【0057】
以下、各種のプリコート膜を形成するための材料の一例について説明する。
【0058】
シリコン含有膜をCVDにより形成する場合、反応ガスとして、シリコン含有ガスと酸素含有ガス又は窒素含有ガスとの混合ガスを用いることができる。シリコン含有膜をALDにより形成する場合、第1の反応ガスとしてシリコン含有ガスを、第2の反応ガスとして酸素含有ガス又は窒素含有ガスを用いることができる。より具体的には、シリコン酸化膜を形成する場合には、シリコン含有ガスとしてアミノシラン、SiCl又はSiFなどを含むガスを用いることができ、酸素含有ガスとしてOガスなどを用いることができる。また、シリコン窒化膜を形成する場合には、シリコン含有ガスとしてアミノシラン、SiCl、ジクロロシラン又はヘキサクロロジシランなどを含むガスを用いることができ、窒素含有ガスとしてNHガス又はNガスなどを用いることができる。
【0059】
有機膜は、例えば、Cなどの炭素含有ガスからプラズマを生成することにより形成することができる。また、エポキシド、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、無水カルボン酸、イソシアネート、フェノール類などの第1の反応ガスをチャンバ12内に供給し、第1の反応ガスをチャンバ内パーツに吸着させた後、チャンバ内パーツに吸着した第1の反応ガスと、NH結合を有する無機化合物ガス、不活性ガス、N及びHの混合ガス、HOガス、H及びOの混合ガスなどの第2の反応ガスから生成したプラズマとを反応させることにより形成することができる。
【0060】
金属含有膜をCVDにより形成する場合、反応ガスとして、金属含有ガスと酸化性ガス又は還元性ガスとの混合ガスを用いることができる。金属含有膜をALDにより形成する場合、第1の反応ガスとして金属含有ガスを、第2の反応ガスとして酸化性ガス又は還元性ガスを用いることができる。より具体的には、第1の反応ガスとしては、Ti、Ta、Ru、Al、Hf、Snなどの金属含有ガス、又は、これらの金属の酸化物、窒化物、硫化物もしくはハロゲン化物を含むガスを使用することができる。第2の反応ガスとしては、Hガスなどの水素含有ガス、Oガスなどの酸素含有ガス、Hガス及びN2ガスの混合ガス又はNHガスなどの水素及び窒素含有ガスを使用することができる。第2の反応ガスとして、水素含有ガスを使用した場合には金属含有膜を形成することができ、酸素含有ガスを使用した場合には金属酸化膜を形成することができ、水素及び窒素含有ガスを使用した場合には金属窒化膜を形成することができる。
【0061】
ここで、ステップS12において、CVDにより第1の膜を形成する場合の条件について、より詳細に説明する。プリコートの第1の膜の形成時におけるチャンバ内パーツのスパッタリング速度は、チャンバ内パーツのポテンシャルによって変化する。図5は、実施形態に係るエッチングレートの一例を示す図である。図5は、シリコン基板上に形成したY膜を、Clガスを用いてプラズマエッチングした際のエッチングレートを示している。図5の縦軸は、エッチングレート(E/R)を示している。横軸は、RFバイアス電圧を示している。エッチングレートは、チャンバ内パーツのスパッタリング速度に相当する。RFバイアス電圧は、プラズマとチャンバ内パーツまでの電位差(ポテンシャル)に相当する。RFバイアス電圧は、高周波電源30から供給されるバイアス用の高周波電力の大きさに応じて増減する。図5に示すように、エッチングレートは、RFバイアス電圧が低くなると低下する。例えば、エッチングレートは、RFバイアス電圧が100V以下となると、小さくなり、RFバイアス電圧が50V以下ではマイナスとなる。このことから、チャンバ内パーツのポテンシャルが100V以下の場合には、チャンバ内パーツのスパッタリングが大幅に抑制されると考えられる。また、チャンバ内パーツのポテンシャルが50V以下の場合には、チャンバ内パーツのスパッタリングはほとんど起きないと考えられる。したがって、プリコート実施時のチャンバ内パーツのポテンシャルが100V以下または50V以下の場合には、概ね、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制することができると考えられる。例えば、チャンバ内パーツとプラズマとのポテンシャル差を100V以下または50V以下とすることで、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制できる。
【0062】
ところで、チャンバ内パーツのポテンシャルを上記範囲に制御するための条件は、チャンバ12の構造や、プラズマ生成用の高周波電力の大きさ、バイアス用の高周波電力の大きさ、プラズマ生成方式(ICP、CCP、SWPなど)によって変動する。また、チャンバ内パーツのポテンシャルは、チャンバ12内に供給するガス種、チャンバ12内の圧力によっても変動する。
【0063】
そこで、事前に、基板処理装置10において、チャンバ内パーツのポテンシャルを上記範囲に制御可能な条件を求めて、その条件で第1の膜を形成してもよい。例えば、チャンバ内パーツとプラズマとのポテンシャル差が100Vまたは50Vとなるプラズマ生成用の高周波電力を求めて、そのデータをコントローラ80の記憶部に記憶させておく。そして、実施形態に係る基板処理方法では、ステップS12において、コントローラ80の記憶部に記憶したデータに基づき、コントローラ80がプラズマ生成用の高周波電源70A及び高周波電力70Bから供給する高周波電力を制御する。例えば、コントローラ80は、高周波電源70A及び高周波電力70Bを制御し、チャンバ内パーツとプラズマとのポテンシャル差が50V以下又は100V以下となるプラズマ生成用の高周波電力を供給する。これにより、チャンバ内パーツがスパッタリングされずに、第1の膜が形成され、チャンバ12内がプリコートされる。
【0064】
図6は、実施形態に係るプリコートする工程でのチャンバ12内の状態を模式的に示した図である。図6には、図3と同様に、チャンバ12の内部が簡略化して示されている。例えば、ステップS12では、上側の図のように、チャンバ12内に低密度のプラズマを生成し、チャンバ内パーツを第1の膜C1によりコーティングする。ステップS13では、下側の図のように、チャンバ12内に高密度のプラズマを生成する。この際、チャンバ内パーツにイオンが入射するが、チャンバ内パーツは第1の膜C1によりコーティングされているため、パーティクルの発生が抑制される。
【0065】
ここで、従来のプリコートにおける膜厚の変化と、実施形態に係るプリコートにおける膜厚の変化を説明する。図7は、従来のプリコートにおける膜厚の変化の一例を示した図である。図7には、プラズマ生成用の高周波電力、生成されるイオンフラックスΓの量及びプリコートの膜厚の経時変化が示されている。従来のプリコートでは、チャンバ12内に高密度のプラズマを生成する。高密度のプラズマを生成した場合、イオンフラックスΓが急激に増加し、プリコート膜が形成される前又はプリコート膜が十分な厚さとなる前に、チャンバ内パーツにイオンが入射し、パーティクルが発生する場合がある。
【0066】
図8は、実施形態に係るプリコートにおける膜厚の変化の一例を示した図である。図8には、プラズマ生成用の高周波電力(RF Power)、生成されるイオンフラックスの量Γ、プリコートの膜厚Dの経時変化が示されている。ステップS12では、プラズマ生成用の高周波電力HF1が供給されて、チャンバ12内に低密度のプラズマ(第1のプラズマ)が生成される。ステップS12では、プラズマが低密度であるため、イオンフラックスの量Γi1が少なく、成膜レートが低い。ステップS12により形成される第1の膜C1が所定の厚さD1となると、ステップS13へ移行する。ステップS13では、プラズマ生成用の高周波電力HF2が供給されてチャンバ12内に高密度のプラズマ(第2のプラズマ)が生成される。ステップS13では、プラズマが高密度であるため、成膜レートが高くなり、速やかに第2の膜を形成できる。ステップS13では、プラズマが高密度であるため、イオンフラックスの量Γi2が多くなるが、第1の膜C1により、第2のプラズマによるスパッタリングからチャンバ内パーツを保護できる。このように、実施形態に係るプリコートは、パーティクルの発生を抑えつつ速やかにプリコートできる。
【0067】
なお、図8では、ステップS12において連続的に膜を形成している場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。ステップS12において断続的に膜を形成してもよい。図9は、実施形態に係るプリコートする工程での膜厚の変化の他の一例を示した図である。図9には、プラズマ高周波電力(RF Power)、ALD又はCVDを実行するタイミング、生成されるイオンフラックスの量Γ、プリコートの膜厚Dの経時変化が示されている。ステップS12では、プリコートの材料のガスとプラズマ生成用の高周波電力HFの供給が断続的に行われて膜を形成する。
【0068】
また、ステップS12において、第1の膜の膜厚の増加に応じてプラズマ生成用の高周波電力を増加させてもよい。図10は、実施形態に係るプリコートする工程でプラズマ生成用の高周波電力を増加させた一例を示した図である。図10には、プラズマ生成用の高周波電力(RF Power)、生成されるイオンフラックスの量Γ、プリコートの膜厚Dの経時変化が示されている。ステップS12では、膜厚Dの増加に応じてプラズマ生成用の高周波電力を段階的に増加させて膜を形成する。
【0069】
ステップS12において、チャンバ内パーツにイオンが達してダメージを与えてパーティクルを飛散させるかは、イオンのエネルギーと、第1の膜C1の厚みの関係で決まる。このため、ステップS12において、イオンが第1の膜C1を貫通しない範囲で、第1の膜C1の膜厚の増加に応じてプラズマ生成用の高周波電力を増加させてもよい。
【0070】
図11は、実施形態に係るプリコートする工程でプラズマ生成用の高周波電力を増加させた他の一例を示した図である。図11には、プラズマ生成用の高周波電力(RF Power)、プリコート膜の膜厚の経時変化が示されている。ステップS12では、最初に、チャンバ内パーツとプラズマとのポテンシャル差が50V以下となるようにバイアス用のRF電力を調整して、膜厚がD1に達するまで第1の膜C1を形成する。膜厚D1となるまでに供給するプラズマ生成用の高周波電力は、チャンバ内パーツとプラズマとのポテンシャル差が50V以下となる電力であれば、一定であってもよく、変動してもよい。例えば、プラズマとチャンバとの電位差が、図11の(a)に示すように一定の割合で増加するようにプラズマ生成用の高周波電力を変動させてもよく、(b)及び(c)に示すように増加率が漸増又は漸減するようにプラズマ生成用の高周波電力を変動させてもよい。第1の膜C1の膜厚がD1に達した後は、移行期間として、第1の膜C1をイオンが貫通しない範囲でプラズマ生成用の高周波電力を増加させながら、第1の膜C1をイオンが貫通しなくなる膜厚D2に達するまで第1の膜C1を形成してもよい。膜厚がD2に達した後は、イオンが第1の膜C1を貫通しないため、さらに成膜レートが高いステップS13へ移行する。
【0071】
移行期間では、第1の膜C1をイオンが貫通しない範囲でバイアス用のRF電力を増加させてよい。図12及び図13は、プリコート膜の膜厚とプリコート膜を貫通するイオンのイオンエネルギーの関係の一例を示した図である。図12は、プリコート膜としてSiO膜を形成した例である。図13は、プリコート膜として有機膜を形成した例である。図12及び図13は、プリコート膜の膜厚と、当該膜厚のプリコート膜をイオンが貫通するために必要なイオンエネルギー(Vmax)の関係を示している。図12及び図13が示すように、膜厚が厚くなるほど、プリコート膜を貫通するために必要なイオンエネルギーは大きくなる。図12及び図13には、イオンが貫通しない膜厚の範囲を斜線領域で示されている。膜厚D2は、ステップS12において発生するイオンのイオンエネルギーでも貫通しない斜線領域の膜厚とする。移行期間では、ステップS12において発生するイオンの最大イオンエネルギーでも貫通しない膜厚D2まで第1の膜C1を堆積する。これにより、第1の膜C1をイオンが貫通しないため、パーティクルの発生を抑えることができる。
【0072】
[プレイコートの第2例]
上述したプリコートの第1例では、プラズマを用いて第1の膜を形成したが、プラズマを用いずに第1の膜を形成することも可能である。この場合、例えば、反応ガスとして、第1の有機化合物を含むガスと、第2の有機化合物を含むガスを用いることができる。第2の有機化合物は、第1の有機化合物と異なる有機篭物であってよい。
【0073】
第2例のステップS12では、チャンバ12内に第1の有機化合物を含むガスを供給し、第1の有機化合物をチャンバ内パーツの表面に吸着させる。この際、チャンバ内パーツに吸着しなかった第1の有機化合物は、チャンバ12からパージしてもよい。その後、チャンバ12内に第2の有機化合物を含むガスを供給し、チャンバ内パーツの表面に吸着した第1の有機化合物と第2の有機化合物とを重合させることにより、第1の膜を形成する。第2例では、第1の膜の形成時にプラズマを用いないため、チャンバ内パーツが第1のプラズマによってスパッタリングされることはない。
【0074】
第2例では、第1の有機化合物として、例えば、イソシアネート、カルボン酸又はカルボン酸ハロゲン化物などを使用することができる。また、第2の有機化合物としては、例えば、アミン又は水酸基を有する化合物を使用することができる。また例えば、第1の有機化合物として無水カルボン酸、第2の有機化合物としてアミンを用いることができる。また例えば、第1の有機化合物としてビスフェノールA、第2の有機化合物としてジフェニルカーボネート又はエピクロロヒドリンを使用することもできる。いずれの有機化合物を使用する場合であっても、重合反応を促進させるため、ヒータ等によりチャンバ内パーツを加熱してよい。
【0075】
[効果]
このように、実施形態に係る基板処理は、チャンバ12内に配置されたチャンバ内パーツ(例えば、チャンバ12の内壁、基板支持体14及び誘電体窓42)にプリコート膜を形成する工程(ステップS2、ステップS11~S13)と、(b)工程(a)の後に、1以上の基板を処理する工程(ステップS4)と、を含む。工程(a)は、(a1)プラズマを用いずに、又は、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制可能な条件で生成された第1のプラズマを用いて、チャンバ内パーツに第1の膜を形成する工程(ステップS12)と、(a2)第2のプラズマを用いて、第1の膜の表面に第2の膜を形成する工程(ステップS13)と、を含む。これにより、実施形態に係る基板処理は、パーティクルの発生を抑えつつチャンバ12内をプリコートできる。
【0076】
また、実施形態に係る基板処理では、工程(a1)は、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制可能な条件で、反応ガスから生成された第1のプラズマを用いて、チャンバ内パーツ上に第1の膜を形成する。これにより、実施形態に係る基板処理は、第1の膜を形成する際に、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制することができる。
【0077】
また、実施形態に係る基板処理では、工程(a1)は、(1)工程(a2)で供給されるプラズマ生成用の高周波電力は、工程(a1)で供給されるプラズマ生成用の高周波電力よりも大きい、(2)工程(a2)で供給されるバイアス用の高周波電力は、工程(a1)で供給されるバイアス用の高周波電力よりも大きい、(3)工程(a2)におけるチャンバ内の温度は、工程(a1)におけるチャンバ内の温度よりも高い、及び(4)反応ガスはハロゲン含有ガスを含み、工程(a2)におけるハロゲン含有ガスの濃度は、工程(a1)におけるハロゲン含有ガスの濃度よりも高い、の少なくとも1つ満足する条件で実行される。これにより、実施形態に係る基板処理は、第1の膜を形成する際に、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制することができるため、パーティクルの発生を抑えつつチャンバ12内をプリコートできる。
【0078】
また、実施形態に係る基板処理では、工程(a1)において、チャンバ内パーツと第1のプラズマとのポテンシャル差は100V以下である。これにより、実施形態に係る基板処理は、チャンバ内パーツのスパッタリングを抑制しつつ第1の膜を形成でき、パーティクルの発生を抑制できる。
【0079】
また、実施形態に係る基板処理では、工程(a1)において、チャンバ内パーツと第1のプラズマとのポテンシャル差は50V以下である。これにより、実施形態に係る基板処理は、チャンバ内パーツのスパッタリングをより抑制して第1の膜を形成でき、パーティクルの発生をより抑制できる。
【0080】
また、実施形態に係る基板処理では、工程(a1)は、プラズマ生成用の高周波電力を段階的に大きくする条件で実行する。これにより、実施形態に係る基板処理は、パーティクルの発生を抑制しつつ第1の膜を速く成膜でき、工程(a1)においてチャンバ12内を速やかにプリコートできる。
【0081】
また、実施形態に係る基板処理では、工程(a1)は、第1の膜が第2のプラズマからチャンバ内パーツを保護可能な厚さとなるまで実行する。これにより、実施形態に係る基板処理は、工程(a2)において第2の膜を形成する際のパーティクルの発生を抑制できる。
【0082】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0083】
例えば、上記の実施形態では、基板処理をプラズマエッチングとし、プラズマエッチングの前にチャンバ12内のプリコートを実施する場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。基板処理は、プリコートを実施する基板処理であれば、どのような基板処理であってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、ステップS2のプリコートの工程を基板Wごとに実施する場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。ステップS2のプリコートの工程は、予め定めた基板処理時間、予め定めた基板の処理枚数又は予め定めた基板の処理ロット数に応じて実行してもよい。
【0085】
また、実施形態に係るプリコート膜を形成する工程のうち、第1のプラズマを用いて第1の膜を形成する工程(a1)(ステップS12)は、第1のプラズマの発光状態に関する情報を、検出器を用いて取得する工程と、取得した情報からチャンバ12内パーツに堆積した第1の膜の膜厚を推定する工程と、をさらに含んでもよい。例えば、チャンバ12にプラズマの色や発光強度などの発光状態を検出する光学センサなどの検出器を設け、検出器で検出したプラズマの発光状態に関する情報に基づき、各波長の発光スペクトルを測定する。測定される各波長の発光スペクトルは、成膜レートによって変化する。各波長の発光スペクトルから成膜レートを推定して、チャンバ12内パーツに堆積した第1の膜の膜厚を推定し、チャンバーパーツに堆積した第1の膜厚がどの程度か推定してもよい。そして、推定した第1の膜の膜厚が第2のプラズマからチャンバ内パーツを保護可能な厚さ所定の膜厚となると、第2の膜を形成する工程を実施するようにしてもよい。
【0086】
また、第1のプラズマを用いて第1の膜を形成する工程(a1)(ステップS12)は、取得した情報から成膜特性に関する情報を得て、成膜条件を調整する工程をさらに含んでもよい。例えば、プラズマの発光状態ごとに、成膜レートなどの成膜特性との相関関係を事前に求めて相関関係情報をコントローラ80の記憶部に記憶させておく。そして、記憶部に記憶された相関関係情報に基づき、検出器で検出したプラズマの発光状態から成膜レートなどの成膜特性を求め、成膜特性が最適となるように成膜条件を調整してもよい。
【0087】
同様に、第2のプラズマを用いて第2の膜を形成する工程(a2)(ステップS13)も、第2のプラズマの発光状態に関する情報を、検出器を用いて取得する工程と、記取得した情報から成膜レートを算出して、チャンバ内パーツに堆積した第2の膜の膜厚を推定する工程と、をさらに含んでもよい。また、第2のプラズマを用いて第2の膜を形成する工程(a2)(ステップS13)も、取得した情報から成膜特性に関する情報を得て、成膜条件を調整する工程をさらに含んでもよい。
【0088】
また、チャンバ12内のプラズマの発光状態は、プリコートした膜の状態によっても変化する。例えば、基板の処理によりプリコートした膜が減少するとプラズマの発光状態が変化する。そこで、ステップS2のプリコートの工程は、ステップS4におけるプラズマ発光状態に基づいて実行してもよい。例えば、チャンバ12にプラズマの色や発光強度などの発光状態を検出する検出器を設け、検出器により検出された発光状態がプリコートした膜が減少した状態の発光状態である場合、ステップS2のプリコートの工程を実行するようにしてもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、基板を半導体ウエハとした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。基板は、何れの基板でもよい。
【0090】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 基板処理装置
12 チャンバ
30 高周波電源
80 コントローラ
W 基板
C1 第1の膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13