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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】超高分子量プロピレン(共)重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/06 20060101AFI20241101BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20241101BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C08F210/06
C08F4/654
C08L23/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021528173
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023195
(87)【国際公開番号】W WO2020255872
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2019111940
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597021842
【氏名又は名称】サンアロマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】大坪 彰博
(72)【発明者】
【氏名】神村 尭洋
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-293821(JP,A)
【文献】国際公開第2010/079799(WO,A1)
【文献】特開平06-057055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0266981(US,A1)
【文献】国際公開第97/020869(WO,A1)
【文献】プラスチック エージ,1990年,第36巻,第137-144頁
【文献】FILIATRAULT, D. et al.,Intrinsic Viscosities and Huggins’ Constant for Ethylene-Propylene Copolymers. 2. Effect of the Ste,Macromolecules,1979年,Vol. 12, No. 1,pp. 69-74
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60- 4/70
6/00-246/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
135℃においてテトラリン溶媒中で測定した極限粘度が20dl/g超である、プロピレンと30重量%以下のエチレンとの共重合体であって、
DSCを用いて10℃/分の昇温速度で求めた前記共重合体の融点Tm(℃)と、前記共重合体中のエチレン含有量C2(重量%)が下記式(1)を満たし、
Tm ≧ -3.4×C2 + 162 …(1)
ここで、前記Tmは、DSCの融解曲線において融解に伴う融解熱量が最大値を示す温度である、
共重合体。
【請求項2】
前記極限粘度が23dl/g以上であり、エチレンの含有量が3~30重量%である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含む固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、および
必要に応じて(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して調製することを含む、請求項1または2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の重合体を含む組成物であって、
当該組成物を構成する樹脂成分の総重量に対して、当該重合体の含有割合が0.1~20重量%である、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高分子量プロピレン(共)重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量プロピレン重合体は特に押出成形体(一般シート、発泡シート、ブロー成形体等)の樹脂成分として有用であり、これまで高分子量プロピレン重合体の製造に関し種々の検討がなされてきた。例えば特許文献1は135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]が5~50dl/gである架橋超高分子量オレフィン系重合体を開示する。しかし、実施例において具体的に開示されているオレフィン系重合体はポリエチレンのみである。特許文献2はデカリン溶液を用いて測定した極限粘度[η]が7dl/g以上25dl/g未満である超高分子量プロピレン単独重合体を開示する。当該文献の実施例には、[η]が20.2dl/gであるプロピレン重合体が開示されている。特許文献3はデカリン溶液を用いて測定した極限粘度[η]が少なくとも5dl/g以上である超高分子量ポリプロピレンを開示する。当該文献の実施例には、[η]が20.25dl/gであるポリプロピレンが開示されている。特許文献4は135℃テトラヒドロナフタレン(テトラリン)溶媒中で測定した極限粘度[η]が5~20dl/gであるポリプロピレンを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5979985号
【文献】特許第5653761号
【文献】特許第3023382号
【文献】特許第6144045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には[η]が高いプロピレン重合体は具体的に開示されていない。特許文献2および3には、[η]が20dl/g程度であるプロピレン重合体が開示されているが、当該粘度はデカリンを溶媒として測定した値である。デカリンを溶媒として測定した[η]の値を、テトラリンを溶媒として測定した値に換算すると、値が低くなることは当業者に自明である。したがって、特許文献2および3に記載の[η]を、テトラリンを溶媒として測定した値に換算すると、20dl/g未満となる。以上から、テトラリンを溶媒として測定した[η]が20dl/gを超える超高分子量プロピレン重合体はこれまで報告されていない。かかる事情を鑑み、本発明は超高分子量プロピレン重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、重合触媒や重合条件を最適化することで、前記超高分子量ポリプロピレン系重合体を製造できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]135℃においてテトラリン溶媒中で測定した極限粘度が20dl/g超である、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと30重量%以下の炭素数2もしくは4~8のα-オレフィンとの共重合体。
[2]前記α-オレフィンがエチレンである、[1]に記載の共重合体。
[3]前記極限粘度が23dl/g以上であり、エチレンの含有量が3~30重量%である、[2]に記載の共重合体。
[4]DSCを用いて10℃/分の昇温速度で求めた前記共重合体の融点Tm(℃)と、前記共重合体中のエチレン含有量C2(重量%)が下記式(1)を満たす、
Tm ≧ -3.4×C2 + 162 …(1)
[2]または[3]に記載の共重合体。
[5](A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含む固体触媒、
(B)有機アルミニウム化合物、および
必要に応じて(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて、対応するモノマーを重合して調製することを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の重合体の製造方法。
[6]前記[1]~[4]のいずれかに記載の重合体を含む組成物であって、
当該組成物を構成する樹脂成分の総重量に対して、当該重合体の含有割合が0.1~20重量%である、ポリプロピレン系樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって超高分子量プロピレン重合体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X~Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0008】
1.プロピレン(共)重合体
(1)極限粘度
本発明のプロピレン単独重合体またはプロピレンと30重量%以下の炭素数2もしくは4~8のα-オレフィンとの共重合体(以下、あわせて「プロピレン(共)重合体」ともいう)は、135℃においてテトラリン溶媒中で測定した極限粘度が20dl/g超である。極限粘度は分子量の指標であり、本発明のプロピレン(共)重合体は従来にない極めて高い分子量を有する。前記極限粘度が高いプロピレン(共)重合体を含む樹脂組成物はメルトテンションも高くなるので、例えば優れた発泡体を与える。この観点から前記極限粘度の下限は23dl/g以上であることが好ましい。また、製造容易性の観点から、前記極限粘度の上限は50dl/g以下であることが好ましい。
【0009】
(2)コモノマー量
本発明のプロピレン(共)重合体が共重合体である場合、コモノマーの量は30重量%以下である。コモノマーの量がこの値を超えると、共重合体の結晶性が低下し重合体の粉体性状が悪化するため製造が困難になる。この観点から、当該量の上限は好ましくは25重量%以下である。一方、コモノマーの量の下限は限定されず、好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上である。コモノマーの量とは、共重合体中の当該モノマーに由来する単位の量である。コモノマーは、炭素数2もしくは4~8のα-オレフィンである。この中でも反応性の観点から、コモノマーとしては炭素数2のα-オレフィンすなわちエチレンが好ましい。エチレンを共重合することでプロピレン重合体の極限粘度をより高くすることができる。よって、一態様において本発明のプロピレン(共)重合体は、前記極限粘度が23dl/g以上であり、エチレンの含有量(エチレン由来単位の含有割合)が3~30重量%である共重合体である。
【0010】
(3)XI
本発明のプロピレン(共)重合体は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上のキシレン不溶分(XI)を有する。XIはプロピレン(共)重合体における結晶性成分である。XIの上限は特に限定されない。
【0011】
(4)融点
本発明のプロピレン(共)重合体は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上の融点(Tm)を有する。融点は、DSCを用いてセカンドスキャンして観測される融解に伴う融解熱量が最大値を示す温度である。セカンドスキャンとは、試料(樹脂)を加熱融解後、冷却して結晶化し、室温で5分間保持した後に2回目の加熱をして熱分析することをいう。具体的には、試料を融解温度以上(230℃)に加熱し、当該温度で5分保持し、10℃/分の降温速度で30℃まで冷却して5分間保持した後、10℃/分の昇温速度で230℃まで加熱して熱分析を行う。
【0012】
本発明のプロピレン共重合体は、コモノマーの種類と含有量が同じ場合、従来の共重合体に比べて高い融点を有するという特徴を備える。特に、本発明のプロピレン共重合体がプロピレン-エチレン共重合体である場合、前記Tm(℃)と共重合体中のエチレン含有量C2(重量%)は、式(1)を満たすことが好ましい。
式(1): Tm ≧ -3.4×C2 + 162
【0013】
(5)性状等
取扱性等の観点から、本発明のプロピレン(共)重合体は粉体であることが好ましい。そして当該粉体は3.5以下の粉体流動性を有することがより好ましい。粉体流動性とは重合反応器内で生成された粉状ポリマーの流動性であり、重合体の製造安定性の指標である。具体的に粉体流動性は、基材に載置した粉体に一定温度で一定荷重を一定時間加えた後で荷重を除去し、基材を傾ける等により粉体を流動させた際の粉体の流動しやすさを定量化した値である。粉体流動性は値が低いほど粉体流動性が良好であり、製造安定性も良好となる。本発明のプロピレン(共)重合体の粉体流動性は3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
【0014】
粉体流動性は以下の方法で測定される。
金属基材上(第1の基材)に縦5cm×横5cm×高さ1cmの開口部のある枠を置き、当該枠内に試料として5gの重合体を敷き詰める。試料にかかる圧力が均一に23g/cmとなるよう、第2の基材を前記枠の上に載せる。枠内の試料を70℃で20分間保持した後に枠と第2の基材を除去し、試料が載置された第1の基材を傾けることにより試料の崩れ度合いを以下の基準で評価する。
1. 0°以上30°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
2. 30°以上50°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
3. 50°以上70°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
4. 70°以上90°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
5. 90°以上に傾けても全量が崩れ落ちることはない
第1の基材および第2の基材としては、伝熱性や繰返し使用時の防錆性の観点からステンレス鋼製であることが好ましい。また、第1の基材に関しては粉体との摩擦の影響をなくすため、表面粗度(最大粗さRy)が1μm以下であることが好ましい。
【0015】
2.製造方法
本発明のプロピレン(共)重合体は、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、および電子供与体化合物を必須成分として含む固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、および必要に応じ(C)外部電子供与体化合物を含む触媒を用いて製造されることが好ましい。
【0016】
(1)固体触媒(成分(A))
成分(A)は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)4-gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl、TiBr、TiIなどのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O-C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(OisoC)Brなどのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O-CCl、Ti(OCBrなどのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl、Ti(O-CCl、Ti(OCBrなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(O-Cなどのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0017】
前記マグネシウム化合物としては、マグネシウム-炭素結合やマグネシウム-水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n-オクトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウムのようなジアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウムなどを挙げることができる。
【0018】
前記電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体化合物」と称される。本発明においては内部電子供与体化合物として、好ましくは式(I)で示されるエステル骨格を備える化合物が好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式中、R1は独立に水素原子または炭素数が1~15の炭化水素基である。当該炭化水素基は、ハロゲン、P、S、N、O、Si等のヘテロ原子を有していてもよく、環を形成していてもよい。R2もR1と同様に定義されるが、R2とR1は同じ構造である必要はない。さらにR1とR2は連結して環を形成してもよい。
【0021】
Aは2価の架橋基である。架橋結合間の鎖長は好ましくは1~10原子である。Aが環状構造を有する場合、鎖長とはAが結合している酸素原子間における最短のシーケンスの原子の数をいう。Aは、好ましくは-(ZR -で表される。Zは、好ましくはC、Si、Ge、O、N、SまたはPである。Rは、それぞれ独立に水素または炭素数が1~20の炭化水素基であり、前記ヘテロ原子を含んでいてもよく、さらに複数のRは融合して1つ以上の環を形成してもよい。mはZの原子価に対応する数であり、nは1~10の整数である。例えば、RはZとともに芳香環、複素環、脂環を形成できる。-(ZR -がO、S、およびNを含む場合、これらは式(I)の酸素原子には直接結合しない。
【0022】
本発明においては内部電子供与体化合物としてカルバメート系化合物を用いることがより好ましい。カルバメート系化合物とは、カルバミン酸エステル骨格を備える化合物であり、式(II)で表される。
【化2】
【0023】
式中、R4は独立に水素原子または炭素数が1~15の炭化水素基である。当該炭化水素基は、ハロゲン、P、S、N、O、Si等のヘテロ原子を有していてもよく、さらに2つのR4は連結して環を形成していてもよい。R5もR4と同様に定義されるが、R4とR5は同じ構造である必要はない。
【0024】
Aは前記のとおりに定義され、Zは好ましくはCまたはSiであり、より好ましくはCである。特に、以下の組合せを有する化合物が好ましい。
A:置換基を有していてもよい2価の芳香族基。当該芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。また前記置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数が1~5の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
R4、R5:メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数が1~5の直鎖状または分岐状のアルキル基。
具体的に、式(II)で定義した化合物として米国特許出願2015/0266981号明細書に記載されたものを使用することができる。
【0025】
(2)有機アルミニウム化合物(成分(B))
当該有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0026】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリドなどのような部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド; エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0027】
(3)電子供与体化合物(成分(C))
当該電子供与体化合物は「外部電子供与体化合物」とも称される。外部電子供与体化合物としては、有機ケイ素化合物が好ましく、具体的には以下の化合物が挙げられる。
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル-t-ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチル-t-ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル-ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン。
【0028】
(4)組成比
成分(A)~(C)の組成比は限定されないが、Al/Tiモル比が、好ましくは10~1000、より好ましくは30~600となるように成分(A)と(B)の組成比は調整される。また、成分(C)がケイ素を含む場合、Si/Alモル比が、好ましくは0.01~1.5、より好ましくは0.05~1.0となるように成分(A)と(C)組成比は調整される。
【0029】
(5)重合
上記のとおりに調製した触媒に原料モノマーを接触させて重合する。この際、前記触媒を用いて予重合を行ってもよい。予重合とは、その後の原料モノマーの本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予重合は公知の方法で行うことができる。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。次いで、予重合した触媒(予重合触媒)を重合反応系内に導入して、原料モノマーの本重合を行う。重合は、液相中、気相中または液-気相中で実施してよい。重合温度は0~90℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは0.8~6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には好ましくは0.5~3.0MPaの範囲である。本発明においては連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt)などの当該分野で公知の慣用の分子量調整剤を微量使用することができる。
【0030】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002-520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0031】
3.用途
本発明のプロピレン(共)重合体は、極めて高い分子量を有するので、この重合体を含む組成物は高いメルトテンションやダイスウェルを有する。よって本発明のプロピレン(共)重合体は押出成形体(一般シート、発泡シート、ブロー成形体等)や射出成形体の用途に有用である。また、本発明のプロピレン(共)重合体は、結晶性を有し溶融しにくいという特性も備えるので、有機フィラーとしても有用である。したがって、本発明のプロピレン(共)重合体は、それ単独でも使用できるが、添加剤や追添成分等として他の樹脂と併用して組成物とすることもできる。添加の方法は溶融混練や溶液ブレンド、多段重合による重合ブレンド等、公知の方法を用いることができる。さらに、当該組成物をマスターバッチとして用い、他のポリオレフィンと組合せて2次組成物とすることもできる。
【0032】
重合ブレンドにて本発明のプロピレン(共)重合体を少量含む組成物を得る場合は、本発明のプロピレン(共)重合体を予重合段階で重合してもよい。当該組成物における本発明のプロピレン(共)重合体の含有割合は、当該組成物を構成する樹脂成分の総重量に対して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。その上限は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。当該割合が0.1重量%未満では期待する成形性や物性が得られにくく、また20重量%を超えると組成物の流動性が低下しうる。
【実施例
【0033】
[実施例1]
窒素でパージした300mLの4つ口丸底フラスコ中に、45mLのトルエンと10.0gの微細球状Mg(OC2H52を5℃において導入した。撹拌しながら28.7mlの四塩化チタンを10分間で滴下し、11.3ミリモルの5(ターシャリーブチル)-3-メチル-1,2-フェニレンビス(ジエチルカルバメート)(以下、化合物aとも呼ぶ)を加えた。温度を110℃に上昇させ120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。その後、90℃においてトルエン(75mL)で4回洗浄した。
【0034】
洗浄後の固体にトルエン50mlを投入した。これに四塩化チタン21mlを投入し、温度を100℃に上昇させ90分間撹拌した。その後撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、40℃においてヘプタン(75mL)で6回洗浄した。洗浄後の固体を減圧乾燥して固体触媒成分(A)7.6gを得た。当該固体触媒成分は化合物aを14.3重量%、Mgを14.0重量%、Tiを4.0重量%含んでいた。
【0035】
内容積20Lの撹拌機付きオートクレーブ反応器内を十分真空乾燥させ、窒素で置換した。反応器内に調製した固体触媒を52.8mg、トリエチルアルミニウム(TEAL)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)をAl/Tiモル比が150、Si/Alモル比が0.2となるような量で投入した。次いで、プロピレン5.6kgを加え、オートクレーブの温度を40℃に昇温し、40℃で30分間重合を行った。重合反応終了後、未反応モノマーを排出し、75gのプロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0036】
[実施例2、3]
Al/Tiモル比、Si/Alモル比を変更した以外は、実施例1と同じ方法で重合を行い、プロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表1に示した。Al/Tiモル比の変更は、使用するTEAL量を調整することにより行った。以下、Al/Tiモル比を変更した場合は同様に実施した。
【0037】
[実施例4]
TEALの代わりに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を用いた以外は、実施例1と同じ方法で重合を行い、プロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0038】
[実施例5~6]
重合温度、Si/Alモル比を変更した以外は、実施例1と同じ方法で重合を行い、実プロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0039】
[実施例7]
反応器内にプロピレン5kgを加えるとともに、重合の間、連続的にエチレンガスを供給してエチレン分圧が一定になるように調整し、40℃で30分間重合を行った以外は、実施例1と同じ方法で、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0040】
[実施例8~12]
Al/Tiモル比、Si/Alモル比を変え、かつ重合体中のエチレン含量が表1に示す値となるようにエチレン分圧を調整した以外は、実施例7と同じ方法で重合を行い、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0041】
[実施例13]
外部電子供与体化合物としてジイソプロピルジメトキシシラン(DIPMS)を用い、エチレン分圧を調整した以外は、実施例10と同じ方法で重合を行い、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0042】
[実施例14]
外部電子供与体化合物を用いずエチレン分圧を調整して重合した以外は、実施例13と同じ方法で重合を行い、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
[実施例15]
重合温度を70℃とし、エチレン分圧を調整した以外は、実施例10と同じ方法で重合を行い、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
[実施例16]
連鎖移動剤として反応器内に水素を100cc導入し、エチレン分圧を調整した以外は、実施例10と同じ方法で重合を行い、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表1に示した。
【0043】
[比較例1]
欧州特許第674991号公報の実施例1に記載された方法により固体触媒成分を調製した。当該固体触媒は、MgCl上にTiCl(四塩化チタン)内部電子供与体としてのジイソブチルフタレートを上記の特許公報に記載された方法で担持させたものである。当該固体触媒を使用した以外は、実施例5と同じ方法で重合を行い、プロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表2に示した。
【0044】
[比較例2]
比較例1で調製した固体触媒、およびTEALとDCPMSとを、Al/Tiモル比150、Si/Alモル比が0.15となるような量で反応器内に加えた。実施例16と同様に、水素900ccを反応器内に導入し、重合の間、連続的にエチレンを供給してエチレン分圧が一定になるように調整した。重合温度を70℃、重合時間を60分間とし、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表2に示した。
【0045】
[比較例3]
特開2011-500907号の実施例に記載の方法を参考にして、以下のようにして固体触媒成分を調製した。
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLの四塩化チタンを0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl・1.8COHおよび9.1ミリモルのジエチル-2,3-(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。微細球状MgCl・1.8COHは米国特許第4,399,054号明細書の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら回転数を10000rpmから3000rpmに変更して製造した。
【0046】
フラスコ内の温度を100℃に上昇し、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した。
250mLの新しい四塩化チタンを加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0047】
上記固体触媒を使用した以外は、実施例5と同じ条件で重合を行い、プロピレン単独重合体を得た。結果を表2に示した。
【0048】
[比較例4]
比較例3で調製した触媒を使用し、重合体中のエチレン含量が表2に示す値となるようにエチレン分圧を調整した以外は実施例10と同じ方法で、プロピレン-エチレン共重合体を得て評価した。結果を表2に示した。
【0049】
[比較例5~8]
重合条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして重合を行い、プロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表2に示した。
【0050】
[比較例9]
内容積6Lの撹拌機付きオートクレーブを十分真空乾燥させ、窒素でパージした。触媒として三塩化チタン触媒(東ソー・ファインケム社製)を97.8mg、有機アルミニウム化合物としてジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)をAl/Tiモル比が13となるような量で加えた。次いで、プロピレン1.5kgを加え、オートクレーブの温度を60℃に昇温し、60℃で30分間重合を行った。重合反応終了後、未反応モノマーをパージし、イソブチルアルコール250mlを添加し、80℃で1時間脱灰処理を行った。その後、固体成分を沈降させ、上澄み液を吸い出した。その後、80℃においてヘプタン(300mL)で2回洗浄し、73gのプロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表2に示した。
【0051】
[比較例10]
重合温度を40℃に変更した以外は、比較例9と同じ方法で重合を行い、プロピレン単独重合体を得て評価した。結果を表2に示した。
【0052】
【表1-1】
【表1-2】
【0053】
【表2】
【0054】
[実施例17]
1)ポリプロピレン系樹脂組成物
実施例1で調製した化合物aを含む固体触媒を使用し、以下のようにして重合を行った。
【0055】
〔前段重合〕
内容積20Lの撹拌機付きオートクレーブの反応器内を十分真空乾燥させ、窒素で置換した。調製した化合物aを含む固体触媒成分を59.3mg、および、TEAL、DCPMSをAl/Tiモル比が150、Si/Alモル比が1.0となるような量で加えた。次いで、反応器内に液化プロピレン5.6kgを加えるとともに、重合の間、連続的にエチレンガスを供給してエチレン分圧が一定になるように調整し、40℃で10分間重合を行った。重合圧力を調整することによって本発明のプロピレン-エチレン共重合体を得た。その後、未反応モノマーをパージし、反応容器内を窒素で十分に置換した。
【0056】
〔後段重合〕
続いて、反応器内にTEAL、DCPMSをAl/Tiモル比が400、Si/Alモル比が0.05となるような量で追添した。液化プロピレン5.6kgと水素ガスを液体プロピレン中の水素濃度が0.7モル%になるように加え、オートクレーブの温度を70℃に昇温し、180分間重合(プロピレンの重合)を行った。重合反応終了後、未反応モノマーをパージして、4.6kgの粉体状の組成物を得た。当該組成物は、本発明のプロピレン-エチレン共重合体とポリプロピレンを重合ブレンドして得た組成物である。当該組成物の物性等を表3に示した。ただし、本発明のプロピレン-エチレン共重合体の極限粘度、エチレン由来単位の含有割合、融点は前段重合のみを同条件で行い得られた重合体を分析した結果である。また、組成物中の本発明のプロピレン-エチレン共重合体の比率は前段重合との活性比により求めた。
【0057】
上記で得た組成物に、酸化防止剤としてBASF社製B225を0.2phr、中和剤として淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレートを0.1phr添加し、ヘンシェルミキサーで1分間撹拌して混合物を得た。次いで、該混合物を、スクリュー温度を230℃に設定した押出機(株式会社テクノベル製、スクリュー径15mm、同方向二軸押出機)を用いて溶融混練した。次いで、溶融した混合物を押出機から吐出し、冷却してストランドを形成し、そのストランドを裁断して、ペレット状のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0058】
2)発泡体の形成
前述のようにして得たポリプロピレン系樹脂組成物に、発泡剤として三協化成株式会社製セルマイクMB3064を4phr添加し、ドライブレンドして発泡性組成物を得た。次いで、当該発泡性組成物を用いて、下記条件により発泡ストランドを形成し、得られた発泡体について評価した。
押出機:サーモ・プラステイックス工業株式会社製単軸押出機 TP-15
ダイ部形状:ストランドダイ
タイ部寸法:2mmφ
押出量:500g/h
スクリュー形状:フルフライトスクリュー
スクリュー回転数:40rpm
シリンダー設定温度:210℃
ダイ部設定温度:180℃
【0059】
同じく1)で得たポリプロピレン系樹脂組成物に、発泡剤として三協化成株式会社製セルマイクMB3064を6phr添加し、ドライブレンドして発泡性組成物を得た。発泡性組成物を用いて前述のとおりに発泡体を得て評価した。
【0060】
同じく1)で得たポリプロピレン系樹脂組成物を温度230℃で熱プレス成形し、非発泡性のシート(厚さ500μm)を得た。これを裁断して試験片を作製し、スティフネスを測定した。これらの結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
評価は以下のようにして実施した。
[エチレン由来単位の含有割合]
プロピレン(共)重合体試料を230℃で熱プレスすることにより、厚さ0.4mmのシートを作製し、フーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)によって試料対空気バックグラウンドのIR吸収スペクトルを収集し、シートの厚さを補正した後の760cm~690cm-1のピーク面積を使用しプロピレン(共)重合体のエチレン由来単位の含有割合(重量%)を求めた。データ収集パラメータは次の通りとした。
アポダイゼーション:Cosine
分解能:2cm-1
【0063】
[重合体のXI]
0.1~0.5gの重合体を撹拌しながら135℃において250mLのキシレンに溶解した。30分後溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させた後、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥した。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性の重合体の重量%を計算した。キシレン不溶分の量(25℃におけるキシレンに不溶性の重合体の重量%、XI)は、100-「可溶性の重合体の重量%」で求められ、重合体における結晶性成分の量と考えられる。
【0064】
[重合体の極限粘度]
プロピレン(共)重合体の試料を135℃のテトラリンに溶かして濃度0.01重量%の溶液を得た。当該溶液を用い、毛細管自動粘度測定装置(SS-780-H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を使用して極限粘度を測定した。
【0065】
[粉体流動性]
金属板の上に、縦5cm×横5cm×高さ1cmの開口部のある金属枠を置き、金属枠内に試料として重合体5gを敷き詰めた。試料にかかる圧力が均一に23g/cmとなるよう、0.92gの金属蓋を金属枠内に載せた。金属枠内の試料を70℃で20分間保持した後に金属枠と金属蓋を除去し、金属板に試料を載せた状態で傾けることにより以下の5段階評価を4回実施し平均値を算出した。
1. 0°以上30°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
2. 30°以上50°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
3. 50°以上70°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
4. 70°以上90°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
5. 90°以上に傾けても全量が崩れ落ちることはない
金属板、金属枠、金属蓋の材質はSUS304ステンレス鋼であり、金属板として表面を#400研磨(サイザル仕上げ)して得た表面粗度(最大粗さRy)0.2μmのものを用いた。
【0066】
[重合体の融点]
重合体の融点は、パーキンエルマー社製ダイヤモンドDSCを用いて、前記のとおり定義したセカンドスキャンを行い測定した。
【0067】
[MFR]
JIS K7210-1に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0068】
[溶融張力]
長さ8.0mm且つ直径2.095mmの上面が平面の円筒状のオリフィスを取り付けたキャピラリーレオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D)を用い、温度200℃で樹脂組成物を溶融した。その溶融した樹脂組成物を樹脂押出速度15mm/分でオリフィスより吐出させてストランドを形成した。そのストランドを、回転する引き取り手段を用い、引き取り速度6.5m/分で引き取ると共に溶融張力(メルトテンション、単位はg重)を測定した。
【0069】
[発泡体の外観]
3.0倍以上3.4倍以下に発泡させた発泡ストランドの外観について、以下の基準で評価した。
A:表面が平滑でストランドが直線的である
B:表面にやや凹凸があるか、うねりがある
C:表面に凹凸があり、ストランドにうねりがある
【0070】
[独立気泡性]
3.0倍以上3.4倍以下に発泡させた発泡ストランドを4cmの長さにカミソリで切り出し、その一方を顔料のエタノール溶液に30秒浸浸し、切断面から内部にエタノールが最も浸透した距離(着色最大距離)で、独立気泡性の評価を行った。
A:着色最大距離が2mm以下
B:着色最大距離が2mmを超え、20mm以下
C:着色最大距離が20mmを超える
【0071】
[スティフネス]
前記非発泡性のシートを縦2.75インチ、横1.5インチに打ち抜いて試験片を5個作製した。
各試験片について、JIS P8125に従い、室温23℃の下でテーバーインスツルメントコーポレーション社製V-5スティフネステスター(型式150-B)を用い、スティフネスを測定した。その際の測定条件は、以下のとおりとした。
測定レンジ:50-500
レンジ重量:500ユニット
反り角度:15°
測定スパン:5cm
スケール倍率:5倍
保持時間1分
測定温度:23℃
スティフネスは、各試験片について、左右の反り角度15°における値を読み取り、それらを平均して求めた。そして、下式により非発泡性のシートのスティフネスを求めた。
E=9.83×Tsu/t
(E:シートのスティフネス[MPa]、Tsu:スティフネスの平均値[gf・cm]、t:試験片の厚さ[mm])
スティフネスの値が大きい程、剛性が高いことを意味する。
【0072】
重合体中のエチレン由来単位含有割合が同じ場合、極限粘度が20dl/gを超える実施例のプロピレン-エチレン共重合体は、20dl/g以下の比較例のプロピレン-エチレン共重合体に比べて粉体流動性に優れることが明らかである。また、本発明のプロピレン(共)重合体を含む組成物から得られた非発泡性のシートおよび発泡体は優れた特性を有することも明らかである。