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  • 特許-吸収性物品用の複合シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】吸収性物品用の複合シート
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A61F13/511 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022090918
(22)【出願日】2022-06-03
(65)【公開番号】P2023177943
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】光野 聡
(72)【発明者】
【氏名】三好 貴之
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-235806(JP,A)
【文献】国際公開第2020/153464(WO,A1)
【文献】特開2006-044091(JP,A)
【文献】特開2019-162372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
お互いに直交する、第1方向、第2方向、及び厚さ方向を有する、吸収性物品用の複合シートであって、
前記厚さ方向に順に、第1不織布と、第2不織布と、を備え、
前記第1不織布と前記第2不織布とを互いに熱接合した複数の接合部、をさらに備え、
前記第1不織布は、第1繊維層と、前記第1繊維層と前記第2不織布との間に配置され前記第2不織布に接している第2繊維層と、を有し、
前記第1繊維層は、複合繊維を含み、前記複合繊維は、断面において、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂部分と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂部分と、を含み、
前記第2繊維層は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含み、
前記第2不織布は、前記第2繊維層と接する側の表面に、ポリプロピレン系樹脂を含有する、複合シート。
【請求項2】
前記第2不織布は、前記第1方向に伸縮可能な弾性不織布である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項3】
前記第2不織布の、前記第1不織布と接する側と反対側に、第3不織布を備える、請求項2に記載の複合シート。
【請求項4】
前記第1不織布と前記第2不織布との間に、前記第1方向に伸縮する弾性糸を含む、請求項1に記載の複合シート。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含み、
前記ポリエチレン系樹脂は、エチレン系重合体を含む、請求項1に記載の複合シート。
【請求項6】
前記プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点は155℃以下、前記エチレン系重合体の融点は95℃以上125℃以下である、請求項5に記載の複合シート。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系樹脂部分と前記ポリエチレン系樹脂部分との比率が、質量基準で、70:30~10:90(ポリプロピレン系樹脂部分:ポリエチレン系樹脂部分)である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項8】
前記複合繊維は、繊維表面に前記ポリエチレン系樹脂部分が存在している、請求項1に記載の複合シート。
【請求項9】
前記第1繊維層と前記第2繊維層の比率が、質量基準で、33:67~67:33(第1繊維層:第2繊維層)である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項10】
前記第1繊維層の前記ポリプロピレン系樹脂と、前記第2繊維層の前記ポリプロピレン系樹脂とは、同一のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である、請求項1に記載の複合シート。
【請求項11】
前記第1繊維層の表面に、前記第2不織布を除く前記第1繊維層と前記第2繊維層とを接合している複数のエンボス接合部を有し、
前記複数の接合部の前記第1繊維層の表面における総面積は、前記複数のエンボス接合部の前記第1繊維層の表面における総面積よりも小さい、請求項1に記載の複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品用の複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品用の複合シートにおいて、肌触りのよさを改善する検討がなされている。例えば、特許文献1に、液透過性表面シート、液不透過性裏面側シート、及びこれら表面シートと裏面側シートとの間に介在する吸収体とを有する本体部と、この本体部の裏面側を覆う外装シートとを備え、外装シートは、不織布が一枚又は複数枚張り合わされて形成されたものであり、且つ最も外側に位置する最外側不織布の捻れ度が3.8gf・cm/cm以下である吸収性物品が開示されている。最外側不織布は、ポリプロピレンの単一繊維、及びポリプロピレンとポリエチレンの芯鞘型の複合繊維からなることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2に、縦方向、及び、横方向を有し、吸収性コアを備える吸収性本体、及び、一対の胴回り部を有し、胴回り部は、最も肌側に配置された肌側シート部を備え、一対の胴回り部のうちの少なくとも一方の胴回り部では、肌側シート部のKES法による曲げ剛性は0.0096N・m/(m×10-4)以下であり、肌側シート部より非肌側に内層シート部が配置され、内層シート部のKES法による曲げ剛性は、肌側シート部の曲げ剛性より高く、内層シート部は、吸収性本体の肌側において、縦方向における吸収性本体の胴回り側の端縁を跨いで配置されている、吸収性物品が開示されている。肌側シート部は、ポリエチレンを主として含むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-131167号公報
【文献】特開2019-187744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の最外側不織布がポリプロピレンの単一繊維からなる場合、ポリプロピレンは硬いため、当該最外側不織布と他の不織布とからなる外装シート全体として肌触りのよさを改善するには限界があると予想される。特許文献1の最外側不織布が、ポリプロピレンで形成された芯と、ポリエチレンで形成された鞘とを含む芯鞘型の複合繊維からなる場合、当該最外側不織布と、ポリプロピレンで形成された他の不織布とを接合した外装シートは、ポリエチレンとポリプロピレンの融点の差が大きく、相溶性が乏しいため、複合繊維からなる最外側不織布と他の不織布との間の接合強度が十分ではなく、繰り返し使用した場合に最外側不織布と他の不織布とが互いにはがれてしまう、という問題があった。
【0006】
特許文献2の肌側シートは、主として含まれるポリエチレンが軟らかいので、吸収性物品用の複合シートに適した強度を備え難く、繰り返し使用することが困難であるという懸念があった。
【0007】
本発明は、肌触りの良さを維持しつつ、耐久性に優れた吸収性物品用の複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、お互いに直交する、第1方向、第2方向、及び厚さ方向を有する、吸収性物品用の複合シートであって、前記厚さ方向に順に、第1不織布と、第2不織布と、を備え、前記第1不織布と前記第2不織布とを互いに熱接合した複数の接合部、をさらに備え、前記第1不織布は、第1繊維層と、前記第1繊維層と前記第2不織布との間に配置された第2繊維層と、を有し、前記第1繊維層は、複合繊維を含み、前記複合繊維は、断面において、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂部分と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂部分と、を含み、前記第2繊維層は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含み、前記第2不織布は、前記第2繊維層と接する側の表面に、ポリプロピレン系樹脂を含有する、複合シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による吸収性物品用の複合シートは、肌触りの良さを維持しつつ、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る複合シートの平面図である。
図2A】実施形態に係る複合シートの伸長時の様子を模式的に示す断面図である。
図2B】実施形態に係る複合シートの収縮時の様子を模式的に示す断面図である。
図3A】実施形態に係る第1不織布及び第2不織布の繊維の断面図である。
図3B】実施形態の変形例に係る第1不織布及び第2不織布の繊維の断面図である。
図4】実施形態に係る複合シートを用いた吸収性物品を示す斜視図である。
図5】変形例(1)に係る複合シートの平面図である。
図6】変形例(2)に係る複合シートの伸長時の様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、以下の態様に関する。
【0012】
[態様1]
お互いに直交する、第1方向、第2方向、及び厚さ方向を有する、吸収性物品用の複合シートであって、
前記厚さ方向に順に、第1不織布と、第2不織布と、を備え、
前記第1不織布と前記第2不織布とを互いに熱接合した複数の接合部、をさらに備え、
前記第1不織布は、第1繊維層と、前記第1繊維層と前記第2不織布との間に配置された第2繊維層と、を有し、
前記第1繊維層は、複合繊維を含み、前記複合繊維は、断面において、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂部分と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂部分と、を含み、
前記第2繊維層は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含み、
前記第2不織布は、前記第2繊維層と接する側の表面に、ポリプロピレン系樹脂を含有する、複合シート。
複合シートは、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含む第2繊維層を含むので、吸収性物品用の胴回り部用の複合シートに適した強度を備え得る。
第1繊維層は、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂部分と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂部分と、を含む複合繊維を含むので、ポリエチレン系樹脂に由来する柔軟性に富む。第1繊維層が複合シートの表面に配置されているので、複合シートは、肌触りに優れる。
接合部は、第1繊維層と、第2繊維層と、第2不織布とを熱接合によって一体化している。第1繊維層と第2繊維層とは、互いに同種のポリプロピレン系樹脂を含むので、相溶性に優れ、良好に接合されている。第2不織布は、第2繊維層と接する側の表面に第2繊維層に含まれる単一繊維と同種の樹脂であるポリプロピレン系樹脂を含有するので、第2繊維層と熱接合しやすい。第2繊維層と第2不織布との間が良好に熱接合しているので、複合シートは、第1不織布と第2不織布との間の接合強度に優れ、繰り返し使用した場合に第1不織布と第2不織布との間が剥がれることが抑制され、耐久性に優れる。
したがって、複合シートは、肌触りの良さを維持しつつ、耐久性に優れる。
【0013】
[態様2]
前記第2不織布は、第1方向に伸縮可能な弾性不織布である、態様1に記載の複合シート。
複合シートは、第1方向に伸縮するので、第1方向を着用者の胴回り方向に平行に配置することによって、例えば、吸収性物品の胴回り部用の複合シートに適用し得る。
第1不織布は、柔軟性に富む第1繊維層を含むので、弾性不織布(第2不織布)の収縮に合わせて容易に収縮する。
弾性不織布は、第2繊維層と接する側の表面に第2繊維層に含まれる単一繊維と同種の樹脂であるポリプロピレン系樹脂を含有するので、第2繊維層と良好に熱接合している。したがって、複合シートは、第1不織布と弾性不織布(第2不織布)との間の接合強度に優れる。
したがって、複合シートは、収縮性、耐久性に優れる。
【0014】
[態様3]
前記第2不織布の、前記第1不織布と接する側と反対側に、第3不織布を備える、態様2に記載の複合シート。
複合シートは、第2不織布の、第1不織布と接する側と反対側に、用途に合わせた第3不織布を設けることによって、第1不織布を肌側又は非肌側とする選択の幅がより広がる。さらに、複合シートは、第3不織布を追加することで複合シートの機械的強度が高くなるので、耐久性により優れる。したがって複合シートは、吸収性物品の胴回り部用の複合シートとしてより好適である。
【0015】
[態様4]
前記第1不織布と前記第2不織布との間に、第1方向に伸縮する弾性糸を含む、態様1に記載の複合シート。
複合シートは、第1方向に伸縮するので、第1方向を着用者の胴回りに平行に配置することによって、例えば、吸収性物品の胴回り部用の複合シートに適用し得る。
第1不織布は、柔軟性に富む第1繊維層を含むので、弾性糸の収縮に合わせて容易に収縮する。
複合シートは、弾性糸を挟んで第1不織布と反対側に第2不織布が配置されており、当該第2不織布が第2繊維層と良好に熱接合している。すなわち第2繊維層と第2不織布とは、間に弾性糸を挟んだ状態で、良好に熱接合している。したがって、複合シートは、第1不織布と第2不織布の間の接合強度に優れる。
したがって、複合シートは、収縮性、耐久性に優れる。
【0016】
[態様5]
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含み、
前記ポリエチレン系樹脂は、エチレン系重合体を含む、態様1~4のいずれか一つに記載の複合シート。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂の融点との差が小さいので、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂と熱接合しやすい。そのため第1繊維層の繊維同士は、接合部においてより広い範囲で熱接合する。したがって、複合シートは、表面に配置された第1繊維層の繊維同士がより広い範囲で熱接合していることによって、毛羽立ちが比較的少ないので、長時間使用することができる。
【0017】
[態様6]
前記プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点は155℃以下、前記エチレン系重合体の融点は95℃以上125℃以下である、態様5に記載の複合シート。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点と、エチレン系重合体の融点とが、それぞれ上記範囲内であることによって、第1繊維層の繊維同士は、より広い範囲でより確実に熱接合し得る。
【0018】
[態様7]
前記ポリプロピレン系樹脂部分と前記ポリエチレン系樹脂部分との比率が、質量基準で、70:30~10:90(ポリプロピレン系樹脂部分:ポリエチレン系樹脂部分)である、態様1~5のいずれか一つに記載の複合シート。
第1繊維層は、ポリエチレン系樹脂部分すなわちポリエチレン系樹脂を所定量以上含む複合繊維を含むことによって、第1繊維層の表面にポリエチレン系樹脂が配置されやすい。第1繊維層は、複合シートの表面側に配置されるので、複合シートは、肌触りに優れる。
【0019】
[態様8]
前記複合繊維は、繊維表面に前記ポリエチレン系樹脂部分が存在している、態様1~7のいずれか一つに記載の複合シート。
複合繊維は、繊維表面にポリエチレン系樹脂部分が存在している。例えば、複合繊維は、ポリプロピレン系樹脂部分を芯部、ポリエチレン系樹脂部分を鞘部とし、ポリプロピレン系樹脂部分の一部がポリエチレン系樹脂部分から露出している偏芯芯鞘型、又はサイドバイサイド型である。複合繊維は繊維表面にポリエチレン系樹脂部分が存在しているので、ポリエチレン系樹脂に由来する柔軟性に富む。複合シートは、第1繊維層が複合シートの表面側に配置されるので、肌触りに優れる。
【0020】
[態様9]
前記第1繊維層と前記第2繊維層の比率が、質量基準で、33:67~67:33(第1繊維層:第2繊維層)である、態様1~8のいずれか一つに記載の複合シート。
第1不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる第2繊維層を所定量以上含む。第2繊維層は、第2不織布と接する位置に配置されているので、第2不織布とより確実に熱接合する。したがって、複合シートは、第1不織布と第2不織布との間の接合強度に優れる。
【0021】
[態様10]
前記第1繊維層の前記ポリプロピレン系樹脂と、前記第2繊維層の前記ポリプロピレン系樹脂とは、同一のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である、態様1~9のいずれか一つに記載の複合シート。
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂の融点との差が小さいので、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂と熱接合しやすい。そのため第1繊維層の繊維同士は、接合部において、より広い範囲で熱接合する。したがって、複合シートは、表面に配置された第1繊維層の繊維同士がより広い範囲で熱接合していることによって、毛羽立ちが比較的少ないので、長時間使用することができる。
第1繊維層と第2繊維層のポリプロピレン系樹脂が、同一のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であるので、相溶性に優れ、第1繊維層と第2繊維層とがより広い範囲で熱接合しやすい。したがって複合シートは、第1繊維層と第2繊維層との間の接合強度に優れる。
【0022】
[態様11]
前記第1繊維層の表面に、前記第2不織布を除く前記第1繊維層と前記第2繊維層とを接合している複数のエンボス接合部を有し、
前記複数の接合部の前記第1繊維層の表面における総面積は、前記複数のエンボス接合部の前記第1繊維層の表面における総面積よりも小さい、態様1~10のいずれか一つに記載の複合シート。
第1不織布は、複数の接合部の総面積が、複数のエンボス接合部の総面積よりも小さいので、複数の接合部の間において第2不織布と分離して厚さ方向に変形しやすい。第1不織布が接合部の間において厚さ方向に変形しやすいので、複合シートが弾性部材(弾性不織布又は弾性糸)を備える場合、第2不織布は、第1不織布に阻害されずに容易に収縮する。したがって、複合シートは、着用者の胴回りに沿って容易に変形するので、肌触りに優れる。
【0023】
<全体構成>
以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図は実施形態の一例を模式的に示したものであって、本発明は図に示された形態に限定されない。図1は、実施形態に係る複合シートの平面図である。図2Aは、実施形態に係る複合シートの伸長時の様子を模式的に示す断面図である。図2Bは、実施形態に係る複合シートの収縮時の様子を模式的に示す断面図である。図3Aは、実施形態に係る第1不織布及び第2不織布の繊維の断面図である。図1に示す複合シート10Aは、お互いに直交する、第1方向W、第2方向L及び厚さ方向T(図1には図示しない)を有する。図2A及び図2Bに示すように、複合シート10Aは、厚さ方向Tに順に、第1不織布11と、第2不織布14とを備える。複合シート10Aが吸収性物品の胴回り部用複合シートに適用された場合、第1不織布11が肌側に、第2不織布14が非肌側に配置され、第1方向Wが着用者の胴回りに略平行となるように配置される。
【0024】
図1に示すように、複合シート10Aは、第1不織布11と第2不織布14とを互いに熱接合した複数の接合部18を、さらに備える。熱接合は、熱や、超音波を用いて、熱可塑性樹脂の融点を超えるまで加熱して第1不織布11と第2不織布14とを溶融することによって、第1不織布11と第2不織布14を互いに接合する。
【0025】
複数の接合部18の形態は、断面視の形状が厚さ方向Tに凹となる形状であるが、平面視の形状は特に限定されず、例えば線状、点状でもよい。複数の接合部18は、複合シート10Aの一方の表面側及び他方の表面側の少なくとも一方が厚さ方向に窪んでいる。図1に示す複数の接合部18は、平面視の形状が点状である。複数の接合部18それぞれの形状、大きさ、接合部18同士の間の距離は、特に限定されず、複合シート10Aの大きさや厚さによって適宜選択できる。例えば、厚さ方向Tから見た接合部18のそれぞれの形状は、円形、又は三角形及び矩形などの多角形としてもよい。接合部18の大きさは、例えば、円形の場合直径、矩形の場合一辺の長さが0.1mm以上5.0mm以下としてもよい。接合部18同士の間の距離は、1mm以上5mm以下としてもよい。第1方向Wに隣り合う複数の接合部18は、第2方向Lへずれていてもよい。第1方向Wに隣り合う複数の接合部18同士の、第2方向Lの距離は、2.0mm以上であるのが好ましく、3.7mm以上がより好ましい。接合部18のそれぞれは、図1に示すように、第1方向W及び第2方向Lへ千鳥状に配置されていてもよい。
【0026】
複合シート10Aは、さらに第3不織布16を備えていてもよい。第3不織布16は、第2不織布14の、第1不織布11と接する側と反対側に、設けられている。第3不織布16は、上記接合部18において、第1不織布11及び第2不織布14と一体的に熱接合されていてもよい。
【0027】
複合シート10Aの厚さや坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の用途に応じた任意の厚さや坪量等を採用することができる。複合シート10Aの非伸長時の厚さは、例えば、1.0mm以上3.5mm以下が好ましく、1.0mm以上3.0mm以下がより好ましい。複合シート10Aの坪量は、例えば、60g/m以上150g/m以下が好ましく、70g/m以上140g/m以下がより好ましい。
【0028】
複合シート10Aの第2方向LにおけるKES法によるCD方向の曲げ剛性は、好ましくは、0.02(N・m/(m×10-4))以上0.38(N・m/(m×10-4))以下、好ましくは、0.02(N・m/(m×10-4))以上0.32(N・m/(m×10-4))以下、より好ましくは、0.02(N・m/(m×10-4))以上0.20(N・m/(m×10-4))以下である。第2方向LにおけるKES法による曲げ剛性が0.38(N・m/(m×10-4))以下であることによって、複合シート10Aは、柔軟性に富み、肌触りに優れる。
【0029】
複合シート10AのCD方向の破断強度は、吸収性物品用の複合シートとして用いることができれば、特に限定されず、例えば、14(N/50mm)以上75(N/50mm)以下であるのが好ましく、より好ましくは17(N/50mm)以上75(N/50mm)以下、さらに好ましくは20(N/50mm)以上75(N/50mm)以下とすることができる。破断強度は、試料を破断させるために必要な引張荷重の最大値を試料の幅で除した値である。
【0030】
複合シート10Aの第1不織布と第2不織布の間の剥離強度は、1.0(N/25mm)以上であるのが好ましく、1.4(N/25mm)以上がより好ましく、1.5(N/25mm)以上がさらに好ましい。
【0031】
(第1不織布)
第1不織布11は、複合シート10Aを用いた吸収性物品の着用時に着用者の肌側の表面を形成する。第1不織布11は、肌側の表面を有する第1繊維層12と、第1繊維層12と第2不織布14との間に配置された第2繊維層13と、を有する。
【0032】
第1繊維層12と第2繊維層13は、スパンボンド法、カード法、メルトブローン法、エアレイド法などで形成でき、エンボス加工によって互いに接合されている。第1不織布11は、表面に、上記複数の接合部18に加え、エンボス加工によって形成された厚さ方向Tへ凹となる複数のエンボス接合部(図示しない)を有する。第1不織布11の一方の表面および他方の表面の少なくとも一方が、厚さ方向に窪んでいる。第1不織布11は、第1繊維層12側の表面が厚さ方向に窪んでいるのが好ましい。複数の接合部18の第1不織布11表面における平面視での総面積は、エンボス接合部の第1不織布11表面における平面視での総面積よりも小さいことが好ましい。エンボス接合部は、第2不織布14を除く、第1繊維層12及び第2繊維層13を接合している。すなわち、エンボス接合部は、第1不織布11と第2不織布14とを接合していない。エンボス接合部が第1繊維層12側の表面において厚さ方向に窪んでいる場合、第1不織布11は、第1繊維層12の表面において、複数の接合部18の平面視での総面積は、エンボス接合部の平面視での総面積よりも小さいことが好ましい。
【0033】
第1繊維層12と第2繊維層13の比率は、第1繊維層12と第2繊維層13の合計を100質量部として、質量基準で、33:67~67:33(第1繊維層:第2繊維層)であるのが好ましい。第1繊維層12と第2繊維層13の比率が上記範囲内であることによって、強度と柔軟性のバランスに優れる傾向がある。
【0034】
(第1繊維層)
第1繊維層12は、複合繊維を含む。当該複合繊維は、断面において、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂部分(以下、「PP樹脂部分」という)と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂部分(以下、「PE樹脂部分という」)と、を含む。複合繊維は、例えば、図3Aに示すPP樹脂部分を芯部20、PE樹脂部分を鞘部22とする芯鞘型複合繊維でもよいし、図3Bに示すように、PP樹脂部分(芯部20)の一部がPE樹脂部分(鞘部22)から露出している偏芯芯鞘型複合繊維でもよい。複合繊維は、PP樹脂部分とPE系樹脂部分とを含むサイドバイサイド型複合繊維でもよい。
【0035】
PP樹脂部分とPE樹脂部分との比率は、PP樹脂部分とPE樹脂部分の合計を100質量部として、質量基準で、70:30~10:90(PP樹脂部分:PE樹脂部分)であることが好ましい。この比率は、65:35~35:65であることがより好ましく、65:35~55:45であることがさらに好ましい。複合繊維におけるPP樹脂部分とPE樹脂部分との比率は、公知の核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)を用いて、ポリエチレン系樹脂に由来する水素核、及び炭素核の積分強度と、ポリプロピレン系樹脂に由来する水素核、及び炭素核の積分強度との比率から、測定することができる。複合繊維におけるPP樹脂部分とPE樹脂部分との比率は、13C-NMRスペクトルから定法により求めてもよい。
【0036】
複合繊維の平均繊維径は、10μm以上40μm以下が好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましく、12μm以上20μm以下がさらに好ましく、13μm以上18μm以下が特に好ましい。複合繊維の平均繊維径が上記範囲内であると、強度と柔軟性のバランスに優れる傾向がある。
【0037】
第1繊維層12の厚さや坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の用途に応じた任意の厚さや坪量等を採用することができる。第1繊維層12の厚さは、例えば、0.03mm以上2.00mm以下が好ましく、0.05mm以上1.00mm以下がより好ましい。第1繊維層12の坪量は、例えば、3g/m以上20g/m以下が好ましく、4g/m以上16g/m以下がより好ましく、5g/m以上12g/m以下がさらに好ましい。
【0038】
(PP樹脂部分)
PP樹脂部分は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含んでもよい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有率は50質量%以上100質量%未満であり、柔軟性と強度との両立の観点から、70質量%以上99質量%以下が好ましく、80質量%以上98質量%以下がより好ましい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体におけるα-オレフィンに由来する構成単位の含有率は0質量%を超えて50質量%以下であり、1質量%以上30質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0039】
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体におけるα-オレフィンは特に制限されず、プロピレン以外のα-オレフィンであればよい。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンとしては、柔軟性をより向上させる観点から、エチレンが好ましい。
【0040】
PP樹脂部分におけるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の含有率は、10質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、99質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0041】
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体としては、具体的には、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体などが好ましい例として挙げられる。柔軟性と強度との両立の観点から、より好ましくはプロピレンとエチレンとのランダム共重合体である。
【0042】
PP樹脂部分は、強度をより向上させる観点からは、さらにプロピレン単独重合体や複数種類のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含んでいてもよい。
【0043】
PP樹脂部分におけるプロピレン単独重合体の含有率は、1質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。なお、PP樹脂部分が上記範囲内のプロピレン単独重合体が含む場合におけるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の含有率は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン単独重合体の合計が100質量%となる量であることが好ましい。
【0044】
PP樹脂部分が含む全樹脂成分におけるプロピレンに由来する構成単位の含有率は、90質量%以上99.5質量%以下が好ましく、93質量%以上99質量%以下がより好ましく、95質量%以上98質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点は、155℃以下であることが好ましい。PP樹脂部分が樹脂成分としてプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体のみを含む場合には、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点は、125℃以上155℃以下であることが好ましい。本明細書における「融点」は、示差走査熱量分析計において、昇温速度10℃/分で、固体状から液状に変化する吸熱挙動を測定する際の「ピークトップ温度」である。
【0046】
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、ASTM規格D-1238に準拠した方法で測定されるメルトフローレート(MFR、測定条件:230℃、荷重2.16kg)が、10g/10分以上100g/10分以上であることが好ましく、15g/10分以上80g/10分以下であることがより好ましい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体のMFRが上記範囲内であると柔軟性に優れる傾向がある。
【0047】
(PE樹脂部分)
PE樹脂部分は、エチレン系重合体を含んでもよい。PE樹脂部分は、密度が900kg/m以上945kg/m以下である。PE樹脂部分の密度は、好ましくは910kg/m以上940kg/m以下であり、より好ましくは915kg/m以上940kg/m以下であり、さらに好ましくは、920kg/m以上940kg/m以下である。密度が上記範囲内であると、柔軟性と強度との両立に優れる傾向がある。PE樹脂部分の密度は、PE樹脂部分を構成する樹脂の密度を変更することにより調整することができる。エチレン系重合体の融点は、95℃以上125℃以下程度である。
【0048】
エチレン系重合体におけるエチレンに由来する構成単位の含有率は50質量%以上であり、70質量%以上99.8質量%以下が好ましく、90質量%以上99質量%以下がより好ましい。エチレン系重合体におけるその他の構成単位の含有率は、0質量%以上50質量%以下であり、0.2質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。エチレン系重合体におけるエチレンに由来する構成単位及び/又はその他の構成単位の含有率が上記範囲内であると、強度及び柔軟性の両立に優れる傾向がある。
【0049】
その他の構成単位を構成する単量体としては、α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンは、エチレン以外であれば特に制限されず、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの中でも、α-オレフィンとしては、柔軟性と強度の両立の観点から、1-ブテン及び4-メチル-1-ペンテンが好ましい。
【0050】
エチレン系重合体は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含むことが好ましい。また、エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン・1-ブテン共重合体及びエチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。エチレン系重合体が上述の態様であると、強度及び柔軟性の両立に優れる傾向がある。
【0051】
エチレン系重合体は、MFR(ASTM D-1238、190℃・2.16kg荷重)が、10g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、15g/10分以上60g/10分以下であることがより好ましく、20g/10分以上60g/10分以下であることがさらに好ましい。エチレン系重合体のMFRが上記範囲内であると強度及び柔軟性の両立に優れる傾向がある。
【0052】
PE樹脂部分におけるエチレン系重合体の含有率は、10質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、99質量%以上100質量%以下が特に好ましい。PE樹脂部分におけるエチレン系重合体の含有率が上記範囲内であると、強度及び柔軟性の両立に優れる傾向がある。
【0053】
(親水剤)
第1繊維層12は、親水度が高いことが好ましい。第1繊維層12を構成する複合繊維が、偏芯芯鞘型又はサイドバイサイド型の場合、PP樹脂部分に親水剤が練り込まれているのが好ましい。偏芯芯鞘型の場合、親水剤が練り込まれたPP樹脂部分である芯部20の一部が鞘部22から露出していることによって、第1繊維層12は、親水性を有する。
【0054】
親水剤は、さらに分類すると浸透剤と湿潤剤とに分類できる。第2不織布14は浸透剤及び湿潤剤の両方を含んでいてもよく、浸透剤は含まず、湿潤剤を含んでいてもよい。親水性に優れる観点から、親水剤は、浸透剤及び湿潤剤の両方を含むことが好ましい。
【0055】
親水剤は、浸透剤として、スルホン酸塩及び硫酸エステル塩の少なくとも一方を含むことが好ましい。スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。これらスルホン酸塩は、アルカリ金属塩が好ましい。硫酸エステル塩としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩などが挙げられる。これら硫酸エステル塩は、アルカリ金属塩が好ましい。これらの中でも、親水剤は、浸透剤として、スルホン酸塩を含むことが好ましく、スルホン酸のアルカリ金属塩を含むことがより好ましい。
【0056】
親水剤が湿潤剤を含む場合、湿潤剤は特に限定されない。例えば、親水剤は湿潤剤として、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤のいずれを含んでいてもよい。
【0057】
親水剤の含有量は、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがさらに好ましい。親水剤を、芯鞘型複合繊維の原料の樹脂に練り込む方法としては、例えば、上述の芯部20の原料の樹脂に、上述の親水剤を添加して、その後に紡糸して繊維を形成する方法が挙げられる。
【0058】
(第2繊維層)
第2繊維層13は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含む。単一繊維の平均繊維径は、10μm以上30μm以下が好ましく、11μm以上25μm以下がより好ましく、12μm以上20μm以下がより好ましい。
【0059】
第2繊維層13は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を、60質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことが特に好ましい。
【0060】
第2繊維層13の厚さや坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の用途に応じた任意の厚さや坪量等を採用することができる。第2繊維層13の厚さは、0.03mm以上2.00mm以下が好ましく、0.05mm以上1.00mm以下がより好ましい。第2繊維層13の坪量は、例えば、3g/m以上20g/m以下が好ましく、4g/m以上16g/m以下がより好ましく、5g/m以上12g/m以下がさらに好ましい。
【0061】
第2繊維層13のポリプロピレン系樹脂は、第1繊維層12を構成する上記プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含んでもよい。
【0062】
(第2不織布)
第2不織布14は、複合シート10Aを用いた吸収性物品の着用時に、第1不織布11に対し、着用者の非肌側に配置される。本実施形態に係る第2不織布14は、第1方向Wに伸縮する弾性不織布である。
【0063】
第2不織布14は、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)等の任意の不織布を採用することができる。第2不織布14は、略弾性を示す熱可塑性エラストマー繊維と、略非弾性を示す熱可塑性樹脂繊維とを有した不織布に対してギア延伸処理等の適宜な延伸処理を施した不織布を例示できる。すなわち、かかる延伸処理を行うことによって、不織布に含まれる略非弾性の熱可塑性樹脂繊維を塑性変形させ、又は、同繊維同士の接合点を破壊等すれば、熱可塑性エラストマー繊維の略弾性的な伸縮変形を阻害し難い構造に当該不織布を変化させることができる。このようにして、当該不織布の伸縮性が発現されて、弾性不織布として使用可能な状態となる。
【0064】
なお、略弾性の熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を例示することができる。また、略非弾性の熱可塑性樹脂繊維としては、ポリプロピレン系樹脂、例えばポリプロピレン(PP)を含み、他にポリエチレン(PE)を含んでもよい。
【0065】
第2不織布14は、第2繊維層13と接する側の表面に、略非弾性の熱可塑性樹脂繊維に含まれるポリプロピレン系樹脂が露出している。第2不織布14の坪量は特に限定されず、例えば、10(g/m)以上80(g/m)以下としてもよい。第2不織布14の伸長倍率は特に限定されず、例えば、1.5倍以上3.5倍以下としてもよい。伸長倍率は、第2不織布14が非伸長のときの長さを1としたときの、伸長後の第2不織布14の長さの比率である。
【0066】
第2不織布14の厚さや坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の用途に応じた任意の厚さや坪量等を採用することができる。第2不織布14の厚さは、0.05mm以上2.00mm以下が好ましく、0.10mm以上1.50mm以下がより好ましい。第2繊維層13の坪量は、例えば、10g/m以上80g/m以下が好ましく、12g/m以上70g/m以下がより好ましく、14g/m以上60g/m以下がさらに好ましい。
【0067】
(第3不織布)
第3不織布16は、複合シート10Aを用いた吸収性物品の着用時に着用者の非肌側の表面を形成する。第3不織布16として用いる不織布は、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)等の任意の不織布を採用することができる。第3不織布16の厚さや坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の用途に応じた任意の厚さや坪量等を採用することができる。第3不織布16の厚さは、0.05mm以上2.00mm以下が好ましく、0.10mm以上1.50mm以下がより好ましい。第3不織布16の坪量は、例えば、8g/m以上30g/m以下が好ましく、10g/m以上25g/m以下がより好ましく、12g/m以上20g/m以下がさらに好ましい。第3不織布16は、第1不織布11と同じ不織布を用いてもよいし、第1不織布11と異なる不織布を用いてもよい。
【0068】
<製造方法>
上記複合シート10Aを製造するにあたって、まず、第1不織布11、第2不織布14、及び第3不織布16をそれぞれ準備する。第1不織布11は、第1繊維層12と第2繊維層13を厚さ方向Tに重ね、エンボス加工を施し接合することによって形成される。第1不織布11の表面には、エンボス加工によって厚さ方向Tに凹となるエンボス接合部が複数形成される。
【0069】
次いで、第1不織布11、第2不織布14、及び第3不織布16を厚さ方向Tに順に重ねる。この場合、第2不織布14は、ギア延伸加工を実施した後、供給速度と巻回速度の速度差によって延伸した状態である。第1不織布11は、第2繊維層13が第2不織布14に接するように、配置される。第1不織布11、第2不織布14、及び第3不織布16が重なった状態で、熱接合される。熱接合は、例えば、図示しないが超音波ホーンとアンビルロールとを用いてもよい。超音波ホーンは、外周面に超音波振動を発生する。アンビルロールは、外周面に半径方向の外側へ突出した複数の突起を有している。第1不織布11、第2不織布14、及び第3不織布16は、重なった状態で、超音波ホーンとアンビルロールの間を搬送方向であるMD方向(W方向)に搬送され、アンビルロールの突起と超音波ホーンとの間に挟まれることによって、複数の接合部18が形成される。接合部18は、超音波圧着によって厚さ方向Tに凹となる形状を有する。上記のようにして、複合シート10Aが形成される。複合シート10Aは、第1不織布11の表面に、エンボス接合部と、接合部18とを有する。複合シート10Aは、第3不織布16の表面に、接合部18を有する。
【0070】
<作用及び効果>
複合シート10Aは、第1方向Wに伸縮するので、図4に示すように、第1方向Wを着用者の胴回りDWに平行に配置することによって、吸収性物品の胴回り部用の複合シートに適用し得る。例えば、吸収性物品としての使い捨ておむつ1は、着用者の股間を覆う股部2と、着用者の胴回りを覆う胴回り部3と、を備える。胴回り部3は、複合シート10Aで形成される。複合シート10Aは、第1不織布11が肌側に、第2不織布14が非肌側に配置され、第1方向Wが着用者の胴回りDWに平行となるように配置される。複合シート10Aは、使い捨ておむつ1の胴回り部用複合シートに適用された場合、胴回り方向DWへ伸長させて、引っ張り上げられて着用者に装着される。複合シート10Aは、第1不織布11が着用者の肌に接触した状態で着用者の胴回りDWの長さに合わせて収縮する。
【0071】
複合シート10Aは、PP樹脂部分とPE樹脂部分とを含む複合繊維を含むので、ポリエチレン系樹脂に由来する柔軟性に富む第1繊維層12を、複合シート10Aの表面に備える。したがって、複合シート10Aは、肌触りに優れる。
【0072】
複合シート10Aは、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含む第2繊維層13を含むので、第1繊維層12がポリエチレン系樹脂を含むことによる機械的強度の低下が抑制される。複合シート10AのCD方向(L方向)の破断強度は、14(N/50mm)以上であることによって、吸収性物品の胴回り部用の複合シートに適用した場合、着用時に吸収性物品を引っ張り上げる力によって破断することが抑制される。
【0073】
第2繊維層13は、第2不織布14と接しており、熱接合によって第2不織布14と接合している。第2繊維層13がポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含み、第2不織布14が第2繊維層13と接する側の表面にポリプロピレン系樹脂を含むので、ポリプロピレン系樹脂同士が接合した接合部18が形成され得る。ポリプロピレン系樹脂同士が接合した接合部18は、相溶性が高く、しかもポリエチレン系樹脂が介在しないので、良好に熱接合している。第1不織布11と第2不織布14は、上記ポリプロピレン系樹脂同士が接合した接合部18を有するので、接合強度に優れる。複合シート10Aは、複合シート10Aの剥離強度が1.0(N/25mm)以上であることによって、吸収性物品の胴回り部用の複合シートに適用した場合、繰り返し使用によって第1不織布11が第2不織布14から剥がれることが抑制される。第2繊維層13は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を、60質量%以上含むことによって、ポリエチレン系樹脂が介在しない接合部18がより確実に形成される。
【0074】
複合シート10Aは、お互いに直交する、第1方向W、第2方向L、及び厚さ方向Tを有し、厚さ方向Tに順に、第1不織布11と、第2不織布14と、を備え、第1不織布11と第2不織布14とを互いに熱接合した複数の接合部18、をさらに備え、第1不織布11は、第1繊維層12と、第1繊維層12と第2不織布14との間に配置された第2繊維層13と、を有し、第1繊維層12は、複合繊維を含み、複合繊維は、断面において、ポリプロピレン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂部分と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂部分と、を含み、第2繊維層13は、ポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維を含み、第2不織布14は、第2繊維層13と接する側の表面に、ポリプロピレン系樹脂を含有する。
【0075】
接合部18は、第1繊維層12と、第2繊維層13と、第2不織布14とを熱接合によって一体化している。第1繊維層12と第2繊維層13とは、互いに同種のポリプロピレン系樹脂を含むので、相溶性に優れ、良好に接合されている。第2不織布14は、第2繊維層13と接する側の表面に第2繊維層13に含まれる単一繊維と同種の樹脂であるポリプロピレン系樹脂を含有するので、第2繊維層13と熱接合しやすい。第2繊維層13と第2不織布14との間が良好に熱接合しているので、複合シート10Aは、第1不織布11と第2不織布14との間の接合強度に優れ、繰り返し使用した場合に第1不織布11と第2不織布14との間が剥がれることが抑制され、耐久性に優れる。したがって、複合シート10Aは、肌触りの良さを維持しつつ、耐久性に優れる。
【0076】
第2不織布14は、第1方向Wに伸縮可能な弾性不織布であるのが好ましい。複合シート10Aは、第1方向Wに伸縮するので、第1方向Wを着用者の胴回りに平行に配置することによって、例えば、吸収性物品の胴回り部用の複合シートに適用し得る。第1不織布11は、柔軟性に富む第1繊維層12を含むので、第2不織布14(弾性不織布)の収縮に合わせて容易に収縮する。第2不織布14(弾性不織布)は、第2繊維層13と接する側の表面に第2繊維層13に含まれる単一繊維と同種の樹脂であるポリプロピレン系樹脂を含有するので、第2繊維層13と良好に熱接合している。したがって、複合シート10Aは、第1不織布11と第2不織布14(弾性不織布)との間の接合強度に優れる。結果として、複合シート10Aは、収縮性、耐久性に優れる。
【0077】
複合シート10Aは、第2不織布14の、第1不織布11と接する側と反対側に、第3不織布16を備えるのが好ましい。複合シート10Aは、第2不織布14の、第1不織布11と接する側と反対側に、用途に合わせた第3不織布16を設けることによって、第1不織布11を肌側又は非肌側とする選択の幅がより広がる。さらに、複合シート10Aは、第3不織布16を追加することで複合シート10Aの機械的強度が高くなるので、耐久性により優れる。したがって複合シート10Aは、吸収性物品の胴回り部用の複合シートとしてより好適である。
【0078】
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を含み、ポリエチレン系樹脂は、エチレン系重合体を含むのが好ましい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂の融点との差が小さいので、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂と熱接合しやすい。そのため第1繊維層12の繊維同士は、エンボス接合部及び接合部18において、より広い範囲で熱接合する。したがって、複合シート10Aは、複合シート10Aの表面に配置された第1繊維層12の繊維同士がより広い範囲で熱接合していることによって、毛羽立ちが比較的少ないので、長時間使用することができる。
【0079】
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点は155℃以下、前記エチレン系重合体の融点は95℃以上125℃以下であるのが好ましい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体の融点と、エチレン系重合体の融点とが、それぞれ上記範囲内であることによって、第1繊維層12の繊維同士がより広い範囲でより確実に熱接合し得る。
【0080】
PP樹脂部分とPE樹脂部分との比率は、PP樹脂部分とPE樹脂部分の合計を100質量部として、質量基準で、70:30~10:90(ポリプロピレン系樹脂部分:ポリエチレン系樹脂部分)であるのが好ましい。第1繊維層12は、ポリエチレン系樹脂部分すなわちポリエチレン系樹脂を所定量以上含む複合繊維を含むことによって、第1繊維層12の表面にポリエチレン系樹脂が配置されやすい。第1繊維層12は、複合シート10Aの表面側に配置されるので、複合シート10Aは、肌触りに優れる。
【0081】
複合繊維は、繊維表面に前記ポリエチレン系樹脂部分が存在しているのが好ましい。例えば、複合繊維は、ポリプロピレン系樹脂部分を芯部20、前記ポリエチレン系樹脂部分を鞘部22とし、前記ポリプロピレン系樹脂部分の一部が前記ポリエチレン系樹脂部分から露出している偏芯芯鞘型、又はサイドバイサイド型である。複合繊維は繊維表面にポリエチレン系樹脂部分が存在しているので、ポリエチレン系樹脂に由来する柔軟性に富む。第1繊維層12が複合シート10Aの表面側に配置されるので、複合シート10Aは、肌触りに優れる。
【0082】
第1繊維層12と第2繊維層13の比率は、第1繊維層12と第2繊維層13の合計を100質量部として、質量基準で、33:67~67:33(第1繊維層:第2繊維層)であるのが好ましい。第1不織布11は、ポリプロピレン系樹脂からなる第2繊維層13を所定量以上含む。第2繊維層13は、第2不織布14と接する位置に配置されているので、第2不織布14とより確実に熱接合する。したがって、複合シート10Aは、第1不織布11と第2不織布14との間の接合強度に優れる。
【0083】
第1繊維層12のポリプロピレン系樹脂と、第2繊維層13のポリプロピレン系樹脂とは、同一のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であるのが好ましい。プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体は、ポリプロピレンに比べ融点が低く、ポリエチレン系樹脂の融点との差が小さいので、ポリプロピレンに比べポリエチレン系樹脂と熱接合しやすい。そのためエンボス接合部及び接合部18において、第1繊維層12の繊維同士はより広い範囲で熱接合する。したがって、複合シート10Aは、複合シート10A表面に配置された第1繊維層12の繊維同士がより広い範囲で熱接合していることによって、毛羽立ちが比較的少ないので、長時間使用することができる。第1繊維層12と第2繊維層13のポリプロピレン系樹脂が、同一のプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であるので、相溶性に優れ、第1繊維層12と第2繊維層13とがより広い範囲で熱接合しやすい。したがって複合シート10Aは、第1繊維層12と第2繊維層13との間の接合強度に優れる。
【0084】
複合シート10Aは、第1繊維層12の表面に、第2不織布14を除く第1繊維層12と第2繊維層13とを接合している複数のエンボス接合部を有し、複数の接合部18の第1繊維層12の表面における総面積は、複数のエンボス接合部の第1繊維層12の表面における総面積よりも小さいのが好ましい。第1不織布11は、複数の接合部18の総面積が複数のエンボス接合部の総面積よりも小さいので、複数の接合部18の間において第2不織布14と分離して厚さ方向Tに変形しやすい。第1不織布11が接合部18の間において厚さ方向Tに変形しやすいので、第2不織布14は、第1不織布11に阻害されずに容易に収縮する。したがって、複合シート10Aは、着用者の胴回りに沿って容易に変形するので、肌触りに優れる。
【0085】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。例えば、上記実施形態の場合、点状の接合部18が格子状に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。図1と同一の構成について同一の符号を付した図5に示すように、格子状に配置されていてもよい。図5に示す第1方向Wに隣り合う接合部18同士は、第2方向Lへ約0.2mmずれている。図5に示す点状の接合部18を備える複合シート10Bは、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
上記実施形態において、第2不織布14が弾性不織布の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。図2Aと同一の構成について同一の符号を付した図6に示す複合シート10Cは、厚さ方向Tに順に、第1不織布11、弾性糸24、第2不織布26を備える。弾性糸24は、ウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性エラストマーを糸状に成形したものを用いることができる。第2不織布26は、第1不織布11の第2繊維層13と接する側の表面に、ポリプロピレン系樹脂を含む。第2不織布26として用いる不織布は、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)等の任意の不織布を採用することができる。第2不織布26の厚さや坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の用途に応じた任意の厚さや坪量等を採用することができる。第2不織布26の厚さは、0.05mm以上2.00mm以下が好ましく、0.10mm以上1.50mm以下がより好ましい。第2不織布の坪量は、例えば、10g/m以上30g/m以下が好ましく、12g/m以上25g/m以下がより好ましく、14g/m以上20g/m以下がさらに好ましい。本変形例に係る複合シート10Cは、第1不織布11と、第2不織布26の間に、弾性糸24を配置した状態で、熱接合することによって形成される。弾性糸24は、供給速度と巻回速度の速度差によって延伸した状態で、第1不織布11及び第2不織布26と接合される。
【0087】
複合シート10Cは、第1不織布11と第2不織布26との間に、第1方向Wに伸縮する弾性糸24を含む。複合シート10Cは、第1方向Wに伸縮するので、第1方向Wを着用者の胴回りに平行に配置することによって、例えば、吸収性物品1の胴回り部用の複合シートに適用し得る。第1不織布11は、柔軟性に富む第1繊維層12を含むので、弾性糸24の収縮に合わせて容易に収縮する。弾性糸24を挟んで第1不織布11と反対側に第2不織布26が配置されており、当該第2不織布26が第2繊維層13と良好に熱接合している。すなわち第2繊維層13と第2不織布26とは、間に弾性糸24を挟んだ状態で、良好に熱接合している。したがって、複合シート10Cは、第1不織布11と第2不織布26の間の接合強度に優れる。結果として、複合シート10Cは、収縮性、耐久性に優れる。
【0088】
<測定方法>
上記実施形態において説明した各数値の測定方法について、以下説明する。
【0089】
(坪量)
まず、非伸長のときの複合シートから、合計の面積が500(cm)以上となるよう1個ないしは複数個の試験片を切り出し、試料とする。次いで、当該試料の総重量を直示天秤(例示:研精工業(株)製電子天秤HF-300)で測定する。最後に測定した総重量と試料の総面積から、試料の単位面積当たりの重量(g/m)を算出した値を、複合シートの坪量とする。
【0090】
第1不織布、第2不織布、第3不織布の坪量は下記の通り求める。まず複合シートからそれぞれ分離した後、材料ごとに、皺を伸ばした状態で合計の面積が500(cm)以上となるよう1個ないしは複数個の試料片を切り出す。材料ごとの総重量を測定し、各総重量と各総面積から、各試料の単位面積当たりの重量(g/m)を算出し、各材料の坪量とする。
【0091】
(厚さ)
厚さは、(株)大栄科学精器製作所製の厚さ測定器、FS-60DS(プレッサーフートの直径:50.5mm,測定圧:0.3KPa)を用いて測定する。
【0092】
(KES法による曲げ剛性)
KES法による曲げ剛性は、カトーテック(株)製の大型曲げ試験器、KES-FB2-Lを用いて、複合シートの第2方向における曲げ剛性を測定する。複合シートから第1方向の長さ40mm、第2方向の長さ60mmのサイズに切り出し、試料とする。
測定条件は、以下の通りである。
SENS :4
SIZE :4cm (試料の測定幅に設定する)
モード :1サイクル
曲げ曲率 :0.5cm-1
B :K=0.1~0.3cm
【0093】
(破断強度)
破断強度は、(株)島津製作所製のオートグラフ、AG-1を用いて測定する。まず、シワが形成されていない伸長状態の複合シートから、第1方向の長さ50mm、第2方向の長さ70mmのサイズに切り出し、試料とする。次いでチャック間距離を50mm、引張速度500mm/minで複合シートの第2方向の破断強度を測定した。「N/50mm」は、幅50mmあたりの破断強度(N)を意味する。
【0094】
(平均繊維径)
まず、複合シートから第1不織布及び第2不織布を分離し、各不織布の10mm×10mmの試料を切り出して準備して、プレパラートの上に配置した。次に、各試料にグリセリンを適量滴下して、試料全体がグリセリンで浸された状態にして、その上からカバーガラスを置いた。次に、公知の光学顕微鏡(例えば、KEYENCE製VHC-100 Digital Microscope Lens VH-Z450)を用いて試料を倍率1000倍で観察して、試料の表面に露出している繊維の繊維径を50箇所測定し、平均値を平均繊維径とした。
【0095】
(剥離強度)
(1)複合シートにおける接合部(第1不織布及び第2不織布を含む)を含む部分を、伸縮方向70mm×非伸縮方向25mmの大きさで切り出し、試料とする。
(2)剥離試験用の試験機を使用し、切り出した試料の第1不織布及び第2不織布を予め伸縮方向Lへ20mm剥離し、第1不織布の端部、および、第2不織布の端部をそれぞれ試験機が備える二つのチャックに把持する。ただし、把持するときのチャック間の距離(初期値)は予め30mmに設定されている。
(3)試験機にて、二つのチャックの間隔が拡がるように、二つのチャックを一定速度(例示:50mm/min)で引っ張って、接合部の第1不織布と第2不織布とを180°方向に剥離させつつ、二つのチャックの間隔と二つのチャックに掛かる荷重Fを測定する。
(4)二つのチャック間に掛かる荷重Fと二つのチャックの間隔Dmとの関係に基づき、接合部の剥離強度を測定する。測定された荷重Fの最大値を剥離強度(N/25mm)とする。
【0096】
(接合部、エンボス接合部の面積の比較)
不織布から10mm×10mmの大きさで切り出し、試料とする。電子顕微鏡を用いて倍率100倍で試料を観察して、試料の表面の接合部、及びエンボス接合部の面積をそれぞれ測定し、比較する。
【実施例
【0097】
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0098】
(A)試料
第1不織布と、第2不織布としての弾性不織布と、第3不織布とを備える複合シートを用意した。第1不織布は、偏芯芯鞘型の複合繊維からなる第1繊維層と、単一繊維からなる第2繊維層とを、それぞれ、スパンボンド法で形成し、エンボス加工によって一体化した。ポリプロピレン系樹脂として、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(α-オレフィン:エチレン)を用い、ポリエチレン系樹脂としてエチレン・α-オレフィン共重合体(α-オレフィン:1-ブテン)を用いた。弾性不織布は、ポリウレタンと、ポリプロピレンとを含むスパンボンド不織布であり、全試料において共通のものを用いた。第3不織布は、偏芯芯鞘型の複合繊維層と、単一繊維層とを備えるスパンボンド不織布である。各不織布の詳細な構成は、表1に示す通りである。第1繊維層と第2繊維層の比率(第1繊維層:第2繊維層)が、第1繊維層と第2繊維層の合計を100質量部として、実施例1~3が67:33であり、実施例4~6が33:67である。
【0099】
第1不織布、弾性不織布、及び第3不織布を厚さ方向に順に重ね、超音波を用いて熱接合した。超音波による熱接合は、Herrmann Ultrasonics社製の設備を用いた。超音波ホーンは、幅161mm×2本、周波数20KHz、圧力設定を500Nとした。アンビルロールの速度を200m/min、弾性不織布の巻出し速度を80m/min、第1不織布及び第3不織布の巻出し速度を199m/minとした。
【0100】
参考例として、単一繊維からなるスパンボンド不織布である第1不織布と、上記弾性不織布と、単一繊維からなるスパンボンド不織布である第3不織布とを備える複合シート(参考例1)、偏芯芯鞘型の複合繊維からなるスパンボンド不織布である第1不織布と、上記弾性不織布と、偏芯芯鞘型の複合繊維からなるスパンボンド不織布である第3不織布とを備える複合シート(参考例2,3)をそれぞれ用意し、上記実施例と同じ条件で超音波を用いて熱接合して、複合シートを得た。
【0101】
(B)結果
実施例及び参考例に係る複合シートについて、CD方向の破断強度、接合強度、CD方向の曲げ剛性を測定した。表1に示すように、実施例1~6は、PP樹脂部分とPE樹脂部分とを含む複合繊維を含む第1繊維層を有するので、曲げ剛性が0.31(N・m/(m×10-4))以下であり、ポリプロピレン系樹脂で形成された単一繊維を含む第2繊維層を有するので、破断強度が17.39N/50mm以上だった。さらに第2繊維層が弾性不織布と熱接合しているので、1.47N/mm以上の破断強度が得られた。
【0102】
これに対し、参考例1は、第1不織布がポリプロピレンの単一繊維からなるため、CD方向の破断強度及び接合強度が高いが、CD方向の曲げ剛性も高い結果となった。参考例2及び3は、PP樹脂部分とPE樹脂部分とを含む複合繊維からなる第1不織布と、弾性不織布が熱接合されているので、接合強度が低い結果となった。
【0103】
【表1】
【符号の説明】
【0104】
1 吸収性物品
2 股部
3 胴回り部
10A 複合シート
10B 複合シート
10C 複合シート
11 第1不織布
12 第1繊維層
13 第2繊維層
14、26 第2不織布
16 第3不織布
18 接合部
20 芯部
22 鞘部
24 弾性糸
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6