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特許7580534フィルタ洗浄システム、フィルタ洗浄方法および減圧機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】フィルタ洗浄システム、フィルタ洗浄方法および減圧機構
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H01L21/304 648F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023105696
(22)【出願日】2023-06-28
(62)【分割の表示】P 2021575745の分割
【原出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2023115235
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020018170
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 優樹
(72)【発明者】
【氏名】穴本 篤史
(72)【発明者】
【氏名】小宮 洋司
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223669(JP,A)
【文献】特開2013-175552(JP,A)
【文献】特開2014-078562(JP,A)
【文献】特開2017-055023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B01D 24/00
B01D 65/00
B01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留部に貯留された液体をフィルタに送る送液路と、
前記フィルタから送出された液体を前記貯留部に戻す循環路と、
前記フィルタに接続されるドレイン路と、
前記循環路に接続され、前記循環路を介して前記フィルタの内部を減圧する減圧機構と、
各部を制御する制御部と
を備え
前記制御部は
前記フィルタを前記液体で満たす処理と、前記フィルタが前記液体で満たされた状態で前記減圧機構を制御して前記フィルタの内部を減圧する処理と、前記減圧する処理を所定時間維持する処理と、前記フィルタから前記ドレイン路を介して前記液体を排出する処理と、前記減圧機構によって減圧された状態で、置換液を前記フィルタに通液させることによって前記フィルタの内部を前記置換液に置換する処理とを実行する、フィルタ洗浄システム。
【請求項2】
前記送液路は、前記送液路から分岐して前記送液路に戻るバイパス路を備え、
前記バイパス路は、加熱部を備え、
前記制御部は、前記置換する処理において、前記減圧機構を停止させた後、置換液を前記バイパス路に流通させて、前記加熱部によって加熱された前記置換液を前記フィルタに通液させる、請求項に記載のフィルタ洗浄システム。
【請求項3】
前記フィルタが搭載される基板液処理装置の稼働時において前記フィルタに通液される処理液を前記貯留部に供給する処理液供給部
を備え、
前記制御部は、前記置換する処理を終えて前記フィルタから前記置換液が排出された後、前記処理液供給部を制御して前記貯留部に前記処理液を貯留し、貯留した前記処理液を前記フィルタに通液させる、請求項またはに記載のフィルタ洗浄システム。
【請求項4】
液体でフィルタが満たされた状態で減圧機構を用いて前記フィルタの内部を減圧する工程と、
前記減圧する工程を終えて前記フィルタから前記液体が排出された後、貯留部に貯留した置換液を前記フィルタに通液させることによって前記フィルタの内部を前記置換液に置換する工程と
を含む、フィルタ洗浄方法。
【請求項5】
前記置換する工程は、前記置換液が前記フィルタに通液される前から前記フィルタへの前記置換液の通液中にかけて前記減圧機構を用いて前記フィルタの内部を減圧する、請求項に記載のフィルタ洗浄方法。
【請求項6】
前記置換する工程は、前記減圧機構を停止させた後、前記貯留部に貯留された液体を前記フィルタに送る送液路から分岐して前記送液路に戻るバイパス路に前記置換液を流通させて、前記バイパス路に設けられた加熱部によって加熱された前記置換液を前記フィルタに通液させる、請求項に記載のフィルタ洗浄方法。
【請求項7】
タンクと、
フィルタに接続する循環路と前記タンクとを接続する分岐路と、
前記タンクに接続する排気装置と
を備え、
前記排気装置は、液体が満たされた前記フィルタを、前記タンク、前記分岐路、前記循環路を介して吸引することにより前記フィルタの内部を減圧する、減圧機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタ洗浄システム、フィルタ洗浄方法および減圧機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハなどの基板に対して液処理を行う基板液処理装置は、処理液に含まれる異物を除去するために、処理液の供給路にフィルタを有する。
【0003】
フィルタを洗浄する技術として、特許文献1には、供給路に対し、高温の純水と低温の純水とを交互に供給することによって供給路およびフィルタを洗浄する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-55023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板液処理装置にて使用される前のフィルタを効果的に洗浄することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるフィルタ洗浄システムは、送液路と、循環路と、減圧機構とを備える。送液路は、貯留部に貯留された液体をフィルタに送る。循環路は、フィルタから送出された液体を貯留部に戻す。減圧機構は、循環路に接続され、循環路を介してフィルタの内部を減圧する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板液処理装置にて使用される前のフィルタを効果的に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るフィルタ洗浄システムの構成を示す図である。
図2図2は、フィルタおよび減圧機構の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1液による洗浄可能範囲と第2液による洗浄可能範囲との関係を示すグラフである。
図4図4は、第1実施形態に係るフィルタ洗浄システムが実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第1IPAウェッティング処理の説明図である。
図6図6は、第1IPAウェッティング処理の説明図である。
図7図7は、第1IPAウェッティング処理の説明図である。
図8図8は、第1DIW置換処理の説明図である。
図9図9は、第1DIW置換処理の説明図である。
図10図10は、HDIW洗浄処理の説明図である。
図11図11は、第2実施形態に係るフィルタ洗浄システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示によるフィルタ洗浄システム、フィルタ洗浄方法および減圧機構を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0011】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
<フィルタ洗浄システムの構成>
まず、第1実施形態に係るフィルタ洗浄システムの構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、実施形態に係るフィルタ洗浄システムの構成を示す図である。図2は、フィルタおよび減圧機構の構成の一例を示す図である。
【0013】
図1に示す第1実施形態に係るフィルタ洗浄システム1は、フィルタ100の洗浄を行う。第1実施形態において、フィルタ100は、新品(未使用品)であるものとする。
【0014】
新品のフィルタ100は、フィルタ100が搭載される基板液処理装置の稼働前に、フィルタ100の内部に設けられた濾過膜110(図2参照)を十分に濡らして液体が適切に流通する状態にする必要がある。
【0015】
なお、フィルタ100は、必ずしも新品であることを要さず、たとえば、他の基板液処理装置で過去に使用されたもの(再利用品)であってもよい。
【0016】
図1に示すように、フィルタ洗浄システム1は、貯留部2と、送液路3と、循環路4と、第1供給部5と、第2供給部6と、減圧機構7と、制御装置8とを含む。なお、フィルタ洗浄システム1は、フィルタ100を含んでいてもよい。また、フィルタ洗浄システム1は、基板液処理装置の一部であってもよい。
【0017】
貯留部2は、たとえばタンクであり、フィルタ100に通液される液体を貯留する。送液路3は、フィルタ100の一次側と貯留部2とを接続する管路である。具体的には、送液路3の一端は、貯留部2の底部に接続され、他端は、フィルタ100の一次側に設けられた導入ポート120(図2参照)に接続される。送液路3には、送液路3を開閉するバルブ201が設けられる。なお、フィルタ100の一次側とは、フィルタ100のうち濾過膜110よりも上流の部分を示す。
【0018】
送液路3には、バイパス路31が設けられる。バイパス路31の一端は、バルブ201よりも上流側において送液路3に接続され、他端は、バルブ201よりも下流側において送液路3に接続される。バイパス路31には、ポンプ311と、バイパス路31を流通する液体を加熱する加熱部312と、バイパス路31を開閉するバルブ202とが設けられる。
【0019】
また、送液路3には、ドレイン路32が接続される。ドレイン路32は、バイパス路31よりも上流側において送液路3に接続される。ドレイン路32には、ドレイン路32を開閉するバルブ203が設けられる。ドレイン路32は、たとえば、フィルタ100内部の液体を排出する際に用いられる。
【0020】
循環路4は、フィルタ100の二次側と貯留部2とを接続する管路である。具体的には、循環路4は、第1循環路41と、第2循環路42とを備える。第1循環路41は、フィルタ100の二次側に設けられた送出ポート130(図2参照)に接続される。また、第2循環路42は、フィルタ100の二次側に設けられたベントポート140(図2参照)に接続される。ベントポート140は、たとえば、フィルタ100の内部から気泡を排出する際に用いられる。
【0021】
第1循環路41には、第1循環路41を開閉するバルブ204が設けられる。また、第2循環路42には、第2循環路42を開閉するバルブ205が設けられる。
【0022】
第1供給部5は、貯留部2に対し、第1液の一例であるDIW(脱イオン水)を供給する。DIWは、温度調整されておらず、その温度は、たとえば室温(たとえば23℃~25℃程度)である。
【0023】
第1供給部5は、DIW供給源51と、DIW供給源51と貯留部2とを接続する第1供給路52と、第1供給路52に設けられ、第1供給路52を開閉するバルブ206とを備える。DIW供給源51は、図示しないポンプ等を用いてDIWを第1供給路52に圧送する。DIW供給源51によって圧送されたDIWは、第1供給路52を介して貯留部2に供給されて貯留部2に貯留される。
【0024】
DIWは、フィルタ100に含まれる汚染物質のうち、メタル成分等を除去することができる。メタル成分等は、フィルタ100に含まれる汚染物質のうち、後述する第2供給部6から供給されるIPAでは除去が困難な(IPAにほとんど溶解しない)物質である。
【0025】
第2供給部6は、貯留部2に対し、第2液の一例であるIPA(イソプロピルアルコール)を供給する。IPAは、温度調整されておらず、その温度は、たとえば室温(たとえば23℃~25℃程度)である。すなわち、IPAの温度は、第1供給部5から供給されるDIWの温度と同じである。
【0026】
第2供給部6は、IPA供給源61と、IPA供給源61と貯留部2とを接続する第2供給路62と、第2供給路62に設けられ、第2供給路62を開閉するバルブ207とを備える。IPA供給源61は、図示しないポンプ等を用いてIPAを第2供給路62に圧送する。IPA供給源61によって圧送されたIPAは、第2供給路62を介して貯留部2に供給されて貯留部2に貯留される。
【0027】
IPAは、フィルタ100に含まれる汚染物質のうち、上記メタル成分等以外の物質を主に除去することができる。なお、メタル成分等は、IPAに完全に溶解しないわけではなく、ごく少量溶解する。したがって、メタル成分等を適切に除去しなければ、装置稼働時において、フィルタ100からメタル成分等が長期間少量ずつ溶け出して処理液を汚染し続けるおそれがある。
【0028】
図3は、第1液による洗浄可能範囲と第2液による洗浄可能範囲との関係を示すグラフである。図3に示すように、第1液(たとえばDIW)による洗浄可能範囲と、第2液(たとえばIPA)による洗浄可能範囲とは、一部重複していてもよいが大部分が離れている。このように、フィルタ洗浄システム1では、洗浄対象とする汚染群に対する洗浄可能範囲(洗浄能力)ができるだけ対極的な位置関係にある第1液および第2液が選択される。これにより、第2液のみでは除去が困難な汚染群(たとえばメタル成分等)を第1液によって除去することができ、かかる汚染群による汚染を抑制することができる。
【0029】
具体的には、第2液は、濾過膜110を湿潤し得るように、表面張力が低く、かつ、第1液との親和性(第1液と混和可能な性質)を有する液体が選択される。また、第1液は、洗浄対象の汚染群に対して第1液では除去が困難な汚染群を好適に除去可能な液体が選択される。第1液および第2液を選択する際の指標は、たとえばHSP値(ハンセン溶解度パラメータ)、誘電率、拡散係数等であり、洗浄対象とする汚染群によって異なる。
【0030】
減圧機構7は、循環路4に接続され、循環路4を介してフィルタ100の内部を減圧する。具体的には、減圧機構7は、タンク71と、分岐路72,73と、大気開放路74と、排気装置75とを備える。
【0031】
タンク71は、液体(IPAまたはDIW)を貯留する。タンク71には、タンク71に貯留された液体を排出するドレイン路711が接続される。ドレイン路711には、ドレイン路711を開閉するバルブ208が設けられる。
【0032】
分岐路72は、第1循環路41とタンク71とを接続する管路である。具体的には、分岐路72の一端は、フィルタ100よりも下流かつバルブ204よりも上流において第1循環路41に接続される。また、分岐路72の他端は、タンク71の上部に接続される。分岐路72には、分岐路72を開閉するバルブ209が設けられる。
【0033】
分岐路73は、第2循環路42とタンク71とを接続する管路である。具体的には、分岐路73の一端は、フィルタ100とバルブ205との間の第2循環路42に接続される。また、分岐路73の他端は、タンク71の上部に接続される。分岐路73には、分岐路73を開閉するバルブ210が設けられる。
【0034】
大気開放路74は、タンク71の上部に接続される。大気開放路74には、大気開放路74を開閉するバルブ211が設けられる。
【0035】
排気装置75は、たとえば真空ポンプ等であり、排気路751を介してタンク71に接続される。排気路751は、タンク71の上部に接続される。排気路751には、排気路751を開閉するバルブ212が設けられる。
【0036】
ここで、フィルタ100の構成について説明しておく。図2に示すように、フィルタ100は、内部に濾過膜110を備える。濾過膜110は、たとえばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜を含む。PTFE膜は疎水性を有する。
【0037】
フィルタ100の一次側には、導入ポート120と、ベントポート140と、ドレインポート150とが設けられる。導入ポート120には、送液路3が接続される。ベントポート140には、第2循環路42が接続される。ベントポート140は、たとえば、フィルタ100の内部から気泡を除去するために用いられる。ドレインポート150には、ドレイン路160が接続される。ドレイン路160には、ドレイン路160を開閉するバルブ213が設けられる。ドレイン路160は、たとえば、フィルタ100から液体を排出する際に用いられる。
【0038】
フィルタ100の二次側には、送出ポート130が設けられる。送出ポート130には、第1循環路41が接続される。
【0039】
フィルタ100は、一次側を下方に向け、二次側を上方に向けた状態で設置される。したがって、液体(IPAまたはDIW)は、フィルタ100に対して下方から導入される。
【0040】
また、フィルタ100は、貯留部2(図1参照)内に貯留される液体(IPAまたはDIW)の液面よりも低い位置に配置される。これにより、フィルタ洗浄システム1は、貯留部2に貯留された液体(IPAまたはDIW)を液体の自重を利用してフィルタ100に供給することができる。
【0041】
図1に示すように、フィルタ洗浄システム1は、制御装置8をさらに備える。制御装置8は、フィルタ洗浄システム1の動作を制御する。かかる制御装置8は、たとえばコンピュータであり、制御装置81および記憶部82を備える。制御装置81は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、後述する制御を実現する。また、記憶部82は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。
【0042】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置8の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0043】
<フィルタ洗浄システムの具体的動作>
次に、フィルタ洗浄システム1の具体的動作について図4図10を参照して説明する。図4は、第1実施形態に係るフィルタ洗浄システム1が実行する処理の手順を示すフローチャートである。また、図5図7は、第1IPAウェッティング処理の説明図であり、図8および図9は、第1DIW置換処理の説明図であり、図10は、HDIW洗浄処理の説明図である。なお、図4に示す各処理手順は、制御装置8の制御に従って実行される。
【0044】
<第1IPAウェッティング処理>
図4に示すように、フィルタ洗浄システム1では、まず、第1IPAウェッティング処理が行われる(ステップS101)。
【0045】
第1IPAウェッティング処理では、まず、バルブ207が一定時間開かれることにより、第2供給部6から貯留部2へIPAが供給される。これにより、貯留部2にIPAが貯留される(図5参照)。その後、バルブ207が閉じられることにより、第2供給部6から貯留部2へのIPAの供給が停止する。なお、この処理は、第1IPAウェッティング処理の開始前に行われてもよい。すなわち、IPAは、予め貯留部2に貯留されていてもよい。また、第2供給部6から貯留部2へのIPAの供給は、第1IPAウェッティング処理中において定期的にまたは常時行われてもよい。
【0046】
つづいて、バルブ201,209,210,211が開かれる。上述したように、フィルタ100は、貯留部2よりも下方に配置される。したがって、バルブ201,209,210,211が開かれると、貯留部2に貯留されたIPAは、IPAの自重により、送液路3を流れてフィルタ100に流入する。これにより、フィルタ100は、IPAにより満たされる。フィルタ100がIPAで満たされた後、バルブ201,211が閉じられる。
【0047】
このように、第1実施形態に係るフィルタ洗浄システム1では、フィルタ100の内部をまずIPAで満たすこととしている。IPAは、表面張力が比較的低い、具体的には、DIWよりも低いため、フィルタ100の内部に配置された疎水性の濾過膜110(PTFE膜)を濡らす(親水化させる)のに適している。また、IPAを貯留部2に一旦貯留した後、IPAの自重を用いてフィルタ100内部にIPAを供給することで、たとえばIPAに溶存する気体を除去することができる。これにより、後段の減圧脱気処理の時間を短縮させることができる。
【0048】
なお、ここでは、第1IPAウェッティング処理に用いられる第2液の一例としてIPAを挙げたが、第2液は、後段の処理に用いられる第1液(ここでは、DIW)よりも表面張力が低く、かつ、第1液との親和性を有する液体であればよい。このような第2液としては、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール等のアルコール系の溶媒が用いられ得る。
【0049】
つづいて、バルブ212が開かれ、排気装置75が駆動する。排気装置75は、タンク71、分岐路72,73および循環路4を介してフィルタ100の内部を吸引する。これにより、フィルタ100の内部が減圧される。この状態は、所定時間(たとえば、10時間以上、好ましくは15時間以上)維持される。
【0050】
このように、フィルタ洗浄システム1は、フィルタ100の内部を減圧することで、フィルタ100の内部を脱気することができる。フィルタ100内部の濾過膜110に気泡が付着している場合、気泡が付着している部分にはIPAが接触しないため、かかる部分は、親水化されないドライスポットとなる。ドライスポットでは、通液が行われないため、ドライスポットの面積分だけ濾過膜110の有効膜面積が小さくなってしまう。
【0051】
これに対し、フィルタ洗浄システム1によれば、フィルタ100の内部を脱気することで、濾過膜110にドライスポットが形成されることを抑制することができるため、濾過膜110を効果的に親水化させることができる。
【0052】
また、フィルタ洗浄システム1によれば、第1IPAウェッティング処理を行うことで、フィルタ100に含まれる汚染物質のうち、IPAに対して比較的溶解し易い物質を除去することができる。このように、第1IPAウェッティング処理は、フィルタ100の洗浄も兼ねている。
【0053】
<第1DIW置換処理>
つづいて、第1DIW置換処理が行われる(ステップS102)。まず、バルブ206が一定時間開かれることにより、第1供給部5から貯留部2へDIWが供給される。これにより、貯留部2にDIWが貯留される(図8参照)。なお、第1供給部5から貯留部2へのDIWの供給は、第1DIW置換処理中において定期的にまたは常時行われてもよい。
【0054】
第1DIW置換処理では、第1IPAウェッティング処理に引き続き、フィルタ100の内部が減圧機構7によって減圧された状態となっている。貯留部2に貯留されたDIWは、減圧機構7によって貯留部2から送液路3を通ってフィルタ100に通液される。これにより、フィルタ100の内部がIPAからDIWに置換される(図9参照)。第1DIW置換処理において、フィルタ100へのDIWの通液時間は、たとえば10分~20分程度である。
【0055】
このように、フィルタ洗浄システム1は、第1DIW置換処理において、DIWがフィルタ100に通液される前から、減圧機構7によってフィルタ100の内部を減圧する。これにより、IPAからDIWへの置換を効率よく行うことができる。その後、排気装置75が停止され、バルブ212が閉じ、バルブ211が開かれる。これにより、フィルタ100の内部は、減圧状態が解除される。
【0056】
IPAの置換は、後述するHDIW洗浄処理において使用されるHDIW(高温のDIW)を用いて行うことも可能である。しかしながら、この場合、HDIWが常温のIPAと混合した際にフィルタ100の内部で発泡が起こるおそれがある。これに対し、フィルタ洗浄システム1では、IPAと温度が同じであるDIWを用いてIPAの置換を行うことで、減圧機構7を用いて脱気を行った後にフィルタ100内部に気泡が再び発生することを抑制することができる。
【0057】
<HDIW洗浄処理>
つづいて、HDIW洗浄処理が行われる(ステップS103)。HDIW洗浄処理では、バルブ202,204,205が開かれる。また、ポンプ311および加熱部312が駆動される。これにより、貯留部2に貯留されたDIWは、バイパス路31を流通し、加熱部312によって加熱される。そして、加熱されたDIWであるHDIWがフィルタ100に通液される。フィルタ100に通液されたHDIWは、第1循環路41および第2循環路42を介して貯留部2に戻される。
【0058】
HDIWの温度は、基板液処理装置においてフィルタ100に通液される処理液(IPA)の使用温度以上の温度である。フィルタ100に通液されたHDIWは、第1循環路41および第2循環路42を介して貯留部2に戻される。
【0059】
フィルタ100にHDIWを通液させることにより、フィルタ100に含まれる汚染物質のうち、IPAにほとんど溶解しない(言い換えれば、ごく僅かに溶解する)メタル成分等を除去することができる。
【0060】
HDIW洗浄処理において、フィルタ100へのHDIWの通液時間は、24時間以上である。また、HDIW洗浄処理におけるHDIWの流量は、第1DIW置換処理におけるDIWの流量よりも多いことが好ましい。HDIW(またはDIW)の流量は、図示しない流量調整機構によって調整可能である。
【0061】
<第2DIW置換処理>
つづいて、第2DIW置換処理が行われる(ステップS104)。第2DIW置換処理では、ポンプ311および加熱部312が停止される。また、バルブ203,213が一定時間開かれることにより、貯留部2およびフィルタ100からHDIW洗浄処理に使用されたHDIWが排出される。
【0062】
その後、バルブ206が開いて第1供給部5から貯留部2へDIWの新液が供給される。その後、バルブ201,209,210,212が開かれ、減圧機構7の排気装置75が駆動する。これにより、貯留部2に貯留されたDIWは、第1DIW置換処理と同様の手順にて、すなわち、図9と同様のルートにてフィルタ100に通液される。この結果、フィルタ100の内部に残存していたHDIWがDIWに置換される。第2DIW置換処理において、フィルタ100へのDIWの通液時間は、たとえば10分~20分程度である。
【0063】
なお、第2DIW置換処理は、HDIW洗浄処理と同様の手順にて、すなわち、図10と同様のルートにてフィルタ100に通液されてもよい。
【0064】
このように、HDIW洗浄処理に用いられたHDIWをDIWの新液に置換することで、HDIWによってフィルタ100から除去された汚染物質がフィルタ100に再度付着してしまうことを抑制することができる。
【0065】
また、第2DIW置換処理を行うことで、後段の第2IPAウェッティング処理において、HDIWからIPAに置換した場合と比較して混合時の発泡を抑制することができる。
【0066】
<第2IPAウェッティング処理>
つづいて、第2IPAウェッティング処理が行われる(ステップS105)。第2IPAウェッティング処理では、第1IPAウェッティング処理と同様の手順により、フィルタ100にIPAが満たされ、その後、フィルタ100の内部が減圧される。
【0067】
このように、第2IPAウェッティング処理を行うことで、フィルタ100の内部に水分が残存することを抑制することができる。したがって、装置稼働時における水分濃度の上昇を抑制することができる。
【0068】
なお、上述した一連のフィルタ洗浄処理は、フィルタ100の内部にIPA(搭載される基板液処理装置においてフィルタ100に通液される処理液)が封入された状態で終了してもよい。また、上述した一連のフィルタ洗浄処理は、フィルタ100からIPAを排出した後、たとえばN2ガスなどを用いてフィルタ100の内部を乾燥させた状態で終了してもよい。
【0069】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るフィルタ洗浄システムの構成について図11を参照して説明する。図11は、第2実施形態に係るフィルタ洗浄システムの構成を示す図である。なお、図11では、制御装置8を省略して示している。
【0070】
図11に示すように、第2実施形態に係るフィルタ洗浄システム1Aは、分岐路9Aをさらに備える。分岐路9Aは、第2供給部6の第2供給路62と送液路3とを接続する管路である。具体的には、分岐路9Aの一端は、バルブ207よりも上流側において第2供給路62に接続される。また、分岐路9Aの他端は、バルブ201よりも下流側において送液路3に接続される。分岐路9Aには、分岐路9Aを開閉するバルブ220が設けられる。
【0071】
第2実施形態に係るフィルタ洗浄システム1Aでは、第1IPAウェッティング処理および第2IPAウェッティング処理が分岐路9Aを用いて行われる。具体的には、バルブ220が一定時間開かれることにより、IPA供給源61による圧送によってIPA供給源61から分岐路9Aおよび送液路3を介してフィルタ100にIPAが供給される。
【0072】
このように、フィルタ洗浄システム1Aでは、貯留部2にIPAを貯留することなく第1IPAウェッティング処理および第2IPAウェッティング処理を行うことができる。このため、フィルタ洗浄システム1Aによれば、第1IPAウェッティング処理および第2IPAウェッティング処理の所要時間を短縮することができる。
【0073】
また、第1液(ここでは、DIW)と第2液(ここでは、IPA)とを貯留部2において混合させたくない場合がある。このような場合において分岐路9Aを用いることで、第1液と第2液とが貯留部2において混合されることを抑制することができる。
【0074】
(変形例)
上述した実施形態では、第2DIW置換処理を終えた後、IPAを用いてウェッティング処理を行うこととした。しかし、第2DIW置換処理後のウェッティング処理において使用される液体は、フィルタ100が搭載される基板液処理装置の稼働時においてフィルタ100に通液される処理液であってもよく、必ずしもIPAであることを要しない。この場合、フィルタ洗浄システム1,1Aは、たとえば、基板液処理装置の稼働時においてフィルタ100に通液される処理液を貯留部2に供給する処理液供給部を備えていてもよい。なお、上記処理液がIPAである場合の処理液供給部は、上述した第2供給部6に相当する。
【0075】
上述してきたように、実施形態に係るフィルタ洗浄システム(一例として、フィルタ洗浄システム1,1A)は、貯留部(一例として、貯留部2)と、送液路(一例として、送液路3,3A)と、循環路(一例として、循環路4)と、第1供給部(一例として、第1供給部5)と、第2供給部(一例として、第2供給部6)とを備える。貯留部は、フィルタ(一例として、フィルタ100)に通液される液体を貯留する。送液路は、貯留部に貯留された液体をフィルタに送る。循環路は、フィルタから送出された液体を貯留部に戻す。第1供給部は、貯留部に対して第1液(一例として、DIW)を供給する。第2供給部は、貯留部に対し、第1液よりも表面張力が小さく、かつ、第1液との親和性を有する第2液(一例として、IPA)を供給する。したがって、実施形態に係るフィルタ洗浄システムによれば、基板液処理装置にて使用される前のフィルタを効果的に洗浄することができる。
【0076】
実施形態に係るフィルタ洗浄システムは、減圧機構(一例として、減圧機構7)を備えていてもよい。減圧機構7は、循環路に接続され、循環路を介してフィルタの内部を減圧する。これにより、フィルタの内部を脱気することができ、フィルタの内部に配置された濾過膜にドライスポットが生じることを抑制することができる。
【0077】
実施形態に係るフィルタ洗浄システムは、制御部(一例として、制御装置81)を備えていてもよい。制御部は、第1供給部、第2供給部および減圧機構を制御する。また、制御部は、減圧する処理(一例として、第1IPAウェッティング処理)と、第1液に置換する処理(一例として、第1DIW置換処理)とを実行する。減圧する処理は、フィルタが第2液で満たされた状態で減圧機構を制御してフィルタの内部を減圧する処理である。第1液に置換する処理は、減圧する処理を終えてフィルタから第2液が排出された後、第1供給部を制御して貯留部に第1液を貯留し、貯留した第1液をフィルタに通液させることによってフィルタの内部を第1液に置換する処理である。これにより、フィルタに含まれる汚染物質のうち第2液では除去が困難な物質を第1液を用いて除去することができる。
【0078】
制御部は、第1液がフィルタに通液される前からフィルタへの第1液の通液中にかけて減圧機構を用いてフィルタの内部を減圧してもよい。これにより、第2液から第1液への置換を効率よく行うことができる。また、第1液を加圧によりフィルタに供給する場合と比べてフィルタの内部における気泡の発生を抑制することができる。
【0079】
送液路は、送液路から分岐して送液路に戻るバイパス路(一例として、バイパス路31)を備えていてもよい。また、バイパス路は、加熱部(一例として、加熱部312)を備えていてもよい。この場合、制御部は、置換する処理において、減圧機構を停止させた後、第1液をバイパス路に流通させて、加熱部によって加熱された第1液(一例として、HDIW)をフィルタに通液させてもよい。これにより、フィルタに含まれる汚染物質のうち第2液では除去が困難な物質を効果的に除去することができる。また、加熱された第1液を供給する前に、加熱されていない第1液を用いて第2液の置換を行うことで、フィルタ内部での発泡を抑制することができる。
【0080】
実施形態に係るフィルタ洗浄システムは、処理液供給部(処理液がIPAの場合には、一例として、第1供給部6)を備えていてもよい。処理液供給部は、基板液処理装置の稼働時においてフィルタに通液される処理液を貯留部に供給する。この場合、制御部は、第1液に置換する処理を終えてフィルタから第1液が排出された後、処理液供給部を制御して貯留部に処理液を貯留し、貯留した処理液をフィルタに通液させる。これにより、たとえば、第1液がDIWである場合には、基板液装置において使用される処理液の水分濃度の上昇を抑制することができる。
【0081】
実施形態に係るフィルタ洗浄システムは、第2供給部から分岐して送液路に接続される分岐路(一例として、分岐路9A)を備えていてもよい。これにより、貯留部に第2液を貯留する必要がなくなるため、処理時間を短縮することができる。
【0082】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 :フィルタ洗浄システム
2 :貯留部
3 :送液路
4 :循環路
5 :第1供給部
6 :第2供給部
7 :減圧機構
8 :制御装置
31 :バイパス路
32 :ドレイン路
41 :第1循環路
42 :第2循環路
51 :DIW供給源
52 :第1供給路
61 :IPA供給源
62 :第2供給路
71 :タンク
72,73:分岐路
74 :大気開放路
75 :排気装置
100 :フィルタ
110 :濾過膜
120 :導入ポート
130 :送出ポート
140 :ベントポート
150 :ドレインポート
160 :ドレイン路
311 :ポンプ
312 :加熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11