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特許7580564耐熱性ミラブル型フロロシリコーンゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】耐熱性ミラブル型フロロシリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20241101BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241101BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20241101BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241101BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241101BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241101BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/36
C08K3/26
C08K3/22
C08K5/14
C08L83/05
C08L83/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023500916
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006337
(87)【国際公開番号】W WO2022176939
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2021023983
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】林田 修
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079376(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105754353(CN,A)
【文献】特開平3-149259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、及び、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するシロキサン単位をシロキサン単位の合計個数に対し40%以上の数で有し、且つ、平均重合度100以上を有するオルガノポリシロキサン
100質量部、
(B)比表面積50m/g以上を有する補強性シリカ
5~100質量部、
(C)遷移金属酸化物を0.01~5質量%含む、前記遷移金属酸化物で変性された酸化チタン 0.01~10質量部、
(D)炭酸カルシウム 0.01~10質量部
及び
(E)硬化剤 0.1~50質量部
を含有するミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記ミラブル型フロロシリコーンゴム組成物の総質量に対する前記遷移金属酸化物の量が、0.005~1.0質量%である、請求項1記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記遷移金属酸化物が酸化鉄である、請求項1又は2記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
さらに(F)充填材用分散剤を0.1~50質量部含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(A)成分が、平均重合度1,000~100,000を有する、直鎖状のオルガノポリシロキサンである、請求項1~4のいずれか1項記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項6】
前記(E)成分が有機過酸化物硬化剤であり、該(E)成分の量が0.1~10質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項7】
前記(E)成分が付加反応型硬化剤であり、0.1~40質量部のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、触媒量の白金族金属触媒との組み合わせである、請求項1~5のいずれか1項に記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項8】
前記(F)成分がシリカ用分散剤である、請求項4記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のミラブル型フロロシリコーンゴム組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が良好なシリコーンゴムを与えるミラブル型フロロシリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品を初めとして様々な分野で広く使用されている。特に、ベースポリマーの主鎖が側鎖置換基として3,3,3-トリフルオロプロピル基を有する(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルシロキサン単位の繰返し構造から実質的になるフロロシリコーン生ゴムを主剤とするフロロシリコーンゴム組成物は、耐溶剤性にも優れた性質を有しており、輸送機器部品、石油関連機器部品としてのダイヤフラム、O-リング、オイルシール材等として広く使用されている。現在、シリコーンゴムの需要は益々高まっており、優れた特性を有するシリコーンゴムの開発が望まれている。
【0003】
シリコーンゴムの耐熱性を更に向上させるため、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化鉄、カーボンブラック等の添加剤を配合することは知られている。しかし、フロロシリコーンゴムの場合、200℃以上の高温条件下でのシリコーンゴムの耐熱性は十分ではなく、このような条件下で優れた耐熱性を示すシリコーンゴムが要求されている。
【0004】
特許文献1(特表2016-518461号公報)には、シリコーンゴムに0.1質量%以上の酸化チタンと酸化鉄を添加することでシリコーンゴムの耐熱性を向上させることが記載されているが、300℃で1時間加熱した際のホルムアルデヒド、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン発生量を測定しているのみで、物性変化についての記載はない。また、酸化鉄はシリコーンゴムの着色剤としてもよく知られており、少量でもシリコーンゴムを赤く着色してしまうため、赤以外の色を所望しても色付けすることが困難である。
【0005】
特許文献2(特開2014-031408号公報)には、シリコーンゴムに含水酸化セリウムおよび/または含水酸化ジルコニウムを添加することでシリコーンゴムの耐熱性を向上させることが記載されており、225℃の乾燥機に72時間入れた後の物性を測定しているが、これより高温条件下では物性が低下する。
【0006】
特許文献3(特開2006-021991号公報)や特許文献4(WO2010/140499)には、遷移金属などの金属イオン(金属塩)を酸化チタンにドープしたものが開示されているが、中間赤外線フィルターや光触媒体といったその光学特性を利用した用途のみが開示されている。
特許文献5(WO2018/079376)ではミラブル型シリコーンゴムに0.01~5質量%の遷移金属酸化物をドープした酸化チタンと酸化セリウム及び/又は水酸化セリウムを併用添加することで耐熱性を改良するとしているがフロロシリコーンゴムの場合十分とは言えなかった。
特許文献6(WO2008/154319)ではフロロシリコーンゴムにカーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化鉄、任意に酸化亜鉛を添加して耐熱性を向上させる技術が紹介されているが、カーボンや酸化鉄の添加により所望の外観に色付けすることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2016-518461号公報
【文献】特開2014-031408号公報
【文献】特開2006-021991号公報
【文献】WO2010/140499
【文献】WO2018/079376
【文献】WO2008/154319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、200℃以上、特に250℃以上で耐熱性に優れたフロロシリコーンゴム(硬化物)を与える、ミラブル型フロロシリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、フロロシリコーンゴム組成物に、0.01~5質量%の遷移金属酸化物で変性された酸化チタンと、炭酸カルシウムとを配合することで、該組成物から得られるフロロシリコーンゴムの耐熱性が著しく向上することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、及び、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するシロキサン単位をシロキサン単位の合計個数に対し40%以上の数で有し、且つ、平均重合度100以上を有するオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)比表面積50m/g以上を有する補強性シリカ 5~100質量部、
(C)遷移金属酸化物を0.01~5質量%含む、前記遷移金属酸化物で変性された酸化チタン 0.01~10質量部、
(D)炭酸カルシウム 0.01~10質量部
及び
(E)硬化剤 0.1~50質量部
を含有するミラブル型フロロシリコーンゴム組成物、及び該組成物の硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフロロシリコーンゴム組成物は耐熱性に優れたフロロシリコーンゴム(硬化物)を与えることができる。すなわち、本発明により得られるフロロシリコーンゴムは、200℃以上、特に250℃以上で優れた耐熱性を示す。また、該フロロシリコーンゴムの硬度上昇を抑制できる。さらに、本発明のフロロシリコーンゴム組成物は白色であるため、顔料などの着色剤によって容易に所望の色を着色することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物について以下詳述する。
本明細書中において、比表面積はBET法により測定された値である。なお、ミラブル型組成物とは、室温(25℃)において自己流動性のない高粘度で非液状の組成物であって、ロールミル(例えば、二本ロールや三本ロール)などの混練機で剪断応力下に均一に混練することが可能な組成物を意味する。
【0013】
[(A)オルガノポリシロキサン]
(A)成分は、本組成物の主剤(ベースポリマー)であるオルガノポリシロキサンであり、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、及び、少なくとも1のフルオロアルキル基を有するシロキサン単位を全シロキサン単位の合計個数に対し40%以上で有し、且つ、平均重合度100以上を有するオルガノポリシロキサンである。ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上、好ましくは2~10,000個含有する。
【0014】
(A)オルガノポリシロキサンは、平均重合度100以上(通常、100~100,000)であり、特に1,000~100,000の範囲にある平均重合度を有することが好ましく、2,000~50,000の範囲がより好ましく、2,000~20,000の範囲が特に好ましい。平均重合度が上記下限値未満であると、本発明のシリコーンゴム組成物がミラブルゴムとしての性状を満たさなくなり、ロール混練性等が著しく悪化してしまうため好ましくない。なお、本発明において平均重合度は、下記条件で測定したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量に基づく。
【0015】
[測定条件]
・展開溶媒:THF
・流量:1mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RI)
・カラム:TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-H 4本((株)東ソー社製)
・カラム温度:25℃
・試料注入量:10μL(濃度0.1質量%のTHF溶液)
本発明において(A)成分は、高重合度(高粘度)であって、室温(25℃)において自己流動性のない非液状のオルガノポリシロキサン生ゴムであるのが好ましい。
【0016】
(A)成分は、少なくとも1つのフルオロアルキル基を有するシロキサン単位をシロキサン単位の合計個数に対し40%以上、好ましくは45%以上で有する。上限は特に制限されなく100%以下であればよく、好ましくは100%未満、より好ましくは99.8%以下であり、98%以下であってもよい。フルオロアルキル基を有するシロキサン単位を上記範囲で有することにより、フルオロアルキル基を有するシロキサン単位及びジメチル基を有するシロキサン単位を含有するコポリマーも包含できる。
【0017】
(A)成分は、好ましくは下記平均組成式(1)で表される。
SiO(4-n)/2 (1)
上記式(1)中、Rは、互いに独立に、炭素原子数1~20の1価炭化水素基又は炭素原子数1~20のフルオロアルキル基であり、nは1.95~2.04の正数である。
【0018】
上記平均組成式(1)中、Rは、互いに独立に、炭素原子数1~20、好ましくは1~12、より好ましくは1~8の1価炭化水素基、又は炭素原子数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~6のフルオロアルキル基である。1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、メチル基、ビニル基がより好ましい。前記フルオロアルキル基としては、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロブチル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。中でも、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0019】
上記平均組成式(1)中、nは1.95~2.04の正数であり、好ましくは1.98~2.02の正数である。nが1.95~2.04の範囲でないと、得られる硬化物が十分なゴム弾性を示さないことがある。
【0020】
(A)オルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基を有することが必要であり、上記式(1)中、Rの合計モルのうち0.001~10モル%、特に0.01~5モル%がアルケニル基であることが好ましい。該アルケニル基としては、好ましくはビニル基及びアリル基であり、特に好ましくはビニル基である。
【0021】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの構造は特に限定されないが、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R SiO2/2)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R SiO1/2)で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。Rは上述した通りである。分子鎖両末端が、トリメチルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、ジメチルヒドロキシシロキシ基、メチルジビニルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等で封鎖されたものが好ましい。これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いてもよく、重合度や分子構造の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明のフロロシリコーンゴム組成物中、(A)成分の含有量は43~96質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
[(B)補強性シリカ]
(B)成分の補強性シリカは、得られるシリコーンゴム組成物に対して優れた機械的特性を付与する充填材として作用する。該補強性シリカは、沈降シリカ(湿式シリカ)でもヒュームドシリカ(乾式シリカ)でもよく、表面に多数のシラノール基が存在しているものである。本発明において(B)補強性シリカは、BET法による比表面積50m/g以上を有することが必要である。好ましくは100~400m/gである。この比表面積が50m/g未満であると、(B)成分により付与されるシリコーンゴムの補強効果が不十分となる。
【0024】
(B)成分の補強性シリカは、未処理の状態で使用しても、必要に応じて、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の有機ケイ素化合物で表面処理されたものを用いてもよい。補強性シリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(B)補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5~100質量部であり、好ましくは10~80質量部、より好ましくは20~70質量部である。(B)成分の配合量が上記上限値超又は上記下限値未満では、得られるシリコーンゴム組成物の加工性が低下するだけでなく、該シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物の引張り強度や引き裂き強度等の機械的特性が不十分なものとなる。
【0026】
[(C)遷移金属酸化物を含有する酸化チタン]
(C)成分は、遷移金属酸化物を0.01~5質量%含有する、前記遷移金属酸化物で変性された酸化チタンであり、シリコーンゴムの耐熱性を著しく向上させる成分である。本発明において、遷移金属酸化物で変性された酸化チタンとは、より詳細には遷移金属酸化物でドープされた酸化チタンである。また「ドープされた」とは酸化チタンの格子中に遷移金属酸化物が存在する形のものを言う。酸化チタンに含まれる遷移金属酸化物の量は、変性された(特には、ドープされた)酸化チタンの質量に対して0.01~5質量%となる量であり、好ましくは0.01質量%超、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であるのがよい。上限値は5質量%以下であり、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下であるのがよい。酸化チタンが当該範囲で遷移金属酸化物を含むことにより、得られるフロロシリコーンゴムの耐熱性を効果的に向上することができる。
【0027】
本発明において遷移金属酸化物とは、変性される側である酸化チタンを除く遷移金属酸化物である。遷移金属酸化物の例としては、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどが挙げられ、中でも酸化鉄(FeO、Fe)が好ましい。酸化鉄で変性された酸化チタン、特には酸化鉄がドープされた酸化チタンを用いることで、酸化鉄による赤色着色を抑制し、且つ、シリコーンゴムの耐熱性を向上することができる。遷移金属酸化物で変性された酸化チタン、特には遷移金属酸化物をドープした酸化チタンは、公知の製造方法により製造される。例えば、特開2010-013484号公報には、四塩化チタンと三塩化鉄を使用し、アナターゼ型80%及びルチル型20%の結晶性二酸化チタンに酸化鉄をドープする方法が記載されている。
【0028】
(C)成分の量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。該(C)成分の量が上記下限値未満では、シリコーンゴムの耐熱性が向上しない。上記上限値を超えると、シリコーンゴムの機械特性が著しく低下するおそれがある。
【0029】
また、フロロシリコーンゴム組成物中における、前記遷移金属酸化物の含有率は、前記組成物の総量に対して0.005~1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01~1.0質量%であり、更に好ましくは0.01~0.5質量%である。該含有率が上記下限値以上であれば酸化チタンに含まれる遷移金属酸化物の効果が十分に得られ、上記上限値以下であれば、着色に対する影響が少ないため好ましい。
【0030】
[(D)炭酸カルシウム]
(D)成分は炭酸カルシウムであり、前記(C)成分と相俟ってシリコーンゴムの耐熱性を著しく向上させる。市販の炭酸カルシウムとしては、シルバーW、ハクエンカCCR(白石工業株式会社製)、ホワイトンSSB(備北粉化工業株式会社製)等があげられる。フロロシリコーンゴム組成物中の炭酸カルシウムの量は(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、より好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。上記下限値未満では、シリコーンゴムの耐熱性が向上しない。また、上記上限値を超えると、シリコーンゴムの機械特性が著しく低下するおそれがある。炭酸カルシウムの粒径は特に制限されるものでなく、例えば平均粒径0.1~50μmであればよい。
【0031】
前記(C)成分と(D)成分との好ましい配合比は、質量比で1:100~100:1であり、より好ましくは1:50~50:1である。
【0032】
[(E)硬化剤]
(E)硬化剤は、本発明で用いるシリコーンゴム組成物を硬化させ得るものであれば特に限定されない。(E)成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。(E)成分としては、例えば、(E-1)有機過酸化物硬化剤、(E-2)付加反応型硬化剤、及び(E-1)成分と(E-2)成分との組み合わせが挙げられる。該(E)成分の量は、(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~50質量部であり、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0033】
(E-1)有機過酸化物硬化剤
(E-1)有機過酸化物硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-t-ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0034】
有機過酸化物硬化剤の量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部、特に0.2~5質量部が好ましい。配合量が少なすぎると硬化が不十分となる場合があり、多すぎると有機過酸化物の分解残渣によりシリコーンゴム硬化物が黄変する場合がある。
【0035】
(E-2)付加反応硬化剤
(E-2)付加反応硬化剤としては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒とを組み合せて用いるのがよい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上、より好ましくは3~200個、更に好ましくは4~100個程度のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、ヒドロシリル基)を含有すれば、その構造は、直鎖状、環状、分枝状、三次元網状構造のいずれであってもよく、該ヒドロシリル基は、分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。
【0036】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであればよい。
例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。

SiO(4-p-q)/2 (2)
【0037】
上記平均組成式(2)において、Rは互いに独立に、置換又は非置換の、炭素原子数1~12、好ましくは炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、脂肪族不飽和結合を有しないものであることが好ましい。詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。なお、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子等で置換されていてもよく、例えば3,3,3-トリフロロプロピル基等が挙げられる。
【0038】
上記平均組成式(2)において、pは0<p<3、好ましくは0.5≦p≦2.2、より好ましくは1.0≦p≦2.0であり、qは0<q≦3、好ましくは0.002≦q≦1.1、より好ましくは0.005≦q≦1であり、p+qは0<p+q≦3、好ましくは1≦p+q≦3、より好ましくは1.002≦p+q≦2.7を満たす正数である。
【0039】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における粘度0.5~10,000mPa・s、特に1~300mPa・sを有することが好ましい。本発明において粘度はJIS K 7117-1:1999に記載の方法で、回転粘度計を用いて25℃で測定される。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは平均重合度1~1,000であり、特に3~150の範囲が好ましく、3~80の範囲が特に好ましい。該平均重合度は、上述した条件で測定したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量に基づく。
【0040】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位と(CHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CSiO1/2単位とからなる共重合体などや、上記例示化合物において、メチル基の一部又は全部を他のアルキル基や、フェニル基等に置換したものなどが挙げられる。
【0041】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~40質量部が好ましい。また、ケイ素原子に結合した水素原子(ヒドロシリル基)の個数比が、(A)成分のアルケニル基1個に対して0.5~10個となる範囲が適当であり、好ましくは0.7~5個となる範囲が適当である。上記下限値未満だと架橋が十分でなく、十分な機械的強度が得られない場合があり、また上記上限値を超えると硬化後の物理特性が低下し、特にシリコーンゴムの耐熱性が悪くなったり、圧縮永久歪が大きくなったりする場合がある。
【0042】
ヒドロシリル化触媒は(A)成分のアルケニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(SiH基)とをヒドロシリル化付加反応させる触媒である。ヒドロシリル化触媒としては白金族金属系触媒が挙げられる。白金族金属の単体とその化合物があり、従来公知の、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒であればよい。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液等の白金触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物(白金触媒)が好ましい。
【0043】
触媒の添加量は、上記付加反応を促進できればよい。通常、白金族金属量に換算して(A)成分のオルガノポリシロキサンに対して1質量ppm~1質量%の範囲で使用され、10~500質量ppmの範囲が好ましい。触媒の量が上記下限値未満では付加反応が十分促進されず、硬化が不十分となる恐れがある。上記上限値超では、反応性に対する影響も少なく、不経済となる場合がある。
なお、(A)成分に、上記(E-1)成分と(E-2)成分とを、それぞれ上記配合量の範囲内で組み合せて配合した、付加反応硬化と有機過酸化物硬化とを併用した共加硫型のシリコーンゴム組成物とすることもできる。
【0044】
[(F)充填材用分散剤]
本発明のシリコーンゴム組成物は、前記(A)~(E)成分に加えて、充填材用分散剤、特には無機充填材又はシリカ用の分散剤を更に含んでもよい。好ましくはシリカ用分散剤である。当該分散剤を更に含むことで上述した補強性シリカを組成物中に良好に分散することができる。当該分散剤は、例えば、アルコキシ基又はシラノール基を有する低分子有機ケイ素化合物又はその加水分解物であればよい。より詳細には、各種アルコキシシラン、特にフェニル基含有アルコキシシラン及びその加水分解物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子シロキサンを使用してもよい。中でも、ジフェニルシランジオールを用いると、シリコーンゴムの耐熱性がさらに向上するため好ましく、ジフェニルシランジオールをアルキルアルコキシシランまたはその加水分解物と併用することで、充填材の分散性がさらに向上するため、より好ましい。
【0045】
(F)成分の量は、上記(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部が好ましく、特に1~20質量部が好ましい。両末端シラノール基封鎖オルガノポリシロキサンの使用量が少なすぎると、添加した効果が見られず、多すぎると組成物の可塑度が低くなりすぎ、ロールミル等の混練手段においてロール粘着が発生してロール作業性が悪化することがある。
【0046】
-その他の成分-
本発明で用いるシリコーンゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記成分に加え、必要に応じて、その他の成分として、(B)成分以外の充填材(粉砕石英、珪藻土、等)、着色剤(顔料)、引き裂き強度向上剤、難燃性向上剤(白金化合物等)、受酸剤、熱伝導率向上剤(アルミナ、窒化硼素等)、離型剤、反応制御剤等の、熱硬化型シリコーンゴム組成物における公知の充填材及び添加剤を添加してもよい。その他の成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、配合量は、本発明の効果を損ねない範囲において適宜調整されればよい。
【0047】
-組成物の製造方法-
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、該組成物を構成する成分をニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の公知の混練機で混合することにより得ることができる。該シリコーンゴム組成物として上記(A)~(E)成分を含有する組成物を用いる場合、(A)オルガノポリシロキサンと(B)補強性シリカと(C)遷移金属酸化物をドープした酸化チタンと(D)炭酸カルシウムとを混合した後、得られた混合物に(E)硬化剤を添加することが好ましい。上記(A)~(E)成分を含有する組成物が更にその他の成分を含む場合には、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分とその他の成分とを混合して混合物を得た後、該混合物に(E)成分を添加することが好ましい。
【0048】
-シリコーンゴム成形物-
成形方法としては、目的とする成形品の形状及び大きさにあわせて公知の成形方法を選択すればよい。例えば、注入成形、圧縮成形、射出成形、カレンダー成形、押出成形などの方法が挙げられる。
【0049】
-硬化物-
硬化条件は、用いる成形方法における公知の条件でよく、一般的に60~450℃の温度で数秒~1日程度である。また、得られる硬化物の圧縮永久歪の低下、得られるシリコーンゴム中に残存している低分子シロキサン成分の低減、該シリコーンゴム中の有機過酸化物の分解物の除去等の目的で、200℃以上、好ましくは200~250℃のオーブン内等で1時間以上、好ましくは1~70時間程度、より好ましくは1~10時間のポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。
【実施例
【0050】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0051】
本実施例及び比較例において各評価は次のようにして行った。
【0052】
[耐熱性]
シリコーンゴム組成物を硬化して作製した試験用シートを用い、JIS K 6249:2003に準拠して、硬さ(デュロメーターA)、引張強さ(MPa)、切断時伸び(%)の初期値を測定した。該試験用シートを225℃の乾燥機に7日間、または260℃の乾燥機に3日間入れた後に、硬さ、引張強さ、切断時伸びを測定した。結果を表1及び2に示す。
【0053】
[顔料着色性]
下記実施例及び比較例で調製したシリコーンゴム組成物100質量部に対して、黄色顔料(商品名:KE-COLOR-Y-064、信越化学工業株式会社製)0.5質量部を二本ロールによって添加し、配合前後の組成物の色調を目視にて確認した。その結果を表1及び2に示す。
【0054】
実施例及び比較例において使用した(A)オルガノポリシロキサンは以下の通りである。尚、下記において各シロキサン単位のモル%は、シロキサン単位の合計個数に対する各シロキサン単位の個数の比率である。
オルガノポリシロキサン生ゴム(A1):3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.05モル%からなり、平均重合度が4,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム(1分子中のアルケニル基:7個、上記平均組成式(1)のn=2.0005に相当)
オルガノポリシロキサン生ゴム(A2):3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位40モル%、ジメチルシロキサン単位59.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.125モル%、ジメチルビニルシロキシ単位0.05モル%からなり、平均重合度が4,000であるオルガノポリシロキサン生ゴム(1分子中のアルケニル基:7個、上記平均組成式(1)のn=2.0005に相当)
【0055】
実施例及び比較例において使用した(C)成分は、3質量%の酸化鉄(Fe)を含む、当該酸化鉄をドープされた酸化チタン(AEROXIDE TiO PF2、日本アエロジル株式会社製)である。
また、比較例3では、酸化鉄で変性していない酸化チタン(AEROXIDE TiO P25、日本アエロジル株式会社製)を用いた。
下記実施例及び比較例におけるシリコーンゴム組成物中の酸化鉄の含有率(質量%)を表1及び2に示す。
【0056】
[実施例1]
オルガノポリシロキサン生ゴム(A1)100質量部、BET法比表面積が200m/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)40質量部、ジフェニルシランジオール5質量部、両末端シラノール基を有し、平均重合度4であり、25℃における粘度が15mPa・sである3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン1.0質量部を添加し、150℃で2時間、ニーダーにより混合下で加熱した後、ベースコンパウンド(1)を調製した。
該ベースコンパウンド(1)に、オルガノポリシロキサン生ゴム100質量部に対して、(C)上記酸化鉄を含む酸化チタンを1.0質量部、(D)炭酸カルシウム(シルバーW、白石工業株式会社製)1.0質量部を、二本ロールで添加してコンパウンド(A)を調製した。
該コンパウンド(A)に、オルガノポリシロキサン生ゴム100質量部に対して、(E)硬化剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.6質量部を二本ロールにて添加し、均一に混合して生ゴム状のシリコーンゴム組成物を得た。
【0057】
該シリコーンゴム組成物を165℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアし、2mm厚の試験用シートを作製した。次いで該試験用シートを200℃のオーブンで4時間ポストキュアした。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0058】
[実施例2]
実施例1において(C)上記酸化鉄を含む酸化チタンの添加量を2.0質量部とした以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0059】
[実施例3]
実施例1において、ジフェニルシランジオールを添加せず、両末端シラノール基を有し、平均重合度4、25℃における粘度が15mPa・sであるジメチルポリシロキサンを6.0質量部にした以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0060】
[実施例4]
上記コンパウンド(A)に、オルガノポリシロキサン生ゴム100質量部に対して、硬化剤として側鎖にヒドロシリル基を有する、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度8、ヒドロシリル基が0.014モル/g(1分子中に8個)、上記平均組成式(2)のp=1.4、q=0.8に相当)0.5質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.07質量部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.15質量部を二本ロールにて添加し、均一に混合して生ゴム状のシリコーンゴム組成物を製造した後、該組成物を150℃、70kgf/cmの条件で10分間プレスキュアし、2mm厚の試験用シートを作製した。次いで該試験用シートを200℃のオーブンで4時間ポストキュアした。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0061】
[実施例5]
実施例1においてオルガノポリシロキサン生ゴム(A1)をオルガノポリシロキサン生ゴム(A2)100質量部に変えた他は実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0062】
[比較例1]
実施例1において(D)炭酸カルシウムを添加しない以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0063】
[比較例2]
実施例1において(C)成分を添加しない以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0064】
[比較例3]
実施例1において(C)成分に替えて、酸化鉄で変性していない酸化チタン(AEROXIDE TiO2 P25、日本アエロジル株式会社製)を、オルガノポリシロキサン生ゴム100質量部に対して1.0質量部、及び、酸化鉄(べんがら SR-570、利根産業株式会社製)0.03質量部を添加した以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0065】
[比較例4]
実施例4において(C)成分及び(D)成分のいずれも添加しない以外は、実施例4を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0066】
[比較例5]
実施例1において(C)成分及び(D)成分のいずれも添加しない以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0067】
[比較例6]
実施例1において(D)成分を添加せず、代わりに酸化セリウム(商品名酸化セリウムSN-2(ニッキ株式会社製品)を1質量部添加した以外は、実施例1を繰り返してシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を得た。得られた硬化物について、上述した耐熱性試験を行った。
【0068】
[比較参考例1]
実施例1においてオルガノポリシロキサン生ゴム(A1)を、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され、平均重合度90を有する3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンに替えた以外は、実施例1を繰り返してベースコンパウンド(2)を調製した。当該ベースコンパウンド(2)は液状であり、二本ロールで練ることはできなかった(表1に示されていない)。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
上記表2に示す比較例1及び2の通り、(C)酸化鉄を含む酸化チタン及び(D)炭酸カルシウムのいずれか一方しか含まない組成から得られるフロロシリコーンゴムは、225℃及び260℃の長期耐熱性に劣る。また、酸化鉄を含む酸化チタン及び酸化セリウムを含むフロロシリコーンゴム組成物から得られるフロロシリコーンゴムも高温長期の耐熱性に劣る(比較例6)。また、比較例3に示す通り、酸化チタンと酸化鉄とを別々に添加した組成物から得られるシリコーンゴムは、長期耐熱性は良好であるが、酸化鉄を少量しか配合していないにも関わらずシリコーンゴムが赤色に着色し、顔料による着色が不可能であった。これに対し、上記表1に示す通り、本発明のフロロシリコーンゴム組成物から得られるシリコーンゴム(硬化物)は、高温度長期保存下においても耐熱性に優れ、良好な機械的特性を維持することができ、シリコーンゴムの硬度上昇等を抑制できる。さらに、本発明のフロロシリコーンゴム組成物は、白色であるため着色剤によって容易に所望の色を着色することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のフロロシリコーンゴム組成物は耐熱性に優れたフロロシリコーンゴム(硬化物)を与えることができる。すなわち、本発明により得られるフロロシリコーンゴムは、200℃以上、特に250℃以上で優れた耐熱性を示す。また、該フロロシリコーンゴムの硬度上昇を抑制できる。さらに、本発明のフロロシリコーンゴム組成物は白色であるため、顔料などの着色剤によって容易に所望の色を着色することができる。