(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】広角イオンビームのための可変抽出アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20241101BHJP
H01J 27/14 20060101ALI20241101BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20241101BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
H01J27/14
H01J37/08
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2023501883
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021036543
(87)【国際公開番号】W WO2022015432
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-03-07
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレス, ジェイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ, ケヴィン エム.
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-533542(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0111241(US,A1)
【文献】特開2000-340127(JP,A)
【文献】特開平08-222175(JP,A)
【文献】特開平10-125246(JP,A)
【文献】特開昭63-257166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0174843(US,A1)
【文献】米国特許第10276340(US,B1)
【文献】米国特許第10325762(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
H01J 27/00
H05H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマチャンバと、
電気絶縁性材料から形成され、前記プラズマチャンバと並置されたプラズマ板であって、抽出開孔を画定する、プラズマ板と、
電気絶縁性材料から形成され、前記プラズマチャンバ内に配設されかつ前記抽出開孔に面するビーム遮蔽部と、
前記プラズマチャンバの外側の前記ビーム遮蔽部の表面上に配設された遮蔽電極と、
前記プラズマチャンバの外側の前記プラズマ板の表面上に配設された抽出電極と、を備え
、
前記抽出開孔内には電極が設けられていない、イオンビーム処理システム。
【請求項2】
前記遮蔽電極は、導電性材料から形成され、かつ第1の誘電体コーティングによって覆われ、前記抽出電極は、導電性材料から形成され、かつ第2の誘電体コーティングによって覆われる、請求項1に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項3】
前記遮蔽電極の一部分は、前記遮蔽電極のパルス電圧源への電気接続を容易にするために、前記第1の誘電体コーティングによって覆われていない、請求項
2に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項4】
前記抽出電極の一部分は、前記抽出電極のパルス電圧源への電気接続を容易にするために、前記第2の誘電体コーティングによって覆われていない、請求項
2に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項5】
前記遮蔽電極は平坦でありかつ前記ビーム遮蔽部の前面に垂直な方向に測定された厚さを有し、前記厚さは1ミリメートル未満である、請求項1に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項6】
前記抽出電極は平坦でありかつ前記プラズマ板の前面に垂直な方向に測定された厚さを有し、前記厚さは1ミリメートル未満である、請求項1に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項7】
前記遮蔽電極の最外端面は、前記ビーム遮蔽部の最外端面に対して前記ビーム遮蔽部の前面に平行な方向に凹んでいる、請求項1に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項8】
前記抽出電極の最外端面は、前記抽出開孔の境界を定める前記プラズマ板の端面に対して、前記プラズマ板の前面に平行な方向に凹んでいる、請求項1に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項9】
前記プラズマチャンバおよび前記抽出電極に電気的に結合されて、前記抽出電極と前記プラズマチャンバとの間にバイアス電圧を生成するパルス電圧源をさらに備える、請求項1に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項10】
前記パルス電圧源は、前記抽出電極と前記プラズマチャンバとの間にパルスバイアス電圧を生成するためのパルス構成要素を有する、請求項
9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項11】
基板を収納するためのプロセスチャンバをさらに備え、前記パルス電圧源は、第1の側部で前記プラズマチャンバに電気的に結合され、かつ第2の側部で前記抽出電極、前記遮蔽電極、および前記基板に電気的に結合される、請求項
9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項12】
前記パルス電圧源は第1のパルス電圧源であり、前記イオンビーム処理システムは、前記抽出電極に対して前記遮蔽電極を差動的にバイアスするために前記遮蔽電極に電気的に結合された第2のパルス電圧源をさらに備える、請求項
9に記載のイオンビーム処理システム。
【請求項13】
プラズマチャンバと、
電気絶縁性材料から形成され、前記プラズマチャンバと並置されたプラズマ板であって、抽出開孔を画定する、プラズマ板と、
電気絶縁性材料から形成され、前記プラズマチャンバ内に配設され、前記抽出開孔に面するビーム遮蔽部と、
導電性材料から形成され、第1の誘電体コーティングによって覆われ、前記プラズマチャンバの外側の前記ビーム遮蔽部の表面上に配設された遮蔽電極であって、平坦でありかつ前記ビーム遮蔽部の前面に垂直な方向に測定された厚さを有し、前記遮蔽電極の前記厚さは1ミリメートル未満である、遮蔽電極と、
導電性材料から形成され、第
2の誘電体コーティングによって覆われ、前記プラズマチャンバの外側の前記プラズマ板の表面上に配設された抽出電極であって、平坦でありかつ前記プラズマ板の前面に垂直な方向に測定された厚さを有し、前記抽出電極の前記厚さは1ミリメートル未満である、抽出電極と、
前記プラズマチャンバおよび前記抽出電極に電気的に結合されて、前記抽出電極と前記プラズマチャンバとの間にバイアス電圧を生成するパルス電圧源と、を備え
、
前記抽出開孔内には電極が設けられていない、イオンビーム処理システム。
【請求項14】
イオンビーム処理システムのプラズマ板アセンブリを製作する方法であって、
電気絶縁性材料から形成されたプラズマ板を提供することであって、前記プラズマ板は細長い抽出開孔を画定する、プラズマ板を提供することと、
抽出電極を形成するために前記抽出開孔を取り囲む前記プラズマ板の
外側の面に導電性材料を施すことであって、前記抽出電極は平坦でありかつ前記プラズマ板の前記
外側の面に垂直な方向に測定された1ミリメートル未満の厚さを有する、導電性材料を施すことと、
前記プラズマ板および前記抽出電極に誘電体コーティングを施すことであって、前記誘電体コーティングは前記プラズマ板の前記
外側の面および前記抽出電極を覆う、誘電体コーティングを施すことと、を含
み、
前記抽出開孔内には電極が設けられていない、方法。
【請求項15】
前記プラズマ板および前記抽出電極に誘電体コーティングを施すことは、前記抽出電極のパルス電圧源への電気接続を容易にするために、前記誘電体コーティングによって覆われていない露出したコネクタ領域を提供するために前記抽出電極の一部分をマスクすることを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性材料を前記プラズマ板の前記
外側の面に施す前に、前記抽出電極を収容するための凹部を前記プラズマ板の前記
外側の面に形成することをさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項17】
イオンビーム処理システムの遮蔽アセンブリを製作する方法であって、
電気絶縁性材料から形成されたビーム遮蔽部を提供することと、
遮蔽電極を形成するために前記ビーム遮蔽部の前面に導電性材料を施すことであって、前記遮蔽電極は平坦でありかつ前記ビーム遮蔽部の前記前面に垂直な方向に測定された1ミリメートル未満の厚さを有
し、
前記前面はイオンビームを抽出する抽出開孔に面する、導電性材料を施すことと、
前記ビーム遮蔽部および前記遮蔽電極に誘電体コーティングを施すことであって、前記誘電体コーティングは前記ビーム遮蔽部の前記前面および前記遮蔽電極を覆う、誘電体コーティングを施すことと、を含
み、
前記抽出開孔内には電極が設けられていない、方法。
【請求項18】
前記ビーム遮蔽部および前記遮蔽電極に誘電体コーティングを施すことは、前記遮蔽電極のパルス電圧源への電気接続を容易にするために、前記誘電体コーティングによって覆われていない露出したコネクタ領域を提供するために前記遮蔽電極の一部分をマスクすることを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記遮蔽電極の最外端面は、前記ビーム遮蔽部の最外端面に対して前記ビーム遮蔽部の前面に平行な方向に凹んでいる、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、プラズマ処理装置に関し、より詳細には、新規なイオン抽出アセンブリを使用してプラズマ源から抽出された角度付けされたイオンビームに関する。
【背景技術】
【0002】
複雑な3D半導体構造の製造では、イオンアシストプラズマプロセスがしばしば使用される。そのようなプロセスの多くは、基板面の法線に対してゼロまたは小さな入射角を有するイオンビームを使用する。トレンチ側壁の制御されたエッチングなどのプロセスがあり、この場合、法線に対する大きな平均角度(>50度)を特徴とするイオン角度分布(IAD)を有するイオンビームが求められる。そのような大きな入射角は、(ウエハがデフォルトの「水平配向」で配向される時のウエハ法線に対して)ゼロ度でビームを抽出、かつウエハを所望の角度に傾けることによって得られ得る。例えば、処理される基板の面積よりも小さな断面を有するイオンビームが、水平面に対して大部分が法線配向に沿って当たるように向けられ得、その間、(水平面に対して)傾けられた基板は、基板全体をイオンビームに順次露出するように水平方向に沿って走査される。このアプローチの欠点は、ウエハ表面全体にわたるプロセスの不均一性であり、すなわち、固有のビーム発散を考慮すると、ウエハ(基板)がビームの前で走査される際にイオンビームにばらつきが生じることになる。
【0003】
これらおよび他の考慮事項に関して本開示が提供される。
【発明の概要】
【0004】
この発明の概要は、詳細な説明でさらに後述される抜粋した概念を簡略化された形態で紹介するために提供されている。この発明の概要は、特許請求された主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、特許請求された主題の範囲を判断する助けとすることも意図されていない。
【0005】
本開示の非限定的な実施形態によるイオンビーム処理システムは、プラズマチャンバと、プラズマチャンバと並置されたプラズマ板であって、第1の抽出開孔を画定する、プラズマ板と、プラズマチャンバ内に配設されかつ抽出開孔に面するビーム遮蔽部と、プラズマチャンバの外側のビーム遮蔽部の表面上に配設された遮蔽電極と、プラズマチャンバの外側のプラズマ板の表面上に配設された抽出電極と、を含んでよい。
【0006】
本開示の別の非限定的な実施形態によるイオンビーム処理システムは、プラズマチャンバと、電気絶縁性材料から形成され、プラズマチャンバと並置されたプラズマ板であって、第1の抽出開孔を画定する、プラズマ板と、電気絶縁性材料から形成され、プラズマチャンバ内に配設され、抽出開孔に面するビーム遮蔽部と、導電性材料から形成され、第1の誘電体コーティングによって覆われ、プラズマチャンバの外側のビーム遮蔽部の表面上に配設された遮蔽電極であって、平坦でありかつビーム遮蔽部の前面に垂直な方向に測定された厚さを有し、遮蔽電極の厚さは1ミリメートル未満である、遮蔽電極と、導電性材料から形成され、第1の誘電体コーティングによって覆われ、プラズマチャンバの外側のプラズマ板の表面上に配設された抽出電極であって、平坦でありかつプラズマ板の前面に垂直な方向に測定された厚さを有し、抽出電極の厚さは1ミリメートル未満である、抽出電極と、プラズマチャンバおよび抽出電極に電気的に結合されて、抽出電極とプラズマチャンバとの間にバイアス電圧を生成するパルス電圧源と、を含んでよい。
【0007】
本開示の非限定的な実施形態によるイオンビーム処理システムのプラズマ板アセンブリを製作する方法は、電気絶縁性材料から形成されたプラズマ板を提供することであって、プラズマ板は細長い抽出開孔を画定する、プラズマ板を提供することと、抽出電極を形成するために抽出開孔を取り囲むプラズマ板の前面に導電性材料を施すことであって、抽出電極は平坦でありかつプラズマ板の前面に垂直な方向に測定された1ミリメートル未満の厚さを有する、導電性材料を施すことと、プラズマ板および抽出電極に誘電体コーティングを施すことであって、誘電体コーティングはプラズマ板の前面および抽出電極を覆う、誘電体コーティングを施すことと、を含んでよい。
【0008】
本開示の非限定的な実施形態によるイオンビーム処理システムの遮蔽アセンブリを製作する方法は、電気絶縁性材料から形成されたビーム遮蔽部を提供することと、遮蔽電極を形成するためにビーム遮蔽部の前面に導電性材料を施すことであって、遮蔽電極は平坦でありかつビーム遮蔽部の前面に垂直な方向に測定された1ミリメートル未満の厚さを有する、導電性材料を施すことと、ビーム遮蔽部および遮蔽電極に誘電体コーティングを施すことであって、誘電体コーティングはビーム遮蔽部の前面および遮蔽電極を覆う、誘電体コーティングを施すことと、を含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態と一致する処理装置の垂直断面を示す図である。
【
図2A】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を集合的に示す図の1つである。
【
図2B】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を集合的に示す図の1つである。
【
図2C】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を集合的に示す図の1つである。
【
図2D】本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展を集合的に示す図の1つである。
【
図3A】
図1に従って配置された処理装置の動作シナリオを図示し、かつ抽出領域におけるビームレット、形状、および静電位分布を示す図である。
【
図3B】
図1に従って配置された処理装置の動作シナリオを図示し、かつ抽出領域におけるビームレット、形状、および静電位分布を示す図である。
【
図3C】
図1に従って配置された処理装置の動作シナリオを図示し、かつ抽出領域におけるビームレット、形状、および静電位分布を示す図である。
【
図4】A~Cは、
図3A~
図3Cに図示されるシナリオのイオン角度分布を示すグラフである。
【
図5】本開示の別の実施形態と一致する処理装置の垂直断面を示す図である。
【
図6】A~Fは、
図5に従って配置された処理装置の動作シナリオを図示し、かつ抽出領域におけるビームレット、形状、および静電位分布を示す図である。
【
図7-1】
図6A~Cに図示されるシナリオのイオン角度分布を示すグラフである。
【
図7-2】
図6D~Fに図示されるシナリオのイオン角度分布を示すグラフである。
【
図8】AおよびBは、本開示の実施形態と一致する処理装置のプラズマチャンバおよび抽出アセンブリを示す斜視図および分解組立図である。
【
図9】A~Cは、本開示の実施形態と一致する処理装置のプラズマ板、抽出電極、および第1の誘電体コーティングを製作する方法を示す一連の斜視図である。
【
図10】
図9A~Cに記載されている方法を示すフロー図である。
【
図11】A~Cは、本開示の実施形態と一致する処理装置のビーム遮蔽部、遮蔽電極、および第2の誘電体コーティングを製作する方法を示す一連の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態についてここで、いくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照しながら以降でより詳しく説明する。本開示の主題は多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であるように、および主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面において、同様の番号は全体を通して同様の要素を指す。
【0011】
本明細書に説明される実施形態は、隠れた偏向電極を使用して基板に向けられたイオンの角度分布を制御するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの実施形態では、コンパクトなイオンビーム源において大きなオンウエハ入射角を有するイオンビームの生成を容易にする装置が開示されている。大きな入射角を有するイオンビームの抽出に加えて、本実施形態は、イオンおよび反応性の高いラジカルを生成するために、化学的反応性プラズマ(原料ガス:CxFy、CxHyFz、SF6、H2、O2、Cl2、I2、Br2、および/またはそれらの混合物)の場合に使用され得る。とりわけ、大きなオンウエハ入射角(例えば、最高45度まで)および数十mAのビーム電流を有する、数百eVから数keVまでのイオンビームが抽出され得る。デバイス処理の一例として、本実施形態によって提供される対称リボンビームレットの抽出の使用は、基板が抽出アセンブリと平行に走査される際に、複雑な半導体構造における垂直なトレンチ壁の同時処理を可能にする。
【0012】
以下の実施形態では、イオンビーム処理システムは、プラズマチャンバおよび抽出アセンブリを含み得る。抽出アセンブリは、プラズマチャンバの側部に沿って配設されたプラズマ板を含んでよく、プラズマ板は抽出開孔を含む。本開示のさまざまな実施形態によると、プラズマ板は電気絶縁性材料から形成され得る。抽出アセンブリは、電気絶縁性材料から形成され、プラズマチャンバ内に配設され、抽出開孔に面しているビーム遮蔽部を含んでよい。そのように、ビーム遮蔽部は、抽出開孔を2つの別個の副開孔に分割するのに役立ち得る。抽出アセンブリは、プラズマチャンバの外側のビーム遮蔽部の面上に配設された導電性薄膜を含む遮蔽電極と、プラズマチャンバの外側のプラズマ板の面上に配設された導電性薄膜を含む抽出電極とを含んでよい。特定の実施形態では、遮蔽電極は、遮蔽電極、およびビーム遮蔽部の面を覆う第1の誘電体コーティングによって覆われてよく、抽出電極は、抽出電極、およびビームプラズマ板の面を覆う第2の誘電体コーティングによって覆われてよい。以下の実施形態で説明されるように、この配置は、副開孔を通る高角度イオンビームの生成を容易にし、ここで、高角度イオンビームは、プラズマ板の平面に対する垂直線に対して、30度またはそれ以上などの大きな入射角を画定する。
【0013】
プラズマ板の抽出開孔は、例えば、一対のリボンイオンビームまたはリボンイオンビームレットの抽出を容易にし、かつリボンイオンビームレットをプラズマ板の平面に平行に整合された基板に対して広角に向ける細長い形状を有してよい。本明細書で使用される「基板に対して広角」という用語は、基板の平面の法線(垂直線)に対して30度を上回ってよい。
【0014】
ここで
図1に移ると、本開示の実施形態と一致する処理装置の垂直断面が示されている。処理システム100は、以下により詳細に説明されるように、プラズマチャンバ102、プロセスチャンバ103、および抽出アセンブリ130を含む。処理システム100は、抽出電極114とプラズマチャンバ102との間にバイアス電圧を生成するように電気的に結合されたパルス電圧源124をさらに含む。そのように、処理システム100は、抽出電極114に近接して配置された基板122を処理するためのイオンビームを生成するためのイオンビーム処理システムとしての機能を果たす。プラズマチャンバ102は、任意の適したアプローチによってプラズマチャンバ102においてプラズマ132を生成するためのプラズマ源としての機能を果たし得る。例えば、プラズマチャンバ102は、導電性の壁134を通る接地電位を基準としてよい。関心のあるイオン性(イオン)核種は、rf電源(別個に示されていない)によって生成されたrf電力を、誘電体窓104を通してrfアンテナ136から作動ガスに誘導的に結合することによって、プラズマ132において生じさせてよい。プラズマを生成する他の既知の手段が可能である。
【0015】
図1に示されるように、抽出アセンブリ130は、プラズマチャンバ102の側部に沿って配設されたプラズマ板106を含んでよく、この場合、プラズマ板106は、Al
2O
3(アルミナ)、石英、AlN、または他の適した電気絶縁性材料などの電気絶縁体から形成されてよい。プラズマ板106は、示されているデカルト座標系のX軸に沿って延びた抽出開孔138を画定し得る(x軸は一般的に、ページの平面へと垂直に延在することに留意されたい)。そのように、抽出開孔138は、プラズマチャンバ102からのイオンが通過し得る空間を画定してよい。抽出アセンブリ130は、プラズマチャンバ102の外側のプラズマ板106の面上に配設された導電性材料の薄膜(例えば、厚さが最大で1ミリメートル)から形成された抽出電極114をさらに含んでよい。抽出電極114は、抽出電極114、およびプラズマ板106の面を覆う化学的に不活性な誘電体材料の層を形成した第1の誘電体コーティング115で覆われてよい。総称して、プラズマ板106、抽出電極114、および第1の誘電体コーティング115は、「プラズマ板アセンブリ」と称される場合がある。
【0016】
抽出アセンブリ130はまた、例えば、絶縁材から形成されたビーム遮蔽部108を含んでよい。
図1の配置では、プラズマ132の存在下でプラズマチャンバ102に対して基板122に(または基板プレート120に)負の電圧が印加される時、抽出開孔138とビーム遮蔽部108との間に形成されるスリット(副開孔)にプラズマメニスカスが形成される。さまざまな実施形態では、ビーム遮蔽部108は、2つの対称イオンビームレット112の形成および抽出を可能にするために抽出開孔138の上に対称的に配置されてよい。基板122のイオンビーム処理は基板122をy方向に走査することによって行われ、基板をz軸の周りで回転させることも含んでもよい。さまざまな非限定的な実施形態において、基板122(厚いまたは薄い酸化物)の電気伝導率に応じて、イオンビームレット112はパルスイオンビームとして抽出されてよく、この場合、パルス周波数およびデューティサイクルは、基板がチャージアップしないように、それぞれ10~50kHzの範囲および10~100%の範囲のターゲット値に調節され得る。有利には、抽出電極114およびビーム遮蔽部108に誘電体材料を使用することは、イオン種およびラジカル種を生成するために使用される反応性の高いプラズマにおける使用を容易にする。
【0017】
抽出アセンブリ130はバイアス可能な遮蔽電極110も含んでよい。
図1に示されるように、遮蔽電極110は、プラズマチャンバ102の外側で、ビーム遮蔽部108の面上に配設された導電性材料の薄膜(例えば、厚さが最大で1ミリメートル)から形成される。遮蔽電極110は、遮蔽電極110、およびビーム遮蔽部108の面を覆う化学的に不活性な誘電体材料の層を形成した第2の誘電体コーティング117で覆われてよい。総称して、ビーム遮蔽部108、遮蔽電極110、および第2の誘電体コーティング117は、「遮蔽アセンブリ」と称される場合がある。大部分が
図1に示されるように、ビーム遮蔽部108およびプラズマ板106は、同一平面上ではないが、プラズマチャンバ102の内側とプラズマチャンバ102の外側との間の、下側の境界を画定すると見なされ得る。よって、遮蔽電極110は、プラズマ板106の上に配設されているか否かにかかわらず、プラズマチャンバ102の外側にあると見なされ得る。
【0018】
いくつかの非限定的な実施形態では、y方向に沿った抽出開孔138の高さは可変であってよい。本開示のさまざまな実施形態では、プラズマ板106、抽出電極114、および基板122は、互いに平行であり得、かつX-Y平面に平行であり得る。よって、プラズマ板106の平面は、X-Y平面に平行であり、かつ概して基板122の走査方向(y方向)に平行である平面であると見なされ得る。
【0019】
抽出開孔138は、遮蔽電極110およびビーム遮蔽部108に対して対称的に整合され得るため、ビーム遮蔽部108とプラズマ板106との間のスリットから抽出された2つのイオンビームレット112の対称性が確立される。いくつかの実施形態では、ビーム遮蔽部108、遮蔽電極110、および抽出開孔138は、x方向に350mm~400mm延在するように延ばされ得ることで、(x方向に)300mm幅の一様なリボンビームレットが抽出可能である。
【0020】
さまざまな非限定的な実施形態によると、遮蔽電極110および抽出電極114など、抽出アセンブリ130のバイアス可能な要素は、基板122と同じ電位に設定されてよい。この構成は、有利には基板122が抽出アセンブリ130の一部ではないことを意味する。とりわけ、基板122は、遮蔽電極110および抽出電極114と同じ電位にあるため、基板122と抽出電極114または遮蔽電極110との間に電位差はなく、その結果として、電界はない。
【0021】
よって、抽出電極114およびプラズマ板106など、抽出アセンブリ130に対する基板122の相対位置は、抽出アセンブリ130を通して抽出されたイオンビームのイオン角度分布に影響を及ぼさない。この条件下では、Z軸に沿った基板の場所を5mmから20mm以上まで変化させることができるため、基板からスパッタされたおよび/または化学的にエッチングされた材料によるプラズマチャンバの汚染を大幅に減らすことができる。換言すれば、必要に応じて、基板がZ軸に沿った抽出アセンブリからの分離をより大きくして位置するようにすることで汚染を低減し得るが、これは、分離が大きくなるにつれて、抽出開孔がウエハを「見る」立体角が小さくなるため、汚染が減少するからである。
【0022】
電気的にバイアス可能になるように、遮蔽電極110および抽出電極114は、上記のように、導電性材料(例えば、いくつかの非限定的な実施形態において、アルミニウム、チタン、銅、モリブデン、タングステン、ドープされたシリコンなどの金属がこれらの構成要素に使用され得る)の薄膜(例えば、z方向の厚さが最大で1ミリメートル)で構成されてよい。以下に詳述されるように、これらの部品はイオンビームの衝撃に曝されないため、金属汚染は低減される。いくつかの実施形態によると、汚染に対するより十分な保護のために、電気的にバイアス可能な部品は、導電性材料から形成された内側本体または部分を取り囲む薄い誘電体膜でコーティングされてよい。1つの非限定的な実施形態では、適した誘電体コーティングは、イットリウム、アルミニウム、およびジルコニウムの酸化物の混合物でできており、100マイクロメートルの厚さを有する。そのような誘電体材料は、エッチングに対する耐性を提供することが知られている。他の実施形態では、Al2O3、AlFO、酸化イットリウム(Y2O3)、もしくは酸化ジルコニウム(ZrO2)、またはそれらの組み合わせは、誘電体コーティングとして使用されてよい。
【0023】
知られているように、プラズマメニスカスの形状および場所、ならびにイオンビーム抽出の機構は、プラズマ132などのプラズマにおけるプラズマ密度の相対値に左右され、さらに抽出電界に左右される。誘電体などの非導電性材料を使用してイオン抽出アセンブリの構成要素を作製する時、イオンビーム抽出の物理的性質が大幅に変化する。この変化は、プラズマ132とイオン抽出アセンブリの壁(本実施形態では、ビーム遮蔽部108およびプラズマ板106)との間のインターフェースであるプラズマシースが、壁の性質:絶縁性または導電性の関数であるため、起こる。パルス周波数(f)がイオンプラズマ周波数(f
pi)よりも高いパルスプラズマでは、
であり、式中、n、ε
0、およびm
iは、プラズマ密度、電気素量、真空の誘電率、およびイオン質量であり、ここで、イオンは動かず、電子は壁から遠ざけられる、いわゆるマトリックスシースがある。この場合、シースの厚さは、
で与えられ、式中、V
0、k
B、およびT
eは、それぞれ、シース全体にわたる電圧降下、ボルツマン定数、および電子温度を表す。λ
Dによって示される量は、
で与えられるデバイ長である。マトリックスシースの場合、壁における電圧の値に応じて、シースの厚さは、デバイ長の数十から100分の1に及ぶことができる。5×10
9~5×10
11cm
-3の通常のプラズマ密度では、イオンプラズマ周波数は、2MHz~25MHzであり、抽出電圧のパルス周波数(10~50kHz)よりもはるかに高くなる。この場合、イオンにはシースにおける電界によって加速されるのに十分な時間があり、それらの運動が無衝突であると仮定すると、シースの厚さは、以下のチャイルドの法則によって与えられる。
電子温度を3.5eVと仮定すると、シースの厚さは、電圧と共に、かつプラズマ密度の逆数と共に増大し、関心のある範囲について、数分の1ミリメートルからおよそ20ミリメートルまで変化する。
【0024】
さまざまな実施形態によると、本実施形態のイオンビームは、上記のように、パルスイオンビームとして抽出されてよい。抽出電圧システムは、例えば、ターゲットのパルス周期およびデューティサイクルに従って抽出電圧をオンおよびオフのパルスにする回路などのパルス構成要素を含んでよい。イオンビーム電流が小さい場合、パルスデューティサイクルは100%になる場合があり、すなわち、イオンは連続的に抽出される。とりわけ、パルス周期およびデューティサイクルは、以下に論じられるように、角度付けされたイオンビームの抽出を容易にするように決められてよい。ビーム遮蔽部108およびプラズマ板106の構成要素は、誘電体材料から形成され得るため、イオンビームのパルス化は、プラズマシースの時間依存の進展を考慮に入れるように決められてよい。
【0025】
図2A~
図2Dに移ると、本開示の実施形態による、時間の関数としての電子およびイオン分布の進展がZ-Y空間に示されている。示されているシミュレーションでは、基板上(位置は、z=2.5cmでの垂直線によって表されている)の電圧は、20kHzのパルス周波数および50%のデューティサイクルを有する-1kVの電圧のパルスである。ビーム遮蔽部およびプラズマ板の構成要素は、明るく垂直方向に細長い長方形として概略的に示されている。誘電体材料(石英)からできたビーム遮蔽部およびプラズマ板がモデル化され、この材料は、静電的にチャージアップすることが可能とされる。
図2Aおよび
図2Bは、印加された負電圧パルスの開始後1μ秒での電子およびイオンの分布をそれぞれ示している。石英は電界線の伝達を可能にするため、パルスの開始時(1マイクロ秒)に、高電圧降下がシースで発生し、その結果として、かなり厚い(~6mm)シースが生じる。抽出スリットの近くの電界は、プラズマ板およびビーム遮蔽部に対して垂直に(z方向に沿って)配向され、その結果、イオンが抽出されるにしてもごくわずかである(
図2Bのイオン分布を参照)。
【0026】
ここで
図2Cおよび
図2Dに移ると、プラズマシースが時間と共に進展するにつれて、イオンが、プラズマ板およびプラズマ遮蔽部の内壁に到達し続ける。接地経路がない場合、イオンは、プラズマ密度に不均衡を生じさせることになり、この状況によって両極性電界が形成されることになる。この場合、電子およびイオンの等しいフラックスが内壁の方へ向けられることになる。
式中、
は面板および遮蔽部の壁に垂直な方向(z方向)におけるプラズマ密度の勾配であり、Daは以下のような両極性拡散係数である。
式中、μ
e,iとD
e,iは、それぞれ、電子およびイオンの移動度および拡散係数である。両極性拡散の結果として、プラズマメニスカスが抽出スリットに形成され、イオンビームレットが抽出され始めるところまで、シースの厚さが減少(崩壊)する。シースの厚さのこの減少は、
図2Cおよび
図2Dに見ることができ、ここで、負電圧パルスの開始後4μ秒での電子およびイオンのz-y位相空間が示されている。この場合、
図2Dに示されるように、イオンビームレットは、容易に形成され、抽出され、および基板位置に向けられる。
【0027】
よって、さまざまな実施形態によると、電圧パルスのデューティサイクルおよび周波数は、プラズマシース崩壊(プラズマシース崩壊期間)およびイオンビームの抽出の開始に必要な時間を超える、所与のパルスの持続時間を提供するように設定され得る。上記の例では、最小のプラズマシース崩壊期間を4μ秒と仮定すると、イオンビームの適当な抽出を確実にするために、10μ秒またはそれ以上のパルス持続時間が適切であり得る。50%のデューティサイクルでは、このパルス持続時間は、20μ秒またはそれ以上のパルス周期に等しく、これは、
図2A~
図2Dのシナリオにおいて、イオンを効果的に抽出するために、電圧パルス周波数が50kHzまたはそれ以下に設定され得ることを意味する。
【0028】
図3A~
図3Cは、上述されかつ
図1に示された処理装置100の動作シナリオを図示し、かつ抽出領域(すなわち、遮蔽電極110と基板122との間の領域)におけるビームレット、形状、および静電位分布を示す。より具体的には、
図3A~
図3Cは、プラズマチャンバ102の導電性の壁134、プラズマ板106、抽出電極114、ビーム遮蔽部108、遮蔽電極110、および基板122を示すOPERAモデリングの結果を図示している。示されている一連の図では、プラズマ密度およびバイアス電圧は同じまま(600Wのrf電力および-1.5kV)であり、抽出電極114と基板122との間のz方向の距離は、
図3Aにおける6mmから、
図3Bにおける10mm、
図3Cにおける15mmまで増大する。見られるように、抽出アセンブリ130の誘電体構造は静電場の電位140を通すのに対し、金属構造はそうではない。よって、静電位線140は、遮蔽電極110によって覆われていないビーム遮蔽部108の最外部分(以降「非被覆部分142」)を通して延在し、そのような非被覆部分142は、
図3Bに示されるように、y方向における高さ(H-h)/2を有する。同様に、静電位線140は、抽出電極114によって覆われていないプラズマ板106の部分(以降「非被覆部分144」)を通して延在し、そのような非被覆部分144は、
図3Bに示されるように、y方向における高さrを有する。(抽出アセンブリ130の形状寸法によって与えられた)自然な角度での開口部s(
図3Bを参照)を通して抽出されたイオンは、一般的に、非被覆部分142、144の高さと、バイアス電圧と、比較的程度は低いがイオンビーム電流との比率によって決定づけられるように発散することになる。その結果として、また、抽出アセンブリの幾何学的対称性により、イオンビームレット112は、基板122の平面の法線に対して(Z軸に対して)+/-θの角度(
図3Cを参照)によって特徴付けられるイオン角度分布を有することになる。
【0029】
図3A~
図3Cに図示される配置のイオン角度分布は、それぞれ、
図4A~
図4Cに示されるグラフに示されている。遮蔽電極110、抽出電極114、および基板122が同じ静電位で維持される時、イオン源と基板122との間の電界は、ほぼ全体が抽出スリット域に集中している(等電位線の分布を参照)。その結果として、抽出されたイオンビームレット112のイオン角度分布はz間隙の長さによって影響されず、それらの特性は準同一であり同じ平均角度(40度)を有し、空間電荷効果が低いことにより、抽出電極114と基板122との間のz方向の距離が6mm~10mmおよび10mm~15mm増大するにつれて角発散の増大はわずかである(10度、11度、および12度)。よって、基板122は、基板122からエッチングされた材料によるプラズマチャンバ102の汚染を最小化するなどのために、必要に応じて抽出アセンブリから遠ざけることができ、基板122に対するイオンビームレット112の平均角度が保たれる。
【0030】
ここで
図5を参照すると、第2のパルス電圧源150が(上述される、以降は「第1のパルス電圧源124」と称されるパルス電圧源124に加えて)実装された処理システム100の代替的な実施形態が示されている。第2のパルス電圧源150は、抽出電極114に対して遮蔽電極110を差動的にバイアスするために遮蔽電極110に結合されてよい。第2のパルス電圧源150は、抽出電極114に対する負または正バイアスを容易にするために双極であり得る。位相コントローラ152は、第1のパルス電圧源124と第2のパルス電圧源150との間に接続されて、これらの間の適切な位相が維持されることを保証し得る。
【0031】
図6A~
図6Fは、
図5に示された処理システム100の差動的にバイアスされた実施形態の動作シナリオを図示し、かつ抽出領域におけるビームレット、形状、および静電位分布を示す。より詳細には、
図6A~
図6Fは、プラズマチャンバ102の導電性の壁134、プラズマ板106、抽出電極114、ビーム遮蔽部108、遮蔽電極110、および基板122を示すOPERAモデリングの結果を図示している。示されている一連の図では、プラズマ密度、第1のパルス電圧源124によって印加されたバイアス電圧、および抽出電極114と基板122との間のz方向の距離は全て同じまま(それぞれ、600Wのrf電力、-1.5kV、および15mm)であり、第2のパルス電圧源150によって遮蔽電極110に印加されたバイアス電圧は、
図6Aにおける1.8kVから
図6Dにおける300Vまで、300Vずつ減少する。見られるように、相対電圧バイアスが増大するにつれて、抽出スリット領域における静電位線140の分布では、密度が低くなり、基板に向かってより平行に(すなわち、平行に近く)なる。その結果として、ビームレット112の角発散および基板上の設置面積は縮小する。
【0032】
図6A~
図6Fに図示される配置のイオン角度分布は、それぞれ、
図7A~
図7Fに示されるグラフに示されている。遮蔽電極110にかけられた差動バイアスの結果として、基板122の平面の法線に対する(すなわち、Z軸に対する)イオンビームレット112の平均角度は、
図7Aにおける52度から
図7Eにおける8度まで減少し得、その後、平均角度は法線を超えて
図7Fにおける-6度になり得る。よって、開示された配置はほぼ60度の可変範囲を容易にする。さらに、ビームレット112の角発散は、ΔV=-300Vでの15度(
図6Aおよび
図7A)からΔV=1200Vでの2.8度(
図6Fおよび
図7F)まで減少し得る。
【0033】
図8Aおよび
図8Bは、上述されるプラズマチャンバ102および抽出アセンブリ130の斜視図および分解組立図をそれぞれ含む処理システム100の一部分を示す。抽出アセンブリ130は、プラズマ板106およびビーム遮蔽部108を含んでよく、ビーム遮蔽部108は抽出開孔138の後方全体にわたって延在してよく、かつビーム遮蔽部108およびプラズマ板106に形成された各々の取り付け孔160a、160b、および162a、162bを通って延在するメカニカルファスナ(図示せず)などによって、プラズマ板106の後面に固定されてよい。プラズマ板106は、プラズマチャンバ102の前面開口部を覆ってよく、かつ、プラズマ板106およびプラズマチャンバ102に形成された各々の取り付け孔164a、164b、および166a、166bを通って延在するメカニカルファスナ(図示せず)などによって、プラズマチャンバ102の前面に固定されてよい。プラズマ板106の前面上に配設されており、かつ抽出開孔138を取り囲んでいる抽出電極114は、第1の誘電体コーティング115によって覆われてよく、そのように
図8Bにおける破線の外郭線によって示されている。ビーム遮蔽部108の前面上に配設されている遮蔽電極110は、第2の誘電体コーティング117によって覆われ、そのように
図8Bにおける破線の外郭線によって示されている。
【0034】
図9A~
図9Cは、抽出アセンブリ130のプラズマ板アセンブリを製作する方法を示す一連の斜視図である。
図10は同じ方法を示すフロー図である。
図9A、および
図10におけるブロック200を参照すると、プラズマ板106が製造されかつ提供され得る。さまざまな例では、プラズマ板106は、Al
2O
3(アルミナ)、石英、AlN、または他の適した電気絶縁体などの電気絶縁性材料の板から機械加工されてよい。本開示はこの点について限定されていない。プラズマ板106は、示されているデカルト座標系のX軸に沿って延びた抽出開孔138を画定し得る。オプションとして、凹部またはポケット170がプラズマ板106の前面に形成(例えば、機械加工)されてよく、凹部170は、さらに後述される抽出電極114を収容するように適応されたサイズおよび形状を有する。非限定的な例では、凹部170は、Z軸に沿って測定されるように、0.2ミリメートル~0.3ミリメートルの範囲の深さを有してよい。
【0035】
図9B、および
図10におけるブロック210を参照すると、抽出電極114は、プラズマ板106の前面上に、抽出開孔138を取り囲んで形成または配設され得る。さまざまな例では、抽出電極114は、アルミニウム、ニッケル、チタン、銅、モリブデン、タングステン、またはドープされたシリコンなどの導電性材料から形成されてよく、かつ、プラズマ板106の前面上へ印刷され、溶射され、または接着させてよい。非限定的な例では、抽出電極114は、Z軸に沿って測定されるように、0.2ミリメートル~0.3ミリメートルの範囲の厚さを有してよい。凹部170が、上述されるように、プラズマ板106の前面に形成される(
図9Aを参照)場合、凹部170は、抽出電極114を形成するために、凹部170内に材料を溶射することなどによって導電性材料が充填されてよい。
【0036】
図9C、および
図10におけるブロック220を参照すると、プラズマ板106および抽出電極114に第1の誘電体コーティング115が施され得る。第1の誘電体コーティング115は、プラズマ板106の前面および抽出電極114を覆ってよい。さまざまな実施形態では、第1の誘電体コーティング115は、Al
2O
3、Y
2O
3、ZrO
2、またはそれらの組み合わせなどの化学的に不活性な誘電体材料から形成されてよく、かつプラズマ溶射プロセスを使用して施されてよい。本開示はこの点について限定されていない。抽出電極114のほんの一部が、例えば、上述されるように、抽出電極114の第1のパルス電圧源124への電気接続を容易にするために、第1の誘電体コーティング115によって覆われていない露出したコネクタ領域172を提供するために第1の誘電体コーティング115を施す間マスクされてよい。
【0037】
図11A~
図11Cは、抽出アセンブリ130の遮蔽アセンブリを製作する方法を示す一連の斜視図である。
図12は同じ方法を示すフロー図である。
図11A、および
図12におけるブロック300を参照すると、ビーム遮蔽部108が製造されかつ提供され得る。さまざまな例では、ビーム遮蔽部108は、Al
2O
3(アルミナ)、石英、AlN、または他の適した電気絶縁体などの電気絶縁性材料の板から機械加工されてよい。本開示はこの点について限定されていない。ビーム遮蔽部108は、示されているデカルト座標系のX軸に沿って延びたものであってよい。
【0038】
図11B、および
図10におけるブロック310を参照すると、遮蔽電極110は、ビーム遮蔽部108の前面上に形成または配設され得る。さまざまな例では、遮蔽電極110は、アルミニウム、ニッケル、チタン、銅、モリブデン、タングステン、またはドープされたシリコンなどの導電性材料から形成されてよく、かつ、ビーム遮蔽部108の前面上へ印刷され、溶射され、または接着させてよい。非限定的な例では、遮蔽電極110は、Z軸に沿って測定されるように、0.2ミリメートル~0.3ミリメートルの範囲の厚さを有してよい。
【0039】
図11C、および
図12におけるブロック320を参照すると、ビーム遮蔽部108および遮蔽電極110に第2の誘電体コーティング117が施され得る。第2の誘電体コーティング117は、ビーム遮蔽部108の前面および遮蔽電極110を覆ってよい。さまざまな実施形態では、第2の誘電体コーティング117は、Al
2O
3、Y
2O
3、ZrO
2、またはそれらの組み合わせなどの化学的に不活性な誘電体材料から形成されてよく、かつプラズマ溶射プロセスを使用して施されてよい。本開示はこの点について限定されていない。遮蔽電極110のほんの一部が、例えば、上述されるように、遮蔽電極110のパルス電圧源124(または第2のパルス電圧源150)への電気接続を容易にするために、第2の誘電体コーティング117によって覆われていない露出したコネクタ領域174を提供するために第2の誘電体コーティング117を施す間マスクされてよい。
【0040】
本実施形態は当技術分野における多数の利点を提供する。第1の利点は、誘電体材料によって十分に覆われることで、大きなオンウエハ入射角(>30度の平均角度)を有するイオンビームレットの抽出を容易にして金属汚染を軽減する低プロファイルの導電性電極の新規な組み合わせを有する抽出アセンブリにおいて見出される。さらなる利点は、イオン角度分布をリアルタイムで制御する能力である。さらなる利点は、基板をプラズマチャンバから引き離すことを可能にする一方、イオンビームレットのオンウエハ入射角を保つことによって、基板からスパッタされたおよび/または化学的にエッチングされた材料によるプラズマチャンバの汚染を低減する能力である。さらにまた、コンパクトなイオンビームシステムでは、簡易なダイオード静電抽出プロセスを維持しながら、基板が抽出アセンブリの構成から取り除かれる。さらなる利点は、同じ電源を使用して基板およびバイアス可能な電極を同時にバイアスして、コストおよび設計の複雑さを簡略化することである。本実施形態の利点のさらなる例は、高電圧電源上に浮いている簡易な低電圧電源を使用して、抽出電極および基板に対して遮蔽電極に差動バイアスを提供する能力である。
【0041】
本開示は、本明細書に説明される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際は、本明細書に説明されたものに加えて、本開示の他のさまざまな実施形態および修正が、前述の説明および添付の図面から当業者には明らかであろう。よって、そのような他の実施形態および修正は、本開示の範囲内にあることが意図されている。さらに、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実装形態の文脈で本明細書に説明されているが、当業者は、その有用性がこれに限定されず、本開示が任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施され得ることを認識するであろう。よって、以下に記載される特許請求項は、本明細書に説明された本開示の全範囲および趣旨を考慮して解釈されるべきである。