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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】光拡散性バリアフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20241105BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20241105BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20241105BHJP
【FI】
G02B5/02 C
C08J7/04 CEZ
C08J7/04 Z CER
G02B1/16
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039810
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2020557236の分割
【原出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2023073287
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044337
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0044610
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ジュン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ラ・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ヒ・ワン・ヤン
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289052(JP,A)
【文献】特開2017-040834(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152077(WO,A1)
【文献】特開2016-147967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10-1/18
G02B 5/00-5/136
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散層、基材層及びバリア層を順に含み、
前記光拡散層は、硬化性樹脂と、表面凹凸を形成する光拡散粒子と、帯電防止剤とを含み、
前記光拡散層は、前記硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上の前記光拡散粒子を含み、
前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)の表面粗さ(Rt)が0.02μm以上0.1μm未満であり、前記表面粗さを有する光拡散層の面(S)の面抵抗は、1010Ω/sq以下であり、
下記数式で計算される水分透過度の変化率が30%以下を満たし、
[数式]
水分透過度の変化率(%)={(B-A)/A}×100
前記数式で、Aは、光拡散性バリアフィルム(F)の水分透過度であり、Bは、光拡散性バリアフィルム(F)のバリア層の表面上に光拡散性バリアフィルム(F)の光拡散層の凹凸表面が接触するように一定荷重を加えて2個の光拡散性バリアフィルム(F、F)を重ね、前記一定荷重を24時間維持した後に測定された光拡散性バリアフィルム(F)の水分透過度であり、前記光拡散性バリアフィルム(F、F)は、同一の過程を経て製造され同一の構成を有し、前記水分透過度(A、B)は、38℃及び100%の相対湿度条件でAQUATRAN 2(MOCON社)を用いて測定されたことを特徴とする光拡散性バリアフィルム。
【請求項2】
前記バリア層は、一つ以上のサブバリア層を含むことを特徴とする請求項1の光拡散性バリアフィルム。
【請求項3】
前記サブバリア層は、20~400nm範囲の厚さを有することを特徴とする請求項2に記載の光拡散性バリアフィルム。
【請求項4】
前記バリア層又は前記サブバリア層は、ポリシラザンの層又はポリシラザンの層の硬化層であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光拡散性バリアフィルム。
【請求項5】
前記ポリシラザンは、下記化1の単位を有し、
【化1】
化1で、R、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミド基又はアルコキシ基であることを特徴とする請求項4に記載の光拡散性バリアフィルム。
【請求項6】
前記光拡散層の厚さは、20μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の光拡散性バリアフィルム。
【請求項7】
前記光拡散層は、前記硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上の前記光拡散粒子を含むコーティング組成物製であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光拡散性バリアフィルム。
【請求項8】
前記光拡散層、基材層及びバリア層は、互いに直接接することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光拡散性バリアフィルム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光拡散性バリアフィルムを含むことを特徴とする電気又は電子装置。
【請求項10】
基材層及び光拡散層を含み、前記光拡散層は、硬化性樹脂と、表面凹凸を形成する光拡散粒子と、帯電防止剤とを含み、前記光拡散層は、前記硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上の前記光拡散粒子を含み、前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)の表面粗さ(Rt)が0.02以上0.1μm未満であり、前記表面粗さを有する光拡散層の一面(S)の面抵抗が1010Ω/sq以下である積層体を用意する第1ステップ、及び
前記光拡散層が形成された基材層の一面の反対面上にバリア層のコーティング組成物を塗布した後に乾燥してポリシラザン層を形成する第2ステップを含み、
下記数式で計算される水分透過度の変化率が30%以下を満たし、
[数式]
水分透過度の変化率(%)={(B-A)/A}×100
前記数式で、Aは、光拡散性バリアフィルム(F)の水分透過度であり、Bは、光拡散性バリアフィルム(F)のバリア層の表面上に光拡散性バリアフィルム(F)の光拡散層の凹凸表面が接触するように一定荷重を加えて2個の光拡散性バリアフィルム(F、F)を重ね、前記一定荷重を24時間維持した後に測定された光拡散性バリアフィルム(F)の水分透過度であり、前記光拡散性バリアフィルム(F、F)は、同一の過程を経て製造され同一の構成を有し、前記水分透過度(A、B)は、38℃及び100%の相対湿度条件でAQUATRAN 2(MOCON社)を用いて測定されたことを特徴とする光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記硬化性樹脂100重量部に対して10重量部以上の前記光拡散粒子を含む光拡散層のコーティング組成物を基材層の一面上に塗布した後に硬化して光拡散層を形成することを特徴とする請求項10に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記バリア層のコーティング組成物は、下記化2で表示されるポリシラザンを含み、
【化2】
化2で、R、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミド基又はアルコキシ基であることを特徴とする請求項10又は11に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項13】
ロールツーロール工程を用い、
前記第2ステップの実行前に、前記第1ステップで用意された積層体をロール(R1)に巻き取るステップをさらに含むことを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項14】
巻き取られた前記積層体を前記ロール(R1)から巻き出して前記第2ステップを行うことを特徴とする請求項13に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記第2ステップで用意された光拡散性バリアフィルムをロール(R2)に巻き取り、巻き取られた状態を1時間以上維持するステップをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項16】
巻き取られた前記光拡散性バリアフィルムを前記ロール(R2)から巻き出し、前記ポリシラザン層を硬化するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【請求項17】
前記ポリシラザン層の硬化は、プラズマ処理又はUV光の照射により行われることを特徴とする請求項16に記載の光拡散性バリアフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年4月17日に提出された韓国特許出願第10-2018-0044337号及び2019年4月17日に提出された韓国特許出願第10-2019-0044610号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本出願は、光拡散性バリアフィルム及びその製造方法に関する。具体的に、本出願は、バリア層と光拡散層を同時に含む一体型フィルムと、ロールツーロール(roll‐to‐roll)工程を用いたその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光物質やバックライトユニットのような光源を含む装置は、水分や酸素に露出される場合、耐久性が低下する問題がある。したがって、このような装置には、外部環境から装置を保護するためにバリアフィルムが用いられ得る。また、光源から投射される光を均一に拡散させるためには、光拡散シートが必要である。光拡散機能とバリア性が全て要求される場合、接着剤を用いてバリアフィルムと光拡散シートを付着して用いることが考慮され得る。
【0004】
前記フィルムやシートは、乾式コーティング(dry coating)や湿式コーティング(wet coating)を用いて製造され得る。例えば、フィルムに対する遮断特性の付与が主に金属のような無機材料により行われる場合には、物理気相堆積方法(physical vapor deposition、PVD)や化学気相堆積方法(chemical vapor deposition、CVD)のような乾式コーティングによりバリアフィルムが製造され得る。そして、フィルムに対する遮断特性の付与が主に有機又は有/無機複合材料により行われる場合には、湿式コーティングによりバリアフィルムが製造され得る。
【0005】
一方、ディスプレイの大面積化に従ってディスプレイ用バリアフィルムも大面積に製造されることが要求されている。バリアフィルムを気相堆積のような乾式コーティング方法で製造する場合、湿式コーティングに比べて薄膜均一度に優れるという利点があるが、高コストであり、大面積化が容易ではない。また、乾式及び湿式コーティングは、ロールツーロール(roll‐to‐roll)工程中に行われ得るが、ロールツーロール工程中には移送されるフィルムをロールに巻取又は巻き出す過程で相当な圧力が加えられながらバリア材料が損傷される恐れがあり、結果的には、フィルムのバリア特性が低下できる。
【0006】
したがって、製造過程でバリア特性が低下せず、光拡散性を有し、大面積でも量産できるバリアフィルムの提供技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の一つの目的は、外部環境(例えば、水分)に対する遮断特性に優れ、光拡散機能を同時に有する一体型フィルム、すなわち、光拡散性バリアフィルムを提供することである。
【0008】
本出願の他の目的は、大面積の光拡散性バリアフィルムを提供することである。
【0009】
本出願のまた他の目的は、前記フィルムを含む電子又は電気装置を提供することである。
【0010】
本出願のまた他の目的は、ロールツーロール工程を用いたバリアフィルムの製造時に、バリアフィルムの損傷を防止することである。
【0011】
本出願のまた他の目的は、別途の接着層が不必要に湿式コーティング方式に従って光拡散性バリアフィルムを製造して、バリアフィルムを薄型化し、その製造工程を単純化することである。
【0012】
本出願の前記目的及びその他の目的は、下記詳細に説明する本出願によって全て解決され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願に関する一例で、本出願は、光拡散性バリアフィルムに関する。すなわち、本出願は、バリア特性だけでなく光拡散機能を同時に有する一体型フィルムに関する。
【0014】
前記光拡散性バリアフィルムは、光拡散層、基材層及びバリア層を含む。具体的に、前記フィルムは、基材層の互いに対向する両面上に光拡散層とバリア層をそれぞれ含むことができる。すなわち、前記バリアフィルムは、図1のように、光拡散層、基材層及びバリア層を順に含むことができる。
【0015】
特に異に定義しない限り、本出願で層間積層位置と関連して用いられる「~上」又は「~上に」という用語は、いずれか構成が他の構成の直ぐ上に位置する場合だけでなく、これら構成の間に第3の構成が介在される場合までも含む意味で用いられ得る。
【0016】
本出願の発明者は、ロールツーロール工程中に湿式コーティングを用いてバリアフィルムを製造する場合、バリア性材料の損傷があることを確認した。例えば、基材層上にバリア層を形成する場合に、バリア層を含む積層体はロール又はローラーに巻き取られるかそれから巻き出される過程を経ることができる。特に、巻き取られたフィルムが巻き出される過程で厚さが薄い積層体フィルムの界面が分離されながら相当な量の静電気が発生でき、前記静電気はバリア層の損傷を誘発する。静電気の発生を減らすためには、巻き取られた状態であってもバリア層と基材層の界面が完全に密着されない必要がある。しかし、ロールに巻き取るときフィルムに加えられるテンションを考慮すると、これは容易ではない。一方、静電気の発生を減らすためにバリア層と基材層の界面が完全に密着されないようにいずれかの層の表面に凹凸を形成することを考慮することができる。しかし、バリア層自体の凹凸は、バリア層の薄膜安定性やバリア特性に欠陷をもたらす恐れがある。また、巻き取られた状態でバリア層と接する層(例えば、光拡散層)の凹凸が過度に大きい場合には、巻き取るときに加えられるテンション(tension)によりバリア層が損傷され得る。
【0017】
このような点を考慮して、本出願の発明者は、バリア層の特性を低下させないと共に、ロールツーロール工程に適合な光拡散性バリアフィルムを発明した。本出願の光拡散性バリアフィルムは、光拡散層に所定の凹凸を付与して光拡散機能を確保すると共にロールツーロール工程を改善し、同時にバリア層の損傷を防止する。
【0018】
これと関して、本出願の光拡散層は、その一面に所定の表面粗さ(Rt)を有する。
【0019】
本明細書で「表面粗さ(Rt)」とは、表面粗さを測定しようとする層の表面に対する法線方向から観察するとき、最も高い地点(H)と最も低い地点(H)の間の距離、すなわち、高さ差(△H=H-H)を意味する。下記説明するように、光拡散層は、マトリックス成分である樹脂と粒子成分を含むことができるが、表面粗さ(Rt)の測定時に観察される最高点(H)は、一つの粒子により又は複数粒子の固まりにより形成された地点であってもよく、最も低い地点(H)は、樹脂又は粒子成分により形成された地点であってもよい。このような表面粗さ(Rt)は、実施例に記載した機器を用いて測定され得る。
【0020】
具体的に、前記光拡散性バリアフィルムで、前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)は、表面粗さ(Rt)が6μm以下である凹凸を有する。前記凹凸を有する光拡散層の面(S)は、ローラーに巻き取られた場合バリア層と接するようになる。したがって、前記凹凸を通じて光拡散層とバリア層の密着程度を緩和し、静電気によるバリア層の損傷を防止することができる。
【0021】
一つの例示で、前記表面粗さ(Rt)は、0.01μm以上、0.02μm以上、0.03μm以上、0.04μm以上、0.05μm以上、0.06μm以上、0.07μm以上、0.08μm以上、0.09μm以上又は0.1μm以上であってもよい。具体的に、前記表面粗さ(Rt)は、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、0.6μm以上、0.7μm以上、0.8μm以上、0.9μm以上又は1.0μm以上であってもよく、より具体的には、1μm以上、1.5μm以上、2.0μm以上、2.5μm以上、3.0μm以上、3.5μm以上、4.0μm以上、4.5μm以上又は5.0μm以上であってもよい。
【0022】
前記表面粗さ(Rt)が6μmを超過する場合、光拡散層の面(S)と接するバリア層の一面は凹凸により損傷され得る。
【0023】
特に制限されないが、前記表面粗さ(Rt)の下限は、0.02μm以上であってもよい。表面粗さの下限が前記下限より小さい場合には、ローラーに巻き取られたフィルムを巻き出すときに静電気が発生する可能性が高くなる。
【0024】
一つの例示で、前記凹凸表面で観察される粒子の個数は、0.8~3.0個/μmの範囲以内であってもよい。例えば、凹凸表面で単位面積(μm)当たり観察される粒子の個数は、0.9個/μm以上、1.0個/μm以上、1.1個/μm以上、1.2個/μm以上、1.3個/μm以上、1.4個/μm以上、1.5個/μm以上、1.6個/μm以上、1.7個/μm以上、1.8個/μm以上、1.9個/μm以上又は2.0個/μm以上であってもよく、そして、2.9個/μm以下、2.8個/μm以下、2.7個/μm以下又は2.6個/μm以下であってもよい。前記粒子の個数は、該当層の所定面積(横μm×縦μm)に対して倍率が×50,000であるSEMイメージを得て、その表面から観察される粒子の個数を確認したものであってもよい。一つの例示で、粒子個数の確認は、例えば、3回又は5回のように、数回行われ得、その平均値を前記粒子の個数で取られる。
【0025】
一つの例示で、前記光拡散層、基材層及びバリア層は、隣接する層との間に他の層をさらに含むことができる。
【0026】
また一つの例示で、前記光拡散層、基材層及びバリア層は、隣接する層と直接接することができる。具体的に、隣接する層の間には別途の接着剤が用いられなくてもよい。それによって、薄型であると共にバリア特性に優れたフィルムを提供することができる。
【0027】
一つの例示で、前記光拡散層の表面粗さ(Rt)は、0.1~6μmの範囲であってもよい。前記範囲を満たす場合、フィルムを巻き出すときに静電気が発生する可能性が相対的に低い。具体的に、前記光拡散性バリアフィルムは、光拡散層;基材層;及びバリア層;を順に含み、前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)は、表面粗さ(Rt)が0.1~6μmの範囲内である凹凸を有することができる。
【0028】
一つの例示で、前記光拡散層の表面粗さ(Rt)が0.1μm未満である場合、例えば、0.01以上0.1μm未満である場合、前記表面粗さを有する光拡散層の一面(S)の面抵抗は、1010Ω/sq以下を満たすように構成され得る。具体的に、前記光拡散性バリアフィルムは、光拡散層;基材層;及びバリア層;を順に含み、前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)は、表面粗さ(Rt)が0.02μm以上0.1μm未満であり、前記表面粗さを有する光拡散層の一面(S)の面抵抗は、1010Ω/sq以下であってもよい。
【0029】
これと関して、光拡散層の一面(S)に凹凸が存在する場合、そうではない場合より光拡散層とバリア層の界面の剥離時に静電気が発生する可能性が低いが、表面粗さが0.02以上0.1μm未満であると、光拡散層の一面(S)の面抵抗を一定レベルに調節する必要がある。これを通じて、相対的に低い表面凹凸にもかかわらずフィルムを巻き出すときに発生できる静電気によるバリア層の損傷を予防することができる。
【0030】
一つの例示で、前記表面粗さ(Rt)が0.1μm未満である光拡散層の一面(S)の面抵抗は、1.0×1012Ω/sq以下、1.0×1011Ω/sq以下1.0×1010Ω/sq以下、1.0×10Ω/sq以下又は1.0×10Ω/sq以下であってもよい。前記面抵抗値は、凹凸と関連して静電気によるバリア層の損傷を防止することができるサイズを規定したもので、その下限は特に制限されない。例えば、その下限は、1.0×10Ω/sq以上、1.0×10Ω/sq以上又は1.0×10Ω/sq以上であってもよい。
【0031】
表面粗さ(Rt)が0.1μm未満である光拡散層の面抵抗を前記範囲に満たすための手段は特に制限されない。例えば、光拡散層の形成材料を適切に選択することができる。一つの例示で、前記表面粗さ(Rt)が0.1μm未満である光拡散層は、帯電防止剤を所定含量で含むことができる。
【0032】
一つの例示で、前記光拡散性バリアフィルムは、下記数式で計算される水分透過度の変化率が30%以下を満たすことができる。
【0033】
[数式]
水分透過度の変化率(%)={(B-A)/A}×100
【0034】
前記数式で、Aは、光拡散性バリアフィルム(F)の水分透過度であり;Bは、光拡散性バリアフィルム(F)のバリア層の表面上に光拡散性バリアフィルム(F)の光拡散層の凹凸表面が互いに触れ合うように(又は互いに接するように)一定荷重を加えて前記2個のフィルム(F、F)を重ね、前記一定荷重を24時間維持した後に測定された光拡散性バリアフィルム(F)の水分透過度であり;前記光拡散性バリアフィルム(F、F)は、同一の構成を有し、水分透過度(A、B)は、38℃及び100%の相対湿度条件でAQUATRAN2(MOCON社)を用いて測定されたものであってもよい。
【0035】
水分透過度の変化率の計算に用いられる光拡散性バリアフィルム(F、F)は、本出願による光拡散性バリアフィルムであって、光拡散層、基材層及びバリア層を順に含み、本出願で規定した各層の特性を有する。
【0036】
一つの例示で、前記水分透過度の変化率の計算時に加えられる一定荷重は、フィルム(F)のポリシラザン層に対する硬化前に行われたものであってもよい。前記一定荷重が加えられた後にフィルム(F)のポリシラザン層に対して硬化が行われ得る。一つの例示で、前記水分透過度AとBは、ポリシラザン層に対する硬化前に測定されたフィルム(F、F)の水分透過度であってもよい。または前記水分透過度AとBは、ポリシラザン層に対する硬化後に測定されたフィルム(F、F)の水分透過度であってもよい。
【0037】
一つの例示で、前記変化率は、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下であってもよい。
【0038】
上述した理由で、ロールツーロール過程を経る場合にはバリア層の損傷が発生できるので、損傷されたフィルムのバリア特性は低下され得る。すなわち、水分透過度は、高くなり得る。したがって、前記数式と関連して水分透過度の変化率(%)が30%以下であるということは、水分透過度の増加率(%)が30%以下であることを意味することができる。すなわち、本出願で水分透過度の変化率(%)は、水分透過度の増加率(%)と同一の意味で用いられ得る。ただし、水分透過度の変化率の測定と関連された機械的誤差を考慮して変化率で表記する。
【0039】
前記水分透過度の変化率は、光拡散性バリアフィルムがロールツーロール工程を用いて製造される過程で、前記フィルム又はその一部構成がローラーから巻き出し及びローラーに巻き取られる場合を仮定した数値変化である。具体的に、前記水分透過度Bは、テンションが与えられながらロール(又はローラー)にフィルム又はその一部構成が巻き取られ、巻取状態が所定時間維持された後にロール(又はローラー)から巻き出されたときに、バリアフィルムの水分透過度がどのくらい変化(低下)したかを確認するための値である。下記実験例を通じて確認できるように、水分透過度の低下程度(すなわち、バリアフィルムの損傷程度)は、例えば、光拡散層の凹凸程度や面抵抗によって変わることができる。
【0040】
特に制限されないが、水分透過度Bの測定時に二つのフィルム(F、F)を重ねるために加えられる一定荷重又は所定圧力は、約10~35kg荷重であってもよい。また、水分透過度Bの測定時に二つのフィルム(F、F)は、シート状に裁断され得、このとき、シートが接する面のサイズは、10cm×10cmサイズであってもよい。
【0041】
前記基材層の種類は特に制限されない。例えば、前記基材層は、ガラス基材又はプラスチック(高分子)材料を含むことができる。
【0042】
一つの例示で、前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム又はポリアリレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルムなどのポリエーテルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム又はアセチルセルロースブチレートフィルムなどのセルロース樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、アクリルフィルム又はエポキシ樹脂フィルムなどを含むことができる。しかし、これらに制限されるものではない。
【0043】
前記基材層は、前記羅列されたフィルムのうち一つ以上を含むことができる。すなわち、前記基材層は、単一層や多層構造であってもよい。
【0044】
基材層の厚さは特に制限されない。例えば、2~200μmの範囲内、5~190μmの範囲内、10~180μmの範囲内、20~180μmの範囲内又は20~150μmの範囲内で選択され得る。
【0045】
前記基材層の厚さは、例えば、SEM(HR‐SEM、S‐4800、Hitachi社)やTEM(FE‐TSEM、TITAN G2 ChemiSTEM 80‐200、FEI社)による断面イメージの観察を通じて測定され得る。または、XRR(X’Petr Pro MRD XRD、PANalytical社)を用いて隣接する層間の電子密度差を分析し、厚さ変動(thickness oscillation)を類推する方式で前記厚さが測定されてもよい。このとき、前記厚さは、厚さを測定しようとする基材層の表面に対する法線方向から観察するとき、その表面の多くの地点で測定された厚さ値に対する平均値であってもよい。
【0046】
一つの例示で、前記基材層は、透明性又は透光性を有することができる。本出願で「透明性又は透光性」とは、所定層又はフィルムが有する380~780nm波長の範囲内の可視光の透過率、具体的には、550nm波長の光に対する透過率が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は95%以上である場合を意味することができる。前記透過率の上限は、例えば、約100%であってもよい。
【0047】
前記基材層は、公知された添加剤、例えば、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、酸化防止剤からなる群より選択された1以上の添加剤を含むことができる。
【0048】
一つの例示で、前記基材層の一面又は両面には、必要に応じて、プライマー処理、コロナ放電の照射、プラズマの照射、イオンの照射などの表面処理が実施され得る。例えば、前記基材層は、光拡散層やバリア層との密着力又は接着力の向上のために少なくとも一面にプライマー処理が行われた層であってもよい。
【0049】
一つの例示で、前記バリア層は、一つ以上のサブバリア層を含むことができる。2以上のサブバリア層が積層されてバリア層を形成する場合であれば、各サブバリア層の種類は同一又は相異なっていてもよい。例えば、図2のように、光拡散性バリアフィルムは、光拡散層、基材層、第2バリア層及び第1バリア層を順に含むことができる。
【0050】
一つの例示で、前記バリア層又はサブバリア層は、ポリシラザン層であるか、ポリシラザンの硬化層であってもよい。
【0051】
本出願で、ポリシラザン層は、硬化前の状態であって、例えば、下記説明するポリシラザン含有組成物(コーティング組成物)を基材層の一面上にコーティングして乾燥して形成された層であってもよい。また、ポリシラザンの硬化層は、前記ポリシラザン層を硬化して形成された層を意味することができる。
【0052】
前記ポリシラザン層は、ポリシラザンを主成分で含む層(基材層上に形成された硬化前状態のコーティング層)を意味する。主成分とは、例えば、ポリシラザン層又はポリシラザン含有組成物内で、ポリシラザンの割合が重量を基準で55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上又は90%以上である場合を意味することができる。前記重量割合は、例えば、100%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下又は95%以下であってもよい。
【0053】
本出願で用語「ポリシラザン」は、ケイ素原子(Si)と窒素原子(N)が繰り返されながら基本骨格(basic backbone)を形成しているポリマーを意味する。このようなポリシラザンは、所定の処理(例えば、下記説明するプラズマ処理)を通じて変性されてバリア性を有する酸化ケイ素及び/又は酸窒化ケイ素を形成することができる。それによって、ポリシラザン層の硬化物、すなわち、硬化層は、Si、N及び/又はOを含み、外部環境に対する遮断特性を有する。
【0054】
一つの例示で、本出願で用いられるポリシラザンは、下記化学式1で表示される単位を含むことができる。
【0055】
【化1】
【0056】
化学式1で、R、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミド基又はアルコキシ基であってもよい。
【0057】
本出願で用語「アルキル基」は、特に異に規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を意味することができる。前記アルキル基は、直鎖型、分枝鎖型又は環型であってもよい。また、前記アルキル基は、任意的に一つ以上の置換基に置換されていてもよい。
【0058】
本明細書で用語「アルケニル基」は、特に異に規定しない限り、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8又は炭素数2~4のアルケニル基を意味することができる。前記アルケニル基は、直鎖型、分枝鎖型又は環型であってもよく任意的に一つ以上の置換基に置換されていてもよい。
【0059】
本明細書で用語「アルキニル基」は、特に異に規定しない限り、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8又は炭素数2~4のアルキニル基を意味することができる。前記アルキニル基は、直鎖型、分枝鎖型又は環型であってもよく任意的に一つ以上の置換基に置換されていてもよい。
【0060】
本明細書で用語「アリール基」は、特に異に規定しない限り、ベンゼン環又は2個以上のベンゼン環が連結されているか、一つ又は2個以上の炭素原子を共有しつつ縮合又は結合された構造を含む化合物又はその誘導体に由来する1価残基を意味することができる。本明細書でアリール基の範囲には、通常的にアリール基と呼称される官能基はもちろん、いわゆるアラルキル基(aralkyl group)又はアリールアルキル基なども含まれ得る。アリール基は、例えば、炭素数6~25、炭素数6~21、炭素数6~18又は炭素数6~12のアリール基であってもよい。アリール基としては、フェニル基、ジクロロフェニル、クロロフェニル、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基(xylyl group)又はナフチル基などが例示され得る。
【0061】
本出願で用語「アルコキシ基」は、特に異に規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルコキシ基を意味することができる。前記アルコキシ基は、直鎖型、分枝鎖型又は環型であってもよい。また、前記アルコキシ基は、任意的に一つ以上の置換基に置換されていてもよい。
【0062】
前記化学式1で表示される単位を含む限り、ポリシラザンの具体的な種類は特に制限されない。
【0063】
一つの例示で、変性されたポリシラザン層の緻密度などを考慮して、本出願のポリシラザンとしては、R~Rが全て水素原子である化学式1の単位を含むポリシラザン、例えば、ペルヒドロポリシラザンが用いられ得る。
【0064】
特に制限されないが、前記ポリシラザン化合物の数平均分子量(Mn)は、例えば、100~50,000以下であってもよい。
【0065】
一つの例示で、前記ポリシラザン層は、例えば、適切な有機溶媒にポリシラザンを溶解させて製造された組成物(ポリシラザンを主成分で含むコーティング液)を基材層にコーティングする方式で形成され得る。ポリシラザンと反応性がなく且つこれを溶解することができる溶媒であれば、前記コーティング液に含まれる溶媒の種類は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素などの炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類を用いることができる。具体的に、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベンなどの炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタンなどのハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類などが溶媒で用いられ得る。
【0066】
一つの例示で、常用化されたポリシラザン又はこれを含む組成物がバリア層の形成に用いられ得る。例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製造のアクアミカ(登録商標)NN120‐10、NN120‐20、NAX120‐10、NAX120‐20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140又はSP140などのようなポリシラザン市販品が用いられ得るが、これらに制限されるものではない。
【0067】
ポリシラザン層は、ポリシラザン変性促進触媒、すなわち、ポリシラザン化合物との相互反応によってポリシラザン化合物の変性を促進させる化合物を含むことができる。このような触媒としては、有機アミン化合物、有機酸、無機酸、カルボン酸金属塩、有機金属錯塩などがあるが、これに限定されない。
【0068】
前記バリア層の形成組成物は、必要に応じて、その他添加剤を含むことができる。前記添加剤としては、例えば、粘度調整剤や架橋促進剤などがあるが、これに限定されない。
【0069】
基材層上にコーティングされるポリシラザン層、すなわち、サブバリア層の厚さが過度に薄い場合、コーティング工程が円滑に行われず、バリア性を十分に確保しにくく、光拡散層の凹凸により損傷される可能性が高い。そして、その厚さが過度に厚い場合には、硬化過程でポリシラザン層の収縮によるクラック(損傷)が発生する恐れがある。特に制限されるものではないが、コーティングされるポリシラザン層の厚さは、上記のような点を考慮するとき、その下限は、例えば、約20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上又は100nm以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下又は200nm以下であってもよい。このとき、バリア層の厚さは、バリア層を形成する樹脂成分(例えは、ポリシラザン)がコーティングされた平均厚さ又は硬化された樹脂成分の厚さを意味することができる。
【0070】
前記バリア層の厚さは、公知された方法、例えば、SEM(HR‐SEM、S‐4800、Hitachi社)やTEM(FE‐TSEM、TITAN G2 ChemiSTEM 80‐200、FEI社)による断面イメージの観察を通じて測定され得る。または、XRR(X’Petr Pro MRD XRD、PANalytical社)を用いて隣接する層間の電子密度差を分析し、厚さ変動(thickness oscillation)を類推する方式で前記厚さが測定され得る。このとき、前記厚さは、厚さを測定しようとする層の表面に対する法線方向から観察するとき、樹脂成分が形成する表面の多くの地点で測定された厚さ値に対する平均値であってもよい。
【0071】
一つの例示で、前記ポリシラザン層は、基材層の一面上に塗布した後に乾燥され、硬化前の状態で基材層上に存在してもよい。
【0072】
一つの例示で、前記ポリシラザン層は、基材層上で硬化され得る。
【0073】
一つの例示で、ポリシラザン層を硬化して得られる層、すなわち、ポリシラザンの硬化層の厚さは、上述したポリシラザン層の厚さによって決定され得る。そして、2以上のサブバリア層を含むバリア層の厚さは、1,500nm以下の範囲でポリシラザン硬化層又はポリシラザン層の個数によって適切に調節され得る。
【0074】
一つの例示で、前記バリア層は、第1サブバリア層と第2サブバリア層の積層体であってもよい。この場合、前記各サブバリア層の厚さは、例えば、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上又は100nm以上であってもよい。そして、各サブバリア層の厚さの上限は、例えば、250nm以下、240nm以下、230nm以下、220nm以下、210nm以下又は200nm以下であってもよい。
【0075】
複数のサブバリア層が積層される場合、例えば、第1サブバリア層上に第2サブバリア層が形成される場合、SEM又はTEMでバリア層の断面を観察すると、各サブバリア層が区分され得る。
【0076】
一つの例示で、前記バリア層は、ポリシラザン層又はその硬化層のみを含むことができる。例えば、気相堆積により形成された金属成分含有層は含まないこともある。
【0077】
一つの例示で、前記バリア層は、粒子成分を含むことができる。粒子成分は、光拡散層で説明した内容と同一である。
【0078】
一つの例示で、前記バリア層は、粒子成分を含有しなくてもよい。
【0079】
一つの例示で、前記バリア層は、透明性又は透光性を有することができる。
【0080】
一つの例示で、前記バリア層は、基材層の一面上に直接形成され得る。すなわち、これらの間には別途の接着剤層が存在しない。それによって、薄型であると共にバリア特性に優れたフィルムを提供することができる。
【0081】
一つの例示で、前記表面粗さを有する光拡散層は、光拡散層で連続相を形成するマトリックス成分と連続相内に存在する分散相である光拡散剤を含むことができる。このとき、マトリックス成分は、硬化性樹脂(又はその硬化物)であり、光拡散剤は、光拡散機能を行うことができると知られた(光拡散)粒子であってもよい。前記粒子を通じて表面凹凸を形成し、固有の光拡散機能を行うことができる。
【0082】
一つの例示で、前記表面粗さ(Rt)を有する光拡散層は、20μm以下の厚さを有することができる。具体的に、前記光拡散層の厚さの上限は、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下又は1μm以下であってもよい。また、前記厚さの下限は、例えば、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上又は10μm以上であってもよい。前記範囲を満たす場合、上述した表面粗さ(Rt)を有すると共に安定的に光拡散層が形成され得る。
【0083】
前記光拡散層の厚さは、光拡散粒子を考慮せず、マトリックス成分、すなわち、樹脂成分のみを考慮したものであって、公知された方法、例えば、SEM(HR‐SEM、S‐4800、Hitachi社)やTEM(FE‐TSEM、TITAN G2 ChemiSTEM 80‐200、FEI社)による断面イメージの観察を通じて測定され得る。または、XRR(X’Petr Pro MRD XRD、PANalytical社)を用いて隣接する層間の電子密度差を分析し、厚さ変動(thickness oscillation)を類推する方式で前記厚さが測定され得る。このとき、前記厚さは、厚さを測定しようとする層の表面に対する法線方向から観察するとき、樹脂成分が形成する表面の多くの地点で測定された厚さ値に対する平均値であってもよい。
【0084】
一つの例示で、前記光拡散層は、硬化性樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上の粒子を含むコーティング組成物(以下、「光拡散層のコーティング組成物」と呼称)で形成され得る。具体的に、前記粒子の含量の下限は、例えば、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上又は0.5重量部以上であってもよく、具体的に、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上又は5重量部以上であってもよく、具体的には、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上又は50重量部以上であってもよい。また、前記粒子の含量の上限は、例えば、100重量部以下、95重量部以下、90重量部以下、85重量部以下又は80重量部以下であってもよい。
【0085】
一つの例示で、凹凸を有する表面、すなわち、所定範囲の表面粗さ(Rt)を有する光拡散層の表面を形成するために、光拡散層のコーティング組成物を製造するときに低い密度の粒子を用いることができる。具体的に、光拡散層のコーティング組成物を製造するために樹脂、溶媒及び粒子を混合する場合に、相対的に低い密度の粒子を用いることで、浮力により前記粒子が基材層上に塗布された光拡散層のコーティング組成物の表面に突出されるようにすることができる。
【0086】
また一つの例示で、形成しようとする光拡散層の厚さを考慮して粒子の直径を調節する方法が用いられ得る。具体的に、硬化後に形成された光拡散層の厚さ(高さ)よりその直径がさらに大きい粒子を光拡散層のコーティング組成物に用いることができる。上記のような粒径を満たす場合、凹凸構造をより容易に形成できる。例えば、光拡散層の高さが約20μmレベルである場合、その直径が約20~25μmである粒子を用いることができる。しかし、粒子の直径が層の厚さより大きい場合には、粒子と光拡散層の界面が欠陥(defect)で作用できるので、粒子が過量で使用されないように、その含量を適切に調節する必要がある。
【0087】
また一つの例示で、表面粗さを形成する他の方法は、光拡散層のコーティング組成物の製造時に疎水性又は親水性の程度が相異なっている成分を用いる。具体的に、光拡散層の厚さよりその直径がさらに小さい粒子を用いる場合、光拡散層のコーティング組成物に用いられる溶媒や樹脂成分と比較するとき、相対的により疎水性である粒子又はより親水性である粒子を用いることができる。上記のように、疎水性又は親水性が互いに相異なっていると、前記粒子が樹脂の硬化後に形成された光拡散層(又は基材層上に塗布された光拡散層のコーティング組成物層)の表面に浮遊した状態で存在できる(又は、前記状態を維持しながら硬化が行われ得る。)。粒子の疎水性又は親水性の可否は、その粒子自体の特性(例えば、成分)によって決定され得る。または、疎水性官能基又は親水性官能基による表面処理を通じて粒子に対する疎水性付与や親水性付与が行われ得る。このとき、疎水性又は親水性の可否は一律的に判断されず、一緒に用いられる組成物内の他の成分(例えば、溶媒や樹脂)との関係から決定され得、粒子の表面を形成する化合物や官能基の極性可否、又は化合物内の炭素鎖の長さなどを総合的に考慮して相対的に判断され得る。例えば、光拡散層の厚さが15~17μmレベルである場合、粒子の直径を約1~5μmの範囲で調節することができ、粒子の表面特性を調節して粒子が光拡散層の表面(S)に浮遊状態で存在するようにすることができる。
【0088】
前記光拡散層の形成に用いられる樹脂成分は特に制限されない。樹脂成分としては、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などを用いることができる。
【0089】
一つの例示で、前記光拡散層のコーティング組成物は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シロキサンポリマー又は下記有機シラン化合物の縮合物などを含むことができる。
【0090】
特に制限されないが、耐候性、耐スクラッチ性、表面光沢特性及び耐熱性を考慮するとき、アクリル系樹脂が用いられ得る。
【0091】
具体的に、アクリル系樹脂は、アクリル酸とメタクリル酸誘導体を主成分とするモノマーを共重合させて得ることができる。使用可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルへキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートなどがあるが、これに限定されない。
【0092】
一つの例示で、前記光拡散層組成物は、樹脂成分で多官能性(メタ)アクリレートを含むことができる。前記多官能性アクリレートの種類としては、例えば、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル(allyl)化シクロへキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート又は9,9‐ビス[4‐(2‐アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオリン(fluorine)などのような2官能型アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレート又はトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート又はペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレート;及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレート(例えば、イソシアネート単量体)及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物などの6官能型アクリレートなどを用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0093】
光拡散層の形成に用いられ得るエポキシ系樹脂としては、脂環族エポキシ樹脂及び芳香族エポキシ樹脂からなる群より選択された1種以上が用いられ得る。
【0094】
脂環族エポキシ樹脂としては、例えば、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上が用いられ得る。また、例えば、Celloxide 2021P(Daicel社)である3,4‐エポキシシクロへキシル‐メチル‐3,4‐エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(3,4‐epoxycyclohexyl‐methyl‐3,4‐epoxycyclohexane carboxylate)及びその誘導体を用いることができ、これらは高温でも安定であり、無色透明であり、硬くて(toughness)、粘着力(adhesion)及び合紙用接着力(adhesives)に優れる。
【0095】
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブローム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂及びトライグリシジルイソシアヌレートからなる群より選択される1種以上の芳香族エポキシ樹脂が用いられてもよい。
【0096】
前記樹脂が重合により光拡散層のマトリックスを形成するようにする重合開始剤の種類は特に制限されず、公知にされた光重合開始剤又は熱重合開始剤などが用いられ得る。
【0097】
また、前記光拡散層のコーティング組成物は、硬化剤を追加で含んでいてもよい。これらの種類は特に制限されない。
【0098】
前記光拡散層の形成に用いられる粒子の種類は特に制限されない。前記粒子成分としては、有機粒子、無機粒子、有無機ハイブリッド粒子又はこれらの混合物が制限なしに用いられ得る。粒子の形状も特に制限されない。例えば、前記粒子は、球形、楕円球形、角錐型又は無定形であってもよい。
【0099】
一つの例示で、球形粒子が光拡散層の形成時に用いられた場合、所定表面粗さを有する光拡散層の面は、半球形態の突起が不規則的に突出された形状又は不規則なエムボシング形状を有することができる。
【0100】
光拡散層に使用可能な無機粒子の種類は特に制限されない。一つの例示で、クレイ、タルク、アルミナ、炭酸カルシウム、ジルコニア、シリカ、硫酸バリウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、ガラス、滑石、雲母、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化スズ粒子のうち選択される無機粒子が用いられ得る。下で説明する有機粒子成分と比較するとき、無機粒子成分は、水分などに対する遮断特性がより優れるため、無機粒子を用いることがフィルムの外部環境に対する遮断性を改善するのに有利である。
【0101】
光拡散層に使用可能な有機粒子の種類は特に制限されない。有機粒子は、高分子成分を含むものであって、例えば、アクリル系粒子、シロキサン系粒子、ポリカーボネート系粒子、スチレン系粒子などがあるが、これに制限されるものではない。
【0102】
一つの例示で、前記光拡散層に用いられる粒子は、両親媒性粒子であってもよい。両親媒性粒子は、一緒に用いられる溶媒や樹脂の相対的な親水性及び疎水性程度によって決定され得る。両親媒性は、表面処理などを通じて具現され得る。
【0103】
一つの例示で、前記光拡散層に含まれる粒子のサイズは、50nm以上又は100nm以上であってもよい。具体的に、前記粒子のサイズは、150nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上又は500nm以上であってもよい。また、光拡散層の厚さや表面粗さを考慮するとき、例えば、前記粒子のサイズの上限は、例えば、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、5μm以下又は1μm以下であってもよい。これと関して、「粒子のサイズ」は、「粒径」と同一の意味で用いられ得、粒子が有する形状のうち最も大きい次元の長さを意味する。前記粒径は、公知にされた粒度分析器、例えば、DLS機器(dynamic light scattering system)を用いて分析され得る。
【0104】
光拡散層の厚さに比べて粒径が大きい場合、前記光拡散層の凹凸は、粒子(particles)の粒径により形成されるものであってもよい。また、光拡散層の厚さに比べて粒径が小さい場合、前記光拡散層の凹凸は、光拡散層の表面に浮遊した粒子又は複数粒子の固まりにより形成されるものであってもよい。
【0105】
一つの例示で、前記粒径は、2種類以上の粒径を有する粒子を含むことができる。この場合、粒子のサイズは、平均値、例えば、平均粒径(D50)を意味することができる。D50は、粒度分布曲線で重量百分率の50%に該当する粒径を意味する。
【0106】
前記光拡散層のコーティング組成物は、溶媒を含むことができる。溶媒は、例えば、トルエン、キシレン(xylene)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、シクロペンタノン(cyclopentanone)、ジメチルホルムアミド(DMF、Dimethylformamide)、ジメチルスルホキシド(DMSO、Dimethyl sulfoxide)、ジブチルエーテル、アニソール(anisole)又は1,2,4‐卜リクロロベンゼンなどが用いられ得るが、これらに制限されるものではない。
【0107】
前記光拡散層のコーティング組成物は、帯電防止剤、抗菌剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、界面活性剤、カップリング剤、可塑剤、混和剤、着色剤、安定剤、滑剤、調色剤、防炎剤、耐候剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤又はこれらの組み合わせの添加剤をさらに含むことができる。これら添加剤の含量は特に制限されないが、樹脂成分100重量部に対して、0.01~10重量部範囲で用いられ得る。
【0108】
一つの例示で、前記光拡散層は、基材層の一面上に直接形成され得る。すなわち、基材層と光拡散層の間には別途の接着剤層が存在しない。それによって、薄型であると共にバリア特性に優れたフィルムを提供することができる。
【0109】
一つの例示で、前記光拡散層は、透明性又は透光性を有することができる。
【0110】
一つの例示で、前記光拡散性バリアフィルムは、ハードコーティング層をさらに含むことができる。ハードコーティング層は、フィルムに対して硬度又は強度を提供する層である。具体的に、図3のように、前記光拡散性バリアフィルムは、光拡散層、基材層、ハードコーティング層及びバリア層を順に含むことができる。
【0111】
一つの例示で、前記ハードコーティング層は、基材層及びバリア層とそれぞれ直接接することができる。この場合、基材層の耐スクラッチ性及び耐溶剤性が改善され得る。
【0112】
ハードコーティング層の形成組成物の具体的な組成は特に制限されない。
【0113】
一つの例示で、前記ハードコーティング層の形成組成物は、硬化性樹脂を含むことができる。この場合、前記ハードコーティング層の形成組成物は、重合開始剤などを追加で含むことができる。重合開始剤の種類は特に制限されず、公知にされた熱重合開始剤又は光重合開始剤が用いられ得る。
【0114】
一つの例示で、前記ハードコーティング層の組成物に含まれる硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であってもよい。例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0115】
一つの例示で、前記樹脂成分外にもヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ペンタエリスリトールアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートがハードコーティング層の形成に用いられ得る。
【0116】
一つの例示で、前記ハードコーティング層の形成組成物は、粒子をさらに含むことができる。粒子の具体的な種類は特に制限されないが、例えば、光拡散層に使用可能な有機又は無機粒子のうち一つ以上が用いられ得る。
【0117】
一つの例示で、前記ハードコーティング層の形成組成物は、溶媒をさらに含むことができる。公知にされた溶媒が制限なしに用いられ得、例えば、上述した溶媒が用いられ得る。
【0118】
また、前記ハードコーティング層の形成組成物は、硬化剤を追加で含んでいてもよい。これらの種類は特に制限されない。
【0119】
一つの例示で、前記ハードコーティング層は、光拡散層に関して上述した内容と同一の組成を有することができる。例えば、ハードコーティング層の組成物は、光拡散層の組成物と同一な樹脂成分を含むことができる。このとき、ハードコーティング層の形成用組成物は、粒子は含まなくてもよい。
【0120】
一つの例示で、前記ハードコーティング層は、透明性又は透光性を有することができる。
【0121】
一つの例示で、前記構成の光拡散バリアフィルムは、5.0×10-3g/mday以下の水分透過度を有することができる。例えば、前記水分透過度は、4.5×10-3g/mday以下、4.0×10-3g/mday以下、3.5×10-3g/mday以下、3.0×10-3g/mday以下、2.5×10-3g/mday以下、2.0×10-3g/mday以下、1.5×10-3g/mday以下又は1.0×10-3g/mday以下であってもよい。前記水分透過度の下限は、例えば、0.001×10-3g/mday以上、0.01×10-3g/mday以上又は0.1×10-3g/mday以上であってもよい。
【0122】
一つの例示で、前記構成の光拡散バリアフィルムは、透光性又は透明性を有することができる。
【0123】
一つの例示で、前記構成の光拡散バリアフィルムが有するヘイズは、60%以上、80%以上、85%以上又は88%以上であってもよい。前記ヘイズは、測定対象を透過する全体透過光の透過率に対する拡散光の透過率の百分率であってもよい。
【0124】
本出願の光拡散性バリアフィルムは、各種包装材料、LCD(液晶ディスプレイ,Liquid Crystal Display)などのディスプレイ(Display)、太陽電池用部材、電子ペーパーやOLED(有機発光ダイオード,Organic Light Emitting Diode)用基板などの多様な用途で、バリアフィルム又は密封フィルムで用いられ得る。
【0125】
本出願に関する他の一例で、本出願は、電気又は電子装置に関する。前記電子又は電気装置は、例えば、各種ディスプレイ装置又は照明装置のような光学装置であってもよい。
【0126】
前記用途に用いられる場合、光拡散性バリアフィルムは、バリア層が保護対象、すなわち、水分に脆弱な構成に隣接するように位置できる。例えば、前記バリアフィルムがOLED素子に付着される場合、その積層順序は、光拡散層、基材層、バリア層及びOLED素子であってもよい。
【0127】
本出願に関するまた他の一例で、本出願は、光拡散性バリアフィルムを製造する方法に関する。
【0128】
前記バリアフィルムは、ロールツーロール工程を通じて製造され得る。このとき、前記フィルム又は積層体は、ロールツーロール機器のロール(又はローラー)に巻き取られ、及び/又はそれから巻き出される過程を繰り返すことができる。
【0129】
前記方法は、基材層と光拡散層の積層体を先に形成した後、バリア層を形成する方式で行うことができる。基材層の場合、上述した光拡散層の凹凸及び/又は面抵抗を有しないので、ロールツーロール工程を用いる過程でバリア層が損傷されるからである。
【0130】
光拡散層、基材層及びバリア層のそれぞれの特性やこれらを構成する材料などは上述した通りである。
【0131】
一つの例示で、前記方法は、基材層及び光拡散層を含み、前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)が有する表面粗さ(Rt)が0.1~6μmの範囲内である積層体を用意する第1ステップ;及び前記光拡散層が形成された基材層の一面の反対面上にバリア層のコーティング組成物を塗布した後に乾燥してバリア層を形成する第2ステップを含むことができる。このとき、バリア層は、ポリシラザン層であってもよい。
【0132】
一つの例示で、前記方法は、基材層及び光拡散層を含み、前記基材層と対向する光拡散層の一面の反対面(S)が有する表面粗さ(Rt)が0.02以上0.1μm未満であり、前記表面粗さを有する光拡散層の一面(S)の面抵抗は、1010Ω/sq以下である積層体を用意する第1ステップ;及び前記光拡散層が形成された基材層の一面の反対面上にバリア層のコーティング組成物を塗布した後に乾燥してバリア層を形成する第2ステップを含むことができる。このとき、バリア層は、ポリシラザン層であってもよい。
【0133】
一つの例示で、前記光拡散層は、湿式コーティングにより基材層の一面上に形成され得る。すなわち、上述した光拡散層のコーティング組成物を基材層の一面上に塗布した後に乾燥及び/又は硬化する方式で形成され得る。
【0134】
前記光拡散層のコーティング組成物を塗布する方法は特に制限されない。例えば、グラビアコーティング方式、キスコーティング方式、ダイコーティング方式、リップコーティング方式、コンマコーティング方式、ブレードコーティング方式、ロールツーロールコーティング方式、ナイフコーティング方式、スプレーコーティング方式、バーコーティング方式、スピンコーティング方式又はディップコーティング方式などが用いられ得るが、これに制限されるものではない。
【0135】
前記光拡散層のコーティング組成物に対する乾燥方式も特別に制限されない。例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥及びマイクロウエーブ乾燥などが用いられ得る。
【0136】
前記乾燥時の温度は、組成物内に含まれる液状(例えば、溶媒)成分の沸点と基材層の耐久性などを考慮して調節され得る。一つの例示で、前記乾燥が行われる温度は、50℃以上、60℃以上又は70℃以上、より具体的には、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上又は100℃以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下又は100℃以下であってもよい。
【0137】
乾燥時間は特に制限されず、数秒~数十分の範囲、又は数分の範囲内で行われ得る。特に制限されないが、例えば、1分以上の時間~10分以下、5分以下又は3分以下の時間の間乾燥が行われ得る。
【0138】
前記光拡散層のコーティング組成物を硬化する方法は特別に制限されない。例えば、紫外線(UV)照射などの方式を用いることができる。紫外線の波長やエネルギー量などは用いられる材料などを考慮して当業者が適切に選択することができ、特に制限されるものではない。
【0139】
上記のような方式で基材層の一面上に光拡散層が形成された積層体が用意されると、ロールツーロール(roll‐to‐roll)工程が用いられ得る。ロールツーロール工程は、複数のロールを用いて工程対象物を移送し、合着やコーティングなどを行う連続工程である。該当工程で、工程対象物は、薄いシート形状を有することができ、ロール(又はローラー)に巻き取られるかそれから巻き出される過程を経ることができる。
【0140】
以下で、巻取及び巻き出しを説明するために用いられた符号R1、R2及びR3などは、説明の便宜のためのものであって、これらは同一であるか相異なっているロールであってもよい。
【0141】
一つの例示で、前記方法は、第2ステップを行う前に、第1ステップで用意された積層体をロール(roll:R1)に巻き取るステップをさらに含むことができる。巻き取られた積層体は、前記凹凸を有する光拡散層を含むため、巻き取られた積層体が巻き出されても基材層と光拡散層の界面の剥離時に静電気が抑制され得る。また、前記範囲の表面粗さを通じてテンションが加えられる巻取状態でも基材層の損傷が最小化され得る。
【0142】
一つの例示で、前記第1ステップで用意された積層体がロール(roll:R1)に巻き取られた状態は所定時間維持され得る。大量生産が可能になるように考案されたロールツーロール工程の場合、積層体を連続的に大量生産する必要などを理由で、前記積層体は、数分、数十分、数時間又は数日の間巻き取られた状態を維持することができる。巻き取られた状態が維持される時間は特に制限されず、例えば、5分以上、10分以上、30分以上又は1時間以上であってもよく、具体的には、5時間以上、10時間以上、20時間以上、24時間以上、48時間以上であってもよい。
【0143】
一つの例示で、前記方法は、巻き取られた前記積層体を前記ロール(roll:R1)から巻き出して前記第2ステップを行うことができる。すなわち、巻き出された積層体を移送しながら、前記積層体のうち光拡散層が形成された基材層の一面の反対面上にバリア層のコーティング組成物を塗布した後に乾燥する過程が行われ得る。
【0144】
バリア層のコーティング組成物に関する乾燥は、上述した光拡散層の形成のための乾燥で説明した内容と同一である。
【0145】
一つの例示で、前記方法は、前記第2ステップで用意された光拡散性バリアフィルムをロール(roll:R2)に巻き取り、巻き取られた状態を所定時間維持するステップをさらに含むことができる。大量生産が可能になるように考案されたロールツーロール工程の場合、バリアフィルムやその構成成分を連続的に大量生産する必要などを理由で、数分、数十分、数時間又は数日の間ロールに巻き取られた状態を維持することができる。巻き取られた状態が維持される時間は特に制限されず、例えば、5分以上、10分以上、30分以上又は1時間以上であってもよく、具体的には、5時間以上、10時間以上、20時間以上、24時間以上、48時間以上であってもよい。巻取以後には、乾燥したバリア層(コーティング組成物)の硬化のための過程が行われる。
【0146】
一つの例示で、前記方法は、巻き取られた前記光拡散性バリアフィルムを前記ロール(roll:R2)から巻き出し、ポリシラザン層を硬化するステップをさらに含むことができる。前記硬化を通じてバリア層の緻密性を確保することができ、より優れたバリア特性が具現され得る。
【0147】
前記バリア層に対する硬化は、光の照射(例えば、UV光の照射)又はプラズマ処理などにより行われ得る。紫外線の照射は、上述した内容と同一の方式で行われ得る。
【0148】
一つの例示で、前記バリア層に対する硬化、すなわち、ポリシラザン層に対する硬化は、プラズマ処理により行われ得る。
【0149】
プラズマ処理は、Arのようなプラズマ生成ガスを含む雰囲気下でプラズマを発生させ、ポリシラザン層に対してプラズマ中に陽イオンを注入することで、プラズマは、例えば、外部電界や陰の高電圧パルスなどにより発生され得る。このようなプラズマ処理は、公知の装置を用いて行われ得る。
【0150】
硬化層の形成のためのプラズマ処理は、所定の処理空間内で放電ガス(Ar)及び酸素を注入しながら行われ得る。より具体的に、前記プラズマ処理は、下のような条件で行われ得る。
【0151】
一つの例示で、前記プラズマ処理は、所定の電力密度下で行われ得る。具体的に、前記プラズマの処理時の電極の単位面積当たり電力密度は、約0.05W/cm又は0.10W/cm以上であってもよい。前記電力密度は、他の例示で、約0.2W/cm以上、約0.3W/cm以上、約0.4W/cm以上、約0.5W/cm以上、約0.6W/cm以上、約0.7W/cm以上、約0.8W/cm以上又は約0.9W/cm以上であってもよい。前記電力密度を満たす範囲内で、ポジティブ電極の場合、電力密度が高いほど短い時間の間プラズマ処理程度を高めることができ、高電圧の印加によるポリシラザンの変性程度を高めることができる。ネガティブ電極の場合、過度に高い電力密度は高電圧による基材層の損傷を誘発することができるので、このような点を考慮すれば、前記電力密度の上限は、約2W/cm以下、1.5W/cm以下又は1.0W/cm以下であってもよい。
【0152】
一つの例示で、前記電力密度を有する場合、電力密度と処理時間の積で決まるプラズマ処理時の処理エネルギーは、50J/cm以下であってもよい。具体的に、前記エネルギーは、45J/cm以下、40J/cm以下、35J/cm以下、30J/cm以下、25J/cm以下又は20J/cm以下であってもよく、その下限は、5J/cm以上、10J/cm以上又は15J/cm以上であってもよい。
【0153】
一つの例示で、前記プラズマ処理は、所定の工程圧力下で行われ得る。具体的に、前記プラズマ処理時の工程圧力は、350mTorr以下であってもよい。ポジティブ電極の場合、工程圧力が低いほど平均自由行程(Mean Free Path)の確保が容易になるので、気体分子との衝突によるエネルギー損失なしにプラズマ処理が行われ得る。例えば、前記工程圧力は、340mTorr以下、330mTorr以下、320mTorr以下、310mTorr以下、300mTorr以下、290mTorr以下、280mTorr以下、270mTorr以下、260mTorr以下、250mTorr以下、240mTorr以下、230mTorr以下、220mTorr以下、210mTorr以下又は200mTorr以下であってもよい。一方、ネガティブ電極の場合、工程圧力が低いほど気体分子が少ないので、プラズマを発生させるために高い電圧と電力が必要であるが、高電圧と高電力は基材層の損傷をもたらすので、例えば、前記工程圧力の下限は、50mTorr以上、60mTorr以上、70mTorr以上、80mTorr以上、90mTorr以上、100mTorr以上、110mTorr以上、120mTorr以上、130mTorr以上、140mTorr以上、150mTorr以上、160mTorr以上、170mTorr以上、180mTorr以上又は190mTorr以上であってもよい。前記圧力は、工程開始時の圧力であってもよく、工程中にも前記範囲内に圧力が維持され得る。
【0154】
放電ガス(Ar)及び酸素を工程ガスで用いる場合、処理空間内の酸素の蒸気圧は、20~80%の範囲であってもよい。前記酸素蒸気圧は、処理空間内に注入されるガスの全体流量に対する注入される酸素の注入流量の百分率を意味する。例えば、Ar及びOをそれぞれA sccm及びB sccmの流量で注入しながら前記プラズマ処理を行う場合に、酸素の蒸気圧は、100×B/(A+B)で計算され得る。
【0155】
前記プラズマ処理時間は、フィルムの遮断特性に障害にならないレベルで適切に調節され得る。例えば、約10秒~10分程度の時間の間プラズマ処理が行われ得る。
【0156】
また、上述したように、前記光拡散性バリアフィルムは、ハードコーティング層をさらに含むことができる。前記光拡散層のコーティング組成物に対する塗布、乾燥及び/又は乾燥は、ハードコーティング層の形成に対しても同一に適用され得る。
【0157】
一つの例示で、前記ハードコーティング層は、光拡散層に対するコーティングと同時又は異時に行われ得る。
【0158】
また一つの例示で、前記方法は、第2ステップを行う前に、第1ステップで用意された積層体をロール(R1’)に巻き取るステップ;前記ロール(R1’)から積層体を巻き出しながらハードコーティング層を形成して第2積層体を用意するステップをさらに含むことができる。その後、前記方法は、ハードコーティング層が形成された第2積層体をロール(R1”)に巻き取るステップを経て、前記ロール(R1”)から積層体を巻き出しながら第2ステップを実行する方式で行われ得る。
【0159】
また、上述したように、前記光拡散性バリアフィルムが複数のサブバリア層を含むことができる。例えば、前記光拡散性バリアフィルムは、第1サブバリア層と第2サブバリア層が順に積層された構造を有することができる。このとき、第1サブバリア層は、第2サブバリア層より基材層により近く位置する(図2又は図4参照)。この場合、上述したように、第1サブバリア層に対する硬化が行われた後に得られた光拡散性バリアフィルム(F’)のうち第1サブバリア層の外側面に第2サブバリア層のコーティング組成物を塗布乾燥するステップ、及びこれを硬化するステップが追加で行われ得る。第2サブバリア層の形成は、ロールツーロール方式で行われ得る。上述したように、前記バリアフィルム(F’)は、光拡散層、基材層及び第1サブバリア層を順に含んでもよく、または光拡散層、基材層、ハードコーティング層及び第1サブバリア層を順に含んでいてもよい。
【0160】
一つの例示で、前記バリアフィルム(F’)は、第2サブバリア層のコーティング組成物に対する塗布以前に、ロール(roll:R3)に巻き取られ得る。そして、前記ロール(roll:R3)から巻き出された前記バリアフィルム(F’)上に第2サブバリア層のコーティング組成物に対する塗布、乾燥及び硬化が行われ得る。その結果、少なくとも光拡散層、基材層、第1サブバリア層及び第2サブバリア層を順に含む光拡散性バリアフィルム(F”)が製造され得る。上述したように、バリアフィルム(F”)は、基材層と第1サブバリア層の間にハードコーティング層をさらに含んでもよく、関連された工程は上述した通りである。
【発明の効果】
【0161】
本出願の一例によると、ロールツーロール工程中にバリアフィルムの損傷を防止することができるので、気体や水分に対する遮断特性に優れた光拡散性バリアフィルムが提供され得る。また、本出願の一例によると、フィルムの製造工程が簡単になり、フィルムの薄型化及び大面積化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1】本出願に関する具体例による光拡散性バリアフィルムの構造を概略的に示した図である。
図2】本出願に関する具体例による光拡散性バリアフィルムの構造を概略的に示した図である。
図3】本出願に関する具体例による光拡散性バリアフィルムの構造を概略的に示した図である。
図4】本出願に関する具体例による光拡散性バリアフィルムの構造を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0163】
以下、実施例を通じて本出願を詳しく説明する。しかし、本出願の保護範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0164】
<測定方法>
下記実施例及び比較例のフィルムに対して比較された各物性は下記のように測定した。
【0165】
表面粗さの測定方法
光拡散層の表面の表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡,atomic force microscope)機器、例えば、Park Science社のXE7機器を用いてNon‐contact(vibrating)(非接触振動)方式で測定した。
【0166】
面抵抗の測定方法
製造された光拡散性バリアフィルムを幅が10cm、長さが10cmになるように裁断して試片を製造した。引き続き、面抵抗測定器(ハイレスタ-UP MCP‐HT450、Mitsubishi化学社)を用い、測定器の電極を2kgfの圧力で押した後、印加電圧500Vで面抵抗を測定した。それぞれ試片の幅方向の3個地点を10秒間測定して平均値を取った。
【0167】
水分透過度の測定方法
(1)水分透過度(10-3g/mday)
実施例及び比較例で最終製造された光拡散性バリアフィルムの水分透過度であって、38℃及び100%の相対湿度下でAQUATRAN 2(MOCON社)を用いて測定した。
【0168】
(2)水分透過度の変化率(%)
下記数式によって計算した。
【0169】
[数式]
水分透過度の変化率(%)={(B-A)/A}×100
【0170】
前記数式で、Aは、各実施例及び比較例でブロッキング過程(下記実施例1で4)項目参照)を省略して最終製造された光拡散性バリアフィルムの水分透過度(表1及び2で、ブロッキング未実行時の水分透過度)であり、Bは、各実施例及び比較例によって最終製造された光拡散性バリアフィルムの水分透過度(表1及び2で、ブロッキング実行時の水分透過度)である。各水分透過度(A、B)は、38℃及び100%の相対湿度条件でAQUATRAN 2(MOCON社)を用いて測定されたものである。
【0171】
ヘイズ及び光透過度の測定方法
製造された光拡散性バリアフィルムのヘイズ及び光透過度は、ヘイズメーター(hm‐150、Murakami color research laboratory社)を用いて測定した。
【0172】
<実施例及び比較例>
実施例1
1)基材層上に光拡散層形成
溶媒に対して光硬化性樹脂を20重量部で含む光拡散層のコーティング組成物を製造した。具体的に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)80重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20重量部を溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に溶解させた。前記溶液に重合開始剤(Irgacure 127、Ciba社)を4重量部、帯電防止剤(ELEC ME‐2、Kao社)5重量部、平均粒径0.8μmの粒子(MX80、Soken社)を10重量部で添加して光拡散層の組成物を調剤した。
【0173】
50μmの厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(T600E50、Mitsubishi社)の一面にバーコート(#5 bar使用)方式で塗布した。その後、得られた塗膜を100℃で2分間加熱乾燥させた後、UV光の照射ラインを用いた真空UV光を照射し、下記表に記載した表面粗さ(Rt)を有する光拡散層を形成した。
【0174】
2)ハードコーティング層の形成
光拡散層が形成された基材フィルムの反対面にペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)80重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20重量部を溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に溶解させた。前記溶液に重合開始剤(Irgacure 127、Ciba社)を4重量部で添加してハードコーティング組成物を調剤した。バーコート方式で前記基材フィルムの光拡散層が形成されない面に塗膜を形成した後に100℃で2分間加熱乾燥させた後、UV光の照射を実施して厚さ1μmのハードコーティング層を形成した。
【0175】
3)バリア層の形成
ポリシラザン(商品名NL120)をジブチルエーテルに溶解させた後、前記溶液をバーコート法により前記ハードコーティング層の基材フィルムが形成されない面に塗布した。得られた塗膜を70℃で1分間、130℃で2分間加熱乾燥し、厚さ150nmのバリア層を形成した(未硬化バリア層形成)。
【0176】
4)ブロッキング(blocking)の実行
上述した1)~3)の過程を経て形成された「光拡散層/基材層/ハードコーティング層/バリア層」の積層構造を有するフィルムを第1フィルム(F)と称する。また、前記第1フィルム(F)の製造と同一の過程を経て第2フィルム(F)を追加製造した。第1フィルム(F)のバリア層の表面上に第2バリアフィルム(F)の光拡散層の凹凸表面が接触するように18kgの荷重を加えて第1及び第2フィルム(F、F)を重ねて、前記荷重を24時間の間維持した。このとき、前記第1及び第2フィルム(F、F)は、シート形状であり、接触する面積のサイズが10cm×10cmである。該当過程は、ロールツーロール過程で光拡散性バリアフィルムが巻き取られたときの過程と同様である。
【0177】
5)バリア層(第1バリア層)の硬化
第1フィルム(F)に対してプラズマ処理を行ってバリア層を硬化させた。前記プラズマ処理は、約Ar:O=1:1の流量(sccm基準)、約138mTorrの圧力、約0.27W/cmの電力及び約20J/cmのエネルギー条件下で行った。バリア層の硬化を最終に実施例1の光拡散性バリアフィルムを製造した。
【0178】
実施例2
光拡散層の組成物をコーティングするときにコーティングバーを異に用いたこと以外(#4 bar使用)は、実施例1と同一の方法で実施例2の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0179】
実施例3
帯電防止剤を使わないことと光拡散層の組成物をコーティングするときにコーティングバーを異に用いたこと以外(#3 bar使用)は、実施例1と同一の方法で実施例3の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0180】
実施例4
光拡散層の組成物で帯電防止剤を使わないことと実施例1で用いられた粒子の代わりに平均粒径が5μmである粒子(GB05S、Aica Kogyo社)を用いたこと以外(#5 barでコーティング)は、実施例1と同一の方法で実施例4の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0181】
実施例5
光拡散層の組成物をコーティングするときにコーティングバーを異に用いたこと以外(#4 bar使用)は、実施例4と同一の方法で実施例5の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0182】
実施例6
光拡散層の組成物をコーティングするときにコーティングバーを異に用いたこと以外(#3 barでコーティング)は、実施例4と同一の方法で実施例6の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0183】
実施例7
3)過程で加熱乾燥したバリア層の厚さを150nmの代わりに80nmにしたこと以外は、実施例6と同一の方法で実施例7の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0184】
実施例8
実施例3で製造された光拡散性バリアフィルムの硬化されたバリア層(第1バリア層)上に、実施例1で説明された3)過程と同一にポリシラザン組成物をコーティング乾燥した。その後、実施例1で説明された4)過程と5)過程を経て第1バリア層(硬化)と硬化された第2バリア層(硬化)(厚さ150nm)を含む実施例8の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0185】
比較例1
実施例1で用いられた粒子の代わりに平均粒径が20μmである粒子(MX‐2000、Soken社)を用いたこと、溶媒に対して光硬化性樹脂を50重量部で含む光拡散層のコーティング組成物を用いたこと、帯電防止剤を使わないこと、及び光拡散層の組成物コーティング時にナイフコーティングを用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で比較例1の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0186】
比較例2
光拡散層のコーティング組成物で帯電防止剤を使わないこと以外は、実施例1と同一の方法で比較例2の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0187】
比較例3
光拡散層のコーティング組成物で帯電防止剤を使わないこと以外は、実施例2と同一の方法で比較例3の光拡散性バリアフィルムを製造した。光拡散層の表面粗さ(Rt)値は、下記表の通りである。
【0188】
比較例4
3)過程で加熱乾燥されたバリア層の厚さを150nmの代わりに80nmにしたこと以外は、比較例1と同一の方法で比較例4の光拡散性バリアフィルムを製造した。
【0189】
【表1】
【0190】
実施例3~6を見ると、光拡散層の形成時に帯電防止剤が使われないので、面抵抗が大きいことが分かる。しかし、水分透過度の変化率を見ると、これら実施例ではバリア層の損傷が少ないことが分かる。これは、光拡散層の表面粗さが十分であるので、界面剥離時の静電気発生による損傷が回避されるからである。比較例1は、表面凹凸が過度に大きいので、凹凸によりバリア層が損傷されて水分透過度の変化率が大きい。
【0191】
一方、実施例1~2と比較例2~3を比較すると、光拡散層の表面粗さが存在してもそれが0.1μm以下である場合には表面凹凸でも光拡散層とバリア層の界面密着程度を減少させることに限界があり、したがって、光拡散層の面抵抗を所定範囲で調節する必要があることが分かる。
【0192】
【表2】
【0193】
前記表2から、比較例4は、「水分透過度(ブロッキング実行時)」と「水分透過度の変化率(%)」が高いことが確認される。特に、水分透過度の変化率は、実施例の水分透過度の変化率に比べて非常に高い。これは、光拡散層の表面粗さ(Rt)が過度に大きい場合、巻き取られた状態で前記光拡散層が有する凹凸によりバリア層が損傷されることを意味する。すなわち、実施例7と比較例4の結果は、フィルムの水分透過度に最大の影響を及ぼすバリア層の厚さが同一な場合であってもロールツーロール工程でのバリア層の損傷防止が重要であることを示唆する。
【0194】
【表3】
【0195】
前記表3は、ブロッキングの有無と関係なく、バリア層が複数個含まれる(すなわち、サブバリア層2以上含み)ほど水分透過度が低くなることを示す。具体的に、第1バリア層にブロッキングが行われた後、その上に第2バリア層が追加で形成されても、本出願の実施例による場合には優れた水分遮断性(低い水分透過度)が確保されることを確認することができる。
【符号の説明】
【0196】
10:バリア層
11:第2サブバリア層
12:第1サブバリア層
20:基材層
30:光拡散層
40:ハードコーティング層
図1
図2
図3
図4