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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】LEDディスプレイパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20241105BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20241105BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241105BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20241105BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20241105BHJP
【FI】
G09F9/00 338
B23K26/57
G09F9/30 349Z
G09F9/33
H01L33/00 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021069659
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164272
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】陳 之文
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンソク
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194718(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0104674(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0243478(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111477650(CN,A)
【文献】米国特許第10818643(US,B1)
【文献】特開2009-291818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K26/00-26/70
G09F9/00-9/46
H01L33/00
33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを駆動させるための回路を有する回路基板に所定の配置で該複数のLEDを設けることでLEDディスプレイパネルを製造するLEDディスプレイパネルの製造方法であって、
基板の表面に設定された複数の素子分離ラインによって区画された複数の領域のそれぞれに、バッファー層を介して設けられたLEDと、該LEDの該バッファー層とは反対側に設けられた電極層と、が設けられたLEDウェーハを第1の保持ユニットで保持するLEDウェーハ保持工程と、
表面に行列状に設けられた複数の電極を有する該回路基板を、第2の保持ユニットで保持する回路基板保持工程と、
該回路基板の該表面と、該LEDウェーハの該表面とを互いに対面させて、該回路基板の電極を該LEDウェーハの該電極層に対応する位置に配置する位置付け工程と、
該回路基板及び該LEDウェーハの一方の裏面に吸収される波長を有するレーザービームを該位置付け工程で対面した該回路基板及び該LEDウェーハの該一方の裏面の一部に局所的に照射し、該回路基板及び該LEDウェーハの該基板の一方に局所的に生じる吸収熱を利用して、該レーザービームの被照射範囲内における該LEDウェーハの該電極層と該回路基板の該電極との少なくとも一方を加熱することにより、該電極層と該電極とを連結する電極連結工程と、
該LEDウェーハの該基板を透過する波長を有するパルス状のレーザービームを、該位置付け工程により該回路基板に対面した該LEDウェーハの裏面を介して該LEDウェーハの該バッファー層に照射して該バッファー層を破壊するバッファー層破壊工程と、
該バッファー層破壊工程の後、該基板を該LEDから剥離する剥離工程と、
を備えることを特徴とするLEDディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
該電極連結工程では、空間光変調器を用いて、該レーザービームの被照射範囲内で、該レーザービームのパワー密度分布を変更することで、複数の電極層及び複数の電極の少なくとも一方を同時に加熱することを特徴とする請求項1に記載のLEDディスプレイパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のLEDを駆動させるための回路を有する回路基板に所定の配置で複数のLEDを設けることでLEDディスプレイパネルを製造するLEDディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハに吸収される波長を有するレーザービームをウェーハに照射して、ウェーハを複数のチップに分割する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、LED(Light Emitting Diode)を製造する場合、結晶性の基板と、基板上に形成されたバッファー層と、バッファー層上に形成されたエピタキシャル成長層と、を有するウェーハを、レーザービームにより複数のLEDに分割する。
【0003】
結晶性の基板としては、例えば、サファイア基板又はSiC(炭化ケイ素)基板が使用される。エピタキシャル成長層は、N型半導体層、発光層、及び、P型半導体層を含む。N型半導体層にはカソード電極層が形成され、P型半導体層にはアノード電極層が形成される。
【0004】
エピタキシャル成長層には、複数の分割予定ラインが格子状に設定されている。各分割予定ラインに沿ってエピタキシャル成長層を切断すると、エピタキシャル成長層及び電極層を各々有する、複数のLEDが製造される。
【0005】
複数のLEDは、例えば、それぞれ赤色で発光する赤色LEDである。また、他の1つのウェーハには、それぞれ青色で発光する複数の青色LEDが形成される。更に他の1つのウェーハには、それぞれ緑色で発光する複数の緑色LEDが形成される。
【0006】
各LEDは、例えば、平面視で10μm四方の大きさを有する矩形状のマイクロLEDであり、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の画素として、マイクロLEDディスプレイ等の表示装置に用いられるディスプレイパネルに組み込まれる。
【0007】
ディスプレイパネルを製造する場合には、ガラス等で形成された回路基板に各LEDを電気的に接続した状態で固定する必要がある。このために、まず、LEDの電極層と、回路基板の電極とを、接触させた状態で、回路基板を透過する波長を有するレーザービームを、回路基板を介して順次照射する。
【0008】
レーザービームの照射により、回路基板の電極を一時的に溶融させた後、固化させることで、回路基板の電極と、LEDの電極層とが、電気的に接続される(電極連結工程)。電極連結工程の後、基板からLEDを分離するために、バッファー層を破壊するバッファー層破壊工程が行われる。
【0009】
バッファー層破壊工程では、ウェーハを透過する波長を有するレーザービームを、ウェーハを介してバッファー層に照射することでバッファー層を破壊して、その後、ウェーハを持ち上げることで、ウェーハを回路基板から剥離する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平10-305420号公報
【文献】特開2018-194718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、電極連結工程において、回路基板を透過する波長を有するレーザービームを使用する場合、レーザービームに対する吸収率が高い金属配線等をレーザービームの通過経路に配置できないので、回路基板の設計の自由度が低いという問題がある。本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、回路基板の設計の自由度を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、複数のLEDを駆動させるための回路を有する回路基板に所定の配置で該複数のLEDを設けることでLEDディスプレイパネルを製造するLEDディスプレイパネルの製造方法であって、基板の表面に設定された複数の素子分離ラインによって区画された複数の領域のそれぞれに、バッファー層を介して設けられたLEDと、該LEDの該バッファー層とは反対側に設けられた電極層と、が設けられたLEDウェーハを第1の保持ユニットで保持するLEDウェーハ保持工程と、表面に行列状に設けられた複数の電極を有する該回路基板を、第2の保持ユニットで保持する回路基板保持工程と、該回路基板の該表面と、該LEDウェーハの該表面とを互いに対面させて、該回路基板の電極を該LEDウェーハの該電極層に対応する位置に配置する位置付け工程と、該回路基板及び該LEDウェーハの一方の裏面に吸収される波長を有するレーザービームを該位置付け工程で対面した該回路基板及び該LEDウェーハの該一方の裏面の一部に局所的に照射し、該回路基板及び該LEDウェーハの該基板の一方に局所的に生じる吸収熱を利用して、該レーザービームの被照射範囲内における該LEDウェーハの該電極層と該回路基板の該電極との少なくとも一方を加熱することにより、該電極層と該電極とを連結する電極連結工程と、該LEDウェーハの該基板を透過する波長を有するパルス状のレーザービームを、該位置付け工程により該回路基板に対面した該LEDウェーハの裏面を介して該LEDウェーハの該バッファー層に照射して該バッファー層を破壊するバッファー層破壊工程と、該バッファー層破壊工程の後、該基板を該LEDから剥離する剥離工程と、を備えるLEDディスプレイパネルの製造方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該電極連結工程では、空間光変調器を用いて、該レーザービームの被照射範囲内で該レーザービームのパワー密度分布を変更することで、複数の電極層及び複数の電極の少なくとも一方を同時に加熱する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るLEDディスプレイパネルの製造方法は、回路基板及びLEDウェーハの一方の裏面に吸収される波長を有するパルス状のレーザービームを一方の裏面に照射して、レーザービームの被照射範囲内におけるLEDウェーハの電極層と回路基板の電極との少なくとも一方を加熱することにより、電極層と電極とを連結する電極連結工程を有する。
【0015】
それゆえ、レーザービームに対する吸収率が高い金属配線等を回路基板に配置しても、電極等を適切に加熱できる。従って、回路基板を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程を行う場合に比べて、回路基板の設計の自由度を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】レーザー加工装置の斜視図である。
図2】LEDディスプレイパネルの製造方法のフロー図である。
図3図3(A)は赤色LEDウェーハの斜視図であり、図3(B)は図3(A)のA-A断面図である。
図4図4(A)はLEDウェーハ保持工程を示す図であり、図4(B)は保持リングの反転及び移動を示す図である。
図5】回路基板保持工程を示す図である。
図6】位置付け工程を示す斜視図である。
図7図7(A)は位置付け工程を示す赤色LEDウェーハ及び回路基板の部分断面図であり、図7(B)は位置付け工程後の赤色LEDウェーハ及び回路基板の部分断面図である。
図8図8(A)は電極連結工程を示す図であり、図8(B)はバッファー層破壊工程を示す図である。
図9】剥離工程を示す図である。
図10】回路基板に固定された赤色LEDを示す図である。
図11】回路基板に固定された赤色LED、緑色LED及び青色LEDを示す図である。
図12図12(A)は第2の実施形態の電極連結工程及びバッファー層破壊工程における第1工程を示す図であり、図12(B)は第2の実施形態の電極連結工程及びバッファー層破壊工程における第2工程を示す図である。
図13図13(A)は第3の実施形態の電極連結工程及びバッファー層破壊工程における第1工程を示す図であり、図13(B)は第3の実施形態の電極連結工程及びバッファー層破壊工程における第2工程を示す図である。
図14図14(A)は第4の実施形態の電極連結工程及びバッファー層破壊工程における第1工程を示す図であり、図14(B)は第4の実施形態の電極連結工程及びバッファー層破壊工程における第2工程を示す図である。
図15】第5の実施形態に係るレーザービーム照射ユニットを示す斜視図である。
図16図16(A)は第5の実施形態の電極連結工程を示す図であり、図16(B)は第5の実施形態のバッファー層破壊工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、LEDディスプレイパネル27(図11参照)の製造方法で使用するレーザー加工装置2について説明する。図1は、レーザー加工装置2の斜視図である。
【0018】
図1に示すX軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交する。X-Y平面は、例えば、水平面に対応し、Z軸方向は鉛直方向に対応する。レーザー加工装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。
【0019】
基台4の上面には、X軸方向に沿う一対のガイドレール6が固定されている。一対のガイドレール6上には、X軸移動プレート8が、スライド可能に取り付けられている。X軸移動プレート8の下面にはナット部(不図示)が設けられている。
【0020】
ナット部には、X軸方向に沿って配置されたボールねじ10が回転可能に連結されている。ボールねじ10の一端部には、パルスモーター12が連結されている。パルスモーター12を動作させると、X軸移動プレート8はX軸方向に移動する。
【0021】
一対のガイドレール6、X軸移動プレート8、ボールねじ10及びパルスモーター12は、X軸方向移動ユニット14を構成する。X軸移動プレート8の上面には、Y軸方向に沿う一対のガイドレール16が固定されている。
【0022】
一対のガイドレール16上には、Y軸移動プレート18がスライド可能に取り付けられている。Y軸移動プレート18の下面にはナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Y軸方向に沿って配置されたボールねじ20が回転可能に連結されている。
【0023】
ボールねじ20の一端部には、パルスモーター22が連結されている。パルスモーター22を動作させると、Y軸移動プレート18はY軸方向に移動する。一対のガイドレール16、Y軸移動プレート18、ボールねじ20及びパルスモーター22は、Y軸方向移動ユニット24を構成する。
【0024】
Y軸移動プレート18の上面には、円柱状の支柱26が設けられている。支柱26の内部には、レーザー発振器28a(図15参照)等を有するレーザービーム照射ユニット28が設けられている。
【0025】
図15に示す様に、レーザー発振器28aから出射されたレーザービームLは、ガルバノスキャナーを構成するYスキャンミラー28b及びXスキャンミラー28cにより反射される。
【0026】
反射されたレーザービームLは、fθレンズを有する集光器(不図示)により、所定の平面内で集光する様に、上方に照射される。レーザービームLは、後述する回路基板11に吸収される波長を有する。
【0027】
本実施形態のレーザービームLは、パルス波ではなく、連続波(Continuous Wave)であり、後述する電極連結工程S40においてレーザーアシストボンディング(Laser Assisted Bonding:LAB)に利用される。
【0028】
図1に戻り、支柱26の上部には、上面視で矩形状の保持テーブル30が設けられており、保持テーブル30の中央部には、回路基板11を吸引保持する矩形状の基板保持フレーム(第2の保持ユニット)32が設けられている。
【0029】
保持テーブル30は、支柱26内部に配置された回転駆動源(不図示)からの動力により、Z軸方向に略平行な回転軸の周りに回転できる。当該回転により、水平面内における基板保持フレーム32の向きが調整される。
【0030】
図5に拡大して示す様に、基板保持フレーム32は、矩形状の開口32aを有する。開口32aの縁部には、段差部32bが形成されている。段差部32bの上面には、複数の吸引口32cが所定の間隔で形成されている。
【0031】
各吸引口32cには、所定の流路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。段差部32bに回路基板11を配置した状態で、吸引源で発生された負圧が各吸引口32cに伝達されると、回路基板11は基板保持フレーム32で吸引保持される。
【0032】
引き続き図5を参照し、回路基板11について説明する。回路基板11は、後述する複数のLEDを駆動させるための回路を有する。回路基板11は、ベース基板を有する。
【0033】
ベース基板の一面側(即ち、回路基板11の表面11a側)には、各々金属で形成された複数の導電層と、導電層間に形成された絶縁層とを、含む機能層が形成されている。この機能層には、回路(不図示)が形成されている。
【0034】
例えば、ベース基板が透明なガラス基板である場合、ガラス基板の一面側には、TFT(Thin Film Transistor)を含む機能層が形成される。これに代えて、ベース基板がシリコン基板である場合、シリコン基板の一面側には、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を含む機能層が形成される。
【0035】
回路基板11には、TFTやMOSFETに駆動信号を供給するための複数の配線が回路基板11の周辺部まで延伸する態様で形成されている。複数の配線には、駆動回路(即ち、ドライバ回路)が電気的に接続される。
【0036】
駆動回路は、例えば、回路基板11とは異なる基板に形成されており、回路基板11に外付けされる。しかし、駆動回路は、回路基板11の外周部において回路基板11と一体的に形成されてもよい。機能層の最表面には、電極ユニット11cが露出している。
【0037】
電極ユニット11cは、それぞれ露出する電極11c、11cを含む。電極11c、11cは、例えば、銅(Cu)バンプ又はソルダーバンプである。例えば、電極11cは、LEDのアノード電極と電気的に接続し、電極11cは、LEDのカソード電極層と電気的に接続する。
【0038】
電極ユニット11cは、表面11a上において、行列状に配置されている。図5では、表面11aの短辺方向を行方向Aとし、表面11aの長辺方向を列方向Aとする。但し、短辺方向を列方向とし、長辺方向を行列方としてもよい。
【0039】
上述のレーザービームLの波長は、回路基板11のベース基板に吸収される所定値に設定される。例えば、ベース基板がガラス又はサファイアで形成されている場合、レーザービームLの波長は、100nm以下の所定値に設定される。
【0040】
また、ベース基板が単結晶シリコンで形成されている場合、レーザービームLの波長は、400nm以上、且つ、1100nm以下の所定値に設定される。なお、本実施形態の回路基板11のベース基板は、単結晶シリコンで形成されている。
【0041】
これに対して、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームを用いて、回路基板11の裏面11bから回路基板11を透過し、表面11a側に位置する電極11c、11cへ、レーザービームを照射する場合、レーザービームの通過経路に、レーザービームに対する吸収率が高い金属配線等を配置できない。
【0042】
しかし、本実施形態では、回路基板11に吸収される波長を有するレーザービームLを用いるので、電極11c、11cを加熱する際に、回路基板11に設けられる金属配線等の制約が緩和される。それゆえ、回路基板11の設計の自由度を高くできる。
【0043】
なお、回路基板11の表面11aの外周部には、アライメントマーク11dが形成されている(図7(A))。アライメントマーク11dは、所定の形状を有する凸状のパターンであるが、凹状のパターンであってもよい。
【0044】
ここで、図1に戻り、レーザー加工装置2の他の要素について説明する。基台4の上面には、角柱状の柱部34が固定されている。柱部34の上端部には、梁部36の一端部が固定されている。柱部34又は梁部36には、レーザー発振器(不図示)が設けられている。
【0045】
レーザー発振器から出射されたレーザービームL図8(B)参照)は、ガルバノスキャナー(不図示)により反射されて、梁部36の他端部の下面側に設けられた集光器38に入射する。集光器38は、fθレンズを含み、レーザービームLを所定の平面内に集光させる。
【0046】
集光器38は、レーザー発振器及びガルバノスキャナーと共に、レーザービーム照射ユニット40を構成する。集光器38から下方に向けて照射されるレーザービームLは、後述する赤色LEDウェーハ13の単結晶基板15(図3(A)参照)を透過する波長を有する。
【0047】
レーザービームLは、連続波ではなくパルス波であり、後述するバッファー層破壊工程S50においてレーザーリフトオフ(Laser Lift Off:LLO)に利用される(図8(B)参照)。ここで、図3(A)、図3(B)を参照し、赤色LEDウェーハ13について説明する。
【0048】
図3(A)は、赤色LEDウェーハ13の斜視図であり、図3(B)は、図3(A)のA-A断面図である。赤色LEDウェーハ13は、サファイア又はSiCで形成された略円板状の単結晶基板15を有する。
【0049】
単結晶基板15の表面15a上には、GaN(窒化ガリウム)等のGa化合物で形成されたバッファー層19が形成されており、バッファー層19上には、エピタキシャル成長層17aが形成されている。バッファー層19は、単結晶基板15と、エピタキシャル成長層17aとの格子不整合を緩和する機能を有する。
【0050】
エピタキシャル成長層17aは、化合物半導体で形成されており、バッファー層19を介して表面15a上に順次形成されるN型半導体層、発光層、及び、P型半導体層を含む。発光層は、例えば、Eu含有GaNを有するが、発光層の材料はこれに限定されるものではなく他の適切な材料が選択されてもよい。
【0051】
エピタキシャル成長層17aに対してバッファー層19とは反対側には、P型半導体層に接するアノード電極層17bが、設けられている。また、アノード電極層17bに対して紙面奥行方向には、N型半導体層に接するカソード電極層(不図示)が、設けられている。
【0052】
バッファー層19及びエピタキシャル成長層17aは、表面15aに格子状に設定された複数の素子分離ライン21に沿って切断されている。この素子分離ライン21に沿った切断は、例えば、反応性ガスを用いたドライエッチングにより行われる。
【0053】
この様にして、複数の素子分離ライン21によって区画された複数の領域の各々に、赤色LED17が形成される。複数の赤色LED17の各々は、順方向電圧が印加された場合に赤色の光を発する。
【0054】
単結晶基板15の裏面15bは、赤色LEDウェーハ13の裏面に対応する。単結晶基板15の外周部には、図3(A)に示す様に、結晶方位を示すオリエンテーションフラット15cが形成されている。
【0055】
また、表面15aの外周部には、図3(B)に示す様に、それぞれ金属で形成された複数のアライメントマーク15dが設けられている。アライメントマーク15dは、回路基板11に対する赤色LEDウェーハ13の位置合わせに利用される。
【0056】
次に、図4(A)及び図4(B)を参照して、赤色LEDウェーハ13を吸引保持するウェーハ保持ユニット42について更に説明する。集光器38の下方には、ウェーハ保持ユニット(第1の保持ユニット)42が設けられている。
【0057】
ウェーハ保持ユニット42は、円形の保持リング44を有する。保持リング44には、開口44aが形成されており、開口44aの縁部には、段差部44bが形成されている。
【0058】
段差部44bの上面には、開口44aの縁部に沿って、複数の吸引口44cが所定の間隔で形成されている。各吸引口44cには、所定の流路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0059】
開口44aには、赤色LEDウェーハ13を所定の向きに位置付けるための位置合わせ部44dが形成されてる。位置合わせ部44dは、赤色LEDウェーハ13のオリエンテーションフラット15cに対応する直線状領域である。
【0060】
保持リング44には、アーム46の一端部が連結されている。アーム46の他端部は、ハウジング48に収容されている。ハウジング48には、アーム46をX-Y平面に略平行な所定の回転軸の周りで回転させる回転機構(不図示)が設けられている。
【0061】
また、ハウジング48には、アーム46をZ軸方向に沿って移動させるための移動機構(不図示)も設けられている。図4(B)は、保持リング44の反転及び移動を示す図である。ここで再び、図1に戻り、レーザー加工装置2の他の要素について説明する。
【0062】
集光器38の近傍、且つ、ウェーハ保持ユニット42の上方には、ウェーハ保持ユニット42で吸引保持される赤色LEDウェーハ13のアライメント(位置検出)等に用いられる第1のカメラユニット(不図示)が設けられている。第1のカメラユニットは、所定の光学系と、撮像素子とを、有する。
【0063】
また、ウェーハ保持ユニット42に対してX軸方向の一方側には、撮像ユニット50が設けられている。撮像ユニット50は、所定の光学系と、撮像素子とを、有する第2のカメラユニットである。
【0064】
撮像ユニット50は、例えば、基板保持フレーム32で吸引保持された回路基板11を撮像する。撮像された画像は、赤色LEDウェーハ13に対する回路基板11のアライメント(位置検出)等に使用される。
【0065】
レーザー加工装置2は、各構成要素の動作を制御する制御ユニット52を有する。制御ユニット52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0066】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット52の機能が実現される。
【0067】
次に、図2から図11を参照し、LEDディスプレイパネル27(図11参照)の製造方法について説明する。LEDディスプレイパネル27は、回路基板11に所定の配置で複数のLEDを設けることで製造される。図2は、LEDディスプレイパネル27の製造方法のフロー図である。
【0068】
本実施形態では、まず、ウェーハ搬送ユニット(不図示)を用いて、上方に向けられた段差部44b上に赤色LEDウェーハ13を配置する。このとき、単結晶基板15の裏面15bの外周部が段差部44bに接し、位置合わせ部44dにより、ウェーハ保持ユニット42に対する赤色LEDウェーハ13の向きが一意的に定められる。
【0069】
次いで、各吸引口44cに負圧を伝達させ、赤色LEDウェーハ13をウェーハ保持ユニット42で吸引保持する(LEDウェーハ保持工程S10)。図4(A)は、LEDウェーハ保持工程S10を示す図である。
【0070】
LEDウェーハ保持工程S10の後、段差部32b上に、基板搬送ユニット(不図示)を用いて回路基板11を配置する。このとき、回路基板11の裏面11bの外周部が段差部32bに接する。そして、各吸引口32cに負圧を伝達させ、回路基板11を基板保持フレーム32で吸引保持する(回路基板保持工程S20)。
【0071】
図5は、回路基板保持工程S20を示す図である。なお、LEDウェーハ保持工程S10及び回路基板保持工程S20の順序は上述の例に限定されない。回路基板保持工程S20の後に、LEDウェーハ保持工程S10を行ってもよい。
【0072】
LEDウェーハ保持工程S10及び回路基板保持工程S20の後、撮像ユニット50で回路基板11のアライメントマーク11d(図7(A)参照)を撮像することにより、アライメントを行う。
【0073】
その後、X軸方向移動ユニット14を動作させて回路基板11を集光器38の直下に配置すると共に、適宜、Y軸方向移動ユニット24及び回転駆動源(不図示)を動作させて、集光器38に対する回路基板11の位置及び向きを調整する。
【0074】
次いで、図6に示す様に、赤色LEDウェーハ13を吸引保持したウェーハ保持ユニット42を上下反転させて、回路基板11の表面11aと、赤色LEDウェーハ13の単結晶基板15の表面15aと、を互いに対面させる。
【0075】
その後、単結晶基板15を介してアライメントマーク15dを第1のカメラユニット(不図示)で撮像することにより、回路基板11に対する赤色LEDウェーハ13のアライメントを行う。
【0076】
本実施形態では、上述の様に、回路基板11と、赤色LEDウェーハ13と、を個別に撮像するので、回路基板11及び赤色LEDウェーハ13を同時に撮像する場合に比べて、第1のカメラユニットと、第2のカメラユニット(撮像ユニット50)との各々の被写界深度を比較的浅くできる。
【0077】
アライメント後、回転駆動源を動作させて、回路基板11及び赤色LEDウェーハ13の相対的な位置及び向きを適宜調整する。これにより、電極11cは、アノード電極層17bに対応する位置に配置され、電極11cは、カソード電極層(不図示)に対応する位置に配置される。
【0078】
この状態で、電極11cがアノード電極層17bに接し、電極11cがカソード電極層に接するまで、赤色LEDウェーハ13を下方へ降下させる(位置付け工程S30)。図6は、位置付け工程S30を示す斜視図である。
【0079】
図7(A)は、位置付け工程S30を示す赤色LEDウェーハ13及び回路基板11の部分断面図であり、図7(B)は、位置付け工程S30後の赤色LEDウェーハ13及び回路基板11の部分断面図である。
【0080】
位置付け工程S30の後、レーザービームLを裏面11bに照射して、電極11c、11cを選択的に加熱する(図8(A)参照)。これにより、1つの電極11c及び1つのアノード電極層17bを電気的に連結し、1つの電極11c及び1つのカソード電極層を電気的に連結する(電極連結工程S40)。
【0081】
図8(A)は、電極連結工程S40を示す図である。電極連結工程S40では、100 W/cm以上、300 W/cm以下と比較的弱く設定されたパワー密度を有するレーザービームLを使用する。レーザービームLの被照射範囲内において回路基板11に局所的に生じる吸収熱Bを利用して、電極11c、11cを選択的に加熱する。
【0082】
具体的には、まず、図8(A)で最も左側に位置する1つの電極11cに対応する局所的な範囲にレーザービームLを照射して、1つの電極11cを溶融させ、その後、固化させる。これにより、1つの電極11c及び1つのアノード電極層17bを連結する。
【0083】
次いで、ガルバノスキャナーでレーザービームLの照射位置を変えて、図8(A)の紙面奥行方向(行方向A)に位置する1つの電極11cに対応する局所的な範囲にレーザービームLを照射する。これにより、1つの電極11c及び1つのカソード電極層を連結する。
【0084】
同様にして、行方向Aに沿ってレーザービームLの照射位置を次々に変更することで、1つの電極11c及び1つのアノード電極層17bを連結し、1つの電極11c及び1つのカソード電極層を連結する。
【0085】
次に、紙面右向き方向(列方向A2)にレーザービームLの照射位置を変えて、図8(A)で最も左側から7番目に位置する1つの電極11cに対応する局所的な範囲にレーザービームLを照射する。
【0086】
そして、同様にして、行方向Aに沿ってレーザービームLの照射位置を次々に変更することで、1つの電極11c及び1つのアノード電極層17bを連結し、1つの電極11c及び1つのカソード電極層を連結する。
【0087】
以降、列方向Aにおいて5つの赤色LED17おきに、同様に、レーザービームLを照射する。つまり、図8(A)で最も左側から1番目、7番目、13番目、19番目、25番目…に位置する各赤色LED17に、レーザービームLを照射する。
【0088】
電極連結工程S40における加工条件の一例を次に示す。なお、照射時間は、各電極11c、11cを個別に加熱する際に要する照射時間であり、電極連結工程S40の完了には、電極11c、11cの数と、照射時間と、の積で算出される合計時間を要する。
【0089】
レーザー発振器:YAG連続発振レーザー
波長 :400nm以上1100nm以下(例えば、980nm)
パワー密度:100W/cm以上300W/cm以下(例えば、100W/cm
照射範囲 :1mm以上1cm以下
照射時間 :約1s
【0090】
本実施形態の電極連結工程S40では、赤色LED17と電極11c、11cとを電気的に接続するために回路基板11に吸収される波長を有するレーザービームLを用いる。
【0091】
それゆえ、レーザービームLに対する吸収率が高い金属配線等を回路基板11に配置できるので、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程S40を行う場合に比べて、回路基板11の設計の自由度を高くできる。
【0092】
電極連結工程S40の後、単結晶基板15を透過する波長を有するパルス状のレーザービームL図8(B)参照)を、裏面15bを介して赤色LEDウェーハ13のバッファー層19に照射してバッファー層19を破壊する(バッファー層破壊工程S50)。
【0093】
図8(B)は、バッファー層破壊工程S50を示す図である。バッファー層破壊工程S50における加工条件の一例を次に示す。
【0094】
レーザー発振器:YAGパルス発振レーザー
波長 :257nm
繰り返し周波数:50kHz
平均出力 :0.12W
パルス幅 :100ns
スポット径 :10μm
加工送り速度 :600mm/s
【0095】
具体的には、まず、図8(B)で最も左側に位置する複数の赤色LED17に対応して設けられた各バッファー層19に、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、各バッファー層19を破壊する。
【0096】
次いで、レーザービームLの照射位置を紙面右向き方向(列方向A)に移動させ、図8(B)で最も左側から7番目に位置するバッファー層19に変更する。そして、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーでレーザービームLの照射位置を変えながら、各バッファー層19を順次破壊する。
【0097】
以降、列方向Aにおいて5つの赤色LED17おきに、同様に、レーザービームLを照射する。これにより、電極連結工程S40で電極11c、11cに連結された赤色LED17と、単結晶基板15との結合力が、ほぼ無くなる。
【0098】
バッファー層破壊工程S50の後、アーム46を上昇させることで、単結晶基板15を赤色LED17から剥離する(剥離工程S60)。図9は、剥離工程S60を示す図であり、図10は、剥離工程S60後における、回路基板11に固定された複数の赤色LED17を示す図である。
【0099】
回路基板11に複数の赤色LED17を設けた後、各々緑色を発する複数の緑色LED23(図11参照)を有する緑色LEDウェーハ(不図示)を用いて、回路基板11に複数の緑色LED23を設ける。
【0100】
緑色LEDウェーハ(不図示)は、略円板状の単結晶基板を有する。単結晶基板の表面上にはバッファー層を介してエピタキシャル成長層が形成されている。エピタキシャル成長層は、化合物半導体で形成されており、N型半導体層、発光層、及び、P型半導体層を含む。
【0101】
発光層は、例えば、InGaN(窒化インジウムガリウム)を有するが、発光層の材料はこれに限定されるものではなく他の適切な材料が選択されてもよい。
【0102】
エピタキシャル成長層上には、P型半導体層に接するアノード電極層と、N型半導体層に接するカソード電極層とが、形成されている。バッファー層及びエピタキシャル成長層は、単結晶基板の表面に格子状に設定された複数の素子分離ラインに沿って切断される。
【0103】
この様にして、複数の素子分離ラインによって区画された複数の領域の各々に、緑色LED23が形成される。そして、上述の様に、LEDウェーハ保持工程S10から剥離工程S60を経て、複数の緑色LED23が回路基板11に固定される。
【0104】
回路基板11に複数の緑色LED23を設けた後、各々青色を発する複数の青色LED25(図11参照)を有する青色LEDウェーハ(不図示)を用いて、回路基板11に複数の青色LED25を設ける。
【0105】
青色LEDウェーハ(不図示)は、略円板状の単結晶基板を有する。単結晶基板の表面上にはバッファー層を介してエピタキシャル成長層が形成されている。エピタキシャル成長層は、化合物半導体で形成されており、N型半導体層、発光層、及び、P型半導体層を含む。
【0106】
発光層は、例えば、緑色の発光層に比べてInの組成比が小さいInGaN(窒化インジウムガリウム)を有するが、発光層の材料はこれに限定されるものではなく他の適切な材料が選択されてもよい。
【0107】
エピタキシャル成長層上には、P型半導体層に接するアノード電極層と、N型半導体層に接するカソード電極層とが、形成されている。バッファー層及びエピタキシャル成長層は、単結晶基板の表面に格子状に設定された複数の素子分離ラインに沿って切断される。
【0108】
この様にして、複数の素子分離ラインによって区画された複数の領域の各々に、青色LED25が形成される。そして、上述の様に、LEDウェーハ保持工程S10から剥離工程S60を経て、複数の青色LED25が回路基板11に固定される。
【0109】
図11は、それぞれ回路基板11に固定された赤色LED17、緑色LED23及び青色LED25を示す図である。この様にして、LEDディスプレイパネル27が製造される。ところで、電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50の順序は、上述の例に限定されない。バッファー層破壊工程S50の後に、電極連結工程S40を行ってもよい。
【0110】
本実施形態では、回路基板11に吸収される波長を有するレーザービームLを用いて電極連結工程S40を行う。これにより、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程S40を行う場合に比べて、回路基板11の設計の自由度を高くできる。
【0111】
(第2の実施形態)次に、第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態以降の説明では、第1の実施形態と同じ内容を行う場合には、その内容の説明を省略することがある。第2の実施形態では、電極11c、11cと、アノード電極層17b、カソード電極層とが、それぞれ接触せずに、距離C(図12(A)参照)だけ離れている。
【0112】
距離Cは、例えば、赤色LEDウェーハ13の反りに起因して生じる。距離Cは、例えば、10μmから20μm程度の所定値である。第2の実施形態でも、まず、赤色LEDウェーハ13及び回路基板11を用いて、LEDウェーハ保持工程S10、回路基板保持工程S20及び位置付け工程S30を行う。
【0113】
第2の実施形態では、位置付け工程S30の後、電極連結工程S40を行いながら、バッファー層破壊工程S50を行う。図12(A)は、第2の実施形態の電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50における第1工程を示す図である。
【0114】
具体的には、図12(A)で最も左側に位置する1つの電極11cに対応する局所的な範囲をレーザービームLで加熱した状態で、上方に位置するバッファー層19をレーザービームLで破壊する。これにより、赤色LED17は下方に飛散して、赤色LED17のアノード電極層17bが加熱されている1つの電極11cに連結される。
【0115】
その後、図12(A)で最も左側に位置する1つの電極11cに対応する局所的な範囲をレーザービームLで加熱した状態で、上方に位置するバッファー層19をレーザービームLで破壊することにより、赤色LED17のカソード電極層と1つの電極11cとを連結する。
【0116】
次いで、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えて、同様にして順次、赤色LED17のアノード電極層17bと1つの電極11cとを連結し、赤色LED17のカソード電極層と1つの電極11cとを連結する。
【0117】
次いで、レーザービームLの照射位置を、図12(B)で左から7番目に位置する1つの電極11cに対応する裏面11bの領域に変える。図12(B)は、第2の実施形態の電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50における第2工程を示す図である。
【0118】
同様に、1つの電極11cに対応する局所的な範囲をレーザービームLで加熱した状態で、バッファー層19をレーザービームLで破壊することで、アノード電極層17bを1つの電極11cに連結する。
【0119】
この様にして、列方向Aに沿って5つの赤色LED17おきに、アノード電極層17bを1つの電極11cに連結し、赤色LED17のカソード電極層と1つの電極11cとを連結する。
【0120】
その後、剥離工程S60を経て、赤色LEDウェーハ13を回路基板11から離す。そして、緑色LEDウェーハ及び青色LEDウェーハも同様にして、回路基板11に緑色LED23及び青色LED25を連結する。
【0121】
第2の実施形態でも、回路基板11に吸収される波長を有するレーザービームLを用いて電極連結工程S40を行う。これにより、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程S40を行う場合に比べて、回路基板11の設計の自由度を高くできる。
【0122】
(第3の実施形態)第3の実施形態では、行方向Aに沿って配置されている複数の赤色LED17に対して、電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50を交互に行う。
【0123】
第3の実施形態でも、まず、赤色LEDウェーハ13及び回路基板11を用いて、LEDウェーハ保持工程S10、回路基板保持工程S20を行う。その後、位置付け工程S30を行う。
【0124】
位置付け工程S30では、第1の実施形態と同様に、電極11c及びアノード電極層17bを接触させ、電極11c及びカソード電極層を接触させる。位置付け工程S30の後、電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50を交互に行う。
【0125】
例えば、図13(A)で最も左側に位置する複数組の電極11c、11cに対応する裏面11bの領域に、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、複数組の電極11c、11cを加熱して電極連結工程S40を行う。
【0126】
このとき、図13(A)で左から7番目に位置する複数の赤色LED17に対応する各バッファー層19に、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、各バッファー層19を破壊するバッファー層破壊工程S50を行う。
【0127】
図13(A)は、第3の実施形態の電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50における第1工程を示す図である。図13(B)は、第3の実施形態の電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50における第2工程を示す図である。
【0128】
第2工程では、図13(B)で左から7番目に位置する複数組の電極11c、11cに対応する裏面11bの領域に、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、複数組の電極11c、11cを加熱して電極連結工程S40を行う。
【0129】
このとき、図13(B)で最も左側に位置する複数の赤色LED17に対応する各バッファー層19に、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、各バッファー層19を破壊するバッファー層破壊工程S50を行う。
【0130】
この様にして、電極連結工程S40と、バッファー層破壊工程S50と、を交互に行うことで、回路基板11に複数の赤色LED17を固定し、且つ、複数の赤色LED17と単結晶基板15との結合力をほぼ無くした後、剥離工程S60を行う。
【0131】
第3の実施形態でも、回路基板11に吸収される波長を有するレーザービームLを用いて電極連結工程S40を行うので、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程S40を行う場合に比べて、回路基板11の設計の自由度を高くできる。また、電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50を同時に行うことで、工程作業時間を短縮できる。
【0132】
(第4の実施形態)第4の実施形態では、レーザービームL及びLを共に、単結晶基板15の裏面15b側へ照射する。第4の実施形態でも、まず、赤色LEDウェーハ13及び回路基板11を用いて、LEDウェーハ保持工程S10、回路基板保持工程S20及び位置付け工程S30を行う。
【0133】
第4の実施形態のレーザー加工装置2では、レーザービームLを照射するレーザービーム照射ユニット28が、支柱26ではなく、柱部34又は梁部36に設けられている。また、レーザービーム照射ユニット28は、集光器38の様に、保持テーブル30の上方に配置されfθレンズ(不図示)を含む他の集光器(不図示)を有する。
【0134】
第4の実施形態では、レーザービーム照射ユニット28からレーザービームLが、レーザービーム照射ユニット40からLが、それぞれ、赤色LEDウェーハ13の裏面15bの異なる領域に照射される。
【0135】
但し、単結晶基板15は、サファイア又はSiCで形成されているので、レーザービームLが単結晶基板15に吸収される様に、レーザービームLの波長は100nm以下の所定値に設定される。
【0136】
図14(A)は、第4の実施形態の電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50における第1工程を示す図である。第1工程では、まず、図14(A)で最も左側に位置する赤色LED17に対応するバッファー層19をレーザービームLで破壊する。
【0137】
行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、同様に、図14(A)で最も左側に位置する複数の赤色LED17に対応する各バッファー層19を破壊する。
【0138】
レーザービームLの照射後、図14(A)で左から7番目に位置する赤色LED17に対応する1つの電極11cに向けてレーザービームLを照射する。レーザービームLは裏面15bで吸収され、局所的に生じた吸収熱Dは、アノード電極層17bを経て、1つの電極11cに達する。
【0139】
電極連結工程S40では、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、図14(A)で左から7番目に位置する赤色LED17に対応する各電極11c、11cは加熱され、各赤色LED17に連結される。
【0140】
次に、図14(B)に示す様に、レーザービームLの位置と、レーザービームLの位置とを、入れ替える。図14(B)は、第4の実施形態の電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50における第2工程を示す図である。
【0141】
図14(B)で最も左側に位置する赤色LED17に対応する1つの電極11cに向けてレーザービームLを照射して、赤色LED17のアノード電極層17bと、1つの電極11cと、を連結する。
【0142】
また、行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、図14(B)で最も左側に位置する赤色LED17に対応する各電極11c、11cを加熱し、赤色LED17に連結する。
【0143】
次に、図14(B)で左から7番目側に位置する赤色LED17に対応するバッファー層19をレーザービームLで破壊する。行方向Aに沿ってガルバノスキャナーで照射位置を変えながらレーザービームLを照射することで、各バッファー層19を破壊する。
【0144】
この様にして、電極連結工程S40と、バッファー層破壊工程S50と、を交互に行うことで、回路基板11に複数の赤色LED17を固定し、且つ、複数の赤色LED17と単結晶基板15との結合力をほぼ無くした後、剥離工程S60を行う。
【0145】
第4の実施形態では、単結晶基板15に吸収される波長を有するレーザービームLを用いて電極連結工程S40を行う。これにより、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程S40を行う場合に比べて、回路基板11の設計の自由度を高くできる。また、電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50を同時に行うことで、工程作業時間を短縮できる。
【0146】
(第5の実施形態)第5の実施形態のレーザービーム照射ユニット28は、レーザー発振器28aと、Yスキャンミラー28bと、の間に配置された空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)28d(図15参照)を更に有する。
【0147】
図15は、第5の実施形態に係るレーザービーム照射ユニット28を示す斜視図である。本例の空間光変調器28dは、LCOS(liquid crystal on silicon)を有する、透過型のLCOS-SLMである。
【0148】
しかし、空間光変調器28dは、反射型のLCOS-SLMであってもよい。また、レーザー発振器28aと、Yスキャンミラー28bと、の間の光路には、リレーレンズ等の所定の光学系が設けられてもよい。
【0149】
空間光変調器28dは、光の回折・干渉現象を制御することにより、レーザービームLの被照射範囲内で、レーザービームLのパワー密度分布を変更できる。レーザービームLの被照射範囲は、例えば、上述の1mm以上1cm以下の円領域である。
【0150】
空間光変調器28dは、複数の電極11c、複数の電極11c、又は、1以上の電極11c及び1以上の電極11cに対応する領域に、パワー密度の局所的なピークが位置する様に、レーザービームLのパワー密度分布を変更できる。
【0151】
また、空間光変調器28dは、レーザービームLの被照射範囲内における連続的な領域にパワー密度の局所的なピークが位置する様に、レーザービームLのパワー密度分布を設定することもできる。
【0152】
例えば、複数の電極11cにわたる連続的な範囲、複数の電極11cにわたる連続的な範囲、又は、1以上の電極11c及び1以上の電極11cにわたる連続的な範囲に設定できる。
【0153】
この様に、パワー密度のピーク位置のみを局所的に加熱できるので、電極11c、11cを構成する材料の融点、回路基板11及び単結晶基板15における局所的な熱伝導率の差異等を考慮した適切な加熱を実現できる。
【0154】
第5の実施形態では、レーザービーム照射ユニット40も、レーザービーム照射ユニット28と同様に、空間光変調器(不図示)を有する。当該空間光変調器も、レーザービームLの被照射範囲内で、レーザービームLのパワー密度分布を変更できる。レーザービームLの被照射範囲は、例えば、直径が70μm程度の円領域である。
【0155】
第5の実施形態に係るLEDディスプレイパネル27の製造方法でも、まず、赤色LEDウェーハ13及び回路基板11を用いて、LEDウェーハ保持工程S10、回路基板保持工程S20及び位置付け工程S30を行う。
【0156】
次いで、第1の実施形態と同様に、電極連結工程S40及びバッファー層破壊工程S50を行う。図16(A)は、第5の実施形態の電極連結工程S40を示す図である。
【0157】
但し、第5の実施形態の電極連結工程S40では、空間光変調器28dを利用して、図16(A)で最も左側の赤色LED17と、左側から7番目の赤色LED17と、に接する電極11cに対応する範囲に、同時にレーザービームLを照射する。
【0158】
これにより、2つの電極11cを同時に加熱する。なお、行方向Aに並んでいる電極11c、11cを同時に加熱してもよい。これらの例に限定されず、レーザービームLの実質的な照射位置は、空間光変調器28dの動作を適宜設定することにより調整できる。
【0159】
いずれにしても、列方向Aに沿って5つの赤色LED17おきに、アノード電極層17bを1つの電極11cに連結し、赤色LED17のカソード電極層と1つの電極11cとを連結する。
【0160】
第5の実施形態でも、回路基板11を透過する波長を有するレーザービームで電極連結工程S40を行う場合に比べて、回路基板11の設計の自由度を高くできる。加えて、レーザービームLのパワー密度分布を調整することで、設計の自由度を確保しつつ、高い生産性を実現できる。
【0161】
電極連結工程S40の後、バッファー層破壊工程S50を行う。図16(B)は、第5の実施形態のバッファー層破壊工程S50を示す図である。
【0162】
第5の実施形態のバッファー層破壊工程S50では、空間光変調器を利用して、図16(B)で最も左側の赤色LED17と、左側から7番目の赤色LED17と、に対応するバッファー層19に、同時にレーザービームLを照射する。
【0163】
これにより、バッファー層19を同時に破壊する。また、行方向Aに並んでいる複数のバッファー層19を同時に破壊してもよい。これらの例に限定されず、レーザービームLの実質的な照射位置は、空間光変調器の動作を適宜設定することにより調整できる。
【0164】
いずれにしても、列方向Aに沿って5つの赤色LED17おきに、バッファー層19を破壊する。なお、バッファー層破壊工程S50は、電極連結工程S40の前であってもよい。
【0165】
上述の実施形態では、レーザービームLが回路基板11又は赤色LEDウェーハ13に吸収された際に生じる熱で、電極11c、11cを加熱する例を説明したが、この熱は、アノード電極層17b、カソード電極層を加熱して溶融させてもよい。
【0166】
つまり、レーザービームLによる加熱の対象は、電極11c、11cであってもよく、アノード電極層17b、カソード電極層であってもよく、電極11c、11c及びアノード電極層17b、カソード電極層の両方であってもよい。
【0167】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、位置付け工程S30は、上述とは異なる方法(後述する第1から第4の変形例)で行われてもよい。
【0168】
(第1の変形例)単結晶基板15の上方に配置されたカメラユニットを用いて、単結晶基板15を透過する波長の光(赤外光、可視光など)で、アライメントマーク11d、15dからの反射光を同時に観察しながら、回路基板11と赤色LEDウェーハ13との位置合わせを行うこともできる(第1の反射光方式)。
【0169】
(第2の変形例)これに代えて、回路基板11の下方に配置されたカメラユニットを用いて、回路基板11を透過する波長の光(赤外光など)で、アライメントマーク11d、15dからの反射光を同時に観察しながら、回路基板11と赤色LEDウェーハ13との位置合わせを行うこともできる(第2の反射光方式)。
【0170】
(第3の変形例)また、単結晶基板15の上方に配置されたカメラユニットと、回路基板11及び単結晶基板15を透過する波長の光(赤外光など)を発し、且つ、回路基板11の下方に配置された光源と、を用いることもできる(第1の透過光方式)。
【0171】
第1の透過光方式では、回路基板11の下方から上方に光を照射しながらカメラで透過光を観察することにより、アライメントマーク11d、15dを同時に観察しながら、回路基板11と赤色LEDウェーハ13との位置合わせを行う。
【0172】
(第4の変形例)これに代えて、単結晶基板15の下方に配置されたカメラユニットと、回路基板11及び単結晶基板15を透過する波長の光(赤外光など)を発し、且つ、回路基板11の上方に配置された光源と、を用いることもできる(第2の透過光方式)。
【0173】
第2の透過光方式では、回路基板11の上方から下方に光を照射しながらカメラで透過光を観察することにより、アライメントマーク11d、15dを同時に観察しながら、回路基板11と赤色LEDウェーハ13との位置合わせを行う。
【符号の説明】
【0174】
2:レーザー加工装置、4:基台
6:ガイドレール、8:X軸移動プレート、10:ボールねじ
12:パルスモーター、14:X軸方向移動ユニット
16:ガイドレール、18:Y軸移動プレート、20:ボールねじ
22:パルスモーター、24:Y軸方向移動ユニット
26:支柱、28:レーザービーム照射ユニット、28a:レーザー発振器
28b:Yスキャンミラー、28c:Xスキャンミラー、28d:空間光変調器
30:保持テーブル、32:基板保持フレーム(第2の保持ユニット)
32a:開口、32b:段差部、32c:吸引口
34:柱部、36:梁部、38:集光器、40:レーザービーム照射ユニット
42:ウェーハ保持ユニット(第1の保持ユニット)、44:保持リング
44a:開口、44b:段差部、44c:吸引口、44d:位置合わせ部
46:アーム、48:ハウジング、50:撮像ユニット、52:制御ユニット
11:回路基板、11a:表面、11b:裏面
11c:電極ユニット、11c,11c:電極、11d:アライメントマーク
13:赤色LEDウェーハ、15:単結晶基板、15a:表面、15b:裏面
15c:オリエンテーションフラット、15d:アライメントマーク
17:赤色LED、17a:エピタキシャル成長層、17b:アノード電極層
19:バッファー層、21:素子分離ライン
23:緑色LED、25:青色LED、27:LEDディスプレイパネル
:行方向、A:列方向、B,D:吸収熱、C:距離
,L:レーザービーム
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