(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20241105BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241105BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20241105BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20241105BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20241105BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20241105BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20241105BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20241105BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/013
C08K3/08
C08K5/5415
C08L83/05
C08L83/06
C09K5/14 101E
H01L23/36 D
H01L23/36 M
(21)【出願番号】P 2023517215
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016564
(87)【国際公開番号】W WO2022230600
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021075503
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦弘
(72)【発明者】
【氏名】細田 也実
(72)【発明者】
【氏名】辻 謙一
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255283(JP,A)
【文献】特開2008-56761(JP,A)
【文献】特開2017-226724(JP,A)
【文献】特開2019-214640(JP,A)
【文献】特開2005-112961(JP,A)
【文献】特開2010-95730(JP,A)
【文献】特開2013-82816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
C08K 3/013
C08K 3/08
C08K 5/5415
C08L 83/05
C08L 83/06
C09K 5/14
H01L 23/36
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(A-1)及び(A-2)からなり、且つ(A-1)と(A-2)との合計に対する(A-1)の割合が10~90質量%であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-1)25℃における粘度が0.01~10Pa・sのケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
(A-2)25℃における粘度が11~1,000Pa・sのケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して、当該成分中のケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.1~5.0個となる量、
(C)融点が-20~70℃の、ガリウム及びガリウム合金からなる群より選択される1種以上:300~20,000質量部、
(D)平均粒径が0.1~100μmの熱伝導性充填剤:10~1,000質量部、
(E)白金族金属触媒:(A)成分の質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~500ppm
並びに、
(G-1)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン:10~500質量部
【化1】
(式(1)中、R
1は同一もしくは異種のアルキル基であり、R
2はアルキル基であり、aは5~100の整数であり、bは1~3の整数である。)
を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
更に、(G-2)下記一般式(2):
R
3
cR
4
dSi(OR
5)
4-c-d (2)
(式(2)中、R
3は独立に炭素原子数6~16のアルキル基であり、R
4は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、R
5は独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、c+dの和は1~3の整数である。)
で表されるアルコキシシラン化合物を、(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
更に、(G-3)トリフルオロプロピルトリメトキシシランを(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、請求項1又は2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
(B)成分が、分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に5個以上有し、且つ、下記式(3):
0.1<α/β (3)
(式(3)中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(B)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(C)成分が、組成物中に1~200μmの粒子状に分散している請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項7に記載の硬化物の、発熱性電子部品と放熱部材との間に挟まれて配置される熱伝導性層としての使用。
【請求項9】
発熱性電子部品と、放熱部材と、請求項7に記載の硬化物からなる熱伝導性層とを有する半導体装置であって、前記発熱性電子部品と前記放熱部材とが前記熱伝導性層を介して接合されている半導体装置。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法であって、
(a)発熱性電子部品の表面に、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布して、前記表面に前記組成物からなる被覆層を形成させる工程、
(b)前記被覆層に放熱部材を圧接して固定させる工程、及び
(c)工程(b)後に得られた構造体を80~180℃で加熱して、前記被覆層を硬化させて熱伝導性層とする工程
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、その製造方法、その硬化物、該硬化物の熱伝導性層としての使用、該熱伝導性層を有する半導体装置、及び該半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板上に実装される発熱性電子部品、例えば、CPU等のICパッケージは、使用時の発熱による温度上昇によって性能が低下したり破損したりすることがあるため、従来、ICパッケージと放熱フィンを有する放熱部材との間に、熱伝導性が良好な熱伝導性シートを配置したり、熱伝導性グリースを適用して、前記ICパッケージ等から生じる熱を効率よく放熱部材に伝導して放熱させることが実施されている。しかしながら、電子部品等の高性能化に伴い、その発熱量が益々増加する傾向にあり、従来のものよりも更に熱伝導性に優れた材料・部材の開発が求められている。
【0003】
従来の熱伝導性シートは、手軽にマウント・装着することができるという作業・工程上の利点を有する。また、熱伝導性グリースの場合は、CPU、放熱部材等の表面の凹凸に影響されることなく、前記凹凸に追随して、前記両者間に隙間を生じせしめることなく、前記両者を密着させることができ、界面熱抵抗が小さいという利点がある。しかし、熱伝導性シート及び熱伝導性グリースは、ともに熱伝導性を付与するため熱伝導性充填剤を配合して得られるが、熱伝導性シートの場合は、その製造工程における作業性・加工性に支障をきたさないようにするために、また、熱伝導性グリースの場合は、発熱性電子部品等へシリンジ等を用いて塗工する際の作業性に問題が生じないように、そのみかけ粘度の上限を一定限度に抑制する必要があるために、いずれの場合においても熱伝導性充填剤の配合量の上限は制限され、十分な熱伝導性効果が得られないという欠点があった。
【0004】
そこで、熱伝導性ペースト内に低融点金属を配合する方法(特許文献1:特開平7-207160号公報、特許文献2:特開平8-53664号公報)、液体金属を三相複合体中に固定し、安定化する働きをする粒状材料(特許文献3:特開2002-121292号公報)等が提案されている。しかしながら、これら低融点金属を用いた熱伝導性材料は、塗工部以外の部品を汚染し、また、長時間にわたって使用すると油状物が漏出してくる等の問題があった。それらを解決するために硬化性のシリコーン中にガリウム及び/又はガリウム合金を分散させる方法(特許文献4:特許第4551074号)が提案されているが、組成物の厚みが大きい場合、熱伝導率が低いため十分に満足できるものではなかった。また、その熱伝導率を上げる方法(文献5:特許第4913874号及び文献6:特許第5640945号)が提案されているが、硬化時にひび割れやボイドが発生しやすく十分な性能が発揮できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-207160号公報
【文献】特開平8-53664号公報
【文献】特開2002-121292号公報
【文献】特許第4551074号
【文献】特許第4913874号
【文献】特許第5640945号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、熱伝導特性に優れた材料が必要にして十分な量配合され、かつ前記材料が微粒子の状態で樹脂成分からなるマトリックス中に、均一に分散し、硬化時にひび割れやボイドが発生しない硬化物となる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得ることにある。また、該硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、該硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、従来の熱伝導性グリースと同様に、発熱性電子部品と放熱部材との間に挟まれるように配置し、前記部品又は部材の表面の凹凸に追随して隙間を生じせしめることなく、かつ、加熱処理により架橋された硬化物からなる熱伝導性層としての使用を提供することにある。更に、本発明の目的は、発熱性電子部品と放熱部材とが前記熱伝導性層を介して接合された放熱性能に優れた半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、粘度の異なる2種類のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを使用し、低融点のガリウム及び/又はその合金、特定のアルコキシポリシロキン、特定のケイ素原子に結合したオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び熱伝導性充填剤を配合することにより、前記ガリウム及び/又はその合金が微粒子状態で均一に分散した組成物が容易に得られ、前記組成物を加熱処理して硬化物とする工程において、ひび割れやボイドの発生が少なく、液状の前記ガリウム及び/又はその合金同士が凝集して粒径の大きな液状粒子を形成すると同時に、該液状粒子同士が、更に熱伝導性充填剤とも連結して連なった一種の経路を形成すること、また、樹脂成分の硬化により形成される架橋網状体中に、前記経路状の構造が固定・保持されるとの知見を得た。
【0008】
そして、前記のとおりにして得られる硬化物を発熱性電子部品と放熱部材との間に挟まれるように層状に配置することにより、熱抵抗が低い熱伝導性層として使用することができ、前記発熱性電子部品の稼動時に発生する熱を、前記のとおりの構造に固定・保持されたガリウム及び/又はその合金を含む前記熱伝導性層を経由して、速やかに放熱部材に伝導し、放熱特性に優れた半導体製品が得られるとの知見を得て、これらの知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、下記の硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いた半導体装置を提供するものである。
【0009】
<1>
(A)下記(A-1)及び(A-2)からなり、且つ(A-1)と(A-2)との合計に対する(A-1)の割合が10~90質量%であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(A-1)25℃における粘度が0.01~10Pa・sのケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
(A-2)25℃における粘度が11~1,000Pa・sのケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1個に対して、当該成分中のケイ素原子に結合した水素原子の個数が0.1~5.0個となる量、
(C)融点が-20~70℃の、ガリウム及びガリウム合金からなる群より選択される1種以上:300~20,000質量部、
(D)平均粒径が0.1~100μmの熱伝導性充填剤:10~1,000質量部、
(E)白金族金属触媒:(A)成分の質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~500ppm
並びに、
(G-1)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン:10~500質量部
【化1】
(式(1)中、R
1は同一もしくは異種のアルキル基であり、R
2はアルキル基であり、aは5~100の整数であり、bは1~3の整数である。)
を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
<2>
更に、(G-2)下記一般式(2):
R
3
cR
4
dSi(OR
5)
4-c-d (2)
(式(2)中、R
3は独立に炭素原子数6~16のアルキル基であり、R
4は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、R
5は独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、c+dの和は1~3の整数である。)
で表されるアルコキシシラン化合物を、(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、<1>に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
<3>
更に、(G-3)トリフルオロプロピルトリメトキシシランを(A)成分100質量部に対し0.1~100質量部含む、<1>又は<2>に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
<4>
(B)成分が、分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に5個以上有し、且つ、下記式(3):
0.1<α/β (3)
(式(3)中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(B)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンである<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
<5>
(C)成分が、組成物中に1~200μmの粒子状に分散している<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
<6>
<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる熱伝導性シリコーングリース組成物。
<7>
<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物。
<8>
<7>に記載の硬化物の、発熱性電子部品と放熱部材との間に挟まれて配置される熱伝導性層としての使用。
<9>
発熱性電子部品と、放熱部材と、<7>に記載の硬化物からなる熱伝導性層とを有する半導体装置であって、前記発熱性電子部品と前記放熱部材とが前記熱伝導性層を介して接合されている半導体装置。
<10>
<9>に記載の半導体装置の製造方法であって、
(a)発熱性電子部品の表面に、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布して、前記表面に前記組成物からなる被覆層を形成させる工程、
(b)前記被覆層に放熱部材を圧接して固定させる工程、及び
(c)工程(b)後に得られた構造体を80~180℃で加熱して、前記被覆層を硬化させて熱伝導性層とする工程
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化前においてはグリース状であるので、CPU等の発熱性電子部品上に塗工する際の作業性が良好であり、更に放熱部材を圧接させる際に、両者の表面の凹凸に追従して、両者間に隙間を生じることなく両者を密着できることから、界面熱抵抗が生じることがない。
【0011】
また、付加反応による樹脂成分の硬化に際する加熱処理工程において、ひび割れやボイドの発生も少なく、本発明の組成物に含まれるガリウム及び/又はその合金は凝集して粒径の大きな液状粒子を形成するとともに、該液状粒子は互いに連結して、更に熱伝導性充填剤とも連なり一種の経路を形成し、樹脂成分の硬化により形成される3次元架橋網状体中に、前記経路状の構造が固定・保持されることから、発熱性電子部品から生じる熱を速やかに放熱部材に伝導することができるため、従来の熱伝導性シート又は熱伝導性グリースよりも、高い放熱効果を確実に発揮することができる。そして、半導体装置に組み込まれた本発明組成物の硬化物からなる熱伝導性層に含まれ前記経路を形成しているガリウム及び/又はその合金は、硬化樹脂の3次元架橋網状体中に固定・保持されていることから、従来の熱伝導性グリースの場合に問題とされた他の部品を汚染したり、また、経時的に油状物が漏出してくることがない。従って、半導体装置の信頼性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の組成物を適用する半導体装置の一例を示す縦断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物]
<(A)オルガノポリシロキサン>
本発明組成物の(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を、1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンであり、本発明の付加反応硬化系における主剤(ベースポリマー)である。(A)成分は、下記(A-1)及び(A-2)からなるものである。
【0014】
(A-1)25℃における粘度が0.01~10Pa・sのケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
(A-2)25℃における粘度が11~1,000Pa・sのケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン
【0015】
(A-1)の粘度は好ましくは0.1~5Pa・sの範囲であり、更に好ましくは0.1~1Pa・sである。(A-1)の粘度が0.01Pa・s未満であると硬化物が脆くなりひび割れが入りやすくり、10Pa・sより大きいと硬化物が柔らかくなりボイドが出やすくなる。
【0016】
(A-2)の粘度は好ましくは15~500Pa・sの範囲であり、より好ましくは20~100Pa・sの範囲である。(A-2)の粘度が11Pa・sより小さいと、製造時に材料に攪拌シェアーがかからず、組成物がグリース状になりにくくなり、1000Pa・sより大きいと組成物の粘度が上がりすぎてしまい取り扱いにくくなる。
【0017】
なお、本発明において、粘度はスパイラル粘度計PC-ITL(株式会社マルコム社製)を用いて25℃で測定した値である。
【0018】
(A-1)と(A-2)との合計に対する(A-1)の割合は10~90質量%であり、好ましくは20~80質量%であり、更に好ましくは30~70質量%である。
(A-1)の割合が10質量%より少ないと硬化物が柔らかくなり硬化時ボイドが出やすくなり、90質量%より多いと、製造時に材料に攪拌シェアーがかからず、組成物がグリース状になりにくくなる。
【0019】
(A-1)及び(A-2)のオルガノポリシロキサンの分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、分岐鎖状、一部分岐を有する直鎖状が挙げられるが、特に好ましくは直鎖状である。
【0020】
ケイ素原子に結合したアルケニル基の数は、(A-1)及び(A-2)それぞれにおいて、1分子中2個以上であればよく、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個である。
ケイ素原子に結合したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、1-へキセニル基等が挙げられる。これらの中でも、汎用性が高いビニル基が好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子、また分子鎖途中のケイ素原子のいずれに結合していてもよいが、得られる硬化物の柔軟性がよいものとするため、分子鎖末端のケイ素原子にのみ結合して存在することが好ましい。
【0021】
アルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、例えば、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。そして、合成面及び経済性の点から、これらのうち、90%以上がメチル基であることが好ましい。
【0022】
このようなオルガノポリシロキサンの好適な具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0023】
<(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン>
本発明組成物の(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、「Si-H基」という)を、1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、上記(A)成分の架橋剤として作用するものである。即ち、この(B)成分中のSi-H基が、後記(E)成分の白金系触媒の作用により、(A)成分中のアルケニル基とヒドロシリル化反応により付加して、架橋結合を有する3次元網状構造を有する架橋硬化物を与える。
【0024】
(B)成分のSi-H基の数は、1分子中に2個以上であり、5個以上であることが硬化時のボイド抑制の観点から好ましく、更に好ましくは10個以上である。また、(B)成分は、分子鎖非末端にケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に5個以上有し、且つ、下記式(3)を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることがより好ましい。
0.1<α/β (3)
(式(3)中、αは分子鎖非末端のケイ素原子に結合した水素原子の数を表し、βは(B)成分中の全ケイ素原子数を表す。)
上記α/βの範囲が0.1以下と小さい場合、硬化時ボイドが発生しやすくなるため、0.1<α/βであることも同時に必要である。この場合、α/βは好ましくは0.11以上、特に0.12以上であり、その上限は特に制限されないが、0.95以下、特に0.90以下であることが好ましい。
【0025】
(B)成分の分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に限定されず、従来公知の、例えば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。1分子中のケイ素原子数(又は重合度)が、通常、3~1,000個、好ましくは5~400個、より好ましくは10~300個、更に好ましくは10~100個、特に好ましくは10~60個のものが好ましい。
【0026】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの動粘度は、通常、1~10,000mm2/s、好ましくは3~5,000mm2/s、より好ましくは5~3,000mm2/sであり、室温(25℃)で液状のものが好ましい。なお、この動粘度はオストワルド粘度計により25℃で測定した値である。
【0027】
上記要件を満たすオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(4)で表されるものが好ましい。
R6
eHfSiO(4-e-f)/2 (4)
(式(4)中、R6は、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を表し、eは0.7~2.2の数であり、fは0.001~0.5の数であり、但しe+fは0.8~2.5を満たす数である。)
【0028】
上記式(4)中、R6は、通常、炭素数が1~10、好ましくは1~6の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。
【0029】
上記式(4)中、e、f及びe+fはそれぞれ上述した通りであるが、eは0.9~2.1の数であることが好ましく、fは0.002~0.2の数、特に0.005~0.1の数であることが好ましく、e+fは1.0~2.3、特に1.5~2.2を満たす数であることが好ましい。
【0030】
上記式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状(樹脂状)等のいずれであってもよい。中でも、1分子中のケイ素原子数及び動粘度が上述した範囲を満たすもので、特には直鎖状のものが好ましい。
【0031】
上記式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基・片末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖片末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基・片末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位と(C6H5)3SiO1/2単位とからなる共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位と(CH3)3SiO1/2単位と(C6H5)2SiO2/2単位と(CH3)HSiO2/2単位と(CH3)2SiO2/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0032】
(B)成分の配合量は、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~5.0個となる量であり、好ましくは0.3~3.0個となる量であり、更に好ましくは0.5~2.0個となる量である。このケイ素原子結合水素原子が0.1個より少ない場合には、架橋密度が低くなりすぎ、硬化時ボイドが発生しやすくなるし、5.0個より多いと得られる熱伝導性シリコーン組成物が硬くなりすぎ信頼性が悪くなる。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
<(C)ガリウム及び/又はその合金>
本発明組成物の(C)成分は、融点が-20~70℃の、ガリウム及び/又はその合金である。該(C)成分は、本発明組成物から得られる硬化物に良好な熱伝導性を付与するために配合される成分であり、この成分の配合が本発明の特徴をなすものである。
【0034】
この(C)成分の融点は、上記のとおり、-20~70℃の範囲とすることが必要である。本発明に使用するためには物理的には-20℃以下のものでも使用できるが、融点が-20℃未満のものを入手するのは困難であり経済的に好ましくなく、また逆に、70℃を超えると組成物調製工程において速やかに融解しないため、作業性に劣る結果となる。よって、前記のとおり、(C)成分の融点は-20~70℃の範囲が適切な範囲である。特に、-19~50℃の範囲内のものが、本発明組成物の調製が容易であり、好ましい。
【0035】
金属ガリウムの融点は29.8℃である。また、代表的なガリウム合金としては、例えば、ガリウム-インジウム合金;例えば、Ga-In(質量比=75.4:24.6、融点=15.7℃)、ガリウム-スズ合金、ガリウム-スズ-亜鉛合金;例えば、Ga-Sn-Zn(質量比=82:12:6、融点=17℃)、ガリウム-インジウム-スズ合金;例えば、Ga-In-Sn(質量比=68.5:21.5:10、融点=-19℃や、質量比=62:25:13、融点=5.0℃や、質量比=21.5:16.0:62.5、融点=10.7℃)、ガリウム-インジウム-ビスマス-スズ合金;例えば、Ga-In-Bi-Sn(質量比=9.4:47.3:24.7:18.6、融点=48.0℃)等が挙げられる。
【0036】
この(C)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
未硬化状態の本発明組成物中に存在するガリウム及び/又はその合金の液状微粒子又は固体微粒子の形状は、略球状であり、不定形のものが含まれていてもよい。また、その平均粒径が、通常、1~200μm、特に5~150μmであることが好ましく、更に好ましくは10~100μmである。前記平均粒径が小さすぎると組成物の粘度が高くなりすぎるため、伸展性が乏しいものとなるので塗工作業性に問題があり、また、逆に大きすぎると組成物が不均一となるため発熱性電子部品等への薄膜状の塗布が困難となる。なお、前記形状及び平均粒径、更に組成物中での分散状態は、上記のとおり、組成物調製後に速やかに低温下で保存されることから、発熱性電子部品等への塗工工程まで維持することができる。なお、この平均粒径は、硬化前の組成物を2枚のスライドガラスで挟み込み、株式会社キーエンス社製のVR-3000で観察することにより算出した。即ち、この測定器により撮影した画像の中から、ランダムに30個の粒子を選び、それぞれの粒径を計測し、それらの平均値を算出した。
【0037】
この(C)成分の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して、300~20,000質量部であり、特に好ましくは2,000~15,000質量部であり、更に好ましくは3,000~12,000である。前記配合量が300質量部未満であると熱伝導率が低くなり、組成物が厚い場合、十分な放熱性能が得られない。20,000質量部より多いと均一組成物とすることが困難となり、また、組成物の粘度が高すぎるものとなるため、伸展性があるグリース状のものとして組成物を得ることができない場合がある。
【0038】
<(D)熱伝導性充填剤>
本発明組成物には、前記(C)成分とともに、従来から公知の熱伝導性シート又は熱伝導性グリースに配合される(D)熱伝導性充填剤(但し、(C)成分を除く)を配合することが必要である。
【0039】
この(D)成分としては、熱伝導率が良好なものであれば特に限定されず、従来から公知のものを全て使用することができ、例えば、アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、窒化硼素粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末、銅粉末、ダイヤモンド粉末、ニッケル粉末、亜鉛粉末、ステンレス粉末、カーボン粉末等が挙げられる。また、この(D)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
特に、入手のしやすさ、経済的な観点から、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末が特に好ましい。
【0040】
(D)成分の平均粒径としては、0.1~100μmであり、好ましくは1~20μmの範囲内とするのがよい。前記平均粒径が小さすぎると、得られる組成物の粘度が高くなりすぎるので伸展性の乏しいものとなる。また、逆に大きすぎると、均一な組成物を得ることが困難となる。なお、この平均粒径はマイクロトラックMT3300EX(日機装株式会社製)により測定した体積基準の体積平均径[MV]である。
【0041】
(D)成分の配合量が(A)成分100質量部に対して10質量部より少ないと、ガリウム及び/又はその合金が前記(A)中又は(A)成分と後述の(G)成分との混合物中に均一に分散せず、1,000質量部より多いと組成物の粘度が高くなり伸展性があるグリース状のものとして組成物を得ることができないという問題があるため10~1,000質量部の範囲、好ましくは50~500質量部がよい。
【0042】
<(E)白金族金属触媒>
本発明組成物の(E)成分の白金族金属触媒は、上記(A)成分中のアルケニル基と上記(B)成分中のSiHとの付加反応を促進し、本発明組成物から3次元網状状態の架橋硬化物を与えるために配合される成分である。
【0043】
この(E)成分としては、通常のヒドロシリル化反応に用いられる公知のものを全て使用することができ、例えば、白金金属(白金黒)、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金配位化合物等が挙げられる。(E)成分の配合量は、本発明組成物を硬化させるに必要な有効量であればよく、特に制限されないが、例えば、白金原子として(A)成分の質量に対して、通常、0.1~500ppm程度とすることが好ましい。
【0044】
<(G-1)表面処理剤>
本発明組成物には、組成物調製時に(C)成分のガリウム及び/又はその合金を疎水化処理し、且つ前記(C)成分の(A)成分のオルガノポリシロキサンとの濡れ性を向上させ、前記(C)成分を微粒子として、前記(A)成分からなるマトリックス中に均一に分散させることを目的として下記一般式(1)で示されるポリシロキサンを(G-1)表面処理剤として配合する。
【0045】
また、この(G-1)成分は、上記(D)成分の熱伝導性充填剤も、同様にその表面の濡れ性を向上させて、その均一分散性を良好なものとする作用をも有する。
【0046】
(G-1)成分としては、下記一般式(1)
【化2】
(式(1)中、R
1は同一もしくは異種のアルキル基であり、R
2はアルキル基であり、aは5~100の整数であり、bは1~3の整数である。)
で表される、分子鎖の片末端が加水分解性基で封鎖されたポリシロキサンであり、25℃における動粘度が10~10,000mm
2/sである。なお、この動粘度はオストワルド粘度計により25℃で測定した値である。
【0047】
上記一般式(1)中のR1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0048】
上記一般式(1)中のR2のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0049】
(A)成分100質量部に対する(G-1)成分の配合量が10質量部以上であれば、(C)成分及び(D)成分が十分に分散して均一なグリース組成物となるため好ましいが、500質量部より多いと相対的に(A)成分が少なくなるため得られる組成物が硬化しにくくなるという問題点が生じる。硬化しないとグリースがCPU等のデバイスに塗布された後ズレてしまい性能が著しく落ちる可能性がある。従って、(G-1)成分の配合量は10~500質量部の範囲であり、好ましくは50~300質量部である。
【0050】
<その他の成分>
上記必須成分に加えて、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、必要により、下記成分を配合してもよい。
<(F)付加反応制御剤>
本発明組成物の(F)成分の付加反応制御剤は、必要により配合される成分で、室温における上記白金系触媒の作用にヒドロシリル化反応を抑制し、本発明組成物の可使時間(シェルフライフ、ポットライフ)を確保して、発熱性電子部品等への塗工作業に支障をきたさないように配合される成分である。
【0051】
この(F)成分としては、通常の付加反応硬化型シリコーン組成物に用いられる公知の付加反応制御剤を全て使用することができ、例えば、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3-ブチン-1-オール等のアセチレン化合物や、各種窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0052】
この(F)成分の配合量は、上記(E)成分の使用量によっても異なり、一概にいえないが、ヒドロシリル化反応の進行を抑制することができる有効量であればよく、特に制限されない。例えば、(A)成分100質量部に対して、通常、0.001~5質量部程度とすることがよい。(F)成分の配合量が少なすぎれば、十分な可使時間を確保することができず、また、多すぎると本発明組成物の硬化性が低下する。なお、この(F)成分は、組成物中への分散性を向上させるため、必要に応じて、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤で希釈して使用することもできる。
【0053】
また、本発明組成物には、更に(G-2)成分として、以下のアルコキシシランを配合してもよい。
(G-2)下記一般式(2):
R3
cR4
dSi(OR5)4-c-d (2)
(式(2)中、R3は独立に炭素原子数6~16のアルキル基であり、R4は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~8の1価炭化水素基であり、R5は独立に炭素原子数1~6のアルキル基であり、cは1~3の整数、dは0~2の整数であり、c+dの和は1~3の整数である。)
【0054】
上記一般式(2)中のR3としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。炭素原子数が6未満であると上記(C)成分及び(D)成分の濡れ性の向上が充分でなく、16を超えると該(G-2)成分のオルガノシランが常温で固化するので、取り扱いが不便な上、得られた組成物の低温特性が低下する。
【0055】
また、上記一般式(2)中のR4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基;3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(ナノフルオロブチル)エチル基、2-(へプタデカフルオロオクチル)エチル基、p-クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0056】
また、上記一般式(2)中のR5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。これらの中では、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0057】
この(G-2)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
C6H13Si(OCH3)3
C10H21Si(OCH3)3
C12H25Si(OCH3)3
C12H25Si(OC2H5)3
C10H21(CH3)Si(OCH3)2
C10H21(C6H5)Si(OCH3)2
C10H21(CH3)Si(OC2H5)2
C10H21(CH=CH2)Si(OCH3)2
【0058】
なお、この(G-2)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。また、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上であれば組成物の粘度が所望の範囲となりやすく、100質量部より多いと、ウェッター効果が増大することがなく不経済であるため0.1~100質量部の範囲が良い。より好ましくは1~50質量部である。
【0059】
また、本発明組成物には、更に場合によっては、(G-3)成分としてトリフルオロプロピルトリメトキシシランを配合してもよい。また、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.1質量部以上であれば組成物の粘度が所望の範囲となりやすく、100質量部より多いと、ウェッター効果が増大することがなく不経済であるため0.1~100質量部の範囲がよい。より好ましくは1~50質量部である。
尚、(G-1)成分、(G-2)成分、(G-3)成分は、それぞれ単独で使用してもよいし、組み合わせてもよい。
【0060】
<上記以外の任意成分>
本発明組成物には、本発明の目的・効果を損ねない範囲で、以下平均組成式(5)のオルガノポリシロキサンを配合することもできる。
【0061】
平均組成式(5):
R7
gSiO(4-g)/2 (5)
(式(5)中、R7は独立に脂肪族系不飽和結合を有さない非置換又は置換の炭素原子数1~18の一価炭化水素基であり、gは1.8~2.2の数である。)
で表される25℃における動粘度が10~100,000mm2/sのオルガノポリシロキサンであり、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
上記R7は独立に非置換又は置換の炭素原子数1~18の一価炭化水素基である。R7としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロヘキシル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基;3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(パーフルオロブチル)エチル基、2-(パーフルオロオクチル)エチル基、p-クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられる。
【0063】
本発明組成物には、更に、例えば、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱性向上剤;シリカ等の粘度調整剤;着色剤等を配合することができる。
【0064】
<組成物の粘度>
本発明組成物は、後述のとおり、発熱性電子部品の表面に適用され、これに放熱部材を圧接した後、加熱処理することにより硬化して、熱伝導性層を形成する。この際、作業性を良好とするために、本発明組成物はグリース状である必要がある。
【0065】
例えば、本発明組成物はシリンジ内に収納され、該シリンジからCPU等の発熱性電子部品の表面に塗布されて被覆層が形成され、これに放熱部材が圧接される。従って、本発明組成物の粘度は、通常、10~1,000Pa・s、特に30~400Pa・sであることが好ましい。前記粘度が低すぎると前記塗布時に液垂れが生じて、作業上問題となる場合がある。また、逆に、高すぎると、シリンジからの押し出しが困難となるため、塗布作業の効率が悪くなる場合がある。なお、この粘度はスパイラル粘度計PC-ITL(株式会社マルコム社製)により25℃で測定した値である。
【0066】
[本発明組成物の調製]
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、
(i)前記(A)、前記(C)、前記(D)及び前記(G-1)、並びに、含有する場合は、前記(G-2)成分及び(G-3)成分を、20~120℃の範囲内の温度であり、かつ、前記(C)成分の融点以上である温度で混練して均一な混合物(i)を得る工程;
(ii)混合物(i)の混練を停止して、混合物(i)の温度を前記(C)成分の融点未満にまで冷却し混合物(ii)を得る工程;及び
(iii)前記(B)成分と前記(E)成分と、含有する場合は前記(F)成分と、場合により他の成分とを、混合物(ii)に追加して、前記(C)成分の融点未満の温度で混練して均一な混合物(iii)を得る工程
を有する製造方法によって得ることができるが本記載に限るものではない。
【0067】
前記製造方法においては、加熱手段、及び必要に応じて冷却手段を備えたコンディショニングミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌・混練機を使用する。
【0068】
前記(i)工程において、(C)成分のガリウム及び/又はその合金の液状物と、(D)成分の熱伝導性充填剤は、(A)成分と、(G-1)と、(G-2)及び(G-3)成分のいずれか又はそれら2種以上とを組み合わせた混合液中に均一に分散される。
【0069】
前記工程(ii)における降温操作乃至冷却操作は速やかに行われることが好ましい。該工程(ii)において、(A)成分と、(G-1)と、(G-2)及び(G-3)成分のいずれか又はそれら2種以上とを組み合わせた混合液からなるマトリックス中に均一に分散された液状微粒子又は固体微粒子状態の(C)成分は、その平均粒径及び前記分散状態を保持する。
【0070】
前記工程(iii)もできるだけ短時間で終了させることが好ましい。該工程(iii)の終了時点において、(C)成分の微粒子の前記分散状態に、実質上、変化が生じることはない。そして、該工程(iii)の終了後は、生成した組成物を容器内に収容し、速やかに約-30~-10℃、好ましくは-25~-15℃の温度の冷凍庫、冷凍室等で保存するのがよい。また、その輸送等においても冷凍設備を備えた車両等を用いるのがよい。このように低温下で保管・輸送することにより、例えば長期間の保存によっても、本発明組成物の組成及び分散状態を安定して保持することができる。
【0071】
[半導体装置への適用]
本発明の組成物を硬化させる場合は80~180℃の温度に30~240分程度保持することにより行うことができる。
本発明の組成物の硬化物は、発熱性電子部品と放熱部材との間に介在させて熱伝導性層を形成するための熱伝導性硬化物として使用することができる。
この場合、上記本発明組成物を用いて放熱特性に優れた半導体装置、即ち、発熱性電子部品と、放熱部材と、上記本発明組成物の硬化物からなる熱伝導性層とを有する半導体装置であって、前記発熱性電子部品と前記放熱部材とが前記熱伝導性層を介して接合されている半導体装置を得ることができる。
【0072】
前記半導体装置は、
(a)発熱性電子部品の表面に、本発明の組成物を塗布して、前記表面に前記組成物からなる被覆層を形成させる工程、
(b)前記被覆層に放熱部材を圧接して固定させる工程、及び
(c)工程(b)後に得られた構造体を80~180℃で加熱して、前記被覆層を硬化させて熱伝導性層とする工程
を有する製造方法によって得ることができる。
前記半導体装置及びその製造方法について、
図1を参照しながら説明する。なお、
図1に記載の装置は、本発明組成物の半導体装置への適用の一例を示したものにすぎず、本発明に係る半導体装置を
図1に記載のものに限定するとの趣旨ではない。
【0073】
先ず、冷凍保存状態の本発明組成物を室温に放置して自然に解凍させてグリース状とする。次に、シリンジ等の塗工用具内に液状の本発明組成物を収納させる。
【0074】
発熱性電子部品、例えば、
図1に記載の基板3上に実装された発熱性電子部品であるCPU2等の表面に、シリンジ等から本発明組成物を塗布(ディスペンス)して硬化性組成物層(被覆層)1を形成させる。また、同時に放熱部材4を固定するために接着剤5も塗布し、その上に、放熱部材4を、被覆層1を介してCPU2に圧接して固定させる。
【0075】
この際に、CPU2と放熱部材4とに挟まれて存在する被覆層1の厚さが、通常、5~100μm、特に好ましくは10~70μmとなるように、調整するのがよい。前記厚さが薄すぎると剥離が起きやすくなり信頼性が悪くなるし、逆に、厚すぎると熱抵抗が大きくなるので十分な放熱効果を得ることができない。
【0076】
次いで、上記のとおりに構成された装置を、加熱装置内にて、本発明組成物からなる被覆層1を硬化させて熱伝導性層1とする。この硬化に要する温度条件は、80~180℃であり、特に好ましくは100~150℃である。前記温度が80℃未満であると硬化が不十分となり、逆に180℃を超える高温では、電子部品や基材が劣化するおそれがある。
【0077】
前記硬化時の温度条件に昇温する過程で、本発明組成物中の(C)成分のガリウム及び/又はその合金の液状微粒子又は固体微粒子は互いに凝集して粒径の大きな液状粒子を形成すると同時に上記(D)成分とも連結して連なった一種の経路を形成する。
【0078】
更に、前記(C)成分の液状粒子は、接するCPU2及び放熱部材4の表面にも融着する。従って、CPU2と放熱部材4とは、前記(C)成分の液状粒子及び前記(D)成分の熱伝導性充填剤が連結して連なった一種の経路を介して、実質上、一体的に連続している熱伝導性に富んだものとなる。また、前記経路状の構造は、(A)成分及び(B)成分の付加反応により形成される硬化物の3次元架橋網状体中に、固定・保持される。
【0079】
また、上記のとおりにして得られた半導体装置を稼動・使用する場合、CPU等の発熱性電子部品はその表面温度が、通常、60~120℃程度の高温となる。この発熱に対し、本発明組成物の硬化物からなる熱伝導性層は、上記のとおり高い熱伝導性を示し、従来の熱伝導性シートや熱伝導性グリースに比較してより放熱特性に優れるという顕著に優れた作用・効果を奏するものである。そして、半導体装置の長期連続稼動・使用によっても、前記熱伝導性層に含まれ前記経路を形成している(C)成分のガリウム及び/又はその合金は、硬化物の3次元架橋網状体中に固定・保持されていることため、熱伝導性層から漏出することがない。
【0080】
更に、この熱伝導性層はタック性を有しており、放熱部材がずれた場合であっても、また、長期使用時においても安定した柔軟性を有し、発熱性電子部品及び放熱部材から剥がれたりすることがない。
【0081】
なお、予め本発明組成物から所望の厚さのシート状硬化物を作製し、これを従来の熱伝導性シートと同様に発熱性電子部品と放熱部材との間に介在させることによっても、同様な効果を得ることができる。その他、熱伝導性及び耐熱性が必要とされる他の装置等の部品として、本発明組成物の硬化物のシート等を適宜使用することもできる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
下記実施例及び比較例において用いられる(A)~(G)成分を下記に示す。なお、粘度はスパイラル粘度計PC-ITL(株式会社マルコム社製)を用いて測定した値であり、動粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した値である。
【0083】
(A)成分:
25℃における粘度が下記のとおりである両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン;
(A-1-1)粘度:0.1Pa・s
(A-1-2)粘度:1.0Pa
(A-2-1)粘度:30Pa・s
(A-2-2)粘度:100Pa・s
【0084】
(B)成分:
(B-1)下記構造式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(α/β=0.35、25℃における動粘度113mm
2/s)
【化3】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
(B-2)下記構造式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(α/β=0.29、25℃における動粘度27mm
2/s)
【化4】
(式中、括弧内のシロキサン単位の配列順は不定である。)
【0085】
(C)成分:
(C-1)金属ガリウム〔融点=29.8℃〕
(C-2)Ga-In合金〔質量比=75.4:24.6、融点=15.7℃〕
(C-3)Ga-In-Sn合金[質量比=68.5:21.5:10、融点=-19℃]
(C-4)Ga-In-Sn合金[質量比=62:25:13、融点=5.0℃]
(C-5)金属インジウム〔融点=156.2℃〕<比較用>
【0086】
(D)成分:
(D-1):アルミナ粉末〔平均粒径:8.2μm〕
(D-2):酸化亜鉛粉末〔平均粒径:1.0μm〕
【0087】
(E)成分:
(E-1):白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン(両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたもの、粘度:0.6Pa・s)溶液〔白金原子含有量:1質量%〕
【0088】
(F)成分:
(F-1)1-エチニル-1-シクロヘキサノール
【0089】
(G)成分:
(G-1)下記構造式で表される動粘度32mm
2/sの片末端トリメトキシシリル基封鎖ジメチルポリシロキサン
【化5】
(G-2)構造式:C
10H
21Si(OCH
3)
3で表されるオルガノシラン
(G-3)トリフルオロプロピルトリメトキシシラン
なお、組成物の調製の手順において、「(G)成分」とは、表1又は表2に記載されたそれぞれの例において使用される(G-1)、(G-2)及び(G-3)をまとめたものを表す。
【0090】
[実施例1~6、比較例1~5]
<組成物の調製>
表1及び2に記載の組成比で各成分を採取し、次のとおりにして、組成物を調製した。
内容積250ミリリットルのコンディショニングミキサー(株式会社シンキー製、商品名:あわとり練太郎)容器に、(A)成分、(C)成分、(D)成分及び(G)成分を加え、70℃に昇温し該温度を維持し、5分間混練した。次いで、混練を停止し、15℃になるまで冷却した。
次に、(A)成分、(C)成分、(D)成分及び(G)成分の混合物に、(B)成分、(E)成分及び(F)成分を加え、25℃で均一になるように混練して各組成物を調製した。
【0091】
<粘度の測定>
組成物の絶対粘度の測定は、株式会社マルコム社製の型番PC-1TL(10rpm)で、いずれも25℃にて行った。
【0092】
<(C)成分の粒径測定>
上記で得られた各組成物を2枚のスライドガラスで挟み込み、株式会社キーエンス社製のVR-3000で撮影した画像の中から、ランダムに30個の粒子を選び、それぞれの粒径を計測し、それらの平均値を算出した。
【0093】
<硬化物の調製>
上記で得られた各組成物を、直径1.26mmで厚さ1mmのアルミニウムプレート(以下、「標準アルミプレート」という)の全面に塗布し、他の標準アルミプレートを重ねて、約175.5kPa(1.80kgf/cm2)の圧力をかけて3層構造体を得た。次いで、該3層構造体を電気炉内で150℃にまで昇温し該温度を1時間保持して各組成物を硬化させ、その後室温になるまで放置して冷却し、熱抵抗測用試料を調製した。
得られた各試料の厚さを測定し、標準アルミプレートの既知の厚さを差し引くことによって、硬化した各組成物の厚さを算出した。なお、上記各試料の厚さの測定に際しては、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ、型式;M820-25VA)を用いた。硬化した各組成物の厚さを表1~表2に示す。
【0094】
<熱抵抗の測定>
上記各試料を用いて、硬化した各組成物の熱抵抗(mm2・K/W)を、熱抵抗測定器(NETZSCH社製モデル:LFA447)を用いて測定した。測定結果を表1~表2に示す。
【0095】
<ボイド試験>
5×7cmの2枚のスライドガラスに各組成物0.2gを挟み込み、その上に1kgの重りを載せ、室温にて15分放置した。その後その重りを外し、その試験片を150℃のオーブンに1時間放置してから取り出した。スライドガラスに挟まれた硬化物を目視及びマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製:モデルVR-3200)にて観察を行った。
[評価]
・目視で、ひび割れが観察された:×
・マイクロスコープにて、直径1.0mm以上の円形状のボイド(空隙)が1個以上観察された:×
・目視及びマイクロスコープの観察でひび割れ及び直径1.0mm以上の円形状のボイド(空隙)が全く観察されない:○
【0096】
<熱伝導率の測定>
上記各試料の熱伝導率は、京都電子工業株式会社製のTPS-2500Sにより、いずれも25℃において測定した。
【0097】
<(D)成分の粒径測定>
熱伝導性充填剤の粒径測定は、日機装株式会社製の粒度分析計であるマイクロトラックMT3300EXにより測定した体積基準の累積平均径である。
【0098】
<半導体装置への適用>
上記各実施例1~6で得られた組成物の0.2gを、2cm×2cmのCPUの表面に塗布し被覆層を形成させた。該被覆層に放熱部材を重ね硬化させて、10~70μmの厚さの熱伝導性層を介して前記CPUと放熱部材が接合されている半導体装置を得た。これらの各装置をホストコンピューター、パーソナルコンピュータ等に組み込み、稼動させたところ、CPUの発熱温度は約100℃であったが、いずれの装置の場合も長時間にわたって安定した熱伝導及び放熱が可能であり、過熱蓄積によるCPUの性能低下、破損等が防止できた。よって、本発明組成物の硬化物の採用により、半導体装置の信頼性が向上することが確認できた。
【0099】
【表1】
*(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1個に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の個数を便宜的にH/Viと表記する(以下同じ)
【0100】
【表2】
注)グリース状の均一な組成物を得ることはできなかった。
【符号の説明】
【0101】
1 硬化性組成物層(被覆層)(熱伝導性層)
2 CPU(セントラル プロセッシング ユニット)
3 基板
4 放熱部材
5 接着剤