(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】シャロートレンチアイソレーション(STI)の化学機械平坦化研磨(CMP)において酸化物/窒化物選択性を高め、酸化物トレンチのディッシングを低く均一化する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241105BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241105BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241105BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09G1/02
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019175002
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2020-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】シアオボー シー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ディー.ローズ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ ピー.ムレッラ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ホンチュン
(72)【発明者】
【氏名】マーク レオナルド オニール
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】大橋 達也
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035517号公報
【文献】特開2017-105980号公報
【文献】特開2017-071753号公報
【文献】米国特許出願公開第2002/0025762号明細書
【文献】特開2012-009867号公報
【文献】特表2009-524236号公報
【文献】特開2017-190450号公報
【文献】特表2013-540851号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09G 1/02
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア被覆無機酸化物粒子であって、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア粒子、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるセリア被覆無機酸化物粒子(ただし、単一セリアコートシリカ粒子と、凝集セリアコートシリカ粒子とを含む複合粒子であって、1wt%未満の前記複合粒子が、5個以上の単一セリアコートシリカ粒子を含む凝集セリアコートシリカ粒子である複合粒子を除く)、前記セリア被覆無機酸化物粒子が、0.1重量%~5重量%の範囲である;
少なくとも一つの有機カルボン酸基、少なくとも一つのカルボン酸塩の基、又は、少なくとも一つのカルボン酸エステル基と、少なくとも二つのヒドロキシル官能基とを同一分子内に有する化学添加物(ただし、ポリマーを除く)を
0.0025重量%超で0.1重量%未満;
水溶性溶媒;及び
任意に
バイオサイド;
pH調整剤;
を含み、
pHが4~9であり;且つ
前記化学添加物が以下の一般分子構造を有する、
化学機械研磨組成物。
【化1】
ここで、n及びmは独立して2~12から選択され;R1、R2及びR3は同一若しくは異なる原子又は同一若しくは異なる官能基であって、水素;アルキル;アルコキシ;少なくとも一つのヒドロキシル基を持つ有機基;置換された有機スルホン酸;置換された有機スルホン酸塩;置換された有機カルボン酸;置換された有機カルボン酸塩;有機カルボン酸エステル;有機アミン基;ナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選択される金属イオン;アンモニウムイオン;並びにこれらの組み合わせ、から独立して選択され;R1、R2及びR3のうち少なくとも二つは水素原子である。
【請求項2】
前記水溶性溶媒が、脱イオン(DI)水、蒸留水、及びアルコール性有機溶媒からなる群より選択される、
請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項3】
前記化学添加物が
0.0025重量%超で0.1重量%未満の範囲であり;
前記組成物のpHが4.5~7.5である、
請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項4】
前記化学添加物が、酒石酸、二つの酸基を持つ粘液酸、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム塩、グルコン酸カリウム塩、グルコン酸アンモニウム塩、グルコン酸メチルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項5】
前記化学添加物が、グルコン酸、グルコン酸メチルエステル、グルコン酸エチルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項6】
セリア被覆コロイダルシリカ粒子;
グルコン酸、グルコン酸塩、グルコン酸アルキルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される化学添加物;並びに
水
を含む、
請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項7】
5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンである有効成分を含むバイオサイドを0.0005重量%~0.025重量%;
酸性pH条件用に、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、その他の無機若しくは有機酸、及びこれらの混合物からなる群より選択されるpH調整剤、又は、アルカリ性pH条件用に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機第四級アンモニウム水酸化物、有機アミン類、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるpH調整剤、を0.01重量%~0.5重量%;
のうちの少なくとも一つをさらに含む、
請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項8】
シリコン酸化物フィルムを備える表面を少なくとも一つ有する半導体基板を、化学機械研磨(CMP)する方法であって、
前記半導体基板を準備すること;
研磨パッドを準備すること;
セリア被覆無機酸化物粒子であって、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア粒子、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるセリア被覆無機酸化物粒子(ただし、単一セリアコートシリカ粒子と、凝集セリアコートシリカ粒子とを含む複合粒子であって、1wt%未満の前記複合粒子が、5個以上の単一セリアコートシリカ粒子を含む凝集セリアコートシリカ粒子である複合粒子を除く)、前記セリア被覆無機酸化物粒子が、0.1重量%~5重量%の範囲内である;
少なくとも一つの有機カルボン酸基、少なくとも一つのカルボン酸塩の基、又は、少なくとも一つのカルボン酸エステル基と、少なくとも二つのヒドロキシル官能基とを同一分子内に有する化学添加物(ただし、ポリマーを除く)を
0.0025重量%超で0.1重量%未満;
水溶性溶媒;及び、
任意に
バイオサイド;
pH調整剤;
を含み、
pHが4~9であり;且つ、
前記化学添加物が以下の一般分子構造を有する、化学機械研磨(CMP)組成物
を準備すること
【化2】
(ここで、n及びmは独立して2~12から選択され;R1、R2及びR3は同一若しくは異なる原子又は同一若しくは異なる官能基であって、水素;アルキル;アルコキシ;少なくとも一つのヒドロキシル基を持つ有機基;置換された有機スルホン酸;置換された有機スルホン酸塩;置換された有機カルボン酸;置換された有機カルボン酸塩;有機カルボン酸エステル;有機アミン基;ナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選択される金属イオン;アンモニウムイオン;並びにこれらの組み合わせ、から独立して選択され;R1、R2及びR3のうち少なくとも二つは水素原子である。);
前記半導体基板の表面を前記研磨パッド及び前記化学機械研磨組成物に接触させること;並びに
二酸化ケイ素を含む前記少なくとも一つの表面を研磨すること;
を備える方法。
【請求項9】
前記水溶性溶媒が、脱イオン(DI)水、蒸留水及びアルコール性有機溶媒からなる群より選択されるものであり、
前記シリコン酸化物フィルムが、化学気相蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、高密度蒸着CVD(HDP)、又は、スピンオンシリコン酸化物フィルムからなる群より選択される、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化学添加物が
0.0025重量%超で0.1重量%未満の範囲内であり、前記組成物のpHが4.5~7.5である、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化学添加物が、酒石酸、二つの酸基を持つ粘液酸、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム塩、グルコン酸カリウム塩、グルコン酸アンモニウム塩、グルコン酸メチルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、セリア被覆コロイダルシリカ粒子;グルコン酸、グルコン酸塩、グルコン酸アルキルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される前記化学添加物を
0.0025重量%超で0.1重量%未満;及び水を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記半導体基板が、さらにシリコン窒化物表面を有し;
シリコン酸化物:シリコン窒化物の除去選択性が25よりも大きい、
請求項8に記載の方法。
【請求項14】
シリコン酸化物フィルムを備える少なくとも一つの表面を有する半導体基板を、化学機械研磨(CMP)するシステムであって、
a.前記半導体基板;
b.化学機械研磨(CMP)組成物であって
1)セリア被覆無機酸化物粒子であって、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア粒子、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるセリア被覆無機酸化物粒子(ただし、単一セリアコートシリカ粒子と、凝集セリアコートシリカ粒子とを含む複合粒子であって、1wt%未満の前記複合粒子が、5個以上の単一セリアコートシリカ粒子を含む凝集セリアコートシリカ粒子である複合粒子を除く)、前記セリア被覆無機酸化物粒子が、0.1重量%~5重量%の範囲内である;
2)少なくとも一つの有機カルボン酸基、少なくとも一つのカルボン酸塩の基、又は、少なくとも一つのカルボン酸エステル基と、少なくとも二つのヒドロキシル官能基と、を同一分子内に有する化学添加物(ただし、ポリマーを除く)を
0.0025重量%超で0.1重量%未満;
3)水溶性溶媒;及び
4)任意に
5)バイオサイド;
6)pH調整剤;
を含み、
pHが4~9であり、且つ
前記化学添加物が以下の一般分子構造を有する
化学機械研磨組成物
【化3】
(ここで、n及びmは独立して2~12から選択されるものであり;R1、R2及びR3は同一若しくは異なる原子又は同一若しくは異なる官能基であって、水素;アルキル;アルコキシ;少なくとも一つのヒドロキシル基を持つ有機基;置換された有機スルホン酸;置換された有機スルホン酸塩;置換された有機カルボン酸;置換された有機カルボン酸塩;有機カルボン酸エステル;有機アミン基;ナトリウムイオン及びカリウムイオンからなる群より選択される金属イオン;アンモニウムイオン;並びにこれらの組み合わせ、から独立して選択されるものであり;R1、R2及びR3のうち少なくとも二つは水素原子である。);
c.研磨パッド;
を備え、
前記シリコン酸化物フィルムを備える前記少なくとも一つの表面が、前記研磨パッド及び前記化学機械研磨組成物に接触される、
システム。
【請求項15】
前記水溶性溶媒が、脱イオン(DI)水、蒸留水及びアルコール性有機溶媒からなる群より選択されるものであり、
前記シリコン酸化物フィルムが、化学気相蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、高密度蒸着CVD(HDP)、又は、スピンオンシリコン酸化物フィルムからなる群より選択される、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記化学添加物が
0.0025重量%超で0.1重量%未満の範囲内であり、前記組成物のpHが4.5~7.5である、
請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記化学添加物が、酒石酸、二つの酸基を持つ粘液酸、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム塩、グルコン酸カリウム塩、グルコン酸アンモニウム塩、グルコン酸メチルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、
請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記組成物が、セリア被覆コロイダルシリカ粒子;グルコン酸、グルコン酸塩、グルコン酸アルキルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される前記化学添加物を
0.0025重量%超で0.1重量%未満;及び水を含む、
請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
前記半導体基板が、さらにシリコン窒化物表面を有し;
シリコン酸化物:シリコン窒化物の除去選択性が25よりも大きい、
請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年9月26日を出願日とする米国仮出願番号62/736,963の非仮出願であり、当該仮出願の全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、STI CMP化学的研磨組成物、及び、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスのための化学機械平坦化(CMP)に関する。
【0003】
マイクロエレクトロニクスデバイス類の製作においては、研磨、特に、選択した材料の回復及び/又は構造の平坦化のための表面の化学-機械研磨、が重要なステップとなる。
【0004】
例えば、SiN層がSiO2層の下に蒸着されて、研磨停止材として機能する。このような研磨停止材の役割は、シャロートレンチアイソレーション(STI)構造において特に重要である。選択性は、窒化物研磨速度に対する酸化物研磨速度の比として特徴的に表される。一例として、窒化ケイ素(SiN)に対する二酸化ケイ素(SiO2)の高められた研磨選択率が挙げられる。
【0005】
パターン化されたSTI構造のグローバル平坦化においては、酸化物トレンチのディッシングを低減することが検討すべきキーファクターである。トレンチ酸化物のロスを低減することで、隣接するトランジスタ間の電流の漏洩が回避される。ダイ全体(ダイ内)における不均一なトレンチ酸化物のロスは、トランジスタのパフォーマンスとデバイスの製造歩留まりに影響する。トレンチ酸化物のロスが大きい(酸化物トレンチのディッシングが大きい)と、トランジスタの分離不良を引き起こし、デバイスの故障へとつながる。したがって、STI CMP研磨組成物において、酸化物トレンチのディッシングを低減することで、トレンチ酸化物のロスを低減することが重要である。
【0006】
米国特許第5,876,490号明細書は、研磨粒子を含むとともに通常のストレス効果を示す研磨組成物を開示する。スラリーは、非研磨粒子をさらに含み、凹部での研磨速度が低下されることとなる一方、研磨粒子によって凸部における高い研磨速度が確保される。これにより平坦化が改善される。より具体的には、スラリーは、酸化セリウム粒子と高分子電解質とを含み、シャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用途に用いられ得る。
【0007】
米国特許第6,964,923号明細書は、酸化セリウム粒子と高分子電解質とを含むシャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用の研磨組成物を教示する。使用される高分子電解質は、米国特許第5,876,490号と同様に、ポリアクリル酸の塩を含む。セリア、アルミナ、シリカ及びジルコニアが研磨剤として使用される。記載された高分子電解質の分子量は300から20,000であり、しかし、全体として<100,000である。
【0008】
米国特許第6,616,514号明細書は、化学機械研磨によって窒化ケイ素よりも優先して物品の表面から第1の物質を除去する場合に用いられる化学機械研磨スラリーを開示する。当該発明に係る化学機械研磨スラリーは、研磨剤と、水性媒体と、プロトンを解離しない有機ポリオールとを含み、前記有機ポリオールが、前記水性媒体において解離しない少なくとも三つのヒドロキシル基を有する化合物を含むか、又は、前記水性媒体において解離しない少なくとも三つのヒドロキシル基を有する少なくとも一つのモノマーから形成されるポリマーを含む。
【0009】
米国特許第5,738,800号明細書は、シリカ及び窒化ケイ素を含んでなる複合体を研磨するための組成物を開示しており、当該組成物は、水性媒体と、研磨粒子と、界面活性剤と、シリカ及び窒化ケイ素と錯体を形成する化合物と、を含み、錯化剤が、プロトン解離可能な二つ以上の同じか又は異なる官能基を有する。
【0010】
国際公開第2007/086665号は、重量平均分子量が30~500で、ヒドロキシル基(OH)、カルボキシル基(COOH)又は両方を含む化合物が、研磨粒子と水とを含むとともに第1の粘度を有するCMPスラリーへと添加されて、CMPスラリーが第1の粘度よりも5~30%低い第2の粘度を有するように制御された、CMPスラリーを開示する。また、当該CMPスラリーを用いて半導体ウエハを研磨する方法を開示する。当該開示発明によれば、CMPスラリーの粘度を低下させることが可能であるとともに研磨時のウエハのグローバル平坦化の改善を可能としながら、CMPスラリーにおける研磨粒子の凝集粒子サイズを小さくすることが可能である。したがって、当該CMPスラリーは、微細なパターンが必要とされる半導体デバイスの製造プロセスにおいて有利に用いられ、半導体プロセスにおいて用いられることで半導体デバイスの信頼性と生産性とを向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これら従来開示のシャロートレンチアイソレーション(STI)研磨組成物は、高い酸化物/窒化物選択性を伴って、研磨後のパターンウエハにおける酸化物トレンチのディッシングを低減すること、及び、酸化物トレンチのディッシングをより均一とすること、の重要性に対処するものではなかった。
【0012】
以上のことから、本技術分野においては、STI化学機械研磨(CMP)プロセスにおけるパターンウエハの研磨に関し、二酸化ケイ素の高い除去速度や窒化ケイ素に対する二酸化ケイ素の高い選択性に加えて、様々なサイズの酸化物トレンチに対して当該酸化物トレンチのディッシングを低減することが可能であるとともに、より均一な酸化物トレンチディッシングをもたらすことが可能な、STI化学機械研磨組成物、方法、及びシステムについてのニーズが存在することが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、酸性、中性及びアルカリ性のpH条件を含む広いpH範囲にあるシャロートレンチアイソレーション(STI)化学機械研磨用の組成物において、SiNフィルム除去速度低下剤や酸化物トレンチディッシング低減剤のような化学添加物を導入することで、酸化物/窒化物選択性を高めるだけでなく、様々なサイズの酸化物トレンチに対し、研磨後のパターンウエハにおける当該酸化物トレンチのディッシングを低減し、且つ、当該酸化物トレンチのディッシングをより均一とするものである。
【0014】
本開示のシャロートレンチアイソレーション(STI)化学機械研磨用組成物は、研磨剤としてセリア被覆無機酸化物粒子と、酸化物トレンチディッシング低減剤及び窒化物除去速度低下剤として適当な化学添加物と、の特異な組み合わせを有するものである。
【0015】
一つの態様において、
セリア被覆無機酸化物粒子;
少なくとも一つのカルボン酸基(R-COOH)、少なくとも一つのカルボン酸塩の基、又は、少なくとも一つのカルボン酸エステル基と、少なくとも二つのヒドロキシル官能基(OH)とを同一分子内に有する化学添加物;
水溶性溶媒;及び
任意に
バイオサイド;及び
pH調整剤;
を含み、
pHが2~12、好ましくは3~10、より好ましくは4~9、最も好ましくは4.5~7.5である、
STI CMP研磨組成物
が提供される。
【0016】
セリア被覆無機酸化物粒子は、限定されるものではないが、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア、又は、その他のセリア被覆無機金属酸化物粒子を含む。
【0017】
水溶性溶媒は、限定されるものではないが、脱イオン(DI)水、蒸留水、及びアルコール性有機溶媒を含む。
【0018】
化学添加物は、SiN被膜除去速度低下剤、及び、酸化物トレンチディッシング低減剤として機能する。
【0019】
これら化学添加物は、以下に示す一般分子構造を有していてもよい。
【化1】
【0020】
上記一般分子構造(a)又は(b)において、nは1~5000から選択され、好ましくは2~12であり、より好ましくは3~6であり;mは2~5000から選択され、好ましくは2~12である。
【0021】
R1、R2及びR3は、同一又は異なる原子又は官能基であり得る。これらは、水素、アルキル、アルコキシ、一つ以上のヒドロキシル基を持つ有機基、置換された有機スルホン酸、置換された有機スルホン酸塩、置換された有機カルボン酸、置換された有機カルボン酸塩、有機カルボン酸エステル、有機アミン基、及びこれらの組み合わせ、からなる群より独立して選択され得るもので、少なくとも二つ以上、好ましくは三つ以上が水素原子であり得る。
【0022】
さらに、R1、R3、又は、R1及びR3の双方は、金属イオン又はアンモニウムイオンであってもよい。金属イオンは、限定されるものではないが、ナトリウムイオン、カリウムイオンを含む。
【0023】
R1、R2及びR3のすべてが水素原子である場合、化学添加物は、一つ(構造(a))又は二つ(構造(b))の有機カルボン酸基と、二つ(構造(b))又はそれ以上(構造(a))のヒドロキシル官能基とを持つ。
【0024】
そのような化学添加物の分子構造の一例を以下に示す。
【化2】
【化3】
【0025】
構造(a)においてR1が金属イオン又はアンモニウムイオンである場合、化学添加物は以下に示すような一般分子構造を有する。
【化4】
【0026】
構造(b)においてR1及びR
3の双方が金属イオン又はアンモニウムイオンである場合、化学添加物は以下に示す一般分子構造を有する。
【化5】
【0027】
構造(i)において、R1が金属イオンで、R2
及びR
3のすべてが水素原子である場合、そのような化学添加物の分子構造の一例としては以下に示すようなものである。
【化6】
【0028】
構造(a)において、R1が有機アルキル基である場合、化学添加物は有機酸エステル官能基及び複数のヒドロキシル官能基を同一分子内に有する。一般分子構造は以下に示す通りである。
【化7】
【0029】
構造(v)において、R2
及びR
3が水素原子である場合、そのような化学添加物の分子構造の一例としては以下に示すようなものである。
【化8】
【0030】
他の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上述の化学機械研磨(CMP)組成物を用いて、二酸化ケイ素を含む表面を少なくとも一つ有する基板を化学機械研磨(CMP)する方法、が提供される。
【0031】
他の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上述の化学機械研磨(CMP)組成物を用いて、二酸化ケイ素を含む表面を少なくとも一つ有する基板を化学機械研磨(CMP)するシステム、が提供される。
【0032】
研磨される酸化物フィルムは、化学気相蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、高密度蒸着CVD(HDP)、又は、スピンオン酸化物フィルムであってもよい。
【0033】
基板は、窒化ケイ素表面をさらに有していてもよい。SiO2:SiNの除去選択率は25より大きく、好ましくは30より大きく、より好ましくは35より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、フィルムRR(Å /min)とTEOS:SiN選択率とに関して、グルコン酸の効果を示す。
【0035】
【
図2】
図2は、酸化物トレンチディッシング速度に関して、グルコン酸の効果を示す。
【0036】
【
図3】
図3は、酸化物トレンチロス速度(A/Sec)に関して、グルコン酸の効果を示す。
【0037】
【
図4】
図4は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、グルコン酸の効果を示す。
【0038】
【
図5】
図5は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、グルコン酸の効果を示す。
【0039】
【
図6】
図6は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、グルコン酸の効果を示す。
【0040】
【
図7】
図7は、フィルムRR(A/min)とTEOS:SiN選択性とに関して、グルコン酸(GA)の重量%を変えたことによる効果を示す。
【0041】
【
図8】
図8は、酸化物トレンチディッシング速度に関して、グルコン酸(GA)の重量%を変えたことによる効果を示す。
【0042】
【
図9】
図9は、酸化物トレンチロス速度(A/Sec)に関して、グルコン酸(GA)の重量%を変えたことによる効果を示す。
【0043】
【
図10】
図10は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、グルコン酸の重量%を変えたことによる効果を示す。
【0044】
【
図11】
図11は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、グルコン酸の重量%を変えたことによる効果を示す。
【0045】
【
図12】
図12は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、グルコン酸の重量%を変えたことによる効果を示す。
【0046】
【
図13】
図13は、フィルムRR(A/min)とTEOS:SiN選択率とに関して、pH及び0.01重量%のグルコン酸(GA)の効果を示す。
【0047】
【
図14】
図14は、酸化物トレンチディッシング速度に関して、0.01重量%のグルコン酸(GA)とした場合のpHによる効果を示す。
【0048】
【
図15】
図15は、酸化物トレンチロス速度に関して、0.01重量%のグルコン酸(GA)とした場合のpHによる効果を示す。
【0049】
【
図16】
図16は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、0.01重量%のグルコン酸(GA)とした場合のpHによる効果を示す。
【0050】
【
図17】
図17は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、0.01重量%のグルコン酸(GA)とした場合のpHによる効果を示す。
【0051】
【
図18】
図18は、酸化物トレンチディッシング vs OP時間(Sec)に関して、0.01重量%のグルコン酸(GA)とした場合のpHによる効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
パターン化されたSTI構造のグローバル平坦化においては、SiN除去速度を低下させること、酸化物トレンチディッシングを低減することや、様々なサイズの酸化物トレンチに対して酸化物トレンチディッシングをより均一とすることが、検討すべきキーファクターである。トレンチ酸化物のロスを低減することで、隣接するトランジスタ間の電流の漏洩が回避される。ダイ全体(ダイ内)における不均一なトレンチ酸化物のロスは、トランジスタのパフォーマンスとデバイスの製造歩留まりに影響する。トレンチ酸化物のロスが大きい(酸化物トレンチのディッシングが大きい)と、トランジスタの分離不良を引き起こし、デバイスの故障へとつながる。したがって、STI CMP研磨組成物において、酸化物トレンチのディッシングを低減することで、トレンチ酸化物のロスを低減することが重要である。
【0053】
本発明は、シャロートレンチアイソレーション(STI)の化学機械研磨(CMP)に用いられるCMP組成物に関する。
【0054】
より詳細には、シャロートレンチアイソレーション(STI)の化学機械研磨(CMP)に用いられる本開示のCMP組成物は、セリア被覆無機酸化物研磨粒子と、酸化物トレンチディッシング低減剤及び窒化物除去速度低下剤として適当な化学添加物と、の特異な組み合わせを有するものである。
【0055】
適当な化学添加物は、限定されるものではないが、同一分子内に複数のヒドロキシル官能基を持つ、有機カルボン酸分子、有機カルボン酸塩、又は、有機カルボン酸エステル分子を含む。
【0056】
化学添加物は、同一分子内に、有機カルボン酸基、有機カルボン酸塩基又はカルボン酸エステル基の少なくとも一つと、二つ以上のヒドロキシル官能基とを含む。
【0057】
化学添加物によれば、高い酸化物フィルム除去速度、低いSiNフィルム除去速度、及び、高く且つ調整可能な酸化物:SiN選択性を達成し、より重要なことには、酸化物トレンチのディッシングを大幅に低減し、パターン化されたウエハを研磨する際の研磨ウィンドウ安定性を改善する、といった利点が提供される。
【0058】
一つの態様において、STI CMP研磨組成物であって、
セリア被覆無機酸化物粒子;
パターン化されたウエハを研磨する際のSiNフィルム除去速度低下剤及び酸化物トレンチディッシング低減剤としての化学添加物;
水溶性溶媒;並びに
任意に
バイオサイド;及び
pH調整剤;
を含み、
pHが2~12、好ましくは3~10、より好ましくは4~9、最も好ましくは4.5~7.5である
STI CMP研磨組成物が提供される。
【0059】
セリア被覆無機酸化物粒子は、限定されるものではないが、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア、又は、これら以外のセリア被覆無機酸化物粒子を含む。
【0060】
本開示の発明におけるセリア被覆無機酸化物粒子の粒子サイズ(動的光散乱法:Dynamic Light Scattering DLS technologyによって測定)は、10nmから1000nmまでの範囲内であり、好ましい平均粒子サイズは20nmから500nmまでの範囲内であり、より好ましい平均粒子サイズは50nmから250nmまでの範囲内である。
【0061】
これらセリア被覆無機酸化物粒子の濃度は、0.01重量%から20重量%までの範囲であり、好ましい濃度は0.05重量%から10重量%までの範囲であり、より好ましい濃度は0.1重量%から5重量%の範囲である。
【0062】
好ましいセリア被覆無機酸化物粒子は、セリア被覆コロイダルシリカ粒子である。
【0063】
SiNフィルム除去速度低下剤及び酸化物トレンチディッシング低減剤としての好ましい化学添加物は、少なくとも一つのカルボン酸基(R-COOH)、少なくとも一つのカルボン酸塩の基又は少なくとも一つのカルボン酸エステル基と、少なくとも二つのヒドロキシル官能基(OH)とを同一分子内に有する。
【0064】
これら化学添加剤は、下記に示すような一般分子構造を有していてもよい。
【化9】
【0065】
一般分子構造(a)又は(b)において、nは1~5000から選択され、好ましくは2~12、より好ましくは3~6であり、mは2~5000から選択され、好ましくは2~12である。
【0066】
R1、R2及びR3は、同一又は異なる原子又は官能基であってよい。これらは、水素、アルキル、アルコキシ、一つ以上のヒドロキシル基を持つ有機基、置換された有機スルホン酸、置換された有機スルホン酸塩、置換された有機カルボン酸、置換された有機カルボン酸塩、有機カルボン酸エステル、有機アミン基、及びこれらの組み合わせからなる群より独立して選択されてよく、少なくとも二つ以上、好ましくは三つ以上が水素原子であってよい。
【0067】
さらに、R1、R3又はR1及びR3の双方が、金属イオン又はアンモニウムイオンであってもよい。金属イオンは、限定されないが、ナトリウムイオン、カリウムイオンを含む。
【0068】
R1、R2及びR3のすべてが水素である場合、化学添加物は一つ(構造(a))又は二つ(構造(b))の有機カルボン酸基と、二つ(構造(b))又はそれ以上(構造(a))ヒドロキシル官能基とを有する。
【0069】
そのような化学添加物の分子構造の一例を以下に示す。
【化10】
【化11】
【0070】
構造(a)においてR1が金属イオン又はアンモニウムイオンである場合、化学添加物は以下に示すような一般分子構造を有する。
【化12】
【0071】
構造(b)においてR1及びR
3の双方が金属イオン又はアンモニウムイオンである場合、化学添加物は以下に示すような一般分子構造を有する。
【化13】
【0072】
構造(i)においてR1が金属イオンで、R2
及びR3のすべてが水素原子である場合、そのような化学添加物の一例に係る分子構造は以下に示す通りである。
【化14】
【0073】
構造(a)においてR1が有機アルキル基である場合、化学添加物は有機酸エステル官能基を有し、複数のヒドロキシル官能基を同一分子内に持つ。一般分子構造を以下に示す。
【化15】
【0074】
構造(v)においてR2
及びR
3が水素原子である場合、そのような化学添加物の一例に係る分子構造は以下に示す通りである。
【化16】
【0075】
STI CMP組成物は、SiNフィルム除去速度低下剤及び酸化物トレンチディッシング低減剤として、0.0001重量%~2.0重量%、0.0002重量%~1.0重量%、0.0003重量%~0.75重量%、0.0004重量%~0.5重量%、0.0005重量%~0.5重量%、0.0006重量%~0.25重量%、又は、0.0007重量%~0.1重量%の化学添加物を含む。
【0076】
水溶性溶媒は、特に限定されるものではないが、脱イオン(Di)水、蒸留水、及びアルコール性有機溶媒を含む。
【0077】
好ましい水溶性溶媒はDI水である。
【0078】
STI CMP組成物は、0.0001重量%~0.05重量%、好ましくは0.0005重量%~0.025重量%、より好ましくは0.001重量%~0.01重量%のバイオサイドを含んでいてもよい。
【0079】
バイオサイドは、特に限定されるものではないが、デュポン/ダウケミカル社製のKathon(登録商標)、Kathon(登録商標)CG/ICP II、デュポン/ダウケミカル社製のBiobanを含む。これらは5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、及び、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンである有効成分を含む。
【0080】
STI CMP組成物は、pH調整剤を含んでいてもよい。
【0081】
STI研磨組成物を最適なpH値とするために、酸性又は塩基性pH調整剤が使用されてもよい。
【0082】
pH調整剤は、限定されるものではないが、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、その他の無機又は有機酸、及びこれらの混合物を含む。
【0083】
pH調整剤は、水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機第四級水酸化アンモニウム化合物、有機アミン類、及び、よりアルカリ方向へとpHを調整するのに用いられ得るその他の化学的試薬のような、塩基pH調整剤を含んでいてもよい。
【0084】
STI CMP組成物は、pH調整剤を0重量%~1重量%、好ましくは0.01重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.25重量%含む。
【0085】
SiNフィルム除去速度低下剤及び酸化物トレンチングディッシング低減剤として用いられる化学添加物は、同一分子内に複数のヒドロキシル官能基を持つ、有機カルボン酸分子、有機カルボン酸塩又は有機カルボン酸エステル分子である。
【0086】
他の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上述の化学機械研磨(CMP)組成物を用いて、二酸化ケイ素を含む表面を少なくとも一つ有する基板を化学機械研磨(CMP)する方法、が提供される。
【0087】
他の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上述の化学機械研磨(CMP)組成物を用いて、二酸化ケイ素を含む表面を少なくとも一つ有する基板を化学機械研磨(CMP)するシステム、が提供される。
【0088】
研磨される酸化物フィルムは、化学気相蒸着(CVD)、プラズマCVD(PECVD)、高密度蒸着CVD(HDP)、又は、スピンオン酸化物フィルムであってもよい。
【0089】
基板は、窒化ケイ素表面をさらに有していてもよい。SiO2:SiNの除去選択率は25より大きく、好ましくは30より大きく、より好ましくは35より大きい。
【0090】
他の態様において、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて、上述の化学機械研磨(CMP)組成物を用いて、二酸化ケイ素を含む表面を少なくとも一つ有する基板を化学機械研磨(CMP)する方法が提供される。研磨される酸化物フィルムは、CVD酸化物、PECVD酸化物、高密度酸化物又はスピンオン酸化物フィルムであってもよい。
【0091】
以下、例を示しつつ本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
CMP方法
以下の本開示の例において、CMP実験は以下に示す手順及び実験条件にて行った。
【0093】
用語
セリア被覆シリカ:約100ナノメートル(nm)の粒子サイズを有する研磨剤として使用;そのようなセリア被覆シリカ粒子は、約20ナノメートル(nm)から500ナノメートル(nm)の範囲の粒子サイズを有し得る。
【0094】
セリア被覆シリカ粒子(様々なサイズを有する)は、日本国のJGC社によって提供されたもので、特開2013-119131号公報、特開2013-133255号公報、及び、国際公開第2016/159167号;並びに特願2015-169967及び特願2015-183942に記載された方法によって得られる。
【0095】
マルチトール、D-フルクトース、ズルシトール、D-ソルビトール、グルコン酸、粘液酸、酒石酸及びその他の化学原材料といった化学添加物は、ミズーリ州セントルイスのシグマ-アルドリッチ社によって提供された。
【0096】
TEOS:オルトケイ酸テトラエチル
【0097】
研磨パッド:ダウ社によって提供された研磨パッド、IC1010及びその他のパッドがCMP中に使用された。
【0098】
パラメータ
一般
Å又はA:オングストローム(長さの単位)
【0099】
BP:背圧、psi
【0100】
CMP:化学機械平坦化=化学機械研磨
【0101】
CS:搬送速度
【0102】
DF:ダウンフォース:CMP中に付与される圧力、psi
【0103】
min:分
【0104】
ml:ミリリットル
【0105】
mV:ミリボルト
【0106】
psi:ポンドパースクエアインチ
【0107】
PS:研磨工具のプラテン回転速度、rpm(1分間当たりの回転数)
【0108】
SF:組成物フロー、ml/min
【0109】
Wt.%:(リストされた成分の)重量パーセンテージ
【0110】
TEOS:SiN選択性:(TEOSの除去速度)/(SiNの除去速度)
【0111】
HDP:高密度プラズマ蒸着TEOS
【0112】
TEOS又はHDP除去速度:所定の下降圧力にて測定されたTEOS又はHDP除去速度。上記の例では、CMPツールの下降圧力は2.0、3.0又は4.0psiであった。
【0113】
SiN除去速度:所定の下降圧力にて測定されたSiN除去速度。上記の例では、CMPツールの下降圧力は3.0psiであった。
【0114】
測定
クリエイティブデザインエンジニアリング社(カリフォルニア州 95014、クパチーノ、20565 アルヴェスドライヴ)製ResMap CDE 168型を用いてフィルムの測定を行った。ResMap機器は4点プローブシート抵抗機器である。フィルムの5mm端を除外して49点径スキャンを行った。
【0115】
CMP機器
使用したCMP機器は、アプライドマテリアルズ社(カリフォルニア州 95054、サンタクララ、3050 バウアーズアヴェニュー)製200mm Mirra又は300mm Reflexionである。ダウ社(19713、デラウェア州)が提供するIC1010パッドをブランケットおよびパターンウウエハの実験のためプラテン1で使用した。
【0116】
IC1010パッド又はその他のパッドは、7ポンドのダウンフォースとして18分間パッドをコンディショニングすることで破損した。ツール設定とパッドブレークインを認定するために、二つのタングステンモニターと二つのTEOSモニターとを、ベースラインコンディションで、ヴァーサムマテリアルズ社により供給された組成物Versum STI2305で研磨した。
【0117】
ウエハ
PECVD又はLECVD又はHD TEOSウエハを用いて研磨実験を行った。これらブランケットウエハは、シリコンバレーマイクロエレクトロニクス社(カリフォルニア州 95051、サンタクララ、2985 キファーロード)から購入された。
【0118】
研磨実験
ブランケットウエハ実験において、ベースラインコンディションにて、酸化物ブランケットウエハ、及び、SiNブランケットウエハを研磨した。機器のベースラインコンディションは、テーブルスピード:87rpm、ヘッドスピード:93rpm、膜圧:2.0psi、内部チューブ圧:2.0psi、保持リング圧:2.9psi、組成物流量:200ml/minとした。
【0119】
SWKアソシエイト社(カリフォルニア州 95054、サンタクララ、2920スコットブルーバード)製のパターンウエハ(MIT860)の研磨において、当該組成物を使用した。これらウエハはVeeco VX300プロファイラー/AFM機器にて測定された。酸化物ディッシング測定のため、三つの異なるサイズのピッチ構造を採用した。当該ウエハは、センター、ミドル及びエッジのダイ位置にて測定された。
【0120】
TEOS:SiN選択性:調整可能なSTI CMP研磨組成物から得られる(TEOSの除去速度)/(SiN除去速度)
【0121】
実施例
下記実施例において、セリア被覆シリカを0.2重量%、バイオサイドを0.0001重量%から0.05重量%の範囲、及び、脱イオン水を含むSTI研磨組成物を参考例として調整した。
【0122】
実施例に係る研磨組成物は、上記参考例(セリア被覆シリカを0.2重量%、バイオサイドを0.0001重量%から0.05重量%の範囲、及び、脱イオン水)と、0.0025重量%から0.015重量%の範囲の本開示の化学添加物とを用いて調整した。
【0123】
実施例1
実施例1において、使用された研磨組成物を表1に示す。0.2重量%のセリア被覆シリカと極めて低濃度のバイオサイドとを用いて参考サンプルを作製した。化学添加物としてグルコン酸を0.01重量%にて用いた。双方のサンプルは、同程度のpH(約5.35)を有する。
【0124】
異なるフィルムについて除去速度(RR、Å/min)をテストした。化学添加物であるグルコン酸のフィルム除去速度及び選択性に対する効果を確認した。
【0125】
テスト結果を下記表1及び
図1に各々示す。
【表1】
【0126】
表1及び
図1に示される結果のように、研磨組成物におけるグルコン酸の添加によって、高いTEOS及びHDP除去速度がもたらされるとともに、SiN除去速度が効果的に低下され、化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例よりも、極めて高いTEOS:SiNフィルム選択率が得られた。
【0127】
すなわち、当該研磨組成物により、SiNフィルム除去速度の低下とともに高い酸化物/窒化ケイ素選択率が得られた。
【0128】
酸化物トレンチディッシング速度に関し、研磨組成物における化学添加物であるグルコン酸の効果をテストした。結果を表2及び
図2に示す。
【表2】
【0129】
表2及び
図2に示される結果のように、研磨組成物における化学添加物、すなわちグルコン酸の添加によって、グルコン酸を使用しなかった参考例よりも、異なるサイズのすべての酸化物トレンチフィーチャについて、酸化物トレンチディッシング速度が少なくとも72%超低減された。
【0130】
研磨組成物における化学添加物、すなわちグルコン酸の添加による効果は、添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例に係る研磨結果との比較から、酸化物トレンチロス速度(A/sec)においても確認された。
【0131】
【0132】
表3及び
図3に示される結果のように、研磨組成物における化学添加物、すなわちグルコン酸の添加によって、グルコン酸を使用しなかった参考例よりも、異なるサイズのすべての酸化物トレンチフィーチャについて、酸化物トレンチロス速度が少なくとも81%超と極めて効果的に低減された。
【0133】
研磨組成物における化学添加物、すなわちグルコン酸の添加による効果は、添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例に係る研磨結果との比較から、オーバー研磨時間に対する酸化物トレンチディッシングにおいても確認された。
【0134】
オーバー研磨時間に対する酸化物トレンチディッシングに関し、研磨組成物における化学添加物であるグルコン酸の効果のテスト結果を表4、並びに、
図4、
図5及び
図6に各々示す。
【表4】
【0135】
表4、
図4、
図5及び
図6に示される結果のように、研磨組成物における化学添加物、すなわちグルコン酸の添加によって、グルコン酸を使用しなかった参考例よりも、異なるサイズのすべての酸化物トレンチフィーチャについて、酸化物トレンチディッシングが極めて顕著に低減され、異なるオーバー研磨時間に対するオーバー研磨安定性ウィンドウが改善された。
【0136】
したがって、化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例の研磨結果との比較から、化学添加物を含むCMP組成物は、高いTEOS及びHDPフィルム除去速度を確保しつつも、SiN除去速度を低下させ、TEOS:SiNフィルム選択性を増大させ、酸化物トレンチディッシングを極めて顕著に低減させるとともに、研磨パターンウエハの形状が改善される。
【0137】
実施例2
実施例2において、表5に示されるようにして研磨組成物を作製した。化学添加物であるグルコン酸を異なる重量%にて用いた。組成物のpHはいずれも約5.35であった。
【0138】
種々のフィルム研磨除去速度及びTEOS:SiN選択率の結果を表5及び
図7に示す。
【表5】
【0139】
表5及び
図7に示される結果のように、異なる濃度のグルコン酸を含むいずれの組成物についても、SiN除去速度が安定して低下された。0.1重量%のグルコン酸を含む組成物を除くすべての組成物について、高いTEOS及びHDPフィルム除去速度が確保されつつ、化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例よりも極めて高いTEOS:SiNフィルム選択率が得られた。0.1重量%のグルコン酸を含む組成物は、テストしたすべてのフィルムについて除去速度が低下し、酸化物:SiN選択率が極めて低かった。
【0140】
当該組成物を用いた酸化物トレンチディッシング速度についてもテストした。テスト結果を表6及び
図8に示す。
【表6】
【0141】
表6及び
図8に示される結果のように、0.005重量%のグルコン酸を添加すると、100μm及び200μmに関して、酸化物トレンチディッシング速度が32%超まで低下した。0.01重量%又は0.01重量%超のグルコン酸を添加すると、異なるサイズのすべての酸化物トレンチフィーチャについて、酸化物トレンチディッシング速度が少なくとも70%超まで極めて効果的に低下した。
【0142】
酸化物トレンチロス速度(A/sec)に関し、添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例の研磨結果と比較しつつ、研磨組成物において異なる濃度にて用いられた化学添加物、すなわちグルコン酸、の添加による効果を確認した。
【0143】
【0144】
表7及び
図9に示される結果のように、0.005重量%のグルコン酸を添加すると、酸化物トレンチロス速度が、1000μmに関して少なくとも16%超まで、100μm及び200μmに関して38%まで低下した。0.01重量%又は0.01重量%超のグルコン酸を添加すると、異なるサイズのすべての酸化物トレンチフィーチャについて、酸化物トレンチロス速度が少なくとも81%超まで極めて効果的に低下した。
【0145】
オーバー研磨時間に対する酸化物トレンチディッシングに関し、添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例の研磨結果と比較しつつ、研磨組成物において異なる濃度にて用いられた化学添加物、すなわちグルコン酸、の添加による効果を確認した。
【0146】
【0147】
表8、
図10、
図11及び
図12に示される結果のように、組成物に0.0025重量%のグルコン酸を添加しただけで、酸化物トレンチディッシングが低下し、オーバー研磨安定性ウィンドウが改善された。確認した濃度範囲でグルコン酸濃度を増加させるにつれ、効果がより明確となった。
【0148】
化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例の研磨結果との比較から、異なる濃度の化学添加物を含むCMP組成物であっても、高いTEOS及びHDPフィルム除去速度を確保しつつも、SiN除去速度を低下させ、TEOS:SiNフィルム選択性を増大させ、酸化物トレンチディッシングを極めて顕著に低減させるとともに、研磨パターンウエハの形状が改善される。
【0149】
実施例3
実施例3においては、0.01重量%の濃度にて化学添加物としてグルコン酸を含ませるとともに、pH条件を変えたものをテストした。テストした組成物及びpH条件を表9に示す。
【0150】
表9及び
図13にフィルム除去速度及びTEOS:SiN選択率を示す。
【表9】
【0151】
表9及び
図13に示される結果のように、化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった研磨組成物と比較して、テストしたすべてのpH条件において、SiNフィルム除去速度が少なくとも82%超まで顕著に低下し、TEOS:SiN選択率が少なくとも300%超まで増大した。
【0152】
様々なサイズの酸化物トレンチフィーチャに係るディッシング速度に関し、化学添加物として0.01重量%のグルコン酸を用いた組成物について、pH条件の効果を確認した。結果を表10及び
図14に示す。
【表10】
【0153】
表10及び
図14に示される結果のように、研磨組成物において化学添加物として0.01重量%のグルコン酸を用いた場合、化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった研磨組成物と比較して、テストしたすべてのpH条件において、酸化物トレンチディッシング速度が顕著に低下した。
【0154】
本発明に係るSTI CMP研磨組成物は、酸性、中性又はアルカリ性を含む広いpH範囲で使用できるといえる。
【0155】
化学添加物として0.01重量%のグルコン酸を用いた組成物のpH条件について、様々なサイズの酸化物トレンチロス速度に対する効果を確認した。結果を表11及び
図15に示す。
【表11】
【0156】
表11及び
図15に示される結果のように、研磨組成物において化学添加物として0.01重量%のグルコン酸を用いた場合、化学添加物としてグルコン酸を使用しなかった研磨組成物と比較して、テストしたすべてのpH条件において、酸化物トレンチロス速度が顕著に低下した。
【0157】
オーバー研磨時間に対する酸化物トレンチディッシングに関し、添加物としてグルコン酸を使用しなかった参考例の研磨結果と比較しつつ、研磨組成物において0.01%且つ異なるpHにて用いられた化学添加物、すなわちグルコン酸、による効果を確認した。テスト結果を表12、
図16、
図17及び
図18に各々示す。
【表12】
【0158】
表12、
図16、
図17及び
図18に示される結果のように、化学添加物としてグルコン酸を0.01重量%にて使用した場合、テストしたすべてのpH条件において、異なるサイズのすべての酸化物トレンチフィーチャについて、化学添加物であるグルコン酸を使用しなかった参考例よりも、酸化物トレンチディッシングが顕著に低下し、オーバー研磨安定性ウィンドウが顕著に改善された。
【0159】
実施例4
実施例4においては、グルコン酸、粘液酸又は酒石酸;セリア被覆シリカ複合体粒子を異なる組成にて用いた。化学添加物を使用しない参考例に係る研磨組成物も示した。すべての組成物において、0.0001重量%から0.05重量%の範囲のバイオサイドと、脱イオン水とを用いた。テストされる組成物はいずれも同じpH5.3であった。
【0160】
表13に種々のフィルムについての除去速度を示す。
【表13】
【0161】
添加剤を用いなかった参考例に係る研磨組成物によるPECVDSiNフィルム除去速度と比較して、研磨剤としてのセリア被覆シリカとともに、グルコン酸、粘液酸又は酒石酸を0.01重量%にて用いた場合、PECVD SiNフィルム除去速度が顕著に低下した。
【0162】
この結果から、これら一つ又は二つのカルボン酸基及び二つ以上のヒドロキシル基を有する有機酸が、SiN除去速度低下剤として極めて効果的であることが実証された。
【0163】
研磨剤としてセリア被覆シリカ複合粒子を使用したSTI酸化物研磨組成物を用いて、研磨されたTEOS及びSiNウエハにおける総欠陥数の減少効果をテストした。
【0164】
【0165】
表14に示される結果のように、同じpH条件、且つ、同じ化学添加物である0.01重量%のグルコン酸の場合、セリア被覆シリカ複合粒子を研磨粒子として用いた研磨組成物は、研磨されたTEOS及びSiNフィルムの双方について、総欠陥数が顕著に低下した。
【0166】
表14に示される結果から、粘液酸又は酒石酸を用いた研磨組成物は、グルコン酸を用いた研磨組成物よりも、すべてのテストウエハについて、より総欠陥数が減少することも実証された。
【0167】
実施例5
実施例5においては、同じpH条件下で、化学添加物としてグルコン酸、粘液酸又は酒石酸を用いた研磨組成物について、化学添加物を使用しない参考例に係る研磨組成物と比べて、テストした。
【0168】
表15に、テストした組成物、pH条件、HDPフィルム除去速度、P200トレンチロス速度及びP200トレンチ/ブランケット比を示す。
【表15】
【0169】
表15に示される結果のように、同じpH条件で、0.01重量%と同じ濃度の化学添加物を用いた組成物は、化学添加物を用いなかった参考例に係る組成物と比較して、HDPフィルム除去速度が同程度であったものの、トレンチロス速度及びトレンチロス速度/ブランケットロス速度比が顕著に低下した。
【0170】
オーバー研磨時間とトレンチディッシングとをテストした。表16に結果を示す。
【表16】
【0171】
表16に示される結果のように、同じpH条件で、0.01重量%と同じ濃度の化学添加物を用いた組成物は、60秒又は120秒のオーバー研磨時間が付与された場合に、トレンチディッシングがより顕著に低下した。
【0172】
表16に示される結果から、異なるオーバー研磨時間条件下でトレンチディッシングを減少させるにあたっては、研磨組成物における化学添加物として酒石酸よりも、粘液酸又はグルコン酸がより効果的な化学添加物であることが実証された。
【0173】
実施例を含む上記本発明に係る形態は、本発明から作成され得る数多くの形態の例示である。プロセスに関して数多くのその他の構成を採用することができ、当該プロセスにて使用される材料についても本発明で具体的に開示されたもの以外の数多くの材料から選択することができるものと考えられる。