(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】フライ調理食品のサクミ感向上方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20241105BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20241105BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23L5/10 D
(21)【出願番号】P 2020152031
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】春口 真祐
(72)【発明者】
【氏名】岡本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】後藤 麻友
(72)【発明者】
【氏名】新井 正博
(72)【発明者】
【氏名】井上 賀美
(72)【発明者】
【氏名】酒井 聖史
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-120528(JP,A)
【文献】特開2019-004829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ調理用油脂組成物に、
脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のいずれの精製処理をも経ていない未精製オリーブ油を0.5質量%以上8.5質量%以下
、および、大豆油、菜種油、ひまわり油、パームオレイン、及び、コーン油から選ばれる一種又は二種以上の食用油脂を80質量%以上含有させることを特徴とする、フライ調理食品のサクミ感向上方法。
【請求項2】
前記未精製オリーブ油は、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、および、ランパンテバージンオリーブオイルから選ばれる一種又は二種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フライ調理用油脂組成物に、前記未精製オリーブ油を1.5質量%以上8.2質量%以下含有させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のいずれの精製処理をも経ていない未精製オリーブ油を有効成分とする、フライ調理食品のサクミ感向上剤であって、フライ調理用油脂組成物に、前記未精製オリーブ油を0.5質量%以上8.5質量%以下
、および、大豆油、菜種油、ひまわり油、パームオレイン、及び、コーン油から選ばれる一種又は二種以上の食用油脂を80質量%以上含有させる、前記向上剤。
【請求項5】
前記未精製オリーブ油は、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、および、ランパンテバージンオリーブオイルから選ばれる一種又は二種以上である、請求項4に記載の向上剤。
【請求項6】
前記向上剤を、前記フライ調理用油脂組成物に、前記未精製オリーブ油を1.5質量%以上8.2質量%以下含有させる、請求項4または5に記載の向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷら、コロッケ等のフライ調理食品のサクミ感を向上する方法、及び、当該食品のサクミ感向上剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
天ぷら、コロッケなどのフライ調理食品のおいしさには、食したときの食感のひとつである、サクミ感(サクサクとした食感)が大きく影響する。食品のサクミ感は、調理後に経時的に失われていくことが知られている。また、調理直後のサクミ感の向上も大きな課題である。
【0003】
このような課題に対して、例えば、特許文献1(特開2005-287450号公報)には、セルロース及び乳化剤とからなる揚げ物用衣改良剤が公開されている。当該発明は、揚げ物の衣に着目し、サクミ感向上を試みている。
【0004】
また、特許文献2(特開2012-19700号公報)には、特定の食用油脂に特定の乳化剤を配合した油脂組成物を用いることで、食感や風味、油にじみ等の物性の点で優れた食品を得られることが開示されており、段落0055~0069において、ドーナツ、フライドポテト、チキンスティックの食感(サクミを含む)の評価をおこなっている。
【0005】
また、特許文献3(特開2019-176743号公報)には、特定の二種類の乳化剤を特定量含有する加熱調理用油脂組成物が、ソフトなサクミの衣の揚げ物を製造することができることが開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、揚げ物の衣を改良するのであって、フライ調理用の油脂組成物に着目しておらず、フライ調理用食品全般に適応するには、難があった。また、特許文献2及び3はいずれも、特定の乳化剤を必須とするため、製造工程が煩雑であった。
【0007】
一方、特許文献4(国際公開第2019/003930号)の段落0063、表4には、精製オリーブ油を特定量配合した油脂組成物で調理した食品のサクサク感が、良好であることが開示されている。しかしながら、未精製であるエキストラバージンオリーブ油を10質量%または50質量%配合した比較例3または比較例5の油脂組成物で調理した食品は、サクサク感を感じられないことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-287450号公報
【文献】特開2012-19700号公報
【文献】特開2019-176743号公報
【文献】国際公開第2019/003930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、フライ調理食品のサクミ感向上は、フライ調理食品のおいしさを向上するために重要である。そこで、本発明の目的は、フライ調理食品のサクミ感を向上する方法、及び、当該食品のサクミ感向上剤等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、未精製オリーブ油を特定量配合した油脂組成物をフライ調理に使用した場合、得られたフライ調理食品のサクミ感が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。なお、本発明において、「サクミ感」とは、一般に消費者や当業者に理解される用語の意味と異なるところはなく、より具体的には、フライ調理食品を食べたときのサクサクした食感のことである。
【0011】
すなわち、本発明は、フライ調理用油脂組成物に、未精製オリーブ油を0.5質量%以上8.5質量%以下含有させることを特徴とする、フライ調理食品のサクミ感向上方法を提供するものである。
【0012】
前記未精製オリーブ油は、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、および、ランパンテバージンオリーブオイルから選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0013】
前記未精製オリーブ油を、1.5質量%以上8.2質量%以下含有させることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、未精製オリーブ油を有効成分とする、フライ調理食品のサクミ感向上剤であって、フライ調理用油脂組成物に、前記未精製オリーブ油を0.5質量%以上8.5質量%以下含有させる、前記向上剤である。
【0015】
前記未精製オリーブ油は、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、および、ランパンテバージンオリーブオイルから選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0016】
前記向上剤は、前記フライ調理用油脂組成物に、前記未精製オリーブ油を1.5質量%以上8.2質量%以下含有させることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、フライ調理食品のサクミ感向上のためのフライ調理用油脂組成物としての、未精製オリーブ油の使用である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、未精製オリーブ油を特定量配合したフライ調理用油脂組成物をフライ調理に使用して得られたフライ調理食品のサクミ感を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の未精製オリーブ油とは、オリーブの実から圧搾や遠心分離等の方法により分離された油であって、その油が脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうちの1種又は2種以上の精製処理を経ていないか、もしくはいずれの精製処理も経ていない該オリーブ油をいう。好ましくは、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のいずれの精製処理をも経ていない該オリーブ油である。なお、脱ガム処理は、油分中に含まれるリン脂質を主成分とするガム質を水和除去する工程である。脱酸処理は、アルカリ水で処理等することにより、油分中に含まれる遊離脂肪酸をセッケン分として除去する工程である。脱色処理は、油分中に含まれる色素を活性白土等に吸着させて除去する工程である。脱臭処理は、減圧下で水蒸気蒸留等することによって油分中に含まれる有臭成分を除去する工程である。
【0020】
オリーブの実の由来に特に制限はなく、日本国産であっても外国産であってもよい。未精製オリーブ油は、エキストラバージンオリーブオイル(エクストラバージンオリーブオイルともいう。)、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、ランパンテバージンオリーブオイル等として市場にも流通しており、いずれを用いてもよい。本発明においてはそのような市販品を用いてもよく、好ましくはエキストラバージンオリーブオイル及びバージンオリーブオイルから選ばれる一種または二種であり、より好ましくはエキストラバージンオリーブオイルである。なお、バージンオリーブオイルは、官能評価における判定基準により、エキストラバージンオリーブオイル、バージンオリーブオイル、オーディナリーバージンオリーブオイル、ランパンテバージンオリーブオイルの4つに区分されている。バージンオリーブオイルの基準は、国際オリーブ協会の定めた基準を適宜参照することができる。
【0021】
本発明は、前記未精製オリーブ油(2種以上のものを使用する場合、その合計)を、フライ調理用油脂組成物中に特定量含有させることで効果を発揮する。前記未精製オリーブ油の含有量は、0.5質量%以上8.5質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上8.5質量%以下であり、より好ましくは、1.5質量%以上8.2質量%以下であり、さらに好ましくは、2質量%以上8質量%以下であり、さらにより好ましくは、3質量%以上8質量%以下であり、特に好ましくは、4質量%以上8質量%以下であり、最も好ましくは5.5質量%以上8質量%以下である。所定の含有量とすることで、フライ調理食品のサクミ感を向上することができる。
【0022】
本発明におけるフライ調理用油脂組成物は、食用油脂(未精製オリーブ油は含まない。)を含む。前記食用油脂は、食用のものを適宜利用することができ、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油(未精製オリーブ油は含まない。)、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油、あまに油、えごま油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂等の動物脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。前記食用油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上を用いてもよい。なかでも、製造時の作業性等の点で、大豆油、菜種油、ひまわり油、パームオレイン、コーン油等のヨウ素価が50以上(好ましくは70以上であり、より好ましくは80以上である。)の油脂から選ばれる1種又は2種以上を55質量%以上配合した食用油脂が好ましく、70質量%以上配合した食用油脂がより好ましい。また、前記食用油脂は、大豆油、菜種油、ひまわり油、パームオレイン、及び、コーン油から選ばれる一種又は二種以上を含むことが好ましく、大豆油、菜種油、パームオレイン、及び、コーン油から選ばれる一種又は二種以上を含むことがより好ましく、大豆油、菜種油、及び、パームオレインから選ばれる一種又は二種以上を含むことがさらに好ましい。
【0023】
また、本発明におけるフライ調理用油脂組成物は、構成脂肪酸総量に占めるn-3系脂肪酸含量が30質量%以上、好ましくは40質量%以上含む食用油脂(以下、n-3系食用油脂という。)を含有することが好ましく、その含有量は特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。前記n-3系食用油脂としては、例えば、あまに油、えごま油、しそ油、DHA(ドコサヘキサエン酸)を含む油脂(魚油等)、EPA(エイコサペンタエン酸)を含む油脂(魚油等)、チアシード油、藻類油、微生物油等が挙げられる。なかでも、前記n-3系食用油脂として、あまに油、及び、えごま油から選ばれる一種又は二種を用いることが好ましい。
【0024】
前記食用油脂は、油糧原料から搾油、抽出等して得られた原油から、更に、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理のうちの1種又は2種以上の精製処理が施されてなるものであることが好ましく、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理および脱臭処理のすべての精製処理を施されてなるものであることがより好ましい。このような精製処理によれば、原料の香りや風味、色素等が除かれて、そのような原料由来の性質が好まれない場合の需要に応えることができる。なお、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、脱臭処理等の精製処理の意義については、未精製オリーブ油に関する説明において、上述したとおりである。
【0025】
前記食用油脂の含有量(2種以上のものを使用する場合、その合計の含有量)は、前記フライ調理用油脂組成物中に、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、92質量%以上であることがさらにより好ましい。また、前記食用油脂の含有量の上限は特に限定されず、例えば、前記フライ用調理用油脂組成物中の他の成分との合計が100質量%となるように配合する。また、本発明のフライ調理用油脂組成物の水の含有量は、1質量%未満が好ましい。
【0026】
また、前記フライ調理用油脂組成物は、本発明による作用効果を害しない範囲であれば、抗酸化剤、乳化剤、香料などの添加素材を、更に配合していてもよい。具体的には、例えば、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロールなどが挙げられる。
【0027】
本発明におけるフライ調理食品は、前記フライ調理用油脂組成物でフライ調理された食品である。例えば、天ぷら、揚げ玉、フライドチキン、フライドポテト、ハッシュドポテト、コロッケ、唐揚げ、とんかつ、魚フライ、アメリカンドッグ、チキンナゲット、揚げ豆腐、ドーナッツ、揚げパン、揚げ米菓、スナック菓子等のフライ調理食品に好適に使用され得る。特に、天ぷらのようにバッターを使用するフライ調理食品やコロッケのようにパン粉を使用するフライ調理食品に好適に使用される。フライ調理食品を製造する態様に特に制限はなく、本発明におけるフライ調理用油脂組成物を使用して、それぞれのフライ調理食品の種類に応じて、適した方法にて、適宜所望のフライ調理食品を製造すればよい。例えば、加熱された前記フライ調理用油脂組成物に、所定のフライ調理食品の調理用材料を加えて調理をする。前記フライ調理用油脂組成物の加熱温度は、例えば、150℃以上220℃以下であり、好ましくは160℃以上210℃以下であり、より好ましくは160℃以上200℃以下である。
【0028】
本発明のサクミ感向上剤は、未精製オリーブ油を有効成分とする。未精製オリーブ油は、上記で述べたとおりである。前記サクミ感向上剤は、フライ調理食品の調理に使用するフライ調理用油脂組成物に、前記未精製オリーブ油を特定量含有させる。前記フライ調理用油脂組成物中の前記未精製オリーブ油の含有量は、0.5質量%以上8.5質量%以下であり、好ましくは、1質量%以上8.5質量%以下であり、より好ましくは、1.5質量%以上8.2質量%以下であり、さらに好ましくは、2質量%以上8質量%以下であり、さらにより好ましくは、3質量%以上8質量%以下であり、特に好ましくは、4質量%以上8質量%以下であり、最も好ましくは5.5質量%以上8質量%以下である。
【0029】
前記サクミ感向上剤の前記未精製オリーブ油の含有量は、使用上支障のない範囲で決めることができ、例えば、5質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。上限は特になく、例えば、100質量%以下である。また、前記サクミ感向上剤は、前記未精製オリーブ油以外に、前記食用油脂やフライ調理用油脂組成物に通常添加される成分を含んでいてもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に使用した食用油脂及び未精製オリーブ油は、以下のとおりである。
【0031】
<食用油脂>
菜種油(株式会社J-オイルミルズ社製)
大豆油(株式会社J-オイルミルズ社製)
あまに油(株式会社J-オイルミルズ社製、構成脂肪酸総量に占めるn-3系脂肪酸含量:52.1質量%)
えごま油(株式会社J-オイルミルズ社製、構成脂肪酸総量に占めるn-3系脂肪酸含量:56.5質量%)
パームオレイン(ヨウ素価67)(株式会社J-オイルミルズ社製)
ハイオレイックヒマワリ油(株式会社J-オイルミルズ社製)
【0032】
なお、これらの食用油脂は、いずれも、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理及び脱臭処理のすべての精製処理が施されてなるものである。また、水の含有量は、1質量%未満である。
【0033】
<未精製オリーブ油>
未精製オリーブ油A(エキストラバージンオリーブオイル(スペイン産)、株式会社J-オイルミルズ社製)
未精製オリーブ油B(エキストラバージンオリーブオイル(スペイン産)、株式会社J-オイルミルズ社製)
未精製オリーブ油C(エキストラバージンオリーブオイル(オーストラリア産)、株式会社J-オイルミルズ社製)
【0034】
なお、これらの未精製オリーブ油は、いずれもエキストラバージンオリーブオイルであり、脱ガム処理、脱酸処理、脱色処理、及び脱臭処理のいずれの精製処理も施されていないものである。また、水の含有量は、1質量%未満である。
【0035】
[試験例1] 牛肉コロッケでの評価
表1に記載の油脂組成物を用いて、冷凍牛肉コロッケ(フライ調理前のもの)(株式会社ニチレイフーズ製)を、以下の条件で、フライ調理し、牛肉コロッケを得た。
【0036】
(フライ調理条件)
片手鍋(直径20cm)に油脂組成物を1kg量りとり、180℃になるまで、加温した。冷凍牛肉コロッケを6分間フライ調理した。
牛肉コロッケを鍋の上で30秒間、静かに油切りをし、牛肉コロッケを得た。
【0037】
(官能評価)
予め、訓練を受けた12名の評価者が、10cmスケールのVAS(Visual analogue scale)で、絶対評価による評価で実施した(数値の大きい方が、サクミ感が高い。)。得られた結果から、平均値を算出した。なお、表中の評価値の数値は、原点(0cm)からの距離とした(例えば、5.0cmを5.0とした)。
【0038】
(テクスチャーアナライザー評価(TA評価))
TA評価は、以下の条件でおこなった。フライ調理で得られたフライ調理食品をバットにとり、フライ調理後、約5分後に、以下の条件でテクスチャーアナライザーを用いて、評価した。牛肉コロッケの面積の広い面を水平に置き、楕円形の長径方向の左端部(端から約2.5cm)、中央部、右端部(端から約2.5cm)の3か所を1回測定し、ピーク数を合計した。同様に合計3サンプルの測定をおこない、得られたピーク数の平均値を算出した(数値が大きい方が、サクミ感が高い。)。
使用機器:Texture Analyser(TA.XT. Plus, Stable Micro Systems)
Test Speed:2.0 mm/sec
Target Mode:Strain 100%
Trigger Force:5 g
【0039】
結果を表1に示す。未精製オリーブ油を含む、実施例1-1の油脂組成物でフライ調理した牛肉コロッケは、比較例1-1に比べて、官能評価およびTA評価いずれにおいても、サクミ感が向上していた。従って、油脂組成物に所定量の未精製オリーブ油を含有させることで、フライ調理食品のサクミ感が向上することがわかった。
【0040】
【0041】
[試験例2]
表2に記載の油脂組成物を用いて、試験例1と同じ方法で、評価をおこなった。結果を表2に示す。
【0042】
【0043】
表2に示したように、未精製オリーブ油を含む、実施例2-1の油脂組成物でフライ調理した牛肉コロッケは、比較例2-1に比べて、官能評価およびTA評価いずれにおいても、サクミ感が向上していることが確認できた。
【0044】
[試験例3] ポテトコロッケでの評価
表3に記載の油脂組成物を用いて、冷凍牛肉コロッケに代えて、冷凍ポテトコロッケ(「NEWポテトコロッケ60」(味の素冷凍食品株式会社製))を使用したこと、フライ調理時間を5分間としたことを除き、試験例1と同じ方法で、評価をおこなった(ただし、評価者は4名とした。)。結果を表3に示す。
【0045】
【0046】
表3に示したように、ポテトコロッケにおいても、牛肉コロッケと同様にサクミ感が向上していることが確認できた。
【0047】
[試験例4] 未精製オリーブ油の配合評価
表4に記載の油脂組成物を用いて、試験例1と同じ方法で、評価をおこなった(ただし、評価者は4名とした。)。結果を表4に示す。
【0048】
【0049】
表4に示したように、本発明の油脂組成物でフライ調理した食品は、いずれもサクミ感が向上しており、油脂組成物中の未精製オリーブ油の含有量が4質量%以上8質量%以下で効果があることが確認された。また、種類の異なる未精製オリーブ油であっても、効果が得られることが確認できた。
またさらに、油脂組成物中のあまに油の配合量が増えることで、サクミ感が向上することがわかった(実施例4-2と4-3の対比)。
【0050】
[試験例5] ハッシュドポテトでの評価
表5に記載の油脂組成物を用いて、冷凍ハッシュドポテト(フライ調理前のもの)(株式会社ニチレイフーズ製)を、170℃、3分30秒間フライし、ハッシュドポテトを得た。ポテトコロッケに代えてハッシュドポテトを使用したことを除き、試験例3と同じ方法で、官能評価をおこなった。結果を表5に示す。
【0051】
【0052】
表5に示したように、ハッシュドポテトにおいても、牛肉コロッケ等と同様にサクミ感が向上した。また、油脂組成物中のあまに油の配合量が増えることで、サクミ感が向上することがわかった。
【0053】
[試験例6] フライドチキンでの評価
表6に記載の油脂組成物を用いて、冷凍フライドチキン(フライ調理前のもの)(株式会社ニチレイフーズ製)を、170℃、5分30秒間フライし、フライドチキンを得た。ポテトコロッケに代えてフライドチキンを使用したことを除き、試験例3と同じ方法で、官能評価をおこなった。結果を表6に示す。
【0054】
【0055】
表6に示したように、フライドチキンにおいても、牛肉コロッケ等と同様にサクミ感が向上した。また、油脂組成物中のあまに油の配合量が増えることで、サクミ感が向上することがわかった。
【0056】
[試験例7] 揚げ玉での評価
表7に記載の油脂組成物を用いて、バッター(天ぷら粉100gと水160gとを混合)を、180℃、1分30秒フライし、揚げ玉を得た。ポテトコロッケに代えて揚げ玉を使用したことを除き、試験例3と同じ方法で、官能評価をおこなった。結果を表7に示す。
【0057】
【0058】
表7に示したように、揚げ玉においても、牛肉コロッケ等と同様にサクミ感が向上した。従って、同じようにバッターを用いる天ぷらにおいてもサクミ感を向上できることがわかった。
また、油脂組成物中のあまに油の配合量が増えることで、サクミ感が向上することがわかった。
【0059】
[試験例8]
表8に記載の油脂組成物を用いて、試験例4と同じ方法で、官能評価をおこなった。結果を表8に示す。
【0060】
【0061】
表8に示したように、油脂組成物中の未精製オリーブ油の含有量が2質量%で、サクミ感の向上効果があることがわかった。従って、油脂組成物中の未精製オリーブ油の含有量が2質量%以上8質量%以下で効果があることが確認された。また、油脂組成物中にあまに油を配合することで、サクミ感が向上することもわかった。
【0062】
[試験例9] サクミ感向上剤の製造1
菜種油900gと大豆油100gを混合した油脂組成物に、未精製オリーブ油Bを6質量%となるように配合して、フライ調理食品のサクミ感向上剤を製造した。
【0063】
[試験例10] サクミ感向上剤の製造2
菜種油900gとパームオレイン100gを混合した油脂組成物に、未精製オリーブ油Cを30質量%となるように配合して、フライ調理食品のサクミ感向上剤を製造した。
【0064】
[試験例11] サクミ感向上剤の製造3
菜種油800g、ハイオレイックヒマワリ油120g、あまに油10g、および、未精製オリーブ油C 70gを混合して、フライ調理食品のサクミ感向上剤を製造した。