(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】加熱装置及びLEDの制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241105BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241105BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L33/00 J
H01L33/00 K
(21)【出願番号】P 2020205999
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】河西 繁
(72)【発明者】
【氏名】森藤 慶之
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102645(JP,A)
【文献】特開2020-009927(JP,A)
【文献】特開2006-066498(JP,A)
【文献】特開2005-115350(JP,A)
【文献】特開2007-109747(JP,A)
【文献】特開2008-124303(JP,A)
【文献】特開2020-057761(JP,A)
【文献】特表2013-517613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031903(US,A1)
【文献】国際公開第2010/049882(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを有し、前記LEDからの光で加熱対象体を加熱する加熱機構と、
前記LEDに供給される電力を制御するものであり、加熱対象体の温度調整の際は、前記LEDに供給される電力を、その電流が許容電流Imaxを超えない範囲で制御するLED制御部と、
前記許容電流Imaxを補正する補正部と、
前記LEDの電圧を測定する電圧測定部と、を備え、
前記許容電流Imaxは、予め取得された前記LEDの電流-光出力特性における、電流に対して光出力が線形に変化する電流帯から設定され、
前記補正部は、
前記LEDへ補正用に前記許容電流Imaxを供給した後に推定用電流Ieを供給した時の、前記電圧測定部による測定結果に基づいて、前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmを推定し、
推定された前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmが、前記許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合、前記許容電流Imaxを補正
し、
前記補正部は、前記推定された前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmと前記許容ジャンクション温度Tmaxとの差分に基づいて、前記許容電流Imaxを低下させるように補正する、加熱装置。
【請求項2】
前記LEDに電力を供給し実際に当該LEDを発光させ、前記LEDの電流-光出力特性を取得する取得部と、
取得された前記LEDの電流-光電力特性に基づいて前記許容電流Imaxを設定する設定部と、をさらに備える、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
加熱対象体を光で加熱するためのLEDの制御方法であって、
前記LEDに供給される電力を、その電流が許容電流Imaxを超えない範囲で制御する工程と、
前記許容電流Imaxを補正する工程と、を含み、
前記許容電流Imaxは、予め取得された前記LEDの電流-光出力特性における、電流に対して光出力が線形に変化する電流帯から設定され、
前記補正する工程は、
前記LEDへ補正用に前記許容電流Imaxを供給した後に推定用電流Ieを供給した時の、前記LEDの電圧の測定結果に基づいて、前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmを推定し、
推定された前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmが、前記許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合、前記許容電流Imaxを補正
し、
前記補正する工程は、前記推定された前記許容電流Imaxの供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmと前記許容ジャンクション温度Tmaxとの差分に基づいて、前記許容電流Imaxを低下させるように補正する、制御方法。
【請求項4】
前記LEDに電力を供給し実際に当該LEDを発光させ、前記LEDの電流-光出力特性を取得する工程と、
取得された前記LEDの電流-光電力特性に基づいて前記許容電流Imaxを設定する工程と、をさらに含む、請求項
3に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱装置及びLEDの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板にマトリクス状に設けられた複数の被検査チップの電気的特性をテスタにより順番に検査するためのプローバが開示されている。このプローバは、基板を載置する載置台と、複数の被検査チップの電極パッドに順番に接触させる接触子と、載置台の載置面とは反対側において、複数の被検査チップが夫々位置する複数の領域を互いに独立して加熱するように設けられ各々1個または複数のLEDからなる複数のLEDユニットと、を備える。また、このプローバは、被検査チップの検査時において、複数のLEDユニットの内、当該検査が行われる被検査チップの領域及び当該領域の周辺領域のうち、少なくとも当該検査が行われる被検査チップの領域に対応する領域のLEDユニットを駆動するように制御信号を出力する制御部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、LEDからの光で加熱対象体を加熱する加熱装置において、LEDの利用効率を長期間にわたって向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、加熱装置であって、LEDを有し、前記LEDからの光で加熱対象体を加熱する加熱機構と、前記LEDに供給される電力を制御するものであり、加熱対象体の温度調整の際は、前記LEDに供給される電力を、その電流が許容電流Imaxを超えない範囲で制御するLED制御部と、前記許容電流Imaxを補正する補正部と、前記LEDの電圧を測定する電圧測定部と、を備え、前記許容電流Imaxは、予め取得された前記LEDの電流-光出力特性における、電流に対して光出力が線形に変化する電流帯から設定され、前記補正部は、前記LEDへ補正用に前記許容電流Imaxを供給した後に推定用電流Ieを供給した時の、前記電圧測定部による測定結果に基づいて、前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmを推定し、推定された前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmが、前記許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合、前記許容電流Imaxを補正し、前記補正部は、前記推定された前記許容電流Imaxを供給した時の前記LEDのジャンクション温度Tjmと前記許容ジャンクション温度Tmaxとの差分に基づいて、前記許容電流Imaxを低下させるように補正する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、LEDからの光で加熱対象体を加熱する加熱装置において、LEDの利用効率を長期間にわたって向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる加熱装置を有する、検査システムとしてのプローバの構成の概略を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態にかかる加熱装置を有する、検査システムとしてのプローバの構成の概略を示す正面図である。
【
図4】ステージ及びLED制御部の構成を概略的に示す図である。
【
図5】光照射機構の構成を概略的に示す平面図である。
【
図6】LEDユニット内におけるLEDの接続形態の一例を示す図である。
【
図7】
図1のプローバにおける電子デバイスの温度測定用の回路の構成を概略的に示す図である。
【
図8】LED141に供給される直流電力の許容電流Imaxの設定及び補正に関する主制御部200の機能ブロック図である。
【
図9】LEDユニットUへ供給される直流電力の電流と当該LEDユニットUの光出力(強度)との関係を示す図である。
【
図10】本補正方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板上に所定の回路パターンを持つ多数の電子デバイスが形成される。形成された電子デバイスは、電気的特性等の検査が行われ、良品と不良品とに選別される。電子デバイスの検査は、例えば、各電子デバイスが分割される前の基板の状態で、検査システムを用いて行われる。
【0009】
プローバ等と称される検査システム(以下、「プローバ」という。)は、多数のプローブを有するプローブカードと、基板が載置される載置台と、を備える。検査の際、プローバでは、プローブカードの各プローブが電子デバイスの各電極に接触され、その状態で、プローブカードの上部に設けられたテスタから各プローブを介して当該電子デバイスに電気信号が供給される。そして、各プローブを介して電子デバイスからテスタが受信した電気信号に基づいて、当該電子デバイスが不良品か否か選別される。
この種のプローバには、電子デバイスの電気的特性を検査する際、載置台内に設けられた加熱装置や冷却装置によって、当該載置台の温度が制御され、基板が所望の温度に調整される。また、プローバには、加熱装置として、LED(発光ダイオード)からの光で加熱するものを用いる場合がある(特許文献1参照)。
【0010】
ところで、LEDからの光で基板を所望の温度に調節する構成において、LEDに供給する電流に制限値を設けない場合、光出力を限りなく大きくし得るため、基板の温度が所望の温度から低下したときに高速で所望の温度に戻すことができる等、プローバとしての性能は向上する。しかし、LEDに対する電流に制限値を設けない場合、大きな電流を流した結果、LEDの温度が上昇し、これによりLEDのPN接合部の温度すなわちジャンクション温度も上昇し、PN接合部における電子とホールの再結合効率が低下し、発光効率が落ちることがある。この状態になると、いわゆる正のフィードバックがかかり、熱暴走が発生する。つまり、LEDの温度上昇→発光効率の低下→高光出力とするため電流増加→LEDの更なる温度上昇、というループに陥る。
【0011】
そのため、従来、LEDに対する電流に制限値が設けられている。しかし、この制限値は、通常、一定である。また、熱暴走が生じる電流がLED間で異なるため、上述の制限値は、通常、低く設定されている。上記制限値が低い値で一定であると、LEDの性能を最大限に発揮することができない。
一方、熱暴走が生じる電流は、LED間差がないとしても、経時変化する。そのため、LEDの性能を最大限利用するため上記制限値を高い値で一定とすると、長期間経過したときに熱暴走が生じるおそれがある。
上述の点は、LEDからの光で加熱する加熱装置を有するシステムであれば、プローバ以外でも同様である。
【0012】
そこで、本開示にかかる技術は、LEDからの光で加熱対象体を加熱する加熱装置において、LEDの性能を長期間にわたって最大限利用する。
【0013】
以下、本実施形態にかかる載置台、加熱装置及び制御方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
図1及び
図2はそれぞれ、本実施形態にかかる加熱装置を有する、検査システムとしてのプローバ1の構成の概略を示す斜視図及び正面図である。
図2では、
図1のプローバ1の後述の収容室2とローダ3が内蔵する構成要素を示すため、その一部が断面で示されている。
【0015】
図1及び
図2のプローバ1は、基板であり検査対象体且つ加熱対象体であるウェハWの電気的特性の検査を行うものであり、具体的には、ウェハWに形成された複数の電子デバイス(後述の
図3の符号D参照)それぞれの電気的特性の検査を行うものである。このプローバ1は、検査時にウェハWを収容する収容室2と、収容室2に隣接して配置されるローダ3と、収容室2の上方を覆うように配置されるテスタ4とを備える。
【0016】
収容室2は、内部が空洞の筐体であり、ウェハWが載置されるステージ10を有する。ステージ10は、当該ステージ10に対するウェハWの位置がずれないようにウェハWを吸着保持する。また、ステージ10には、当該ステージ10を水平方向及び鉛直方向に移動させる移動機構11が設けられている。移動機構11は、その上部にステージ10が配設されるステンレス等の金属材料からなる基台11aを有し、図示は省略するが、基台11aを移動させるためのガイドレールや、ボールねじ、モータ等を有する。この移動機構11により、後述のプローブカード12とウェハWの相対位置を調整してウェハWの表面の所望の電極をプローブカード12のプローブ12aと接触させることができる。
【0017】
収容室2におけるステージ10の上方には、ステージ10に対向するように、接触端子としてのプローブ12aを多数有するプローブカード12が配置される。プローブカード12は、インターフェース13を介してテスタ4へ接続されている。各プローブ12aは、電気特性の検査時に、ウェハWの各電子デバイスの電極に接触し、テスタ4からの電力をインターフェース13を介して電子デバイスへ供給し、且つ、電子デバイスからの信号をインターフェース13を介してテスタ4へ伝達する。
【0018】
ローダ3は、ウェハWが収容された搬送容器であるFOUP(図示せず)が配置されている。また、ローダ3は、ウェハWを搬送する搬送機構(図示せず)を有する。搬送機構は、FOUPに収容されているウェハWを取り出して収容室2のステージ10へ搬送する。また、搬送機構は、電子デバイスの電気的特性の検査が終了したウェハWをステージ10から受け取り、FOUPへ収容する。
【0019】
さらに、ローダ3は、各電子デバイスにおける電位差生成回路(図示せず)における電位差を測定する電位差測定ユニット14を有する。上記電位差生成回路は、例えば、ダイオード、トランジスタまたは抵抗である。電位差測定ユニット14は、配線15を介してインターフェース13に接続され、上記電位差生成回路に対応する2つの電極へ接触する2つのプローブ12a間の電位差を取得し、取得した電位差を後述の制御部16へ伝達する。インターフェース13における各プローブ12a及び配線15の接続構造については後述する。
【0020】
さらに、ローダ3は、検査対象の電子デバイスの温度制御等の各種制御を行う制御部16を有し、制御部16は、主制御部200と、温度制御部210と、を有する。
【0021】
主制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、電気的特性検査時のプローバ1の各構成部の動作(具体的にはステージ10の移動機構11の動作等)を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、後述のLED141に供給する電力の許容電流Imaxを設定するプログラムや、許容電流Imaxを補正するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から主制御部200にインストールされたものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0022】
温度制御部210は、後述の光照射機構140のLED141を制御し当該LED141からの光による加熱を制御するLED制御部211と、後述の冷媒流路Rへの冷媒の流量を調整する流量調整バルブ162を制御する冷却制御部212と、を有する。
【0023】
なお、制御部16や電位差測定ユニット14は収容室2内に設けられてもよく、また、電位差測定ユニット14は、プローブカード12に設けられてもよい。
【0024】
テスタ4は、電子デバイスが搭載されるマザーボードの回路構成の一部を再現するテストボード(図示省略)を有する。テストボードは、電子デバイスからの信号に基づいて、該電子デバイスの良否を判断するテスタコンピュータ17に接続される。テスタ4では、上記テストボードを取り替えることにより、複数種のマザーボードの回路構成を再現することができる。
【0025】
さらに、プローバ1は、ユーザ向けに情報を表示したりユーザが指示を入力したりするためのユーザインターフェース部18を備える。ユーザインターフェース部18は、例えば、タッチパネルやキーボード等の入力部と液晶ディスプレイ等の表示部とからなる。
【0026】
上述の各構成要素を有するプローバ1では、電子デバイスの電気的特性の検査の際、テスタコンピュータ17が、電子デバイスと各プローブ12aを介して接続されたテストボードへデータを送信する。そして、テスタコンピュータ17が、送信されたデータが当該テストボードによって正しく処理されたか否かを当該テストボードからの電気信号に基づいて判定する。
【0027】
次に、上述のプローバ1において検査されるウェハWについて
図3を用いて説明する。
図3は、ウェハWの構成を概略的に示す平面図である。
ウェハWには、略円板状のシリコン基板にエッチング処理や配線処理を施すことにより、
図3に示すように、複数の電子デバイスDが互いに所定の間隔をおいて、表面に形成されている。電子デバイスDすなわちウェハWの表面には、電極Eが形成されており、該電極Eは当該電子デバイスDの内部の回路素子に電気的に接続されている。電極Eへ電圧を印加することにより、各電子デバイスDの内部の回路素子へ電流を流すことができる。なお、電子デバイスDの大きさは、例えば、平面視10mm~30mm角である。
【0028】
次に、ステージ10及びLED制御部211の構成について
図4~
図6を用いて説明する。
図4はステージ10及びLED制御部211の構成を概略的に示す図であり、ステージ10については断面で示している。
図5は後述の光照射機構140の構成を概略的に示す平面図である。
図6は、後述のLEDユニットU内におけるLED141の接続形態の一例を示す図である。
図7は、プローバ1における電子デバイスDの温度測定用の回路の構成を概略的に示す図である。
【0029】
ステージ10は、
図4に示すように、天板部としてのトッププレート120を含む複数の機能部が積層されてなる。ステージ10は、当該ステージ10を水平方向及び鉛直方向に移動させる移動機構11(
図2参照)上に、熱絶縁部材(図示せず)を介して載置される。熱絶縁部材は、ステージ10と移動機構11とを熱的に絶縁するためのものである。
【0030】
ステージ10は、上方から順に、トッププレート120と、流路形成部材130と、加熱機構としての光照射機構140とを有する。
【0031】
トッププレート120は、ウェハWが載置される部材である。トッププレート120は、言い換えると、その表面120aが、ウェハWが載置される基板載置面としてのウェハ載置面となる部材である。なお、以下では、ステージ10の上面でもあるトッププレート120の表面120aをウェハ載置面120aと記載することがある。
【0032】
トッププレート120は、例えば円板状に形成されている。また、トッププレート120は、例えばSiC(Silicon Carbide)から形成される。SiCは、比熱が小さく熱伝導率が高い。また、SiCは、光照射機構140の後述のLED141からの光の吸収効率が高い。したがって、トッププレート120をSiCで形成することにより、光照射機構140からの光によるトッププレート120の加熱や後述の冷媒流路Rを流れる冷媒によるトッププレート120の冷却を効率的に行うことができ、もって、トッププレート120に載置されたウェハWを効率良く加熱したり冷却したりすることができる。
【0033】
なお、トッププレート120のウェハ載置面120aには、ウェハWを吸着するための吸着穴(図示せず)が形成されている。また、トッププレート120には、複数の温度センサ121が平面視において互いに離間した位置に埋設されている。
【0034】
流路形成部材130は、トッププレート120と光照射機構140との間に介在するようにトッププレート120の裏面に接合され、トッププレート120との間に冷媒が流れる冷媒流路Rを形成する部材であり、トッププレート120と略同径の円板状に形成されている。また、流路形成部材130の材料には、光(具体的には後述のLED141からの光)を透過可能な材料(例えばガラス)が用いられる。
【0035】
この流路形成部材130が取り付けられるトッププレート120の裏面120bには、溝が形成されており、該溝が、流路形成部材130に覆われて冷媒流路Rを形成する。プローバ1では、冷媒流路Rを流れる冷媒でトッププレート120を冷却することによって、トッププレート120上すなわちステージ10上に載置されたウェハWを冷却し、具体的には、ウェハWに形成された電子デバイスを冷却する。
【0036】
また、冷媒流路Rと連通する供給口122と排出口123とが、トッププレート120に形成されている。供給口122には、冷媒流路Rに冷媒を供給する供給管160が接続されており、排出口123には、冷媒流路Rから冷媒を排出する排出管161が接続されている。供給管160には、冷媒流路Rに供給する冷媒の流量を調整する流量調整バルブ162や、冷媒を貯留し冷媒の温度を調整するチラーユニット(図示せず)、ポンプ(図示せず)が設けられている。
【0037】
冷媒流路Rを流れる冷媒としては、光(具体的には後述のLED141からの光)を透過可能な材料(例えば水)が用いられ、上記ポンプによってチラーユニットから供給管160を介して冷媒流路Rへ供給される。
また、冷媒流路Rには、電子デバイスD(
図3参照)の試験温度または目標温度に対応した温度の冷媒が供給される。冷媒の温度は、温度制御部210の冷却制御部212の制御の下、前述のチラーユニットにより調整される。
なお、冷媒の流量を調整する流量調整バルブ162等の動作は温度制御部210の冷却制御部212により制御される。
【0038】
光照射機構140は、ウェハWを指向するLED141を複数有し、これらLED141からの光で、ウェハWを加熱する。この光照射機構140は、トッププレート120のウェハ載置面120aに載置されたウェハWと流路形成部材130を介して対向するように配置されている。
【0039】
光照射機構140は、具体的には、複数のLED141がユニット化されたLEDユニットUを複数有すると共に、これらLEDユニットUが搭載されるベース142を有する。光照射機構140におけるLEDユニットUは、例えば、
図5に示すように、ウェハW上に形成された電子デバイスD(
図3参照)と同数で同様に配列された平面視正方形状のユニットU1と、その外周を覆う平面視非正方形状のユニットU2とを有する。ユニットU1及びユニットU2によりベース142の略全面が覆われている。これにより、LEDユニットUのLED141からの光を、少なくとも、トッププレート120におけるウェハWが載置される部分全体に、照射することができる。
【0040】
各LED141は、ウェハWに向けて光(例えば赤外光)を照射する。LED141から出射された光(以下、「LED光」と省略することがある。)は、光透過部材からなるステージ10の流路形成部材130を通過する。流路形成部材130を通過した光は、ステージ10の冷媒流路Rを流れる、光を透過可能な冷媒を通過し、トッププレート120に入射され吸収される。
【0041】
ベース142は、平面視において、トッププレート120と略同径の円板状に形成されている。また、ベース142は、
図4に示すように、その表面に凹部142aが形成されており、凹部142a内に、LED141が搭載される。凹部142a内をLED光を透過可能な材料で充填してもよい。
さらに、ベース142は、凹部142aより裏面側の部分に、LED141を冷却するための冷媒としての冷却水が流れる冷却水路142bが形成されている。ベース142は例えばAl等の金属製材料により形成される。
【0042】
光照射機構140では、ウェハWが載置されるトッププレート120に入射されるLED光が、LEDユニットU単位で制御される。そのため、光照射機構140は、トッププレート120における任意の箇所へのみLED光を照射したり、また、照射する光の強度を任意の箇所と他の箇所とで異ならせたりすることができる。したがって、光照射機構140によって、トッププレート120に載置されたウェハWを局所的に加熱したり、ウェハWにおける加熱度合を局所的に変えたりすることができる。LEDユニットU単位でのLED光の制御はLED制御部211により行われる。
【0043】
また、光照射機構140では、各LEDユニットU内において、複数のLED141は
図6に示すように直列接続されている。さらに、各LEDユニットUには、LED141電圧を測定する電圧測定部としての電圧測定回路Mが設けられている。電圧測定回路Mは、例えばLEDユニットU内における特定の一のLED141の電圧を測定する。なお、以下では、各LEDユニットUに設けられた複数のLED141のうち電圧測定回路Mにより電圧が測定される特定の一のLED141を代表LED141ということがある。電圧測定回路Mによる測定結果は主制御部200に出力される。
【0044】
プローバ1では、光照射機構140からの光による加熱と冷媒流路Rを流れる冷媒による吸熱とにより、ステージ10上のウェハWに形成された検査対象の電子デバイスDの温度を目標温度で一定になるように制御する。この温度制御のために、プローバ1では、電子デバイスDの温度を測定している。
【0045】
プローバ1では、
図7に示すように、各プローブ12aがインターフェース13に配置された複数の配線19によってテスタ4に接続される。また、各配線19のうち、電子デバイスDにおける電位差生成回路(例えば、ダイオード)の2つの電極Eに接触する2つのプローブ12aとテスタ4を接続する2つの配線19のそれぞれに、リレー20が設けられる。
【0046】
各リレー20は、各電極Eの電位をテスタ4及び電位差測定ユニット14のいずれかへ切り替えて伝達可能に構成されている。各リレー20は、例えば、電子デバイスDの電気的特性の検査を行う際、各電極Eへ実装時電圧が印加されてから、予め定められたタイミングで各電極Eの電位を電位差測定ユニット14へ伝達する。上記電位差生成回路では、電流を流した際に生じる電位差が温度によって異なる。したがって、電子デバイスDの電位差生成回路の電位差、すなわち、電位差生成回路の2つの電極E(プローブ12a)間の電位差に基づいて、電子デバイスDの温度を検査中においてリアルタイムに測定することができる。プローバ1では、電位差測定ユニット14が各リレー20から伝達された各電極Eの電位に基づいて電子デバイスDの電位差生成回路の電位差を取得し、さらに、取得した電位差を制御部16へ伝達する。制御部16の主制御部200や温度制御部210は、伝達された電位差と、電位差生成回路の電位差の温度特性とに基づいて、電子デバイスDの温度を算出すなわち測定する。
【0047】
なお、電子デバイスDの温度の測定方法は、上述の方法に限られず、電子デバイスDの温度が測定可能であれば他の方法であってもよい。
【0048】
プローバ1では、冷却制御部212の制御の下、試験温度(または目標温度)に対応する温度の冷媒でトッププレート120を冷却する。それと共に、LED制御部211が、電子デバイスDの温度の測定結果に基づいて、電子デバイスDの温度が試験温度(または目標温度)になるように、LED141に供給する電力(具体的にはその電流)を制御し、LED141の発光強度を制御する。
【0049】
LED制御部211は、
図4に示すように、電力供給部211aと、電流調整回路211bと、処理部211cと、を有する。
【0050】
電力供給部211aはLED141に供給される直流電力を出力する。
【0051】
電流調整回路211bは、各LED141に供給される直流電力の電流を調整する。電流調整回路211bは、例えば、各LED141に供給される直流電力の電流をLEDユニットU単位で調整する。
【0052】
処理部211cは、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、電力供給部211a及び電流調整回路211bを制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から処理部211cにインストールされたものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0053】
電子デバイスDの電気的特性検査時に、当該電子デバイスDの温度を調整する際、LED制御部211は、当該電子デバイスDの温度の測定結果に基づいて、当該電子デバイスDが目標温度になるように、当該電子デバイスDに対応するLED141に供給される電力を、その電流が許容電流Imaxを超えない範囲で制御する。具体的には、電子デバイスDの電気的特性検査時に、処理部211cが、当該電子デバイスDの温度の測定結果に基づいて、当該電子デバイスDが目標温度になるように、当該電子デバイスDに対応するLED141に供給される直流電力の電流を、許容電流Imaxを超えない範囲で決定する。そして、電流調整回路211bが、検査対象の電子デバイスDに対応するLED141に供給される直流電力の電流が、処理部211cが決定した電流となるように、調整する。
【0054】
上述の許容電流Imaxは、後述するように、対応するLED141に実際に電力を供給したときの光出力結果に基づいて予め設定され、また、LED141の状態に応じて補正される。許容電流Imaxの設定方法及び補正方法については後述する。
【0055】
次に、プローバ1を用いたウェハWに対する処理の一例について説明する。
まず、ウェハWが、ローダ3のFOUPから取り出されて、ステージ10に向けて搬送され、トッププレート120のウェハ載置面120a上に載置される。次いで、ステージ10が、予め定められた位置に移動される。
【0056】
続いて、光照射機構140の全てのLED141が点灯される。そして、トッププレート120の温度センサ121から取得される情報に基づいて、トッププレート120の温度が面内で均一になるように、LED制御部211によるLED141からの光出力の調整と、冷却制御部212による冷媒流路R内を流れる冷媒の流量の調整と、が行われる。
【0057】
その後、ステージ10が移動され、ステージ10の上方に設けられている各プローブ12aと、ウェハWの検査対象の電子デバイスDの電極Eとが接触する。
この状態で、電位差測定ユニット14により、検査対象の電子デバイスDにおける前述の電位差生成回路の電位差が取得される。そして、面内で均一とされたトッププレート120の温度が検査対象の電子デバイスDの温度と略一致するものとして、上記電位差の較正が行われ、すなわち、上記電位差の温度特性の情報が補正される。
【0058】
その後、各プローブ12aに検査用の信号が入力される。これにより、電子デバイスDの検査が開始される。
【0059】
なお、上記検査中、検査対象の電子デバイスDの電位差生成回路に生じる電位差の情報に基づいて、当該電子デバイスDの温度が測定される。そして、LED制御部211が、前述したように、当該電子デバイスDが試験温度または目標温度になるように、当該電子デバイスDに対応するLED141に供給される直流電力を、その電流が許容電流Imaxを超えない範囲で制御する。また、上記検査中、冷媒流路R内の冷媒の温度及び流量は、例えば、検査対象の電子デバイスDの試験温度に応じた値で、一定とされる。
【0060】
以後、上述の電位差生成回路の電位差の較正と検査の工程は、全ての電子デバイスDについて完了するまで、繰り返し行われる。
【0061】
全ての電子デバイスDの検査が完了すると、ウェハWはローダ3のFOUPに戻され、次のウェハWがステージ10に搬送され、以降、上述の工程が、全てのウェハWについての検査が完了するまで実行される。
【0062】
続いて、LED141に供給される直流電力の許容電流Imaxについて説明する。
本実施形態において、上記許容電流Imaxは、LED141毎に予め設定され、その後、LED141毎に補正される。具体的には、上記許容電流Imaxは、LEDユニットU毎に予め設定され、その後、LEDユニットU毎に補正される。
【0063】
図8は、LED141に供給される直流電力の許容電流Imaxの設定及び補正に関する主制御部200の機能ブロック図である。
図9は、LEDユニットUへ供給される直流電力の電流と当該LEDユニットUの光出力(強度)との関係を示す図である。
【0064】
主制御部200は、
図8に示すように、CPU等のプロセッサがプログラム格納部に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、取得部201、設定部202及び補正部203として機能する。
【0065】
取得部201は、装置立ち上げ時等に予め、許容電流Imaxの設定対象のLED141へ直流電力を供給させ実際に当該LED141を発光させ、当該LED141の電流-光出力特性を取得する。
具体的には、取得部201は、LED制御部211を制御し、許容電流Imaxの設定対象のLEDユニットUへ直流電力を供給させ実際に当該LEDユニットUを発光させ、
図9に示すような当該LEDユニットUの電流-光出力特性を取得する。なお、LEDユニットUの光出力は、トッププレート120における、当該LEDユニットUからのLED光により加熱される部分の温度と相関があることが知られている。したがって、取得部201は、LEDユニットUの光出力については、対応するトッププレート120の温度センサ121による測定結果と、記憶部(図示せず)に記憶された、トッププレート120の温度と光出力の強度の相関関係の情報とから、算出して取得する。
【0066】
設定部202は、装置立ち上げ時等に予め、取得部201により取得された、許容電流Imaxの設定対象のLED141の電流-光出力特性に基づいて、当該LED141について許容電流Imaxを設定する。この際、設定部202は、取得された当該LED141の電流-光出力特性において電流に対して光出力が線形に変化する電流帯から設定される。
【0067】
具体的には、設定部202は、取得部201により取得された、許容電流Imaxの設定対象のLEDユニットUの電流-光出力特性に基づいて、当該LEDユニットUについて許容電流Imaxを設定する。この際、設定部202は、取得された当該LEDユニットUの電流-光出力特性において電流に対して光出力が線形に変化する電流帯B(
図9参照)から、許容電流Imaxを設定する。設定部202は、例えば、電流帯Bに含まれる電流のうち最大のものを、許容電流Imaxに決定する。
【0068】
電流に対して光出力が線形に変化する電流帯Bの電流の直流電力であれば、LED141を効率的に駆動させることができ、LED141に供給しても当該LED141に熱暴走は生じない。
【0069】
補正部203は、許容電流Imaxの補正対象のLED141について、当該LED141の状態に応じて、許容電流Imaxを補正する。
補正の際、補正部203は、補正対象のLED141へ状態判定のために許容電流Imaxを供給させた後に、当該LED141へ推定用電流Ieを供給させる。また、補正部203は、その時のLED141の電圧の測定結果に基づいて、許容電流Imaxを供給した時の当該LED141のジャンクション温度Tjmを推定する。
【0070】
ここで、LED141のジャンクション温度Tjの推定方法について説明する。
LED141を流れる電流Iは、当該電流Iの直流電力を供給した時にLED141にかかる電圧Vを用いて以下の式(1)で表される。
I=IS(eqV/nkTj-1) …(1)
Is:逆飽和電流
n:理想因子
q:電気素量
k:ボルツマン定数
【0071】
LED141のジャンクション温度Tjが極端に低かったり高かったりしなければ、eqV/nkTj≫1となるため、式(1)は以下のように近似できる。
I=Is・eqV/nkTj …(1)’
【0072】
この式(1)’を変形し、LED141の電圧Vについて解くと以下の式(2)となる。
V=(nkTj/q)(lnI-lnIS) …(2)
【0073】
そして、LED141に電流I1の直流電力を供給した時のLED141の電圧V1とLED141に電流I2の電力を供給した時のLED141の電圧V2との差Δ(=V1-V2)は、式(2)から、式(3)のように表される。
ΔV=(nkTj/q)lnN …(3)
N:電流I2に対する電流I1の比(=I1/I2)
【0074】
したがって、理想因子n及びジャンクション温度Tjは以下の式(4)、(5)で表される。
n=ΔVq/lnNkTj …(4)
Tj=ΔVq/lnNkn …(5)
【0075】
そこで、補正部203は、まず装置立ち上げ時等に予め、既知のジャンクション温度Tj(例えば室温)で、2つの大きさの電流I1、I2の直流電力をLED141へ供給させる。そして、補正部203は、電流I1時のLED141の電圧V1及び電流I2時のLED141の電圧V2の測定結果に基づいて、式(4)を用いて、理想因子nを算出しておく。
【0076】
また、補正部203は、補正の際は、補正対象のLED141へ状態判定のために許容電流Imaxの直流電力を供給させた後に、当該LED141へ、推定用電流Ieとして2つの大きさの電流I1、I2の直流電力を供給させる。そして、補正部203は、電流I1時のLED141の電圧V1及び電流I2時のLED141の電圧V2の測定結果と、予め算出した理想因子nとに基づいて、式(5)を用いて、許容電流Imaxの直流電力を供給した時の、補正対象のLED141のジャンクション温度Tjmを算出すなわち推定する。
【0077】
なお、状態判定のための許容電流Imaxの直流電力の供給は、ジャンクション温度Tjの温度が安定する(と推定される)所定時間に亘って行われる。それに対し、推定用電流Ieの直流電力の供給や理想因子nを算出するための直流電力の供給が行われる時間は、上記所定時間より短い。
【0078】
上述のようにして補正対象のLED141について推定された、許容電流Imaxを供給した時のジャンクション温度Tjmが、許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合、以下のことが推測される。すなわち、補正対象のLED141に劣化等が生じ、発光効率が落ちており、許容電流Imaxの直流電力を当該LED141へ供給した時に、当該LED141に熱暴走が生じるおそれがあることが推測される。
【0079】
そこで、補正部203は、上記ジャンクション温度Tjmが上記許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合、許容電流Imaxを補正する。例えば、補正部203は、補正対象のLED141について、上記推定されたジャンクション温度Tjmと許容ジャンクション温度Tmaxとの差分に基づいて、許容電流Imaxが低下するよう当該許容電流Imaxを補正する。
【0080】
前述のように、許容電流Imaxは、具体的にはLEDユニットU毎に補正される。そのため、補正部203は、具体的には、許容電流Imaxの補正対象のLEDユニットUについて、当該LEDユニットUの状態に応じて、許容電流Imaxを補正する。
より具体的には、補正部203は、LED制御部211を制御し、補正対象のLEDユニットUへ状態判定のために許容電流Imaxの電力を供給させた後に、当該LEDユニットUに推定用電流Ieの直流電力を供給させる。また、補正部203は、その時に補正対象のLEDユニットUの電圧測定回路Mで測定された代表LED141の電圧に基づいて、当該LEDユニットUについて、許容電流Imaxを供給した時のLED141のジャンクション温度Tjmを推定する。
【0081】
この推定のために、補正部203は、まず装置立ち上げ時等に予め、既知のジャンクション温度Tj(例えば室温)で、LED制御部211を制御し、2つの大きさの電流I1、I2の直流電力を補正対象のLEDユニットUに供給させる。そして、補正部203は、補正対象のLEDユニットUにおける電流I1時のLED141の電圧V1及び電流I2時のLED141の電圧V2の測定結果に基づいて、式(4)を用いて、理想因子nを算出する。
【0082】
また、補正部203は、補正の際は、LED制御部211を制御し、補正対象のLEDユニットUへ状態判定のために許容電流Imaxの直流電力を供給させた後に、当該LEDユニットUに、推定用電流Ieとして2つの大きさの電流I1、I2の直流電力を供給させる。そして、補正部203は、補正対象のLEDユニットUについて、電流I1時の代表LED141の電圧V1及び電流I2時の代表LED141の電圧V2の測定結果と、予め算出した理想因子nとに、基づいて、式(5)を用いて以下を算出する。すなわち、補正部203は、許容電流Imaxの直流電力を供給した時の、LED141のジャンクション温度Tjmを算出すなわち推定する。
【0083】
この補正対象のLEDユニットUについて推定された、許容電流Imaxを供給した時のジャンクション温度Tjmが、許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合、補正部203は、許容電流Imaxを補正する。例えば、補正部203は、補正対象のLEDユニットUについて、上記推定されたジャンクション温度Tjmと許容ジャンクション温度Tmaxとの差分に基づいて、許容電流Imaxが低下するよう当該許容電流Imaxを補正する。
【0084】
続いて、許容電流Imaxの補正方法の一例について説明する。
図10は、本補正方法の一例を示すフローチャートである。
本補正方法は、
図10に示すように、許容電流Imaxを補正する工程(ステップS2)の前に、許容電流Imax(の初期値)の決定等を行う準備工程(ステップS1)を含む。
【0085】
装置立ち上げ時等に行われる準備工程では、取得部201が、各LEDユニットUの電流-光出力特性を取得する(ステップS11)。
具体的には、取得部201が、LEDユニットU毎に以下の処理を行う。すなわち、取得部201が、LED制御部211を制御し、互いに電流が異なる複数の直流電力それぞれを一のLEDユニットUに供給させ、当該一のLEDユニットUを所定時間発光させ、トッププレート120を温度が安定するまで加熱する。また、取得部201が、上記一のLEDユニットUに供給した直流電力の電流(値)毎に、当該一のLEDユニットUに対応する温度センサ121によるトッププレート120の温度の測定結果を取得する。そして、取得部201が、上記一のLEDユニットUについて、直流電力の電流毎に取得したトッププレート120の温度の測定結果と、記憶部(図示せず)に記憶された、トッププレート120の温度と光出力の相関関係の情報とから、電流-光出力特性を取得する。
【0086】
また、準備工程では、設定部202が、各LEDユニットUについてLED141の許容電流Imaxを設定する(ステップS12)。
具体的には、設定部202が、LEDユニットU毎に以下の処理を行う。すなわち、設定部202が、一のLEDユニットUについて、ステップS1で取得された電流-光出力特性において電流に対して光出力が線形に変化する電流帯Bを抽出する。そして、設定部202が、上記一のLEDユニットUについて、電流帯Bに含まれる最大電流を、許容電流Imax(の初期値)に決定する。
【0087】
さらに、準備工程では、許容電流Imaxの補正用に、補正部203が、各LEDユニットUについて理想因子nを算出する(ステップS13)。
具体的には、補正部203が、LEDユニット毎に以下の処理を行う。すなわち、補正部203が、LED制御部211を制御し、一のLEDユニットUの代表LED141のジャンクション温度Tjが室温で安定している状態で、2つの大きさの電流I1、I2の直流電力それぞれを当該一のLEDユニットUへ短時間供給させる。「短時間」とは、直流電力の供給により代表LED141のジャンクション温度Tjに変化が生じない時間(例えば数百μ秒)である。そして、補正部203が、上記一のLEDユニットUについて、電圧測定回路Mで測定された、電流I1時の代表LED141の電圧V1及び電流I2時の代表LED141の電圧V2に基づいて、前述の式(4)を用いて、理想因子nを算出する。
【0088】
また、準備工程では、許容電流Imaxの補正用に、補正部203が、各LEDユニットUについて、LED141におけるジャンクション温度と電流の関係式を取得する(ステップS14)。
具体的には、補正部203が、LEDユニット毎に以下の処理を行う。すなわち、補正部203が、LED制御部211を制御し、一のLEDユニットUへ式取得用電流Igの直流電力を所定時間(例えば数秒)供給させ、代表LED141のジャンクション温度Tjを安定させる。次いで、補正部203は、LED制御部211を制御し、上記一のLEDユニットUについて、式取得用電流Igの直流電力の供給を停止させた後、代表LED141のジャンクション温度Tjが低下する前に、推定用電流Ieとして電流I1、I2の直流電力それぞれを短時間(例えば数百μ秒)供給させる。そして、補正部203は、上記一のLEDユニットUについて、電圧測定回路Mで測定された、電流I1時の代表LED141の電圧V1及び電流I2時の代表LED141の電圧V2と、ステップS3で算出した理想因子nと、に基づいて、式(5)を用いて、式取得用電流Igを供給した時の代表LED141のジャンクション温度Tjを算出する。以上を、例えばステップS2で決定した許容電流Imaxと零との間から選択される、複数の式取得用電流Igについて繰り返すことで、補正部203は、一のLEDユニットUについて、代表LED141におけるジャンクション温度Tjと電流Iの関係式を取得する。上記関係式は例えば以下の式(6)で表される。
I=aTj+b …(6)
a、b:定数
【0089】
さらに、準備工程では、許容電流Imaxの補正用に、補正部203が、各LEDユニットUについて、LED141の許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを取得する(ステップS15)。
具体的には、補正部203が、例えば、各LEDユニットUについて、ステップS12で設定したLED141の許容電流Imaxと、ステップS14で取得した代表LED141におけるジャンクション温度と電流の関係式とに基づいて、代表LED141の許容ジャンクション温度Tmaxを算出し取得する。なお、実際に許容電流Imaxを各LEDユニットUに供給し、その時のジャンクション温度Tjの推定結果を許容ジャンクション温度Tmaxとしてもよい。
【0090】
ステップS2の補正工程は、例えばアイドル中(具体的にはウェハWの入れ替え中やメンテナンス中)に行われる。また、ステップS2の補正工程は、検査対象の電子デバイスD毎に行われてもよいし、一の電子デバイスDに対する電気特性検査中に行われてもよい。
【0091】
補正工程では、補正部203が、補正用に許容電流Imaxの直流電力を供給させ、その時の、補正対象のLEDユニットUのLED141のジャンクション温度Tjmを推定する(ステップS21)。
具体的には、補正部203が、LED制御部211を制御し、補正対象のLEDユニットUへ許容電流Imaxの直流電力を所定時間(例えば数秒)供給させ、代表LED141のジャンクション温度Tjmを安定させる。次いで、補正部203は、LED制御部211を制御し、補正対象のLEDユニットUについて、許容電流Imaxの直流電力の供給を停止させた後、代表LED141のジャンクション温度Tjmが低下する前に、推定用電流Ieとして電流I1、I2の直流電力それぞれを短時間(例えば数百μ秒)供給させる。そして、補正部203は、補正対象のLEDユニットUについて、電圧測定回路Mで測定された、電流I1時の代表LED141の電圧V1及び電流I2時の代表LED141の電圧V2と、予め算出した理想因子nとに、基づいて、前述の式(5)を用いて、許容電流Imaxの直流電力の供給時の代表LED141のジャンクション温度Tjmを算出すなわち推定する。
【0092】
また、補正工程では、補正部203が、ステップS21で推定されたジャンクション温度Tjmが、ステップS15で取得された許容ジャンクション温度Tmaxを超えるか否か判定する(ステップS22)。
【0093】
判定の結果、超えていない場合(NOの場合)は、許容電流Imaxの補正が行われずに補正工程は終了する。超えている場合(YESの場合)は、補正部203が、補正対象のLEDユニットUについて、許容電流Imaxを補正する(ステップS23)。具体的には、補正部203が、補正後の許容電流Imaxnewを例えば以下の式(7)に基づいて算出する。
Imaxnew=a(Tmax-Tj)+Imaxold …(7)
Imaxnew:補正後の許容電流
Imaxold:補正用の許容電流
a:式(6)の定数
【0094】
以上のように、本実施形態では、LED141に対する許容電流Imax(の初期値)は、予め取得された当該LED141の電流-光出力特性における、電流に対して光出力が線形に変化する電流帯Bから設定される。そのため、本実施形態によれば、LED141に対する許容電流Imaxの初期値を、当該LED141に熱暴走が生じない範囲で極力大きくすることができる。つまり、LED141の性能を最大限に発揮することができる。
また、本実施形態では、LED141へ補正用に許容電流Imaxの直流電力を供給した後に推定用電流Ieの直流電力を供給した時の、LED141の電圧の測定結果に基づいて、許容電流Imaxを供給した時のLED141のジャンクション温度Tjmが推定される。そして、推定された上記ジャンクション温度Tjmが、許容電流Imaxに対応する許容ジャンクション温度Tmaxを超える場合には、すなわち、補正対象のLED141の状態が変化し劣化等が生じているおそれがある場合には、許容電流Imaxが補正される。そのため、本実施形態によれば、LED141に劣化等が生じたときに当該LED141に熱暴走が生じるのを、抑制することができる。
したがって、本実施形態によれば、LED141の利用効率を長期間にわたって向上させることができる。
【0095】
以上の例では、取得部201が、プローバ1内で実際にLED141に直流電力を供給し当該LED141を発光させ、当該LED141の電流-光出力特性を取得していた。これに代えて、プローバ1にLED141を組み込む前に、プローバ1の外部で当該LED141に直流電力を供給し、当該LED141の電流-光出力特性を取得するようにしてもよい。
【0096】
また、以上の例では、設定部202が、LED141の電流-光出力特性に基づいて、許容電流Imaxを設定していた。これに代えて、LED141の電流-光出力特性をユーザインターフェース部18の表示部に表示させ、表示内容を見たプローバ1のユーザからの入力に基づいて、許容電流Imaxを設定してもよい。
【0097】
以上の例では、各LEDユニットUにおいて、代表LED141の数すなわち電圧測定回路Mが設けられているLED141の数は1つであったが複数であってもよい。代表LED141が複数の場合、補正部203は、例えば、補正対象のLEDユニットUについて、電圧測定回路Mによる代表LED141それぞれの電圧の測定結果の平均値に基づいて、許容電流Imaxを供給した時のLED141のジャンクション温度Tjmを推定する。これにより、上記ジャンクション温度Tjmの推定等に際し、個々のLED141のばらつきを吸収することができる。
【0098】
また、以上の例では、電圧測定回路Mは、単一のLED141のアノード・カソード間電圧を測定していた。電圧測定回路Mは、これに限られず、複数のLED141が直列に接続されてなるLEDセットのアノード・カソード間電圧を接続するものであってもよい。この場合、例えば、電圧測定回路Mにより測定された電圧を上記LEDセットを構成するLED141の数で除した値に基づいて、補正部203が、許容電流Imaxを供給した時のLED141のジャンクション温度Tjmを推定する。この場合も、上記ジャンクション温度Tjmの推定等に際し、個々のLED141のばらつきを吸収することができる。
【0099】
また、以上の例では、各LEDユニットUが有するLED141は、複数であったが、1つでもよい。
【0100】
なお、本開示にかかる加熱装置は、LED141からの光で加熱対象の温度調整を行うシステムであれば、プローバ以外にも適用することができる。
【0101】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0102】
140 光照射機構
141 LED
203 補正部
211 LED制御部
B 電流帯
D 電子デバイス
M 電圧測定回路
W ウェハ