(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20241105BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 D
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2020217373
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 梓
(72)【発明者】
【氏名】田所 千聖
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-073227(JP,A)
【文献】特開2008-054767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00-13/12
A41D 20/00
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともユーザの口を覆うマスク本体と、
前記マスク本体に設けられ、保水液を保持した吸収性コアを収容するためのポケットと、
を備え、
前記ポケットを構成する側部のうちのユーザの肌側の側部が親水性を有
し、
前記ポケットに対し、ユーザの肌側に重ねられた疎水性シート材を更に備える、
マスク。
【請求項2】
前記肌側の側部が、親水性不織布により構成されている、
請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記親水性不織布が、接触冷感素材である、
請求項2記載のマスク。
【請求項4】
前記疎水性シート材は、疎水性不織布である、
請求項
1記載のマスク。
【請求項5】
前記ポケットに収容され、保水液を保持可能な吸収性コアを更に備え、
前記吸収性コアは、
ユーザの口に対応する位置に配置される第一供給部と、
ユーザの頬に対応する位置に配置される第二供給部と、
を有する、
請求項1~
4のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
前記保水液は冷感剤を含む、
請求項
5記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のマスクが記載されている。特許文献1記載のマスクは、マスク本体にポケット部が設けられており、ポケット部に吸収性コア(特許文献1では吸収性シート)が収納されている。吸収性コアには、保水液が保持されている。マスクを装着したユーザは、吸水性コアから蒸発した水分を口腔内に供給することができ、口腔が乾燥するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1記載のマスクは、吸収性コアに保持された保水液が、ポケットの内側面を濡らし、内側面から蒸発することで、口腔内に水分を供給する。このとき、ポケットの内側面は、吸収性コアに接触している部分のみが濡れ、そのまま蒸発するため、口腔内への水分の供給はできるものの、蒸発時に生ずる冷感をユーザに対して与えることができない。このため、特許文献1記載のマスクでは、装着時の清涼感不足を改善する余地がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、装着時に清涼感を与えることができるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る一態様のマスクは、少なくともユーザの口を覆うマスク本体と、前記マスク本体に設けられ、保水液を保持した吸収性コアを収容するためのポケットと、を備え、前記ポケットを構成する側部のうちのユーザの肌側の側部が親水性を有する。
【0007】
本発明に係る一態様のマスクは、上記態様において、前記肌側の側部が、親水性不織布により構成されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る一態様のマスクは、上記態様において、前記親水性不織布が、接触冷感素材であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る一態様のマスクは、上記態様において、前記ポケットに対し、ユーザの肌側に重ねられた疎水性シート材を更に備えることが好ましい。
【0010】
本発明に係る一態様のマスクは、上記態様において、前記疎水性シート材は、疎水性不織布であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る一態様のマスクは、上記態様において、前記ポケットに収容され、保水液を保持可能な吸収性コアを更に備え、前記吸収性コアは、ユーザの口に対応する位置に配置される第一供給部と、ユーザの頬に対応する位置に配置される第二供給部と、を有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る一態様のマスクは、上記態様において、前記保水液は冷感剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る上記態様のマスクは、装着時に清涼感与えることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る一実施形態のマスクの斜視図である。
【
図2】同上のマスクを幅中央線で二つ折りにした状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
(1)全体
本実施形態に係るマスク1は、
図1に示すように、ユーザの顔の下部表面に沿うような立体型のマスク1である。マスク1は、マスク本体10と、一対のポケット30と、第二シート材4(
図3)と、ポケット30に収容される一対の吸収性コア5と、マスク本体10を顔に保持する保持体6と、を備える。
【0016】
以下では、ユーザから正面に向かう方向を「前方向」とし、前方向の反対方向を「後方向」とし、前方向及び後方向に平行な2方向を「前後方向」として定義する。また、前後方向に直交しかつ鉛直面に沿う方向を「上下方向」として定義する。また、上下方向と前後方向とに直交する方向を「左右方向」として定義する。ただし、これらの方向の定義は、説明の便宜上のものに過ぎず、マスク1の使用態様を特定するものではない。
【0017】
(2)マスク本体
マスク本体10は、少なくともユーザの口を覆う部分である。本実施形態に係るマスク本体10は、ユーザの口及び鼻孔を覆い、ユーザの顔のうち目の下の領域を覆う。マスク本体10は、左右方向の中央を通る幅中央線C1を中心として左右対称に形成されている。幅中央線C1に沿ってマスク本体10を二つ折りにすると、幅中央線C1は、
図2に示すように、前方向に凸となるように湾曲している。これにより、マスク本体10を広げると、マスク本体10は椀状に形成される。マスク本体10を装着すると、幅中央線C1は、ユーザの鼻先(鼻尖)、唇先端(上口唇結節)及び下顎の先端(おとがい)に沿う。
【0018】
マスク本体10は、一対のマスク片2を幅中央線C1に沿って接合して構成されている。本明細書でいう「接合」は、例えば、熱融着、超音波溶着、縫合、接着等で継ぎ合わすことを意味する。本実施形態では、一対のマスク片2は、前端縁21で熱融着されることによって接合されている。ただし、マスク本体10は、一対のマスク片2を接合した構造に限らず、一対のマスク片2が一体となった構造であってもよい。
【0019】
図2には、マスク本体10を幅中央線C1に沿って二つ折りにした状態を示す。マスク片2は、前方向に凸となるように湾曲した前端縁21と、上縁22と、下縁23と、後端縁24と、を備える。上縁22は、前端縁21と後端縁24の上端とをつなぎ、マスク1を装着した状態で、ユーザの眼窩下部の上部及び頬骨の上部に沿って延びる。下縁23は、前端縁21の下端と後端縁24の下端とをつなぎ、マスク1を装着した状態で、おとがいから頬部の下部にまで延びる。上縁22と下縁23との間の寸法は、後端縁24に近づくに従って小さくなるように形成されている。後端縁24は、上下方向の中央部が凹状に湾曲した凹部241を有しており、凹部241の上下方向の両側に一対の凸部242が形成されている。一対の凸部242を結ぶように保持体6が設けられている。保持体6については、後述の「(6)保持体」で詳しく述べる。
【0020】
マスク本体10は、通気性を有している。マスク本体10の材料は、例えば、織布、不織布等のシート状の繊維集合体、シート状のポリエチレンフォーム等が挙げられる。織布及び不織布の繊維材料としては、パルプ、コットンなどの天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどの合成繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。マスク本体10として不織布を用いる場合、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。本実施形態に係るマスク本体10は、PE/PPからなる不織布で構成されている。
【0021】
マスク本体10は、親水性を有する材料で構成されてもよいし、疎水性を有する材料で構成されてもよく、特に制限はない。また、本実施形態に係るマスク本体10は、単層構造であるが、2層以上重ねられた不織布で構成されてもよい。
【0022】
(3)ポケット
ポケット30は、マスク本体10に設けられて、吸収性コア5を収納する。ポケット30は、マスク本体10の一対の主面のうちのいずれの面に設けられてもよいが、本実施形態では、
図3に示すように、肌側の面(内面)に設けられている。
【0023】
ポケット30は、マスク本体10の肌側の面にシート材(これを「第一シート材3」という場合がある)を重ね、第一シート材3とマスク本体10とを接合することで構成されている。本実施形態では、マスク本体10に対して、第一シート材3と、第一シート材3の肌側に配置されたシート材(これを「第二シート材4」という場合がある)とが、一緒に接合されているが、それぞれ個別に接合されてもよい。
【0024】
第一シート材3とマスク本体10とは、
図4に示すように、幅中央線C1に沿う中央接合部31、第一下接合部32、及び第二下接合部33、ならびに外縁接合部34で溶着によって接合されている。一方、第一シート材3の上端とマスク本体10の上端とは接合されていない。第一下接合部32は、左右方向に略平行に延びており、第二下接合部33は、第一下接合部32に対し、上方でかつ左右方向の外側において、左右方向に延びている。ポケット30は、中央接合部31、第一下接合部32、第二下接合部33及び外縁接合部34で囲まれた部分で構成され、上端面にポケット30内に通じる開口を有している。開口は、第一シート材3の上端とマスク本体10とが接合されていないことで形成されている。
【0025】
第一下接合部32と第二下接合部33とは、上下方向に離れているが、縦方向に延びる接合部によって連続していてもよい。すなわち、ポケット30は、開口を除く周囲が全周にわたって連続して接合されることで構成されてもよいし、部分的に接合されて構成されてもよい。また、各接合部32,33、34は、長手方向に連続的に延びていてもよいし、断続的に延びていてもよい。
【0026】
第一シート材3は、親水性を有している。これにより、ポケット30の側部のうち、ユーザの肌側の側部が親水性を有する。本実施形態では、第一シート材3は、親水性を有する不織布で構成されている。ポケット30の側部のうちの肌側の側部が親水性を有していることにより、吸収性コア5に保持された保水液は、第一シート材3によって広範囲に広がる。これにより、保水液は、広い範囲で蒸発しやすくなるため、気化熱が奪われることによる冷却効果を、第一シート材3及び第二シート材4に対して及ぼすことができる。
【0027】
なお、「ポケット30の側部」とは、ポケット30の内側面を構成する布地を意味する。したがって、本実施形態において、ポケット30の側部は、第一シート材3の一部を指す。
【0028】
第一シート材3は、通気性を有している。第一シート材3は、例えば、織布、不織布等のシート状の繊維集合体が挙げられる。繊維集合体としては、親水性を有していれば特に制限はないが、例えば、パルプ、コットンなどの天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどの合成繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。第一シート材3として、親水性不織布を用いる場合、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。
【0029】
不織布のもつ親水性は、例えば、親水性繊維を含んで構成したり、不織布の製造過程で親水剤を添加したり、不織布に対してプラズマ処理を施して表面改質したりすることで、付与することが挙げられる。親水性繊維としては、例えば、ナイロン、レーヨン、コットン、ティッシュ、ポリノジック、キュプラ、アセテート等が挙げられる。
【0030】
また、第一シート材3は、接触冷感素材によって構成されている。本明細書でいう「接触冷感素材」とは、触れるとひんやりと感じるような素材を意味する。本明細書では「接触冷感素材」は、JIS L 1927に準拠した試験方法によって算出した最大熱流束値qmax[W/cm3]が、0.15以上であるものをいうこととする。qmax[W/cm3]は、0.2以上であれば好ましい。
【0031】
親水性を有しかつ接触冷感素材である素材として、例えば、ナイロン繊維不織布、キュプラ繊維不織布等が挙げられ、このなかでも、肌触りの観点から、ナイロン繊維不織布が用いられることが好ましい。
【0032】
第一シート材3は、
図4に示すように、マスク本体10と同形状のものから、一対の凸部242のうちの上側の凸部242を斜めに切り欠いたような形状に形成されている。第一シート材3は、マスク本体10に対して重ねられた状態で、マスク本体10の下縁23、後端縁24に沿って外縁接合部34で接合されると共に、中央接合部31、第一下接合部32及び第二下接合部33で接合される。
【0033】
(4)第二シート材
第二シート材4は、
図3に示すように、ポケット30に対して肌側に重ねられて、ユーザに与える濡れ感を抑制する。本実施形態に係る第二シート材4は、
図5に示すように、第一シート材3に対して、ユーザの肌側に重ねられており、第一シート材3と共にマスク本体10に溶着されている。第二シート材4の肌側の面は、ユーザの肌に対向する面(これを「肌対向面41」という場合がある)となる。
【0034】
第二シート材4は、疎水性を有しており、すなわち、第二シート材4は疎水性シート材である。第二シート材4が疎水性を有していると、第一シート材3が保水液によって濡れても、濡れによるユーザの不快感を抑えることができる。したがって、本実施形態に係るマスク1は、第一シート材3があることによって、吸収性コア5の大きさよりも大きい範囲で冷却を行うことができ、かつ濡れによる不快感を与えるのを抑えることができる。
【0035】
第二シート材4は、通気性を有している。第二シート材4は、例えば、織布、不織布等のシート状の繊維集合体が挙げられる。繊維集合体としては、疎水性を有していれば特に制限はないが、例えば、パルプ、コットンなどの天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどの合成繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。第二シート材4として、疎水性不織布を用いる場合、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。
【0036】
不織布の疎水性は、例えば、疎水性繊維を含んで構成したり、不織布の製造過程で疎水剤を添加したり、不織布に対してプラズマ処理を施して表面改質したりすることで、付与することが挙げられる。疎水性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。本実施形態に係る第二シート材4は、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布により構成されている。
【0037】
第二シート材4は、
図4に示すように、第一シート材3と同じ形状に形成されている。第二シート材4は、第一シート材3に対して重ねられた状態で、マスク本体10の下縁23、後端縁24に沿って外縁接合部34で接合されると共に、中央接合部31、第一下接合部32及び第二下接合部33で接合される。
【0038】
(5)吸収性コア
吸収性コア5は、繊維材料によって構成されている。繊維材料の目付は、例えば、200g/m2以上1000g/m2以下の繊維素材によって構成されている。吸収性コア5は、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。不織布の繊維材料としては、例えば、パルプ、コットンなどの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどの合成繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。
【0039】
吸収性コア5は、
図3に示すように、第一供給部51と、第二供給部52と、第三供給部53と、で構成されている。第一供給部51は、吸収性コア5がポケット30内に収納されると、第一下接合部32の上に位置し、ユーザの口に対応する位置に配置される。第二供給部52は、吸収性コア5がポケット30内に収納されると、第二下接合部33の上に位置し、ユーザの頬に対応する位置に配置される。第三供給部53は、第一供給部51と第二供給部52とをつないでおり、吸収性コア5がポケット30内に収納されると、鼻に対応する位置に配置される。
【0040】
第一供給部51、第二供給部52及び第三供給部53は、各々が矩形状に形成されていて、一体に形成されている。本実施形態では、吸収性コア5は略逆L字状に形成されている。ただし、吸収性コア5の形状は、特に制限されず、例えば、1/4円弧状、楕円形状、円形状、三角形状矩形状、五角形状等に形成されてもよい。
【0041】
保水液は、純水によって構成されてもよいが、水を主成分にして他の成分を添加することもできる。他の成分としてはポリオールを例示することができる。ポリオールとしては、特に限定されないが、好ましくはグリセリンやジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,2ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等が例示され、より好ましくは、安全性の点でグリセリンが例示される。これらの他にも、メチルパラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤、ヒアルロン酸塩やベタインなどの保湿剤、植物エキス、キサンタンガムやヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC),ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、寒天、グアーガム、カラギーナンなどの水溶性増粘剤、ユーカリやミントなどの香料、香料を可溶化する界面活性剤(ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤)等を他の成分として水に適宜添加することができる。
【0042】
また、保水液は、冷感剤を含むことが好ましい。保水液に冷感剤を含むことで、ユーザに対して、よりひんやりとした感覚を与えることができる。冷感剤としては、例えば、メントール(例えば、L-メントール、I-メントール、DL-メントール等)、メントン、酢酸メチル、メントフラン、リモネン、ジヒドロカルボン、サリチル酸メチル、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等が挙げられ、このなかでも、L-メントールが好ましい。
【0043】
保水液に、冷感剤としてL-メントールが含まれる場合、0.001g/L以上0.3g/L以下であることが好ましく、より好ましくは、0.003g/L以上0.1g/L以下であり、更に好ましくは、0.005g/L以上0.05g/L以下である。L-メントールが0.001g/L未満であると、清涼感が得られにくい。L-メントールが0.3g/Lよりも濃いと、ユーザは不快感を受けやすい。
【0044】
(6)保持体
保持体6は、マスク本体10をユーザの顔に保持する。本実施形態に係るマスク1では、保持体6は、凸部同士をつなぐ耳掛けゴム61で構成されている。耳掛けゴム61は、各凸部に溶着により接合されている。
【0045】
ただし、保持体6としては、耳掛けゴム61に制限されず、マスク本体10に一体に成形された耳掛け部であってもよいし、後頭部や首裏に掛けるストラップであってもよいし、眼鏡のテンプルに引っ掛ける引掛け体であってもよい。
【0046】
<効果>
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るマスク1は、ポケット30を構成する側部のうちのユーザの肌側の側部が親水性を有するため、吸収性コア5に保持された保水液は、ポケット30の側部によって広範囲に広がる。これにより、保水液は、保水性コアの大きさよりも広い範囲で蒸発しやすくなるため、気化熱が奪われることによる冷却効果を、ポケット30の肌側の側部に対して効果的に及ぼすことができる。この結果、本実施形態に係るマスク1によれば、装着時に清涼感与えることができる。
【0048】
また、本実施形態に係るマスク1は、肌側の側部が親水性不織布により構成されているため、製造性を損なうことを防止できる。
【0049】
また、本実施形態に係るマスク1は、親水性不織布が接触冷感素材であるため、ユーザに対して、より効果的に清涼感を与えることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るマスク1は、ポケット30に対し、ユーザの肌側に重ねられた疎水性シート材を備えるため、ポケット30の側部が保水液によって濡れても、濡れによるユーザの不快感を抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るマスク1は、疎水性シート材は疎水性不織布であるため、疎水性シート材を備えるマスク1であっても、製造性を損なうことを防止できる。
【0052】
また、本実施形態に係るマスク1は、吸収性コア5が、第一供給部51と第二供給部52とを有するため、口及び口の周辺、ならびに頬及び頬の周辺を冷却することができ、広範囲に清涼感を与えることができる。
【0053】
また、吸収性コア5の保水液には冷感剤を含むため、より一層、効果的に清涼感を与えることができる。
【0054】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0055】
上記実施形態では、第一シート材3として、マスク本体10と同じ形状の親水性不織布を用いたが、本発明では、ポケット30の側部を構成する部分のみに対し、部分的に、親水性処理を施してもよい。また、第一シート材3をポケット30の側部の形状に形成し、マスク本体10の肌側の面に取り付けてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、マスク本体10の外側の面にポケット30を設けてもよい。この場合において、例えば、マスク本体10を親水性不織布で構成し、少なくともポケット30の肌側の側部について、親水性を有するように構成してもよい。
【0057】
上記実施形態では、第一シート材3は接触冷感素材で構成されたが、本発明では、第一シート材3は、親水性を有するシート材であれば、必ずしも接触冷感素材でなくてもよい。
【0058】
上記実施形態に係るマスク1は、立体型のマスク1であったが、本発明では、平型マスク及びプリーツ型マスクにも適用可能である。
【0059】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0060】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0061】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明に係るマスクは、以下の実施例に限定されない。
【0062】
(1)実施例1
実施例1に係るマスクとして、マスク本体、及び第一シート材を次の材料で構成した。また、吸収性コアを、パルプ、レーヨン及びポリエチレンを混紡した不織布で構成し、目付を500g/m2とした上で、次の形状に形成した。保水液を、保水液100重量部に対して水70重量部、L-メントール0.05重量部を混ぜ、吸収性コアに保持させた。そして、実施例1に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):ナイロン繊維からなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):なし
・吸収性コア:第一供給部(口周辺への供給部)、第二供給部(頬周辺への供給部)及び第三供給部を含むL型形状
【0063】
接触冷感試験として、マスクの肌側の面の接触冷感を測定した。試験は、JIS L 1927に準拠した試験方法を行った。測定装置として、KES-F7 THERMO LABO II(カトーテック株式会社製)を用いて測定を行い、測定結果の熱流束の極大値をqmax[W/cm3]とした。qmaxが、0.2以上を「〇」とし、0.2未満を「×」とした。
【0064】
濡れ感試験として、室温25℃ 湿度(相対湿度)50%環境下において、被験者20名で試験を行った。全ての被験者に対して、マスクを装着させて1時間経過したあとの濡れ感について、次の5段階評価のいずれかを選択させ、平均値を算出した。1:濡れ感が不足 2:やや濡れ感が不足 3:どちらとも言えない 4:やや濡れ感が気になる 5:濡れ感が気になる
【0065】
そして、平均値が、1以上2未満を「〇」とし、2以上3未満を「△」、3以上5以下を「×」として評価した。
【0066】
冷感試験として、室温28℃ 湿度(相対湿度)65%環境下において、被験者10名で試験を行った。全ての被験者に対し、15分間、肌を鈍化した後、マスクを装着させ、15分経過後のマスクの装着中に感じる冷感について、VAS(Visual Analogue Scale)法で評価した。VAS法では、白紙に100mmの直線を引き、左端を「全く冷感を感じない」とし、右端を「とても冷感を感じる」としたときに、現在感じる冷感の位置に対して斜線を加えて示す。各被験者において、左端から、斜線と直線との交点までの寸法を、評価のスコアとした。そして、全ての被験者のスコアの平均値を算出した。
【0067】
温度試験として、室温28℃ 湿度(相対湿度)65%環境下において、被験者10名で試験を行った。全ての被験者に対し、マスクを装着させ、15分経過した後、マスクを外させた。マスク装着中の皮膚温度を装着するために、マスクを外した直後の顔の肌の温度をサーモグラフィーカメラ(赤外線サーモグラフィ FLIR E8 フリアーシステムズ社製)で測定した。その後、マスクで覆われていなかった部分に比べて、温度が低下している面積の値を、面積測定ソフト(ImageJ)を用いて算出した。
【0068】
結果を、以下の表1に示す。
【0069】
(2)実施例2
実施例2に係るマスクとして、マスク本体、第一シート材、及び第二シート材を次の材料で構成した。また、吸収性コアを、パルプ、レーヨン及びポリエチレンを混紡した不織布で構成し、目付を500g/m2とした上で、次の形状に形成した。保水液を、保水液100重量部に対して水100重量部、L-メントール0.05重量部を混ぜ、吸収性コアに保持させた。そして、実施例2に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):ナイロン繊維からなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布で、かつ目付を20g/m2とする不織布
・吸収性コア:第一供給部(口周辺への供給部)、第二供給部(頬周辺への供給部)及び第三供給部を含むL型形状
【0070】
結果を、以下の表1に示す。
【0071】
(3)実施例3
実施例3に係るマスクとして、マスク本体、第一シート材、及び第二シート材を次の材料で構成した。また、吸収性コアを、パルプ、レーヨン及びポリエチレンを混紡した不織布で構成し、目付を500g/m2とした上で、次の形状に形成した。保水液を、保水液100重量部に対して水100重量部、L-メントール0.05重量部を混ぜ、吸収性コアに保持させた。そして、実施例3に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):キュプラ繊維からなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布で、かつ目付を20g/m2とする不織布
・吸収性コア:第一供給部(口周辺への供給部)、第二供給部(頬周辺への供給部)及び第三供給部を含むL型形状
【0072】
結果を、以下の表1に示す。
【0073】
(4)実施例4
実施例4に係るマスクとして、マスク本体、第一シート材、及び第二シート材を次の材料で構成した。また、吸収性コアを、パルプ、レーヨン及びポリエチレンを混紡した不織布で構成し、目付を500g/m2とした上で、次の形状に形成した。保水液を、保水液100重量部に対して水100重量部、L-メントール0.05重量部を混ぜ、吸収性コアに保持させた。そして、実施例4に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):ナイロン繊維からなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布で、かつ目付を20g/m2とする不織布
・吸収性コア:第一供給部(口周辺への供給部)及び第三供給部を含む略I型形状(頬に当たる部分がない)
【0074】
結果を、以下の表1に示す。
【0075】
(5)実施例5
実施例5に係るマスクとして、マスク本体、第一シート材、及び第二シート材を次の材料で構成した。また、吸収性コアを、パルプ、レーヨン及びポリエチレンを混紡した不織布で構成し、目付を500g/m2とした上で、次の形状に形成した。保水液を、保水液100重量部に対して水100重量部、L-メントール0.01重量部を混ぜ、吸収性コアに保持させた。そして、実施例5に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):ナイロン繊維からなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布で、かつ目付を20g/m2とする不織布
・吸収性コア:第一供給部(口周辺への供給部)、第二供給部(頬周辺への供給部)及び第三供給部を含むL型形状
【0076】
結果を、以下の表1に示す。
【0077】
(6)実施例6
実施例6に係るマスクとして、マスク本体、第一シート材、及び第二シート材を次の材料で構成した。また、吸収性コアを、パルプ、レーヨン及びポリエチレンを混紡した不織布で構成し、目付を500g/m2とした上で、次の形状に形成した。保水液を、保水液100重量部に対して水100重量部、L-メントール0.005重量部を混ぜ、吸収性コアに保持させた。そして、実施例6に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):ナイロン繊維からなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布で、かつ目付を20g/m2とする不織布
・吸収性コア:第一供給部(口周辺への供給部)、第二供給部(頬周辺への供給部)及び第三供給部を含むL型形状
【0078】
結果を、以下の表1に示す。
【0079】
(5)比較例1
比較例1に係るマスクとして、マスク本体、及び第一シート材を次の材料で構成した。そして、比較例1に係るマスクを用いて接触冷感試験、濡れ感試験、冷感試験、及び温度試験を行った。
・マスク本体:PE/PPからなる不織布で、かつ目付を50g/m2とする不織布
・第一シート材(親水性不織布):ナイロン繊維からなる不織布で、かつ目付を40g/m2とする不織布
・第二シート材(疎水性不織布):なし
・吸収性コア:なし
【0080】
【0081】
表1に示すように、実施例1-6では、接触冷感試験が「〇」であるのに対し、比較例1では、接触冷感試験が「×」である。このことからもわかるように、第一シート材が親水性不織布であり、かつ吸収性コアを有するマスクの場合、マスク装着時にユーザが冷感を感じやすいのに対し、第一シート材が親水性不織布であり、かつ吸収性コアがないマスクの場合、マスク装着時にユーザが冷感を感じにくいことがわかった。
【0082】
実施例1と実施例2とを比較すると、濡れ感試験について、実施例1が「△」であるのに対し、実施例2が「〇」である。したがって、第二シート材(疎水性不織布)がある場合は、第二シート材がない場合に比べて、吸水性コアによる第一シート材の濡れによる不快感が抑えられることがわかった。
【0083】
実施例2と実施例3とを比較すると、冷感試験について、実施例2が「70」であるのに対し、実施例3が「71」である。したがって、第一シート材(親水性不織布)の繊維としては、繊維の種類を問わずユーザに対して冷感を与えることがわかった。また、実施例2と実施例4とを比較すると、冷感試験について、実施例2が「70」であるのに対し、実施例4が「34」である。したがって、吸収性コアが口元だけのものよりも、口元+頬のほうが、ユーザに対して冷感を与えやすいことがわかった。
【0084】
実施例2と実施例4とを比較すると、温度試験について、実施例2が5110mm2であるのに対し、実施例4が461mm2である。したがって、吸収性コアが口元だけのものよりも、口元+頬のほうが、広範囲で冷却効果を及ぼすことが分かった。また、実施例1と実施例2とを比較すると、温度試験について、実施例1が3154mm2であるのに対し、実施例2が5110mm2である。したがって、疎水性不織布がないものよりも、疎水性不織布があるものほうが、広範囲で冷却効果を及ぼすことが分かった。
【0085】
実施例5と実施例6とを比較すると、冷感試験において、実施例5が「68」であるのに対し、実施例6が「35」である。したがって、メントールの濃度が、少なくとも0.005重量部以上あれば、ユーザに対して十分な冷感を与えることが裏付けられたが、0.01重量部以上あると、より効果的な冷感を与えやすいことが分かった。
【符号の説明】
【0086】
1 マスク
10 マスク本体
30 ポケット
3 第一シート材(親水性不織布)
4 第二シート材(疎水性不織布)
5 吸収性コア
51 第一供給部
52 第二供給部