(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】ガスケットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/00 20060101AFI20241105BHJP
G01M 3/16 20060101ALI20241105BHJP
F16L 23/22 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
F16J15/00 E
G01M3/16 Z
F16L23/22
(21)【出願番号】P 2021034038
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡美
(72)【発明者】
【氏名】戸田 清華
(72)【発明者】
【氏名】赤松 淑子
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 正
(72)【発明者】
【氏名】古賀 淑哲
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲玉▼
(72)【発明者】
【氏名】江頭 正浩
(72)【発明者】
【氏名】坂田 義太朗
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292628(JP,A)
【文献】特開2010-127384(JP,A)
【文献】特開平9-329281(JP,A)
【文献】特開昭55-095803(JP,A)
【文献】実開平05-083576(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333035(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03748203(EP,A1)
【文献】国際公開第2022/009866(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011056835(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第105782443(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00
G01M 3/16
F16L 23/16-23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ締結に用いられるガスケットであって、
フランジと接触しないエリアに設けられる切欠き部と、
前記切欠き部に配置されて前記切欠き部の変形を検出し、フランジ間より受ける荷重が閾値以上であるとき、接点間が導
通となる接点機構を含むセンサーと、
を含む、ガスケット。
【請求項2】
さらに、前記接点機構の接点間は、前記荷重が前記閾値以上で前記接点間が非導通から導
通となる接点間隔に設定されている、請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
ガスケットにフランジ締結部のフランジと接触しないエリアに切欠き部を形成する工程と、
フランジ間により受ける荷重が閾値以上であるとき、接点間が導
通となる接点機構を含むセンサーを前記切欠き部に設置する工程と、
を含む、ガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はたとえば、管路系統のフランジ締結に用いられるガスケットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットの締付けには、ボルトによりフランジに加えられる締付けトルクやボルト軸力値が伝統的に用いられている。締付けトルクやボルト軸力値はフランジ間を締め付けるボルトに関する締付け情報である。
このガスケットの締付けに関し、締付けトルクを把握するため、ガスケットや内部流体の種類に対応する締付け面圧、複数の締付け力、ボルトに関する情報などを用いるシステムが知られている(たとえば、特許文献1)。
このボルトの締付けに関し、ボルトに発生するひずみをデータ化し、ボルトの締付け状態を視認化することが知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-225219号公報
【文献】特開2015-141345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガスケットの締付け管理にはボルトの締付けトルクや軸力値が用いられてきた。フランジ締結時、フランジ間を締結するボルトはひずみを生じる。このひずみを計測すればフランジからガスケットに加わる荷重を把握できるというのがその理由である。
【0005】
しかしながら、ボルト、フランジおよびガスケットの関係を精査すると、ボルトの締付け力はフランジに作用しているが、その締付け力は、フランジを媒介としてガスケットに間接的に作用しているにすぎない。フランジはボルトの締付けによる荷重を受けるが、この荷重はフランジを介してガスケットに作用しているにすぎない。ボルトに作用させたトルク値や軸力値は、フランジに部分的に作用している荷重にすぎず、ガスケットに作用する荷重を表しているとは言えない。
【0006】
このため、ガスケットの締付け管理には次のような課題がある。
a)ボルトから取得したトルク値や軸力値はボルトに関する情報であり、ガスケットが受ける荷重を測定していない。
b)ガスケットがフランジから受ける荷重に対し、ボルトのトルク値や軸力値は間接的な情報にすぎず、ガスケットが受ける荷重の目安にすぎない。
c)ボルトのトルク値や軸力値はボルトやフランジの締付け状態の影響を受け、この影響を無視できない。
【0007】
発明者は、斯かる課題により、フランジ間から受ける荷重でガスケットが変形するので、この変形を直接検出してフランジ締結をサポートすることが有益であるとの知見を得た。
【0008】
そこで、本開示の目的は、上記課題および上記知見に基づき、ガスケットが受ける荷重が適正荷重か否かをガスケットの変形で検出可能にしたガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示のガスケットの一側面によれば、フランジ締結に用いられるガスケットであって、フランジと接触しないエリアに設けられる切欠き部と、前記切欠き部に配置されて前記切欠き部の変形を検出し、フランジ間より受ける荷重が閾値以上であるとき、接点間が導通となる接点機構を含むセンサーとを含む。
このガスケットにおいて、さらに、前記接点機構の接点間は、前記荷重が前記閾値以上で前記接点間が非導通から導通となる接点間隔に設定されている。
【0010】
上記目的を達成するため、本開示のガスケットの製造方法の一側面によれば、ガスケットにフランジ締結部のフランジと接触しないエリアに切欠き部を形成する工程と、フランジ間により受ける荷重が閾値以上であるとき、接点間が導通となる接点機構を含むセンサーを前記切欠き部に設置する工程とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) フランジ締結時のガスケットの変形を切欠き部から検出でき、フランジ間からガスケットが受ける荷重が最適荷重か否かを検出できる。
(2) ガスケットが受ける荷重が閾値以上であるかによって導通または非導通を表す二値化情報で出力することができる。
(3) センサー間の出力情報をボルトの締付け状態の判定に利用でき、フランジ締結のサポートに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施の形態に係るガスケットを示す平面図である。
【
図2】ガスケットのインナーカット部およびセンサーを示す斜視図である。
【
図3】センサーの接点機構を分解して示す分解斜視図である。
【
図4】Aは
図2のIVA-IVA線断面を示す断面図であり、Bは接点の固定に関する変形例を示す断面図である。
【
図6】本開示のガスケットを用いたフランジ締結部の一部を切欠いて示す斜視図である。
【
図7】センサー部で切断したフランジ締結部を示す断面図である。
【
図8】Aは接点機構のOFF状態を示す図であり、Bは接点機構のON状態を示す図である。
【
図9】第二の実施の形態に係るガスケットの一部を示す図である。
【
図10】第三の実施の形態に係るガスケットの一部を示す図である。
【
図12】第四の実施の形態に係るガスケットを用いたフランジ締結サポートシステムを示す図である。
【
図13】第五の実施の形態に係るガスケットを用いたフランジ締結サポートシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第一の実施の形態〕
図1は、第一の実施の形態に係るガスケット2を示している。本開示のガスケット2の構成は一例であり、本開示が斯かる構成に限定されるものではない。
図1において、Oは中心、X、YおよびZは三次元座標軸を示している。
【0014】
このガスケット2はたとえば、合成樹脂材料でシート状に加工されたシートガスケットである。合成樹脂材料には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と充填剤を配合した樹脂材料が使用されるが、PTFE以外の樹脂やゴムなどの材料を使用してもよい。このガスケット2には均一厚のシート状材料を使用し、このシート状材料からたとえば、打ち抜き加工によって成形される。
このガスケット2はたとえば、円形の透孔4を形成した円環状のガスケット本体部6を備え、このガスケット本体部6の周縁部にX軸方向およびY軸方向に突出部8が形成され、各突出部8に貫通孔10が形成されている。これら突出部8および貫通孔10はX軸方向またはY軸方向の何れかの2箇所に形成してもよい。
【0015】
ガスケット本体部6には透孔4の周囲に拘束部12が設定され、この拘束部12と同心円状に非拘束部14が設定されている。破線は拘束部12のエリアと非拘束部14のエリアとを仕切る仮想線である。拘束部12はフランジ締結部で拘束されるエリアである。これに対し、非拘束部14はフランジ締結部に拘束されないエリアである。
非拘束部14にはフランジ締結時、荷重によるガスケット2の変形を取り出すための複数のインナーカット部16が形成されている。各インナーカット部16はガスケット2に形成される切欠き部の一例である。各インナーカット部16は、透孔4と同心円状の円弧をなす貫通孔または凹部でもよい。各インナーカット部16は、貫通孔10と交互に配置されているが、これに限定されない。
【0016】
各インナーカット部16には、各インナーカット部16に現れる変形を個別に検出するセンサー18-1、18-2、18-3、18-4が設置されている。つまり、非拘束部14に現れるガスケット2の変形をセンサー18-1、18-2、18-3、18-4で受け、その変形をセンサー18-1、18-2、18-3、18-4で検出する。
【0017】
<インナーカット部16およびセンサー18-1>
図2は、ガスケット2のインナーカット部16およびセンサー18-1の一例を示している。
インナーカット部16はたとえば、フランジ締結時、ガスケット2に現れる変形を取り出すため、変形取出し部20および一対のスリット部22-1、22-2を備える。
変形取出し部20は、円弧状壁部24-1、24-2と、スリット部22-1で分断された垂直壁部26-11、26-12、スリット部22-2で分断された垂直壁部26-21、26-22とを備えている。各円弧状壁部24-1、24-2は、ガスケット2の透孔4またはガスケット本体部6の周縁28と同心円状である。垂直壁部26-11、26-12、26-21、26-22は、透孔4の半径方向の垂直面またはガスケット本体部6の周縁28の接線に直交する垂直面を備える。
【0018】
スリット部22-1、22-2は、各円弧状壁部24-1、24-2と同様に、ガスケット2の透孔4またはガスケット本体部6の周縁28と同心円状である。このようなスリット部22-1、22-2を形成したことにより、垂直壁部26-11、26-12、26-21、26-22の保形強度が緩和され、円弧状壁部24-1、24-2のラジアル方向および間隔方向の変形が容易化されている。したがって、ガスケット2の変形が拘束部12から非拘束部14に波及すると、円弧状壁部24-1、24-2の間隔Dが変化する。この変化が該当するインナーカット部16にあるセンサー18-1、18-2、18-3、18-4に加わり、その変形を表す検出出力がセンサー18-1、18-2、18-3、18-4の何れかまたは2以上から取り出される。
【0019】
各センサー18-1、18-2、18-3、18-4はインナーカット部16内に着脱可能に設置されている。各センサー18-1、18-2、18-3、18-4は、インナーカット部16の変形によって移動する接点30-1、30-2を含む接点機構32を備えている。この接点機構32は接点30-1、30-2を移動可能に支持する接点支持機構34を含む。この接点支持機構34はインナーカット部16に着脱可能に設置されるとともに、複数のストッパ36を以てインナーカット部16からの脱落が防止される。
【0020】
<接点機構32>
図3は、接点機構32を分解して示している。
各接点30-1、30-2はりん青銅などの導電性および弾性を備える導体板で形成される。各接点30-1、30-2にはたとえば、長方形状に加工された導体板に山型の接点部38が形成され、この接点部38の両側に平坦な固定部40が形成されている。各固定部40には長方形状の固定孔42が形成され、一方の固定部40にはリード引出し部44が形成されている。接点30-1にはセンサーリード46-1、接点30-2にはセンサーリード46-2が接続される。
【0021】
接点支持機構34は、接点30-1を支持する支持壁部48-1と、接点30-2を支持する支持壁部48-2と、支持壁部48-1、48-2をインナーカット部16の変形に追従させるための弾性支持部50とを一体に備えている。
各支持壁部48-1、48-2は接点30-1、30-2間を電気的に絶縁するたとえば、絶縁性合成樹脂などの絶縁材料で形成されている。インナーカット部16の変形に対する追従性を高めるため、支持壁部48-1、48-2に弾性を備えてもよい。
弾性支持部50は、インナーカット部16に現れるガスケット2の変形に接点30-1、30-2間の間隔を追従させるため、接点30-1、30-2を弾性支持するために弾性合成樹脂などの弾性材料で形成される。
そして、支持壁部48-1には接点30-1を固定する一対のフック部52、同様に、支持壁部48-2には接点30-2を固定する一対のフック部52が形成されている。
【0022】
図4のAは、接点30-1、30-2の固定構造を示している。
接点30-1は、固定孔42に支持壁部48-1側のフック部52を係合させて固定されるとともに、接点30-2は、固定孔42に支持壁部48-2側のフック部52を係合させて固定される。
図4のBは、接点30-1、30-2の固定構造の変形例を示している。フック部52に代え、各支持壁部48-1、48-2から固定孔42に挿入可能なL字形の支柱54を立設し、この支柱54に係止爪56を設けてもよい。斯かる構造によれば、固定孔42に支柱54を挿入し、固定孔42に係止爪56を係止させることにより、各接点30-1、30-2が各支持壁部48-1、48-2に固定される。
【0023】
<接点30-1、30-2間の間隔dの設定>
図5は、接点30-1、30-2間の間隔dの設定を示している。
接点機構32には、ガスケット2が受ける荷重Fが閾値Fth以上に到達したとき、接点30-1、30-2間が接するように、接点部38間の間隔dを設定ないし調整する。この間隔dの設定ないし調整には、主として接点部38間の間隔調整を行うが、支持壁部48-1、48-2および弾性支持部50を含む接点支持機構34が持つ弾性係数などの物理情報を参照し、最適化する。換言すれば、間隔dの調整で支持壁部48-1、48-2および弾性支持部50を含む接点支持機構34が持つ弾性係数などを吸収することが可能である。
【0024】
<フランジ締結部58>
図6は、ガスケット2を用いるフランジ締結部58の一例を示している。
このフランジ締結部58は、管路60-1の端部にフランジ62-1、管路60-2の端部にフランジ62-2を備える。各フランジ62-1、62-2の対向面部にはガスケット座64が形成されている。各ガスケット座64は、フランジ62-1、62-2の円孔66を包囲して突出させた円環凸部である。これらガスケット座64間にガスケット2が設置される。したがって、ガスケット2に設定された拘束部12(
図2)は、フランジ62-1、62-2と接触するエリア(接触部)であるのに対し、非拘束部14(
図2)は、フランジ62-1、62-2と接触しないエリア(非接触部)である。
【0025】
フランジ62-1、62-2にはZ軸を中心に同心円上のX軸およびY軸上の共通位置にたとえば、90度の角度間隔で4個の貫通孔68が形成されている。
フランジ締結時、フランジ62-1、62-2間にガスケット2を挟み込み、フランジ62-1、62-2の各貫通孔68およびガスケット2の貫通孔10を合わせ、ボルト70-1、70-2、70-3(図示せず)、70-4を貫通させる。各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4にはフランジ62-1、62-2を挟んで個別に一対のナット72およびワッシャ74が取り付けられる。
【0026】
各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4の締付けには締付け工具76が用いられる。ナット72に嵌合環部78を合わせて締付け工具76のハンドル部80から各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4にトルクTを付与する。これにより、各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4からフランジ62-1、62-2間に荷重Fが付与され、この荷重Fがフランジ62-1、62-2からガスケット2に付与される。
【0027】
<インナーカット部16の変形>
図7は、フランジ締結部58のセンサー18-1部分での切断断面を示している。
フランジ62-1、62-2から荷重Fがガスケット2に加えられると、この荷重Fの大きさに応じてガスケット2が変形する。この変形はガスケット2の周縁方向に現れる。この変形は、拘束部12から非拘束部14に波及し、インナーカット部16の間隔Dを変化させる。
【0028】
たとえば、センサー18-1では、ボルト70-1、70-2の締付け力が加えられると、この締付け力を受けたフランジ62-1、62-2からガスケット座64間のガスケット2に荷重Fが作用する。この荷重Fでガスケット2が変形し、拘束部12から非拘束部14に波及し、インナーカット部16の間隔Dを縮小させる。この間隔Dの縮小にセンサー18-1の接点30-1、30-2間が追従する。
センサー18-1は、フランジ62-1、62-2間より受ける荷重Fが閾値Fth以上であるか否かにより、接点30-1、30-2間が非導通(OFF)状態または導通(ON)状態となり、ON・OFFの二値化情報が得られる。
【0029】
<インナーカット部16の変形検出>
図8のAは、接点30-1、30-2のOFF状態を示している。
各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4の仮止め状態など、その締付け力が小さく、またはフランジ62-1、62-2間からガスケット2に加えられる荷重Fが閾値Fth未満であれば(F=FL)、インナーカット部16に現れる間隔Dの変化は小さい。このとき、接点部38間が非接触状態であり、接点30-1、30-2がOFF状態となる。
【0030】
図8のBは、接点30-1、30-2のON状態を示している。
各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4の締付け力が大きいために、フランジ62-1、62-2間からガスケット2に加えられる荷重Fが閾値Fth以上であれば(F=FH)、インナーカット部16に現れる間隔Dの変化が大きく、縮小状態となる。このとき、接点部38間が非接触状態から接触状態に遷移し、接点30-1、30-2がOFF状態からON状態に切り替えられる。
このようなインナーカット部16の変形検出は、他のセンサー18-2、18-3、18-4についても同様であるので、その説明を割愛する。
【0031】
<ガスケット2の製造工程>
本開示のガスケット2の製造方法には、ガスケット本体部6の加工工程(S101)、センサー18-1、18-2、18-3、18-4の製作工程(S102)、ガスケット2の組立工程(S103)が含まれる。
【0032】
ガスケット本体部6の加工工程(S101): ガスケット本体部6にはたとえば、PTFEと充填剤を配合した樹脂材料を使用する。この樹脂材料からなる合成樹脂シートにたとえば、打ち抜き加工を施し、ガスケット本体部6に成形する。この際、インナーカット部16は打ち抜き加工で同時に加工してもよいし、ガスケット本体部6を成形した後、このガスケット本体部6にインナーカット部16を追加加工してもよい。つまり、たとえば、センサー18-1の形状に合わせて所望のインナーカット部16を形成してもよい。
【0033】
センサー18-1、18-2、18-3、18-4の製作工程(S102): センサー18-1、18-2、18-3、18-4の接点機構32は、接点30-1、30-2および接点支持機構34を備えており、これらは異なった材料で構成される。したがって、接点30-1、30-2および接点支持機構34を独立して形成し、接点支持機構34に接点30-1、30-2を組み込むことにより、センサー18-1、18-2、18-3、18-4を製作する。
【0034】
ガスケット2の組立工程(S103): ガスケット2の組立工程ではガスケット本体部6のインナーカット部16にセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を装着してガスケット2が組み立てられる。
【0035】
<第一の実施の形態の効果>
第一の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) このガスケット2によれば、間隔dの加減により、ガスケット2が受ける荷重Fに対して所望の閾値Fthを設定でき、各ボルト70-1、70-2、70-3、70-4の適正締付け、ガスケット2に対する荷重Fの適正化や調整が可能である。
(2) フランジ締結でガスケット2に生じる形状変形をセンサー18-1、18-2、18-3、18-4で直接に検知でき、各センサー18-1、18-2、18-3、18-4から得られるON、OFFの二値化情報で取得できる。
(3) たとえば、センサー18-1、18-2、18-3、18-4で構成されたガスケット2では、全ての検出出力が適正荷重を表しているとき、フランジ締結を完了することができる。
(4)ガスケット2の周回方向に隣接するセンサーから出力される二値化情報をそれぞれ突き合わせてガスケット2の締結状態を評価し、その評価結果を可視化情報で提示できる。それによりフランジ締結をサポートでき、シール施工の信頼性を高めることができる。
【0036】
(5) 従前のボルト軸力によるフランジ締結の評価に比較し、ボルトやフランジによる影響を受けることがなく、ガスケット2が受ける荷重Fで評価でき、フランジ締結の評価精度を高めることができる。
(6) 上記製造工程によれば、センサー付きのガスケット2を容易に製造することができる。また、既存のガスケット2にインナーカット部16を追加的に加工し、センサー18-1、18-2、18-3、18-4を設置してセンサー付きガスケットを製造することができる。
【0037】
〔第二の実施の形態〕
図9は、第二の実施の形態に係るガスケット2を示している。
図9において、
図3と同一部分には同一符号を付してある。
第一の実施の形態では、接点30-1、30-2の接点部38を同一形状としたが、接点30-2を平坦な金属板で形成し、接点部38を一方のみ平坦状に形成してもよい。
第一の実施の形態では、接点支持機構34の弾性支持部50を支持壁部48-1、48-2の終端部に形成したが、支持壁部48-1、48-2を延長して肉厚部82を形成してもよい。この肉厚部82の支持壁部48-1、48-2の内側部分に弾性支持部50を形成し、この弾性支持部50を対向方向に湾曲させてもよい。この実施の形態では、ストッパ36を省略しているが、第一の実施の形態と同様にストッパ36を備えてもよい。
【0038】
<第二の実施の形態の効果>
この第二の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 第一の実施の形態の効果に加え、接点30-2の加工が容易になるとともに、接点30-1との接点部38の接触面積を大きくできる。
(2) 弾性支持部50の湾曲エリアを支持壁部48-1、48-2の内側に設置して弾性支持部50を防護することができる。
【0039】
〔第三の実施の形態〕
図10および
図11は、第三の実施の形態に係るガスケット2の接点機構32を示している。
図10および
図11において、
図2と同一部分には同一符号を付してある。
第一および第二の実施の形態では、接点支持機構34に弾性支持部50を備えているが、この弾性支持部50をガスケット2の非拘束部14の一部で代用させるとともに、支持壁部48-1、48-2を独立した部材としてもよい。
この第三の実施の形態では、変形取出し部20の円弧状壁部24-1、24-2と対向して係止凸部84を形成し、円弧状壁部24-1、24-2と係止凸部84との間に嵌合溝部86を形成している。
この実施の形態では、接点支持機構34が円弧状壁部24-1側の嵌合溝部86間に支持壁部48-1を嵌合させ、円弧状壁部24-2側の嵌合溝部86間に支持壁部48-2を嵌合させることにより、構成されている。
斯かる構成では、
図11に示すように、接点支持機構34に、弾性支持部50に代えてガスケット2の非拘束部14の一部を利用することにより、接点30-1、30-2を弾性支持させることができる。
【0040】
<第三の実施の形態の効果>
この第三の実施の形態によれば、次の何れかの効果が得られる。
(1) 第一の実施の形態の効果に加え、弾性支持部50を省略できる。
(2) 弾性支持部50を介在させることなく、変形取出し部20に現れるガスケット2の変形で接点30-1、30-2を開閉することができる。
(3) 接点支持機構34の構造を簡略化できる。
【0041】
〔第四の実施の形態〕
図12は、第四の実施の形態に係るガスケット2を用いたフランジ締結サポートシステム88を示している。
このフランジ締結サポートシステム88は、ガスケット2に設置されたセンサー18-1、18-2、18-3、18-4と、中継部90と、フランジ締結サポート部92とで構成される。
センサー18-1、18-2、18-3、18-4の検出出力はセンサーリード46-1、46-2から個別に一定の時間間隔で中継部90に加えられ、この中継部90に集積される。
中継部90に集積させた検出出力は、ケーブル94を介してフランジ締結サポート部92に取り込まれる。
フランジ締結サポート部92はサーバー96および情報提示部98を備える。サーバー96はガスケット2の周回方向に隣接するセンサー18-1、18-2、18-3、18-4の検出出力を抽出して、隣接するセンサー同士の検出出力を突き合わせる。この処理によってボルト70-1、70-2、70-3、70-4から加えられる荷重Fが閾値Fth以上であるか否かを判定する。
この判定結果情報が情報提示部98により画像など提示されて可視化される。
【0042】
<第四の実施の形態の効果>
この第四の実施の形態によれば、フランジ締結に用いられるガスケット2にセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を備えて荷重Fが閾値Fth以上であるか否かを評価し、その評価結果を可視化できるので、フランジ締結をサポートでき、シール施工の信頼性を高めることができる。
【0043】
〔第五の実施の形態〕
図13は、第五の実施の形態に係るガスケット2を用いたフランジ締結サポートシステムを示している。
第四の実施の形態では、4組のセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を設置し、ボルト数とセンサー数を同一に設定したシステムについて記載したが、ボルト数とセンサー数を一致させる必要はない。
図13に示すように、8本のボルト70-1、70-2、・・・、70-8に対し、4組のセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を設置したサポートシステムを構成してもよい。
【0044】
<第五の実施の形態の効果>
この第五の実施の形態によれば、第四の実施の形態と同様の効果が得られるとともに、ボルト本数に対してセンサー数を低減してフランジ締結の評価を行い、その評価結果の可視化を実現できる。
【0045】
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、ガスケット2に加わる荷重Fが閾値Fth以上でON、閾値Fth未満でOFFのセンサー情報が得られるセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を例示したが、荷重Fが閾値Fth以上でOFF、閾値Fth未満でONのセンサー情報が得られるセンサーを用いてもよい。
(2) 上記実施の形態では、接点30-1、30-2を導体板で構成したセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を例示したが、半導体スイッチなどの電子スイッチを備えるセンサーを用いてもよく、本開示は機械式のセンサーに限定されない。
(3) 上記実施の形態では、ガスケット2に合成樹脂製のガスケットを例示したが、本開示は合成樹脂ガスケットに限定されない。
(4) 上記実施の形態ではフランジ締結部58の初期締結におけるガスケット2の形状変化の測定およびその評価を例示したが、本開示は初期締結に限定されない。
(5) 上記実施の形態では、4組のセンサー18-1、18-2、18-3、18-4を例示したが、ガスケット2に設置されるインナーカット部16およびセンサー18は3組以下でもよいし、5組以上であってもよい。
【0046】
以上説明したように、本開示の最も好ましい実施の形態等について説明した。本開示は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本開示の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本開示のガスケットおよびその製造方法によれば、フランジ締結でガスケットに加わる荷重をガスケット上の切欠き部およびセンサーにより検出して評価できるので、ボルトやフランジの締付け状態の影響を受けることなく、信頼性の高いフランジ締結に寄与できる。
【符号の説明】
【0048】
2 ガスケット
4 透孔
6 ガスケット本体部
8 突出部
10 貫通孔
12 拘束部
14 非拘束部
16 インナーカット部
18-1、18-2、18-3、18-4 センサー
20 変形取出し部
22-1、22-2 スリット部
24-1、24-2 円弧状壁部
26-11、26-12、26-21、26-22 垂直壁部
28 周縁
30-1、30-2 接点
32 接点機構
34 接点支持機構
36 ストッパ
38 接点部
40 固定部
42 固定孔
44 リード引出し部
46-1、46-2 センサーリード
48-1、48-2 支持壁部
50 弾性支持部
52 フック部
54 支柱
56 係止爪
58 フランジ締結部
60-1、60-2 管路
62-1、62-2 フランジ
64 ガスケット座
66 円孔
68 貫通孔
70-1、70-2、70-3、70-4 ボルト
72 ナット
74 ワッシャ
76 締付け工具
78 嵌合環部
80 ハンドル部
82 肉厚部
84 係止凸部
86 嵌合溝部
88 フランジ締結サポートシステム
90 中継部
92 フランジ締結サポート部
94 ケーブル
96 サーバー
98 情報提示部