IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニ・チャーム株式会社の特許一覧

特許7581162動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ
<>
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図1
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図2
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図3
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図4
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図5
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図6
  • 特許-動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】動物用吸収性シート、及び、動物用トイレ
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20241105BHJP
   A01K 1/01 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
A01K1/015 A
A01K1/01 801A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021146280
(22)【出願日】2021-09-08
(65)【公開番号】P2023039225
(43)【公開日】2023-03-20
【審査請求日】2024-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰生
(72)【発明者】
【氏名】首藤 啓孝
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-99046(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172358(JP,U)
【文献】特開2007-37553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
A01K 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に複数の孔を備える上容器と、前記複数の孔を通過した排泄液を受ける下容器とを有する動物用トイレに用いられ、前記下容器に設置される動物用吸収性シートであって、
液透過性の表面シートと、
前記動物用吸収性シートの厚さ方向において、前記表面シートの一方側に位置する液不透過性の裏面シートと、
前記表面シートと前記裏面シートの間に位置する吸収体と、を有し、
前記吸収体は、
高吸収性ポリマーを有する第1吸収層と、
前記厚さ方向において前記第1吸収層よりも前記一方側に位置し、液体吸収性繊維に高吸収性ポリマーが含まれた第2吸収層と、を有し、
前記第1吸収層は、抗菌剤を含み、
前記第1吸収層の前記厚さ方向の前記一方側の部位の方が、前記第1吸収層の前記厚さ方向の他方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項2】
請求項1に記載の動物用吸収性シートであって、
前記第2吸収層は、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項3】
請求項2に記載の動物用吸収性シートであって、
前記第2吸収層の前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記第2吸収層の前記厚さ方向の前記一方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の動物用吸収性シートであって、
前記第1吸収層が含む前記抗菌剤と、前記第2吸収層が含む前記抗菌剤と、のうちの少なくとも一方は水溶性であることを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記動物用吸収性シートは、前記表面シートと前記第1吸収層の間に、液透過性の中間シートを有し、
前記中間シートの裏面に、前記第1吸収層が有する前記高吸収性ポリマーが付着していることを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記動物用吸収性シートは、前記表面シートと前記第1吸収層の間に、液透過性の中間シートを有し、
前記中間シートは、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記動物用吸収性シートは、前記第2吸収層と前記裏面シートの間に、液透過性の他の中間シートを有し、
前記他の中間シートは、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記表面シートの坪量を28g/m2以上とすることを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記表面シートは、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記表面シートの前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記表面シートの前記厚さ方向の前記一方側の部位に比べて、前記表面シートを構成する繊維の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項11】
請求項1から9の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記表面シートの前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記表面シートの前記厚さ方向の前記一方側の部位に比べて、前記表面シートを構成する繊維の密度が低いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項12】
請求項1から11の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記第1吸収層は、前記厚さ方向に複数の前記高吸収性ポリマーが重なった部位を有することを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記第1吸収層は、水感受性の香料を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項14】
請求項1から13の何れか1項に記載の動物用吸収性シートであって、
前記第2吸収層の前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記第1吸収層の前記厚さ方向の前記他方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【請求項15】
請求項1から14の何れか1項に記載の動物用吸収性シートを設置可能な前記動物用トイレであって、
前記上容器において前記複数の孔が設けられた領域の面積は、前記動物用吸収性シートを前記厚さ方向に見たときの前記吸収体の面積よりも小さいことを特徴とする動物用トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用吸収性シート、及び、動物用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
猫等の動物が使用する動物用トイレであって、排泄物受け部と、排泄物受け部の下側に配置されたシート収容部を有するトイレが知られている。排泄物受け部の底面には複数の空孔が設けられ、排泄物としての体液は空孔を通過し、シート収容部に導かれる。シート収容部には動物用吸収性シートが収容され、体液は動物用吸収性シートに吸収、保持される。
特許文献1には、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、それらの間に設けられた吸収体と、を有する動物用吸収性シートが開示されている。吸収体(吸収性コア)としては、パルプを含有する上パルプ層と、上パルプ層よりも裏面シート側に配置され、パルプを含有する下パルプ層を有するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-188698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、上パルプ層と下パルプ層の間に粉体状の抗菌剤が配置されてもよいと記載されている。そうすることで、体液が通過する過程で抗菌機能を発揮でき、吸収性シートによって保持する体液の菌の増殖を抑制できると記載されている。しかし、この場合、上パルプ層のパルプ繊維間に体液が残りやすく、その体液に抗菌剤が接触し難い。特に、動物用トイレに使用される吸収性シートは、1週間程度の長期間に亘って使用される。そのため、上パルプ層にて菌が増殖し、吸収性シートから臭いが生じやすくなってしまう。
また、特許文献1には、吸収性コアを覆うカバーシートと表面シートの間に抗菌剤が配置されてよいとも記載されている。しかし、この場合、初期に排泄されて上パルプ層のパルプ繊維間に残った体液に多くの抗菌剤が接触して使用され、後に排泄された体液に抗菌剤が接触し難くなり、吸収性シートから臭いが生じやすくなってしまう。一方で、後に排泄された体液も抗菌剤が接触するように、カバーシートと表面シートの間に多くの抗菌剤を配置してしまうと、抗菌剤により体液の吸収阻害が生じてしまう恐れがある。また、表面シートの近くに多くの抗菌剤を配置すると、使用者(飼い主等)が吸収性シートをトイレに設置する際に、抗菌剤にてユーザーの手を刺激してしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、排泄液の臭いが生じ難く、排泄液の吸収性が確保され、かつ、安全な動物用吸収性シート、及び、当該動物用吸収性シートを設置可能な動物用トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、底部に複数の孔を備える上容器と、前記複数の孔を通過した排泄液を受ける下容器とを有する動物用トイレに用いられ、前記下容器に設置される動物用吸収性シートであって、液透過性の表面シートと、前記動物用吸収性シートの厚さ方向において、前記表面シートの一方側に位置する液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に位置する吸収体と、を有し、前記吸収体は、高吸収性ポリマーを有する第1吸収層と、前記厚さ方向において前記第1吸収層よりも前記一方側に位置し、液体吸収性繊維に高吸収性ポリマーが含まれた第2吸収層と、を有し、前記第1吸収層は、抗菌剤を含み、前記第1吸収層の前記厚さ方向の前記一方側の部位の方が、前記第1吸収層の前記厚さ方向の他方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シートである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排泄液の臭いが生じ難く、排泄液の吸収性が確保され、かつ、安全な動物用吸収性シート、及び、当該動物用吸収性シートを設置可能な動物用トイレを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】動物用トイレ1の概略斜視図である。
図2】動物用トイレ1の分解側面図である。
図3】動物用吸収性シート40の平面図である。
図4図3中のA-Aにおける模式的断面図である。
図5図5A及び図5Bは、表面シート41における繊維勾配を示す図である。
図6図6Aは吸収性シート40の平面図であり、図6Bは動物用トイレ1が備えるトレイ21の平面図であり、図6Cは上容器10の平面図である。
図7】吸収性シート40が設置された動物用トイレ1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
底部に複数の孔を備える上容器と、前記複数の孔を通過した排泄液を受ける下容器とを有する動物用トイレに用いられ、前記下容器に設置される動物用吸収性シートであって、液透過性の表面シートと、前記動物用吸収性シートの厚さ方向において、前記表面シートの一方側に位置する液不透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートの間に位置する吸収体と、を有し、前記吸収体は、高吸収性ポリマーを有する第1吸収層と、前記厚さ方向において前記第1吸収層よりも前記一方側に位置し、液体吸収性繊維に高吸収性ポリマーが含まれた第2吸収層と、を有し、前記第1吸収層は、抗菌剤を含み、前記第1吸収層の前記厚さ方向の前記一方側の部位の方が、前記第1吸収層の前記厚さ方向の他方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0010】
このような動物用吸収性シートによれば、第1吸収層と第2吸収層の境界部において、平面方向に拡散し、かつ、自由水の状態で存在する排泄液が、より多くの抗菌剤と接触できる。よって、排泄液における細菌の増殖を抑制でき、動物用吸収性シートからの臭いの発生をより抑制できる。また、第1吸収層の表面側の部位に配する抗菌剤の量を少なくすることで、抗菌剤による吸収阻害を抑制でき、吸収性シートの吸収性を確保できる。また、表面シート側への抗菌剤の染み出しを抑制でき、安全である。
【0011】
かかる動物用吸収性シートであって、前記第2吸収層は、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0012】
このような動物用吸収性シートによれば、第2吸収層が有する液体吸収性繊維の間において、自由水の状態で存在する排泄液が抗菌剤と接触でき、動物用吸収性シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0013】
かかる動物用吸収性シートであって、前記第2吸収層の前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記第2吸収層の前記厚さ方向の前記一方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0014】
このような動物用吸収性シートによれば、第1吸収層と第2吸収層の境界部において、平面方向に拡散し、かつ、自由水の状態で存在する排泄液が、より多くの抗菌剤と接触でき、動物用吸収性シートからの臭いの発生を抑制できる。また、第2吸収層の裏面側の部位まで浸透してくる排泄液の量は少ないため、必要以上に抗菌剤が配されてしまうことを抑制できる。
【0015】
かかる動物用吸収性シートであって、前記第1吸収層が含む前記抗菌剤と、前記第2吸収層が含む前記抗菌剤と、のうちの少なくとも一方は水溶性であることを特徴とする動物用吸収性シート。
【0016】
このような動物用吸収性シートによれば、排泄液が抗菌剤と接触すると、排泄液内に抗菌剤が溶出し、排泄液全体に抗菌作用が生じやすい。よって、排泄液に対する抗菌効果が高まり、動物用吸収性シートからの臭いの発生をより抑制できる。
【0017】
かかる動物用吸収性シートであって、前記動物用吸収性シートは、前記表面シートと前記第1吸収層の間に、液透過性の中間シートを有し、前記中間シートの裏面に、前記第1吸収層が有する前記高吸収性ポリマーが付着していることを特徴とする動物用吸収性シート。
【0018】
このような動物用吸収性シートによれば、表面シートを構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が、高吸収性ポリマーに吸収されて少なくなる。よって、表面シートの排泄液における細菌の増殖を抑制でき、表面シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0019】
かかる動物用吸収性シートであって、前記動物用吸収性シートは、前記表面シートと前記第1吸収層の間に、液透過性の中間シートを有し、前記中間シートは、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0020】
このような動物用吸収性シートによれば、中間シートを構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が、抗菌剤と接触でき、中間シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0021】
かかる動物用吸収性シートであって、前記動物用吸収性シートは、前記第2吸収層と前記裏面シートの間に、液透過性の他の中間シートを有し、前記他の中間シートは、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0022】
このような動物用吸収性シートによれば、他の中間シートを構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が、抗菌剤と接触でき、他の中間シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0023】
かかる動物用吸収性シートであって、前記表面シートの坪量を28g/m2以上とすることを特徴とする動物用吸収性シート。
【0024】
このような動物用吸収性シートによれば、吸収層が吸収した排泄液の色が表面シートを介して視認され難く(排泄されていない状態の色に近くなり)、ユーザーが排泄液の臭いを意識し難くなる。
【0025】
かかる動物用吸収性シートであって、前記表面シートは、抗菌剤を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0026】
このような動物用吸収性シートによれば、表面シートを構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が抗菌剤と接触でき、表面シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0027】
かかる動物用吸収性シートであって、前記表面シートの前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記表面シートの前記厚さ方向の前記一方側の部位に比べて、前記表面シートを構成する繊維の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0028】
このような動物用吸収性シートによれば、表面シートの表面側において排泄液が拡散し、平面方向に拡散した多くの排泄液が第1吸収層の抗菌剤と接触でき、動物用吸収性シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0029】
かかる動物用吸収性シートであって、前記表面シートの前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記表面シートの前記厚さ方向の前記一方側の部位に比べて、前記表面シートを構成する繊維の密度が低いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0030】
このような動物用吸収性シートによれば、表面シートの表面側から裏面側に向かって排泄液が素早く浸透しやすく、それに伴って、排泄液が第1吸収層51に移行しやすく、高吸収性ポリマーに吸収されやすくなる。よって、表面シートを構成する繊維の間にて、自由水の状態で残る排泄液の量を少なくでき、表面シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0031】
かかる動物用吸収性シートであって、前記第1吸収層は、前記厚さ方向に複数の前記高吸収性ポリマーが重なった部位を有することを特徴とする動物用吸収性シート。
【0032】
このような動物用吸収性シートによれば、より多くの排泄液が第1吸収層の高吸収性ポリマーに吸収保持され、第2吸収層の繊維間等に残る排泄液(自由水)の量を少なくすることができ、動物用吸収性シートからの臭いの発生を抑制できる。
【0033】
かかる動物用吸収性シートであって、前記第1吸収層は、水感受性の香料を含むことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0034】
このような動物用吸収性シートによれば、排泄液が第1吸収層に浸透し、水感受性の香料と接触することで、香料が放出される。よって、動物用吸収性シートに排泄された排泄液の臭いを香料によりマスキングでき、ユーザーが排泄液の臭いを感じ難くなる。
【0035】
かかる動物用吸収性シートであって、前記第2吸収層の前記厚さ方向の前記他方側の部位の方が、前記第1吸収層の前記厚さ方向の前記他方側の部位に比べて、前記抗菌剤の密度が高いことを特徴とする動物用吸収性シート。
【0036】
このような動物用吸収性シートによれば、第2吸収層の表面側(他方側)の部位において、平面方向に拡散し、かつ、自由水の状態で存在する排泄液が、より多くの抗菌剤と接触でき、動物用吸収性シートからの臭いの発生を抑制できる。また、第1吸収層の表面側の部位に配する抗菌剤の量を少なくすることで、抗菌剤による吸収阻害を抑制でき、また、表面シート側への抗菌剤の染み出しを抑制できる。
【0037】
また、動物用吸収性シートを設置可能な前記動物用トイレであって、前記上容器において前記複数の孔が設けられた領域の面積は、前記動物用吸収性シートを前記厚さ方向に見たときの前記吸収体の面積よりも小さいことを特徴とする動物用トイレ。
【0038】
このような動物用トイレによれば、動物用吸収性シートが設置された状態を上方から見たときに、複数の孔が設けられた領域の全域が、動物用吸収性シートの吸収体と重なりやすくなる。ゆえに、複数の孔を通過した排泄液を、抗菌剤を含む吸収体で受けることができ、動物用トイレに排泄された排泄液による臭いの発生を抑制できる。
【0039】
===実施形態===
本実施形態に係る動物用吸収性シート、及び、当該動物用吸収性シートを設置可能な動物用トイレは、例えば室内で飼われる猫等の動物が使用するものである。「動物」には、猫、犬、ウサギ、ハムスター等の所謂ペットのみならず、トラやライオンの赤ちゃん等も含まれる。
【0040】
<<動物用トイレ1の基本構成>>>
図1は、動物用トイレ1の概略斜視図である。図2は、動物用トイレ1の分解側面図である。動物用トイレ1は、互いに直交する前後方向、左右方向、及び、上下方向を有する。前後方向は、動物用トイレ1の長手方向に沿った方向であり、動物の出入り口が設けられる側を前側とする。左右方向は、動物用トイレ1の幅方向に沿った方向である。上下方向は、鉛直方向に沿った方向である。
【0041】
動物用トイレ1は、上容器10と、下容器20と、カバー30を有する。下容器20は、動物用吸収性シート40を設置可能なトレイ21を有する。これら4つの部材は、互いに分解・組み付けが自在である。
【0042】
上容器10は、上方が開口された略箱状の部材であり、動物は上容器10の底部11の上面に排泄を行う。底部11は、動物が排泄した尿等の排泄液を下方に通過させる複数の孔12(底部11を上下方向に貫通する孔)を備える。
【0043】
動物用トイレ1は、図示しないが、上容器10の底部11に猫砂等の粒状物(例えば、ゼオライトやシリカゲル、パルプ、木材等の、消臭効果や抗菌効果を有する粒状物)を設置して使用可能である。本実施形態の上容器10の底部11には(後述の図6Cを参照)、平面視長方形状である孔12が前後方向及び左右方向に複数並んでいるが、孔12の形状、数、大きさ、配置等は、特に限定されるものではない。ただし、上記の粒状物を通過させない形状、及び、大きさであることが望ましい。また、上記の粒状物を設置せずに動物用トイレ1を使用してもよい。
【0044】
下容器20は、上方が開口された略箱状の部材である。動物用トイレ1の使用時には、下容器20は上容器10の下方に重ねて組み付けられ、上容器10を支持する。下容器20は、トレイ21と、トレイ収容部22を有する。トレイ21は、下容器20の前壁部23の下方に設けられた開口部23Lから、前後方向の後側に向かってスライド移動することで、図2の破線部で表されるトレイ収容部22に収容される。トレイ21は、底の浅い平坦な箱状容器であり、動物用吸収性シート40が設置されるシート収容部21Rを有する。なお、下容器20はトレイ21を有するに限らず、例えば動物用吸収性シート40が下容器20の底部に直接設置されてもよい。
【0045】
カバー30は、開口部31と、壁部32を有する。上容器10の上方にカバー30が組付けられると、壁部32は、上容器10の左右両側部及び後方部から壁のように立設する。カバー30によって、排泄物や猫砂等の粒状物の飛び散りを抑制できる。しかし、動物用トイレ1はカバー30を有していなくてもよい。
【0046】
猫等の動物は、カバー30の開口部31から動物用トイレ1内に進入して、上容器10の底部11の上、又は、底部11の上に設置された猫砂等の粒状物の上に乗り、排泄を行う。尿等の排泄液は、上容器10の底部11が備える複数の孔12を通過して下容器20に落下する。そして、排泄液は、下容器20のトレイ21に設置されている動物用吸収性シート40によって吸収され、トレイ21内に貯留される。使用者(動物の飼い主等)は動物用吸収性シート40を定期的に交換することにより、動物用トイレ1を清潔に使用できる。
【0047】
<<動物用吸収性シート40について>>
図3は、動物用吸収性シート40(以下、「吸収性シート」とも称す)の平面図である。図4は、図3中のA-Aにおける模式的断面図である。図5A及び図5Bは、表面シート41における繊維勾配を示す図である。
【0048】
吸収性シート40は、平面視長方形状のシート部材であり、互いに直交する長手方向、幅方向、及び、厚さ方向を有する。以下の説明では、厚さ方向において、動物の排泄物を受ける排泄面側(他方側)を表面側とも称し、その反対側である非排泄面側(一方側)を裏面側とも称す。なお、吸収性シート40の平面形状は、長方形状に限定されるものではない。
【0049】
吸収性シート40は、液透過性の表面シート41と、吸収性シート40の厚さ方向において、表面シート41の裏面側に位置する液不透過性の裏面シート42と、表面シート41と裏面シート42の間に位置する吸収体50と、を有する。表面シート41としては、不織布(例えばエアスルー不織布)等を例示できる。裏面シート42としては、樹脂フィルムシート等を例示できる。
【0050】
吸収体50は、表面シート41及び裏面シート42に比べて、平面形状が一回り小さい。図3に示すように、吸収体50よりも外側の、吸収性シート40の周縁部には、表面シート41と裏面シート42が接合された接合部43が形成されている。接合部43における接合方法としては、接着剤や溶着等による接合を例示できる。接合部43により排泄液の滲み出しを抑制できる。
【0051】
また、図4に示すように、吸収体50は、第1吸収層51と、厚さ方向において第1吸収層51よりも裏面側に位置する第2吸収層52と、第1吸収層51及び第2吸収層52を覆うカバーシート53を有する。第1吸収層51は、高吸収性ポリマー50Sを有する。第2吸収層52は、液体吸収性繊維に高吸収性ポリマー50Sが含まれたものである。本実施形態の液体吸収性繊維はパルプ繊維50Pとするが、これに限定されない。例えば、液体吸収性繊維は、レーヨン繊維やコットン繊維等のセルロース系繊維や、ポリエチレン等の合成繊維を、単独又は組み合わせたもの等であってもよい。また、以下の説明では、第1吸収層51と第2吸収層52を合わせて「吸収層51,52」とも称す。
【0052】
カバーシート53は、ティッシュや不織布等の液透過性のシートである。本実施形態のカバーシート53は、第1吸収層51の表面を覆う第1カバーシート531と、第2吸収層52の裏面を覆う第2カバーシート532を有する。また、第2カバーシート532の長手方向の両端部は、吸収層51,52の長手方向の側縁を覆いながら、第1カバーシート531の表面上に位置するように、長手方向の内側に折り返されている。ただし、カバーシート53の構成は上記に限定されず、例えば、第2カバーシート532の長手方向の端部が表面側に折り返されていなくてもよいし、1枚のカバーシートで吸収層51,52を覆う構成(すなわち中間シートと他の中間シートが1枚のシートである構成)であってもよい。また、吸収層51,52がカバーシートで覆われていなくてもよい。
【0053】
本実施形態の吸収性シート40は、動物用トイレ1に設置され、1週間程度の、比較的に長期間に亘り使用され、動物が繰り返し排泄を行う。そのため、吸収層51,52は、1000g/m2以上、好ましくは2000g/m2以上の保水力を有するとよい。
【0054】
また、吸収性シート40が長期間に亘り使用されることで、吸収性シート40が吸収した排泄液において細菌が増殖しやすく、増殖した細菌により排泄液の成分が分解されて、臭い(悪臭)が発生しやすい。特に、高吸収性ポリマー50Sに保持されておらず、パルプ繊維50Pの間等に存在する排泄液、つまり、自由水の状態である排泄液(自由に動ける排泄液)において、細菌が増殖し、臭いが発生しやすくなる。
【0055】
そこで、第1吸収層51は抗菌剤60を含むものとする。さらに、第1吸収層51の厚さ方向の裏面側(非排泄面側)の部位51Bの方が、第1吸収層51の厚さ方向の表面側(排泄面側)の部位51Sに比べて、抗菌剤60の密度(g/m3)が高くなっている。
【0056】
具体的には、図4に示すように、第1吸収層51を厚さ方向に二分したときに、表面側の部位51Sに設けられている抗菌剤60の重量(g)よりも、裏面側の部位51Bに設けられている抗菌剤60の重量(g)の方が多くなっている。
【0057】
第1吸収層51では、排泄液が高吸収性ポリマー50Sに素早く吸収保持される。一方、第2吸収層52はパルプ繊維50Pを有するため、第1吸収層51と第2吸収層52の境界部において、排泄液は平面方向に拡散しやすい。よって、吸収体50を平面方向の広範囲に亘り有効に利用できる。ただし、パルプ繊維50Pの間の空間において、排泄液は自由水の状態で存在しやすく、細菌の増殖により臭いが発生しやすい。
【0058】
そのため、第1吸収層51の裏面側の部位51B、すなわち、第1吸収層51と第2吸収層52の境界部に、より多くの抗菌剤60を配するとよい。そうすることで、第1吸収層51と第2吸収層52の境界部において、平面方向に拡散し、かつ、自由水の状態で存在する排泄液が、より多くの抗菌剤60と接触できる。よって、排泄液における細菌の増殖を抑制でき、吸収性シート40からの臭いの発生をより抑制できる。
【0059】
また、吸収性シート40に繰り返し排泄が行われるにしたがって、排泄液は、吸収層51,52の内部に浸透していく。そのため、第1吸収層51の裏面側の部位51Bに多くの抗菌剤60を配することで、繰り返し排泄されて吸収層51,52の内部に浸透してきた排泄液が、多くの抗菌剤60と接触できる。ゆえに、抗菌効果が長期間に亘り持続され、吸収性シート40は動物用トイレ1に設置される吸収性シートに適する。
【0060】
一方、抗菌剤60によって排泄液の吸収阻害が生じる場合がある。そのため、第1吸収層51の表面側の部位51Sに配する抗菌剤60の量を少なくすることで、繰り返し排泄された排泄液を、吸収層51,52の内部に浸透させることができる。よって、吸収性シート40の吸収性(吸収可能量)を確保でき、動物用トイレ1に設置して長期間に亘り使用できる。
【0061】
また、第1吸収層51の表面側の部位51Sに配する抗菌剤60の量を少なくすることで、表面シート41側への抗菌剤60の染み出しを抑制できる。よって、ユーザーが動物用トイレ1に吸収性シート40を設置する際等、吸収性シート40に触れたときも、抗菌剤60にてユーザーを刺激してしまうことを抑制できる。
【0062】
以上のように、本実施形態の吸収性シート40は、排泄液の臭いが生じ難く、排泄液の吸収性が確保され、かつ、安全な動物用吸収性シートである。
【0063】
また、第1吸収層51は、高吸収性ポリマー50Sから構成され、パルプ繊維50P(液体吸収性繊維)を有さない。なお、第1吸収層51はパルプ繊維50Pを実質的に有さないものとし、第1吸収層51に紛れ込んだ微量のパルプ繊維50Pは含まないものとする。そのため、第1吸収層51、特に、第2吸収層52のパルプ繊維50Pと接触しない表面側の部位51Sでは、排泄液が、高吸収性ポリマー50Pに吸収保持され、自由水の状態で存在し難い。つまり、第1吸収層51の表面側の部位51Sでは、排泄液にて細菌が増殖し難いため、裏面側の部位51B程に多くの抗菌剤60を配さなくとも、臭いの発生を抑制できる。
【0064】
また、第1吸収層51だけでなく、第2吸収層52も抗菌剤60を含むことが好ましい。そうすることで、第2吸収層52が有するパルプ繊維50Pの間の空間において、自由水の状態で存在する排泄液が抗菌剤60と接触できる。よって、排泄液における細菌の増殖を抑制でき、吸収性シート40からの臭いの発生を抑制できる。
【0065】
より好ましくは、第2吸収層52の厚さ方向の表面側の部位の方が、第2吸収層52の厚さ方向の裏面側の部位に比べて、抗菌剤60の密度が高いとよい。つまり、図4に示すように、第2吸収層52を厚さ方向に二分したときに、表面側の部位52Sに設けられている抗菌剤60の重量(g)の方が、裏面側の部位52Bに設けられている抗菌剤60の重量(g)よりも多くなっているとよい。
【0066】
そうすることで、第1吸収層51と第2吸収層52の境界部において、平面方向に拡散し、かつ、自由水の状態で存在する排泄液が、より多くの抗菌剤60と接触できる。よって、排泄液における細菌の増殖を抑制でき、吸収性シート40からの臭いの発生を抑制できる。また、繰り返し排泄されて吸収層51,52の内部に浸透してきた排泄液が、第2吸収層52の表面側に配された多くの抗菌剤60と接触できる。ゆえに、吸収性シート40の抗菌効果が長期間に亘り持続される。
【0067】
一方、第2吸収層52の裏面側の部位52Bの方が、表面側の部位52Sに比べて、浸透してくる排泄液の量が少ない。そのため、第2吸収層52の裏面側の部位52Bに、必要以上に抗菌剤60を配さないことで、低コスト化を図ることができる。
【0068】
また、第2吸収層52の厚さ方向の表面側の部位52Sの方が、第1吸収層51の厚さ方向の表面側の部位51Sに比べて、抗菌剤60の密度が高くなっているとよい。この場合にも、第2吸収層52の表面側の部位52Sにおいて、平面方向に拡散し、かつ、自由水の状態で存在する排泄液が、より多くの抗菌剤60と接触でき、吸収性シート40からの臭いの発生をより抑制できる。また、繰り返し排泄されて第2吸収層52に浸透してきた排泄液が、多くの抗菌剤60と接触でき、抗菌効果が長期間に亘り持続される。一方、抗菌剤60によって排泄液の吸収阻害が生じてしまうことを抑制でき、また、表面シート41側への抗菌剤60の染み出しを抑制でき、安全に使用できる。
【0069】
さらに、表面シート41と第1吸収層51の間に位置する第1カバーシート531(中間シート)も、抗菌剤60を含むことが好ましい。そうすることで、第1カバーシート531が吸収した排泄液、すなわち、第1カバーシート531を構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が、抗菌剤60と接触できる。よって、第1カバーシート531からの臭いの発生を抑制できる。
【0070】
同様に、第2吸収層52と裏面シート42の間に位置する第2カバーシート532(他の中間シート)も、抗菌剤60を含むことが好ましい。そうすることで、第2カバーシート532を構成する繊維間や、第2吸収層52と裏面シート42の間において、自由水の状態で存在する排泄液が、抗菌剤60と接触できる。よって、吸収性シート40からの臭いの発生を抑制できる。
【0071】
このように、吸収性シート40では、第1吸収層51の裏面側の部位51Bから第1カバーシート531に亘り抗菌剤60が配されている。また、第1吸収層51では、厚さ方向の表面側に向かうにしたがって抗菌剤60の密度が小さくなっている。そして、第2吸収層52の表面側の部位52Sから第2カバーシート532に亘り抗菌剤60が配されている。そして、第2吸収層52では、厚さ方向の裏面側に向かうにしたがって抗菌剤60の密度が小さくなっている。
【0072】
上記のような吸収性シート40は、例えば、第2カバーシート532の上に、第2吸収層52を積層した後に、抗菌剤60を溶解させた液体を塗工し、その後、第1吸収層51及び第1カバーシート531を積層することで製造できる。なお、資材を積層する順番や、抗菌剤60を塗工する順番は、上記に限定されず、第1吸収層51と第2吸収層52の間に抗菌剤60を塗工するとよい。ただし、抗菌剤60の配置方法は上記に限定されない。
【0073】
また、第2吸収層52やカバーシート53は抗菌剤60を含まなくてもよい。また、吸収性シート40の厚さ方向において、上記のような抗菌剤60の密度勾配がなく、抗菌剤60の密度が一定であってもよい。
【0074】
本実施形態では、吸収層51,52、及び、カバーシート53が備える抗菌剤60として、水溶性の抗菌剤である「第4級アンモニウム塩」を適用する。ただし、抗菌剤60は、上記に限定されるものではなく、例えば、パラオシキ安息香酸エステルなどの他の有機系抗菌剤や、Ag、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの無機物を含む無機系抗菌剤や、茶葉やコーヒー抽出残渣などの天然素材を含む抗菌作用物質であってもよく、また、これらを単独で又は組み合わせて用いてもよい。また、抗菌剤には、有機酸や有機酸塩などの制菌作用物質も含まれるものとする。
【0075】
また、本実施形態では、第1吸収層51、第2吸収層52、第1カバーシート531、及び、第2カバーシート532がそれぞれ備える抗菌剤60を、同じ種類の抗菌剤60(第4級アンモニウム塩)としている。しかしこれに限定されず、各部材が備える抗菌剤60の一部又は全てが異なっていてもよい。
【0076】
ただし、第1吸収層51が含む抗菌剤60と、第2吸収層52が含む抗菌剤60の少なくとも一方は、水溶性であることが好ましい。より好ましくは、カバーシート53が備える抗菌剤60も水溶性であるとよい。そうすることで、排泄液が抗菌剤60と接触すると、排泄液内に抗菌剤60が溶出し、排泄液全体に抗菌作用が生じやすい。よって、排泄液に対する抗菌効果が高まり、吸収性シート40からの臭いの発生をより抑制できる。
【0077】
水溶性の抗菌剤60とは、25℃のイオン交換水100g当たりに対する溶解度が20g以上であるものと定義でき、例えば、イオン性の抗菌剤が挙げられる。
【0078】
また、表面シート41も抗菌剤70を含むことが好ましい。そうすることで、表面シート41を構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が抗菌剤70と接触できる。よって、表面シート41に吸収された排泄液にて細菌の増殖を抑制でき、表面シート41からの臭いを軽減できる。
【0079】
さらに、本実施形態では、表面シート41が含む抗菌剤70の種類と、表面シート41以外の部位(吸収層51,52及びカバーシート53)が含む抗菌剤60の種類を異ならせている。そうすることで、各部位に適した抗菌剤60,70を配することができる。具体的には、ユーザーが触れる表面シート41が含む抗菌剤70を、安全性の高い銀イオンとする。一方、吸収層51,52及びカバーシート53が含む抗菌剤60を、抗菌性の高い第4級アンモニウム塩とする。そうすることで、抗菌性が高く、安全な吸収性シート40を提供できる。ただし、これに限定されず、表面シート41が抗菌剤70を含まなくてもよいし、表面シート41の抗菌剤が他の部位の抗菌剤と同じ種類であってもよい。
【0080】
なお、吸収性シート40を構成する各部(吸収層51,52、カバーシート53、表面シート41)が抗菌剤60を含むことの確認、及び、各部における抗菌剤60の密度の比較は、周知の方法で行うことができる。例えば、吸収性シート40から対象部位を分離又は露出させて、抗菌剤60に反応する指示薬を対象部位に滴下する方法が挙げられる。本実施形態のように抗菌剤60として第4級アンモニウム塩を適用する場合、BTB溶液を利用でき、色の変化によって、対象部位が抗菌剤60を含むことを確認できる。また、BTB溶液を滴下した際の発色の濃さの違いを目視で確認することで、抗菌剤60の密度を比較できる。例えば、第1吸収層51の表面(表面側の部位51S)と、第1吸収層51の裏面(裏面側の部位51B)に、それぞれBTB溶液を滴下する。そして、第1吸収層51の裏面の方が濃く発色した場合、第1吸収層51の裏面側の部位51Bの方が表面側の部位51Sに比べて抗菌剤60の密度が高いことを確認できる。
【0081】
また、図4に示すように、表面シート41と第1吸収層51の間に位置する第1カバーシート531の裏面に、第1吸収層51が有する高吸収性ポリマー50Sが付着していることが好ましい。つまり、表面シート41の裏面を構成する繊維に高吸収性ポリマー50Sが絡まっているとよい。
【0082】
そうすることで、表面シート41を構成する繊維間にて自由水の状態で存在する排泄液が、高吸収性ポリマー50Sに吸収されやすくなる。よって、排泄液は、表面シート41から吸収層51,52に移行しやすく、表面シート41に排泄液(自由水)が残り難くなる。よって、表面シート41の排泄液における細菌の増殖を抑制でき、表面シート41からの臭いの発生を抑制できる。
【0083】
また、図4に示すように、第1吸収層51は、厚さ方向に複数の高吸収性ポリマー50Sが重なった部位を有することが好ましい。高吸収性ポリマー50Sを重ねて、第2吸収層52の上に多数の高吸収性ポリマー50Sを配することで、より多くの排泄液が高吸収性ポリマー50Sに吸収保持される。よって、カバーシート53や第2吸収層52の繊維間にて残る排泄液(自由水)の量を少なくすることができ、吸収性シート40からの臭いの発生を抑制できる。
【0084】
また、本願発明者の鋭意研究の結果、表面シート41の坪量が28g/m2よりも低い場合、表面シート41の光線透過率が高く、吸収層51,52が吸収した排泄液の色が表面シート41を介して視認されやすいことが分かった。そこで、表面シート41の坪量を28g/m2以上とし、高坪量にすることが好ましい。そうすることで、吸収層51,52が吸収した排泄液の色が表面シート41を介して視認され難くなる。よって、ユーザーが、吸収性シート40の表面を視認した際に、吸収性シート40が排泄されていない状態の色に近いと感じやすく、排泄液の臭いが意識され難くなる。
【0085】
また、図5Aに示すように、表面シート41の厚さ方向の表面側の部位の方が、表面シート41の厚さ方向の裏面側の部位に比べて、表面シート41を構成する繊維の密度が高いとよい。つまり、表面シート41の繊維が、表面側から裏面側に向かって、密から疎になっているとよい。
【0086】
そうすることで、表面シート41の表面側において、平面方向に密となって広がっている繊維間に排泄液が拡散し、排泄液は、平面方向に拡散した状態で第1吸収層51に浸透し、第1吸収層51の抗菌剤60と接触する。つまり、多くの排泄液が抗菌剤60と接触でき、排泄液の臭いを抑制できる。また、第1吸収層51に平面方向に拡散して配されている抗菌剤60を有効に利用できる。
【0087】
しかし、上記とは逆に、図5Bに示すように、表面シート41の厚さ方向の表面側の部位の方が、表面シート41の厚さ方向の裏面側の部位に比べて、表面シート41を構成する繊維の密度が低くなっていてもよい。つまり、表面シート41の繊維が、表面側から裏面側に向かって疎から密になっていてもよい。
【0088】
そうすることで、表面シート41の表面側から裏面側に向かって排泄液が素早く浸透しやすい。また、それに伴って、排泄液が第1吸収層51に移行しやすく、高吸収性ポリマー50Sに吸収保持されやすくなる。よって、表面シート41(特に表面シート41の表面側の部位)を構成する繊維の間にて、自由水の状態で残る排泄液の量を少なくでき、表面シート41からの臭いの発生を抑制できる。ただし、上記に限定されず、表面シート41の厚さ方向において繊維の密度差がなくてもよい。
【0089】
なお、表面シート41の厚さ方向における繊維密度の差は、周知の方法で確認できる。例えば、表面シート41を厚さ方向に切った断面を、電子顕微鏡等を用いて拡大観察する。拡大画像における表面シート41を厚さ方向に2分した領域がそれぞれ有する繊維を、目視により比較したり、単位面積当たりの繊維(断面)の数を数えて比較したりするとよい。
【0090】
また、図4に示すように、第1吸収層51は、抗菌剤60に加えて、水感受性の香料を含むことが好ましい。水感受性の香料とは、排泄液(水)と接触することにより放出される香料である。例えば、水溶性のマイクロカプセル(膜材)に内包された香料や、構造物(例えばシクロデキストリン)の内部空間に包摂された香料を例示できる。マイクロカプセルは直径1~1000μm程度の大きさであり、水溶性のマイクロカプセルの素材としては、デキストリンやPVA等を例示できる。この場合、第1吸収層51に排泄液が浸透し、水感受性の香料80が排泄液と接触すると、香料が放出される。よって、吸収性シート41に排泄された排泄液の臭いを香料によりマスキングでき、ユーザーが排泄液の臭いを感じ難くなる。
【0091】
香料は、水感受性の香料に限定されないが、香料がマイクロカプセルに内包されていたり、シクロデキストリンに包摂されていたりすることが好ましい。そうすることで、吸収性シート40に排泄液が排泄されるまでの間に香料が揮発してしまうことを抑制できる。
【0092】
また、第1吸収層51が香料(水感受性の香料80)を有するに限らず、他の資材(例えば第2吸収層52やカバーシート53や表面シート41)が香料を有していてもよい。ただし、第1吸収層51が香料を有することで、例えば表面シート41に香料が設けられている場合に比べて、香料の持続性が高まる。また、例えば第2吸収層52に香料が設けられている場合に比べて、香料が吸収性シート40の外部に放出されやすくなる。
【0093】
また、第1吸収層51がマイクロカプセルを有することの確認は、対象部位(第1吸収層51)を電子顕微鏡で観察することで確認できる。また、対象部位が香料を有することの確認は、香料が放出された対象部位を、例えばガスクロマトグラフィー装置を用いて成分解析することで確認できる。
【0094】
香料の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ラベンダー、ジャスミン、グリーンハーバル様香気等が挙げられる。また、吸収性シート40は香料を備えていなくてもよい。また、水感受性の構造物(シクロデキストリン)や水溶性のマイクロカプセルは、香料ではなく、別の機能を発揮する機能剤(例えば消臭剤等)を内包していてもよい。
【0095】
<<吸収性シート40を設置可能な動物用トイレ1について>>
図6Aは、吸収性シート40の平面図であり、図6Bは、動物用トイレ1が備えるトレイ21の平面図であり、図6Cは、上容器10の平面図である。図7は、吸収性シート40が設置された動物用トイレ1(上容器10及び下容器20)の平面図である。
【0096】
前述のように、吸収性シート40は動物用トイレ1に設置されて使用される。吸収性シート40の長手方向が、動物用トイレ1の前後方向に対応し、吸収性シート40の幅方向が、動物用トイレ1の左右方向に対応するように、吸収性シート40は設置される。
【0097】
吸収性シート40を設置可能な動物用トイレ1は以下であることが好ましい。まず、上容器10の底部において複数の孔12が設けられた領域12R(以下「複数の孔領域12R」ともいう)の面積は、吸収性シート40を厚さ方向に見たときの吸収体50の面積よりも小さいとよい。具体的には、図6A及び図6Cに示すように、吸収体50の長手方向の長さL1は、複数の孔領域12Rの前後方向の長さL3よりも長く、吸収体50の幅方向の長さW1は、複数の孔領域12Rの幅方向の長さW3よりも長いとよい。
【0098】
そうすることで、図7に示すように、吸収性シート40が設置された動物用トイレ1を上方から見たときに、複数の孔領域12Rの全域が、吸収性シート40の吸収体50(斜線部)と重なりやすくなる。ゆえに、複数の孔領域12Rを通過した排泄液を、抗菌剤60を含む吸収体50で受けることができ、動物用トイレ1に排泄された排泄液による臭いの発生を抑制できる。
【0099】
さらに、トレイ21におけるシート収容部21Rの面積は、吸収性シート40の面積よりも小さいとよい。具体的には、図6A及び図6Bに示すように、吸収性シート40の長手方向の長さL1’は、シート収容部21Rの前後方向の長さL2よりも長く、吸収性シート40の幅方向の長さW1’は、シート収容部21Rの幅方向の長さW2よりも長いとよい。
【0100】
そうすることで、トレイ21に吸収性シート40を設置した際に、シート収容部21Rの平面方向の全域に亘り吸収性シート40を配置できる。よって、トレイ21が受けた排泄液は、抗菌剤60を含む吸収体50に吸収され、動物用トイレ1に排泄された排泄液による臭いの発生を抑制できる。
【0101】
また、本実施形態では、動物用トイレ1におけるシート収容部21Rの平面形状と、吸収性シート40及び吸収体50の平面形状を同じ長方形とする。そうすることで、トレイ21のシート収容部21Rの広範囲に吸収体50を配置しやすくなる。ただし、上記に限らず、シート収容部21Rに吸収性シート40を設置可能であれば、平面形状が異なっていてもよい。
【0102】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0103】
1 動物用トイレ、
10 上容器、11 底部、12 孔、
20 下容器、21 トレイ、
30 カバー、31 開口部、
40 (動物用)吸収性シート、
41 表面シート、42 裏面シート、43 接合部、
50 吸収体、
51 第1吸収層、52 第2吸収層、
531 第1カバーシート(中間シート)、
532 第2カバーシート(他の中間シート)
50P パルプ繊維(液体吸収性繊維)、
50S 高吸収性ポリマー、
60 抗菌剤、
70 抗菌剤、
80 水感受性の香料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7