(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】深い青みがかった黒色の効果顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20241105BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20241105BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20241105BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20241105BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20241105BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20241105BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C1/40
C09D7/62
C09D201/00
C09D11/037
C09D11/322
(21)【出願番号】P 2021553274
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2020056620
(87)【国際公開番号】W WO2020187682
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 富美子
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ キルステン
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 雅之
(72)【発明者】
【氏名】ユングニッツ ミヒャエル
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503626(JP,A)
【文献】特表2013-545855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00 - 3/12
C09D 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深い青みがかった黒色の効果顔料であって、各顔料は、
それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材と、
前記フレーク状基材上の、
ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される第1層、及び
マグネタイトで構成される第2層、
からなる、少なくとも1つの層状構造であって、前記第2層は前記第1層の上に配置され、前記第1層は前記基材上に直接配置されている、層状構造と、
を含
み、
前記透明誘電フレーク状基材は、Al
2
O
3
からなる、前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2
含量を有するAl
2
O
3
からなる、ZrO
2
若しくはTiO
2
からなる、又は前記基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl
2
O
3
、ZrO
2
若しくはTiO
2
を含む、又は最大で70質量%のSiO
2
比率をするガラスフレークであり、
前記透明誘電基材は、Al
2
O
3
又は前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2
含量を有するAl
2
O
3
からなり、50~110nmの範囲、180~260nmの範囲、又は350~450nmの範囲の幾何学的厚さを有し、
個々の基材フレークの厚さの標準偏差は、それぞれの基材厚さの平均を基準にして10%以下であり、
5~200μmの範囲の粒径を有する、効果顔料。
【請求項2】
前記第1層は、0.1~10nmの範囲の幾何学的厚さを有する、請求項
1に記載の効果顔料。
【請求項3】
前記第2層は、80~230nmの範囲の幾何学的厚さを有する、請求項1
又は2に記載の効果顔料。
【請求項4】
前記第2層は、アルミニウム化合物を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の効果顔料。
【請求項5】
前記第2層の上に更に無色誘電層を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の効果顔料。
【請求項6】
前記無色誘電層は、二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物の層である、請求項
5に記載の効果顔料。
【請求項7】
最外側の無機及び/又は有機後コーティングを有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の効果顔料。
【請求項8】
(a)それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材を、水に分散させる工程と、
(b)水溶性鉄(III)化合物を2~4のpHで添加し、前記pHを一定に保ち、それによってヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層を前記基材粒子の表面上に析出させる工程と、
(c)前記pHを5.5~7.5の間の値まで上昇させ、前記pH値を一定に保ちながら、水溶性鉄(II)化合物及び水溶性鉄(III)化合物を添加し、アルミニウム化合物の水溶液をも添加してもよく、それによって、アルミニウム化合物を含んでもよいマグネタイト層を、工程(b)でプレコートされた前記基材の表面上に直接析出させる工程と、
(d)任意選択で、得られた生成物を洗浄及び濾過する工程と、
(e)>100℃~260℃の範囲の温度で乾燥する工程と、
を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の深い青みがかった黒色の効果顔料を製造する方法。
【請求項9】
前記透明誘電フレーク状基材は、Al
2O
3からなる、前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2含量を有するAl
2O
3からなる、ZrO
2若しくはTiO
2からなる、又は前記基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl
2O
3、ZrO
2若しくはTiO
2を含む、又は最大で70質量%のSiO
2比率を有するガラスフレークである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記透明誘電基材は、Al
2O
3又は前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2含量を有するAl
2O
3からなり、50~110nmの範囲、180~250nmの範囲、又は350~450nmの範囲の幾何学的厚さを有する、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
不活性ガス雰囲気で実施される、請求項
8~1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)を実施した後、且つ工程(e)を実施する前に、追加工程において、無色誘電層を前記マグネタイト層の上にコーティングする、請求項
8~1
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記マグネタイト層の上にコーティングされた前記無色誘電層は、二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物の層である、請求項
8~1
2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記マグネタイトで構成される層は、前記ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層よりも大きい厚さで前記基材粒子上に適用される、請求項
8~1
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
インク、ラッカー、塗料、ニス、コーティング組成物、プラスチック、箔、紙、セラミック、ガラスの着色のため、レーザーマーキングのため、及び多様な溶剤内容物の顔料調製物の着色のための、請求項1~
7のいずれか一項に記載の効果顔料の使用。
【請求項16】
前記ラッカー、塗料、又はコーティング組成物は、自動車用ラッカー、自動車用塗料、又は自動車用コーティング組成物である、請求項1
5に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深い黒色のボディカラーと青色の干渉色を示す効果顔料、かかる顔料の製造方法、及び特にコーティング組成物における、それらの使用に関する。
本発明の青みがかった黒色の効果顔料は、高光沢を有する中間色の深い黒色の顔料のボディカラーと強力な青みがかった干渉色が強く望まれる装飾及び自動車用途に特に有用である。当然、上記顔料は、それらの色特性(任意の種類の他の有色顔料との組合せも含む)、又は追加的に示す磁気特性のいずれかが重要となり得る他の分野、特に印刷インクにおいても使用できる。
【背景技術】
【0002】
魅力的な色を有する有色顔料に加えて、深い黒色の吸収色並びに高光沢を示す黒色顔料が長い間望まれてきた。ほんの数例を挙げると、伝統的に、カーボンブラック顔料は、自動車用途、装飾用途又は印刷用途に使用されてきた。
残念ながら、カーボンブラック吸収顔料は光沢を示さず、対応する製品の光沢黒色
の外観を得るためには光沢顔料と組合せなければならず、それによって黒色が減弱され
る。
従って、カーボンブラックを含有しない光沢黒色顔料によって非光沢カーボンブラック顔料を置き換える試みがなされてきた。
【0003】
米国特許第3,926,659号明細書は、任意選択でTiO2若しくはZrO2又はこれらの水和物でコーティングされたマイカ顔料が開示されており、該顔料はその上に均一な鉄含有層を有し、該層はα酸化鉄(ヘマタイト、Fe2O3)又はマグネタイト(Fe3O4)の層であり得る。上記顔料の色特性は、TiO2又はZrO2層によって作り出される干渉色に主に起因し、該干渉色はα酸化鉄層をその上に適用することによってわずかにシフトする。上記顔料のボディカラーは、α酸化鉄層の層厚に依存し、暖色系の赤褐色の色相である。マグネタイト層がTiO2又はZrO2層の上に作られる場合、下層によって作り出される干渉色は、薄い黒色マグネタイト層によって強調される、又は厚いマグネタイト層によって重ね合わされる(superimposed)。厚いマグネタイト層を有する顔料は顔料の光沢を失い、これはマグネタイト層がそれぞれの製造方法から生じる結晶構造に起因して粗いと言われるためである。
このタイプの顔料は、良好な隠蔽力と魅力的な光沢を併せ持つ強い黒の吸収色を示
すという要件を満たしていない。
独国特許出願公開第10065761号(A1)明細書には、フレーク状磁性粒子が記載されており、該粒子は多層で、Al2O3又はAl2O2とSiO2との混合相を含むコアと、非晶質SiO2の中間層と、鉄を含有するシェルとを含有し、シェルはとりわけマグネタイト又はヘマタイトを含有し得る。これらの粒子は、水溶液中の核酸又はタンパク質を単離するために核酸又はタンパク質と反応できる無機又は有機カップリング剤でコーティングされている。これらの顔料は、水に懸濁し、水溶性ケイ酸塩化合物(silicatic compound)を添加することよってアルミニウム粉末から作製されることから、それらのコアは均質組成ではなく、アルミニウムとケイ素の混合酸化物であり、場合によりアルミニウム金属の残りを有する。加えて、コア材料は少なくとも部分的に分解するため、粒子の板状形状及びその滑らかな表面は、得られる顔料において維持されない場合がある。更に、水中でのアルミニウム粉末の反応は本質的に高発熱性であること、及びその後の鉄化合物との反応も危険であること(テルミット法)から、製造プロセスの制御が難しい。これらの顔料の色特性は記載されておらず、意図された目的について何ら役割を果たさない。
独国特許出願公開第3617430号明細書には、板状の有色顔料が記載されており、該顔料は、マイカ、ガラス、金属、又はグラファイト、特にマイカの板状基材を含み、金属酸化物層でプレコートされていてもよく、緻密なFe(II)含有層を、基材上に直接含むか、又は金属酸化物層上に含む。追加の被覆層も可能である。Fe(II)含有層はFe3O4であってもよく、高密度で緻密であると記載されており、これは当該顔料を製造するための特定の還元方法に起因する。得られる顔料は、黒色のボディカラーを干渉色と共に示す。
米国特許第7,303,622号明細書は、微細基材粒子と粗大基材粒子との基材混合物をベースとする光沢黒色干渉顔料を開示しており、該顔料はFe3O4コーティングと、その上の無色低屈折率コーティングと、任意選択で、表面の一部のみを被覆するその上の吸収性の高屈折率材料と、任意選択で、保護層である更なる層と、を有する。好ましい基材として、様々な粒径範囲のマイカ(顔料の分級によって得られる分画)が使用される。得られる顔料混合物は、黒色のボディカラー並びに高光沢を示すと言われている。この顔料混合物は更に、顕著なゴニオクロマティシティ(角度依存性の干渉色)を生じないと言われている。
後者の2つの先行技術文献による顔料は多少光沢のある黒色の外観を示す。しかし、中間色の深い黒色のボディカラーを示し、なおも従来技術の顔料よりも高い光沢及びクロマを有する黒色の効果顔料であって、更に、青みがかった干渉色と適用媒体中での良好な安定性を有し、カラーフロップを全く示さず、容易に制御可能で還元工程又は高温を伴わない経済的方法によって製造することができる、黒色の効果顔料が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、上記の要件を満たし、従来技術に記載の顔料の有害作用がなく、還元工程を伴わない簡単な湿式(ウェット)コーティング法で製造できる顔料を提供すること、当該顔料の経済的な製造方法、並びにそれらの使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、深い黒色の効果顔料であって、各顔料が、
それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材と、
フレーク状基材上の、
ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される第1層、及び
マグネタイトで構成される第2層、
からなる、少なくとも1つの層状構造であって、第2層は第1層の上に配置され、第1層は基材上に直接配置されている、層状構造と、
を含む、顔料によって達成される。
加えて、本発明の目的は、
深い青みがかった黒色の効果顔料を製造する方法であって、
(a)それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材を、水に分散させる工程と、
(b)水溶性鉄(III)化合物を2~4のpHで添加し、該pHを一定に保ち、それによってヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層を基材粒子の表面上に析出させる工程と、
(c)pHを5.5~7.5の間の値まで上昇させ、pH値を一定に保ちながら、水溶性鉄(II)化合物及び水溶性鉄(III)化合物を添加し、任意選択でアルミニウム化合物の水溶液も添加し、それによって、任意選択でアルミニウム化合物を含むマグネタイト層を、工程(b)でプレコートされた基材の表面上に直接析出させる工程と、
(d)任意選択で、得られた生成物を洗浄及び濾過する工程と、
(e)>100℃~260℃の範囲の温度で乾燥する工程と
を含む、方法によって達成される。
更に、本発明の目的は、インク、ラッカー、塗料、ニス、コーティング組成物、プラスチック、箔、紙、セラミック、ガラスの着色のため、レーザーマーキングのため、及び多様な溶剤内容物の顔料調製物の着色のための、上記効果顔料の使用によっても達成される。
【0006】
魅力的な黒色をもたらす技術的用途におけるコーティング組成物の場合、できるだけ中間色で、緑又は赤みがかった色合いがない青みがかった干渉色を有し、深い黒色のボディカラーを示す有色効果顔料が必要とされる(例えば、適用されたコーティング組成物の色特性を測定したときに、L*a*b*表色系において±1未満の非常に小さいa*値と、できるだけ負に大きいb*値で識別される)。更に、適用された状態での効果顔料の色特性は、任意の測定角で、可能な限り最大に安定である(すなわち、種々の観察角及び/又は測定角において変色作用が観察されない)ことが有利である。
従って、本発明者らは、中間色の深い黒色ボディカラーを、赤み又は緑がかった色合いを示さない青みがかった干渉色と共に有する効果顔料であって、更に、技術的用途のための安定性要件、特に良好な化学的及び熱安定性を満たす顔料を提供するという課題を有していた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、フレーク状基材粒子と、該基材粒子を囲む鉄含有コーティングとで基本的に構成される効果顔料が、特殊なフレーク状基材粒子を使用したときに、所望の光学特性を示すことを見出した。
この特殊な基材粒子は、透明な、合成により製造されたフレーク状基材粒子であって、それ自体が既に緑色固有干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する。
基材フレークは、本質的に(すなわち少なくとも80%の程度まで)入射可視光を透過させる場合に、本発明の意味において透明とみなされる。更に、本発明に従って使用される基材フレークは、吸収色を有しない。
本発明に従って用いられる基材フレークは、合成により製造された均質組成物のフレーク状基材であり、それぞれのフレークの主表面を形成する互いに平行に配置された上部表面及び下部表面を有する。本発明の意味における平行は、幾何学的意味の平行を意味するだけでなく、互いの表面の位置において幾何学的平行と比べて最大で15°の偏りも含む。それぞれの基材フレークのこれら主表面の長さ又は幅は、それぞれの最長寸法において基材フレークの粒径を表し、基材表面間の間隙は、それぞれの基材フレークの幾何学的厚さを表す。
更に、本発明に従って用いられる合成により製造されたフレーク状基材は、平面状で非常に滑らかな表面を有する。基材フレークを合成により製造することで、表面特性、幾何学的厚さ及び厚さ分布、粒径、更には粒径分布も、基材フレークの製造中のプロセスパラメータによって精密に制御及び設定することができる。例えばマイカ、タルク又はカオリンなどの天然材料の場合はこれを保証できず、効果顔料の基材材料として通常同様に使用される合成により製造されたマイカでも保証できない。
基材フレークの非常に平面的で平行な表面、その均質な組成及び吸収色の欠如によって、フレークを囲む、フレークと異なる屈折率を有する澄んだ透明な媒体中の基材フレークは、フレークのそれぞれの屈折率に応じて、入射可視光の少なくとも5%で最大で20%、特に6~20%を反射する。用いられるそれぞれのフレーク材料の屈折率が高いほど、この光の反射割合は大きい。周囲媒体とのそれぞれの界面におけるこの反射は、生じる経路差と共に、反射光ビームの単色干渉を生じ、その結果、基材フレークの固有干渉色を生じる。
本発明に従って用いられる基材フレークは、緑色固有干渉色(490~570nmの波長範囲の光)を有し、これは透明無色媒体中の基材フレークの拡散反射又は全反射を基に決定される。
【0008】
この固有干渉色を決定するために、HunterL*,a*,b*ダイアグラムを、対応する積分球を用いて決定される拡散反射から、又は入射可視光の全反射から、決定する(試料:透明PETフィルム上に厚さ10μmの厚さでコート、市販の無色グラビア印刷用バインダー及び10質量%の基材フレークを含む)。本発明の基材フレークのHunter L*,a*,b*ダイアグラムにおける反射値は、それぞれの場合に、L>30、特にL=40~80、b=-20~+20、特に-10~+10、及びa<0、特にa=-0.1~-20、特に好ましくは-0.1~-10の範囲である。
従来の顔料基材は、可視かつ測定可能な単色干渉色を有さないか、ほぼ有さない。従って、マイカフレークは、天然マイカをベースとするか合成により製造されたマイカをベースとするかに関係なく、それ自体がこの種の干渉(それ自体を均一に認識できる、顕著な、単色干渉色として表れる干渉)の能力がなく、これはそのシリケート層の層様構造と、その結果としての非平面的な表面によるものである。その代わりに、比較的大きな層厚分布の場合、マイカフレークは、様々な色でかすかに光り、その結果純粋なマイカフレークの非固定床(loose bed)の場合、白っぽい、不明確な全体色の印象を生じる。
【0009】
基材フレークが平面状で平行な基材表面を有するという前提条件下では、本発明に従って用いられる基材の光学特性は、基材材料の屈折率によって、及び基材の幾何学的厚さによって、基本的に決定される。
存在する任意の異質酸化物の含量によって、また含まれる細孔によって、又は好ましくは用いられる金属酸化物の結晶変態に依存して、本発明の基材材料の屈折率は、場合により、純粋な基材材料の理想屈折率(バルク材料、標準条件下、例えば、ランドルト・ベルンシュタイン法により測定)と異なることがあり、このことは、所望の干渉色を達成するために、基材の幾何学的層厚を、製造条件及び使用材料に応じて、相応に適合させなければならないことを意味する。
顔料調製に好適な基材厚さが得られるには、基材材料の屈折率nは、少なくとも1.5超であり、好ましくは少なくとも1.65であることが必要である。従って、基材に好適な材料は、各々1.5超、好ましくは少なくとも1.65の屈折率nを有する誘電材料又は誘電材料混合物である。
無色の材料又は材料混合物が好ましい。
本発明の干渉顔料の基材は、屈折率n1が、基材に適用される干渉層の屈折率n2からの隔たりΔnが少なくとも0.1、更に良好には少なくとも0.2であることが更に必要である。
従って、本発明の干渉顔料の基材に好適な材料は、特に、>1.5~2.5、特に1.65~2.5の範囲の屈折率nを有する無色金属酸化物又は特定のガラス材料である。
基材として特に好ましく好適であるのは、Al2O3からなる基材フレーク、基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO2含量を有するAl2O3からなる基材フレーク、ZrO2若しくはTiO2からなる基材フレーク、又は基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl2O3、ZrO2若しくはTiO2を含む基材フレークである。本明細書におけるTiO2は、アナターゼ又はルチル変態でもよい。
透明基材フレークの更なる成分は、Sn、Si、Ce、Al、Ca、Zn、In及び/又はMgの酸化物又は酸化物水和物であってもよいが、それらは、基材の質量を基準にして最大で10質量%の割合で基材中に存在し、基材の光学特性、特に干渉色を本質的に決定しない。特に、Al2O3の割合が基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の基材の場合、SiO2、SnO2、In2O3又はZnO等の酸化物も、単一で又はこれらの2つ以上の組合せのいずれかで存在してもよい。
屈折率の要件を満たすガラスフレークも基材材料として好適である。SiO2の割合が最大で70質量%であるガラス材料を含むフレークの場合に、特にこれが当てはまる。更に、この種のガラス材料は、Al2O3、CaO、MgO、B2O3、Na2O、K2O、TiO2、ZnO、BaO、Li2O、ZrO2、Nb2O5、P2O5及び/又はPbOを種々の組成及び種々の割合で含む。高屈折率ガラス材料、例えば、フリントガラス及び重フリントガラスが好ましい。
【0010】
使用する材料に応じて、本発明に好適な基材フレークは、50~600nmの範囲の幾何学的厚さを有する。
更に、顔料基材としての適性に関する前提条件は、基材が、それぞれの場合(ただし、指定された材料の場合)に、望まれる層厚の平面状フレークとして合成的手段により製造できることである。更に、本発明に従って用いられる顔料基材が、結晶形態、特に好ましくは単結晶の形態であれば、該当する場合、非常に有利である。
基材フレークの緑色固有干渉が得られるには、Al2O3を含む基材フレーク、又は基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO2含量を有するAl2O3を含む基材フレーク、及び基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl2O3を含む基材フレークは、50~110nm、180~260nm又は350~450nmの範囲の幾何学的厚さを有する。
TiO2を含む基材フレーク、又は基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でTiO2含む基材フレークは、本発明によれば、110~170nmの範囲又は240~310nmの範囲の幾何学的厚さを有する。
ZrO2からなる基材フレーク、又は基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でZrO2を含む基材フレークの場合、基材の幾何学的厚さは、本発明によれば140~210nm、又は260~400nmの範囲である。
最大で70質量%のSiO2を含むガラスフレークは、230~300nm又は400~470nmの幾何学的厚さを有する。
【0011】
用いられる基材は、特に好ましくはAl2O3を含むフレーク、又は基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO2含量を有するAl2O3を含むフレークであり、これらはいずれも、以下で二酸化アルミニウムフレークという用語に含まれ、フレークは、50~110nm、180~260nm又は350~450nmの範囲、好ましくは190~230nmの範囲の幾何学的厚さを有する。以下に記載にするように、これらは、単結晶の形態で製造することができる。
本明細書において個々の基材フレークの厚さの標準偏差は、好ましくは、それぞれの基材厚さの平均を基準にして10%以下である。この種の比較的小さな厚さの偏差は、それぞれの製造方法を通して制御できる。
【0012】
基材粒子の粒径は、基材の最大寸法に対応し、通常は5~200μm、特に5~150μm、最も好ましくは7~100μmであり、最善は7~50μmである。12~25μmのD50値が好ましい。狭い粒径分布は特に有利である。粒径分布は、粉砕プロセスによって、分級プロセスによって、のいずれか又は両方によって制御されてもよく、又は単結晶基材の場合、製造プロセスパラメータによって制御されてもよい。
粒径及び粒径分布は、当技術分野で一般的な種々の方法により決定できる。しかし、本発明によると、Malvern Mastersizer 3000,APA300(Malvern Instruments Ltd.,UKの製品)を用いた標準法のレーザー回折法の使用が好適である。この方法は、粒径及び粒径分布を、標準条件下で同時に決定できるという利点を有する。
個々の粒子の粒径及び厚さは、更に、SEM(走査型電子顕微鏡)画像を用いて決定することができる。後者の場合、粒径及び幾何学的粒子厚さは、直接測定により決定することができる。平均値を決定するために、少なくとも1000個の粒子を個々に評価し、結果を平均する。支持体フレークの形状ファクター、すなわち、長さ又は幅の厚さに対する比は、一般に2:1~1.000:1、特に5:1~500:1、特に好ましくは20:1~300:1である。
【0013】
本発明によると、深い青みがかった黒色の効果顔料は、基材粒子上に少なくとも1つの層状構造を有し、該層構造は、ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される第1層と、マグネタイトで構成される第2層とからなり、第1層は基材の上に直接配置され、第2層は第1層の上に(すなわち、基材粒子の表面から遠くに)配置されている。
層状構造は、基材の2つの主表面上のみに存在してもよいが、好ましくは、透明なフレーク状基材の外表面の全てがヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイトの層状構造でコーティングされるように透明基材粒子をカプセル化する。言うまでもなく、ヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイトの層状構造は基材表面の一つ一つの点で同じ厚さを示す必要はなく、層状構造によって、又は少なくとも上記のヘマタイト/針鉄鉱層によって、完全にはコーティングされていない比較的小さい基材表面領域がいくらかある場合さえある。この種の制限は技術的な製造の側面によるものであり、本発明の意図を害するものではない。
【0014】
本発明の目的で、ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層は、以後「ヘマタイト層」と呼ばれる。該層の実際の組成は、その調製に使用される析出条件に依存する。本発明による方法で与えられる条件では、ヘマタイト層の組成は、好ましくは純粋なヘマタイト(αFe2O3、酸化第二鉄)又は針鉄鉱(αFeO(OH)、水和酸化第二鉄)を含有するヘマタイトのいずれかであることが明らかになっている。通常、針鉄鉱の含量はヘマタイトの含量よりも少ない。
マグネタイトで構成される層は、以後「マグネタイト層」と呼ばれ、本発明による方法によって作製される場合、純粋なマグネタイト(Fe3O4)又はごく少量のマグヘマイト(γFe2O3)を含有するマグネタイトのいずれかで構成される。好ましい実施形態では、マグネタイト層は、アルミニウム化合物を含有する純粋なマグネタイト又はごく少量のマグヘマイト及びアルミニウム化合物を含有するマグネタイトのいずれかで構成される。
本発明の顔料の光学特性にとって、層状構造内のマグネタイト層の厚さがヘマタイト層の厚さよりも大きいことが非常に重要である。実際、マグネタイト層の厚さはヘマタイト層の厚さよりもはるかに大きい。典型的には、層状構造内のマグネタイト層の厚さはヘマタイト層の厚さの少なくとも15倍である。
ヘマタイト層は、分子単層から始まり、約10nmの上限を有する非常に小さい層厚でしか基材粒子上にコーティングされない。通常、ヘマタイト層の厚さは0.1~10nm、好ましくは2~8nmの範囲である。本発明によると、ヘマタイト層は、下側のヘマタイト層の上にコーティングしようとするマグネタイト層のためのバインダーとして作用することもある。更に、ヘマタイト層は、その厚さが2~10nmの範囲にある場合、得られる干渉顔料の吸収及び干渉色への特定の寄与をもたらす。
更に、本発明による基材粒子として使用される二酸化アルミニウムフレークに関して、通常得られるこれらの粒子の外表面は、多くの場合、本発明によるFe3O4の直接コーティングに使用されるような、やや低い酸性から中性のpH値において酸化鉄で直接コーティングされるのに特に有用ではない。
従って、薄いヘマタイト層は、更に基材粒子の表面を活性化するための手段としても作用することがあり、基材上に直接コーティングされる。なぜなら該層は二酸化アルミニウムフレークク上に首尾良く直接析出する可能性があり、活性化した表面自体をもたらし、これはその後のマグネタイト層の析出にとって有利だからである。更に、基材粒子の非常に滑らかで平面状の表面は、高密度で均一であるが極めて薄いヘマタイト層を析出させることによって維持することができる。
加えて、下側にある基材がAl2O3結晶を含有する場合、又は該結晶で構成される場合、続くヘマタイト層は、下側にある基材に存在するのと同じ結晶構造、すなわちコランダム結晶構造で結晶を形成することができ、これは高密度ヘマタイト層の形成にとって有利である。そのような場合、Al2O3結晶を含有する又は実質的に該結晶で構成される基材上のヘマタイト層の成長は、固体基材上での結晶層のエピタキシャル結晶成長プロセスと同様である。
更にまた、ヘマタイト層の存在は、酸化剤を用いない析出手順によって、高密度で平面状の実質的に結晶性のFe3O4層をその上に直接形成させるのにも有利に役立つ。
ヘマタイト層は、ヘマタイト層の作製に使用した鉄化合物中の微量成分による鉄以外の異質金属イオンを少量含み得る。
【0015】
従来技術から、Fe3O4層は、ヘマタイト層を出発物質とする還元プロセスで形成できることが知られていた。この還元プロセスに従うと、前のヘマタイト層の層厚にわたって一定ではない還元(勾配)が起こる可能性があることから、得られる層の不均一性を予測すべきである。更に、従来技術の析出法を用いる場合、酸化剤の存在下、やや高い(8~11)pH値でFe(II)化合物を用いてFe3O4析出させた場合に生じる、Fe3O4の小さい結晶及び層のややゆるい結晶構造が、最終的に非光沢性の顔料をもたらす。
反対に、本発明による顔料は強い光沢並びに深い青みがかった黒色の外観を示し、これは基材の干渉及び吸収挙動、並びにマグネタイト層と、上記のように、ある程度はヘマタイト層の干渉及び吸収挙動にも実質的に起因する。
【0016】
コーティング用途における魅力的な黒色という観点から、層のまとまり(layer package)の唯一有用な干渉色で、魅力的な黒色の外観に悪影響を及ぼさず、望ましいのは、青色の干渉であり、それは深い青みがかった黒色の印象が、なおも価値のある黒色の印象だからである。従って、深い黒色の吸収色に加えて本顔料の青色の干渉色が望ましいが、この青色の干渉色の緑又は赤みがかった色合いは避けなければならない。
そのため、上記のように基材粒子の層厚だけでなく、マグネタイト層の層厚、及び驚くべきことに、ヘマタイト層の層厚も調整しなければならない。ただし、ヘマタイト層は非常に薄いため、それ自体は顔料の干渉に寄与しないが、他の層及び基材とそれぞれ組み合わせた場合にのみ寄与する。それにもかかわらず、ヘマタイト層は、黄/赤みがかった吸収色を提供し、これは、基材の緑がかった干渉色と共に、得られる干渉顔料に中間色の黒い吸収色をもたらし、最終的に青みがかった干渉色のみが存在できるようにする。
【0017】
本発明による顔料の層状構造のマグネタイト層は、80nm~230nm、特に80nm~150nmの厚さで存在する。上記厚さは、得られる顔料に比較的強い青みがかった干渉色が実現されるように調整される(マグネタイト層の析出プロセスにいて既知の手段によって制御され得る)。
マグネタイト層は高密度で結晶性の構造を示す。基材粒子の平滑性が維持されてもよく、その結果マグネタイト層自体も滑らかで、高密度かつ平面状となる。マグネタイト層は2.0を超える(約2.4)高い屈折率を示す。マグネタイト層は、青みがかった干渉色に加えて、その吸収によって、黒色のボディカラー及び強い光沢も、得られる顔料に与える。
加えて、マグネタイト層は少なくとも1種のアルミニウム化合物を含むことが好ましく、アルミニウム化合物は好ましくは酸化アルミニウム及び/又は酸化アルミニウム水和物である。そのために、ヘマタイトでプレコートされた基材粒子上にマグネタイト層が析出する間に、適切なアルミニウム化合物が添加される。有用なアルミニウム化合物は、例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、又は硝酸アルミニウムである。
マグネタイト層のアルミニウム含量は、マグネタイト層の光学的挙動に寄与し、続く誘電層のマグネタイト層上での析出を促進する(存在する場合)。
酸化アルミニウム及び/又は酸化アルミニウム水和物は、上記のように、マグネタイトコーティングの質量を基準として、好ましくは0.1~5質量%未満の含量でマグネタイトコーティング中に存在する。上記アルミニウム化合物は、含量があまりにも少ないため、鉄成分との混合酸化物を形成しない。その代わりに、上記アルミニウム化合物は、酸化アルミニウム及び/又は酸化アルミニウム水和物自体として、例えばAl2O3又はAlOOHとしてマグネタイトコーティング中に存在する。
【0018】
続く誘電層は(存在する場合)、マグネタイト層がAl化合物を含有する場合、はるかに容易にマグネタイト層上にコーティングされ得るという事実に加えて、得られる顔料の艶がそれによって更に改善される場合がある。
従って、上に開示したようにマグネタイト層がアルミニウム化合物を含む、本発明の実施形態が好ましい。
マグネタイト層は、アルミニウムに加えて、又はアルミニウムの代わりに、鉄及びアルミニウムとは異なる少量の異質金属イオンも含み得る。これはマグネタイト層の作製に使用され得る鉄化合物中の微量成分によるものである。
最も好ましいのは、深い青みがかった黒色の効果顔料の基材材料が上に定義された二酸化アルミニウムフレークであり、上記のように基材上に直接層状構造を有すると共に基材をカプセル化しており、それによって層状構造が第1のヘマタイト層及び第2のマグネタイト層で構成され、マグネタイト層はヘマタイト層よりも基材表面から離れており、上に定義されたAl化合物を含み、マグネタイト層の上に無色の誘電層が続く、本発明の実施形態である。
好ましくは、ヘマタイト/マグネタイト層状構造上の少なくとも1つの無色誘電層が、本発明による顔料に存在する。この場合、無色、低屈折率の誘電材料で構成された誘電層は、マグネタイト層の上に直接配置される。
これらの誘電層の材料として、誘電金属酸化物又は金属酸化物水和物が、本発明において一般的に使用される。上記材料は、無色金属酸化物若しくは金属酸化物水和物又はその混合物で構成され、例えば、酸化スズ、酸化セリウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム及び二酸化アルミニウム二、又はこれらの水和物など、Sn、Ce、Si、Zr及びAlの酸化物又は水和物で構成される。
特に、酸化ケイ素及び/若しくは酸化ケイ素水和物の層又は酸化スズ及び/若しくは酸化スズ水和物の層は、上記層状構造の第2層(マグネタイト層)の上に直接存在する。酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物の層が、好ましくは使用される。
酸化ケイ素及び/若しくは酸化ケイ素水和物の層又は酸化スズ及び/若しくは酸化スズ水和物の層の厚さは、1~15nm、好ましくは1~5μmの範囲である。この場合、マグネタイト層によってもたらされる所望の青みがかった干渉色はわずかに減弱されるが、無色誘電層は、得られる干渉顔料に良好な熱安定性をもたらす能力があり、これは、特定のコーティング手順に該当し得る、適用媒体中で、干渉顔料が高温で任意の熱処理を受ける場合に重要である。二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物は、高密度非晶質構造を有する誘電材料であり、従って、下側のマグネタイト層の保護に非常に有用であり、そのため使用されることが好ましい。
【0019】
更に、本発明による深い青みがかった黒色の効果顔料は、二酸化ケイ素/酸化ケイ素水和物層とは異なり、又は上記層に加えて、いわゆる後コーティングを更に適用することによってその用途の要件に適合する可能性もある。この後コーティングは、一般に、干渉顔料の最外コーティングであり、無機化合物又は有機化合物のいずれかで構成されてもよく、又は無機成分と有機成分との混合物で構成されてもよい。無機化合物の場合、誘電層も使用してもよい。これらは、より良好な分散性、耐光堅牢度などを、様々な種類の効果顔料に付与することが公知であり、当技術分野において周知である。無機誘電性化合物をベースとするいわゆる後コーティングは、一般に20nm未満、特に1~15nm、好ましくは2~10nmの厚さを有する。このタイプの誘電層は、それ自体は顔料系全体に対して何ら干渉作用を与えないことになる。ここでは、特に二酸化ケイ素(ここでは他の後コーティングを有する層状の系内のもの)、酸化アルミニウム、酸化セリウム、及び/又は酸化スズなどの非常に薄い層が、単一成分として、又は混合物の形態のいずれかで使用される。このために、上記の異なる材料の非常に薄い誘電層が、数層順に重ねて使用されることも多い。
当然、無色の誘電層、並びに適用特性を改善するための層を本発明の一実施形態において共に使用してもよい。特に、上記の深い青みがかった黒色の効果顔料、すなわち層状のヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイト構造と、その上の二酸化ケイ素/酸化ケイ素水和物層を有する二酸化アルミニウムフレークとからなる顔料に、それぞれの適用媒体中でのより良好な適用特性を付与するために、追加的に無機の後コーティングを付与してもよい。
【0020】
上記の後コーティング用の無機誘電層に加えて、又はその代わりに、有機材料、例えば様々な有機シラン、有機チタン酸塩、有機ジルコン酸塩の薄いコーティングも、様々な適用媒体中での適用性能を改善するために、本発明の顔料の表面に最外コーティングとして適用されてもよい。そのようなコーティングは効果顔料の技術分野において公知であり、従って、その適用は当業者の通常技術の範囲内である。
効果顔料のいわゆる「後処理」又は「後コーティング」に関する例は、有機又は無機のいずれの性質でも、上記のように本発明に用いることができ、以下の文献に見出すことができる:欧州特許第0632109号明細書、米国特許第5,759,255号明細書、独国特許出願公開第4317019号明細書、独国特許出願公開第3929423号明細書、独国特許出願公開第3235017号明細書、欧州特許第0492223号明細書、欧州特許第0342533号明細書、欧州特許第0268918号明細書、欧州特許第0141174号明細書、欧州特許第0764191号明細書、国際公開第98/13426号、又は欧州特許第0465805号明細書;これらの内容は参照により本発明に包含される。
【0021】
本発明の更なる目的は、信頼性があり、経済的であり、容易に制御可能であり、還元工程を伴わない、上記の深い青みがかった黒色の効果顔料の製造方法である。従って、以下の工程を含む方法が適用される:
(a)それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材を、水に分散させる工程と、
(b)水溶性鉄(III)化合物を2~4のpHで添加し、該pHを一定に保ち、それによってヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層を基材粒子の表面上に析出させる工程と、
(c)pHを5.5~7.5の間の値まで上昇させ、pH値を一定に保ちながら、水溶性鉄(II)化合物及び水溶性鉄(III)化合物を添加し、任意選択でアルミニウム化合物の水溶液も添加し、それによって、任意選択でアルミニウム化合物を含むマグネタイト層を、工程(b)でプレコートされた基材の表面上に直接析出させる工程と、
(d)任意選択で、得られた生成物を洗浄及び濾過する工程と、
(e)>100℃~260℃の範囲の温度で乾燥する工程。
【0022】
好適な合成により製造された緑色固有干渉色を有する基材は、既に上述した基材であり、透明で、>1.5~2.5、特に1.65~2.5の範囲の屈折率nを有し、好ましくは、Al2O3からなる基材フレーク、基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO2含量を有するAl2O3からなる基材フレーク、ZrO2若しくはTiO2からなる基材フレーク、又は基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl2O3、ZrO2若しくはTiO2を含む基材フレークである。透明基材フレークの更なる成分は、Sn、Si、Ce、Al、Ca、In又はZnの酸化物又は酸化物水和物であってもよいが、それらは、基材の質量を基準にして最大で10質量%の割合で基材中に存在する。
最大で70質量%のSiO2を含む、既に上述したガラスフレーク、及び更なる成分も好適である。
基材フレークの緑色固有干渉色を得ることができるように、材料に応じて、既に上述した基材の幾何学的厚さに準拠しなければならない。
上記のフレーク状基材は、本質的にAl2O3からなり、好ましくは欧州特許出願公開第763573号(A2)明細書に記載の方法により製造することができる。これらの基材は、少量のTiO2を含み、このことは、その後の干渉層によるコーティングを単純化する。この方法により製造される酸化アルミニウムフレークは、結晶成長過程で単結晶として得られ、基材の粒径及びその幾何学的厚さは、その標準偏差が10%を超えず、プロセスパラメータにより制御することができる。対応する影響パラメーターは当業者に公知である。他の異質酸化物がTiO2の代わりに又はTiO2に加えて存在することになる場合、手順は、欧州特許出願公開第763573号(A2)明細書に記載の方法と類似し、原料を置き換えたものとなる。
ZrO2、TiO2、これらの酸化物水和物又はこれらの混合物から完全に又は主になる基材フレークは、国際公開第93/08237号に記載の方法と類似の方法で製造できる。しかし、この方法と類似の方法で製造される基材フレークは、溶解した又は非溶解の着色剤を含まないはずである。上記の基材フレークは、対応する、好ましくは無機の、ベルトプロセスの前駆体材料から製造され、該プロセスにおいて、前駆体は、ベルトに適用され、酸を使用して酸化形態又は酸化物水和物に変換され、固化され、次いで、ベルトから分離され、任意選択でか焼される。基材フレークの幾何学的層厚は、前駆体層の適用量又は湿潤層厚によって調整され、それは非常に正確に実施でき、多くて10%のばらつきを伴う狭い厚さ分布を生じる。基材フレークの粒径は、その後の粉砕及び分級プロセスを通して調整されなければならないが、これらは、当技術分野で一般的である。
【0023】
フレーク状ガラス基材は、多くの供給業者から種々の厚さ及び品質で市販されており、その例は、Glassflake Australia Pty Ltd.からの厚さ100~500nmのホウケイ酸塩(ECR)ガラスフレークである。
本発明によるヘマタイト/マグネタイト層状構造による上記の二酸化アルミニウムフレークのコーティングには、好ましくは以下の手順を適用する:
基材粒子を水中に懸濁させる。好ましくは、懸濁液を75℃~85℃の温度に加熱する。得られる懸濁液のpH値を2~4の値に調整し、一定に保つ。その後、pH値を一定に保ちながら、水溶性鉄(III)化合物を懸濁液中にゆっくりと計り入れる。水溶性鉄(III)化合物の添加が完了し、それによりヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される薄層が基材粒子の表面上に析出した後、pHを5.5~7.5の間の値まで上昇させて一定に保ち、水溶性鉄(II)化合物並びに更なる水溶性鉄(III)化合物を、1つずつ又は混合物としてのいずれかで(後者が好ましい)懸濁液に添加する。アルミニウム化合物が、好ましいマグネタイト層に取り込まれるべき場合、pHを好ましくは6.5~7.5の値に調整し一定に保つ。次いで、pH値を一定に保ちながら、鉄(II)及び鉄(III)化合物の前若しくは後のいずれか、又は好ましくは同時に、アルミニウム化合物の水溶液を懸濁液にゆっくりと計り入れる。pH値を一定に保ちながら、懸濁液を好ましくは更に0.5時間撹拌し続ける。
最初の水溶性鉄(III)化合物と二番目の水溶性鉄(III)化合物は同じ化合物又は異なる化合物のいずれでもよい。好ましくは、最初及び二番目の鉄(III)化合物の添加には同じ水溶性化合物を使用する。最初の鉄(III)化合物の添加量は、この鉄(III)化合物を用いることにより非常に薄いヘマタイト層のみが基材粒子の表面上に析出し得るように選択する。得られる層厚は、上記のように分子数個分の層から約10nmの範囲である。反対に、鉄(II)化合物並びに鉄(II)化合物と共に添加される二番目の鉄(III)化合物の量は、プレコート済みの基材粒子の表面上にマグネタイトが直接析出し得るように、鉄(II)イオンと鉄(III)イオンとの間の比が9:1~9.7:0.3となるように選択される。比較的大過剰の鉄(II)化合物が先に存在しているが、鉄(ll)化合物はプロセス条件に起因して部分的に鉄(III)酸化物に変換され、マグネタイトの直接的な析出を生じさせることを述べておく必要がある。
加えて、マグネタイト層を生成させるために使用される鉄(II)化合物及び鉄(III)化合物の量は、得られるマグネタイト層の層厚がヘマタイト層の層厚よりも大きくなるように選択する。好ましくは、得られるマグネタイト層の層厚がヘマタイト層の層厚の少なくとも15倍となるように、量を選択する。ヘマタイト層の密度はマグネタイト層の密度に非常に近いことから(5.24g/cm3に対して5.17g/cm3)、それぞれの基材1m2上に約1nmの層厚のいずれかの材料をコーティングするには、5×10-3gのヘマタイト又はマグネタイトが必要であるという経験則が適用される。
【0024】
一般に、水溶性鉄化合物:
FeSO4、FeCl2、Fe(NH2)2(SO4)2、Fe(NO3)2、Fe2(SO4)3、FeCl3、FeNH4(SO4)2又はFe(NO3)3が使用されてもよく;FeSO4及びFe(NO3)3が特に好ましい。
より詳細には、水溶性鉄(II)化合物、好ましくはFeSO4・7H2Oを使用してもよい。水溶性鉄(III)化合物として、Fe(NO3)3・9H2Oが好ましくは使用される。これらの化合物は、工業グレード形態で使用でき、その結果Feイオン以外の金属イオンも少量存在し得る。
既に前述したように、アルミニウム化合物がマグネタイト層中に含まれることは本発明の干渉顔料にとって大いに有利である。かかるAl化合物は、上記のように更なる誘電層でマグネタイト層をオーバーコートする機能を改善し、加えてマグネタイト層の安定性及び密度を高める。有用なAl化合物は、水溶性Al塩、例えば、AlCl3及びAl2(SO4)3、特にAlCl3・6H2O、Al2(SO4)3・16H2O、又はポリ塩化アルミニウム溶液(PAC)である。この化合物は、上記の鉄(II)及び鉄(III)化合物と適切な比で単純に混合され、次いでヘマタイト層で既にプレコートされた基材粒子の懸濁液にゆっくりと適用されてもよい。Al化合物を添加するための条件は上述されている。
マグネタイト層の析出が完了した後、得られた顔料を分離し、任意選択で洗浄、及び乾燥する。乾燥は100℃を超え260℃まで、特に110℃~140℃の範囲の温度で行われる。乾燥工程の時間は0.5~12時間である。
任意選択で、次いで、得られる顔料を分級して、粒径分布を更に限定してもよい。
好ましくは、上記のプロセスは不活性ガス雰囲気中で、例えば窒素、アルゴン等を使用して、実施される。
本発明の好ましい実施形態では、深い青みがかった黒色の効果顔料は、少なくとも1つの無色誘電層をヘマタイト/マグネタイト層状構造の上、すなわち、マグネタイト層の上に含有し、該誘電層(複数可)は、下側にある顔料に所望の熱安定性をもたらす。
このために、ヘマタイト/マグネタイト層状構造が基材粒子に適用された後、少なくとも1つの更なる誘電層がマグネタイト層の上にコーティングされる。これらの追加の誘電層(複数可)のコーティングは、好ましくは上記の乾燥工程の前に実施されてもよいが、中間乾燥工程も可能である。任意選択で、洗浄及び/又は濾過工程を、各誘電層をプレコート済みの基材粒子の上にコーティングした後で実施してもよい。
誘電層の材料は、好ましくは誘電性の金属酸化物及び/又は金属酸化物水和物が選択される。好ましくは、単一の誘電層のみがマグネタイト層に適用される場合、該単一誘電層は、好ましくは無色で低屈折率の誘電材料で構成される。最も好ましいのは、マグネタイト層の上に直接配置された二酸化ケイ素及び/若しくは酸化ケイ素水和物又は二酸化スズ及び/若しくは酸化スズ水和物の単一誘電層の適用である。二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物が最も好ましい。
【0025】
マグネタイト層の上の低屈折率誘電層の厚さによっては、下側の顔料によって生じる青みがかった干渉色がわずかに減弱される場合があるが、なおも許容可能な範囲に維持される。得られる顔料は深い黒色のボディカラーを、赤み又は緑がかった色合いのない、目に見える青みがかった干渉色、高い隠蔽力、並びに強い光沢と共に示す。角度依存性の干渉色(カラーフロップ)は観察されない場合がある。更に、得られる干渉顔料は、良好な熱安定性を示す。
本発明の顔料のマグネタイト層上での誘電層の形成については、真珠光沢顔料及び効果顔料の技術分野で一般に知られている手順を用いてもよい。特に、湿式化学コーティングの手順が好ましく、特に好ましいのは無機の出発物質を使用する湿式化学コーティング法である。それは、これらのプロセスは取り扱い及び制御が容易であり、それ自体がカプセル化された基材粒子をもたらすからである。
一般に、顔料粒子を誘電層、特に誘電性金属酸化物又は金属酸化物水和物の層でコーティングするための湿式コーティング法は、以下のように行われる:顔料粒子を水に懸濁し、加水分解に適しており金属酸化物又は金属酸化物水和物が二次析出することなく微小板(platelet)の上に直接析出するように選択されたpH値において、1種以上の加水分解性金属塩を加える。pH値は、通常は塩基及び/又は酸を同時に計量添加することによって一定に保たれる。その後、顔料は分離、洗浄、及び乾燥され、必要に応じてか焼される。
【0026】
本発明による顔料の製造方法において、層状ヘマタイト/マグネタイト構造並びに当該ヘマタイト/マグネタイト層状構造上にコーティングされた全ての誘電層については、か焼工程が完全に省かれる。これは、か焼工程に一般的に使用される高温を適用することによって、マグネタイト層が破壊されるためである。
完全を期すために、誘電層のコーティングは、流動床反応器内で気相コーティングによって実施することもでき、この場合、例えば、欧州特許第0045851号明細書、及び欧州特許第0106235号明細書において真珠光沢顔料の調製に関して提案された技法を適宜使用することが可能である。ただし、上記の湿式コーティング法が明らかに好ましい。
上記の湿式化学法を用いて、例えば、二酸化ケイ素層及び/又は酸化ケイ素水和物層を有するヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイト層状構造でプレコートされた顔料粒子のコーティングを、以下に記載の手順によって実施できる:ケイ酸カリウム又はナトリウム溶液を、コーティングしようとする材料の懸濁液に計り入れ、約50~100℃に加熱する。希釈した鉱酸、例えば、HCl、HNO3又はH2SO4等の同時添加により、pH値を6~9で一定に保つ。所望の層厚のSiO2が得られると直ちに、ケイ酸塩溶液の添加を停止する。このバッチを、続いて約0.5時間撹拌する。二酸化ケイ素又は酸化ケイ素水和物のいずれを得るべきかに応じて、得られる層の乾燥及び/又はか焼は中温以上の高温、好ましくは約120℃以上で実施される。
次に、更なる誘電層を、第1の誘電層の上に適用してもよく、該層は、顔料の適用媒体に対する更なる保護層として働き、いわゆる後コーティング層であり、得られる顔料に干渉色を付与すること又は干渉色を減弱することができない。これらの無機誘電層並びにその上に適用され得る有機保護層は、以前にある程度記載されている。対応する方法も、当該技術分野で公知である。
上記の特性を有する本発明の深い青みがかった黒色の効果顔料は、深い黒色及び高い光沢に特に依拠する適用媒体での使用、特に自動車用途、技術的コーティング用途全般、又は印刷媒体での使用に役立つ。当然、上記顔料は、黒色顔料が一般に有用である更なる用途にも適用できる。
従って、本発明の1つの目的は、インク、塗料、ニス、コーティング組成物(すなわち、液体コーティング組成物及び粉末コーティング組成物)、プラスチック、箔、紙、セラミック、ガラスの着色のため、レーザーマーキングのため、及び多様な溶剤内容物の顔料調製物の着色のための、本発明による深い青みがかった黒色の効果顔料の使用によって解決される。
特に好ましいのは、自動車用塗料、自動車用コーティング組成物及び自動車用ラッカーのそれぞれにおける使用である。
【0027】
印刷インクとしては、深い青みがかった黒色干渉顔料の実際の粒径に応じて、印刷作業に通常使用されるあらゆる種類の印刷インクが含まれ、ほんの数例を挙げると、スクリーン印刷インク、凹版印刷インクなどのグラビア印刷インク、オフセット印刷インク、フレキソ印刷インク、並びにインクジェット印刷インクがある。
本発明の効果顔料は、魅力の高い飽和黒色を必要とするほぼすべての技術的用途に適用できるが、最も好ましくは自動車用途、すなわち自動車用塗料、自動車用コーティング組成物、及び自動車用ラッカーに有用である。それぞれの組成物は、本発明による効果顔料に加え、自動車用途で従来使用される少なくとも1種のバインダーと、任意選択で少なくとも1種の溶剤とを含む。
産業界で標準として採用されている従来のOEMコーティング組成物を、本発明でビヒクルとして使用できる。使用するコーティング方法及びその他の要因に応じて、1液溶剤型、2液溶剤型、1液水性型、又は粉末型が本発明で好適である。
選択するコーティング系に応じて、様々なバインダー系及び架橋剤が標準として採用される。通常、アクリレート/メラミンベースのバインダー系、アクリレート/メラミン/シランベースのバインダー系、又はカルバメートト/メラミンをベースとするバインダー系が有用であるが、エポキシ樹脂及びポリウレタンも使用できる。
【0028】
種々の溶剤型及び水性型コーティング系の固形分は、溶剤系の場合は40~約65%であり、水性系の場合は約35~45%である。粉末コーティングの場合、固形分は100%である。
自動車用の塗料、ラッカー又はコーティング組成物は、当然、自動車用途に通常存在する従来の助剤及び添加剤も含み得る。必要な架橋剤の他に、例えば、UV吸収剤、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)成分、並びに脱気、流動挙動改善、耐引掻き性改善、接着能力改善等のための添加剤がある。
本発明の効果顔料を含む自動車用の塗料、ラッカー又はコーティング組成物は、有利には、多層コーティング系のベースコートを提供する色に使用される。ベースコートの上に、通常はクリアコートが適用される。
得られる、ベースコートを含むコーティングは、単層又は2層のベースコートであり得る。単層ベースコートが好ましい。ベースコートは、全ての主要物質と、この目的で通常用いられる助剤、特にクリアコートの下の不透明コーティング用の吸収顔料とを含む。ベースコートは、本発明の深い青みがかった黒色の効果顔料も含み、飽和黒色ボディカラーを、青みがかった干渉、高光沢、及び良好な隠蔽力と共に、車両の基材パネルにもたらす。
ベースコートによるコーティングに用いられる基材パネルは、通常方法(例えばeコート、フィラー)で前処理された自動車のボディ又はボディパーツであり、これは通常、金属、プラスチック又は複合材からなる。基材パネルには、従来方法及び設備により、公知の方法で、ベースコートが提供される。
【0029】
一般に、本発明の顔料は、本顔料の特性の1つ、すなわち、色特性若しくは磁気特性、又はその両方を活用できる任意の製品に適用されてもよい。
言うまでもなく、本発明による深い青みがかった黒色の効果顔料は、有機及び無機の着色剤及び顔料、特に任意の種類の効果顔料と併用してもよい。有機の顔料及び着色剤は、例えばモノアゾ顔料、ジアゾ顔料、多環式顔料、カチオン性、アニオン性、又は非イオン性着色剤である。無機の着色剤及び顔料は、例えば白色顔料、有色顔料、更には黒色顔料、又は効果顔料である。適切な効果顔料の例は、金属効果顔料、真珠光沢顔料、又は干渉顔料であり、これらは一般に、アルミニウム、マイカ、ガラス、Al2O3、Fe2O3、SiO2等の単層又は多層コーティングされた微小板をベースとする。これらの顔料の構造及び特定の特性についての例は、とりわけRD471001又はRD472005に開示され、その開示は参照により本明細書に含まれるものとする。
【0030】
加えて、本発明の深い青みがかった黒色の効果顔料と併用してもよい更なる着色剤は、任意の種類の発光性の着色剤及び/又は顔料、並びにホログラフィック顔料、又はLCP(液晶ポリマーをベースとする顔料)である。
本発明による顔料は、任意の所望の混合比で、一般に使用及び市販される顔料及びフィラーと共に使用してもよい。本顔料を他の顔料及び着色剤と共に使用するにあたっての制限は、混合物が本発明による顔料の色特性を阻害する又は制限することになる場合にのみ設けられる。
本発明による効果顔料は、中間色の深い黒色ボディカラー及び所望の青みがかった干渉色をそれぞれの適用媒体にもたらす。更に、本発明の効果顔料は、光沢があり、高い隠蔽力を示し、それぞれの保護層を備え、所望の青みがかった干渉色を失うことなく良好な温度安定性も有する。更に、青みがかった干渉色は、赤み又は緑がかった干渉効果によって変化しない。その価値のある色特性により、本発明の効果顔料は、その利点を活用し得る全ての用途に使用できる。
本発明は以下の例においてより詳細に説明されるが、これらに限定されるべきではない。
【0031】
実施例1:
140gの二酸化アルミニウムフレーク(少量TiO2を有するAl2O3、平均厚さ220nm、平均粒径18μm、緑がかった固有干渉色)を脱イオン水中に懸濁させる。懸濁液を撹拌しながら80℃に加熱する。窒素ガスを反応容器中にゆっくりと加える。酸性化合物(HCl、約20質量%)を懸濁液中に計り入れることによってpH値を3.0に調整し、一定に保つ。pH値をなお一定に保ちながら、Fe(NO3)3溶液(100ml、140mlの脱イオン水中に7.87gのFe(NO3)3・9H2O)を懸濁液に添加する。次いで塩基性組成物(NaOH、約32質量%)を懸濁液へ添加することによってpH値を約7.0に上昇させる。pHをなお一定に保ちながら、Al成分、及びFe(II)及びFe(III)成分の水溶液(2000ml、2000mlの脱イオン水中に768.9gのFeSO4・7H2O、0.66gのAlCl3・6H2O及び24.3gのFe(NO3)3・9H2O)を懸濁液にゆっくりと計り入れ、次いでこれを撹拌しながら更に30分間保持する。その後、pHをなお一定に保ちながら水ガラス溶液(約5.9g、SiO2として29%)を添加する。懸濁液を約2時間保持し、次いで得られた顔料を濾過により分離し、脱イオン水で洗浄する。
最終的に、得られた顔料を約120℃の温度で乾燥し、ふるいにかける。
得られる顔料は、深い青みがかった黒色の粉末色を、鮮やかな光沢並びに高い隠蔽力と共に示す。
【0032】
実施例2:
フレーク状顔料基材の厚さ(すなわち、固有干渉色)の影響を実証するため、異なる厚さの酸化アルミニウム基材粒子に、実施例1に開示の手順に従ってヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイトの層状系をコーティングし、異なる干渉顔料を得る。それぞれの基材は、それぞれ300、220及び150nmの平均厚さを有し、平均厚さが220nmの基材粒子のみが固有の緑色干渉色を示した。
厚さ15μmのカーボンブラック含有コーティングでプレコートした3種のポリマープレートに、10質量部のアクリル-メラミン樹脂(バインダーとして)と、1質量部の上記の異なる基材厚さを示すそれぞれの干渉顔料と、13質量部の溶剤混合物3と、を各々含有するコーティング組成物をスプレーコーティングする。必要であれば、コーティング組成物の粘度を、スプレー塗布用の追加溶剤を添加することによって更に調整する。プレコートしたポリマープレートに、コーティング組成物を、市販のスプレーガンを用いて乾燥厚さ15μmで適用する。その後、アクリル-メラミン樹脂で実質的に構成されるクリアトップコート(溶解形態でスプレー塗布によって適用される)を、干渉顔料を含有する層の上に、乾燥厚さ30μmで適用する。それぞれのコーティング済み試験プレートを、140℃で20分間熱処理する。
試験プレートを、目視及び色データ測定により、評価する。BYK-mac i(BYK-Gardner GmbHの分光高度計)で測定したそれぞれのL
*a
*b
*データを表1に開示する。
【表1】
【0033】
表1の色特性から、緑色固有干渉色を伴うフレーク状基材を有する本発明による深い青みがかった黒色の効果顔料のみが、異なる測定角で色角度h°が安定を維持すること、青みがかった干渉が強い(負のb*値)こと、及び干渉色の赤み又は緑の色合い(小さいa*値)が観察されないことが明らかである。
【0034】
実施例3:
温度安定性試験
顔料試料を実施例1に従って調製する。ただし以下の条件が満たされることを条件とする:
実施例3a:ヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイト層状構造のみ、誘電層なし;
実施例3b:ヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイト層状構造、SiO
2及び/又は酸化ケイ素水和物の誘電層;
実施例3c:ヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイト層状構造、SiO
2及び/又は酸化ケイ素水和物の誘電層に加えて標準的な後コーティング;
実施例3d:マグネタイト層を有するマイカ、比較例。
2gの各顔料を180℃で14時間保存する。
2gの各顔料を250℃で14時間保存する。
保存後の実施例3a~実施例3dによる各顔料1.2gを、30.0gの市販の粉末クリアコート組成物とドライブレンドする。次いで、着色粉末コーティング組成物を、黒/白金属試験パネルに、コロナ帯電パウダーガンを用いて適用した。各々、得られたコーティング層を180℃で15分間硬化する。
硬化後、パネルを、目視により、及びBYK-mac i分光光度計を用いて対応するL
*a
*b
*値を測定することにより、特性評価した。得られたデータを用いて、試験パネルの黒色及び白色表面上のmDE
*値を求める。結果を表2に開示する。
【表2】
【0035】
表2に開示した結果は、本発明による効果顔料のヘマタイト/針鉄鉱-マグネタイト層状構造の上の誘電性のSiO2及び/又は酸化ケイ素水和物層は、顔料の温度安定性を著しく高めることを示す。温度安定性は、SiO2及び/又は酸化ケイ素水和物誘電層に加えて標準的な後コーティングを適用した場合に更に向上し得る。
本開示は以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
深い青みがかった黒色の効果顔料であって、各顔料は、
それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材と、
前記フレーク状基材上の、
ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される第1層、及び
マグネタイトで構成される第2層、
からなる、少なくとも1つの層状構造であって、前記第2層は前記第1層の上に配置され、前記第1層は前記基材上に直接配置されている、層状構造と、
を含む、効果顔料。
(実施形態2)
前記透明誘電フレーク状基材は、Al
2
O
3
からなる、前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2
含量を有するAl
2
O
3
からなる、ZrO
2
若しくはTiO
2
からなる、又は前記基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl
2
O
3
、ZrO
2
若しくはTiO
2
を含む、又は最大で70質量%のSiO
2
比率をするガラスフレークである、実施形態1に記載の効果顔料。
(実施形態3)
前記透明誘電基材は、Al
2
O
3
又は前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2
含量を有するAl
2
O
3
からなり、50~110nmの範囲、180~260nmの範囲、又は350~450nmの範囲の幾何学的厚さを有する、実施形態1又は2に記載の効果顔料。
(実施形態4)
5~200μmの範囲の粒径を有する、実施形態1~3のいずれか一項に記載の効果顔料。
(実施形態5)
前記第1層は、0.1~10nmの範囲の幾何学的厚さを有する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の効果顔料。
(実施形態6)
前記第2層は、80~230nmの範囲の幾何学的厚さを有する、実施形態1~5のいずれか一項に記載の効果顔料。
(実施形態7)
前記第2層は、アルミニウム化合物を含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の効果顔料。
(実施形態8)
前記第2層の上に更に無色誘電層を含む、実施形態1~7のいずれか一項に記載の効果顔料。
(実施形態9)
前記無色誘電層は、二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物の層である、実施形態8に記載の効果顔料。
(実施形態10)
最外側の無機及び/又は有機後コーティングを有する、実施形態1~9のいずれか一項に記載の効果顔料。
(実施形態11)
(a)それ自体が緑色干渉色及び1.5を超える屈折率nを有する、合成により製造された透明誘電フレーク状基材を、水に分散させる工程と、
(b)水溶性鉄(III)化合物を2~4のpHで添加し、前記pHを一定に保ち、それによってヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層を前記基材粒子の表面上に析出させる工程と、
(c)前記pHを5.5~7.5の間の値まで上昇させ、前記pH値を一定に保ちながら、水溶性鉄(II)化合物及び水溶性鉄(III)化合物を添加し、アルミニウム化合物の水溶液をも添加してもよく、それによって、アルミニウム化合物を含んでもよいマグネタイト層を、工程(b)でプレコートされた前記基材の表面上に直接析出させる工程と、
(d)任意選択で、得られた生成物を洗浄及び濾過する工程と、
(e)>100℃~260℃の範囲の温度で乾燥する工程と、
を含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の深い青みがかった黒色の効果顔料を製造する方法。
(実施形態12)
前記透明誘電フレーク状基材は、Al
2
O
3
からなる、前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2
含量を有するAl
2
O
3
からなる、ZrO
2
若しくはTiO
2
からなる、又は前記基材の質量を基準にして少なくとも90質量%の割合でAl
2
O
3
、ZrO
2
若しくはTiO
2
を含む、又は最大で70質量%のSiO
2
比率を有するガラスフレークである、実施形態11に記載の方法。
(実施形態13)
前記透明誘電基材は、Al
2
O
3
又は前記基材の質量を基準にして最大5質量%のTiO
2
含量を有するAl
2
O
3
からなり、50~110nmの範囲、180~250nmの範囲、又は350~450nmの範囲の幾何学的厚さを有する、実施形態11又は12に記載の方法。
(実施形態14)
不活性ガス雰囲気で実施される、実施形態11~13のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態15)
工程(c)を実施した後、且つ工程(e)を実施する前に、追加工程において、無色誘電層を前記マグネタイト層の上にコーティングする、実施形態11~14のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態16)
前記マグネタイト層の上にコーティングされた前記無色誘電層は、二酸化ケイ素及び/又は酸化ケイ素水和物の層である、実施形態11~15のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態17)
前記マグネタイトで構成される層は、前記ヘマタイト及び/又は針鉄鉱で構成される層よりも大きい厚さで前記基材粒子上に適用される、実施形態11~16のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態18)
インク、ラッカー、塗料、ニス、コーティング組成物、プラスチック、箔、紙、セラミック、ガラスの着色のため、レーザーマーキングのため、及び多様な溶剤内容物の顔料調製物の着色のための、実施形態1~10のいずれか一項に記載の効果顔料の使用。
(実施形態19)
前記ラッカー、塗料、又はコーティング組成物は、自動車用ラッカー、自動車用塗料、又は自動車用コーティング組成物である、実施形態18に記載の使用。