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特許7581467基板処理装置および導電性配管劣化度合い判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】基板処理装置および導電性配管劣化度合い判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241105BHJP
【FI】
H01L21/304 643A
H01L21/304 646
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023196749
(22)【出願日】2023-11-20
(62)【分割の表示】P 2020040244の分割
【原出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2024009134
(43)【公開日】2024-01-19
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】飯野 正
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-317821(JP,A)
【文献】特開2018-029135(JP,A)
【文献】特開2016-152375(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044548(WO,A1)
【文献】特開平07-005080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
G03F 7/30-7/32
C02F 1/42
B08B 3/04
B08B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に処理液を吐出するノズル部と、
前記ノズル部に接続され、前記ノズル部に処理液を供給する導電性の配管と、
前記導電性の配管を介して前記ノズル部に処理液を供給する処理液供給部と、
前記導電性の配管を基準電位に接続するグラウンドラインと、
前記基板保持部の周囲に設けられ、前記ノズル部から吐出された処理液を受ける液受け部と、
前記液受け部に近接して設けられた電極と、
前記電極に電圧を印加して、前記液受け部の接液面と前記基準電位との間に電位差を与える電圧印加部と、
前記処理液が前記ノズル部から前記液受け部に吐出されているときに、前記液受け部の接液面と前記グラウンドラインとの間に前記処理液を介して確立された電荷移動経路を流れる電流の電流値を測定する電流計と、
を備えた基板処理装置。
【請求項2】
前記電圧印加部により前記電極に印加された電圧と、前記電流計の検出値との関係に基づいて、前記導電性の配管の抵抗値または劣化度合いを判断する演算部をさらに備えた、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
基板を処理する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に処理液を吐出するノズル部と、
前記ノズル部に接続され、前記ノズル部に処理液を供給する導電性の配管と、
前記導電性の配管を基準電位に接続するグラウンドラインと、
前記基板保持部の周囲に設けられ、前記ノズル部から吐出された処理液を受ける液受け部と、
前記液受け部に近接して設けられた電極と、
前記電極に電圧を印加する電圧印加部と、
を備えた基板処理装置において、前記導電性の配管の導電性の劣化度合いを判定する方法において、
前記電極に電圧を印加することにより、前記液受け部の接液面と前記基準電位との間に電位差を与えることと、
前記導電性の配管に基板処理用の処理液を供給して、前記ノズル部から液受け部に前記処理液を吐出させることと、
前記処理液が前記ノズル部から前記液受け部に吐出されているときに、前記液受け部の接液面と前記グラウンドラインとの間に前記処理液を介して確立された電荷移動経路を流れる電流の電流値を測定することと、
前記電圧印加部により前記電極に印加された電圧と、測定された電流値との関係に基づいて、前記導電性の配管の劣化度合いを判断することと、
を備えた劣化度合い判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および導電性配管の劣化度合いを判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、基板にノズルから処理液を供給することにより基板に液処理を施す液処理工程が含まれる。処理液によるダメージの防止、および配管内部を流れる処理液との摩擦による帯電を防止する観点から、ノズルに処理液を供給する配管として、PFA等のフッ素系樹脂にストライプ形状のカーボン等の導電性部材を組み込んだ導電性配管がしばしば用いられる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-278972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、導電性配管の導電性の劣化を容易に精度良く検出する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板処理装置の一実施形態は、基板を処理する基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に処理液を吐出するノズル部と、前記ノズル部に接続され、前記ノズル部に処理液を供給する導電性の配管と、前記導電性の配管を基準電位に接続するグラウンドラインと、前記基板保持部の周囲に設けられ、前記ノズル部から吐出された液体を受ける液受け部と、前記導電性の配管の導電性の劣化度合いを測定する劣化度合い測定部と、
を備え、前記劣化度合い測定部は、前記導電性の配管に測定用液体を供給して、前記ノズル部から前記測定用液体を吐出させる測定用液体供給部と、前記液受け部の接液面と前記基準電位との間に電位差を与える電位差付与部と、前記測定用液体が前記ノズル部から前記液受け部に吐出されているときに、前記液受け部の接液面と前記グラウンドラインとの間に前記測定用液体を介して確立された電荷移動経路を流れる電流の電流値を測定する電流計と、を有している。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、導電性配管の導電性の劣化を容易に精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の横断面図である。
図2】処理ユニットに含まれる劣化度合い測定部の第1実施形態の構成を示す概略図である。
図3】導電性配管の内部構造の一例を示す断面図である。
図4】電極近傍の構成を示す断面図である。
図5】劣化度合いを測定するための手順を示すタイムチャートである。
図6A】劣化度合いを測定するための手順を示す概略図である。
図6B】劣化度合いを測定するための手順を示す概略図である。
図6C】劣化度合いを測定するための手順を示す概略図である。
図6D】劣化度合いを測定するための手順を示す概略図である。
図6E】劣化度合いを測定するための手順を示す概略図である。
図6F】劣化度合いを測定するための手順を示す概略図である。
図7A】劣化度合いの測定条件について説明するためのグラフである。
図7B】劣化度合いの測定条件について説明するためのグラフである。
図7C】劣化度合いの測定条件について説明するためのグラフである。
図8】処理ユニットに含まれる劣化度合い測定部の第2実施形態の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基板処理装置の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0010】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0011】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0012】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0013】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0014】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0015】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0016】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0017】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0018】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0019】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0020】
次に、図2を参照して処理ユニット16の構成について説明する。
【0021】
処理ユニット16は、基板保持部としてのスピンチャック20を有する。スピンチャック20は、基板W例えば半導体ウエハを水平姿勢で保持する基板保持体22と、基板保持体22を鉛直軸線回りに回転させる回転駆動部24とを有している。基板保持体22は、バキュームチャックまたはメカニカルチャックのいずれであってもよい。基板Wには、少なくとも1つのノズル部100から処理液が供給される。基板保持体22の周囲は、液受けカップ26により包囲されている。液受けカップ26は、ノズル部100から基板Wに供給された後に基板Wから離脱した処理液を回収する。
【0022】
ノズル部100は、図示しないノズル移動機構により、スピンチャック20に保持された基板Wの上方の処理位置と、液受けカップ26の外側に設けられたダミーディスペンスポート150の真上の退避位置との間を移動することができる。図示しないノズル移動機構は、例えばノズル部100(及び後述の導電性配管102)を保持する旋回式のアームを備える。図2の左上側には処理位置にあるノズル部100が概略的に示されており、図2の中央部には退避位置にあるノズル部100が概略的に示されている。
【0023】
ノズル部100は、導電性配管102の先端部により構成することができる。この場合、導電性配管102の先端の開口がノズル部100の吐出口となる。
【0024】
上記に代えて、ノズル部100は、導電性配管102の先端に取り付けられた導電性配管102とは別体の部材であってもよい。この場合、ノズル部100は、高い耐薬品性を有するフッ素系樹脂(例えばPFA,PTFAなど)にから構成することができる。
【0025】
導電性配管102の構成の一例が図3に示されている。図3の例では、導電性配管102は、フッ素系樹脂からなる非導電性の管本体102Aと、管本体102Aに設けられた導電性の4つのH形断面のストリップ102Bとから構成されている。ストリップ102Bは、例えば、導電性粒子例えばカーボンブラックが練り込まれたPFA等のフッ素系樹脂から形成することができる。導電性配管102は、他の構成を有していてもよい。例えば、導電性配管102の全体が、導電性粒子が練り込まれたフッ素系樹脂から形成されていてもよい。
【0026】
以下の説明は、ノズル部100が導電性配管102の先端部により構成されている場合について行う。
【0027】
導電性配管102の上流端は、絶縁性材料(例えばフッ素系樹脂)からなる管継手104を介して、絶縁性材料(例えばフッ素系樹脂)からなる非導電性配管106に接続されている。非導電性配管106上の分岐点108から、少なくとも1つの非導電性の処理液供給配管110Pが分岐している。処理液供給配管110Pの上流端は、処理液供給源112Pに接続されている。処理液供給配管112Pには、開閉弁、流量計、流量制御弁等を含む流れ制御機構114Pが介設されている。基板Wに液処理が施されるときには、処理液供給源112Pから、処理液(例えばSPM等の薬液)が処理液供給配管110Pを介してノズル部100に供給される。
【0028】
非導電性配管106の上流端は、測定用液体供給源116に接続されている。分岐点108と測定用液体供給源116との間に、開閉弁118例えばエアーオペレーションバルブが介設されている。測定用液体の電気抵抗率はなるべく高いことが好ましく、好適な測定用液体としてはDIW(脱イオン水(純水とも呼ぶ))が例示される。部材116,118は測定用液体供給部を構成する。
【0029】
なお、ノズル部100から吐出される処理液が十分に高い電気抵抗率を有している場合には、当該処理液を測定用液体として兼用できる。この場合、処理液供給部(110P,112P,114P)を測定用液体供給部として用いることも可能である。
【0030】
ノズル部100から上流側に離れた位置(例えば管継手104の近傍)において、導電性配管102にはグラウンド線(グラウンドライン)120の一端が電気的に接続されている。グラウンド線120の他端は、基準電位点(基準電位)(FG)に電気的に接続されている。導電性配管102が図3に示すような構成を有している場合には、H形断面のストリップ102Bの導電性配管102の外周面に露出している外側部分102Cが、グラウンド線120に接続される。基準電位点は、例えば基板処理システム1の図示しない金属製フレーム(機枠)であり、フレームグラウンド(FG)とも呼ばれる。金属製フレームは好ましくは大地アースに接続されている。グラウンド線120は、後述する劣化度合い測定部に関連するデバイスを設置するために利用される。
【0031】
処理ユニット16内で基板Wに液処理が施されるときに、導電性配管102の管本体102Aの内面と、導電性配管102を通過する処理液との摩擦により静電気が生じることがある。静電気(電荷)がストリップ102Bの処理液に接する内側部分102Dから外側部分102Cへと移動し、グラウンド線120を介してフレームグラウンドに逃がされることにより、処理液が除電される。これにより、基板Wに形成されたデバイスの静電破壊、あるいは引火性処理液の発火を防止することができる。
【0032】
ストリップ102Bの内側部分102Dの表面(処理液に接する面)近傍にある導電性粒子は、導電性配管102の内部に処理液を流すことにより徐々に脱落してゆく。内側部分102Dの表面近傍の導電性粒子が脱落した部分では、多数の孔を有する樹脂材料が残る。この部分の導電性は非常に低い。このような導電性粒子が脱落した部分の体積が増加してゆくに従って、ストリップ102Bの内側部分102Dの表面から外側部分102Cとの間の抵抗が増大し、除電性能が劣化してゆく。本実施形態に係る処理ユニット16には、導電性配管102、特にそのストリップ102Bの導電性の劣化度合いを検出するための劣化度合い測定部が設けられている。
【0033】
以下、劣化度合い測定部の第1実施形態について説明する。
【0034】
ダミーディスペンスポート150には、排液用配管152が接続されている。ダミーディスペンスポート150および排液用配管152を合わせて「液受け部」とも呼ぶこととする。ダミーディスペンスポート150および排液用配管152は、誘電体材料により形成されている。誘電体材料は、例えばPFA,PTFE等のフッ素系樹脂とすることができる。ダミーディスペンスポート150および排液用配管152の構成および材料は、一般的な基板処理ユニットに用いられているものと同じもので構わない。
【0035】
排液用配管152のダミーディスペンスポート150近傍の部分の外面に近接して、導電性材料からなる電極160が設けられている。電極160には、電圧印加部130(図2において一点鎖線で囲んだ部分)により電圧が印加される。
【0036】
電圧印加部130の構成について以下に説明する。電圧印加部130は高電圧直流電源132を備える。高電圧直流電源132は、電極160に、フレームグラウンド(FG)に対する制御された所望の電位(例えば数kV)を与えることができるように構成されている。高電圧直流電源132の正極が第1導電線(第1導電ライン)134を介して電極160に電気的に接続され、負極がグラウンド線136を介してフレームグラウンド(基準電位点)に電気的に接続されている。高電圧直流電源132の正極および負極の接続先が逆でもよい。
【0037】
第1導電線134には第1スイッチ138が介設されている。第1導電線134に設定された分岐点140は、グラウンド線(第2導電ライン)142を介してフレームグラウンド(基準電位点)に電気的に接続されている。
【0038】
グラウンド線142には第2スイッチ144および抵抗146(好ましくは可変抵抗)が介設されている。電極160の電位を測定するために、電位計148が、電極160に直接的に接続されるか、あるいは第1導電線134の電極160と第1スイッチ138との間の区間の任意の位置に接続されている。図2では、電位計148は接触式の電位計として記載されているが、電位計148として非接触式の表面電位計を用いることもできる。電位計148は、電圧印加部130における漏電の有無を確認するために利用することもできる。
【0039】
第1スイッチ138および第2スイッチ144はノーマルクローズの接点(「B接点」とも呼ばれる)であることが好ましい。こうすることにより、基板処理システム1の電源系統に不具合が生じたときに電極160を確実に除電することができるので、メンテナンス作業者の安全上の観点から好ましい。また、第1スイッチ138および第2スイッチ144には数kVの高電圧が印加されるため、リードスイッチ(リードリレー)等の高電圧に耐えうるスイッチを用いることが好ましい。
【0040】
劣化度合い測定部は、抵抗122好ましくは可変抵抗と、電流計124とをさらに備える。抵抗122および電流計124は、前述したグラウンド線120に設けられている。電流計124として、マイクロアンペアオーダーの微小電流を検出しうるものを用いることが好ましい。抵抗122としては、例えば100MΩ程度の抵抗値を有するものを用いることができる。
【0041】
劣化度合い測定部は、さらにコントローラ180を備える。コントローラ180は、少なくとも電圧印加部130の動作および開閉弁118の動作を制御することができる。コントローラ180は、電位計148および電流計124の検出信号を受け取る。コントローラ180は電流計124の検出結果に基づいて、導電性配管102の抵抗値を求める演算部としての機能を有する。この演算部の機能には、抵抗値に基づいて導電性配管102のストリップ102Bの健全性(導電性)を判定する機能が含まれていてもよい。
【0042】
図4には、電極160の周囲の構成の一例が示されている。排液用配管152のダミーディスペンスポート150近傍の部分の外面に近接して、円弧状の電極160が設けられている。電極160には、第1導電線132としてのシールド電線が接続されている。排液用配管152は、絶縁破壊が生じない限りにおいてなるべく薄くすることが好ましく、そうすることにより抵抗の測定精度を向上させることができる。電極160は、金属、導電性ゴムなどの導電性材料により形成することができる。漏電防止の観点から、絶縁材162が電極160の外側に設けられている。
【0043】
次に、劣化度合い測定部の動作について図5図6A図6B図6C図6D図6E図6Fを参照して説明する。劣化度合い測定部による抵抗測定操作は、コントローラ180の制御の下で実行される。コントローラ180は図1に示した制御装置4の一部であってもよい。コントローラ180のメモリ部には、抵抗測定操作の手順を定義したレシピが記憶されており、コントローラ180は、レシピに従い、以下に説明する抵抗測定操作を処理ユニット16(あるいは基板処理システム1)に実行させる。
【0044】
図5は、劣化度合い測定部の動作を説明するためのタイムチャートである。横軸が時間経過を示している。「SW1」は第1スイッチ138の状態、「SW2」は第2スイッチ144の状態を示しており、塗りつぶされている部分はスイッチが閉状態にあることを示している。「HV」は、高電圧直流電源132の状態を示しており、塗りつぶされている部分は高電圧直流電源132が電圧を出力していることを示している。「AOV」は開閉弁118の状態を示しており、塗りつぶされている部分は開閉弁118が開かれてノズル部100から測定用液体が吐出されていることを示している。「V」は電極160の電位を示している。「μA」は電流計124による検出電流を示している。「SW1」、「SW2」、「HV」、「AOV」、「V」、「μA」の定義は図6A図6Fにおいても同じである。
【0045】
図6Aには時点t0における状態すなわち初期状態を示している。高電圧直流電源132(HV)はOFF状態であり、第1スイッチ138(SW1)および第2スイッチ144(SW2)は閉状態である。電極160の電位は0Vである(ステップ1)。
【0046】
次に、時点t1において、第1スイッチ138を閉状態に維持したまま、第2スイッチ144を開状態とする(ステップ2)。
【0047】
次に、時点t2において、高電圧直流電源132をON状態とし、所定の電圧を電極160に印加して電極160を正に帯電させる(ステップ3)。このときの状態が図6Bに示されている。つまり、正に帯電した電極160が形成する電場により液受け部(図示例では排液用配管152)に誘電分極が生じ、排液用配管152の接液面(ノズル部100から吐出された液が触れる面)が正に帯電する。このとき、電極160が意図する電位にあることを電位計148により確認することができる。これに代えて、高電圧直流電源132の電圧モニタにより電極160が意図する電位にあることを確認してもよい。
【0048】
電位計148による検出電圧はコントローラ180に送られ、コントローラ180は、検出電圧が目標値に達したら次のステップを実行する。所定の時間が経過しても検出電圧が目標値に達しない場合には、コントローラ180は、電圧印加部130に異常(例えば漏電あるいは高電圧直流電源132の故障等)が発生しているものと判断し、ユーザーインターフェイス(図示しないディスプレイ等)を介して、アラームを発生させる。
【0049】
なお、第1スイッチ138および第2スイッチ144には接点寿命があるため、これらスイッチの開閉回数をコントローラ180または上位コントローラでカウントしておくことが好ましい。カウント数が所定回数に達したら、ユーザーインターフェイスを用いて、オペレータにスイッチ138,144の交換を促してもよい。
【0050】
検出電圧が目標値に達した後の時点t3において、第1スイッチ138を開状態とし、電極160を帯電させたままフローティング状態とする(ステップ4)。このときも引き続き電位計148による電極160の電位の監視を継続する。
【0051】
電極160の電位が引き続き目標値にあることが確認された後、時点t4において、開閉弁118を開き、導電性配管102およびノズル部100を介して、ダミーディスペンスポート150に測定用液体を吐出する。このとき、測定用液体は、ノズル部100の吐出口からダミーディスペンスポート150上の測定用液体の着液点まで連続的に延びる液柱が形成されるように吐出される。すなわち、測定用液体が断続的な複数の液滴を形成するように吐出されてはならない。
【0052】
上記のように測定用液体をノズル部100から吐出することにより、以下の区間を含む電子が移動できる経路(以下、「電荷移動経路」とも呼ぶ)が確立される。
- フレームグラウンド(FG)からグラウンド線120を経てグラウンド線120の導電性配管102への接続点(詳細には、導電性配管102の外側部分102Cへのグラウンド線120への接続点)までの第1区間
- 導電性配管102の内部を流れる測定用液体と、導電性ストリップ102Bの内側部分102Dとの接触界面から、流動する測定用液体を経て、ダミーディスペンスポート150あるいは排液用配管152内において測定用液体の電極160の近傍を流れている部分までに至る第2区間(第2区間は第1区間に対して導電性ストリップ102Bを介して電気的に接続されている)
【0053】
上記の電荷移動経路が確立した瞬間(この瞬間は測定用液体が電極160近傍を始めて通過した瞬間でもある)に、静電誘導により、フレームグラウンド(FG)から電子が電極160の近傍に存在する測定用液体に移動する。つまり、グラウンド線120をフレームグラウンド(FG)に向けて電流が瞬間的に流れる。この電流Aが、電流計124により計測される(ステップ5)。この状態が、図6Cに示されている。
【0054】
上記の電流Aは、ごく短時間に流れるパルス状の電流である。このような電流を確実に検出するため、電流計124それ自体、あるいは電流計124の検出値を受け取るコントローラ180が、ピークホールド機能を有していることが好ましい。電流Aのピーク値を、以下、ピーク電流APと呼ぶ。
【0055】
なお、電流A(ピーク電流AP)は、電極160の電位に依存して変化する。このため、ステップ5における測定用液体の吐出時点の前後のある程度の期間において、電位計148による電極160の電位の監視を継続的に行うことも好ましい。電極160の電位と電流計124の検出値との関係を予め実験により求めておき、この関係に基づいて電流計124の検出値を補正することにより、より精確に抵抗の測定を行うことができる。
【0056】
その後、時点t5において、高電圧直流電源132をOFF状態に切り替える(ステップ6)。このときの状態が、図6Dに示されている。なお、このとき、電極160の近傍の電荷の分布は安定しており、グラウンド線120に電流は流れない。
【0057】
次に、時点t6において、ノズル部100からの測定用液体の吐出を継続しながら、第2スイッチ144を閉状態にして電極160とフレームグラウンドとを電気的に接続する。これにより、電極160の電位が急激に0Vまで低下する。これに伴い、静電誘導により、電子が、前述した電荷移動経路を通って電極160から遠ざかる方向に移動し、グラウンド線120を通ってフレームグラウンドに移動する。つまり、フレームグラウンド(FG)からグラウンド線120を通って導電性ストリップ102Bに電流が瞬間的に流れる。この電流Bが、電流計124により計測される(ステップ7)。このときの状態が図6Eに示されている。電流Bもごく短時間に流れるパルス状の電流である。電流Bのピーク値を、以下、ピーク電流BPと呼ぶ。
【0058】
グラウンド線142には抵抗146が設けられているため、第2スイッチ144を閉状態とした瞬間に電流計124に流入しうるサージ電流を最小化することができ、このため、電流計124の測定精度を向上させることができる。また、フレームグラウンドに接続されている他の電子機器をサージ電流から保護することができる。抵抗146の抵抗値は、例えば数十MΩ程度とすることができる。
【0059】
次に、時点t7において、ノズル部100からの測定用液体の吐出を継続しながら、第1スイッチ138をON状態とする(ステップ8)。このときの状態が図6Fに示されている。これにより、ダミーディスペンスポート150の帯電を最小化することができる。このことは、次の測定サイクルにおける測定精度の向上に寄与する。
【0060】
次に、時点t8において、開閉弁118を閉じてノズル部100からの測定用液体の吐出を停止する(ステップ9)。以上にて、1つの測定サイクルが終了する。
【0061】
上記のステップ1~ステップ9の測定サイクルを複数回繰り返す。
【0062】
コントローラ180は、各測定サイクルにおいてピーク値APの絶対値とピーク値BPの絶対値との和(|AP|+|BP|)を算出し、全サイクルにおける和(|AP|+|BP|)の平均値を求める。この平均値に基づいて、導電性配管102の導電性ストリップ102Bの劣化度合いを求めることができる。
【0063】
概ね許容限界の劣化が生じている導電性配管102に対して上記の測定を行うことにより、上記平均値の許容限界値がわかる。従って、上記平均値と許容限界値との比較に基づいて、導電性配管102の交換の必要性を判断することができる。
【0064】
なお、複数サイクルの測定値の平均値に代えて、1サイクルの測定値により導電性ストリップ102Bの劣化度合いを判定してもよい。
【0065】
電極160への印加電圧を電流計124の検出電流値(例えば上記の和(|AP|+|BP|)で除した値を抵抗値(見かけ上の抵抗値)として扱い、この抵抗値に基づいて導電性ストリップ102Bの劣化度合いを判断してもよい。但し、電極160への印加電圧を一定に維持できるのであれば、電流計124の検出電流値のみに基づいて導電性ストリップ102Bの劣化度合いを判断できるため、電流計124の検出電流値それ自体を導電性ストリップ102Bの劣化度合いの判定基準としても構わない。
【0066】
次に、グラウンド線120に設けた抵抗122の抵抗値の設定に対する考え方について説明する。上記の電荷移動経路において導電性ストリップ102Bと抵抗122とが直列に接続されている。このため、抵抗122の抵抗値が、導電性ストリップ102Bの抵抗値よりも大幅に大きい場合には、導電性ストリップ102Bの劣化度合いの指標となる導電性ストリップ102Bの抵抗値が多少変動したとしても電流計124により測定される電流値は殆ど変化しなくなる。導電性ストリップ102Bの劣化に起因する導電性ストリップ102Bの抵抗値変化量は概ね400MΩ程度であるため(この値は一例である)、抵抗122の抵抗値を400MΩよりも大幅に高く設定することは避けるべきである。
【0067】
一方で、抵抗122の抵抗値が低すぎる(抵抗122が存在しない場合も含む)には別の問題が生じうる。この点について、図7Aのグラフを参照して説明する。図7Aのグラフにおいて、横軸は、導電性ストリップ102Bの内側部分102Dの表面からグラウンド線120のフレームグラウンドへの接続点までの抵抗値(R)、縦軸は上記ステップ5において電流計124により測定された電流値(I)である。
【0068】
オームの法則より、電流計124により測定される電流値は、抵抗122の抵抗値と導電性ストリップ102Bの抵抗値(詳細には、内側部分102Dと外側部分102Cとの間の抵抗値)との和に反比例する。このため、抵抗122が存在しないかあるいは抵抗122が低すぎる場合には(例えば図7Aの領域P)、導電性ストリップ102Bの抵抗値の僅かな変化により電流計124の測定値が過剰に大きく変化することになる。この場合、測定条件の僅かな変動(例えば測定用液体の電離度の変化等)により電流計124の測定値が大きく変化し、ひいては得られる抵抗データが不安定になる。
【0069】
抵抗122の抵抗値は、導電性ストリップ102Bの抵抗値の変化に対して電流計124の測定値が安定的に変化し、かつ、導電性ストリップ102Bの抵抗値の変化に対する電流計124の測定値の変化が十分に大きくなるように(但し大きすぎてはならない)ように決定することが好ましい(例えば図7Aの領域Q)。導電性ストリップ102Bの劣化に起因する導電性ストリップ102Bの抵抗値変化量が前述したように概ね400MΩ程度である場合には、抵抗122の抵抗値は100MΩ程度(この値は一例である)とすることが好ましい。
【0070】
図7Bは、ダメージを受けていない導電性配管102を用い、測定用液体としてDIWを用い、かつ、抵抗122として可変抵抗を用いた場合における、抵抗122の抵抗値と電流計124の測定値との関係を、電極160への印加電圧ごとに測定した試験結果を示すグラフである。可変抵抗の抵抗値は、直列に接続された導電性ストリップ102Bおよび抵抗122の抵抗値の和と実質的に等価なものと見なすことができる。すなわち、可変抵抗の抵抗値を変化させることにより導電性ストリップ102Bの抵抗(ダメージ)変化をシミュレートすることができることになる。電極160への印加電圧が高い程、抵抗値-電流値線図の傾きが大きいことがわかる。このことは導電性ストリップ102Bのダメージの変化をより感度良く検出することができることを意味している。
【0071】
図7Cは、図7Bで説明した試験と同様の試験設備を用い、抵抗122の抵抗値と電流計124の測定値との関係を、ノズル部100からダミーディスペンスポート150に向けて吐出するDIWの流量毎に測定した試験結果を示すグラフである。DIW流量が大きい方が抵抗値-電流値線図の傾きが大きく、導電性ストリップ102Bのダメージをより感度良く検出することができることがわかる。DIW流量が大きい方が、ダミーディスペンスポート150および排液用配管152内に存在する測定用液体(DIW)の表面積が大きくなるため、誘導電流も大きくなるものと考えられる。このことは、各測定において、測定用液体の流量を同じ値に維持する必要があることを意味している。
【0072】
図8には、劣化度合い測定部の第2実施形態が示されている。第2実施形態では、ダミーディスペンスポート150および排液用配管152(詳細には、少なくとも後述の第1端子171が接続される部分)が導電性材料から形成されている。劣化度合い測定部は、抵抗計170を備え、抵抗計170の第1端子171が排液用配管152に電気的に接続され、第2端子172がグラウンド線120に電気的に接続されている。第2端子172は、導電性配管102のストリップ102Bの外側部分102Cに接続してもよい。
【0073】
この第2実施形態では、測定用液体をノズル部100から吐出し続けながら、抵抗計170により、第1端子171と第2端子との間の抵抗を測定し、抵抗値に基づいて導電性配管102の劣化度合いを判断することができる。
【0074】
なお、周知の通り、抵抗計は、抵抗測定区間に電圧を印加する電圧印加部と、抵抗測定区間を流れる電流を測定する電流測定部(電流計)とを含み、電圧と電流との関係に基づいて抵抗測定区間の抵抗を測定する機器である。
【0075】
第2実施形態の劣化度合い測定部は構造が単純なため、1つの抵抗計170を複数の導電性配管102の劣化度合いの測定に共用することができる。この場合、抵抗計170の第1端子171および第2端子を確実かつ安定的に電気的に接続しうる端子をダミーディスペンスポート150(あるいは排液用配管152)とグラウンド線120に設ければよい。
【0076】
上記実施形態によれば、導電性配管の導電性の劣化を容易に精度良く検出することができる。このため、交換が必要なタイミングで導電性配管を交換することが可能となる。このため、比較的高価な導電性配管を必要以上に早期に交換することによる無駄なコストの発生を防止することができる。また、劣化した導電性配管を使用することにより生じ得る不具合の発生を防止することができる。
【0077】
なお、上述した方法は、ノズル部100が導電性配管102の先端に取り付けられた導電性配管102とは別体の部材である場合でも同様に適用することができる。
【0078】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
W 基板
20 基板保持部
100 ノズル部
102 導電性の配管
150,152 液受け部
116,118 測定用液体供給部
124 電流計
170 電流計(抵抗計内蔵)
130,160 電位差付与部
170 電位差付与部(抵抗計内蔵)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図8