(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】クリーニング方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241105BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20241105BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/44 J
(21)【出願番号】P 2023506611
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010933
(87)【国際公開番号】W WO2022195785
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越 保信
(72)【発明者】
【氏名】浦野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】野原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】原田 和宏
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/016143(WO,A1)
【文献】特開2014-209633(JP,A)
【文献】国際公開第2007/116768(WO,A1)
【文献】特開2012-216696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に成膜処理を行う処理室をクリーニングする方法であって、
クリーニングガスが供給される前記処理室内をガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差が前記ガス流れ方向下流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差よりも大きくなるように前記処理室内を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後で、前記処理室内に前記クリーニングガスを供給する供給工程と、
を有
し、
前記加熱工程では、前記処理室内の内面に付着した付着物のエッチングレートを、前記処理室内における前記ガス流れ方向下流側よりも前記処理室内における前記ガス流れ方向上流側で低くなるように前記処理室を加熱するクリーニング方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンの温度が前記ガス流れ方向下流側に位置するゾーンの温度よりも低くなるように前記処理室内を加熱する、請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
前記加熱工程では、前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンの温度が前記ガス流れ方向中流側に位置するゾーンの温度よりも低くなるように前記処理室内を加熱する、請求項1又は2に記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記加熱工程では、前記処理室内の内面に付着した付着物のエッチングレートを、前記処理室内における前記ガス流れ方向下流側と前記処理室内における前記ガス流れ方向中流側とで実質的に同じになるように前記処理室を加熱する、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項5】
前記処理室の内面に付着した付着物には、窒化膜が含まれ、
前記クリーニングガスには、ハロゲン元素が含まれている請求項1乃至
4のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項6】
前記処理室の内面に付着した付着物には、SiとNを有する膜が含まれ、
前記クリーニングガスには、フッ素元素が含まれている請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項7】
前記クリーニングガスには、F
2、HF、NF
3及びCF
4からなる群から選択される少なくとも1つ以上が含まれている請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項8】
前記クリーニングガスは、前記処理室の上流側から下流側へ向けて供給される請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項9】
前記処理室の上流側には、クリーニングガスを供給可能なガス供給ノズルが接続されており、
前記クリーニングガスは、前記ガス供給ノズルを通して前記処理室の上流側に供給される請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項10】
前記処理室には、前記ガス供給ノズルとしての第1ガス供給ノズルよりも前記処理室の下流側に前記クリーニングガスを供給可能な第2ガス供給ノズルが接続されており、
前記クリーニングガスは、前記第1ガス供給ノズルを通して前記処理室の上流側に供給されると共に、前記第2ガス供給ノズルを通して前記第1ガス供給ノズルよりも前記処理室の下流側に供給される請求項
9に記載のクリーニング方法。
【請求項11】
前記第2ガス供給ノズルは、前記処理室の上流側から下流側へ向けて延びる部分と、該延びる部分に延びる方向に間隔をあけて形成された複数の噴射口と、を有しており、
前記クリーニングガスは、第2ガス供給ノズルの延びる部分から複数の噴射口を通して前記処理室に供給される請求項
10に記載のクリーニング方法。
【請求項12】
前記供給工程の後で、第1元素を含む第1ガスと第2元素を含む第2ガスとを供給して、前記処理室の内面に前記第1元素の比率が前記成膜処理で基板に形成される膜の前記第1元素の比率以上となる膜を形成するプリコート処理を行うプリコート工程を、更に有する請求項1乃至
11のいずれか一項に記載のクリーニング方法。
【請求項13】
前記プリコート処理を行うときの前記処理室内の圧力を、前記成膜処理を行うときの前記処理室内の圧力よりも低くする請求項
12に記載のクリーニング方法。
【請求項14】
処理室内に基板を搬入する搬入工程と、
前記処理室内を加熱し、前記処理室内に処理ガスを供給して前記基板上に膜を形成する成膜処理を行う成膜工程と、
前記処理室内から処理後の前記基板を搬出する搬出工程と、
クリーニングガスが供給される前記処理室内を前記クリーニングガスのガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差が前記ガス流れ方向下流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差よりも大きくなるように前記処理室内を加熱し、加熱された前記処理室内に前記クリーニングガスを供給して前記処理室の内面に付着した膜形成材料を含む付着物を除去する除去工程と、
を有
し、
前記除去工程では、前記処理室内の内面に付着した付着物のエッチングレートを、前記処理室内における前記ガス流れ方向下流側よりも前記処理室内における前記ガス流れ方向上流側で低くなるように前記処理室を加熱する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記処理室内にクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記処理室内を前記クリーニングガスのガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分けて各ゾーンを個別に加熱可能な加熱部と、
前記加熱部、前記処理ガス供給系及び前記クリーニングガス供給系を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記処理室内の内面に付着した付着物のエッチングレートを、前記処理室内における前記ガス流れ方向下流側よりも前記処理室内における前記ガス流れ方向上流側で低くなり且つ前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差が前記ガス流れ方向下流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差よりも大きくなるように前記処理室内を加熱するよう前記加熱部を制御可能に構成され、且つ、加熱された前記処理室内に前記クリーニングガスを供給するよう前記クリーニングガス供給系を制御可能に構成されている、
基板処理装置。
【請求項16】
コンピュータに、
クリーニングガスが供給される処理室内をガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差が前記ガス流れ方向下流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差よりも大きくなるように前記処理室内を加熱させる加熱手順と、
前記加熱手順で
は、前記処理室内の内面に付着した付着物のエッチングレートを、前記処理室内における前記ガス流れ方向下流側よりも前記処理室内における前記ガス流れ方向上流側で低くなるように前記処理室を加熱し、加熱された前記処理室内に前記クリーニングガスを供給する供給手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリーニング方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、処理室内の基板に対して原料ガスや反応ガスを供給し、基板上に膜を形成する成膜処理が行われることがある。成膜処理を行うと、処理室の内面に膜形成材料を含む付着物が付着することがある。そのため、成膜処理を行った後、基板を処理する処理室内へクリーニングガスを供給して前記処理室内をクリーニングする方法が知られている(例えば、特開2007-13205号公報及び特開2012-216696号公報参照)。
【発明の概要】
【0003】
ところで、クリーニング後の成膜処理では、基板毎の処理が不均一になることがある。
【0004】
本開示の目的は、クリーニング後の基板処理工程において、基板毎の処理を均一に近づけられる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
基板に成膜処理を行う処理室をクリーニングする方法であって、
クリーニングガスが供給される処理室内をガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、前記処理室内において前記ガス流れ方向上流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差が前記ガス流れ方向下流側に位置するゾーンと該ゾーンに隣接するゾーンとの間の温度差よりも大きくなるように前記処理室内を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後で、前記処理室内に前記クリーニングガスを供給する供給工程と、
を有するクリーニング方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、クリーニング後の基板処理工程において、基板毎の処理を均一に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示される処理炉におけるクリーニングガスの流れを示す図である。
【
図3】
図1に示される処理炉において第2ノズルから処理室内にクリーニングガスが供給される状態を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る基板処理装置の制御部の構成を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。
【
図6】比較例の基板処理装置において処理室内の累積膜厚と膜厚変動率の関係を示すグラフである。
【
図7】実施例の基板処理装置において処理室内の累積膜厚と膜厚変動率の関係を示すグラフである。
【
図8】本開示の他の実施形態に係る基板処理装置に含まれる処理炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
<基板処理装置>
図1は、本実施形態に係る基板処理装置10を示す図である。この基板処理装置10は、半導体装置の製造に使用される。具体的には、本実施形態の基板処理装置10は、バッチ式縦型熱処理装置として構成されている。
【0010】
本実施形態の基板処理装置10は、
図1に示されるように、処理炉20を備えている。この処理炉20は、処理室30と、処理ガス供給系40と、クリーニングガス供給系50と、加熱部としてのヒータ60と、制御部としてのコントローラ70とを備えている。
【0011】
(処理室)
処理炉20は、
図1に示されるように、処理容器としての反応管32を備えている。この反応管32は、処理炉20の上下方向を軸方向(すなわち、管軸方向)として処理炉20に設置されている。また、反応管32は、内管34と、外管36と、を有している。
【0012】
内管34は、筒状(本実施形態では円筒状)に形成されている。この内管34の内部空間は、処理室30を構成している。処理室30は、基板としてのウエハ200を処理する。この処理室30は、ウエハ200を後述するボート148によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で保持可能な基板保持具の一例であるボート148を収容可能に構成されている。
【0013】
また、内管34は、耐熱性材料で形成されている。内管34を構成する材料としては、例えば、石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)等が挙げられる。
【0014】
外管36は、上端が閉塞された筒状(本実施形態では円筒状)に形成されている。この外管36は、内管34の径方向外側に該内管34を囲うように配置されている。また、外管36は、内管34と同心円状に配置されている。そして、
図1に示されるように、内管34と外管36との間には、隙間が形成されている。
【0015】
また、外管36は、耐熱性材料で形成されている。外管36を構成する材料としては、例えば、石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)等が挙げられる。なお、本実施形態では、内管34と外管36は同じ耐熱材料で形成されているが、本開示はこの構成に限定されない。
【0016】
外管36の下方には、外管36と同心円状にマニホールド38が設けられている。このマニホールド38は、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。また、マニホールド38は、内管34と外管36とに係合して、内管34と外管36を支持している。また、マニホールド38を構成する材料としては、例えば、ニッケル合金やステンレス等の金属材料、あるいは、石英やSiC等の耐熱性材料が挙げられる。なお、マニホールド38と外管36との間には、図示しないシール部材としてのOリングが設けられている。また、マニホールド38が処理炉20の図示しない支持部に支持されることにより、反応管32は、上下方向を軸方向として垂直に据え付けられた状態となっている。
【0017】
(処理ガス供給系)
処理ガス供給系40は、処理室内に処理ガス(原料ガス)を供給するように構成されている。この処理ガス供給系40は、第1処理ガス供給系42と、第2処理ガス供給系44と、を有している。
【0018】
第1処理ガス供給系42は、少なくとも
図1に示す、第1ガス供給ノズルとしてのノズル80と、ガス供給管90と、バルブ100と、MFC110と、バルブ120とで構成されている。なお、
図1に示す、第2ガス供給ノズルとしてのノズル81と、ガス供給管91と、バルブ101と、MFC111と、バルブ121とを第1処理ガス供給系42に加えてもよい。更に、第1処理ガス供給源130を第1処理ガス供給系42に加えてもよい。
【0019】
ノズル80は、マニホールド38の周壁に接続されており、処理室30内に連通している。このため、第1処理ガスがノズル80を介して処理室30内に供給されるようになっている。このノズル80の第1処理ガスの流れ方向上流端には、ガス供給管90が接続されている。このガス供給管90には、第1処理ガスの流れ方向上流側から順に、第1処理ガス供給源130、バルブ120、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)110及びバルブ100が設けられている。なお、ノズル80は、本開示の第1ノズルの一例である。
【0020】
ノズル81は、マニホールド38の周壁を貫通し、処理室30の下側から上側へ向けて延びて処理室30内に連通している。具体的には、ノズル81は、マニホールド38の周壁を貫通して水平方向に延び、途中で折れ曲がって反応管32の軸方向に沿って処理室30の下側から上側へ延びるL字形状とされている。また、ノズル81の処理室30の下側から上側へ延びる垂直部分81Aには、
図3に示されるように、垂直部分81Aの延びる方向(本実施形態では、反応管32の軸方向)に間隔をあけて複数の噴射口81Bが設けられている。ノズル81に供給された第1処理ガスは、複数の噴射口81Bから処理室30内に供給されるようになっている。ここで、噴射口81Bは、垂直部分81Aの処理室30における少なくとも中ゾーン30B及び上ゾーン30Aに対応する部分にそれぞれ形成されているため、第1処理ガスを処理室30の中ゾーン30B及び上ゾーン30Aに直接供給することができる。ノズル81の第1処理ガスの流れ方向上流端には、ガス供給管91が接続されている。このガス供給管91には第1処理ガスの流れ方向上流側から順に、第1処理ガス供給源130、バルブ121、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)111及びバルブ101が設けられている。なお、ノズル81は、本開示の第2ノズルの一例である。なお、本開示において、ノズル81は必ずしも設ける必要はない。ノズル81を設けて、ノズル81から、第1処理ガスを供給することにより、ウエハ200毎の処理均一性を向上させることができる。
【0021】
MFC110、バルブ100及びバルブ120、並びに、MFC111、バルブ101及びバルブ121は、それぞれ後述するコントローラ70に電気的に接続されている(
図4参照)。コントローラ70は、処理室30内に供給される第1処理ガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC110、バルブ100及びバルブ120、並びに、MFC111、バルブ101及びバルブ121をそれぞれ制御するように構成されている。
【0022】
第2処理ガス供給系44は、少なくとも
図1に示す、第1ガス供給ノズルとしてのノズル82と、ガス供給管92と、バルブ102と、MFC112と、バルブ122で構成される。また、第2ガス供給ノズルとしてのノズル83と、ガス供給管93と、バルブ103と、MFC113と、バルブ123とを第2処理ガス供給系44に加えてもよい。更に、第2処理ガス供給源131を第2処理ガス供給系44に加えてもよい。
【0023】
ノズル82は、マニホールド38の周壁に接続されており、処理室30内に連通している。このため、第2処理ガスがノズル82を介して処理室30内に供給されるようになっている。このノズル82の第2処理ガスの流れ方向上流端には、ガス供給管92が接続されている。このガス供給管92には、第2処理ガスの流れ方向上流側から順に、第2処理ガス供給源131、バルブ122、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)112及びバルブ102が設けられている。なお、ノズル82は、本開示の第1ノズルの一例である。
【0024】
ノズル83は、マニホールド38の周壁を貫通し、処理室30の下側から上側へ向けて延びて処理室30内に連通している。具体的には、ノズル83は、マニホールド38の周壁を貫通して水平方向に延び、途中で折れ曲がって反応管32の軸方向に沿って処理室30の下側から上側へ延びるL字形状とされている。また、ノズル83の処理室30の下側から上側へ延びる垂直部分83Aには、
図3に示されるように、垂直部分83Aの延びる方向(本実施形態では、反応管32の軸方向)に間隔をあけて複数の噴射口83Bが設けられている。ノズル83に供給された第2処理ガスは、複数の噴射口83Bから処理室30内に供給されるようになっている。ここで、噴射口83Bは、垂直部分83Aの処理室30における少なくとも中ゾーン30B及び上ゾーン30Aに対応する部分にそれぞれ形成されているため、第1処理ガスを処理室30の中ゾーン30B及び上ゾーン30Aに直接供給することができる。ノズル83の第2処理ガスの流れ方向上流端には、ガス供給管93が接続されている。このガス供給管93には第2処理ガスの流れ方向上流側から順に、第2処理ガス供給源131、バルブ123、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)113及びバルブ103が設けられている。
なお、ノズル83は、本開示の第2ノズルの一例である。また、本開示において、ノズル83は、かならずしも設ける必要は無い。ノズル83を設けて、ノズル83から第2処理ガスを供給することにより、ウエハ200毎の処理均一性を向上させることが可能となる。
【0025】
MFC112、バルブ102及びバルブ122、並びに、MFC113、バルブ103及びバルブ123は、それぞれコントローラ70に電気的に接続されている(
図4参照)。コントローラ70は、処理室30内に供給される第2処理ガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC112、バルブ102及びバルブ122、並びに、MFC113、バルブ103及びバルブ123をそれぞれ制御するように構成されている。
【0026】
(クリーニングガス供給系)
クリーニングガス供給系50は、処理室30内にクリーニングガスを供給するように構成されている。このクリーニングガス供給系50は、
図1に示されるように、第1クリーニングガス供給系52と、第2クリーニングガス供給系54とを有している。
【0027】
第1クリーニングガス供給系52は、主にノズル80と、ガス供給管94と、バルブ104と、MFC114と、バルブ124で構成される。また、ノズル81と、ガス供給管95と、バルブ105と、MFC115と、バルブ125とを第1クリーニングガス供給系52に加えてもよい。更に、クリーニングガス供給源132を第1クリーニングガス供給系52に加えてもよい。
【0028】
図1に示されるように、ガス供給管90のバルブ100とノズル80との間には、処理室30内にクリーニングガスを供給するためのガス供給管94が接続されている。ガス供給管94には、クリーニングガスの流れ方向上流側から順に、クリーニングガス供給源132、バルブ124、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)114、及びバルブ104が設けられている。
【0029】
ガス供給管91のバルブ101とノズル81との間には、処理室30内にクリーニングガスを供給するためのガス供給管95が接続されている。ガス供給管95には、クリーニングガスの流れ方向上流側から順に、クリーニングガス供給源132、バルブ125、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)115、及びバルブ105が設けられている。
【0030】
MFC114、バルブ104及びバルブ124、並びに、MFC115、バルブ105及びバルブ125は、それぞれコントローラ70に電気的に接続されている(
図4参照)。コントローラ70は、処理室30内に供給されるクリーニングガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC114、バルブ104及びバルブ124、並びに、MFC115、バルブ105及びバルブ125をそれぞれ制御するように構成されている。
【0031】
第2クリーニングガス供給系54は、少なくともノズル82と、ガス供給管96と、バルブ106と、MFC116と、バルブ126とで構成されている。また、ノズル83と、ガス供給管97と、バルブ107と、MFC117と、バルブ127とを第2クリーニングガス供給系54に加えてもよい。更に、クリーニングガス供給源132を第2クリーニングガス供給系54に加えてもよい。
【0032】
図1に示されるように、ガス供給管92のバルブ102とノズル82との間には、処理室30内にクリーニングガスを供給するためのガス供給管96が接続されている。ガス供給管96には、クリーニングガスの流れ方向上流側から順に、クリーニングガス供給源132、バルブ126、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)116、及びバルブ106が設けられている。
【0033】
ガス供給管93のバルブ103とノズル83との間には、処理室30内にクリーニングガスを供給するためのガス供給管97が接続されている。ガス供給管97には、クリーニングガスの流れ方向上流側から順に、クリーニングガス供給源132、バルブ127、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)117、及びバルブ107が設けられている。
【0034】
MFC116、バルブ106及びバルブ126、並びに、MFC117、バルブ107及びバルブ127は、それぞれコントローラ70に電気的に接続されている(
図4参照)。コントローラ70は、処理室30内に供給されるクリーニングガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC116、バルブ106及びバルブ126、並びに、MFC117、バルブ107及びバルブ127をそれぞれ制御するように構成されている。
【0035】
この様な構成により、クリーニングガスを、処理室30の上流側(下側)から下流側(上側)に向けて供給する。
【0036】
なお、本実施形態では、複数のクリーニングガス供給系で、一つのクリーニングガス供給源を使用しているが、本開示はこの構成に限定されず、クリーニングガス供給系毎に一つのクリーニングガス供給源を使用してもよい。
【0037】
(不活性ガス供給系)
また、処理炉20は、不活性ガス供給系58を備えている。この不活性ガス供給系58は、処理室30内に不活性ガスを供給するように構成されている。
【0038】
不活性ガス供給系58は、少なくともノズル82と、ガス供給管98と、バルブ108と、MFC118と、バルブ128とで構成される。ノズル83と、ガス供給管99と、バルブ109と、MFC119と、バルブ129とを不活性ガス供給系58に加えてもよい。更に、不活性ガス供給源133を不活性ガス供給系58に加えてもよい。
【0039】
図1に示されるように、ガス供給管92のバルブ102とノズル82との間には、処理室30内に不活性ガスを供給するためのガス供給管98が接続されている。ガス供給管98には、不活性ガスの流れ方向上流側から順に、不活性ガス供給源133、バルブ128、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)118、及びバルブ108が設けられている。
【0040】
ガス供給管93のバルブ103とノズル83との間には、処理室30内に不活性ガスを供給するためのガス供給管99が接続されている。ガス供給管99には、不活性ガスの流れ方向上流側から順に、不活性ガス供給源133、バルブ129、ガス流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)119、及びバルブ109が設けられている。
【0041】
MFC118、バルブ108及びバルブ128、並びに、MFC119、バルブ109及びバルブ129は、それぞれコントローラ70に電気的に接続されている(
図4参照)。コントローラ70は、処理室30内に供給されるクリーニングガスの流量が、それぞれ所定のタイミングで所定の流量となるように、MFC118、バルブ108及びバルブ128、並びに、MFC119、バルブ109及びバルブ129をそれぞれ制御するように構成されている。
【0042】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスを用いてもよい。
【0043】
(排気系)
また、処理炉20は、
図1に示されるように、排気系140を備えている。この排気系140は、処理室30内の雰囲気を排気するように構成されている。また、排気系140は、主に排気管141と、圧力センサ142と、APCバルブ143、真空ポンプ144とで構成されている。
【0044】
排気管141は、マニホールド38の周壁に接続されている。また、排気管141は、内管34と外管36との間の隙間によって形成される筒状空間37の下端部に配置されており、筒状空間37と連通している。この構成により、排気管141は、筒状空間37を介して処理室30内の雰囲気を排気するようになっている。
【0045】
排気管141のマニホールド38との接続側と反対側には、圧力検出器としての圧力センサ142及び圧力調整装置としてのAPCバルブ143を介して真空排気装置としての真空ポンプ144が設けられている。
【0046】
真空ポンプ144は、処理室30内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう排気するように構成されている。APCバルブ143及び圧力センサ142には、コントローラ70が電気的に接続されている。コントローラ70は、処理室30内の圧力が所望の圧力となるように、圧力センサ142により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ143を所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0047】
上述のように構成されることで、第1処理ガス供給系から供給された第1処理ガス、第2処理ガス供給系から供給された第2処理ガス、クリーニングガス供給系から供給されたクリーニングガス、及び不活性ガス供給系から供給された不活性ガスは、それぞれ内管34の内部空間(処理室30内)を上昇し、内管34の上端開口から筒状空間37に流出し、筒状空間37を流下した後、排気管141から排気される(
図2参照)。
【0048】
マニホールド38の下方には、マニホールド38の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ146が設けられている。このシールキャップ146は、マニホールド38の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。また、シールキャップ146は、円盤状に形成されている。シールキャップ146を構成する材料としては、例えばステンレス等の金属材料が挙げられる。また、シールキャップ146の上面には、マニホールド38の下端と当接するシール部材としての図示しないOリングが設けられている。
【0049】
シールキャップ146上にはボート148を支持する支持台149が設けられている。支持台149は、耐熱性材料で構成されている。支持台149を構成する材料としては、例えば石英や炭化シリコン(SiC)等が挙げられる。この支持台149は、ヒータ60からの熱をマニホールド38側に伝えにくくする断熱部として機能する。
【0050】
上述したようにボート148は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持可能に構成されている。ボート148は、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料により構成されている。
【0051】
また、シールキャップ146の下側には、ボート148を回転させる図示しない回転機構及びボート148を昇降させる図示しないボートエレベータが設けられている。回転機構は、回転動作により、処理室30内でボート148を回転させることができる。また、ボートエレベータは、昇降動作により、ボート148を処理室30内に出し入れさせることができる。
【0052】
(ヒータ)
加熱部としてのヒータ60は、筒状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。反応管32の径方向外側に該反応管32を囲うように配置されている。また、ヒータ60は、反応管32と同心円状に配置されている。
【0053】
ヒータ60は、
図1に示されるように、処理室30内をクリーニングガスのガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分けて各ゾーンを個別に加熱可能に構成されている。具体的には、本実施形態のヒータ60は、軸方向に3つに分割されており、上から順にヒータ部60A、ヒータ部60B、ヒータ部60Cとされている。これらのヒータ部60A、60B、60Cはそれぞれコントローラ70によって個別に制御されている。具体的には、コントローラ70は、各ヒータ部に設けられた各ヒータ素線への電力供給を制御(例えば、サイリスタのオンオフ制御)することで、各ヒータ部の発熱温度を調節可能に構成されている。そして、処理室30のヒータ部60Aによって加熱される範囲が処理室30の上ゾーン30Aであり、処理室30のヒータ部60Bによって加熱される範囲が処理室30の中ゾーン30Bであり、処理室30のヒータ部60Cによって加熱される範囲が処理室30の下ゾーン30Cである。なお、上ゾーン30Aは処理室30のクリーニングガスの流れ方向下流側に位置するゾーンであり、中ゾーン30Bは処理室30のクリーニングガスの流れ方向中流側に位置するゾーンであり、下ゾーン30Cは処理室30のクリーニングガスの流れ方向上流側に位置するゾーンである。ここで、処理室30内におけるガス流れ方向の下流側とは、処理室30内の雰囲気を排気する排気系に近い側を意味し、ガス流れ方向の上流側とは、下流側とは反対側を意味する。また、ガス流れ方向の中流側とは、下流側と上流側の中間付近を意味する。即ち、ガス流れの上流側、中流側、下流側のそれぞれと、ヒータ60の各ゾーンの位置に一致しなくてもよい。
【0054】
図1に示されるように、筒状空間37には、反応管32内の温度を検出するための温度検出器としての温度センサが設置されている。具体的には、筒状空間37のヒータ部60Aによって加熱される範囲に温度センサ62Aが設置され、筒状空間37のヒータ部60Bによって加熱される範囲に温度センサ62Bが設置され、筒状空間37のヒータ部60Cによって加熱される範囲に温度センサ62Cが設置されている。
【0055】
ヒータ部60A、ヒータ部60B、ヒータ部60C、温度センサ62A、温度センサ62B及び温度センサ62Cには、コントローラ70が電気的に接続されている。このコントローラ70は、処理室30内の温度が所望の温度分布となるように、各温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ60の各ヒータ部への電力供給を所望のタイミングにて制御するように構成されている。
【0056】
(コントローラ)
コントローラ70は、コンピュータとして構成されている。このコンピュータは、
図4に示されるように、CPU(Central Processing Unit)121A、RAM(Random Access Memory)121B、記憶装置73、I/Oポート74を備えている。
【0057】
RAM72、記憶装置73、I/Oポート74は、内部バス75を介して、CPU71とデータ交換可能なように構成されている。コントローラ70には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置76が接続されている。
【0058】
記憶装置73は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置73内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。
【0059】
プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ70に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。
【0060】
本開示においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM72は、CPU71によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0061】
I/Oポート74には、バルブ100~109と、MFC(マスフローコントローラ)110~119と、バルブ120~129と、圧力センサ142と、APCバルブ143と、真空ポンプ144と、ヒータ60のヒータ部60A~60Cと、各温度センサ62A~62C、図示しない回転機構、図示しないボートエレベータ等が接続されている。
【0062】
CPU71は、記憶装置73から制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置76からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置73からプロセスレシピを読み出すように構成されている。
【0063】
CPU71は、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC110~119による各種ガスの流量調整動作、バルブ100~109及びバルブ110~119の開閉動作、APCバルブ143の開閉動作を制御することが可能なように構成されている。また、CPU71は、圧力センサ142に基づくAPCバルブ143による圧力調整動作、真空ポンプ144の起動および停止、各温度センサ62A~62Cに基づくヒータ60(各ヒータ部60A~60C)の温度調整動作を制御することが可能なように構成されている。さらに、CPU71は、ボート回転機構によるボート148の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータによるボート148の昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0064】
コントローラ70は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置77を用意し、この外部記憶装置77を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態のコントローラ70を構成することができる。外部記憶装置としては、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。
【0065】
但し、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置77を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置77を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。記憶装置73や外部記憶装置77は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本開示において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置73単体のみを含む場合、外部記憶装置77単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。
【0066】
また、本実施形態のコントローラ70は、処理室30内においてガス流れ方向上流側に位置するゾーン(下ゾーン30C)と該ゾーンに隣接するゾーン(中ゾーン30B)との間の温度差(T2)がガス流れ方向下流側に位置するゾーン(上ゾーン30A)と該ゾーンに隣接するゾーン(中ゾーン30B)との間の温度差(T1)よりも大きくなるように処理室30内を加熱するようヒータ60の各ヒータ部60A~60Cを制御可能に構成されている。そして、コントローラ70は、加熱された処理室30内の温度状態(T2>T1の温度状態)を維持しながら、処理室30内にクリーニングガスを供給するようクリーニングガス供給系50を制御可能に構成されている。
【0067】
<基板処理工程>
次に、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200上に膜を形成する成膜処理を行う成膜工程と、処理室30の内面に付着した膜形成材料を除去する除去工程としてのクリーニング工程と、処理室30の内面に所定の厚さの膜を形成するプリコート工程と、を順に実施する基板処理工程について、
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ70により制御される。
【0068】
(搬入工程)
搬入工程S210では、処理室30内にウエハ200を搬入する。具体的に説明すると、まず、複数枚のウエハ200をボート148に装填(ウエハチャージ)する。そして、
図1に示されるように、複数枚のウエハ200を保持したボート148を、図示しないボートエレベータによって上昇させて処理室30内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ146は図示しないOリングを介してマニホールド38の下端をシールした状態となる。
【0069】
搬入工程S210を実施する際は、処理室30内に不活性ガス(本実施形態では窒素ガス)を供給して処理室30内をパージする。具体的には、バルブ108及びバルブ128を開くことで、不活性ガス供給源133からガス供給管98に供給された不活性ガスが、MFC118にて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管98を経由して、ノズル82から処理室30内に供給される。また、バルブ109及びバルブ129を開くことで、不活性ガス供給源133からガス供給管99に供給された不活性ガスが、MFC119にて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管99を経由して、ノズル83から処理室30内に供給される。このようにして処理室30内に不活性ガスが供給されて、処理室30内がパージされる。なお、処理室30内への不活性ガスの供給は、基板処理工程の全工程が終了するまで継続する。
【0070】
(成膜工程)
成膜工程S220では、処理室内を加熱し、処理室30内に処理ガスを供給してウエハ200上に膜を形成する成膜処理を行う。具体的に説明すると、まず、処理室30内が所定の成膜圧力(真空度)となるように真空ポンプ144によって真空排気する。この際、処理室30内の圧力は圧力センサ142で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ143がフィードバック制御される。また、処理室30内が所定の温度となるようにヒータ60によって加熱する。この際、処理室30内の温度が所定の温度(成膜温度)となるように、温度センサ62A~62Cがそれぞれ検出した温度情報に基づきヒータ60のヒータ部60A~60Cへの電力供給がフィードバック制御される(S221)。続いて、図示しない回転機構によるボート148及びウエハ200の回転を開始する。
【0071】
処理室30内が所定の成膜温度、所定の成膜圧力に維持された状態で、第1処理ガス及び第2処理ガスの処理室30内への供給を開始する(S222)。具体的には、バルブ100及びバルブ120を開くことで第1処理ガス供給源130からガス供給管90内に供給された第1処理ガスは、MFC110にて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管90を通り、ノズル80から処理室30内に供給される。また、バルブ101及びバルブ121を開くことで第1処理ガス供給源130からガス供給管91内に供給された第1処理ガスは、MFC111にて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管91を通り、ノズル81から処理室30内に供給される。このようにして処理室30内に第1ガスが供給される。
一方、バルブ102及びバルブ122を開くことで第2処理ガス供給源131からガス供給管92内に供給された第2処理ガスは、MFC112にて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管92を通り、ノズル82から処理室30内に供給される。また、バルブ103及びバルブ123を開くことで第2処理ガス供給源131からガス供給管93内に供給された第2処理ガスは、MFC113にて所定の流量となるように制御された後、ガス供給管93を通り、ノズル83から処理室30内に供給される。
【0072】
このとき、処理室30内へ供給される不活性ガスは、成膜ガス(第1処理ガス及び第2処理ガス)を希釈する希釈ガスとして、或いは処理室30内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。不活性ガスの供給流量を制御することで、成膜ガス(第1処理ガス及び第2処理ガス)の濃度や拡散速度を制御することができる。
【0073】
処理室30内に供給された成膜ガス(第1処理ガス及び第2処理ガス)は、内管34内(処理室30内)を上昇し、内管34の上端開口から筒状空間37に流出する。そして成膜ガスは、筒状空間37を流下した後、排気管141から排気される。成膜ガスは、処理室30内を通過する際にウエハ200の表面と接触する。この際、熱CVD反応によってウエハ200表面上に薄膜が堆積(デポジション)される。予め設定された処理時間が経過し、ウエハ200上に所定の膜厚の薄膜が成膜されたら、バルブ100~103並びにバルブ120~123をそれぞれ閉じて、処理室30内への成膜ガスの供給を停止する。
【0074】
そして、バルブ108及びバルブ128並びにバルブ109及びバルブ129を開いたままの状態とし、処理室30内への不活性ガスの供給を継続しつつ、処理室30内を排気することで、処理室30内をパージする。処理室30内の雰囲気が不活性ガスに置換されたら、APCバルブ143の開度を調整して処理室30内の圧力を常圧に復帰させる。また、ヒータ60への電力供給を停止し、処理室30内の温度を所定の温度(ウエハ搬出温度)に降温させる(S223)。
【0075】
本実施形態に係る成膜工程(S220)の処理条件としては、
成膜温度:600℃~850℃(好ましくは650℃~800℃近傍)
第1処理ガスの供給流量:10sccm~2000sccm(好ましくは50sccm~200sccm)
第2処理ガスの供給流量:100sccm~10000sccm(好ましくは500sccm~2000sccm)
成膜圧力:1Pa~2666Pa(好ましくは133Pa未満)
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することで、ウエハ200上に例えば10nm~200nmの膜厚の膜(窒化シリコン膜)が形成される。
【0076】
なお、第1処理ガスとしては、シリコン含有ガス等を用いてもよい。シリコン含有ガスとしては、例えば、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガスが挙げられる。
【0077】
なお、第2処理ガスとしては、窒素含有ガス等を用いてもよい。窒素含有ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガスが挙げられる。
【0078】
(搬出工程)
搬出工程S230では、処理室30内から処理後のウエハ200を搬出する。具体的に説明すると、ウエハ200が成膜処理された後、回転機構によるボート148及びウエハ200の回転を停止させる。次に、ボートエレベータによりシールキャップ146を下降させてマニホールド38の下端を開口させるとともに、処理済のウエハ200を保持したボート148を反応管32の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウエハ200をボート148から脱装(ウエハディスチャージ)する。
【0079】
なお、成膜工程(S220)では、成膜ガスによってウエハ200上に膜(窒化シリコン膜)を形成するが、この成膜ガスによって内管34の内面(言い換えると、処理室30の内面)等にも膜が形成されてしまう。すなわち、処理室30の内面に膜形成材料が付着してしまう。このため、成膜工程を繰り返した場合、処理室30の内面に付着した付着物(膜形成材料)の厚みが増加する。ここで、付着物の厚みが所定の厚みに到達した場合、後述するクリーニング工程S260を実施する。具体的には、成膜工程を1回実行する毎に増える膜厚を予め求めておき、成膜工程を複数回実行後の膜厚(累積膜厚)が所定の厚みに到達しているかを判定する(S240)。S240では、成膜工程を複数回実行後の膜厚が所定の厚みに到達していると判定した場合、クリーニング工程S260を実施する。
【0080】
(空ボート搬入工程)
空ボート搬入工程S250では、ウエハ200を装填していない空のボート148、すなわちウエハ200を装填していないボート148を、ボートエレベータによって上昇させて処理室30内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ146は、Oリングを介してマニホールド38の下端をシールした状態となる。なお、空のボート148は、製品ウエハではない、ダミーウエハ(不図示)が装填された状態であってもよい。
【0081】
(クリーニング工程)
クリーニング工程S260では、クリーニングガスが供給される処理室30内をクリーニングガスのガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、処理室30内においてガス流れ方向上流側に位置する下ゾーン30Cと下ゾーン30Cに隣接する中ゾーン30Bとの間の温度差T2がガス流れ方向下流側に位置する上ゾーン30Aと上ゾーン30Aに隣接する中ゾーン30Bとの間の温度差T1よりも大きくなるように処理室30内を加熱し、加熱された処理室30内の温度状態を維持しながら、処理室30内にクリーニングガスを供給して処理室30の内面に付着した膜形成材料を含む付着物を除去する。具体的に説明すると、まず、処理室30内が所定のクリーニング圧力(真空度)となるように真空ポンプ144によって真空排気すると共に処理室30内が所定のクリーニング温度となるようにヒータ60によって加熱する(S261)。なお、S261は、本開示の加熱工程の一例である。
【0082】
ここで、ヒータ60による処理室30内の加熱方法について詳述する。
まず、処理室30内をクリーニングガスのガス流れ方向に3つのゾーンに区分け、処理室30内の下ゾーン30Cと中ゾーン30Bとの間の温度差T2が上ゾーン30Aと中ゾーン30Bとの間の温度差T1よりも大きくなるように処理室30内を加熱する。具体的には、上ゾーン30Aに対応するヒータ60のヒータ部60Aの発熱温度、中ゾーン30Bに対応するヒータ60のヒータ部60Bの発熱温度、及び、下ゾーン30Cに対応するヒータ60のヒータ部60Cの発熱温度を調節して、温度差T2が温度差T1よりも大きくなるように処理室30を加熱する。なお、温度差T2は、温度差T1の5~50倍に設定することが好ましい。
また、処理室30の加熱時には、処理室30内の下ゾーン30Cの温度が上ゾーン30Aの温度よりも低くなるように処理室30内を加熱してもよい。
さらに、処理室30の加熱時には、処理室30内の下ゾーン30Cの温度が中ゾーン30Bの温度よりも低くなるように処理室30内を加熱してもよい。即ち、処理室30内において、ガス流れ方向の上流側に位置するゾーンの温度が、ガス流れ方向の下流側に位置するゾーンの温度よりも低くなるように処理室30内を加熱する。また、処理室30内において、ガス流れ方向の上流側に位置するゾーンの温度が、ガス流れ方向の中流側に位置するゾーンの温度よりも低くなるように処理室30内を加熱してもよい。
【0083】
続いて、回転機構によるボート148の回転を開始する。なお、本開示では、ボート148は回転させなくてもよい。
【0084】
次に、加熱された処理室30内の温度状態(温度差T2が温度差T1よりも大きい状態)を維持しながら、処理室30内にクリーニングガスを供給して処理室30の内面に付着した膜形成材料を含む付着物を除去する。具体的には、処理室30内を所定のクリーニング温度及び所定のクリーニング圧力にした状態を維持しながら、処理室30内にクリーニングガスの供給を開始する。バルブ104及びバルブ124並びにバルブ105及びバルブ125を開くことでクリーニングガス供給源132からガス供給管90及びガス供給管91内にそれぞれ供給されたクリーニングガスは、MFC114及びMFC115にてそれぞれ所定の流量となるように制御された後、ガス供給管94及びガス供給管91を経由して、ノズル80及びノズル81から処理室30内にそれぞれ供給される。これと同時に、バルブ106及びバルブ126並びにバルブ107及びバルブ127を開くことでクリーニングガス供給源132からガス供給管96及びガス供給管97内にそれぞれ供給されたクリーニングガスは、MFC116及びMFC117にてそれぞれ所定の流量となるように制御された後、ガス供給管96及びガス供給管97を経由して、ノズル82及びノズル83から処理室30内にそれぞれ供給される(S262)。なお、S262は、本開示の供給工程の一例である。
【0085】
クリーニングガスの供給量は、処理室30の内面に付着した付着物のエッチングレート(エッチング速度)が、処理室30内におけるガス流れ方向下流側(言い換えると、処理室30の上側(上ゾーン30A))よりも処理室30内におけるガス流れ方向上流側(言い換えると、処理室30の下側(下ゾーン30C))で低くなるように制御してもよい。具体的には、ガス流れ方向上流側からクリーニングガスを処理室30に供給するノズル80及びノズル82に対して、処理室30のガス流れ方向中流側(言い換えると、処理室30の中側(中ゾーン30B))や上流側からクリーニングガスを処理室30に供給するノズル81及びノズル83のクリーニングガスの供給割合を調整することで、付着物のエッチングレートを処理室30の上側よりも処理室30処理室30の下側で低くすることが可能になる。また、クリーニングガスの供給量は、付着物のエッチングレートを処理室30の上側と処理室30の中側とで実質的に同じにしてもよい。
【0086】
このとき、処理室30内へ供給される不活性ガスは、クリーニングガスを希釈する希釈ガスとして、或いは処理室30内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。不活性ガスの供給流量を制御することで、クリーニングガスの濃度や拡散速度を制御するこができる。
【0087】
処理室30内に供給されたクリーニングガスは、内管34内(処理室30内)を上昇し、内管34の上端開口から筒状空間37内に流出し、筒状空間37内を流下した後、排気管141から排気される。クリーニングガスは、処理室30内を通過する際に、処理室30内に累積した付着物(本実施形態では、窒化膜等。ここで窒化膜は、例えば、窒化シリコン膜等)と接触し、熱化学反応により付着物を除去する。すなわち、加熱されて活性化したクリーニングガスはエッチング種となり、処理室30内に累積した付着物としての窒化シリコン膜等をエッチングして除去する。なお、本実施形態では、処理室30内へクリーニングガスを供給するノズルとして、処理室30内へ成膜ガスを供給するノズル80~84を用いている。この構成によれば、ノズル80~84内に付着した窒化シリコン膜も効率的に除去することができる。予め設定された処理時間が経過し、窒化シリコン膜等の除去が完了したら、バルブ104~107並びにバルブ124~127を閉じ、処理室30内へのクリーニングガスの供給を停止する。
【0088】
そして、バルブ108及びバルブ128並びにバルブ109及びバルブ129を開いたままの状態とし、処理室30内への不活性ガスの供給を継続しつつ、処理室30内を排気することで、処理室30内をパージする(S263)。
【0089】
なお、本実施形態に係るクリーニング工程(S260)の処理条件としては、
クリーニング温度:300℃~500℃(好ましくは350℃~450℃近傍)
クリーニングガス供給流量:1sccm~20000sccm(好ましくは1sccm~10000sccm
クリーニング圧力:1Pa~60000Pa(好ましくは5000Pa~20000Pa)
が例示される。
【0090】
なお、クリーニングガスとしては、ハロゲン元素が含まれているガス、具体的には、フッ素元素が含まれているガスを用いることが好ましい。フッ素元素が含まれているガスとしては、例えば、F2、HF、NF3、CF4が挙げられる。なお、クリーニングガスには、F2、HF、NF3、CF4の少なくとも1つ以上が含まれていることが好ましい。本開示では、例として、NF3ガスを用いた例について記す。
【0091】
(プリコート工程)
プリコート工程S270では、処理室30内を加熱し、処理室30内に処理ガスを供給して処理室30の内面に膜を形成するプリコート処理を行う。具体的に説明すると、クリーニング工程S260の終了直後、ウエハ200を装填していない空のボート148が処理室30内に搬入(ボートロード)されたままの状態で、処理室30内が所定のプリコート圧力(真空度)となるように真空ポンプ144によって真空排気すると共に、処理室30内が所定のクリーニング温度となるようにヒータ60によって加熱する(S271)。続いて、回転機構によるボート148の回転を開始する。なお、プリコート温度は、成膜工程S220における成膜温度より低く設定してもよい。
【0092】
そして、第1処理ガスの処理室30内への供給を開始する(S272)。バルブ100及びバルブ120並びにバルブ101及びバルブ121を開くことで第1処理ガス供給源130からガス供給管90及びガス供給管91内に供給された第1処理ガスは、それぞれMFC110及びMFC111にて所定の流量となるように制御された後、ノズル80及びノズル81から処理室30内に供給される。このとき、処理室30内へ供給される不活性ガスは、第1処理ガスを希釈する希釈ガスとして、或いは処理室30内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。
【0093】
処理室30内に供給された第1処理ガスは、内管34内(処理室30内)を上昇し、内管34の上端開口から筒状空間37に流出し、筒状空間37を流下した後、排気管141から排気される。第1処理ガスは、処理室30内を通過する際に処理室30内壁やボート148の表面等と接触する。この際、第1処理ガスとして、DCSガスを用いている場合、これらの表面に1原子層未満から数原子層のシリコン含有層であるシリコン層(Si層)を形成する。このとき、第1処理ガスを供給する際の処理室30内の最大圧力を、成膜工程S220における処理室30内の最大圧力よりも大きくしてもよい。予め設定された処理時間が経過し、シリコン層の形成が完了したら、バルブ100及びバルブ120並びにバルブ101及びバルブ121を閉じ、処理室30内への第1処理ガスの供給を停止する。
【0094】
そして、バルブ108及びバルブ128並びにバルブ109及びバルブ129を開いたままの状態とし、処理室30内への不活性ガスの供給を継続しつつ、処理室30内を排気することで、処理室30内をパージする(S273)。
【0095】
そして、第2処理ガスの処理室30内への供給を開始する(S274)。バルブ102及び122並びにバルブ103及びバルブ123を開くことで第2処理ガス供給源131からガス供給管92及びガス供給管93内に供給された第2処理ガスは、それぞれMFC112及びMFC113にて所定の流量となるように制御された後、ノズル82及びノズル83から処理室30内に供給される。このとき、処理室30内へ供給される不活性ガスは、第2処理ガスを希釈する希釈ガスとして、或いは処理室30内への拡散を促すキャリアガスとして機能する。
【0096】
処理室30内に供給された第2処理ガスは、内管34内(処理室30内)を上昇し、内管34の上端開口から筒状空間37に流出し、筒状空間37を流下した後、排気管141から排気される。第2処理ガスは、処理室30内を通過する際に処理室30の内面やボート148の表面に形成されたシリコン層と接触する。第2処理ガスとして、NH3ガスを用いている場合、シリコン層が窒化され、1原子層未満から数原子層の窒化シリコン層(SiN層)が形成される。このとき、第2処理ガスを供給する際の処理室30内の最大圧力を、成膜工程S220における処理室30内の最大圧力よりも大きくしてもよい。予め設定された処理時間が経過し、窒化シリコン層の窒化が完了したら、バルブ102及び122並びにバルブ103及びバルブ123を閉じ、処理室30内への第2処理ガスの供給を停止する。
【0097】
そして、バルブ108及びバルブ128並びにバルブ109及びバルブ129を開いたままの状態とし、処理室30内への不活性ガスの供給を継続しつつ、処理室30内を排気することで、処理室30内をパージする(S275)。
【0098】
上述したS272~S275を1サイクルとして、このサイクルを1回以上行うことにより、処理室30の内面やボート148の表面に所定の膜厚の窒化シリコン膜(プリコート膜)を形成する(S276)。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。
なお、第1処理ガスとしてシリコン含有ガスを用い、第2処理ガスとして窒素含有ガスを用いている場合であって、プリコート膜に含有される珪素(Si)の比率が、成膜工程S220においてウエハ200上に形成される窒化シリコン膜に含有される珪素(Si)の比率以上となるように、第1処理ガス及び第2処理ガスの供給量を調整してもよい。
【0099】
本実施形態に係るプリコート工程(S270)の処理条件としては、
プリコート温度:600℃~850℃(好ましくは650℃~800℃近傍)
第1処理ガス供給流量:10sccm~2000sccm(好ましくは50sccm~200sccm)
第2処理ガス供給流量:100sccm~10000sccm(好ましくは500sccm~2000sccm)
成膜圧力:1Pa~2666Pa(好ましくは133Pa未満)
が例示される。それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することで、処理室30の内面やボート148の表面に例えば10~100nmの膜厚の窒化シリコン膜(プリコート膜)が形成される。
【0100】
上述のサイクルを所定回数実施し、所定の膜厚の窒化シリコン膜(プリコート膜)が成膜されたら、バルブ108及びバルブ128並びにバルブ109及びバルブ129を開いたままの状態とし、処理室30内への不活性ガスの供給を継続しつつ、処理室30内を排気することで、処理室30内をパージする。処理室30内が不活性ガスに置換されたら、APCバルブ143の開度を調整して処理室30内の圧力を常圧に復帰させる。また、ヒータ60への電力供給を停止し、処理室30内の温度を所定の温度(ボート搬出温度)に降温させる(S277)
【0101】
なお、ここでは、プロコート膜をサイクル処理で形成する例を示したが、これに限るものでは無い。プリコート膜を、第1処理ガスと第2処理ガスとを同時供給するタイミングを有するCVD成膜処理で成膜してもよい。
【0102】
(空ボート搬出工程)
空ボート搬出工程S280では、反応管32の外部に空ボートを搬出する。具体的に説明すると、プリコート工程S270の終了後、回転機構によるボート148の回転を停止させ、ボートエレベータによりシールキャップ146を下降させてマニホールド38の下端を開口させるとともに、空のボート148をマニホールド38の下端から反応管32の外部に搬出(ボートアンロード)させる。その後、上述の搬入工程S210、成膜工程S220が順次実施される。
【0103】
<プログラム>
本開示の一実施形態に係るプログラムは、コンピュータとしてのコントローラ70に、
クリーニングガスが供給される処理室30内をガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、処理室30内においてガス流れ方向上流側に位置するゾーン(下ゾーン30C)と該ゾーンに隣接するゾーン(中ゾーン30B)との間の温度差(T2)がガス流れ方向下流側に位置するゾーン(上ゾーン30A)と該ゾーンに隣接するゾーン(中ゾーン30B)との間の温度差(T1)よりも大きくなるように処理室30内を加熱させる加熱手順と、
加熱手順で加熱された処理室30内の温度状態を維持しながら、該処理室30内にクリーニングガスを供給する供給手順と、
を実行させるプログラムである。
【0104】
次に本実施形態の作用並びに効果について説明する。
クリーニング直後の成膜処理では、ウエハ200に形成された膜の厚み(膜厚)が薄くなる現象(所謂、膜厚ドロップ現象)が生じていた。これはクリーニングで用いられるフッ素含有ガスのフッ素(F)が処理室30内に残留することにより生じる。具体的には、クリーニングガスは、処理室30の内面に付着した付着物と反応して、クリーニングガスの成分が付着物の成分と共に反応管32の外部に排出される。この反応管32内では、付着物の厚みが厚い箇所と薄い箇所があるが、厚みの厚い部分に合わせてクリーニングガスの供給量を調整している。このため、付着物の厚みの薄い箇所では、クリーニング中に、付着物が無くなってクリーニングガスの成分が排出されずに吸着したまま残留したり、クリーニングガスの成分が反応管32内に配置された部材(例えば、ボート148)の表面と反応して、クリーニングガスの成分が反応管32内に配置された部材の表面に残留したりする。この様に反応管32内に残留したクリーニングガスの成分であるフッ素は、ウエハ200への処理(成膜処理)の際に使用される成膜ガス(例えば、DCSガス、NH3ガスの少なくとも片方)と反応する。これにより、ウエハ200に到達する成膜ガスの量が少なくなる。この結果、ウエハ200に成膜される膜の厚みが薄くなる。この膜厚が薄くなる現象は、反応管32の下側から上側へ成膜ガスを供給している際に顕著に現れる。このため、市場では、クリーニング直後の成膜処理において、ウエハ200に膜厚ドロップ現象が生じるのを抑制した生産処理ができることを求められている。言い換えると、ウエハ200毎の処理の均一化が求められている。
このため、本実施形態のクリーニング工程では、処理室30内をガス流れ方向に3つ以上のゾーンに区分け、処理室30内において下ゾーン30Cと隣接する中ゾーン30Bとの間の温度差T2が上ゾーン30Aと隣接する中ゾーン30Bとの間の温度差T1よりも大きくなるように処理室30内を加熱し、その温度状態を維持しながら、処理室30内にクリーニングガスを供給している。これにより、処理室30内の下ゾーン30Cにおけるクリーニング速度(クリーニング量)が上ゾーン30A及び中ゾーン30Bのそれぞれのクリーニング速度(クリーニング量)と比べて、遅くなる。すなわち、処理室30の下ゾーン30Cの温度を下げることで、下ゾーン30Cにおけるクリーニングガスの消費量(反応量・分解量等)を低減することができる。これにより、処理室30の下ゾーン30Cで発生するフッ素元素の量を低減させ、クリーニング後のフッ素元素の残留を抑制可能となる。また、上記温度条件(T2>T1)とすることで、処理室30において中ゾーン30B及び上ゾーン30Aにも安定して未反応のクリーニングガスを供給することが可能となる。これにより、処理室30のガス流れ方向のクリーニング均一性が向上する。その結果、次の成膜処理時への成膜阻害要因が低減され、クリーニング直後でも、ウエハ200に膜厚ドロップ現象が生じるのを抑制できる。言い換えると、ウエハ200の膜厚を安定させられる。したがって、ウエハ200毎の処理を均一に近づけられる。
【0105】
クリーニングガスとして、ハロゲン系ガスを用いることにより、処理室30の内面に付着した付着物のクリーニング時間を短縮させることが可能となる。
【0106】
また、クリーニングガスとして、フッ素含有ガス、具体的には、F2、HF、NF3、CF4の少なくとも1つ以上を含むガスを用いることにより、SiとNを含む膜(窒化シリコン膜)のクリーニング時間を短縮させることが可能となる。
【0107】
本実施形態では、ノズル80及びノズル82が処理室30の下ゾーン30Cから上ゾーン30Aに向けて処理室30にクリーニングガスを供給可能とされている。このため、処理室30のガス流れ方向上流から下流までクリーニングすることが可能となる。言い換えると、処理室30の下側から上側までクリーニングすることが可能となる。
【0108】
本実施形態では、ノズル81及びノズル83が処理室30の中ゾーン30B(中流側)及び上ゾーン30A(下流側)において、処理室30にクリーニングガスを供給可能とされている。このため、中ゾーン30B及び上ゾーン30Aにも未反応のクリーニングガスを確実に供給することができる。これにより、処理室30のガス流れ方向上流側から下流側まで、略均一にクリーニングを行うことが可能になる。また、処理室30におけるガス流れ方向上流側から下流側までのクリーニング雰囲気(条件)の制御性を向上させることもでき、ガス流れ方向の上流側から下流側までのF残留を抑制できる。
【0109】
また、本実施形態のプリコート工程では、成膜処理で形成される窒化シリコン膜の珪素の含有比率よりも高い含有比率の窒化シリコン膜を形成する条件で、プリコート処理を行っている。具体的には、プリコート処理における第1処理ガスの供給比率が、成膜処理時における第1処理ガスの供給比率よりも高い条件とする。ここで、供給比率とは、第1処理ガスと第2処理ガスの供給比率であり、ガスの供給流量、供給時間の少なくとも一つ以上を含む。例えば、プリコート処理における第1処理ガスの供給流量を、成膜処理時における第1処理ガスの供給流量よりも多くする。このように第1処理ガスと第2処理ガスを供給することにより、反応管32内に残留するフッ素を除去することが可能となり、成膜処理時の膜厚低下を抑制することができる。なお、プリコート処理で用いられる第1処理ガスは、成膜処理時に用いられる第1処理ガスと同じガスが用いられてもよいし、異なる分子構造のガスが用いられてもよい。
【0110】
また、本実施形態のプリコート工程では、成膜処理よりも圧力を低下させてプリコート処理を行うため、第1処理ガスと残留Fとの曝露量(接触時間)を増やすことができる。これにより、残留Fは、DCSと反応し、排出される。その結果、処理室30内に残留するFを低減することができ、膜厚ドロップ率を改善することができる。
一方、成膜処理では、プリコート工程よりも圧力を上げた状態とすることで、第1処理ガスと残留Fとの曝露量(接触時間)を低減することができ、Fが残留したとしても、ウエハ処理時に膜厚ドロップ現象が生じることを抑制できる。
【0111】
図6には、比較例のクリーニング方法を実施した場合の処理室30における累積膜厚(累積した付着物の厚み)と各ゾーン30A~30Cの膜厚変動率との関係を示すグラフが示されている。この比較例のクリーニング方法では、各ゾーン30A~30Cの温度を同じ温度にしている。また
図7には、実施例のクリーニング方法を実施した場合の処理室30における累積膜厚と各ゾーン30A~30Cの膜厚変動率との関係を示すグラフが示されている。
図7に示すクリーニング方法では、各ゾーン30A~30Cの温度を温度差T2>温度差T1となるように制御しているため、処理室30内において、累積膜厚に対する各ゾーン30A~30Cの膜厚変動率が小さくなっている。すなわち、実施例のクリーニング方法では、処理室30をガス流れ方向の上流から下流まで均一にクリーニングでき、さらに、ガス流れ方向上流側のF残留を抑えられていることが分かる。
【0112】
上述の実施形態では、第1処理ガスとして、DCSガスを用いる例について説明したが、本開示はこれに限定されるものでは無い。第1処理ガス(原料ガス)として、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシランガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0113】
また、原料ガスとして、クロロシランガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシランガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシランガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシランガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0114】
また、原料ガスとしては、これらの他、例えば、Siおよびアミノ基を含むガス、すなわち、アミノシランガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素(H)を除去した1価の官能基のことであり、-NH2,-NHR,-NR2のように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NR2の2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0115】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシランガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0116】
上述の実施形態では、第2処理ガスとして、NH3ガスを用いる例について説明したが、本開示はこれに限定されるものでは無い。第2処理ガス(反応ガス)として、例えば、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0117】
また、反応ガスとしては、これらの他、例えば、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)含有ガスを用いることもできる。N,C及びH含有ガスとしては、例えば、アミン系ガスや有機ヒドラジン系ガスを用いることができる。N,C及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、C含有ガスでもあり、H含有ガスでもあり、N及びC含有ガスでもある。
【0118】
また、反応ガスとしては、例えば、モノエチルアミン(C2H5NH2、略称:MEA)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)ガス、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、モノメチルアミン(CH3NH2、略称:MMA)ガス、ジメチルアミン((CH3)2NH、略称:DMA)ガス、トリメチルアミン((CH3)3N、略称:TMA)ガス等のメチルアミン系ガスや、モノメチルヒドラジン((CH3)HN2H2、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH3)2N2H2、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH3)2N2(CH3)H、略称:TMH)ガス等の有機ヒドラジン系ガス等を用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0119】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0120】
また、上述の実施形態では、基板処理工程の間、処理室30に不活性ガスを供給しているが本開示はこの構成に限定されない。例えば、処理室30内をパージするときや、ガスを希釈する程度において、コントローラ70が適宜不活性ガスの供給量を調整してもよい。
【0121】
さらに、上述の実施形態では、処理室30内を3つのゾーンに区分けているが、本開示はこの構成に限定されない。処理室30内を3つ以上のゾーンに区分けてもよい。例えば、
図8には、処理室30内を5つのゾーンに区分けた基板処理装置150が示されている。この基板処理装置150では、処理炉152が備えるヒータ154を5つのヒータ部154A~154Eで構成し、各ヒータ部の発熱領域に応じた部分に温度センサをそれぞれ配置している。これらのヒータ部154A~154Eと各温度センサは、コントローラ70と電気的に接続されている。このような基板処理装置150を用いた場合、処理室30のガス流れ方向上流側から下流側までのクリーニングをより均一に行うことが可能になる。なお、
図8では、ヒータ部154E付近が、ガス流れの上流側に位置し、ヒータ部154A付近が、ガス流れの下流側に位置し、ヒータ部154C付近が、ガス流れの中流側に位置する。
【符号の説明】
【0122】
10 基板処理装置
30 処理室
30A 上ゾーン(ガス流れ方向下流側に位置するゾーン)
30B 中ゾーン(ガス流れ方向中流側に位置するゾーン)
30C 下ゾーン(ガス流れ方向上流側に位置するゾーン)
40 処理ガス供給系
50 クリーニングガス供給系
60 ヒータ
60A ヒータ部
60B ヒータ部
60C ヒータ部
70 コントローラ(制御部)
80 ノズル
150 基板処理装置
152 処理炉
154 ヒータ
200 ウエハ
S210 搬入工程
S220 成膜工程
S230 搬出工程
S260 クリーニング工程
S270 プリコート工程