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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】蒸発濃縮装置、自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20241105BHJP
   G01N 1/40 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N1/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023535178
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2022022885
(87)【国際公開番号】W WO2023286493
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2021117116
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海老原 大介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 晋弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真結子
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-143601(JP,A)
【文献】特開2001-276501(JP,A)
【文献】国際公開第2000/47975(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された液体を蒸発させることにより前記液体を濃縮する蒸発濃縮装置であって、
前記容器の内部を減圧する負圧を発生させる減圧源、
前記容器に収容された液体から発生する蒸気を前記容器から排出する排気部、
前記排気部と前記減圧源との間を接続する減圧流路、
前記容器と前記減圧源との間において前記減圧流路から分岐した分岐流路、
前記減圧流路を開閉することにより前記容器の内部圧力を制御する減圧弁、
前記分岐流路を開閉することにより前記容器の内部を大気開放する分岐弁、
を備え、
前記減圧流路は、同じ前記減圧源に対して並列接続された第1流路と第2流路を有し、 前記減圧弁は、前記第1流路を開閉する動作と、前記第2流路を開閉する動作とを互いに独立して実施できるように構成されている
ことを特徴とする蒸発濃縮装置。
【請求項2】
前記蒸発濃縮装置はさらに、前記減圧弁を制御するコントローラを備え、
前記減圧弁は、前記第1流路を開閉する第1弁と、前記第2流路を開閉する第2弁とを有し、
前記コントローラは、前記第1弁と前記第2弁を互いに独立して制御する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項3】
前記排気部は、第1容器から蒸気を排出する第1排気部と、第2容器から蒸気を排出する第2排気部とを有し、
前記第1流路は、前記第1排気部と接続されるとともに前記第2排気部には接続されていないことにより、前記第2容器から独立して前記第1容器を減圧することができるように構成されており、
前記第2流路は、前記第2排気部と接続されるとともに前記第1排気部には接続されていないことにより、前記第1容器から独立して前記第2容器を減圧することができるように構成されており、
前記コントローラは、前記第1弁と前記第2弁と互いに独立して制御することにより、前記第1容器と前記第2容器を互いに独立して減圧する
ことを特徴とする請求項2記載の蒸発濃縮装置。
【請求項4】
前記分岐流路は、前記第1流路から分岐した第3流路と、前記第2流路から分岐した第4流路とを有し、
前記分岐弁は、前記第3流路を開閉する動作と、前記第4流路を開閉する動作とを互いに独立して実施できるように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項5】
前記蒸発濃縮装置はさらに、前記分岐弁を制御するコントローラを備え、
前記減圧弁は、前記第3流路を開閉する第3弁と、前記第4流路を開閉する第4弁とを有し、
前記コントローラは、前記第3弁と前記第4弁を互いに独立して制御する
ことを特徴とする請求項4記載の蒸発濃縮装置。
【請求項6】
前記排気部は、第1容器から蒸気を排出する第1排気部と、第2容器から蒸気を排出する第2排気部とを有し、
前記第3流路は、前記第1排気部と接続されるとともに前記第2排気部には接続されていないことにより、前記第2容器から独立して前記第1容器を大気開放することができるように構成されており、
前記第4流路は、前記第2排気部と接続されるとともに前記第1排気部には接続されていないことにより、前記第1容器から独立して前記第2容器を大気開放することができるように構成されており、
前記コントローラは、前記第3弁と前記第4弁を互いに独立して制御することにより、前記第1容器と前記第2容器を互いに独立して大気開放する
ことを特徴とする請求項5記載の蒸発濃縮装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第1容器内の前記液体に含まれる第1分析対象物の物理状態についての第1情報を取得し、
前記コントローラは、前記第2容器内の前記液体に含まれる第2分析対象物の物理状態についての第2情報を取得し、
前記コントローラは、前記第1情報と前記第2情報にしたがって、前記第1容器に対する減圧動作と前記第2容器に対する減圧動作を個別制御する
ことを特徴とする請求項3記載の蒸発濃縮装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第1容器に対して蒸発濃縮を第1時間実施し、
前記コントローラは、前記第2容器に対して蒸発濃縮を第2時間実施し、
前記第1時間は前記第1情報にしたがって定められており、
前記第2時間は前記第2情報にしたがって定められている
ことを特徴とする請求項7記載の蒸発濃縮装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記第1容器を第1加熱室に設置し、前記第1容器を減圧した後、前記第1加熱室から前記第1容器を回収するまで、前記第1容器を第1時間待機させ、 前記コントローラは、前記第2容器を第2加熱室に設置し、前記第2容器を減圧した後、前記第2加熱室から前記第2容器を回収するまで、前記第2容器を第2時間待機させ、 前記コントローラは、前記第1容器を設置してから回収するまでの第1経過時間と、前記第2容器を設置してから回収するまでの第2経過時間とが等しくなるように、前記第1時間と前記第2時間を調整する
ことを特徴とする請求項3記載の蒸発濃縮装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第1容器に対して蒸発濃縮を開始してから前記第1容器内の圧力が第1圧力値に達するまでの間は前記第2弁を閉じておき、前記第1容器内の圧力が前記第1圧力値に達すると前記第2弁を開き、
前記コントローラは、前記第2容器に対して蒸発濃縮を開始してから前記第2容器内の圧力が第2圧力値に達するまでの間は前記第1弁を閉じておき、前記第2容器内の圧力が前記第2圧力値に達すると前記第1弁を開く
ことを特徴とする請求項3記載の蒸発濃縮装置。
【請求項11】
前記蒸発濃縮装置はさらに、前記減圧弁と前記分岐弁を制御するコントローラを備え、 前記コントローラは、前記容器内を減圧している間において、前記分岐弁を開閉する動作を繰り返すことにより、前記分岐弁を開閉しない場合よりも緩やかに前記容器の内部圧力を減圧する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項12】
前記蒸発濃縮装置はさらに、前記減圧弁を制御することにより前記容器に対して蒸発濃縮を実施するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記容器内の圧力が所定圧力に達するかまたは前記容器内の液面高さが所定高さに達するかのうち少なくともいずれかの時点において、前記容器に対する蒸発濃縮を停止する
ことを特徴とする請求項1記載の蒸発濃縮装置。
【請求項13】
請求項1記載の蒸発濃縮装置、
前記減圧弁を制御するコントローラ、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置の蒸発濃縮機構に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の成分を分析する自動分析装置においては、分析時の感度向上や有機溶媒の除去を目的として、蒸発濃縮が実施されることがある。蒸発濃縮は、分析対象物質を含む試料の溶媒を蒸発させ分析対象物質の濃度を高める処理である。蒸発濃縮のプロセスにおいては突沸が発生するおそれがあり、突沸を防ぐために蒸発濃縮時の減圧速度を制御するなどの方法が用いられることがある。
【0003】
下記特許文献1は、『収容容器内の薬剤の清浄度を低下させることなく、収容容器内の薬剤の突沸を抑制する。』ことを課題として、『濃縮装置1は、溶媒を含む薬剤4を収容する収容容器3と、収容容器3内を減圧可能な減圧部5と、収容容器3と減圧部5とを接続するラインL1と、を備え、減圧部5によって収容容器3内を減圧することで、収容容器3に収容された薬剤4に含まれる溶媒を蒸発させて薬剤4を濃縮する濃縮装置であって、収容容器3と減圧部5との間のラインL1には、ラインL1へガスを供給可能なガス供給部7が接続されている。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-128744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動分析装置においては、複数の試料に対して同時に蒸発濃縮処理を実施する必要が生じる場合がある。他方で各試料に対する蒸発濃縮処理は、試料の特性や分析項目などにしたがって、試料毎に個別制御する必要がある。従来の蒸発濃縮機構は、このような2つの目的を同時に実現することは考慮していない。
【0006】
本開示は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、複数の試料に対して同時に蒸発濃縮処理を実施するとともに、各試料に対する蒸発濃縮処理を試料毎に個別制御することができる、蒸発濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る蒸発濃縮装置は、同じ減圧源に対して並列接続された第1流路と第2流路を有し、減圧弁は、前記第1流路を開閉する動作と、前記第2流路を開閉する動作とを互いに独立して実施できるように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る蒸発濃縮装置によれば、複数の試料に対して同時に蒸発濃縮処理を実施するとともに、各試料に対する蒸発濃縮処理を試料毎に個別制御することができる。本開示のその他特徴、利点、構成などについては、以下の詳細説明を参照することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る自動分析装置1の構成図である。
図2】蒸発濃縮装置2の詳細構成を示す図である。
図3】蒸発濃縮装置2の動作を説明するタイムチャートである。
図4】実施形態2に係る蒸発濃縮装置2の動作を説明するタイムチャートである。
図5】実施形態3に係る蒸発濃縮装置2の動作を説明するタイムチャートである。
図6】実施形態4に係る蒸発濃縮装置2が蒸発濃縮処理を実施するときにおける各弁の開閉動作を説明するタイムチャートである。
図7図6に示した開閉パターンで減圧弁24と分岐弁27の間欠的な開閉を実施した際の圧力変化と、間欠的な開閉を実施しなかった際の圧力変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本開示の実施形態1に係る自動分析装置1の構成図である。自動分析装置1は試料の成分を分析する装置であり、前処理部11、分析部12、コントローラ13、蒸発濃縮装置2、を備える。
【0011】
ユーザは、分析する試料を含む試料液が入った反応容器3を前処理部11に設置する。前処理部11は、反応容器3に収容された試料液への反応試薬の添加や、試料液の精製などの分析前処理を実施する。前処理の過程において、蒸発濃縮装置2は例えば試料液中の溶媒のみを蒸発させることにより、試料液における分析対象試料の濃度を高める。前処理が終了した試料液は、分析部12によって分析される。分析部12は例えば質量分析装置によって構成することができる。
【0012】
コントローラ13は、自動分析装置1が備える各部を制御する。コントローラ13は、蒸発濃縮装置2が備える各部(例えば後述する各弁)も制御する。自動分析装置1を制御するコントローラと蒸発濃縮装置2を制御するコントローラは、図1のように一体化してもよいし個別に設けてもよい。以下の説明においては図1の構成を想定する。
【0013】
図2は、蒸発濃縮装置2の詳細構成を示す図である。蒸発濃縮装置2は、加熱器21、排気部22、減圧流路23、減圧弁24、減圧源25、分岐流路26、分岐弁27、外気フィルタ28を備える。同じ構成要素が複数存在する場合、アルファベットの添え字a、bなどによってそれらを区別する。図2においては、加熱器21aと21b、排気部22aと22b、減圧流路23aと23b、減圧弁24aと24b、分岐流路26aと26b、分岐弁27aと27b、はそれぞれ同じ構成要素が2つずつ配置されている。3つ以上の構成要素のセットを配置することもできる。
【0014】
加熱器21は、反応容器3を収容して蒸発濃縮を実施するための空間である。反応容器3を加熱器21内に設置し、排気部22を反応容器3の吸気口と接続した状態で、反応容器3内部を減圧するとともに反応容器3を加熱することにより、蒸発濃縮処理を実施する。反応容器3内の試料液から蒸発した気体は、排気部22を介して減圧流路23へ排出される。
【0015】
減圧流路23は、減圧弁24を介して減圧源25と接続されている。減圧弁24が開くと、減圧源25の作用によって、減圧流路23と排気部22を介して反応容器3内が減圧される。減圧弁24が閉じると、減圧作用は中断する。
【0016】
加熱器21から減圧源25までの流路(加熱器21=>排気部22=>減圧流路23=>減圧弁24=>減圧源25)は、これらを1つのセットとして、図2のように複数セットを配置することができる。ただしいずれの流路も、単一の減圧源25に接続されている(例えば減圧流路23aと23b、減圧弁24aと24bは、減圧源25に対して並列接続されている)。
【0017】
減圧流路23aは、排気部22aに対して接続されているが、排気部22bには接続されていない。減圧流路23bは、排気部22bに対して接続されているが、排気部22aには接続されていない。したがって、排気部22aに接続された反応容器3と排気部22bに接続された反応容器3は、互いに独立して蒸発濃縮処理を施されることになる。
【0018】
分岐流路26は、減圧流路23から分岐している。分岐流路26と外気フィルタ28との間には、分岐弁27が配置されている。分岐弁27が開くと、分岐流路26と減圧流路23を介して、反応容器3内部が外気に対して開放される。分岐弁27が閉じると、反応容器3内部と外気との間は遮断される。
【0019】
加熱器21から外気フィルタ28までの流路(加熱器21=>排気部22=>減圧流路23=>分岐弁27=>外気フィルタ28)は、これらを1つのセットとして、図2のように複数セットを配置することができる。分岐流路26は減圧流路23から分岐しているので、実質的には、減圧源25に至る流路と外気フィルタ28に至る流路を合わせた流路群が、1つの加熱器21に対して接続されていることになる。
【0020】
分岐流路26aは、減圧流路23a(すなわち排気部22a)に対して接続されているが、減圧流路23b(すなわち排気部22b)には接続されていない。分岐流路26bは、減圧流路23b(すなわち排気部22b)に対して接続されているが、減圧流路23a(すなわち排気部22a)には接続されていない。したがって、排気部22aに接続された反応容器3と排気部22bに接続された反応容器3は、互いに独立して外気に対して開放されることになる。
【0021】
図3は、蒸発濃縮装置2の動作を説明するタイムチャートである。ここでは加熱器21が4つ配置されている(すなわち4つの反応容器3に対して個別に蒸発濃縮を実施する)構成における動作を例示する。したがって、排気部22、減圧流路23、減圧弁24、分岐流路26、分岐弁27もそれぞれ4つ配置されている。1~4行目はそれぞれ、第1~第4加熱室における動作手順を表している。
【0022】
第1加熱器に反応容器3を設置し、試料液を反応容器3内に分注すると、第1加熱器における蒸発濃縮(減圧源25による減圧)が開始される。第1加熱器における蒸発濃縮が完了する前に、第2~第4加熱器においても順次、反応容器3の設置から蒸発濃縮開始までの工程が実施される。
【0023】
蒸発濃縮処理においては、反応容器3内部を経時的に減圧し、最大減圧力に達するとそれを一定時間維持した後、反応容器3を大気開放する。各加熱器において同じ手順で蒸発濃縮が実施される。
【0024】
第1加熱器における蒸発濃縮が完了すると、第1加熱器から反応容器3を回収し、次の反応容器3を第1加熱器に設置する。第2~第4加熱器においてもそれぞれ、蒸発濃縮が完了すると反応容器3を回収して次の反応容器3を設置する。以後の動作手順は同様である。
【0025】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る蒸発濃縮装置2は、互いに独立して動作する減圧流路23aと23bを備え、これらは減圧弁24aと24bによって互いに干渉することなく各加熱器21内の反応容器3を減圧することができるように構成されている。これにより、各加熱器21が保持している各反応容器3に対して、個別に蒸発濃縮処理を実施することができる。
【0026】
本実施形態1に係る蒸発濃縮装置2において、減圧流路23aと23bは同じ減圧源25に対して並列接続されている。これにより、各反応容器3に対して一括して蒸発濃縮を実施できる。さらに各反応容器3の蒸発濃縮は、試料液や分析項目などの特性に応じて個別に実施できる。
【0027】
本実施形態1に係る蒸発濃縮装置2は、互いに独立して動作する分岐流路26aと26bを備え、これらは分岐弁27aと27bによって互いに干渉することなく各反応容器3を大気開放できるように構成されている。これにより、各加熱器21が保持している各反応容器3に対して、個別に蒸発濃縮処理を実施することができる。
【0028】
本実施形態1に係る蒸発濃縮装置2は、単一の減圧源25に対して複数の減圧流路23を並列接続している。これにより、各反応容器3に対する蒸発濃縮を個別制御するとともに、減圧源25を設置するためのスペースや部材コストなどを抑制することができる。
【0029】
本実施形態1に係る蒸発濃縮装置2は、各反応容器3に対して個別に蒸発濃縮処理を実施するので、ある程度まとまった個数の反応容器3に対して蒸発濃縮処理が完了するまで待機することなく、蒸発濃縮が完了した反応容器3から順に分析工程を逐次実施することができる。すなわち、分析結果などのデータを逐次得ることができるので、特に自動分析装置1のように工程が自動的に進行する装置において好適である。
【0030】
<実施の形態2>
図4は、本開示の実施形態2に係る蒸発濃縮装置2の動作を説明するタイムチャートである。蒸発濃縮装置2および自動分析装置1の構成は実施形態1と同じである。各反応容器3が収容する試料液や分析項目はそれぞれ異なる場合があるので、これにともなって、蒸発濃縮のために要する時間もそれぞれ異なる場合がある。図4においてはそのような例を示している。
【0031】
蒸発濃縮のために要する時間が異なる場合であっても、各加熱器における反応容器3の設置から回収までに至るサイクル時間が等しければ、制御スケジューリングを簡易化する観点から望ましい。そこで図4において、蒸発濃縮が短時間で終了する試料については、蒸発濃縮終了後に待機時間を設けた。具体的には、反応容器3を加熱器21に対して導入してから回収するまでの時間が、各加熱器21において等しくなるように、コントローラ13はそれぞれの待機時間をセットすればよい。図4においては、蒸発濃縮時間が最も長い第3加熱器を基準として、各加熱器21における待機時間をセットした。
【0032】
各反応容器3の蒸発濃縮時間(または待機時間)は、反応容器3が収容する液体の種別や分析項目によって規定される。したがってコントローラ13は、その液体種別または分析項目と、蒸発濃縮時間との間の対応関係を記述した情報を取得し、その情報にしたがって各反応容器3に対するこれらの時間を定めればよい。この情報は、あらかじめ記憶装置に格納しておいてもよいし、処理開始時などの適当なタイミングにおいて装置外から取得してもよい。
【0033】
<実施の形態3>
図5は、本開示の実施形態3に係る蒸発濃縮装置2の動作を説明するタイムチャートである。蒸発濃縮装置2および自動分析装置1の構成は実施形態1と同じである。本実施形態3においては、新たな反応容器3に対して蒸発濃縮を開始するとき、他の反応容器3と接続されている各弁を閉じることとした。
【0034】
新たな反応容器3に対して蒸発濃縮を開始するとき、その反応容器3内の圧力は十分低下していないので、そのまま他の反応容器3と流体的に接続すると、他の反応容器3内の圧力に対して意図しない影響を及ぼす可能性がある。そこで本実施形態3においては、他の反応容器3と接続されている減圧弁24と分岐弁27を閉じることとした(図5における「弁を閉じる」)。図5のサイクル1~4においてその様子を示している。次のサイクル5においては1番目の流路に対して反応容器3が新たに接続される(蒸発濃縮が新たに開始される)ので、2~4番目の流路において各弁を閉じている。以下同様である。
【0035】
新たに蒸発濃縮を開始した反応容器3内の圧力が十分低下した(規定圧力に達した)時点で、他の反応容器3と流体的に接続しても支障はないことになる。そこでその時点において、他の反応容器3と接続されている弁を再び開く。図5において弁を閉じる期間が限られているのは、この理由による。その他の動作は実施形態1~2と同様である。
【0036】
反応容器3内の規定圧力は、反応容器3ごとに異なる場合もあるし、全て一律に同じである場合もある。各反応容器3の規定圧力については、例えば試料種別・分析項目ごとに規定されるので、実施形態2で説明したようにコントローラ13がその規定圧力を記述した情報を取得してこれにしたがって各弁を開閉するタイミングを定めればよい。圧力値については流路上の適当な箇所に圧力センサを設置してその計測値を取得すればよい。
【0037】
<実施の形態4>
図6は、本開示の実施形態4に係る蒸発濃縮装置2が蒸発濃縮処理を実施するときにおける各弁の開閉動作を説明するタイムチャートである。蒸発濃縮装置2は、蒸発濃縮処理において、分岐弁27の開閉動作を繰り返すことにより、反応容器3内部を断続的に大気開放してもよい。これにより、以下に説明するように、減圧速度を緩やかにして突沸を抑制することができる。その他の構成は実施形態1~2と同じである。
【0038】
図6に示したように、減圧開始から3秒の間(第1減圧期間)は減圧弁24を0.1秒開とし、0.1秒閉とする頻度で開閉し、分岐弁27は開状態とする。減圧開始3秒から9秒の間(第2減圧期間)、9秒から15秒の間(第3減圧期間)は、減圧弁24の開閉頻度は変えない。減圧開始から3秒から9秒の間(第2減圧期間)は、分岐弁27を0.1秒開とし、0.1秒閉とする頻度で開閉する。9秒から15秒の間(第3減圧期間)は、分岐弁27を0.1秒開とし、0.3秒閉とする頻度で開閉する。減圧開始15秒から21秒の間(第4減圧期間)は、減圧弁24の開閉頻度は変えず、分岐弁27は閉状態とする。減圧開始21秒以降は減圧弁24を開状態、分岐弁27を閉状態とする。
【0039】
上記のように、減圧開始から段階的に減圧弁24の開閉頻度と分岐弁27の開閉頻度とを変化させることにより、減圧流路23と反応容器3内の減圧の程度を制御する。減圧弁24と分岐弁27の開時間および閉時間は、目的の減圧の程度に合わせて、それぞれ任意の長さを設定できる。開時間及び閉時間の長さを概ね1秒以内にすれば、減圧の変化を緩やかにすることが可能となる。
【0040】
減圧弁24と分岐弁27の開閉パターンはあらかじめコントローラ13に1つ以上設定しておく。開閉パターンは蒸発開始時の試料液量、試料液の性質、目的の溶媒蒸発量に応じて、任意に設定できる。開閉パターンは、減圧弁24と分岐弁27の開時間・閉時間に加え、開閉の開始・終了タイミングも含む。
【0041】
図7は、図6に示した開閉パターンで減圧弁24と分岐弁27の間欠的な開閉を実施した際の圧力変化と、間欠的な開閉を実施しなかった際の圧力変化を示したグラフである。縦軸が圧力/kPaを示し、横軸が時間/秒を示す。実線が電磁弁の間欠的な開閉有の場合の圧力変化を示し、破線が電磁弁の間欠的な開閉無しの場合の圧力変化を示す。
【0042】
図7に示すように、減圧弁24と分岐弁27の高頻度な開閉により減圧の変化を緩やかにすることが可能である。蒸発濃縮時の急激な圧力変化は突沸の原因となる。本実施形態3を用いることにより、蒸発濃縮時の突沸を抑制することが可能となる。
【0043】
本実施形態4のように、反応容器3内を緩やかに減圧する場合、反応容器3内の圧力が十分下がるまである程度長い時間が必要になる。反応容器3内の圧力が十分下がっていない段階で、他の反応容器3と流体的に接続すると、他の反応容器3内の圧力に対して意図しない影響を与える可能性がある。本実施形態4において、実施形態3で説明したように各弁を一時的に閉じることにより、このような意図しない影響を回避することができる。したがって実施形態3~4を組み合わせることは好適である。
【0044】
<本開示の変形例について>
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除または置換することもできる。
【0045】
以上の実施形態において、各反応容器3に対して蒸発濃縮を実施する時間長は、図3図5に示すように規定のサイクル長によって定めてもよいし、判定基準を満たすまで蒸発濃縮を継続することとしてもよい。例えば、(a)反応容器3内の圧力が規定圧力に達した時点で蒸発濃縮を停止する(すなわち減圧弁24を開いて分岐弁27を開放する)、(b)反応容器3内の液面高さが規定高さに達した時点で蒸発濃縮を停止する、などが考えられる。この場合、コントローラ13は、圧力センサや液面センサなどの計測結果からこれら判定基準を満たしているか否かを判断する。
【0046】
図2においては、減圧弁24aと24bを2つの弁によって構成しているが、例えば2つの互いに気密封止された流路を有する1つの弁によってこれを置き換えてもよい。すなわち、減圧流路23aと減圧源25へ接続する動作と、減圧流路23bを減圧源25へ接続する動作とを、互いに独立して実施することができ、各流路を流れる流体が互いに干渉しないのであれば、減圧弁24のうち全部または一部を単一の弁によって置き換えることもできる。減圧流路23と減圧弁24が3セット以上配置される場合においても同様である。
【0047】
以上の実施形態において、蒸発濃縮は、加熱器21による加熱と減圧源25による減圧によって、反応容器3内の液体を蒸発させて濃縮するものである。加熱のみによって液体を濃縮する場合は、本開示における蒸発濃縮手順を必ずしも用いなくともよいことを付言しておく。
【符号の説明】
【0048】
1:自動分析装置
2:蒸発濃縮装置
21:加熱器
22:排気部
23:減圧流路
24:減圧弁
25:減圧源
26:分岐流路
27:分岐弁
28:外気フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7