(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】自動分析装置及び検体情報表示方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20241105BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20241105BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G16H10/40
(21)【出願番号】P 2023536640
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2022022318
(87)【国際公開番号】W WO2023002762
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021119198
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-033536(JP,A)
【文献】特開2006-149659(JP,A)
【文献】特開2016-024194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0312066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G16H 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体情報を表示する表示装置と、
検体を特定する検体IDと、当該検体IDに依頼される分析項目と、当該検体IDの当該分析項目の測定値について参照制限の有無を示す参照区分情報とを記録する検体IDデータを格納する記憶装置と、
前記表示装置への検体情報の表示を制御するコンピュータと、を有し、
前記コンピュータは、ログインしたユーザが所定の検体IDについての検体情報を前記表示装置に表示させるにあたり、前記ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定された参照権限情報と前記所定の検体IDについての前記検体IDデータの参照区分情報とを参照し、
前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に表示し、
前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限ありを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に表示し、
前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に非表示とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定される参照権限情報は、検査区分ごとに一括して設定される自動分析装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定される参照権限情報は、時間帯ごとに設定される自動分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記コンピュータには、前記所定の検体IDに依頼された分析項目の測定値が異常値としてアラームが出力された場合に参照権限に基づく情報公開の例外が設定されており、
前記コンピュータは前記アラームが出力された場合、前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であっても、当該分析項目の測定値を前記表示装置に表示する自動分析装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記情報公開の例外には有効期限が設定されており、
前記コンピュータは前記アラームが出力されて前記有効期限が経過した後は、前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に非表示とする自動分析装置。
【請求項6】
コンピュータを用いて表示装置への検体情報の表示を制御する検体情報表示方法において、
記憶装置に、検体を特定する検体IDと、当該検体IDに依頼される分析項目と、当該検体IDの当該分析項目の測定値について参照制限の有無を示す参照区分情報とを記録する検体IDデータを格納し、
前記コンピュータは、
ログインしたユーザが所定の検体IDについての検体情報を前記表示装置に表示させるにあたり、前記ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定された参照権限情報と前記所定の検体IDについての前記検体IDデータの参照区分情報とを参照し、
前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に表示し、
前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限ありを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に表示し、
前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に非表示とする検体情報表示方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定される参照権限情報は、検査区分ごとに一括して設定される検体情報表示方法。
【請求項8】
請求項6において、
前記ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定される参照権限情報は、時間帯ごとに設定される検体情報表示方法。
【請求項9】
請求項6において、
前記コンピュータには、前記所定の検体IDに依頼された分析項目の測定値が異常値としてアラームが出力された場合に参照権限に基づく情報公開の例外が設定されており、
前記コンピュータは前記アラームが出力された場合、前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、
前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であっても、当該分析項目の測定値を前記表示装置に表示する検体情報表示方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記情報公開の例外には有効期限が設定されており、
前記コンピュータは前記アラームが出力されて前記有効期限が経過した後は、前記検体IDデータにおいて前記所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、前記ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を前記表示装置に非表示とする検体情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の検体(生体試料)の定量、定性分析を行う自動分析装置、及び自動分析装置による測定結果を含む検体情報を表示する検体情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、患者検体を測定し、得られた分析結果を検体の情報とともに表示画面に出力する。これらの情報には、検体の提供者である患者を特定する個人情報が含まれているため、その取扱いには細心の注意を要する。また、自動分析装置で得られる分析結果のうちには、腫瘍の有無や感染症罹患の有無といった患者の健康状態を直接的に示す情報を含んでいる場合があり、慎重な取り扱いが求められる。
【0003】
特許文献1では、個人情報の漏出を防止するため、使用者ID及びパスワードによる認証を行い、ログインしたユーザの種別が検査技師などの一般使用者である場合と、技術者である場合とで、検査結果のみの出力とするのか、検査結果とともに患者IDや氏名等を含む患者属性情報を出力するのか、の設定を変更するように構成された自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、情報セキュリティの観点から情報管理の厳密性が厳しく求められる傾向にある。一方で、多様な働き方の広がりにより検体分析を実施される検査室においても、さまざまな雇用形態の検査技師などが検査室に出入りをする状況が一般的になっていくと思われる。現状としては、患者情報や分析結果情報は検査技師と交わされた守秘義務契約により検査室外への漏洩を防止しているが、自動分析装置の機能として情報漏洩対策が今後求められていくと考えられる。
【0006】
特許文献1では使用者IDとパスワードにより患者属性情報を出力するか否かを制御するものである。しかしながら、本方式ではユーザ(検査技師等)の種別により表示が制御されるため、悪意のあるユーザの行為を抑止することができない。一方で、ユーザへの閲覧制限を一律に厳しく課すると検査効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明では、検査効率を過度に低下させることなく、患者検体に対して設定する参照区分情報とユーザに対して設定する参照権限とに基づき、ユーザの検体情報への閲覧を管理する情報漏洩対策を自動分析装置の機能として実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態である自動分析装置は、検体情報を表示する表示装置と、検体を特定する検体IDと、当該検体IDに依頼される分析項目と、当該検体IDの当該分析項目の測定値について参照制限の有無を示す参照区分情報とを記録する検体IDデータを格納する記憶装置と、表示装置への検体情報の表示を制御するコンピュータと、を有し、
コンピュータは、ログインしたユーザが所定の検体IDについての検体情報を表示装置に表示させるにあたり、ユーザのユーザIDについて分析項目ごとに設定された参照権限情報と所定の検体IDについての検体IDデータの参照区分情報とを参照し、検体IDデータにおいて所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を表示装置に表示し、検体IDデータにおいて所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限ありを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を表示装置に表示し、検体IDデータにおいて所定の検体IDに依頼された分析項目の参照区分情報が参照制限ありを示す区分であり、ユーザIDについて当該分析項目に設定された参照権限情報が参照権限なしを示す区分であった場合には、当該分析項目の測定値を表示装置に非表示とする。
【発明の効果】
【0009】
ユーザの検体情報への閲覧を管理する情報漏洩対策機能を備えた自動分析装置を提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】多項目化学分析装置(自動分析装置)とそれに接続されるシステムの全体構成図である。
【
図2】検体情報の閲覧を制御するフローチャートである。
【
図3A】ユーザごとに参照権限を設定する参照権限設定画面の例である。
【
図3B】ユーザごとに参照権限を設定する参照権限設定画面の例である。
【
図4】ユーザ区分ごとに参照権限を設定する参照権限設定画面の例である。
【
図5】ユーザにユーザ区分を設定するユーザ登録画面の例である。
【
図10】参照権限による制約のない場合の測定結果の画面表示例である。
【
図11】参照権限による制約のある場合の測定結果の画面表示例(非表示)である。
【
図12】参照区分情報と参照権限情報に基づく検体情報の参照可否判定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、検体の複数の依頼項目の分析を測光方式によって分析する多項目化学分析装置を例として、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、多項目化学分析装置に限られるものではなく、患者検体を扱う種々の自動分析装置に適用可能である。
【0012】
図1は多項目化学分析装置とそれに接続されるシステムの全体構成図である。反応ディスク8は間欠回転可能であり、反応ディスク8上には透光性材料からなる多数の反応容器11が周方向に沿って配置されている。反応容器11は、恒温槽により所定温度(例えば37℃)に維持されている。サンプルディスク2上には、血液、尿等の生体サンプルを収容する多数の検体容器1が、図示の例では二重に周方向に沿って載置されている。また、サンプルディスク2の近傍には、サンプル分注機構5が配置されている。このサンプル分注機構5は、可動アームとこれに取り付けられたピペットノズルとを備えている。この構成により、サンプル分注機構5は、サンプル分注時にはピペットノズルが分注位置に移動して、サンプルディスク2の吸入位置に位置する検体容器1から所定量のサンプルを吸入し、吸入したサンプルを反応ディスク8上の吐出位置にある反応容器11内に吐出する。サンプル分注機構5の動作は、液面検知器6で検体容器1または反応容器11の液面を検知しながら実施される。
【0013】
試薬ディスク17には、バーコードのような試薬識別情報を表示したラベルが貼られた複数の試薬容器10が、試薬ディスク17の周方向に沿って載置されている。試薬容器10には、多項目化学分析装置により分析される分析項目に対応する試薬液が収容されている。また、試薬ID読取り器14が付属されており、試薬登録時に各試薬容器10の外壁に表示されているバーコードを読み取る。読み取られた試薬情報は、試薬ディスク17上のポジションとともにメモリ16に登録される。
【0014】
試薬ディスク17の近傍には、サンプル分注機構5と概ね同様の機構を有する試薬分注機構7が配置されている。試薬分注時には、試薬分注機構7が備えるピペットノズルにより、反応ディスク8上の試薬受け入れ位置に位置付けられる反応容器11の検査項目に応じた試薬容器10から試薬液を吸入し、該当する反応容器11内へ吐出する。試薬分注機構7の動作も、液面検知器9で液面の検知を行いながら実施される。
【0015】
光源が反応ディスク8の中心部付近に、光度計が反応ディスク8の外周側に配置され、光検出系が構成される。反応容器11の列は、光源と光度計とによって挟まれた測光位置を通るように回転移動し、各反応容器11内のサンプルと試薬との反応液は、反応ディスク8の回転動作中に光度計の前を横切る度に測光される。サンプルごとに測定された透過光あるいは散乱光のアナログ信号は、A/D変換器19によってデジタル信号に変換される。測定が終了した反応容器11は、反応ディスク8の近傍に配置された反応容器洗浄機構により、その内部が洗浄されることにより繰り返しの使用が可能にされている。
【0016】
コンピュータ3は、以上のような多項目化学分析装置の各機構の制御を行うとともに、A/D変換器19によってデジタル信号に変換された光度計からのは検出信号を受けて、検査項目に応じたサンプルの分析を実行する。さらにコンピュータ3にはインターフェース4を介して、表示装置12、入力装置13、記憶装置15、プリンタ18、リーダ20が接続されている。リーダ20は、検体容器1にとりつけられているバーコードなどの検体IDを読み取るために使用される。
【0017】
さらに、多項目化学分析装置は、診察室等に設置されているホストコンピュータ(臨床検査情報システム)22と接続されており、ネットワークを介して情報の送受信が可能とされている。また、ホストコンピュータ22は、病院の受付等に設置されている情報管理システム21とも接続されており、ネットワーク通信を介して情報の送受信が可能とされている。情報管理システム21及びホストコンピュータ22はそれぞれ、一般的な情報処理装置のハードウェア構成を有している。すなわち、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)のような記憶装置を備え、記憶装置に記憶されたソフトウェアのプログラムコードをメインメモリに読み込み、プロセッサが読み込んだプログラムコードを実行することで情報処理を実行する。
【0018】
多項目化学分析装置の表示装置12あるいはホストコンピュータ22に接続される入出力装置23を用いてそれぞれの機器を操作するには、ユーザはログインする必要がある。本実施例では、機器を操作するためのユーザ権限に、患者検体情報を参照する権限も加えることで、患者の検体情報の暴露を必要最小限とするものであり、患者検体ごとに付与される参照区分情報に従い、ユーザの患者検体情報の参照を制御する。
【0019】
図2に検体情報の閲覧を制御するフローを示す。事前に、自動分析装置を使用するユーザ(検査技師等)の参照権限についての設定を行う。この設定はホストコンピュータ22を通じて行う。
図3Aに参照権限設定画面を示す。参照権限設定画面200からユーザごとにユーザID201、パスワード202、参照権限情報203を設定する。参照権限の有無は分析項目ごとに設定される。
図4に別の参照権限設定画面の例を示す。参照権限設定画面210では、ユーザ区分211(「区分1」、「区分2」)ごとに一括で登録する。この場合、各ユーザがどのユーザ区分に該当するかは、
図5に示すユーザ登録画面220を用いて割り当てられる。
【0020】
図3Bに別の参照権限設定画面の例を示す。参照権限設定画面200bには、参照権限有効期間205が設定可能とされている。参照権限有効期間205は、ユーザIDに設定される参照権限が有効となる時間帯である。有効期間外においては、ユーザIDの参照権限は一律「無し」として扱われる。この場合、設定した参照権限が有効となる時間帯と無効となる時間帯が設定できればよいため、有効期間の設定に代えて、無効期間を設定するようにしてもよい。無効期間として指定された時間帯においては、ユーザIDの参照権限は一律「無し」として扱われる。
【0021】
以上の例では、参照権限の範囲を分析項目単位での指定する例を示したが、分析項目よりも大きな区分である「生化学項目」、「免疫項目」といった検査区分ごとに一括して設定してもよい。一般に免疫項目に該当する分析項目において患者のプライバシーに直接的につながる情報を含む場合が多いため、分析項目単位で設定する場合の煩雑さを避けて大くくりに設定することも可能とするものである。設定された参照権限情報は記憶装置15に保存される。
【0022】
図6に情報公開設定画面230を示す。情報公開設定画面230は、上述のように設定した参照権限に基づく情報公開の例外を設定するための画面である。アラーム有無231は、自動分析装置が検体測定時の項目測定結果を異常値として判断した場合に、ユーザに参照権限の例外を認めるか否かを設定する。アラーム有無231が指定された場合には、参照権限なしと設定されている分析項目であっても、異常値を示すアラームが出力された場合には制限対象外とされ、測定値が表示される。アラーム有無231が指定されない場合には、異常値を示すアラームが出力されても、参照権限なしと設定されている分析項目についての測定値は表示されない。
【0023】
参照権限の例外を認める場合であっても、表示期間に制限を設けることができ、有効時間232は、測定結果出力後公開された測定値が本来の参照権限に基づき非表示とされるまでの猶予時間を指定するものである。例えば、
図6の例であれば、測定結果出力後20分は測定値が表示され、その期間内であれば、参照権限のないユーザであってもアラームに対する対処が可能である。これにより、アラームへの対処が迅速に行える。なお、有効時間232を指定しない場合には、異常値は参照権限による表示制限を行わないものとして扱われる。
【0024】
以下、
図2のフローチャートにしたがって説明する。新規の患者を受け付けた場合、管理者は、患者、患者の病状あるいは検査目的から、患者の担当医を決定し、情報管理システム21に登録する。登録される患者データ240のデータ構造の例を
図7に示す。患者データ240は、患者ID241(例えば、診察券ナンバーなど)、患者自身あるいは保険証などから取得した氏名242、性別243、生年月日244などの個人情報とともに、決定された担当医ID245を含む。登録された患者データ240は、情報管理システム21の記憶装置からホストコンピュータ22の記憶装置及び自動分析装置の記憶装置15に転送され、記憶される(101)。
【0025】
患者検体を一意に識別するため、患者検体には検体ID251が割付けられる(102)。管理者は、情報管理システム21に、検体登録を行って検体データを作成する(103)。検体IDデータ250のデータ構造の例を
図8に示す。検体IDデータ250は、検体ID251、自動分析装置に測定を依頼する分析項目を示す依頼項目252、参照区分情報253、患者ID254を含む。患者ID254をキーとして、検体IDデータ250は患者データ240と紐づけられ、患者データ240に登録された各種情報を取得することが可能になる。
【0026】
参照区分情報253は、ユーザに設定された参照権限にかかわらず参照制限をかけない「一般」とユーザに設定された参照権限にしたがって参照制限を行う「特定」との2つの区分のうちのいずれかが選択される。
【0027】
情報管理システム21の記憶装置に記憶された検体IDデータ250は、ホストコンピュータ22の記憶装置及び自動分析装置の記憶装置15に記憶される(104)。
【0028】
自動分析装置は、検体IDデータをもとに、検体に対する測定を行う(105)。測定結果出力時に、
図9に示す測定結果データ260として、検体ID261および依頼項目262ごとに測定結果263が記憶装置15に記憶される。測定結果は、自動分析装置からホストコンピュータ22へ送信され、ホストコンピュータ22においても同様のフォーマットで記憶される。
【0029】
ユーザは自動分析装置にユーザIDでログインし、測定結果を確認するため測定結果画面を開く(106)。自動分析装置は、検体IDに紐づく参照区分情報253(
図8参照)とユーザIDに紐づく参照権限情報203(
図3A参照)を取得し、測定結果ごとに測定結果画面への表示の可否を判定する(107)。
図12に患者検体の参照区分とユーザの参照権限との関係を示す。参照区分が「一般」である患者検体に対しては、ユーザの参照権限によらず自動分析装置の表示装置12あるいはホストコンピュータ22の入出力装置23に表示するが、参照区分が「特定」である患者検体に対しては、当該項目に対して参照権限を持つユーザにのみ表示装置12あるいは入出力装置23に表示する。
【0030】
この結果、参照可能と判定される測定結果については表示され(110)、参照不可と判定される測定結果については、情報公開設定画面230(
図6参照)で設定された情報公開設定を参照する(108)。ここで、情報公開の例外が
図6の画面の内容によって設定されていたとすれば、アラームが出力されており、有効時間内であれば測定結果を表示し(111)、アラームが出力されていない、またはアラームが出力されていても有効時間外であれば測定結果を表示しない(109)。例えば、測定結果を意味のない記号列に置換して表示する。ステップ108以降は、情報公開設定にしたがった対応を行う。
【0031】
図10に、すべての分析項目に対して参照権限を持つユーザIDをもつユーザに対して、患者検体の情報を、自動分析装置の表示装置12あるいはホストコンピュータ22の入出力装置23に表示する画面表示例を示す。検体情報表示欄271には、検体IDリスト270から選択された患者検体(例えば検体IDリスト270から検体ID「1000001」を選択する)について、患者IDなどの個人情報、測定結果、コメント記入欄などが表示される。
【0032】
これに対して、
図11に、特定項目に対する参照権限を持たないユーザIDをもつユーザに対して患者検体の情報を表示する場合の画面表示例を示す。検体IDリスト280から検体IDを選択することにより、検体情報表示欄281に患者IDなどの個人情報、測定結果、コメント記入欄などが表示される。このとき、当該ユーザIDに参照権限のない分析項目についての測定値は、権限により参照が制限されていることを識別可能とするため、測定値がマスクされている。
図11の例ではマスク282を「*」列としているが、測定値が非表示となっている限り、その他のマークでもよいし、マークを利用せずに測定値を色で塗りつぶしたり、「制限中」等の文字列を示したりしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1:検体容器、2:サンプルディスク、3:コンピュータ、4:インターフェース、5:サンプル分注機構、6,9:液面検知器、7:試薬分注機構、8:反応ディスク、10:試薬容器、11:反応容器、12:表示装置、13:入力装置、14:試薬ID読取り器、15:記憶装置、16:メモリ、17:試薬ディスク、18:プリンタ、19:A/D変換器、20:リーダ、21:情報管理システム、22:ホストコンピュータ、23:入出力装置、200,200b,210:参照権限設定画面、201:ユーザID、202:パスワード、203:参照権限情報、205:参照権限有効期間、211,221:ユーザ区分、220:ユーザ登録画面、230:情報公開設定画面、231:アラーム有無、232:有効時間、240:患者データ、241:患者ID、242:氏名、243:性別、244:生年月日、245:担当医ID、250:検体IDデータ、251:検体ID、252:依頼項目、253:参照区分情報、254:患者ID、260:測定結果データ、261:検体ID、262:依頼項目、263:測定結果、270,280:検体IDリスト、271,281:検体情報表示欄、282:マスク。