(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-01
(45)【発行日】2024-11-12
(54)【発明の名称】解析システム
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20241105BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20241105BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28 B
H01J37/22 502L
(21)【出願番号】P 2023550934
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036215
(87)【国際公開番号】W WO2023053373
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金野 杏彩
(72)【発明者】
【氏名】藤村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】相蘇 亨
(72)【発明者】
【氏名】幸山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】設楽 宗史
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-088682(JP,A)
【文献】特開2008-256541(JP,A)
【文献】特開2015-129928(JP,A)
【文献】特開2017-050120(JP,A)
【文献】米国特許第7206443(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムを備える解析システムであって、
前記コンピュータシステムは、
表面形状計測装置で計測した、積層構造を有する試料の表面形状の3次元座標情報を取得し、
荷電粒子ビーム装置で撮影した、前記試料の撮影像に基づいた2次元座標情報を取得し、
前記表面形状計測装置の前記3次元座標情報と、前記荷電粒子ビーム装置の前記2次元座標情報との間で、対応付けのための座標変換を行い、結果である対応付けデータを取得し、
前記対応付けデータに基づいて、前記荷電粒子ビーム装置の座標系での深さ情報を取得し、
前記コンピュータシステムは、
前記荷電粒子ビーム装置での観察対象位置として、前記深さ情報の指定に応じて、前記対応付けデータに基づいて、前記観察対象位置の3次元座標を取得し、
前記荷電粒子ビーム装置を制御して前記観察対象位置での観察画像を取得する、
解析システム。
【請求項2】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記深さ情報は、前記試料の表面からの深さまたは層数の情報である、
解析システム。
【請求項4】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記コンピュータシステムは、
前記荷電粒子ビーム装置での撮影像における2次元座標の指定に応じて、前記対応付けデータに基づいて、前記2次元座標の深さ情報を取得し、画面に表示させる、
解析システム。
【請求項5】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記コンピュータシステムは、前記座標変換後、前記対応付けデータに対し、前記試料の積層構造における基準位置座標を用いて、座標の高さを同じにする高さ補正を行う、
解析システム。
【請求項6】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記座標変換は、3点以上のマーカーを用いた射影変換法で行われる、
解析システム。
【請求項7】
請求項6記載の解析システムにおいて、
前記3点以上のマーカーは、前記試料の表面または前記試料の試料ホルダに設けられている、
解析システム。
【請求項8】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記試料の表面には、研磨によって形成された、前記積層構造が露出する傾斜面を有する、
解析システム。
【請求項9】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記コンピュータシステムは、
前記荷電粒子ビーム装置での観察対象位置として、前記深さ情報の指定に応じて、前記対応付けデータに基づいて、前記観察対象位置の3次元座標として、同じ深さまたは層にある複数の位置座標を候補として取得し、
前記候補から選択された観察対象位置について、前記荷電粒子ビーム装置を制御して前記観察対象位置での観察画像を取得する、
解析システム。
【請求項10】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記表面形状計測装置は、光干渉顕微鏡である、
解析システム。
【請求項11】
請求項1記載の解析システムにおいて、
前記荷電粒子ビーム装置は、走査型電子顕微鏡である、
解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を解析する解析システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進んでいる。特に、立体構造を有する半導体デバイスでは、積層技術と組み合わせることで、高密度化および大容量化が飛躍的に進んでおり、積層構造の多層化が進んでいる。多層構造化したパターンの寸法を管理するためには、各層におけるパターンの出来栄えを評価する必要がある。そして、半導体デバイスの品質を向上させるためには、垂直かつ均一なパターンの形成が不可欠であり、迅速かつ高精度なパターンの形状の評価が求められている。
【0003】
現状の評価手法として、集積イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)によって試料を少しずつ削りながら試料の観察を行うことで、パターンの深さ情報を得る手法がある。また、機械研磨によって作製した試料を荷電粒子ビーム装置にて観察し、研磨面の傾斜角を予測することで、パターンの深さ情報を得る手法などがある。
【0004】
例えば、国際公開第2016/002341号(特許文献1)には、FIBを用いて試料をテーパー形状に加工し、電子顕微鏡を用いて、形成された斜面の表面観察像を取得し、下り斜面の開始位置と、電子線の走査距離と、傾斜角とに基づいて、パターンの深さを演算する旨の技術が開示されている。
【0005】
また、特開2010-97768号公報(特許文献2)には、適用対象が半導体デバイスではなく、深さ情報を得るための手段ではないが、深さ情報を得ることのできる計測光学系を荷電粒子線装置と組み合わせて用いる旨の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/002341号
【文献】特開2010-97768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
FIBを用いた手段では、高精度なパターンの評価が可能であるが、加工領域が狭い、評価に時間が掛かる、および、データの再取得が困難である等の課題がある。また、研磨面の傾斜角を予測する手段では、迅速な評価が可能であるが、パターンの深さ情報を予測でしか算出できないので、パターンの評価値の精度が低いという課題がある。さらに、FIBを用いる手法では、1層ずつ数えながら層数を特定していく必要があり、将来的な積層構造の多層化に伴う、観察スループットの低下などの課題も挙げられる。
【0008】
FIBを用いることなく、試料の多層構造の深さ情報を、迅速かつ高精度に取得できる技術が求められる。
【0009】
本発明の目的は、解析システムの技術に関して、試料の深さ情報を迅速かつ高精度に取得できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態の解析システムは、コンピュータシステムを備える解析システムであって、前記コンピュータシステムは、表面形状計測装置で計測した、積層構造を有する試料の表面形状の3次元座標情報を取得し、荷電粒子ビーム装置で撮影した、前記試料の撮影像に基づいた2次元座標情報を取得し、前記表面形状計測装置の前記3次元座標情報と、前記荷電粒子ビーム装置の前記2次元座標情報との間で、対応付けのための座標変換を行い、結果である対応付けデータを取得し、前記対応付けデータに基づいて、前記荷電粒子ビーム装置の座標系での深さ情報を取得する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、解析システムの技術に関して、試料の深さ情報を迅速かつ高精度に取得できる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態の解析システムの全体の構成を示す。
【
図2】一実施の形態の解析システムの主な処理フローを示す。
【
図3】一実施の形態の解析システムのデータ構成例を示す。
【
図4】一実施の形態の解析システムで、CSIとSEMとの間の座標変換および対応付けを示す。
【
図5】一実施の形態の解析システムで、指定深さで撮像する機能、および、指定箇所の深さを算出する機能の概要を示す。
【
図6】一実施の形態の解析システムで、試料の表面からの深さの指定に基づいて観察対象位置を撮像する例を示す。
【
図7】実施の形態1の解析システムで、傾斜面が平面である場合の試料の平面視の構成例を示す。
【
図8】実施の形態1の解析システムで、傾斜面が平面である場合の試料の断面の構成例を示す。
【
図9】実施の形態1の解析システムで、傾斜面が曲面である場合の試料の平面視の構成例を示す。
【
図10】実施の形態1の解析システムで、傾斜面が曲面である場合の試料の断面の構成例を示す。
【
図11】実施の形態1の解析システムで、表面形状計測装置(CSI)の構成例を示す。
【
図12】実施の形態1の解析システムで、CSIの3次元座標情報の構成例を示す。
【
図13】実施の形態1の解析システムで、荷電粒子ビーム装置(SEM)の構成例を示す。
【
図14】実施の形態1の解析システムで、SEMの撮影像および2次元座標情報の構成例を示す。
【
図15】実施の形態1の解析システムで、試料ホルダおよびマーカー等の構成例の平面図を示す。
【
図16】実施の形態1の解析システムで、試料ホルダおよびマーカー等の構成例の断面図を示す。
【
図17】実施の形態1の解析システムで、主な処理フローを示す。
【
図18】実施の形態1の解析システムで、操作画面の構成例その1を示す。
【
図19】実施の形態1の解析システムで、操作画面の構成例その2を示す。
【
図20】実施の形態1の解析システムで、操作画面の構成例その3を示す。
【
図21】実施の形態1の解析システムで、高さ補正の例(2点補正)を示す。
【
図22】実施の形態1の解析システムで、高さ補正の例(3点補正)を示す。
【
図23】実施の形態1の解析システムで、記録表の構成例を示す。
【
図24】実施の形態1の解析システムで、解析時の画面例を示す。
【
図25】実施の形態1の解析システムで、解析時の画面例(パターン情報)を示す。
【
図26】実施の形態1の解析システムで、解析結果表示の画面例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。
【0014】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能な装置や回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0015】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてインストールされてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えばメモリカードや磁気ディスク)でもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クラウドコンピューティングシステム等で構成されてもよい。
【0016】
各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で構成されるが、これに限定されない。また、識別情報、識別子、ID、名、番号等の表現は互いに置換可能である。また、説明上、X方向、Y方向およびZ方向などを用いる場合がある。これらの方向(言い換えると軸)は、互いに交差、特に直交している。特に、Z方向は、上下、高さ、深さ、厚さ等に対応した方向とする。
【0017】
<実施の形態の解析システム>
実施の形態の解析システムは、試料に含まれる多層構造の深さ情報を取得できるシステムである。実施の形態の解析システムは、プロセッサ等を備えるコンピュータシステムを有して構成される。この解析システムは、以下の各ステップを実行させるハードウェアおよびソフトウェアを有する。言い換えると、この解析システムに対応した解析方法は、コンピュータシステム等によって以下の各ステップを実行する方法である。
【0018】
(a) 多層構造(言い換えると積層構造)を含む半導体デバイス等の試料に対し、表面からディンプルグラインダーやイオンミリング等の研磨技術を用いて、例えばおわん型またはテーパー状に加工して、観察面となる傾斜面を形成するステップ。
【0019】
(b) 傾斜面を持つ試料表面に対し、光干渉顕微鏡(CSI)等の表面形状計測装置を用いて、表面方向から光を照射することで、表面方向から見た試料の表面形状の3次元座標情報を高さマップとして取得するステップ。
【0020】
(c) 走査型電子顕微鏡(SEM)等の荷電粒子ビーム装置において、上記試料を観察/撮像し、検出された二次電子または反射電子像等の粒子(言い換えると撮影像)に基づいた、2次元座標情報を取得するステップ。
【0021】
(d) コンピュータシステムが、上記表面形状計測装置の3次元座標情報、および上記荷電粒子ビーム装置の2次元座標情報を取得するステップ。
【0022】
(e) コンピュータシステムが、上記表面形状計測装置の3次元座標情報と上記荷電粒子ビーム装置の2次元座標情報との間で対応付けのための座標変換を行い、対応付けデータを作成するステップ。この座標変換は例えばマーカーを用いた射影変換法で行われる。この対応付けデータは、荷電粒子ビーム装置でのステージ座標系の2次元座標情報に、表面形状計測装置での高さ・深さ情報が関連付けられる。
【0023】
(f) 上記(d)で取得した高さマップについて、上記(b)で高さマップを取得する際に生じる微妙な試料の傾斜等を考慮して、荷電粒子ビーム装置上のコンピュータシステムが高さ補正するステップ。
【0024】
(g) コンピュータシステムが提供するGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)画面で、ユーザが、試料の観察対象位置を、試料表面からの深さ等によって指定するステップ。
【0025】
(h) 観察対象位置の指定に基づいて、荷電粒子ビーム装置において、上記対応付けデータの3次元座標情報上で指定された深さ等に対応する観察対象位置に移動させ、対物レンズを用いて荷電粒子ビームの焦点合わせを行って、観察画像を撮像するステップ。
【0026】
[解析システム]
図1は、実施の形態の解析システムの全体の構成を示す。
図1の解析システムは、コンピュータシステム1(解析システムの主要部に相当する)と、表面形状計測装置2(特にCSI)と、荷電粒子ビーム装置3(特にSEM)と、研磨装置4と、MES(製造実行システム)5とを有し、これらの構成要素がLAN9等の通信網を介して相互に接続されている。なお、構成要素同士が通信で接続されていない場合でも、例えばユーザがメモリカード等の記憶媒体にデータ・情報を格納して持ち運ぶことで、構成要素間でのデータ・情報の入出力を実現してもよい。
【0027】
コンピュータシステム1は、プロセッサ201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入出力インタフェース205等を備え、それらがバスで相互に接続されている。記憶装置203には各種のプログラムやデータが記憶されている。プログラムには、後述の解析ソフトウェア210を含む。入出力インタフェース205には表示装置206や入力装置207が接続されている。通信インタフェース204はLAN9に対し接続されている。MES5等の外部装置には、試料の設計データ等が格納されている。
【0028】
[処理フロー]
図2は、実施の形態の解析システムの主な処理(ユーザによる作業も含む)のフローを示し、ステップS1~S7を有する。
【0029】
ステップS1で、ユーザは、研磨装置4によって、試料(例えば3次元NANDデバイス)の表面の一部に傾斜面(積層構造が露出する面)を作製する。また、ユーザは、MES5等からコンピュータシステム1に、その試料の設計データを取得してもよい。設計データは、試料の座標系における積層構造の3次元データを含んでいるデータである。
【0030】
ステップS2で、ユーザは、試料に対し、座標変換用のマーカーを設定する。具体例では、CSIおよびSEMで共通利用できるように、試料を保持する試料ホルダにおいて、予め4点のマーカーが形成されている。これに限らず、例えば試料表面(傾斜面の付近)において、区別して識別可能な3点以上のパターンがある場合には、それらをマーカーとして利用してもよい。研磨装置4あるいはその他の装置によって、試料表面にマーカーを形成してもよい。
【0031】
また、ユーザは、マーカーが付属した試料を、表面形状計測装置(CSI)にセットし、その試料の傾斜面全域を対象にして、CSIによる高さマップ(3次元座標情報)を計測・取得する。この高さマップには、マーカーの3次元座標情報も含まれる。コンピュータシステム1は、その高さマップ(3次元座標情報)を取得する。
【0032】
なお、CSI側では、さらに後述の面補正を行うことで、データの精度を高めてもよい。
【0033】
ステップS3で、ユーザは、マーカーが付属した試料を、荷電粒子ビーム装置(SEM)にセットし、SEMによる2次元座標情報(言い換えると画像)を撮像または表示させる。コンピュータシステム1は、その2次元座標情報を取得する。
【0034】
ステップS4で、ユーザは、コンピュータシステム1(解析ソフトウェア210)によって、CSIの高さマップ(3次元座標情報)からSEMの2次元座標情報への座標変換処理を行わせる。この座標変換処理は、4点のマーカーの位置座標情報を用いた、射影変換法で実現される。コンピュータシステム1は、座標変換の結果である、CSI-SEMの対応付けデータを取得する。
【0035】
ステップS5で、さらに、コンピュータシステム1は、上記対応付けデータに対し、高さ補正処理を行う。この高さ補正は、CSIで高さマップを取得する際に生じる微妙な試料の傾斜等を考慮した補正である。この高さ補正処理は、基準高さ位置(例えばユーザがGUI画面で指定できる)に基づいて、その基準高さ位置が同じ高さとなるようにする補正である。コンピュータシステム1は、高さ補正処理の結果として、高さ補正後の対応付けデータを取得する。
【0036】
ステップS6で、ユーザは、コンピュータシステム1のGUI画面で、高さ補正後の対応付けデータに基づいて、試料の表面からの深さ等によって観察対象位置を指定する。
【0037】
ステップS7で、コンピュータシステム1は、上記ユーザにより指定された観察対象位置に基づいて、SEMの撮像条件等を制御して、SEMによる観察画像を撮像させ、GUI画面に表示する。コンピュータシステム1は、観察画像を解析し、解析結果情報をGUI画面に表示する。
【0038】
[解析システムのデータ]
図3は、解析システムのコンピュータシステム1の記憶装置203等に格納・保持されるデータの構成例を示す。
図3の(A)のデータは、試料設計データ301と、CSI高さマップデータ302と、SEM2次元座標情報データ303と、高さ補正前の対応付けデータ304と、高さ補正後の対応付けデータ305とを有する。CSI高さマップデータ302とSEM2次元座標情報データ303とは、座標変換(
図2のステップS4)によって対応付けられ、高さ補正前の対応付けデータ304が作成される。高さ補正前の対応付けデータ304から、高さ補正(
図2のステップS5)によって、高さ補正後の対応付けデータ305が作成される。なお、対応付けデータは、座標変換の変換式としてもよいし、ルックアップテーブルのようなテーブルデータとしてもよい。
【0039】
[座標変換]
図4は、CSI-SEM間での座標変換および対応付けの際の、特に4点のマーカーを用いた射影変換法について示す。CSIの座標系(x,y,z)において、傾斜面60(言い換えると観察面)を含んだ試料6の表面について、高さマップ(3次元座標情報)が計測される。同じCSI座標系で、試料6のみを写した高さマップに対し、外側に、4点のマーカー7のCSIのステージ座標系での3次元座標情報が関連付けられて取得される。もしくは、高さマップ内に、試料の表面の3次元座標情報と、4点のマーカー7(M1,M2,M3,M4)の位置(黒点で示す)の3次元座標情報との両方が含まれた態様で取得される。例えばマーカーM1の3次元座標が(x1,y1,z1)である。CSIの高さマップでは、高さ情報(z)はカラーで表現される。また,マーカーが含まれていない態様で取得されなくても良く,その場合はマーカーのxy位置座標を別途取得する。
【0040】
SEMの座標系(X,Y,Z)において、2次元座標情報(X,Y)が取得される。この2次元座標情報には、4点のマーカー7(M1,M2,M3,M4)の位置の2次元座標情報が含まれる。もしくは、同じSEM座標系で、試料6のみの2次元座標情報に対し、外側に、4点のマーカー7の2次元座標情報が関連付けられて取得される。例えばマーカーM1の2次元座標が(X1,Y1)である。SEMの画像(2次元座標情報)からマーカー7の位置を検出するための技術手段としては、マーカー7のパターンマッチングが用いられる。
【0041】
上記CSIの高さマップ(3次元座標情報)(
図3のデータ302)と、SEMの2次元座標情報(
図3のデータ303)とにおいて、4点のマーカー7の各2次元位置座標情報を用いて、射影変換法により、変換および対応付けがされる。なお、3点以上であれば変換が可能である。2種類のデータ間において、4点のマーカー7の位置が一致するように重ね合わせられ、射影変換による座標変換式が作成できる。これにより、SEMの2次元座標情報における傾斜面60でのある位置401(Xi,Yi)は、
図3の対応付けデータ305に基づいて、CSIの高さマップにおける位置402(xi,yi,zi)と対応付けることができる。言い換えると、SEMでの位置401(Xi,Yi)から、CSIでの位置402(xi,yi,zi)を参照することができ、逆に、CSIでの位置402(xi,yi,zi)からSEMでの位置401(Xi,Yi)を参照することができる。
【0042】
コンピュータシステム1は、SEMでの位置401(Xi,Yi)に対応したCSIでの高さ・深さ情報(zi)を得ることができる。そして、その高さ・深さ情報(zi)は、対応付けや換算により、SEM座標系でのZ軸の高さ情報(Zi)に変換できる。即ち、対応付けデータ304または対応付けデータ305において、SEM座標系での3次元座標情報(X,Y,Z)を構成できる。また、その高さ・深さ情報(zi)は、試料6の座標系(設計データ301等からわかる座標系)での表面からの深さ情報(例えば記号Dで表す)に変換できる。即ち、対応付けデータ304または対応付けデータ305において、SEM座標系に対応付けられた試料座標系での3次元座標情報(X,Y,D)も構成できる。また、深さDに、層数(例えば記号Lで表す)などを関連付けた形式の3次元座標情報(X,Y,L)も構成可能である。
【0043】
[解析システムの機能]
図5は、解析システムのコンピュータシステム1における主な機能として、(A)の指定高さ(言い換えると深さ)での観察画像を撮像する機能と、(B)の観察画像の指定箇所(X,Y)での高さ(深さ)を算出する機能との概要を示す。
【0044】
(A)の機能を利用する場合、ユーザは、まず、ステップ411で、コンピュータシステム1のGUI画面で、観察対象位置として、試料の表面からの深さ(または層など)を指定・入力する。コンピュータシステム1は、指定された深さ情報を、CSI-SEMの対応付けデータ305に入力する。ステップ412で、コンピュータシステム1は、対応付けデータ305から、出力として、指定深さに対応した、SEMでの3次元座標情報(X,Y,Z)を取得する。この取得される3次元座標情報(X,Y,Z)は、他の候補(同じ層・同じ高さにある別の位置)を含め、1つ以上の3次元位置が自動的に取得できる。ステップS413で、コンピュータシステム1は、取得された3次元位置に対応させて、SEMの撮像条件などを制御し、SEMでの観察画像を撮像し、GUI画面で表示する。
【0045】
(B)の機能を利用する場合、ユーザは、まず、ステップ421で、コンピュータシステム1のGUI画面で、SEMにより撮像済みの観察画像を見て、その画像内での関心がある箇所の2次元座標を指定・入力する。コンピュータシステム1は、指定された箇所(2次元座標)を、CSI-SEMの対応付けデータ305に入力する。ステップ422で、コンピュータシステム1は、対応付けデータ305から、出力として、指定箇所に対応した、SEMでの3次元座標情報(X,Y,Z)を取得する。ステップS423で、コンピュータシステム1は、取得された3次元位置から、換算によって、試料の表面からの深さ位置等を算出し、GUI画面で表示する。
【0046】
[対応付け]
図6は、CSIとSEMとの間での位置座標情報に関する対応付けや、深さ指定に基づいた観察位置取得の例を示す模式説明図である。(A)は、試料6の積層構造が露出する傾斜面60の断面としてX-Z面を示す。なお、ここでは説明上の座標系は試料座標系である。また、研磨による傾斜面60が平面である場合を示す。ここでは積層構造の例として、断面斜線ハッチングで示す層が5層ある場合を示す。なお、そのハッチングで示す層の間にある白色の領域も層である。ユーザは、観察対象である試料6の観察対象位置を指定する際に、試料表面TSからの深さ(記号Dで示す)または層数などを指定する(
図5のステップ411)。深さはμm等の距離の単位で指定可能である。深さDに対応した層数の例としては上から3層目である。
【0047】
(B)は、傾斜面60をX-Y面で平面視する場合で、(A)で指定された深さDに対応した観察対象領域(言い換えると候補領域)600を示す。ある同じ層(例えば3層目)に該当する直線状の領域が観察対象領域600となる。層には、例えば楕円で示すようなチャネルホール601等のパターンが形成されている。
【0048】
コンピュータシステム1は、
図3の高さ補正後の対応付けデータ305に基づいて、(A)で指定された深さから、SEMでの観察対象位置についての3次元座標情報(X,Y,Z)を取得する。(C)は、(B)の直線状の観察対象領域に含まれている、例えば3点(P1,P2,P3)の観察対象位置(言い換えると候補位置)を自動的に取得した場合を示す。例えば点P1は3次元座標(X1,Y1,Z1)を有する。各点の3次元位置座標が取得されている。なお、ある層が指定された場合、図示のように、例えばその層の中心位置(隣接する2層がセットで1層である場合にはその2層の境界の位置)が、観察対象位置(言い換えると撮像中心位置)となる。
【0049】
(D)は、(C)の観察対象位置の各点について、SEMによる観察画像を取得した場合を示す。観察画像を取得する数やサイズなどについてはユーザ設定が可能である。ユーザは、指定した同じ深さ(同じ層)に関する、取得された1つ以上の観察対象位置の観察画像について、好適な位置の観察画像を観察することができる。
【0050】
[作用等]
上記のように、実施の形態の解析システムによれば、ユーザは、CSIからSEMへ座標変換および対応付けデータに基づいて、試料表面からの目的の深さ(または層)の2次元座標(X,Y)に移動して、SEMでの詳細な観察を殆ど自動的(ユーザによる設定や入力を除いて自動的)に行うことができる。このように、正確な深さ情報から目的の位置を狙って観察することで、短時間で高精度に、試料(例えば3次元NANDデバイス)のチャネルホール形状等の解析や評価が可能となる。
【0051】
実施の形態では、座標変換および対応付けとして、CSIで測定した深さデータ(高さマップ)の2次元座標(xy座標)を、SEMの座標系での2次元座標(XY座標)と対応付ける。この座標変換および対応付けは、例えば4点のマーカー7(
図4)を用いた射影変換法(言い換えると4点アライメント法)を用いて実現できる。マーカー7は、CSIとSEMとの両方で認識可能なものを用いる。
【0052】
このシステムでは、研磨された傾斜面60の全域で、CSIの高さマップを取得し、座標変換、および高さ補正を行うことで、傾斜面60全体の深さ情報を把握できる。そのため、このシステムは、同一の深さ/層にある箇所(
図6での複数の観察対象位置、候補)を、自動的に推定でき、ユーザに提示することができる。これにより、以下の利点がある。ユーザが試料表面からの深さ/層を指定すれば、その深さ/層に該当する箇所のみをSEMで容易に撮像・観察できる。同じ深さ/層の箇所を高精度に測定し、シグナルノイズ比の向上や測長精度の向上、真値に近い形状の取得などが可能となる。
【0053】
また、取得されたある箇所(観察対象位置)に、例えば異物などの異常があることで撮像・観察に適していない場合には、同じ深さ/層における他の箇所を、観察対象位置として、データの取り直し等が可能である。特に、機械研磨の場合、FIBとは異なり、研磨くず等の異物が残存している可能性がある。同じ深さ/層における複数の箇所を観察の候補として取得しておけば、そのような場合にも好適な対応が可能となる。
【0054】
<実施の形態1>
上記のような基本構成に基づいて、以下、
図7以降を用いて、詳細な構成例として実施の形態1の解析システムについて説明する。
【0055】
[試料]
まず、試料6の構成例について説明する。試料6(言い換えると観察対象物)は、例えば様々な半導体デバイスが形成された半導体ウェハの一部から取得された薄片である。したがって、試料6は、概念および具体例として、半導体基板、半導体基板上に形成されたトランジスタ等の半導体素子、複数のトランジスタで構成される高集積化の進んだ大規模集積回路(LSI)デバイス、複数のゲート電極を含む多層配線層、および、これらの間に形成された層間絶縁膜、さらには、3次元NANDデバイスを含む半導体メモリデバイスを含む。実施の形態1の一例では、試料6は、3次元NANDデバイスである。
【0056】
図7は、試料6の表面を平面視した平面図として、試料座標系でのX-Y面を示す。また、
図8は、
図7のA-A線に沿ってX-Z面での断面を示す。
図7で、試料表面701のうち一部の領域には、
図1の研磨装置4、例えばイオンミリング装置、またはFIB、またはディンプルグラインダーのような研磨装置によって、研磨処理が施され、それにより形成された傾斜面60を有する。傾斜面60の拡大を下側に示す。この傾斜面60は、積層構造が露出しており、
図6で示したものと同様である。
【0057】
図8で、試料6は、試料座標系でのZ方向において、上側に、試料表面701に対応する表面(言い換えると上面)TSを有し、下側に、表面TSに対する反対側の面である底面(言い換えると下面)BSを有する。表面TSを基準として、下に、複数の層を有する。本例では、断面斜線ハッチング部分の各層と、その層間にある白色の層とを含めて、第1層L1から第9層L9までがある。なお、本例では、表面TSから第1層L1までの距離(深さ)801を有する部分、および底面BSから第9層L9までの部分は、層としてはカウントしないが、この部分を層としてカウントすることも可能である。また、本例では、第1層L1から第9層L9まで、層の厚さをすべて同じ厚さ802とするが、これに限定されず、層毎に異なる厚さがあってもよい。また、図面では、傾斜面60の傾斜角度803を、わかりやすいように比較的大きな角度として図示しているが、実際に形成される傾斜面60の傾斜角度はより小さく、これにより、より広い面積の傾斜面60が形成でき、また、傾斜面60でのパターンの形状の歪み等は、精度として無視できるレベルとなる。
【0058】
試料6の傾斜面60には、積層構造として、複数のパターン61(例えば
図6でのチャネルホール601)が含まれている。複数のパターン61の各々のパターン61は、例えばZ方向に延在して層間を接続する円柱状の構造を持つ半導体デバイスがある。パターン61は、例えば多層構造を有する3次元NANDデバイスの
図6のチャネルホール601、LSIの配線、トランジスタ等の構造体が挙げられる。
【0059】
図8等において、多層構造(言い換えると積層構造)62は、例えば多層配線層のような複数の導電体層に相当する複数の層(L1~L9)およびパターン61によって構成されている。言い換えると、試料6は、上面TSから下面BSへ向かうZ方向において積層された複数の層(例えば導電体層)およびパターン61(例えばチャネルホール)を、多層構造62として含んでいる。また、ここでは詳細には図示していないが、多層構造62は、複数のパターン61の周囲に形成されている。
【0060】
図8の断面において、観察面である傾斜面60は、試料6の上面TSから下面BSまで、傾斜角度803で傾斜しており、傾斜面60は、上面TSから下面BSへ向かって連続的に傾斜する面を成している。研磨装置4による研磨処理は、多層構造62の全層(例えばL1~L9)が研磨されるように行われる。傾斜面60の底部は、多層構造62の最下層よりも深くに位置しているため、多層構造62の全層が、傾斜面60において露出している。
【0061】
図7等の例では、傾斜面60が平面であり、研磨装置4としてイオンミリング装置またはFIBによって研磨されることでその傾斜面60が形成されている。傾斜面60は、平面に限らず、下記のように、曲面などでもよい。
図9等の例では、傾斜面60が曲面であり、研磨装置4としてイオンミリング装置またはディンプルグラインダーによって研磨されることでその傾斜面60が形成されている。
【0062】
図9は、試料6の表面のX-Y面を示す。また、
図10は、
図9のB-B線に沿ってX-Z面での断面を示す。
図9で、試料6の表面901の一部には、楕円球面形状の曲面としてくり抜かれたような傾斜面902が形成されており、傾斜面902のうち一部の傾斜面60に着目して拡大で示している。傾斜面60は、平面視で円状の傾斜面902のうち、積層構造62が露出する、X方向での一部の領域である。この傾斜面60に限らず、平面視で円状の傾斜面902内で、他の領域にも積層構造62が露出するので(後述)、他の領域を処理に使用してもよい。また、平面視で円状の傾斜面902全体を処理に使用してもよい。
【0063】
図10で、傾斜面902は、わかりやすいように半球状に図示しているが、実際には、傾斜曲面の傾斜角度が小さく、よりなだらかな曲面として形成されている。本例では、表面TSから所定の距離にある第1層L1から第9層L9までを対象とする。積層構造62は第1層L1から第9層L9まで、およびパターン61(チャネルホール等)によって構成されている。
【0064】
[表面形状計測装置(CSI)]
図11は、表面形状計測装置2の例として、光干渉顕微鏡(CSI)の構成例を示す。このCSIは、例えば白色干渉顕微鏡であり、試料6の上面(言い換えると表面)の3次元座標情報(
図12)(例えば位置座標としてx,y,z)を高さマップとして計測・取得する機能を有する。このCSIは、鏡筒102、ステージ109、ステージ制御装置110、および総合制御部C10を備える。総合制御部C10は、CSIのコントローラに相当する。
【0065】
総合制御部C10には、CSIの内部または外部に設けられた表示機器1120および操作機器1121が電気的に接続されている。表示機器1120の例は液晶ディスプレイであり、操作機器1121の例はマウスおよびキーボードである。ユーザは、表示機器1120および操作機器1121を通じて、CSIを操作・利用できる。なお、総合制御部C10に
図1のコンピュータシステム1が接続された構成として、コンピュータシステム1からCSIを制御する構成とする場合、表示機器1120および操作機器1121は省略できる。
【0066】
鏡筒102の内部には、白色光源103、第1ビームスプリッタ104、第2ビームスプリッタ105、対物レンズ106、参照面107、およびカメラ108が備えられている。
【0067】
ステージ109およびステージ109に接続されているステージ制御装置110は、鏡筒102の外部に備えられ、大気中に静置されている。ステージ109は、試料ホルダ8を通じて、試料6を搭載可能である。CSIでの試料6の計測時には、試料6が搭載された試料ホルダ8が、ステージ109上に設置される。本例では、CSIのステージ109は、4軸(X,Y,Z,T)で移動可能なステージである(Tはチルト方向)。これに限らず、ステージ109は、他の種類のステージとしてもよい。ステージ制御装置110は、ステージ109の位置および向きを変位させることができる。ステージ109の変位によって、試料6の位置および向きが変位する。
【0068】
白色光源103は、照射光WL1(一点鎖線で光軸を示す)を放出する。第1ビームスプリッタ104および第2ビームスプリッタ105は、放出された照射光WL1を2つに分け、一方の光WL1aを参照面107に照射し、他方の光WL1bを試料6の表面に照射する。対物レンズ106は、ステージ109に設置された試料6に焦点が合うように、照射光WL1を集束させる。参照面107から反射された反射光、および試料6から反射された反射光は、第1ビームスプリッタ104および第2ビームスプリッタ105を通じて、1つの反射光WL2としてまとまって、測定用のカメラ108において結像される。
【0069】
総合制御部C10は、光学系制御部C11、ステージ制御部C12、および演算部C13を有し、これらを統括する。それゆえ、光学系制御部C11、ステージ制御部C12、および演算部C13によって行われるそれぞれの制御は、総合制御部C10により行われるものとして説明する場合がある。また、総合制御部C10は、単に1つの制御ユニット、あるいはコントローラや制御装置などと称する場合もある。総合制御部C10は、コンピュータシステムあるいは専用回路などで実装可能である。
【0070】
光学系制御部C11は、白色光源103、第1ビームスプリッタ104、第2ビームスプリッタ105、対物レンズ106および参照面107に対し電気的に接続されており、これらの動作を制御する。光学系制御部C11は、カメラ108による撮像条件を制御し、カメラ108で撮像された信号(画像情報)を得る。光学系制御部C11は、対物レンズ106による焦点を制御する。
【0071】
ステージ制御部C12は、ステージ制御装置110に対し電気的に接続されており、ステージ制御装置110が有する各駆動機構の動作を制御する。ステージ制御部C12からステージ制御装置110を制御してステージ109を動かすことで、試料6の表面での計測の位置や視野を設定できる。
【0072】
演算部C13は、表面情報取得部C14、指示入力部C15および記憶部C16を含む。演算部C13は、プロセッサによるプログラム処理を行う機能を有する。
【0073】
表面情報取得部C14は、カメラ108に対し接続されており、カメラ108が検出した反射光WL2の信号(画像情報)を、高さマップである3次元座標情報(
図12)に変換する。この3次元座標情報は、試料6の表面に照射光が照射された際に、試料6の表面で反射した反射光に基づいて作成されたデータである。この3次元座標情報は、メモリ等に記憶されるとともに、表示機器1120(または
図1のコンピュータシステム1)へ出力される。ユーザは、この3次元座標情報を、表示機器1120(または
図1の表示装置206)の画面で確認できる。
【0074】
指示入力部C15は、ユーザが操作機器1121(または
図1のコンピュータシステム1)を用いて表示機器1120(または
図1の表示装置206)の画面で入力した情報を受け取る。記憶部C16は、試料6の情報、ステージ109の座標、光学系の情報、および取得された3次元座標情報(
図12)などのデータ・情報を記憶する。なお、各種の情報は、互いに関連付けられて保存・管理される。
【0075】
図12は、上記CSIによって得られる3次元座標情報1201の構成例を示す。
図12の3次元座標情報1201は、
図3の高さマップデータ302と対応している。この3次元座標情報1201は、テーブルで実装されている例であり、縦軸(行)と横軸(列)は、
図11の照射光WL1と試料6が直交する2つの方向(x,y)の情報とし、縦軸と横軸が交差する各セルの位置には、高さ(z)情報が入力される。高さ(z)情報にはカラーの値が対応付けられることで、画面の高さマップでは高さをカラーとして表示可能である。
【0076】
[荷電粒子ビーム装置(SEM)]
図13は、荷電粒子ビーム装置3の例として、走査型電子顕微鏡(SEM)の構成例を示す。このSEMは、鏡筒132、試料室137、総合制御部C0等を備えている。総合制御部C0は、SEMのコントローラに相当する。このSEMは、鏡筒132の内部に備えられた電子銃133から、試料室137内でステージ139上に配置された試料6へ荷電粒子ビームEB1を照射することで、試料6を解析(言い換えると観察や測定)する機能を有する。
【0077】
鏡筒132は、試料室137に対し取り付けられており、荷電粒子ビームカラムを構成している。鏡筒132は、電子銃133、コンデンサレンズ134、偏光コイル135、対物レンズ136等を備えている。電子銃133は、荷電粒子ビームEB1をz方向下方に照射可能である。コンデンサレンズ134は、荷電粒子ビームEB1を集束する。偏光コイル135は、試料6の表面に対し荷電粒子ビームEB1を偏光によって走査する。対物レンズ136は、試料6の表面に対し荷電粒子ビームEB1を集束する。
【0078】
試料室137の内部には、試料6を搭載・保持するための試料ホルダ8と、試料ホルダ8を設置するためのステージ(言い換えると試料台)139と、ステージ139に接続されステージ139を駆動するステージ制御装置1310などが設けられている。図示しないが、試料室137には、試料6をステージ139上に搬送するための機構や、導入/導出口なども設けられている。
【0079】
SEMでの試料6の観察・解析時には、試料6が搭載された試料ホルダ8が、導入/導出口を介して、試料室137の内部へ搬送され、ステージ139上に設置される。また、試料室137から試料6を取り出す際には、試料6が搭載された試料ホルダ8が、導入/導出口を介して、試料室137の外部へ搬送される。
【0080】
ステージ制御装置1310は、ステージ制御部C2からの制御に基づいて、ステージ139の位置および向きを変位させることができる。ステージ139の変位によって、試料6の位置および向きが変位する。本例では、SEMのステージ139は、5軸(X,Y,Z,T,R)で移動可能なステージである。Tはチルト方向(X-Y面に対して傾斜した方向)、Rは回転軸である。これに限らず、ステージ139は、例えばZ軸を除いた4軸(X,Y,T,R)で移動可能なステージ等としてもよい。
【0081】
ステージ制御装置1310は、SEMの載置面に対して平行な方向(X,Y)に駆動可能なXY軸駆動機構、載置面に対して垂直な方向(Z)に駆動可能なZ軸駆動機構、回転方向(R)に駆動可能なR軸駆動機構、および、チルト方向(T)に駆動可能なT軸駆動機構を有している。これらの各駆動機構は、ステージ139上に設置された試料6および試料ホルダ8のうち、任意の部位(前述のマーカー7を含む)を解析するために使用できる。これらによって、試料6のうちの対象部位が、SEMの撮影視野の中心へ移動され、任意の方向へ傾けられる。
【0082】
また、鏡筒132(または試料室137でもよい)には、検出器1311が設けられている。試料6の観察・解析時に、試料6の表面に荷電粒子ビームEB1が照射された場合、試料6の表面から放出される二次電子または反射電子等の粒子EM2を、検出器1311によって検出できる。検出器1311は、粒子EM2を電気信号に変換して検出する。検出器1311は、その検出された信号(言い換えると画像情報)を出力する。
【0083】
SEMの外部または内部には、総合制御部C0に対し電気的に接続された表示機器1320および操作機器1321を備える。ユーザが表示機器1320の画面を見ながら操作機器1321を操作して作業する。これにより、各種のデータ・情報が総合制御部C0へ入力され、総合制御部C0から各種のデータ・情報が出力される。なお、総合制御部C0に
図1のコンピュータシステム1が接続された構成として、コンピュータシステム1からSEMを制御する構成とする場合、表示機器1320および操作機器1321は省略できる。
【0084】
総合制御部C0は、走査信号制御部C1、ステージ制御部C2、および演算部C3を有し、これらを統括する。それゆえ、走査信号制御部C1、ステージ制御部C2および演算部C3によって行われるそれぞれの制御は、総合制御部C0により行われるとして説明する場合もある。また、総合制御部C0を単に1つの制御ユニット(言い換えるとコントローラ、制御装置)と称する場合もある。
【0085】
走査信号制御部C1は、電子銃133、コンデンサレンズ134、偏光コイル135および対物レンズ136に対し電気的に接続されており、これらの動作を制御する。例えば、電子銃133は、走査信号制御部C1からの制御信号を受けて、荷電粒子ビームEB1を生成し、試料6へ向かってZ方向下方に照射する。コンデンサレンズ134、偏光コイル135および対物レンズ136の各々は、走査信号制御部C1からの制御信号を受けて、磁界を励磁する。コンデンサレンズ134の磁界によって、荷電粒子ビームEB1は、適切なビーム径になるように集束される。偏光コイル135の磁界によって、荷電粒子ビームEB1は、偏光され、試料6の表面において2次元的にX,Y方向に走査される。対物レンズ136の磁界によって、荷電粒子ビームEB1は、試料6の表面に再度集束される。また、走査信号制御部C1によって、対物レンズ136を制御し、対物レンズ136の励磁強度を調整することで、試料6の表面に対する荷電粒子ビームEB1の焦点合わせを行うことができる。
【0086】
ステージ制御部C2は、ステージ制御装置1310に対し電気的に接続されており、ステージ制御装置1310が有する各駆動機構の動作を制御し、常にSEMの視野とステージ139の座標とをリンクさせる機能を有する。
【0087】
演算部C3は、画像取得部C4、他装置データ読込部C5、指示入力部C6、記憶部C7およびパターン形状解析部C8を含む。演算部C3は、プロセッサによるプログラム処理を行う機能を有する。
【0088】
画像取得部C4は、検出器1311に対し接続されており、検出器1311の動作を制御する。また、画像取得部C4は、検出器1311で検出された二次電子または反射電子等の粒子EM2の信号を処理し、この信号を
図14のような撮影像1401へ変換する。撮影像1401は、2次元座標(X,Y)ごとの輝度値などを有するデータである。撮影像1401は、表示機器1320(または
図1の表示装置206)へ出力される。ユーザは、その撮影像1401を表示機器1320等の画面で確認できる。
【0089】
図14は、上記SEMによって得られるデータの構成例を示す。このデータは、例えば、撮影像(言い換えると画像データ、観察画像)1401と、座標データ(言い換えると2次元座標情報)1402とを有する。撮影像1401は、模式で図示しているが、例えば黒色の背景に
図6等の楕円状のパターン61が白色で写っている。座標データ1402は、
図3での2次元座標情報データ303に相当する。
【0090】
他装置データ読込部C5は、
図11のCSI等を含む他装置からデータ・情報を読み込む。総合制御部C0(または
図1のコンピュータシステム1)は、他装置から得たデータ・情報や、それを用いて作成したデータ・情報を、表示機器1320(または
図1の表示装置206)の画面に表示することができる。画面に表示できるデータ・情報は、
図3の各種のデータを含む。例えば、画面には、対応付けデータ306に基づいて、試料6についてのSEMの観察画像上に3次元座標情報(特に深さ情報)をマッピングした図を表示することもできる。
【0091】
指示入力部C6は、ユーザが操作機器21を用いて表示機器1320の画面で入力した情報を受け取る。総合制御部C0は、記憶部C7に、試料6の情報、SEMの撮像条件、ステージ139の座標、撮影像1401、座標データ(2次元座標情報)1402、および、CSIから取得した高さマップなどのデータ・情報を記憶する。なお、各種のデータ・情報は関連付けられて保存・管理される。
【0092】
パターン形状解析部C8は、撮影像1401等に基づいて、試料6に含まれている複数のパターン(
図6でのパターン601)の形状を解析し、解析結果情報を得る。
【0093】
演算部C3は、指示入力部C6が受け取った情報と、記憶部C7に格納されているデータ・情報とを用いて、後述するような、ステージ座標、パターン形状の解析および多層構造の深さ情報などに関する演算を実施可能である。
【0094】
なお、上述したCSIの総合制御部C10や、SEMの総合制御部C0は、
図1のコンピュータシステム1の一部として1つに統合して実装されてもよい。すなわち、
図1のコンピュータシステム1が、CSIのコントローラやSEMのコントローラとして機能してもよい。あるいは、CSIの総合制御部C10にコンピュータシステム1(特に解析ソフトウェア210)が統合して実装されてもよいし、SEMの総合制御部C0にコンピュータシステム1(特に解析ソフトウェア210)が統合して実装されてもよい。以下の詳細な実施例では、SEMの総合制御部C0に解析ソフトウェア210が統合されている場合を説明する。この場合、ユーザは、試料6の観察・解析時には、主にSEMの総合制御部C0(それに相当するコンピュータシステム)を操作して作業を行う。試料6の観察・解析に係わる主な処理の主体は、そのSEMの総合制御部C0(それに相当するコンピュータシステム)となる。ユーザは、SEMの総合制御部C0(解析ソフトウェア210)に、CSIからの高さマップデータを読み込み、座標変換などの処理を行わせる。
【0095】
[試料ホルダおよびマーカー]
図15は、実施の形態1で、座標変換のために使用する試料ホルダ8およびマーカー7の構成例を示す。
図15は、試料6を搭載する試料ホルダ8について上から見たx-y面での平面図を示す。なおここではCSI座標系で示す。また、
図16は、
図15の試料ホルダ8について、C-C線に沿ったx-z面での断面図を示す。試料ホルダ8は、例えば試料6をx方向で左右から挟み込むようにして保持する機構を有する。試料ホルダ8は、試料6をx方向で左右から挟み込むようにして固定するための試料固定部81を有する。試料固定部81は所定の方向(例えばx方向)に可動である。
【0096】
また、試料ホルダ8は、座標変換用のマーカー7として、4点のマーカー7を有する。4点のマーカー7を、区別のため、M1,M2,M3,M4とする。本例では、図示のように、左右の2つの試料固定部81において、それぞれの上面に、2個ずつ、マーカー7が形成されている。合計4個のマーカー7(M1~M4)は、四角形の頂点に対応する位置に配置されている。なお、これに限らず、マーカー7は、試料6の近傍に配置されていればよく、試料ホルダ8の試料固定部81の近くに配置されていてもよい。4箇所の4個のマーカー7は、高さが同一で配置されている。
【0097】
これらのマーカー7は、射影変換法と呼ばれる、アフィン変換よりも高精度の座標変換(前述のステップS4)を行うために設けられている。射影変換法では、同一平面上に位置する4点の座標を用いて座標変換が行われる。
【0098】
座標変換の際に、SEMおよびCSIの両方においてコンピュータまたはユーザがなるべく正確にマーカー7の座標を把握または指定できるように、マーカー7は、μmオーダーのエッジを持つマーカーとする。また、4個のマーカー7は、コンピュータおよびユーザが識別できるように、異なる形状のものとすることが好ましい。他の手段を併用することで4個のマーカー7を識別できる場合には、4個のマーカー7は同じ形状のものとしてもよい。本例では、4個のマーカー7は、すべて基本形状を上から見て正方形としており、さらに、拡大図に示すように、その正方形の表面には、マーカーID(本例では番号)が刻印されている。各マーカー7のマーカーIDの形状が異なるので、コンピュータおよびユーザは各マーカー7を識別できる。
【0099】
変形例としては、マーカー7は、試料面に形成されていてもよい。試料表面に形成されている識別可能な複数の形状の箇所がある場合、それらをマーカー7として使用可能である。また、ユーザは、試料6が保持された試料ホルダ8をそのままCSIからSEMへ搬送可能である。なお、SEMの試料室137内に試料ホルダ8を設置する際には、ユーザが作業するが、搬送ロボット等を用いてもよい。
【0100】
[処理フロー(1)]
図17は、実施の形態1の解析システムの処理フローを示し、ステップS101~Sを有する。フローの各ステップの詳細は、後述のGUI画面例とも対応しており、適宜にその画面例を参照して説明する。
【0101】
この解析システムは、試料6の測定・観察・解析などに係わる方法として、前述(
図1)のような研磨装置4において行われるステップ(
図2でのS1)と、表面形状計測装置(CSI)2において行われるステップ(
図2でのS2)と、荷電粒子ビーム装置(SEM)3において行われるステップ(
図2でのS3)と、コンピュータシステム1(実施の形態1ではSEM)において行われるステップ(
図2でのS4等)とを有する。したがって、SEMやコンピュータシステム1だけでなく、それらの研磨装置4やCSIも、解析システムの一部を構成する要素である。
【0102】
ステップS101で、ユーザは、試料6が搭載された試料ホルダ8を、CSI(
図11)のステージ109上に設置する。この際には、試料6の表面(
図6等での表面TS。傾斜面60を含む。)がCSIの照射光WL1(WL1b)と対向するような位置関係で、試料ホルダ8がステージ109上に設置される。すなわち、ステージ109が水平である場合には、傾斜面60を含む表面TSがz方向に対して垂直になるようにx-y面に配置される。この際に表面TSが理想的な水平の状態にはならない可能性もあるが、これには後述の補正で対応可能である。
【0103】
ステップS102では、CSIにおいて、総合制御部C10が、ユーザからの試料6の表面形状の計測指示を受け付け、試料6の表面形状の計測を開始する。CSIによって計測された試料6の表面形状は、3次元座標情報(
図12の3次元座標情報1201、
図3の高さマップデータ302)として取得され、記憶部C16に保存される。
【0104】
CSIにおいて、試料6とともにマーカー7(
図15)の位置を含めて表面形状の計測を行う場合には、マーカー7の位置座標は、3次元座標情報の一部として保存される。また、CSIにおいて、マーカー7の位置を含まずに、試料6の傾斜面60のみの3次元座標情報を取得する場合には、マーカー7の3次元座標情報は、別途、CSIのステージ座標に基づいて取得され、試料6の3次元座標情報と関連付けて保存される。
【0105】
ステップS102でCSIの高さマップ(3次元座標情報)が取得されると、試料6をSEMに挿入して観察する前に、ユーザが、この高さマップのデータを用いて、試料6の出来栄えについて判断することも可能である。
【0106】
ステップS103では、CSIの総合制御部C10(またはコンピュータシステム1)により、ステップS102で取得された3次元座標情報についての面補正が実行される。この面補正は、必須ではないが、実行することで精度を高めることができる。ステップS103では、CSIでの試料6の設置状態に応じて生じているかもしれない試料6全体の傾斜を、面補正により補正する。この面補正では、3次元座標情報(高さマップ)は、試料6の表面がステージ109の設置面(例えば水平面)に対し傾斜が無く平行となるようにする補正である。この面補正は、一面近似補正などが適用できる。この面補正をしておくことで、CSIで取得された3次元座標情報の精度を向上させることができ、その後のその3次元座標情報を用いた各処理の精度を高めることが可能である。
【0107】
ステップS104では、ユーザは、試料6が搭載された試料ホルダ8を、CSIからSEMへ搬送する。ユーザは、試料ホルダ8をSEM(
図13)の試料室137内のステージ139上に設置する。その際には、試料6の表面(
図6等での傾斜面60を含む表面TS)が電子銃133からの荷電電子ビームEB1と対向するような位置関係で、試料台8がステージ139上に設置される。ステージ139の設置面が水平である場合には、試料6の表面がZ方向に対して垂直であるX-Y面に配置される。
【0108】
また、ユーザは、ステップS103で面補正された後の3次元座標情報(高さマップ)をSEMの総合制御部C0に読み込む。総合制御部C0は、ユーザの操作に基づいて、その3次元座標情報(高さマップ)を、記憶部C7に保存する。
【0109】
ステップS105では、撮像の準備として、SEMによる荷電粒子ビームEB1の照射が開始される。この際には、ユーザが表示機器1320の画面を見ながら操作機器1321を操作することで、SEMによる荷電粒子ビームEB1の照射がされる。また、撮像の準備として、ユーザの操作に基づいて、SEMの荷電粒子ビームEB1による観察条件(言い換えると撮像条件)が設定される。この際には、ユーザが表示機器1320の画面を見ながら操作機器1321を操作することで、観察条件が設定される。また、その次に、ユーザは、試料6の表面に対する荷電粒子ビームEB1の焦点合わせ、および倍率の変更などを含む一般的なアライメントを行う。なお、ステップS105の準備は、後で実際に撮像する段になってから行うようにしてもよい。
【0110】
ステップS106では、ユーザの操作に基づいて、解析ソフトウェア210(アプリケーションとも記載する)が起動される。アプリケーションが起動されると、表示機器1320の表示画面に、
図18のような操作画面が表示される。操作画面では特に「3次元アライメント機能」としてタイトルを記載している。本解析システムの機能は、SEMにおいてCSIデータとの座標変換および対応付けによって3次元でのアライメントを実現できるものである。
【0111】
図18の操作画面は、主に、ユーザが総合制御部C0に対して指示を入力するため、およびユーザが総合制御部C0から各情報を得るために用いられる。また、操作画面は、その指示や情報に基づいて、CSIの3次元座標情報と、SEMに設置された試料6(またはステージ139)の座標(2次元座標情報)とを対応付ける座標変換などのために用いられる。ユーザは、操作画面を見ながら、必要な情報を設定や指定し、座標変換等に係わる一連の動作を、アプリケーションにより殆ど自動的に実行させて、結果を表示させることができる。また、ユーザは、操作画面で、適宜に、各動作を手動操作で実行させることもできる。
【0112】
図17のステップS107~ステップS110は、解析ソフトウェア210の本処理である座標変換や高さ補正に関する一連の動作の自動実行処理のための準備のプロセスに相当する。以下では、座標変換などに関する一連の動作を自動的に実行させる場合の例を示す。ユーザは、操作画面で一通りの情報を確認・設定・入力し、その後に実行ボタンを押す。そうすれば、あとは、アプリケーションによる座標変換などの一連の処理が自動的に実行され、結果が画面に表示されるとともに保存される。ユーザによる手動操作で行いたい場合には、画面内に各動作のためのボタン等のGUIが設けられているので、ユーザが所望の動作のボタン等を操作すれば、その動作のみを実行させて結果を出力させることができる。
【0113】
[操作画面]
図18の操作画面には、自動座標変換実行ボタンB1、自動座標変換一時停止ボタンB2、自動座標変換停止ボタンB3、および条件設定欄1801が設けられている。3つのボタン(B1,B2,B3)は、CSIの3次元座標情報とSEMの2次元座標情報とを対応付けるための座標変換などに関する一連の動作(
図2でのステップS4やS5、
図17でのS111)の自動実行に関する操作用のボタンである。
【0114】
条件設定欄1801には、上から順に、3次元座標情報(CSIデータ)選択ボタンB4、マーカーパターン画像選択欄1802(低倍率選択ボタンB5、中倍率選択ボタンB6、および高倍率選択ボタンB7)、マーカー位置座標登録欄1803(マーカー位置座標登録ボタンB9)、試料情報入力欄1804(層数入力ボタンB9、1層の厚み入力ボタンB10、試料情報登録ボタンB11)、高さ基準座標登録欄1805(補正方法選択ボタンB12、2次元情報表示欄B13、高さ基準座標入力欄B14、高さ基準座標登録ボタンB15)等を有する。
【0115】
ステップS107では、ステップS104でSEMの記憶部C7に保存されている3次元座標情報が、ユーザがCSIデータ選択(3次元座標情報参照)ボタンB4を操作することで、呼び出される。総合制御部C0のプロセッサは、メモリ上に各種のデータを読み出して、プログラムに基づいた処理を実行し、処理結果を適宜に記憶部C7に保存する。
【0116】
ステップS108では、SEM上で事前に取得しておいた座標変換用のマーカー7(
図15)の撮影像を、マーカー7のパターンマッチング用の画像(マーカーパターン画像)として、記憶部C7の所定の場所に保存しておく。そして、ユーザが、指定の解像度に応じた画像登録ボタン(B5,B6,B7)を選択して操作することで、それらの撮影像(マーカーパターン画像)を登録する。
【0117】
マーカー7のパターンマッチング用の画像は、座標変換を行うためのマーカー7の一部または全体を切り取った画像であり、本例では、低倍率(LM),中倍率(MM),高倍率(HM)といった3種類の各解像度(倍率)の画像が登録可能である。マーカー7のパターンマッチング用の画像は、座標変換の際に、パターンマッチングによってマーカー7の位置座標(X,Y)を自動的に検出するために用いられる。ここで、マーカー7のパターンマッチング用の画像は、すべて、マーカー7のエッジなどの目印となる位置が中心に配置されている。本例では、より高精度なパターンマッチングのために、各解像度のパターンが選択設定できるようになっている。
【0118】
ステップS109では、座標変換用のマーカー7の位置座標の登録が行われる。ユーザは、マーカー位置座標欄1803で、マーカー7の位置座標を確認し登録する。マーカー位置座標欄1803では、予め記憶部C7に保存しておいた、CSIで取得したマーカー7の中心の座標(x,y)と、SEMで取得したマーカー7の中心の座標(X,Y)とがそれぞれ、座標変換の際に用いるマーカー7の数だけ登録される。この際には、マーカー位置座標欄1803の表のマーカー7(本例では3個)の座標を確認した後、ユーザがマーカー座標登録ボタンB8を操作することで、それらのマーカー位置座標情報が登録される。
【0119】
マーカー位置座標欄1803は、初期ではプロセッサが自動的に値を入力・提示してもよい。自動入力の場合、例えば、CSIの2次元座標(x,y)は、CSIの高さマップの外側のCSIステージ座標系でのマーカー7の2次元座標(x,y)が入力される。ユーザ入力の場合、ユーザが画面でCSIマップ等のデータを見て、マーカー7の2次元座標(x,y)を入力してもよい。SEMの2次元座標(X,Y)については、自動入力の場合、プロセッサが撮影像から検出したマーカー7の位置座標が入力される。あるいは、ユーザ入力の場合、ユーザが画面でSEMの撮影像からマーカー7の位置を指定して入力してもよい。
【0120】
ステップS107およびステップS109の操作は、後述するステップS111のアプリケーションの実行の動作として実現することも可能であり、その場合にはユーザの操作を最低限として全自動で動作させることができる。
【0121】
ステップS110では、試料6の情報の入力、高さ基準座標の指定、および任意の観察位置の指定(設定)が行われる。まず、試料6の情報の入力では、ユーザは、試料情報欄1804で、試料6(3次元NANDデバイス)の情報を入力する。本例では、試料情報欄1804で、多層構造(
図7の多層構造62等)の層数を層数入力ボタンB9で入力でき、多層構造の1層の厚さ(nm単位)を1層の厚さ入力ボタンB10で入力できる。変形例では、試料情報欄1804で、各層の厚さが異なる場合の各層の厚さや、多層構造の1層目が始まる深さ(表面TSから1層目までの距離、
図8での距離801)を入力できる。ユーザは、入力値を確認した後、試料情報登録ボタンB11を操作することで、登録できる。
【0122】
試料情報の入力は、ユーザの手動入力に限らず、例えば
図3の設計データ301を利用してもよい。試料6の設計データ301に含まれている、パターンや積層構造に関する情報を含む各種の情報を取り込むことができる。プロセッサは、設計データ301内から、層数、1層の厚み、表面から第1層までの深さ等の情報を抽出してもよい。
【0123】
ここで、総合制御部C0の演算部C3は、ユーザによって入力されている試料情報(多層構造の層数、1層の厚さまたは各層の厚さ、および、多層構造の1層目が始まる深さなど)と、CSIの3次元座標情報とを照合することで、試料6に含まれている多層構造の深さ情報、および層数の情報を取得することができる。
【0124】
すなわち、演算部C3は、CSIの3次元座標情報での所定位置が、試料6の表面TSからどの程度の深さであるのか、および、多層構造の何層目に相当するのか等を知ることができる。言い換えれば、多層構造の深さ情報は、試料6の表面TSからの3次元座標情報上の所定位置の深さおよび層数を含んでいる。
【0125】
ステップS110の高さ基準座標の指定では、ユーザは、高さ基準座標欄1805で、高さ基準座標を登録する。ユーザは、SEMの表示装置1320において、二次電子または反射電子像を表示させ、操作機器1321を用いて、まず多層構造の第1箇所を二次電子または反射電子像の表示エリアB13の中心に移動させる。ユーザは、この中心の座標にて、高さ基準座標登録ボタンB15を操作する。第1箇所は、本例では多層構造の1層目の一箇所である。本例では表示エリアB13の像において、
図9のような傾斜面60が曲面である場合の積層構造62を示している。本例では、1層目のリング状の領域のうちで第1箇所が高さ基準位置として設定される。これにより、総合制御部C0は、第1箇所を第1高さ基準座標(X1,Y1)として指定する。指定された高さ基準座標は、記憶部C7に保存される。同様に、高さ基準座標欄1805で、多層構造の第1箇所と同様の高さであると考えられる、他の箇所が、高さ基準座標として登録される。
【0126】
図18中の例では、補正方法ボタンB12で「2点補正」が選択されており、高さ基準座標として2点(第1箇所、第2箇所)を指定する場合を示している。表示エリアB13では、同じ1層目におけるリング状の領域のうち対向する2箇所(P1,P2)が、第1高さ基準座標(X1,Y1)、第2高さ基準座標(X2,Y2)として指定された場合を示している。右側の表B14には、各高さ基準座標の値(X,Y)が表示される。
【0127】
図19は、別の例として、高さ基準座標欄1805で、補正方法として「3点補正」が選択されており、高さ基準座標として3点(第1箇所、第2箇所、第3箇所)を指定する場合を示している。表示エリアB13では、同じ層におけるリング状の領域のうち概略的に三角形の頂点である3箇所(P1,P2,P3)が、第1高さ基準座標(X1,Y1)、第2高さ基準座標(X2,Y2)、第3高さ基準座標(X3,Y3)として指定された場合を示している。
【0128】
高さ基準座標の指定において、
図18のように、補正方法として2点補正が選択され、第1箇所および第2箇所のみが登録された場合、
図21に示すように、演算部C3は、2点を用いて2次元の高さ補正を行う。この際の高さ補正の方法は、1次線形近似補正等が適用できるが、これに限定されない。
【0129】
また、基準座標の指定において、
図19のように,第1箇所から第3箇所までが指定された場合、
図22に示すように、演算部C3は、3点を用いて3次元の高さ補正を行う。この際の高さ補正の方法は、1次面近似補正等が適用できるが、これに限定されない。
【0130】
なお、本例における多層構造62の1層目は、
図9等のように、試料6の表面TSに最も近い層(第1層L1)であり、多層構造62の最上層に相当する。
【0131】
また、SEMにおいて多層構造を明確に確認できる試料6であれば、例えば多層構造の1層目のように、層数を確認しやすい層を、高さ基準座標に指定することが容易である。しかしながら、試料6によっては、多層構造が明確に確認できないことも想定される。その場合、例えば、試料6の特定のパターンの位置、または、その他の形状を有する構造体の位置を、高さ基準座標(X,Y)として指定することもできる。
【0132】
図20の画面は、
図18の操作画面に連続している部分であり、特に観察位置設定欄1806、表示視野の高さ表示欄1807を示す。観察位置設定欄1806は、「表面からの層数」入力ボックスB16、「表面からの深さ」入力ボックスB17を有する。
【0133】
ステップS110の任意の観察対象位置の設定では、
図20に示すように、観察位置の設定方法として、ユーザは、「表面からの層数」入力ボックスB16で、試料6の表面TSからの層数を選択/入力し、または、「表面からの深さ」入力ボックスB17で、表面TSからの深さを選択/入力する。これにより、指定された層数または深さの位置に直接的に移動させることが可能である。層数や深さを指定する際には、画面にCSIの高さマップなどを表示し、ユーザが指定した箇所が分かるように、その高さマップ上にカラー表示するなどして示してもよい。本例では、表示エリアB18に、CSIの高さマップ(模式で図示している)が表示されており、
図9のような傾斜面60が曲面である場合の表面において、リング状の層がわかるように表示されている。この表示上において、ユーザは、マウスクリックなどの操作をすることにより、観察する視野(位置)をより具体的に指定することが可能である。
【0134】
尚、高さ基準座標の設定として上記2点補正や3点補正を説明したが、高さ基準座標の設定は、試料の少なくとも1点を用いて高さ設定することとしてもよい。CSI座標、SEM座標の水平面設定が完了もしくは不要の場合には、高さの設定として1点でも設定は可能である。
【0135】
右側の表B19では、表示エリアB18で指定された各観察位置座標が表示される。あるいは、表B19で各観察位置座標を入力できる。なお1つの観察位置座標と1つの観察視野とが対応関係を有する。
【0136】
例えば、同一層内の構造のばらつきを評価する際には、同一層内で複数の箇所が観察領域として指定される。
図20の表示エリアB18の例では、例えば50層目における番号1~4で示す4箇所の観察領域(観察位置座標)が指定されている。あるいは、例えば100層目における番号5~8で示す4箇所の観察領域(観察位置座標)が指定される。このように、同一層内で複数の観察領域を指定することで、同一層内の構造のばらつきを評価可能である。
【0137】
また、例えば、複数の層にわたって構造のばらつきを評価する際には、複数層にわたって複数の観察領域を指定してもよい。例えば、番号1と番号5との2つの箇所、あるいは番号2と番号6との2つの箇所である。また、単一視野を観察する場合には、単一の視野(観察位置座標)のみの指定も可能である。指定された観察領域は、番号の順に観察されるか、ユーザが任意に選択した順に観察される。
【0138】
また、ステップS110での観察対象位置の指定の際には、GUI画面で、観察対象領域を制限して、その制限された領域の中から観察対象位置を指定するようにしてもよい。例えば、
図9の試料6の例では、傾斜面902のうち一部の領域のみが観察対象領域(傾斜面60)として制限される。また、他の制限の方法としては、切断面(例えば縦断面)に対応するようなラインをユーザが指定できるようにしてもよい。例えば、
図9の例では、円形状の傾斜面902の領域に対し、任意の位置に、
図10のような鉛直方向での切断面をとるためのラインを指定できるようにする(例えば円形の中心点の周りに任意の角度でのライン)。プロセッサは、指定されたラインに対応する切断面を制限領域として、その制限領域内でユーザに指定された箇所を観察対象位置とする。
【0139】
また、変形例として、別の処理フロー構成例は、以下でもよい。操作画面ですべての項目の情報をユーザが入力・設定していない状態でも、一旦、プロセッサは、ステップS111のアプリケーションを実行し、CSIとSEMとの間での座標変換および対応付けを行う。その後、ユーザは、操作画面で、例えば高さ基準位置などの設定を行い、プロセッサはその高さ基準位置を用いた高さ補正を行うことが可能である。
【0140】
[処理フロー(2)]
ステップS111では、解析ソフトウェア210のアプリケーションが実行される。ユーザが操作画面の自動座標変換実行ボタンB1を操作することで、アプリケーション(SEMの総合制御部C0)は、ステップS107~110で入力・設定等された各種データ・情報に基づいて、座標変換などの処理を自動で実行する。
【0141】
まず、自動座標変換実行ボタンB1が操作されると、SEMは、マーカー7のパターンマッチング用の低倍率画像と同様の倍率に設定される。続いて、総合制御部C0は、記憶部C7に記憶されているCSIの3次元座標情報を呼び出し、3次元座標情報に含まれている座標変換用のマーカー7の座標の情報を抽出する。総合制御部C0は、その情報から、SEM上のマーカー7の座標を算出し、マーカー7の第1箇所(第1マーカーM1)の周辺にステージ139を移動させる。
【0142】
次に、総合制御部C0は、ステップS108で読み込んだマーカーパターン画像の低倍率画像を読み込み、低倍率で取得したマーカー7の第1箇所の画像を用いてパターンマッチング処理を実行する。パターンマッチング後、総合制御部C0は、マーカー7の中心位置の、マーカーパターン画像とのずれ量を算出し、正しいマーカー7の座標を記憶部C7に保存する。この動作をマーカー7の他の3箇所(M2~M4)に対しても同様に実行する。
【0143】
さらに、総合制御部C0は、マーカー7のパターンマッチング用の中倍率画像および高倍率画像を用いて、同様の動作を順に実行し、SEM上でのマーカー7の座標を正確に登録する。この際、マーカーパターン画像の撮像倍率とSEMの表示装置1320での二次電子または反射電子像の表示エリアに表示している二次電子または反射電子像の倍率は、同一の倍率に設定される。
【0144】
総合制御部C0は、CSIの3次元座標情報上のマーカー7のxy座標情報とSEM上のマーカー7のXY座標情報とを用いて、射影変換法の変換係数を算出し、射影変換法を用いて、CSIの3次元座標情報の全体のxy座標を、SEM上のXY座標に変換する。
【0145】
次に、総合制御部C0は、ステップS110で登録された例えば3箇所の基準高さ座標を用いて、それらの位置が同一の高さとなるように、座標変換後の3次元座標情報の高さを補正する(
図21,
図22)。この高さ補正方法としては、例えば1次面近似補正等を適用する。
【0146】
図21や
図22は高さ補正の例を示している。高さ補正では、概略的に同じ高さ・深さにあると思われる基準位置を2点以上、ユーザが指定する。具体的には、同じ層の領域から2点以上を指定すれば、その2点以上の位置は、概略的に同じ高さ・深さにある。もしくは、プロセッサが、設計データ301や高さマップやSEMの撮影像等に基づいて、自動的に、同じ層における概略的に同じ高さ・深さにあると思われる基準位置を2点以上、抽出してもよい。総合制御部C0は、それらの複数の基準位置を用いて、高さ補正を行う。これにより、高さ補正後の座標情報は、層や深さの指定が高精度に保証される。なお、高さ補正を行わない形態も可能である。
【0147】
高さ補正について補足する。座標変換の後には高さ補正を行う必要がある。これは、試料6全体に、面補正(
図17でのステップS103)によって補正しきれない傾斜等がある場合に、面補正の結果のみでは、深さと層数が高精度に一致せず、ユーザが求める層数のXY位置での観察ができない可能性があるためである。この傾斜等を考慮し、深さと層数を高精度に一致させるために、高さ補正が行われる。SEMで観察した例えば3点(同じ層にある概略的に高さが同じである3点)を用いる。高さ補正は、この3点が同じ層にあるという情報を利用する。
図22のように3点を用いる場合には面での補正(3次元的な高さ補正)が可能であり、
図21のように2点を用いる場合には線での補正(2次元的な高さ補正)が可能である。
【0148】
また、総合制御部C0は、ステップS110で入力された情報に基づいて、高さ補正後の3次元座標情報において試料表面からの深さと層数との関連付けを行う。これにより、ユーザは、深さだけでなく、層数でも、観察位置を指定可能になる。
【0149】
最後に、総合制御部C0は、ステージ制御部C2からステージ制御装置1310を制御することで、ステップS110で登録された観察位置に、ステージ139を移動させる。総合制御部C0は、走査信号制御部C1の制御によって、試料6の表面TSに対してZ方向から荷電粒子ビームEB1を照射させ、対物レンズ136を用いて、ステップS110で登録された観察位置における焦点合わせを行わせ、撮像させる。
【0150】
ステップS110で指定されている観察位置が複数ある場合には、例えば
図18の操作画面の上部から順に、あるいはユーザが指定した順に、連続かつ自動で処理することで、複数の撮像・観察が可能である。さらに、指定した観察位置において目的の画像の撮像に失敗した場合、画像処理技術などによって自動で観察画像の良否を判断し、その付近の画像を自動で撮像することも可能である。撮像の失敗は、例えば試料6の表面にごみなどの異物がある視野を撮像した場合や、意図しない構造である視野を撮像した場合が挙げられる。
【0151】
また、ステップS111で取得された各座標および多層構造の深さ情報などは、
図23のような記録表として記録され、記憶部C7に保存される。
図23の記録表は、項目として、番号、ファイル(観察画像)、座標(X,Y)、試料表面からの深さ(D)、試料表面からの層数(L)、解析パターンファイル等を有する。解析パターンファイルは、後述のパターン解析の結果のファイルである。総合制御部C0は、WDプロファイル上の所定位置を基に演算することによって、試料6の表面TSからの位置の深さ(D)および層数(L)を取得できる。
【0152】
以上のように、本解析システムでは、試料6の3次元情報をnmオーダーで取得することができ、多層構造の深さ情報を、迅速かつ高精度に取得することができる。
【0153】
なお、試料6によっては、研磨処理によって形成された観察面(傾斜面60)が、目標とする表面形状ではない場合がある。例えば、観察面に凹凸が存在している場合がある。この場合、CSIの3次元座標情報によって、ユーザは、観察面の形状の成否を迅速に判断することができる。例えば、観察面の凹凸の差が大きい場合、ユーザは、同一の高さの他の観察範囲を利用できる。
【0154】
[解析]
ステップS112では、総合制御部C0は、試料6に含まれる複数のパターン(例えば
図6~
図10、パターン(チャネルホール)601、パターン61)の解析を行う。
【0155】
図24は、パターン解析用の操作画面を示す。ユーザは、この画面を見ながらパターン解析の作業を行う。
図24の操作画面には、撮影像表示欄2401、画像読込設定欄2402、パターン検出ボタンB31およびパターン解析ボタンB32を有する。また、画像読込設定欄2402には、読込ボタンB33および参照ボタンB34を有する。
【0156】
画像読込設定欄2402において、ユーザが、試料6の層数(L)または深さ(D)を入力し、読込ボタンB33を操作する。これにより、総合制御部C0は、ステップS112でSEMによって撮影された撮影像を、撮影像表示欄2401に表示する。なお、ユーザが参照ボタンB34を操作した場合には、過去に取得された撮影像を選択して参照することもできる。本例では、撮影像表示欄2401に、
図7等と同様に傾斜面60が平面である場合のパターン61を含む表面が写っている。各パターン61は楕円状である。ここでは層の形状は図示していない。
【0157】
次に、ユーザがパターン検出ボタンB31を操作すると、総合制御部C0は、画像認識技術を用いて複数のパターン61を検出し、複数のパターン61に識別のための番号を付与し、それらの番号を、撮影像表示欄2401にも表示する。
【0158】
図25は、撮影像表示欄2401の撮影像において検出されている複数のパターン61についての情報を表示する表(パターン情報欄)である。総合制御部C0は、
図24の画面内にこの表を表示する。この表は、項目として、パターン番号、パターン長軸径、パターン短軸径、パターン平均径、パターン真円度等を有する。
【0159】
次に、ユーザがパターン解析ボタンB32を操作すると、パターン形状解析部C8は、画像認識技術を用いて、観察座標(x,y,z)における複数のパターン61の各々の径を自動で計測する。そして、パターン形状解析部C8は、複数のパターン61の各々について、長軸径、短軸径、平均径、および真円度などのパターン形状情報を取得する。これらのパターン形状情報は、
図24の表に表示されるとともに、記憶部C7に保存される。
図24中のパターン61に記載している矢印は、長軸径、短軸径を表している。パターン平均径は、パターン61の領域の面積を算出し、このパターン形状を真円と仮定した場合に、その面積から算出できる半径に相当する。真円度は、長軸径、短軸径から算出でき、パターン61の形状の真円への近さを表す。本例では、一部のパターン61(番号1)は、長軸径に対し短軸径が小さく、真円度が低くなっており、このことから、加工不良などの可能性が推定できる。
【0160】
なお、ここで説明している観察座標(x,y,z)は、観察している撮影像の中心位置の座標を示している。したがって、演算される層数も、観察している撮影像の中心位置における層数のことを表す。
【0161】
総合制御部C0は、取得されたパターン形状情報を、
図25のように記録表(パターン情報)に記録し、観察した撮影像と関連付けて出力できる。また、総合制御部C0は、そのパターン情報のファイルを、
図23の記録表の「パターン解析ファイル」列に関連付けて保存する。
【0162】
さらに、ステップS111で取得した観察画像と、ステップS112で行ったパターン解析結果は、
図26に示す通り、3次元の高さマップ上に示す観察位置と関連付けて同時に表示することが可能である。表2601では、観察位置座標2602と関連付けて、解析結果2603が表示されている。観察画像欄2604では、各観察位置の観察画像が表示されており、ユーザが確認できる。
【0163】
以上のように、実施の形態1の解析システムによれば、CSIとSEMとの連携、座標変換に基づいて、試料6の多層構造62の深さ情報を取得できるだけでなく、解析によって試料6に含まれる複数のパターンのパターン形状情報も取得することができる。
【0164】
なお、実施の形態1では、ユーザが試料表面からの深さまたは層を指定してから、指定した深さまたは層の位置を対象にSEMで観察する手法について主に説明した。これに限らず、実施の形態1でも、
図5の(B)の機能と同様に、初めにSEMで試料6の観察を行い、その観察した領域について、試料表面からの深さ(言い換えると表示視野の高さ)または層を自動的に算出することが可能である。
【0165】
図20の画面の下部の表示視野の高さ表示欄1807では、SEMの撮影像(表示視野)におけるユーザが指定した所望の箇所2001について、総合制御部C0が試料表面からの深さ(言い換えると表示視野の高さ)または層を自動的に算出し、表面からの層数欄B21、表面からの深さ欄B22に表示する。
【0166】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0167】
1…コンピュータシステム、2…表面形状計測装置(CSI)、3…荷電粒子ビーム装置(SEM)、4…研磨装置、5…MES、6…試料、7…マーカー、8…試料ホルダ、210…解析ソフトウェア。