(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/53 20140101AFI20241106BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241106BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B23K26/53
B23K26/00 N
B23K26/00 P
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2020200060
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】植木原 明
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077767(JP,A)
【文献】特開2014-018906(JP,A)
【文献】特開2018-004344(JP,A)
【文献】特開2015-170697(JP,A)
【文献】特開2021-141248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/53
B23K 26/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、前記切断予定ラインに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置において、
前記レーザ加工領域を形成するときに前記レーザ光の集光点の位置を移動させる集光点位置移動手段と、
前記レーザ加工領域を形成するときにおける前記レーザ光の加工パワーを変更する加工パワー変更手段と、
前記レーザ加工領域から伸展する亀裂の位置を検出する亀裂検出手段と、
前記亀裂の検出結果に応じて、前記集光点の位置又は前記加工パワーを変更してレーザ加工を行う制御手段と、
前記レーザ加工領域から伸展する亀裂が所定の亀裂形成条件を満たすレーザ加工条件を示す加工レシピを作成する加工レシピ作成手段と
を備え、
前記制御手段は、前記レーザ加工領域の層ごとに、前記集光点の位置及び前記加工パワーのうちのいずれか一方を固定し、他方を変更してレーザ加工と亀裂検出とを繰り返し、
前記加工レシピ作成手段は、前記亀裂形成条件を充足可能な前記他方の最適値を取得して、前記加工レシピを生成する、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記加工レシピ作成手段は、前記被加工物の界面に最も近いレーザ加工領域から伸展する亀裂の下端位置又は上端位置が前記被加工物の界面に到達するか否かを示す第1の亀裂形成条件を満たす前記レーザ光の集光点の位置又は前記加工パワーの条件を前記加工レシピに保存する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工レシピ作成手段は、前記被加工物の深さ方向に隣り合うレーザ加工領域から伸展する亀裂がつながるか否かを示す第2の亀裂形成条件を満たす前記レーザ光の集光点の位置又は前記加工パワーの条件を前記加工レシピに保存する、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、前記切断予定ラインに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工方法において、
前記レーザ加工領域を形成するときに前記レーザ光の集光点の位置を移動させる集光点位置移動工程と、
前記レーザ加工領域を形成するときにおける前記レーザ光の加工パワーを変更する加工パワー変更工程と、
前記レーザ加工領域から伸展する亀裂の位置を検出する亀裂検出工程と、
前記亀裂の検出結果に応じて、前記集光点の位置又は前記加工パワーを変更してレーザ加工を行う制御工程と、
前記レーザ加工領域から伸展する亀裂が所定の亀裂形成条件を満たすレーザ加工条件を示す加工レシピを作成する加工レシピ作成工程と
を備え、
前記制御工程は、前記レーザ加工領域の層ごとに、前記集光点の位置及び前記加工パワーのうちのいずれか一方を固定し、他方を変更してレーザ加工と亀裂検出とを繰り返す工程を含み、
前記加工レシピ作成工程では、前記亀裂形成条件を充足可能な前記他方の最適値を取得して、前記加工レシピを生成する、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ加工装置及び方法に係り、被加工物の内部に亀裂を形成して被加工物を割断するレーザ加工装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン等の被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、加工ラインに沿って被加工物内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(レーザダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザ加工領域が形成された被加工物は、その後、エキスパンドやブレーキングといった割断プロセスによって分割予定ラインで割断されて個々のチップに分断される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザダイシング装置により被加工物にレーザ加工領域を形成すると、そのレーザ加工領域から被加工物の深さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。その亀裂が被加工物の内部で十分に伸展している場合には、割断プロセスにおいてチップへの分断を適正に行うことが可能である。一方、亀裂の伸展が不十分な場合には、チップの割断面が割断予定ラインに対して曲がったり(蛇行)、チッピングが発生しやすくなる。
【0005】
チップの割断面の蛇行及びチッピングの発生を防止するためには、レーザ加工におけるレーザの強度及び照射時間等の条件(以下、加工条件という。)を最適化する必要がある。従来は、被加工物に対するレーザ加工、割断、割断面の観察及び評価並びに加工条件の再設定を繰り返し実施することにより、最適な加工条件を決定していた。上記のような加工条件の決定は、時間及びコストがかかる。
【0006】
また、最適な加工条件の決定後に、装置の状態の経時的な変化等に起因して、加工品質が低下する場合がある。しかしながら、被加工物の加工が開始されると、割断するまで品質の検査を行うことができないため、加工品質の低下の検知には時間がかかる。例えば、被加工物1枚当たりの加工時間は5分から40分程度であるのに対して、レーザ加工後の被加工物の割断が行われるのは数日後になる場合がある。この場合、加工品質の低下が生じた後にも、被加工物のレーザ加工が連続的に行われることになり、不良品の数が膨大になる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被加工物のレーザ加工を行う際の加工条件を効率的に決定することが可能なレーザ加工装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るレーザ加工装置は、被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置において、レーザ加工領域を形成するときにレーザ光の集光点の位置を移動させる集光点位置移動手段と、レーザ加工領域を形成するときにおけるレーザ光の加工パワーを変更する加工パワー変更手段と、レーザ加工領域から伸展する亀裂の位置を検出する亀裂検出手段と、亀裂の検出結果に応じて、集光点の位置又は加工パワーを変更してレーザ加工を行う制御手段と、レーザ加工領域から伸展する亀裂が所定の亀裂形成条件を満たすレーザ加工条件を示す加工レシピを作成する加工レシピ作成手段とを備える。
【0009】
本発明の第2の態様に係るレーザ加工装置は、第1の態様において、加工レシピ作成手段は、被加工物の界面に最も近いレーザ加工領域から伸展する亀裂の下端位置又は上端位置が被加工物の界面に到達するか否かを示す第1の亀裂形成条件を満たす加工位置又は加工パワーの条件を加工レシピに保存する。
【0010】
本発明の第3の態様に係るレーザ加工装置は、第1又は第2の態様において、加工レシピ作成手段は、被加工物の深さ方向に隣り合うレーザ加工領域から伸展する亀裂がつながるか否かを示す第2の亀裂形成条件を満たす加工位置又は加工パワーの条件を加工レシピに保存する。
【0011】
本発明の第4の態様に係るレーザ加工方法は、被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を切断予定ラインに沿って照射し、切断予定ラインに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工方法において、レーザ加工領域を形成するときにレーザ光の集光点の位置を移動させる集光点位置移動工程と、レーザ加工領域を形成するときにおけるレーザ光の加工パワーを変更する加工パワー変更工程と、レーザ加工領域から伸展する亀裂の位置を検出する亀裂検出工程と、亀裂の検出結果に応じて、集光点の位置又は加工パワーを変更してレーザ加工を行う制御工程と、レーザ加工領域から伸展する亀裂が所定の亀裂形成条件を満たすレーザ加工条件を示す加工レシピを作成する加工レシピ作成工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被加工物の内部における所望の亀裂形成条件を充足可能な加工レシピを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの構成を示したブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した裏面研削装置の構成を示した概略ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したレーザ加工装置の構成を示した概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した分割装置の動作を時系列的に示した説明図である。
【
図5】
図5は、レーザ加工装置に搭載された亀裂検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、ウェーハに対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
【
図7】
図7は、ウェーハに対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
【
図8】
図8は、ウェーハに対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
【
図9】
図9は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である。
【
図10】
図10は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である。
【
図11】
図11は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である。
【
図12】
図12は、ウェーハからの反射光が対物レンズ瞳に到達する経路を示した説明図である。
【
図13】
図13は、ピエゾアクチュエータの移動量(μm)と検出器本体から出力される検出信号(V)との関係を示したグラフである。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、レーザ加工条件の設定工程を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、1層目(n=1)の場合の加工位置の条件設定工程を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、1層目(n=1)の場合の加工パワーの条件設定工程を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、n層目(n>1)の場合の加工位置の条件設定工程を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、n層目(n>1)の場合の加工パワーの条件設定工程を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、レーザ加工装置及び亀裂検出装置の制御部の機能を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明に係るレーザ加工装置及び方法の実施の形態について説明する。
【0015】
まず、実施形態のレーザ加工装置を説明する前に、このレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの概要について簡単に説明する。なお、本実施形態では、被加工物としての半導体ウェーハとしてシリコンウェーハ(以下、「ウェーハ」と略称する。)を例示して説明するが、例えば、ガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等の他の半導体ウェーハであってもよい。また、半導体ウェーハに限定されるものではなく、レーザ加工によって内部にレーザ加工領域が形成可能な被加工物であれば適用可能である。すなわち、被加工物の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料からなる部材を被加工物として用いることもできる。
【0016】
[レーザ加工システム]
図1は、実施形態に係るレーザ加工装置10を含むレーザ加工システム100の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、レーザ加工システム100は、裏面研削装置200と、レーザ加工装置10と、分割装置300と、を含んでいる。
【0018】
レーザ加工システム100では、まず、裏面研削装置200にウェーハが搬送され、裏面研削装置200において、ウェーハの裏面を研削するバックグラインド(裏面研削)が行われる。裏面研削装置200によりバックグライドされたウェーハは、例えば250μm以下の厚さに薄化される。なお、バックグラインドを行うに際し、ウェーハの表面には予め保護シートが貼り付けられており、この保護シートによってウェーハの表面に形成されたデバイス(デバイス層)が保護されている。ここで、本明細書において、ウェーハの二つの面のうち、デバイスが形成された面をウェーハの「表面」と称し、表面の反対側の面を「裏面」と称することにする。
【0019】
裏面研削装置200によってバックグラインドが行われたウェーハは、レーザ加工装置10に搬入され、レーザ加工装置10において、レーザ光によりウェーハの内部にレーザ加工領域が切断予定ラインに沿って形成される。
【0020】
全ての切断予定ラインにレーザ加工領域が形成されたウェーハは、その裏面がダイシングテープを介してダイシング用フレームに搭載(マウント)される。この状態でウェーハの表面に貼り付けられていた保護シートが剥離される。
【0021】
次に、ウェーハは、ダイシング用フレームごと分割装置300に搬入され、分割装置300において、ダイシングテープが放射状に引き伸ばされて、ウェーハが個々のチップに分断される。以上がレーザ加工システム100によるウェーハの加工の流れである。
【0022】
次に、レーザ加工システム100を構成する各装置の構成について説明する。
【0023】
<裏面研削装置>
図2は、裏面研削装置200の概略構成を示したブロック図である。なお、
図2では、裏面研削装置200によって、ウェーハWの二点鎖線で示す裏面Wbが、実線で示す裏面Wb1まで研削された状態が示されている。
【0024】
図2に示すように、裏面研削装置200は、研削ヘッド208と、チャックテーブル218と、研削駆動部202と、テーブル駆動部206と、制御部216と、を備える。
【0025】
研削ヘッド208は、シャフト214の一端(下端)に固定された回転研削盤210と、回転研削盤210の研削面(チャックテーブル218に吸着保持されたウェーハWに対向する面)に取り付けられた砥石212と、を有している。
【0026】
研削駆動部202は、研削ヘッド208をZ方向に移動させるための研削ヘッドZ駆動機構(不図示)と、研削ヘッド208をZ方向周りのθ方向に回転させるための研削ヘッド回転駆動機構(不図示)と、を有している。研削ヘッドZ駆動機構及び研削ヘッド回転駆動機構は、それぞれ、モータやギアを含んで構成される。
【0027】
研削駆動部202は、制御部216からの指令に応じて、研削ヘッドZ駆動機構により研削ヘッド208のZ方向位置を調整すると共に、研削ヘッド回転駆動機構により研削ヘッド208をZ方向周りのθ方向に回転させる。
【0028】
チャックテーブル218は、回転研削盤210に対向する位置に設けられている。チャックテーブル218は、その上面(研削ヘッド208に対向する面)に、ウェーハWを吸着保持する保持面218aを備える。ウェーハWは、その表面Waが保護シート220を介してチャックテーブル218の保持面218aに吸着保持される。
【0029】
テーブル駆動部206は、チャックテーブル218をZ方向周りのθ方向に回転させるためのテーブル回転駆動機構を備えている。テーブル回転駆動機構は、モータやギアを含んで構成される。
【0030】
なお、裏面研削装置200は、研削ヘッド208とチャックテーブル218とのXY方向(水平方向)の相対位置を変化させるためのXY駆動機構を備えていてもよい。XY駆動機構は、上述した研削ヘッドZ駆動機構などと同様に、モータやギアを含んで構成される。XY駆動機構は、研削ヘッド208をXY方向に移動させるものでもよいし、チャックテーブル218をXY方向に移動させるものでもよく、両者をXY方向に移動させるものであってもよい。
【0031】
このように構成される裏面研削装置200によれば、チャックテーブル218の保持面218aにウェーハWが吸着保持された状態でチャックテーブル218によりウェーハWを回転させつつ、不図示のスラリー供給口からスラリーをウェーハWの裏面Wb(被研削面)に供給しながら、研削ヘッド208の研削砥石212をウェーハWの裏面Wbに当接させ且つ研削ヘッド208を回転させることにより、ウェーハWの裏面Wbの研削が行われ、ウェーハWが所望の厚さに薄化される。
【0032】
<レーザ加工装置>
図3は、実施形態に係るレーザ加工装置10の概略構成を示したブロック図である。
【0033】
図3に示すように、レーザ加工装置10は、加工ヘッド16と、吸着ステージ18と、加工ヘッド駆動部19と、テーブル駆動部14と、制御部12と、を備える。さらに、この実施形態におけるレーザ加工装置10は、加工ヘッド16の一側面に取り付けられた亀裂検出装置500を備える。なお、亀裂検出装置500の構成については後述する。
【0034】
吸着ステージ18は、ウェーハWを吸着保持する保持面18aを備える。ウェーハWの表面Waは、例えば、XY方向に伸びる複数の切断予定ラインにより格子状の領域に区画されており、この格子状の領域には、それぞれ電子回路等のデバイスが形成されている。このウェーハWは、吸着ステージ18の保持面18aに保護シート220を下側にして載置され、保護シート220を介して吸着ステージ18により吸着保持される。なお、保護シート220を介することなくウェーハWを直接吸着保持させてもよい。
【0035】
テーブル駆動部14は、吸着ステージ18をXY方向に移動させるためのXY駆動機構(不図示)と、吸着ステージ18をZ方向周りのθ方向に回転させるための回転駆動機構(不図示)と、を備えている。テーブル駆動部14は、制御部12による制御に従って、XY駆動機構により吸着ステージ18をXY方向に移動させると共に、回転駆動機構により吸着ステージ18をZ方向周りのθ方向に回転させる。これにより、吸着ステージ18に吸着保持されたウェーハWと後述する加工ヘッド16との相対的な位置合わせを行うことが可能となると共に、ウェーハWに設けられた複数の切断予定ラインに沿って加工ヘッド16によるレーザ加工を行うことが可能となる。
【0036】
加工ヘッド16は、レーザ加工を行うための各種光学系を収容する加工光学系本体(「レーザエンジン」などともいう。)である。加工ヘッド16は、レーザ光Lを出射するレーザ光源20と、コンデンスレンズ22等の光学素子と、コンデンスレンズ22をZ方向(レーザ光Lの光軸方向)に微小移動させるZ微動手段23と、を備える。なお、Z微動手段は、Z方向に伸縮するピエゾアクチュエータにより構成される。
【0037】
レーザ光源20は、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Rを形成するための加工用レーザ光(以下、単に「レーザ光」という。)Lを出射する。レーザ光源20としては、例えば、半導体レーザ励起Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザが用いられる。レーザ光源20から出射されたレーザ光Lは、コンデンスレンズ22によりウェーハWの内部に集光される。これにより、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Rが形成される。
【0038】
加工ヘッド駆動部19は、加工ヘッド16をZ方向(レーザ光Lの光軸方向)に移動させるための加工ヘッドZ駆動機構(不図示)を備えている。加工ヘッドZ駆動機構は、モータやギアを含んで構成される。加工ヘッド駆動部19は、制御部12による制御に従って、加工ヘッドZ駆動機構により加工ヘッド16をZ方向に移動させる。これにより、加工ヘッド16と、吸着ステージ18に吸着保持されたウェーハWとのZ方向の相対距離を調整することが可能となる。
【0039】
制御部12は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションにより実現される。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)と、ストレージ(例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等)と、入出力回路部と、を備える。
【0040】
制御部12は、レーザ加工装置10の各部の動作を制御する。具体的には、加工ヘッド16の動作制御(レーザ光源20の出射制御や、Z微動手段23によるコンデンスレンズ22の位置制御など)、加工ヘッド駆動部19及びテーブル駆動部14の動作制御、さらに亀裂検出装置500の動作制御などを行う。
【0041】
ここで、レーザ加工領域Rとは、レーザ光Lの照射によってウェーハWの内部の密度、屈折率、機械的強度等の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。レーザ加工領域Rは、例えば、クラック領域を含んでいる。
【0042】
ウェーハWにレーザ加工領域Rを形成する場合、加工ヘッド駆動部19により加工ヘッド16とウェーハWとの間の相対距離(ワーキングディスタンス)を所望の距離に調整した上で、レーザ光源20からレーザ光Lが出射され、コンデンスレンズ22等の光学素子を介してウェーハWに照射される。なお、ウェーハWの内部に照射されるレーザ光Lの集光点FPのZ方向位置は、Z微動手段23(ピエゾアクチュエータ)によるコンデンスレンズ22の位置制御によって、ウェーハWの裏面Wb1(レーザ光入射面)から一定の深さ位置に調整される。
【0043】
この状態でテーブル駆動部14により吸着ステージ18がダイシング方向であるX方向に加工送りされる。これにより、ウェーハWの切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域Rが1層形成される。そして、切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域Rが1層形成されると、テーブル駆動部14により吸着ステージ18がY方向に1ピッチ割り出し送りされ、次の切断予定ラインにもレーザ加工領域Rが形成される。次に、全てのX方向の切断予定ラインに沿ってレーザ加工領域Rが形成されるとテーブル駆動部14により吸着ステージ18がZ方向周りのθ方向に90°回転され、回転後のX方向の切断予定ラインにも同様にしてレーザ加工領域Rが形成される。なお、
図3では、1層のレーザ加工領域Rが示されているが、ウェーハWの厚さに応じて、ウェーハWの内部に複数層(例えば2層、3層など)のレーザ加工領域が形成される場合もある。
【0044】
<分割装置>
図4(A)~(E)は、分割装置300の動作を時系列的に示した説明図である。
【0045】
図4(A)に示すようにウェーハWは、ウェーハWの裏面Wb1にダイシングテープ302が貼り付けられ、このダイシングテープ302を介してダイシング用フレーム304に搭載される。なお、保護シート220(
図3参照)は、この状態でウェーハWの表面Waから剥離される。
【0046】
ダイシングテープ302は、ウェーハWの外周部とダイシング用フレーム304の内周部との間に環状部領域302Aを有し、この環状部領域302Aの下方側にエキスパンドリング306が配置されている。
【0047】
エキスパンドリング306の上昇動作によってエキスパンドリング306が環状部領域302Aに当接し、ダイシングテープ302の拡張が始まると(
図4(A))、まず、環状部領域302Aの拡張が始まる(
図4(B))。これにより、環状部領域302Aに張力が発生し、この張力がある程度高まると、高まった張力がウェーハWに伝達されてウェーハWのチップTへの分断が始まる(
図4(C))。ウェーハWが個々のチップTに分断されていくと、環状部領域302Aの拡張とチップT間のダイシングテープ302の拡張とが同時に進行する(
図4(D)~(E))。これによって、ウェーハWがチップTに確実に分断される。以上がレーザ加工システム100を構成する各装置の機能である。
【0048】
次に、レーザ加工装置10(
図3参照)に搭載された亀裂検出装置(亀裂検出手段)500について
図5を参照して説明する。
【0049】
図5は、亀裂検出装置500の一例を示すブロック図である。この亀裂検出装置500は、基本機能として、レーザ光L(
図3参照)の照射によりウェーハWの内部に発生した亀裂を検出する機能(亀裂検出機能)を備えるだけでなく、さらに、レーザ光Lの照射が行われる前(すなわち、裏面研削装置200によりバックグラインドが行われた後)のウェーハWの厚さを検出する機能(厚さ検出機能)を兼ね備えたものである。以下、亀裂検出装置500の基本機能である亀裂検出機能について説明した後に、亀裂検出装置500の厚さ検出機能について説明する。なお、亀裂検出装置500は、加工ヘッド16の一側面に取り付けられており、上述した加工ヘッド駆動部19(
図3参照)により加工ヘッド16と一体となってZ方向に移動可能に構成されている。
【0050】
[亀裂検出機能]
図3に示したレーザ加工装置10によってウェーハWにレーザ加工領域Rを形成した場合、そのレーザ加工領域RからウェーハWの厚さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。
図4に示した分割装置300においてチップへの分断を適正に行うためには、ウェーハWを割断する際の起点となるレーザ加工領域Rを適正に形成し、ウェーハWの内部に形成された亀裂の亀裂深さを正確に検出することが重要である。
【0051】
そこで、
図5に示す亀裂検出装置500は、ウェーハWに対して検出光L1を照射し、ウェーハWからの反射光L2を検出することで、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する機能(亀裂検出機能)を備える。なお、亀裂検出装置500は、
図3に示したレーザ加工装置10と組み合わせて使用されるが、以下の説明では、亀裂検出装置500に係る構成要素について説明し、レーザ加工装置10の構成と同一の部材については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、ウェーハWが吸着される吸着ステージ18をXY平面と平行な平面とし、Z方向をウェーハWの厚さ(深さ)方向とする3次元直交座標系を用いる。
【0052】
図5に示すように、亀裂検出装置500は、光源部550、照明光学系600、界面検出用光学系650、亀裂検出用光学系700、制御部750、集光点位置移動機構752、対物レンズ754、操作部756及び表示部758を含んでいる。
【0053】
光源部550は、検出光L1を出射する。この検出光L1は、ウェーハWの界面位置の検出、及びウェーハWの内部に形成された亀裂Kの検出に用いられる。ここで、ウェーハWがシリコン製の場合、検出光L1としては、波長1,000nm以上の赤外光を用いるのが望ましい。
【0054】
光源部550は、光源552A、552B、552C及びハーフミラー554を有している。光源552A、552B、552C及びハーフミラー554は、対物レンズ754のレンズ光軸と同軸の主光軸AXに沿って配置されている。
【0055】
光源552A、552B、552Cは、主光軸AXに沿って検出光L1を出射する。光源552A、552B、552Cとしては、例えば、レーザ光源(赤外線レーザ光源、レーザダイオード)、又はLED(Light Emitting Diode)光源を用いることができる。
【0056】
光源552Aは、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aの略全面を照明することが可能なレーザ開口を有している。この光源552Aは、後述の界面位置の検出に用いられる。
【0057】
光源552B、552Cは、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aのうち、主光軸AX(レンズ光軸)から偏心した一部のみを照明することが可能なレーザ開口をそれぞれ有している。これらの光源552B、552Cは、後述の亀裂検出に用いられる。
【0058】
ハーフミラー554は、界面検出用の光源552Aから出射される検出光L1を反射し、亀裂検出用の光源552B、552Cから出射される検出光L1を透過させる。以下、図示は省略するが、光源552A、552B、552Cから出射される検出光L1をそれぞれL1(A)、L1(B)、L1(C)として説明する。
【0059】
光源552A、552B、552Cは、それぞれ制御部750と接続されており、制御部750により光源552A、552B、552Cの出射制御が行われる。
【0060】
制御部750は、亀裂検出装置500の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用可能なSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)と、を含んでいる。制御部750は、
図3に示したレーザ加工装置10の制御部12と不図示のインターフェースを介して接続されており、
図5の操作部756を介して操作者による操作入力を受け付け、操作入力に応じた制御信号を亀裂検出装置500の各部に送信して各部の動作を制御する。
【0061】
操作部756は、操作者による操作入力を受け付ける手段であり、例えば、キーボード、マウス、又はタッチパネル等のポインティングデバイス等である。
【0062】
また、表示部758は、亀裂検出装置500の操作のための操作GUI(Graphical User Interface)及び画像(例えば、亀裂の検出結果等)を表示する装置である。表示部758としては、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0063】
なお、操作部756及び表示部758は、レーザ加工装置10に備えられる操作部及び表示部(いずれも不図示)と共用されていてもよい。
【0064】
照明光学系600は、光源部550から出射された検出光L1を対物レンズ754に導光する。照明光学系600は、リレーレンズ602、606及びミラー(例えば、全反射ミラー)604を有している。光源部550から出射された検出光L1は、リレーレンズ602を透過して、ミラー604により反射されて光路が折り曲げられる。ミラー604によって反射された検出光L1は、リレーレンズ606を透過した後、界面検出用光学系650のハーフミラー654及びハーフミラー652によって順次反射されて対物レンズ754に向けて出射される。また、ハーフミラー652を透過した観察光(ウェーハWからの戻り光)は、観察光学系760を用いて観察可能である。なお、観察光学系760を用いない場合は、ハーフミラー652に代えてダイクロイックミラー又は全反射ミラーを用いることができる。
【0065】
対物レンズ754は、照明光学系600から出射された検出光L1をウェーハWに集光(合焦)させる。対物レンズ754は、ウェーハWに対向する位置に配置され、対物レンズ754のレンズ光軸が主光軸AXと同軸に配置される。
【0066】
集光点位置移動機構752は、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置をZ方向(対物レンズ754の光軸方向)に変化させるものである。集光点位置移動機構752は、対物レンズ754をZ方向に移動させるピエゾアクチュエータ(不図示)を含んで構成される。集光点位置移動機構752は、制御部750の制御に従ってピエゾアクチュエータを駆動することにより、対物レンズ754をZ方向に移動させる。これにより、対物レンズ754とウェーハWとのZ方向の相対距離が変化し、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置が変化するので、検出光L1の集光点をウェーハWの厚さ方向(Z方向)に走査することが可能となる。
【0067】
また、集光点位置移動機構752は、ピエゾアクチュエータに加え、上述の加工ヘッドZ駆動機構を含むものであってもよい。加工ヘッドZ駆動機構により加工ヘッド16をZ方向に移動させることにより、加工ヘッド16と一体となって亀裂検出装置500をZ方向に移動させることができる。これにより、対物レンズ754とウェーハWとの相対距離が変化するので、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置を変化させることが可能となる。したがって、加工ヘッドZ駆動機構による集光点の位置調整(粗調整)と、ピエゾアクチュエータによる集光点の位置調整(微調整)とを組み合わせることで、ピエゾアクチュエータのみで検出光L1の集光点をウェーハWの厚さ方向に走査する場合に比べて、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置の調整の自由度(調整幅)が広がるため、様々な厚みのウェーハWに対しても亀裂検出や厚み検出が可能となる。
【0068】
対物レンズ754によって集光され、ウェーハWによって反射された反射光L2は、界面検出用光学系650及び亀裂検出用光学系700に導光され、それぞれ、ウェーハWの界面位置の検出及び亀裂の検出に用いられる。
【0069】
以下の例では、ウェーハWの表面Wa(吸着ステージ18に吸着される面であって、デバイスが形成された面)の界面位置の検出を行い、その後、表面Waの界面位置を基準として亀裂深さを検出する例について説明する。
【0070】
なお、本例では、ウェーハWの表面Waを基準として亀裂深さの検出を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ウェーハWの裏面Wb1を基準として亀裂深さの検出を行ってもよい。また、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wb1の双方の界面位置をそれぞれ基準として検出した亀裂深さの平均値をとるようにすることも可能である。
【0071】
<界面検出用光学系>
界面検出用光学系650は、ウェーハWの界面(表面Waまたは裏面Wb1)の検出を行うための光学系であり、ハーフミラー652、ハーフミラー654、リレーレンズ656、ハーフミラー658及び光検出器660を有している。
【0072】
ウェーハWの界面として例えばウェーハWの表面Waを検出するときには、制御部750は、光源552Aを発光させて、検出光L1(A)をウェーハWに照射する。
【0073】
光源552Aからの検出光L1(A)は、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aと略同じ大きさの開口を有するレーザ光であり、ハーフミラー654及びハーフミラー652によって順次反射されて対物レンズ754に導光される。検出光L1(A)は、対物レンズ754の対物レンズ瞳754aの略全面に照射される。
【0074】
ここで、ウェーハWにより反射された検出光L1(A)の反射光をL2(A)とする。反射光L2(A)は、対物レンズ754を透過してハーフミラー652によって反射され、ハーフミラー654を透過した後、リレーレンズ656に導光される。リレーレンズ656を透過した反射光L2(A)は、ハーフミラー658によって反射されて光検出器660に導光される。
【0075】
光検出器660は、ウェーハWからの反射光L2(A)を受光して、ウェーハWの表面Waの検出を行うための装置であり、検出器本体660A及びピンホールパネル660Bを有している。
【0076】
検出器本体660Aとしては、受光した光を電気信号に変換して制御部750に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)を用いることができる。
【0077】
ピンホールパネル660Bには、入射光の一部を透過させるためのピンホールが形成されている。ピンホールパネル660Bは、検出器本体660Aの受光面に対して上流側に配置されており、ピンホールパネル660Bのピンホールが反射光L2(A)の光軸上に位置するように配置されている。ピンホールパネル660Bのピンホールの位置は、対物レンズ754の集光点(前側焦点位置)と光学的に共役関係にある(コンフォーカルピンホール)。また、ピンホールパネル660Bのピンホールの大きさは、対物レンズ754の回折限界程度に調整されている。
【0078】
ウェーハWによって反射された反射光L2(A)は、対物レンズ754の集光点と光学的に共役な位置にあるピンホールパネル660Bのピンホールの位置に集光する。そして、対物レンズ754の集光点が反射面となるウェーハWの表面Waと一致した場合、検出光L1(A)の光束はウェーハWの表面Waで反射されて、平行光束となって対物レンズ754を透過して戻ってくる。したがって、検出器本体660Aから出力される検出信号は、対物レンズ754の集光点が反射面となるウェーハWの表面Waの位置と一致したときに鋭いピークを有する。なお、対物レンズ754の集光点が反射面となるウェーハWの裏面Wb1の位置と一致したときにも、検出器本体660Aから出力される検出信号は鋭いピークを有する。
【0079】
制御部750は、光源552Aからの検出光L1(A)をウェーハWに照射しながら、集光点位置移動機構752により対物レンズ754とウェーハWとの相対距離を変化させて、ウェーハWに対する検出光L1(A)の集光点の位置(すなわち、対物レンズ754の前側焦点位置)をZ方向に移動させる。これにより、検出光L1(A)の集光点がウェーハWの厚さ方向に走査される。制御部750は、検出光L1(A)の集光点がウェーハWの厚さ方向に走査されたときのウェーハWからの反射光L2(A)を光検出器660により検出し、この光検出器660からの検出信号のピークを検出することにより、Z方向におけるウェーハWの表面Waの界面位置を検出することができる。
【0080】
なお、本例では、コンフォーカル法を用いてウェーハWの界面位置の検出を行うようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、非点収差法、白色干渉法等のその他の焦点検出方法を適用することも可能である。また、本例では、亀裂検出装置50の制御部750を、レーザ加工装置10の制御部12(
図3参照)とは別に示したが、これらの制御部750、12で実行される処理は、1つの制御部で実行されてもよいし、複数の制御部で実行されてもよい。
【0081】
<亀裂検出用光学系>
亀裂検出用光学系700は、リレーレンズ702、光検出器704、706を有している。
【0082】
ウェーハWの内部に形成された亀裂Kを検出するときには、制御部750は、光源552B、552Cを発光させて、検出光L1(B)、L1(C)をウェーハWに照射する。光源552B、552Cは、それぞれ主光軸AXからずれた位置にレーザ開口を有している。これにより、主光軸AXに対して偏心した検出光L1(B)及びL1(C)がウェーハWに照射される。
【0083】
検出光L1(B)、L1(C)がウェーハWによりそれぞれ反射された反射光L2(B)、L2(C)は、対物レンズ754を透過してハーフミラー652及びハーフミラー654によって順次反射された後、リレーレンズ656及びハーフミラー658を順次透過してリレーレンズ702に入射する。リレーレンズ702を透過した反射光L2(B)、L2(C)は、光検出器704、706により受光される。
【0084】
光検出器704、706は、ウェーハWからの反射光L2(B)、L2(C)を受光して、ウェーハWの内部の亀裂Kの検出を行うための装置である。光検出器704、706としては、受光した光を電気信号に変換して制御部750に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)を用いることができる。
【0085】
光検出器704、706は対物レンズ瞳754aと共役位置に配置され、さらに、検出光L1(B)及びL1(C)を受光するよう対物レンズ754の光軸からずれた位置に配置されている。
【0086】
図6から
図8は、ウェーハWに対して検出光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図6は対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在する場合、
図7は対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在しない場合、
図8は対物レンズ754の集光点と亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)とが一致する場合をそれぞれ示している。
【0087】
また、
図9から
図11は、光検出器704、706の受光面704C、706Cに受光される反射光L2の様子を示した図であり、それぞれ
図6から
図8に示した場合に対応するものである。
【0088】
また、
図12は、ウェーハWからの反射光L2が対物レンズ瞳754aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、検出光L1は、対物レンズ瞳754aの一方側(
図12の右側)の第1領域G1を通過して、ウェーハWに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
【0089】
図6に示すように、対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は亀裂Kで全反射した後、表面Waで反射して、その反射光L2は主光軸AXに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、対物レンズ瞳754aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図12に示すように、光源部550からの検出光L1が対物レンズ754を介してウェーハWに照射されるときの検出光L1の経路をR1としたとき、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(
図12の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳754aの第1領域G1を通過する。
【0090】
図7に示すように、対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1はウェーハWの表面Waで反射し、その反射光L2は対物レンズ瞳754aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図12に示すように、ウェーハWの表面Waで反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(
図12の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳754aの第2領域G2を通過する。
【0091】
図8に示すように、対物レンズ754の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合には、検出光L1は、亀裂Kで全反射した後、表面Waで反射して、対物レンズ瞳754aの検出光L1と同じ側の領域に到達する反射光成分L2aと、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの表面Waで反射して対物レンズ瞳754aの検出光L1と反対側の領域に到達する非反射光成分L2bとに分割される。すなわち、
図12に示すように、反射光L2のうち、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光成分L2a(
図8参照)は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(
図12の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳754aの第1領域G1を通過するとともに、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの表面Waで反射した非反射光成分L2b(
図8参照)は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(
図12の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳754aの第2領域G2を通過する。
【0092】
光検出器704、706は、それぞれが対物レンズ瞳754aの第1領域G1及び第2領域G2と光学的に共役な位置となるように配置されている。これにより、光検出器704、706は、それぞれ対物レンズ瞳754aの第1領域G1及び第2領域G2を通過した光を選択的に受光可能となっている。
【0093】
ここで、
図6に示す例(対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在する場合)では、
図9に示すように、光検出器704、706のうち、光検出器704の受光面704Cに反射光L2が入射する。このため、光検出器704の受光面704Cから出力される検出信号のレベルが光検出器706の受光面706Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0094】
一方、
図7に示す例(対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在しない場合)では、
図10に示すように、光検出器704、706のうち、光検出器706の受光面706Cに反射光が入射する。このため、光検出器706の受光面706Cから出力される検出信号のレベルが光検出器704の受光面704Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0095】
また、
図8に示す例(対物レンズ754の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合)では、
図12に示すように、光検出器704、706の受光面704C、706Cに反射光L2の各成分L2a、L2bがそれぞれ入射するため、光検出器704、706の受光面704C、706Cから出力される検出信号のレベルが略等しくなる。
【0096】
このように、光検出器704、706の受光面704C、706Cで受光される光量は、対物レンズ754の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本例では、このような性質を利用して、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出する。
【0097】
具体的には、光検出器704、706の受光面704C、706Cから出力される検出信号の出力をそれぞれD1、D2としたとき、対物レンズ754の集光点における亀裂Kの存在を判断するための評価値Sは、次式で表すことができる。
【0098】
S=(D1-D2)/(D1+D2) …(1)
式(1)において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、光検出器704、706の受光面704C、706Cによって受光される光量が一致するとき、対物レンズ754の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
【0099】
制御部750(
図5参照)は、集光点位置移動機構752を制御して検出光L1の集光点をZ方向に移動させ、ウェーハWの表面Waの界面位置からウェーハWの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、光検出器704、706の受光面704C、706Cから出力される検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて式(1)で示される評価値Sを算出し、この評価値S及び集光点位置情報を評価することによって亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。以上が亀裂検出装置500の亀裂検出機能である。
【0100】
[厚さ検出機能]
次に、亀裂検出装置500の厚さ検出機能について説明する。
【0101】
亀裂検出装置500は、既述したように、亀裂検出機能に加えて、さらに厚さ検出機能を兼ね備えている。亀裂検出装置500の厚さ検出機能は、亀裂検出装置500の各構成要素を利用して、裏面研削装置200によってバックグラインドが行われた後であり且つレーザ加工装置10によるレーザ加工領域Rの形成前のウェーハWの厚さを検出する。以下、厚さ検出機能について説明する。
【0102】
厚さ検出機能は、亀裂検出装置500の構成要素である、光源552A、照明光学系600、界面検出用光学系650、制御部750、集光点位置移動機構752、対物レンズ754、操作部756及び表示部758を利用してウェーハWの厚さを検出する。なお、本例の集光点位置移動機構752は、検出光L1の集光点の位置をZ方向に変化させる手段として、対物レンズ754を光軸方向に移動させるピエゾアクチュエータ(不図示)を含んで構成されている。
【0103】
集光点位置移動機構752のピエゾアクチュエータは、制御部750から印加される電圧が変化することによってZ方向(対物レンズ754の光軸方向)に伸縮し、この伸縮動作によって対物レンズ754を光軸方向に移動させる。これにより、ウェーハWに対する検出光L1の集光点の位置をウェーハWの厚さ方向(Z方向)において変化させることができる。
【0104】
また、ピエゾアクチュエータの移動量(伸縮量:μm)とピエゾアクチュエータに印加される電圧との関係は実験などによって予め決定されている。制御部750は、その関係を定義するテーブルを記憶するとともに、この関係に従ってピエゾアクチュエータに印加する電圧を変化させる。
【0105】
[亀裂検出の例]
図13は、ピエゾアクチュエータの移動量(μm)と検出器本体660Aから出力される検出信号(V)との関係を示したグラフである。
【0106】
図13において、グラフLN1は、ウェーハWの裏面Wb1からZ方向に対物レンズ754の集光点を移動させた場合に得られる検出信号を示している。
【0107】
図13に示すように、グラフLN1によれば、ピエゾアクチュエータの移動量(μm)、すなわち、対物レンズ754の移動量が20μm付近と230μm付近に検出信号(V)のピークP4及びP1がある。ピークP4がウェーハWの裏面Wb1の界面位置を示し、ピークP1がウェーハWの表面Waの界面位置をそれぞれ示している。
【0108】
制御部750は、ウェーハWの裏面Wb1からZ方向に対物レンズ754の集光点を移動させた場合に得られる検出信号からウェーハWの界面(表面Wa及び裏面Wb)を検出する。
【0109】
グラフLN2及びLN3は、主光軸(
図12参照)に対して互いに異なる側から検出光を偏斜証明した場合に得られる検出信号を示している。具体的には、対物レンズ瞳754aの第1領域G1を介してウェーハWに入射し、亀裂Kに当たらずに、主光軸AXに対して第1領域G1とは反対側の第2領域G2を通過した後、光検出器706の受光面706Cに到達した反射光L2の受光出力がグラフLN2である。一方、対物レンズ瞳754aの第2領域G2を介してウェーハWに入射し、亀裂Kに当たらずに、主光軸AXに対して第2領域G2とは反対側の第1領域G1を通過した後、光検出器704の受光面704Cに到達した反射光L2の受光出力がグラフLN3である。
【0110】
図13に示すように、グラフLN2及びLN3によれば、亀裂が形成されていない深さ位置では、検出光が亀裂に当たらずに通過してウェーハWの表面Waで反射されるので、検出信号が高くなる。これに対して、亀裂が形成されている(伸展している)深さ位置では、検出光が亀裂で反射されるため、検出信号が低くなる。
【0111】
図13のP1からP2の間の領域では、グラフLN2及びLN3の受光出力が約7Vの平坦な領域となっており、P3からP4の間の領域では、グラフLN2及びLN3の受光出力が約8Vの平坦な領域となっている。これに対して、P2からP3の間の領域では受光領域が低下している。これにより、亀裂が形成されている(伸展している)深さ位置(亀裂の下端位置及び上端位置)を検出することが可能になる。
【0112】
本実施形態では、グラフLN1において受光出力が最大となっている表面Waのピーク位置P4の受光出力と、受光出力が最小値となっている部分(ピーク位置P4に対して谷の部分)における受光出力との平均値を亀裂の判定基準の閾値として用いる。
図13に示す例では、グラフLN1のピーク位置P4の受光出力が約8.6Vであり、受光出力の最小値が0Vである。
【0113】
制御部750は、受光出力が約4.3VのラインAvとグラフLN2及びLN3との交点P2及びP3をそれぞれ亀裂の下端位置及び上端位置として検出する。そして、制御部750は、P2とP3との間の距離を亀裂の長さとして算出することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、亀裂の判定基準の閾値として、グラフLN1における表面Waのピーク位置P4と谷における受光出力の平均値を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、グラフLN2又はLN3における平坦な領域に対して、受光出力が所定の割合以上低下する領域を亀裂形成領域として検出するようにしてもよいし、上記以外の判定基準を用いてもよい。
【0115】
制御部12は、グラフLN2及びLN3により、亀裂の形成状況が所定の条件を充足しているか否かを判定する。具体的には、グラフLN2及びLN3から求められる亀裂の下端位置がウェーハWの表面Waと略一致している場合には、ウェーハWの表面Waまで亀裂が到達するBHC(Back side Half cut)条件(フルカットとなる条件)を充足していると判定する。一方、亀裂の下端位置とウェーハWの表面Waとの距離が所定値以上の場合には、ウェーハWの表面Waに亀裂が到達しない(例えば、亀裂の下端位置とウェーハWの表面Waとの間の距離が数十μm以上となる)ステルス条件を充足していると判定する。
【0116】
また、Z方向に複数のレーザ加工領域を形成した場合に、各レーザ加工領域から伸展する亀裂がつながっているか否かの判定を行うことも可能である。すなわち、亀裂がつながっている場合には、グラフLN2及びLN3には、
図13に示すように、受光出力の低下は1か所しか発生しない。これに対して、亀裂がつながっていない場合には、グラフLN2及びLN3には、受光出力の低下は2回以上発生する。
【0117】
本実施形態では、各層のレーザ加工領域を形成するときのレーザ加工条件(例えば、レーザ光の集光点FPのZ方向位置又は加工パワー(例えば、レーザ光の照射時間、パルス幅、パルスの繰り返し周波数、強度又はエネルギー密度等)等)を変化させて、レーザ加工条件ごとにグラフLN2及びLN3を取得する。そして、制御部12は、グラフLN2及びLN3におけるウェーハWの表面Waと亀裂の下端位置との関係から、BHC条件及びステルス条件を充足する場合のレーザ加工条件を求めることができる。
【0118】
また、制御部12は、グラフLN2及びLN3における受光出力が低下する箇所の発生状況から、例えば、1層目と2層目の亀裂がつながっているか否かを判定することができる。これにより、制御部12は、亀裂がつながる場合及びつながらない場合のレーザ加工条件を求めることができる。
【0119】
制御部12は、レーザ加工条件を変更してレーザ加工を繰り返し行い、亀裂検出装置500を制御して亀裂の検出を行う。制御部12は、所定の亀裂形成条件を充足する加工位置及び加工パワーを取得して加工レシピを作成する。ここで、制御部12は、集光点位置移動手段、加工パワー変更手段、制御手段及び加工レシピ作成手段の一部として機能する。
【0120】
また、
図13のグラフLN2及びLN3は、亀裂を中心に反対側から検出光を入射させた場合に得られる検出信号を示すものであり、理想的には形状が一致する。これに対して、グラフLN2及びLN3の形状が異なる場合には、亀裂の品質が低い(例えば、亀裂が偏っている等)と考えられる。この場合、制御部12は、集光点FPの位置及び加工パワー等のレーザ加工条件を制御して品質の調整を行うことが可能になる。具体的には、制御部12は、レーザ加工条件を段階的に変化させてレーザ加工を行う。制御部12は、グラフLN2及びLN3の形状が乱れ始めるときのレーザ加工条件が亀裂の品質のマージンの限界と判定する。これにより、亀裂の品質を調整することができる。
【0121】
また、亀裂ではなくレーザ加工領域の位置を検出することも可能である。この場合、例えば、加工パワーをなるべく小さくした条件で加工を行えば、亀裂の伸展を抑制することができるので、レーザ加工領域が形成された位置の検出が可能となる。レーザ加工領域の位置についても、上記と同様に、BHC条件、ステルス条件、形成位置の接続(つながり具合)及び形成品質の判定を行うことが可能である。
【0122】
[レーザ加工方法]
図14は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工方法を示すフローチャートである。
【0123】
図14に示すように、本実施形態では、レーザ加工領域の層ごとにレーザ加工条件の設定を行う。具体的には、まず、ウェーハWの表面Waに最も近い層をn=1として(ステップS10)、1層目(1本目)のレーザ加工条件の設定を行う(ステップS12)。そして、n=n+1として(ステップS16)、亀裂がターゲット深さ位置(例えば、亀裂の上端位置がウェーハWの裏面Wb側に対して第1の亀裂形成条件(BHC条件又はステルス条件)を満たす位置)に到達するまで繰り返して(ステップS14:制御工程)、レーザ加工の加工レシピを作成する(ステップS18:加工レシピ作成工程)。
【0124】
次に、ステップS18において作成した加工レシピを用いてレーザ加工を行う(ステップS20)。
【0125】
図15は、レーザ加工条件の設定工程を示すフローチャートである。
図15に示すように、本実施形態では、集光点FPの位置(以下、加工位置という。)の条件設定(ステップS30)と、加工パワーの条件設定(ステップS32)とを、レーザ加工の層nごとに1セットずつ実行する。ステップS30では、加工パワーを固定して加工位置を変更することにより加工位置条件を求める。一方、ステップS32では、加工位置を固定して加工パワーを変更することにより加工パワー条件を求める。
【0126】
図16は、1層目(n=1)の場合の加工位置の条件設定工程を示すフローチャートである。
【0127】
まず、制御部12は、加工位置を初期値に設定し(ステップS40)、1層(1本)のみレーザ加工を行う(ステップS42)。
【0128】
次に、制御部12は、レーザ加工領域から伸展する亀裂とウェーハWの表面Waとの間の距離を検出する(ステップS44:亀裂検出工程)。
【0129】
ステップS42及びS44は、亀裂の下端位置に関する第1の亀裂形成条件を充足可能な加工位置の条件を取得するまで繰り返し行われる(ステップS46)。ここで、第1の亀裂形成条件は、例えば、BHC条件又はステルス条件であり、制御部12は、グラフLN2及びLN3から検出される亀裂の下端位置及びウェーハWの表面Waの位置に基づいて、第1の亀裂形成条件の充足の判定を行う。
【0130】
ステップS42からS46を繰り返す際には、加工位置をZ方向に所定の間隔で変更して(ステップS48:集光点位置移動工程)、レーザ加工を行う(ステップS42)。そして、制御部12は、加工位置が所定のマージン±ΔZ(一例で数μm)分ずれていても第1の亀裂形成条件を充足可能な加工位置の値(以下、最適値という。)Zp(n=1)を求める。
【0131】
次に、制御部12は、加工位置の最適値Zp(n=1)を加工位置条件として保存する(ステップS50)。
【0132】
図17は、1層目(n=1)の場合の加工パワーの条件設定工程を示すフローチャートである。
【0133】
まず、制御部12は、レーザ加工時の加工パワーを初期値に設定し(ステップS60)、1層(1本)のみレーザ加工を行う(ステップS62)。
【0134】
次に、制御部12は、レーザ加工領域から伸展する亀裂とウェーハWの表面Waとの間の距離を検出する(ステップS64:亀裂検出工程)。
【0135】
ステップS62及びS64は、亀裂の下端位置に関する第1の亀裂形成条件を充足可能な加工パワーの条件を取得するまで繰り返し行われる(ステップS66)。ステップS62からS66を繰り返す際には、加工パワーを所定量ずつ変更して(ステップS68:加工パワー変更工程)、レーザ加工を行う(ステップS62)。そして、制御部12は、加工パワーが所定のマージン±ΔP(一例で0.2W)分ずれていても第1の亀裂形成条件を充足可能な加工位置の値(以下、最適値という。)Pp(n=1)を求める。
【0136】
次に、制御部12は、加工パワーの最適値Pp(n=1)を加工パワー条件として保存する(ステップS70)。
【0137】
図18は、n層目(n>1)の場合の加工位置の条件設定工程を示すフローチャートである。
【0138】
まず、制御部12は、レーザ加工条件の設定工程で求めた最適値を用いて、(n-1)本目までのレーザ加工を行う(ステップS80)。
【0139】
次に、制御部12は、加工位置をn層目(n本目)の初期値に設定し(ステップS82)、n層目のレーザ加工を行う(ステップS84)。
【0140】
次に、制御部12は、Z方向に隣り合う(n-1)本目とn本目のレーザ加工領域からの亀裂の伸展状況を検出する(ステップS86:亀裂検出工程)。
【0141】
ステップS84及びS86は、第2の亀裂形成条件を充足可能な加工位置の条件を取得するまで繰り返し行われる(ステップS88)。ここで、第2の亀裂形成条件は、例えば、n層目のレーザ加工領域と(n-1)層目のレーザ加工領域からそれぞれ伸展する亀裂がつながるための条件又はつながらないようにする(所定の距離以上離れる)ための条件であり、制御部12は、グラフLN2及びLN3に基づいて、第2の亀裂形成条件の充足の判定を行う。
【0142】
ステップS84からS88を繰り返す際には、加工位置をZ方向に所定の間隔で変更して(ステップS90:集光点位置移動工程)、レーザ加工を行う(ステップS84)。そして、制御部12は、加工位置が所定のマージン±ΔZ(一例で数μm)分ずれていても第2の亀裂形成条件を充足可能な加工位置の値(以下、最適値という。)Zp(n)を求める。
【0143】
次に、制御部12は、加工位置の最適値Zp(n)を加工位置条件として保存する(ステップS92)。
【0144】
図19は、n層目(n>1)の場合の加工パワーの条件設定工程を示すフローチャートである。
【0145】
まず、制御部12は、レーザ加工条件の設定工程で求めた最適値を用いて、(n-1)本目までのレーザ加工を行う(ステップS100)。
【0146】
次に、制御部12は、レーザ加工時の加工パワーを初期値に設定し(ステップS102)、n層目のレーザ加工を行う(ステップS104)。
【0147】
次に、制御部12は、Z方向に隣り合う(n-1)本目とn本目のレーザ加工領域からの亀裂の伸展状況を検出する(ステップS106:亀裂検出工程)。
【0148】
ステップS104及びS106は、第2の亀裂形成条件を充足可能な加工パワーの条件を取得するまで繰り返し行われる(ステップS108)。ステップS104からS108を繰り返す際には、加工パワーを所定量ずつ変更して(ステップS110:加工パワー変更工程)、レーザ加工を行う(ステップS104)。そして、制御部12は、加工パワーが所定のマージン±ΔP(一例で0.2W)分ずれていても第2の亀裂形成条件を充足可能な加工位置の値(以下、最適値という。)Pp(n)を求める。
【0149】
次に、制御部12は、加工パワーの最適値Pp(n)を加工パワー条件として保存する(ステップS112)。
【0150】
なお、ステップS46、S66、S88及びS108において、加工位置条件及び加工パワー条件を取得する際に、グラフLN2及びLN3の形状の一致度が所定値以上であることを条件として加えてもよい。
【0151】
[レーザ加工装置及び亀裂検出装置の制御系]
図20は、レーザ加工装置及び亀裂検出装置の制御部の機能を説明するためのブロック図である。
【0152】
図20に示すように、レーザ加工装置10の制御部12は、加工実行機能、計測制御機能及び計測結果解析機能を備えている。
【0153】
レーザ加工装置10の制御部12は、加工実行画面(GUI)を介して、操作者からレーザ加工の開始指示を受け付ける。ここで、加工指示には、ウェーハWの材質等の情報、第1及び第2の亀裂形成条件が含まれる。制御部12は、加工指示に基づいて加工実行機能によりレーザ加工を実行する。そして、制御部12は、計測制御機能により、亀裂検出装置500の制御部750に対して亀裂検出のための測定の実行指示を送信する。
【0154】
亀裂検出装置500の制御部750は、亀裂検出機能により取得した亀裂の計測結果データD1(グラフLN1からLN3)をレーザ加工装置10の制御部12に送信する。
【0155】
制御部12は、計測結果解析機能により計測結果データD1(グラフLN1からLN3)をを解析して、ウェーハWの界面の位置、亀裂の下端位置、亀裂のつながり具合及び亀裂の上端位置を検出し、第1及び第2の亀裂形成条件を充足するか否かを判定する。
【0156】
知識ベース作成画面は、計測結果に応じた処理の内容(例えば、レーザ加工条件の変更の内容等)を集積し、計測結果-アクション設定テーブルTL1を作成するためのGUIである。テーブルTL1には、例えば、加工実行画面において設定された亀裂形成条件(例えば、BHC条件、ステルス条件又は隣り合うレーザ加工領域から伸展する亀裂がつながるための条件等)と、計測結果データD1とに基づいて、レーザ加工条件を変更するときの変更の仕方に関する知識が集積される。具体的には、テーブルTL1には、第1の亀裂形成条件がBHC条件であり、計測結果データD1において、ウェーハWの表面Waに亀裂が到達していないと判定された場合に、次のループ(
図16及び
図17参照)で加工位置を表面Waに近づけたり、加工パワーを上げるときの条件が格納される。また、テーブルTL1には、第1の亀裂形成条件がステルス条件であり、計測結果データD1において、ウェーハWの表面Waに亀裂が到達していると判定された場合に、次のループ(
図16及び
図17参照)で加工位置を表面Waから遠ざけたり、加工パワーを下げるときの条件が格納される。
【0157】
アクション決定機能は、計測結果-アクション設定テーブルTL1と、計測結果データD1とに基づいて、
図16から
図19における加工位置又は加工パワーの変更を行う。そして、アクション決定機能は、層ごとの加工位置条件及び加工パワー条件を取得して、層ごとの加工位置条件及び加工パワー条件を定義した加工レシピR1を作成する。
【0158】
本実施形態によれば、レーザ加工と亀裂検出を並行して行い、ウェーハWの内部における亀裂の検出を行うことにより、所望の亀裂形成条件を充足可能な加工位置及び加工パワーに関する加工レシピを作成することができる。これにより、被加工物のレーザ加工を行う際の加工条件を効率的に決定することができる。
【0159】
なお、本実施形態では、集光点位置及び加工パワーを変更するようにしたが、これらのいずれか一方のみを変更するようにしてもよい。
【0160】
さらに、本実施形態によれば、レーザ加工の層ごとに、加工位置及び加工パワーのうちのいずれか一方を固定し、他方を自動的に変更してレーザ加工と亀裂検出とを繰り返して、その最適値を取得し、加工レシピを自動生成することができる。これにより、操作者の作業の工数を減らすことができる。
【符号の説明】
【0161】
10…レーザ加工装置、12…制御部、14…テーブル駆動部、16…加工ヘッド、18…吸着ステージ、18a…保持面、19…加工ヘッド駆動部、20…レーザ光源、22…コンデンスレンズ、23…Z微動手段、200…裏面研削装置、202…研削駆動部、206…テーブル駆動部、208…研削ヘッド、210…回転研削盤、212…砥石、214…シャフト、216…制御部、218…チャックテーブル、218a…保持面、220…保護シート、300…分割装置、302…ダイシングテープ、304…ダイシング用フレーム、306…エキスパンドリング、500…亀裂検出装置、550…光源部、552A…光源、552B…光源、552C…光源、554…ハーフミラー、600…照明光学系、602…リレーレンズ、604…ミラー、606…リレーレンズ、650…界面検出用光学系、652…ハーフミラー、654…ハーフミラー、656…リレーレンズ、658…ハーフミラー、660…光検出器660、660A…検出器本体、660B…ピンホールパネル、700…亀裂検出用光学系、702…リレーレンズ、704…光検出器、706…光検出器、750…制御部、752…集光点位置移動機構、754…対物レンズ、756…操作部、758…表示部、760…観察光学系