(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品
(51)【国際特許分類】
C08F 255/00 20060101AFI20241106BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20241106BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20241106BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241106BHJP
C09D 151/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08F255/00
C08F2/44 C
C09D7/20
C09D7/65
C09D151/06
(21)【出願番号】P 2020187113
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】土肥 健太
(72)【発明者】
【氏名】村川 卓
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-009428(JP,A)
【文献】特開平10-292085(JP,A)
【文献】特開2002-212241(JP,A)
【文献】特開平06-192352(JP,A)
【文献】特開昭53-142471(JP,A)
【文献】特開2006-182979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン変性アクリル樹脂及びテルペン溶剤を含有する樹脂組成物であって、
前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂が、ポリオレフィン樹脂(A)と、水酸基を有する不飽和単量体(b1)を含有する不飽和単量体混合物(b)との反応物であり、前記ポリオレフィン樹脂(A)と前記不飽和単量体混合物(b)との質量比[(A)/(B)]が、5/95~60/40であり、前記ポリオレフィン樹脂(A)が、塩素化ポリオレフィン樹脂及び/又はマレイン酸変性ポリオレフィン樹脂であり、前記テルペン溶剤の含有量が、前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂の
100~500質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項
1記載の樹脂組成物を含有することを特徴とする塗料。
【請求項3】
請求項
2記載の塗料で塗装されたことを特徴とするプラスチック成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンの存在下、不飽和単量体を反応させることで得られるポリオレフィン変性アクリル樹脂が提案されており、その硬化塗膜は基材への付着性、耐水性等に優れることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。一方、近年、環境に対する負荷低減が求められており、薄膜かつ低温での製膜手法が望まれている。
【0003】
しかしながら、このポリオレフィン変性アクリル樹脂から得られる塗膜は、耐水性等に優れるものの、製膜条件によっては、付着性能が不十分である問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、貯蔵安定性に優れ、プラスチック基材との高い付着性を有し、外観に優れる塗膜を得ることができる樹脂組成物、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、ポリオレフィン変性アクリル樹脂及びテルペン溶剤を特定の比率で含有する樹脂組成物が、貯蔵安定性に優れ、プラスチック基材との高い付着性を有し、外観に優れる塗膜を得ることができることを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン変性アクリル樹脂及びテルペン溶剤を含有する樹脂組成物であって、前記テルペン溶剤の含有量が、前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂の50~500質量%であることを特徴とする樹脂組成物、塗料及び該塗料で塗装されたプラスチック成形品に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、プラスチック基材との高い付着性を有し、外観に優れる塗膜を得られることから、塗料に有用であり、該塗料を各種プラスチック成形品に塗装することができる。したがって、本発明の樹脂組成物は、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内装材;玩具などの各種物品を塗装する塗料に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン変性アクリル樹脂及びテルペン溶剤を含有する樹脂組成物であって、前記テルペン溶剤の含有量が、前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂の50~500質量%であるものである。
【0010】
前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂は、ポリオレフィン樹脂(A)及びアクリル樹脂(B)の混合物でもよいし、ポリオレフィン樹脂(A)及びアクリル樹脂(B)が結合しているものでもよいが、貯蔵安定性がより向上することから、ポリオレフィン樹脂(A)及びアクリル樹脂(B)が結合しているものを含んでいるものが好ましい。
【0011】
ポリオレフィン変性アクリル樹脂を得る方法としては、ポリオレフィン樹脂(A)の存在下、アクリル樹脂(B)の原料である不飽和単量体混合物(b)をラジカル重合する方法が好ましい。
【0012】
前記ポリオレフィン樹脂(A)としては、貯蔵安定性及び得られる塗膜の付着性が優れることから、塩素化ポリオレフィン樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂(A)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる
【0013】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂が塩素化されたものであるが、ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレンと炭素数5~12のα-オレフィンとからなる共重合体、プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びその水素添加物等が挙げられる。なお、前記塩素化ポリオレフィン樹脂は、一部をマレイン酸で変性されていてもよい。
【0014】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素含有率は、相溶性と付着性がより向上することから、15~40質量%が好ましい。
【0015】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできるが、貯蔵安定性がより向上することから、ポリプロピレンを含む重合体が好ましい。
【0016】
前記マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂がマレイン酸で変性されたものであるが、ポリオレフィン樹脂としては、上記塩素化ポリオレフィン樹脂に使用できるものとして例示したものを使用することができる。
【0017】
前記マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできるが、貯蔵安定性がより向上することから、ポリプロピレンを含む重合体が好ましい。
【0018】
また、前記ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量は、20,000~250,000が好ましい。
【0019】
次に、前記不飽和単量体混合物(b)について説明する。この不飽和単量体混合物(b)は、2液硬化でも使用できることから、水酸基を有する不飽和単量体(b1)を含有することが好ましく、2液硬化時のポットライフの観点から、さらにカルボキシル基を有する不飽和単量体(b2)を含有することがより好ましい。
【0020】
前記水酸基を有する不飽和単量体(b1)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリイソシアネートとの硬化性がより優れることから、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらの不飽和単量体(b1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0021】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0022】
前記カルボキシル基を有する不飽和単量体(b2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はこれら不飽和ジカルボン酸のハーフエステルなどが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。また、これらの不飽和単量体(b2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
前記不飽和単量体混合物(b)に含有することのできる、前記不飽和単量体(b1)及び前記不飽和単量体(b2)以外の不飽和単量体(b3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、エチレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、炭素原子数が1~15のアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、これらの不飽和単量体(b3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0024】
前記不飽和単量体混合物(b)中の前記不飽和単量体(b1)の質量比率は外観及び付着性のバランスがより向上することから、が1~20質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましい。
【0025】
前記不飽和単量体混合物(b)中の前記不飽和単量体(b2)の質量比率は、外観及び付着性のバランスがより向上することから、0.1~10質量%が好ましく、0.3~5質量%がより好ましい。
【0026】
前記不飽和単量体混合物(b)中のメチルメタクリレートの質量比率は、外観及び付着性のバランスがより向上することから、10~90質量%が好ましく、25~60質量%がより好ましい。
【0027】
前記不飽和単量体混合物(b)中の前不飽和単量体(b4)の質量比率は、外観及び付着性のバランスがより向上することから、10~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。
【0028】
前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂を得る際のラジカル重合法は、原料である各単量体を、重合開始剤存在下で重合反応を行う方法である。この際に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化合物;n-ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール化合物;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール化合物;ヘプタン、ヘキサン、オクタン、ミネラルターペン等の脂肪族炭化水素化合物などが挙げられる。
【0029】
前記重合開始剤としては、例えば、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジtert-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジtert-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物などの有機過酸化物と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチル)ブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ化合物とが挙げられる。
【0030】
また、前記ポリオレフィン樹脂(A)と前記不飽和単量体混合物(b)との質量比[(A)/(b)]は、貯蔵安定性、得られる塗膜の付着性及び外観がより向上することから、5/95~40/60の範囲が好ましく、10/90~30/70の範囲がより好ましい。
【0031】
前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂は、貯蔵安定性、得られる塗膜の外観及び付着性がより向上することから、数平均分子量(Mn)は、3,000~50,000が好ましく、15,000~30,000がより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、30,000~300,000が好ましく、40,000~100,000がより好ましい。ここで、平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0032】
前記テルペン溶剤としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、テレビン油、フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、ミルセン、アロオシメン、カンフェン、ボルニレン、パラメンテン-1 、パラメンテン-2 、パラメンテン-3 、パラメンタジエン、パラメンタン、2-カレン、3-カレン、ツジャン等のモノテルペン炭化水素、α-ターピネオール、β-ターピネオール、γ-ターピネオール、4-ターピネオール、パラメンテノール、パラメンタノール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、シトロネロール、アロシメノール、ミルセノール、カルベオール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール、フェンチルアルコール、ベルベノール等のモノテルペンアルコール;シトラール、シトロネラール等のテルペンアルデヒド;イソプレゴン、カルボン、カンファー(樟脳白油)等のテルペンケトン;パラメンタンジオール等のテルペンジオール;1,4-シネオール、1,8-シネオール等のテルペンエーテル;ロンギホレン、カリオフィレン、カジネン、ツヨプセン、セドレン、クロベン、ロンギピネン等のセスキテルペン炭化水素;エレモール、カジノール、ユーデスモール等のセスキテルペンアルコール等などが挙げられる。これらの中でも、付着性性がより向上することから、ジペンテン、リモネン、カンファー、テレビン油が好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物中の前記テルペン溶剤の含有量は、前記ポリオレフィン変性アクリル樹脂の50~500質量%であるが、貯蔵安定性、得られる塗膜の外観及び付着性がより向上することから、100~300質量%が好ましい。
【0034】
本発明の塗料は、上記した樹脂組成物を含有するものであるが、その他の配合物として、テルペン溶剤以外の溶剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤等の添加剤を使用することができる。また、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミニウム粉末、銅粉末、雲母粉末、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、トルイジンレッド、ペリレン、キナクリドン、ベンジジンイエロー等の顔料を使用することもできる。
【0035】
本発明の塗料は、プラスチック基材との高い付着性を有することから、各種プラスチック成形品を塗装する塗料として好適に用いることができるが、本発明の塗料を塗装することのできるプラスチック成形品としては、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器の筐体;テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等の家電製品の筐体;自動車、鉄道車輌等の各種車輌の内装材などが挙げられる。
【0036】
本発明の塗料の塗装方法としては、例えば、スプレー、アプリケーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、キスコーター、シャワーコーター、ホイーラーコーター、スピンコーター、ディッピング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。また、塗装後、塗膜とする方法としては、常温~120℃の範囲で乾燥させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0038】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0039】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0040】
(合成例1:ポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)の合成)
冷却菅、温度計、滴下漏斗、および攪拌機を備えたフラスコに、マレイン酸変性ポリオレフィン(日本製紙株式会社製「アウローレン350S」;以下、「ポリオレフィン樹脂(A-1)」と略記する。)100.0質量部、酢酸ブチル742.5質量部、及びメチルエチルケトン487.5質量部を加え、内温を80℃まで上げた。次いで、マレイン酸変性ポリオレフィンの溶解を確認後、メチルメタクリレート360.0質量部、エチルアクリレート485.0質量部、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート50.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、メチルエチルケトン250.0質量部、及びtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート5.0質量部の混合物を4時間にわたって滴下した。滴下終了1時間後にメチルエチルケトン5.0質量部とtert-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート2.0質量部との混合物を加え、その後、内温80℃を保持したまま10時間重合反応をさせた。次いで、混合溶剤(酢酸ブチル/メチルエチルケトン=50/50(質量比))を不揮発分40質量%になるように加え、ポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)の溶液を得た。
【0041】
(合成例2及び3:ポリオレフィン変性アクリル樹脂(2)及び(3)の合成)
合成例1で使用したポリオレイン樹脂及び不飽和単量体混合物の組成を表1に示した通りに変更した以外は合成例1と同様にして、ポリオレフィン変性アクリル樹脂(2)及び(3)の溶液を得た。
【0042】
(合成例4:ポリオレフィン変性アクリル樹脂(R1)の合成)
合成例1で使用したポリオレイン樹脂及び不飽和単量体混合物の組成を表1に示した通りに変更した以外は合成例1と同様にして、ポリオレフィン変性アクリル樹脂(R1)の溶液を得た。
【0043】
上記で得たポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)~(3)及び(R1)の組成を表1に示す。
【0044】
【0045】
なお、表1中の略号は以下のものである。
ポリオレフィン樹脂(A-1):日本製紙株式会社製「アウローレン350S」
ポリオレフィン樹脂(A-2):東洋紡株式会社製「ハードレン 14-LLB-P」、塩素含有率27質量%
MMA:メチルメタクリレート
HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
AA:アクリル酸
EA:エチルアクリレート
【0046】
(実施例1:樹脂組成物(1)の調製及び評価)
上記の合成例1で得たポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)の溶液(不揮発分40質量%)15質量部とジペンテン12質量部を配合し、樹脂組成物(1)を得た。
【0047】
[貯蔵安定性の評価]
樹脂組成物(1)を40℃の条件で1ヶ月間静置し、溶液の状態を以下の基準で評価した。
〇:分離および沈殿がともに確認されないもの
△:分離および/または沈殿が観察されるが、攪拌にて容易に分散できるもの
×:分離および/または沈殿が観察され、攪拌にて容易に分散できないもの
【0048】
[塗料の評価]
上記で得た樹脂組成物(1)を粘度がアネスト岩田株式会社製「粘度カップNK-2」で約9秒(23℃)になるように混合溶剤(酢酸ブチル/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/酢酸エチル=75/10/15(質量比);以下「混合溶剤(1)」と略記する。)で希釈して塗料(1)を調製した。
【0049】
[評価用塗膜の作製]
上記で得た塗料(1)を、ポリプロピレン基材(50mm×50mm)に乾燥後の膜厚が5~10μmとなるようにスプレー塗装し、乾燥機にて70℃で30分間加熱乾燥した後、25℃で1日間乾燥して評価用硬化塗膜を作製した。
【0050】
[塗膜外観の評価]
上記で得た評価用塗膜を目視で観察し、下記の基準により塗膜外観を評価した。
〇:問題なし
△:うっすら白化
×:大幅に白化
【0051】
[付着性の評価]
上記で得た評価用塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とした。次いで、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がす操作を4回行い、付着して残っている碁盤目の数から、下記の基準により付着性を評価した。
○:100個
△:70~99個
×:69個以下
【0052】
(実施例2~8:樹脂組成物(2)~(8)の調製及び評価)
実施例1で使用したポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)及びテルペン溶剤の組成を表2に示した通りに変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(2)~(8)、及び塗料(2)~(8)を得、各評価を行った。
【0053】
(比較例1~6:樹脂組成物(R1)~(R6)の合成)
実施例1で使用したポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)及びテルペン溶剤の組成を表2に示した通りに変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(R1)~(R6)、及び塗料(R1)~(R6)を得、各評価を行った。
【0054】
上記で得たポリオレフィン変性アクリル樹脂(1)~(8)の組成及び評価結果を表2及び3に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
上記で得たポリオレフィン変性アクリル樹脂(R1)~(R6)の組成及び評価結果を表4に示す。
【0058】
【0059】
表4中の略号は、それぞれ下記のものである。
スワクリーン150:丸善石油化学株式会社製石油系炭化水素溶剤
MCH:メチルシクロヘキサン
なお、実施例及び比較例で使用したテルペン溶剤は、日本テルペン化学株式会社製のものである。
【0060】
実施例1~8の本発明の樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、得られる塗膜は塗膜外観及び付着性に優れることが確認された。
【0061】
一方、比較例1は、ポリオレフィン変性アクリル樹脂に対するペルテン溶剤の含有量が、本願発明の下限である50質量%より少ない例であるが、付着性が不十分であることが確認された。
【0062】
比較例2は、ポリオレフィン変性アクリル樹脂に対するペルテン溶剤の含有量が、本願発明の上限である500質量%より多い例であるが、塗膜外観が不十分であることが確認された。
【0063】
比較例3は、ポリオレフィン変性アクリル樹脂の代わりに未変性のアクリル樹脂を使用した例であるが、付着性が不十分であることが確認された。
【0064】
比較例4~6は、必須成分であるテルペン溶剤を使用しなかった例であるが、付着性又は塗膜外観が不十分であることが確認された。