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特許7581786繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法
(51)【国際特許分類】
   D06H 3/08 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
D06H3/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191510
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080440
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】登坂 祐治
(72)【発明者】
【氏名】島田 麻未
(72)【発明者】
【氏名】黒川 博
(72)【発明者】
【氏名】瀧 貴大
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077644(JP,A)
【文献】特開2014-070098(JP,A)
【文献】特開平05-140873(JP,A)
【文献】特開2011-216892(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101864665(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H 1/00- 7/24
D03D 15/267
C08J 5/08
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法であって、
(B1)繊維強化プラスチック用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、温度70~150℃、加圧圧力0.3~3MPa及び真空条件下、粘度50~5,000Pa・sの状態で加熱加圧含浸させる工程、
(B2)35℃以下に冷却することで前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物の評価用試験片を作製する工程、
(B3)前記評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程、
を有する、繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
【請求項2】
前記ボイドが、前記透明骨材を形成するフィラメント同士が接触することによって形成された間隙に起因するものである、請求項1に記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
【請求項3】
前記ボイドの大きさがガラスフィラメント径の10倍以上の長さである、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
【請求項4】
前記評価用試験片のサイズが、縦20~30mm×横20~30mmである、請求項1~のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
【請求項5】
前記透明骨材がガラスクロスである、請求項1~のいずれか1項に記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)は、ファイバー等の弾性率の高い材料を骨材とし、その骨材を、プラスチックのような母材(マトリックス)の中に入れて強度を向上させた複合材料であり、耐候性、耐熱性、耐薬品性、軽量性を生かした、安価且つ軽量で耐久性に優れる複合材料である。
これらの性能を生かすことで、FRPは幅広い分野で使用されている。例えば、FRPは、造型性及び高い強度を有することから、住宅機器、船舶、車両及び航空機等の構造材として使用されている。また、絶縁性を生かすことで、電気装置及び半導体チップ等の電子部品分野でも使用されている。
【0003】
半導体チップ等の電子部品では集積密度が非常に高くなってきており、実装するプリント配線板についても狭小化が進んでいる。そのため、使用する銅張り積層板の厚みも、とても薄いものになっている。また、IVH(interstitial via hole)及び上下(厚み方向)の電気的接続を行うスルーホールの数も多くなり、それらも狭小化している。そのため、ライン間及びスルーホール間において、導体と導体との間隔が狭くなっている。
【0004】
プリント配線板ではこのような狭小化が進んでいるため、不要な部分で電気的短絡が生じないよう、細心の注意を払う必要がある。例えば、使用する骨材及び絶縁材料等には、電気的短絡の原因となり得る金属異物等が含まれない状態にする必要がある。骨材である織布、特にガラスクロスにおいては、原材料の石英に不純物として含まれる金が紡糸されたメタルファイバーを含むことがあり、また、フィラメントが中空になったホローファイバーを含むことがある(例えば、特許文献1参照)。ガラスクロスがメタルファイバーを含む場合は、メタルファイバーが導体間に存在すると短絡の原因となり得る。また、ガラスクロスがホローファイバーを含む場合は、ホローファイバーがスルーホール間に存在すると、銅めっき時にホローファイバーの中空部に銅が析出し、このことが電気的短絡の原因となり得る。
これらの不具合の発生のし易さを評価する方法として、メタルファイバー部位は光が透過しないため、光透過観察でメタルファイバーの有無を確認できる。ホローファイバーは光が透過してしまうために透過法観察ではその有無を確認できないが、ガラスクロスと同程度の屈折率を持つ溶剤中にガラスクロスを浸漬することで中空部分を浮き出させて検出する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
ところで、ガラスクロス表面は、そのままでは熱硬化性樹脂との化学的結び付きが弱いため、ガラス及び樹脂の両方に反応性があるシランカップリング剤等でガラスクロスの表面処理がなされるのが一般的である(例えば、特許文献3及び非特許文献1参照)。
しかし、ガラスクロスの表面処理工程で、カップリング剤がガラスクロスに過剰に付着した状態で乾燥させると、並走するフィラメント同士が固着したり、ガラスクロスの表面処理行程中でフィラメントに強い力が掛かると細密充填化したりする。そして、その場合、図1に示す様に多数のフィラメント1の固着によって間隙2が形成され、この固着距離が長いと、図2に示す様な開口部3から樹脂がそこへ流入しても当該間隙2を十分に埋めることができないため、埋められなかった間隙はキャピラリーボイドとなる(なお、図1図2とは、互いに同一のフィラメント4本を示している)。
キャピラリーボイドは、特に制限されるものではないが、例えば、図3において矢印が示すとおり、黒い線の状態で観察される。こうしてフィラメント間にキャピラリーボイドができしまうと、前述したホローファイバーを有するガラスクロスの場合と同様の問題が発生する。
【0006】
そこで、ホローファイバーの有無の評価と同様、キャピラリーボイドの有無を評価する必要があるが、キャピラリーボイドは光を透過するため、ホローファイバーの場合と同様に、直接、光透過観察してもキャピラリーボイドを観察できない。
また、特許文献2に記載されたガラスクロスと同じ屈折率を持つ溶剤に浸漬する方法では、当該溶剤が極めて低粘度であるから、当該溶剤が前記間隙の開口部から容易に間隙部位へ入ってしまい、キャピラリーボイドの有無を正確に評価するのは困難である。
そのため、樹脂を実際にガラスクロスへ含浸させ、硬化した後、クロスセクション(横断面)で間隙部の有無を観察する方法も考えられるが、観察面が1次元的であるために結果も曖昧であり、手間も時間もかかるという問題がある。
そのような状況下、ガラスクロスの通気度で評価する方法もある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-021147号公報
【文献】特開2004-084109号公報
【文献】特許第2751241号公報
【文献】特開2014-070098号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】日立評論、「ガラス及び樹脂の界面現象解明と特性向上」、Vol.56、No.7、p.615-619、1974年7月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4に記載の方法では、使用するガラスクロスで事前に検量線を作製する必要があって手間が掛かり、さらに、間接的な評価であって正確性に欠けるため、キャピラリーボイドの有無についてのより直接的な評価方法が求められる。また、そもそも、近年多用されている50μm以下の厚みのガラスクロスは通気度が大きいため、たとえキャピラリーボイドが存在していたとしても、有意な差として検出し難いという問題もある。
そこで、本開示の目的は、繊維強化プラスチック用透明骨材について、キャピラリーボイドの有無の直接的で簡便な評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、精鋭研究した結果、下記評価方法によって前記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0011】
[1]繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法であって、
(A1)繊維強化プラスチック用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、粘度5~100Pa・sの状態で含浸させる工程、
(A2)前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を硬化させて評価用試験片を作製する工程、
(A3)前記評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程、
を有する、繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
[2]繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法であって、
(B1)繊維強化プラスチック用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、温度70~150℃、加圧圧力0.3~3MPa及び真空条件下、粘度50~5,000Pa・sの状態で加熱加圧含浸させる工程、
(B2)35℃以下に冷却することで前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物の評価用試験片を作製する工程、
(B3)前記評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程、
を有する、繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
[3]前記ボイドが、前記透明骨材を形成するフィラメント同士が接触することによって形成された間隙に起因するものである、上記[1]又は[2]に記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
[4]前記ボイドの大きさがガラスフィラメント径の10倍以上の長さである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
[5]前記評価用試験片のサイズが、縦20~30mm×横20~30mmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
[6]前記透明骨材がガラスクロスである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の繊維強化プラスチック用透明骨材の評価方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示によって、繊維強化プラスチック用透明骨材(以下、FRP用透明骨材又は単に透明骨材と称することがある。)について、キャピラリーボイドの有無の直接的で簡便な評価方法を提供することができる。本開示の評価方法によれば、製造するFRPに不具合が生じ易いか否かについて、実際にFRPを製造する前に、信頼性高く評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】多数のフィラメントの固着によって間隙が形成されたヤーンの断面を示す模式図である。
図2】多数のフィラメントの固着によって間隙が形成されたヤーンについて、その間隙が開口した部位の断面を示す模式図である。
図3】実施例1で光学顕微鏡によって観察したキャピラリーボイドを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10を未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
【0015】
本実施形態の1つは、
[A]繊維強化プラスチック用透明骨材(FRP用透明骨材)の評価方法であって、
(A1)FRP用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、粘度5~100Pa・sの状態で含浸させる工程、
(A2)前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を硬化させて評価用試験片を作製する工程、
(A3)前記評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程、
を有する、FRP用透明骨材の評価方法である(以下、これを「実施形態A」と称することがある)。
【0016】
また、本実施形態の1つは、
[B]繊維強化プラスチック用透明骨材(FRP用透明骨材)の評価方法であって、
(B1)FRP用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、温度70~150℃、加圧圧力0.3~3MPa及び真空条件下、粘度50~5,000Pa・sの状態で加熱加圧含浸させる工程、
(B2)35℃以下に冷却することで前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物の評価用試験片を作製する工程、
(B3)前記評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程、
を有する、FRP用透明骨材の評価方法である(以下、これを「実施形態B」と称することがある)。
【0017】
実施形態Aは、前述の通り、室温付近で比較的低粘度であって液状の光透過性樹脂又は比較的低粘度であって液状の光透過性樹脂組成物を用いる評価方法である。
実施形態Bは、室温付近では流動性に乏しいが、比較的高温条件下とすることによって流動性が出てくる光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を用いる評価方法である。
以下、実施形態A及び実施形態Bについて順に詳述する。
【0018】
<実施形態A>
(FRP用透明骨材)
評価対象であるFRP用透明骨材は、FRPに利用される骨材の内、光を透過するものであり、キャピラリーボイドの有無の確認のし易さの観点から、当該透明骨材の光透過率は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい(いずれも100%を含む)。
FRP用透明骨材としては、ガラスの織布及び不織布等の透明無機繊維基材;アラミドの織布及び不織布、セルロースの織布及び不織布等の透明有機繊維基材などが挙げられる。
本実施形態は、特に、ガラスクロスの評価に適している。ガラスクロスは、複数のガラスフィラメントを集束剤で収束し、撚りをかけてなるガラスヤーンから製織されてなるものであり、特に制限されるものではないが、平織のガラスクロスを評価対象とすることができる。ガラスクロスの1つのヤーンが有するストランド数に特に制限はないが、10~1,000本であってもよく、30~400本であってもよく、50~300本であってもよい。ガラスクロスのガラスフィラメント径に特に制限はなく、2~25μmであってもよいし、3~15μmであってもよいし、3~10μmであってもよい。
ガラスクロスのガラスの種類に特に制限はなく、Eガラス、Sガラス、Cガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、Aガラス、Hガラス、石英ガラス等が挙げられる。本実施形態Aでは、特に制限されるものではないが、Eガラスのガラスクロスを評価対象とすることができる。
【0019】
評価対象の透明骨材の厚みに特に制限はないが、FRPの製造に利用される透明骨材の厚みとしては、通常、10~500μmであり、取り扱い性及び高密度配線を可能にする観点から、10~400μmが好ましく、20~300μmであってもよく、30~150μmであってもよく、60~130μmであってもよいとされる傾向にあり、本実施形態においても、そのような厚みの透明骨材を評価対象とすることができる。
なお、評価対象の透明骨材のサイズは縦20~30mm×横20~30mm程度で十分である。あるロットの透明骨材の一部を評価することで、そのロット全体の傾向を把握することができる。
【0020】
((A1)工程)
(A1)工程は、FRP用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、粘度5~100Pa・sの状態で含浸させる工程である。
(A1)工程で使用する光透過性樹脂及び光透過性樹脂組成物の光透過率は、それぞれ、キャピラリーボイドの有無の確認のし易さの観点から、透明骨材の光透過率は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい(いずれも100%を含む)。
(A1)工程で使用する光透過性樹脂及び光透過性樹脂組成物は、いずれも、FRP用透明骨材に含侵させる際の粘度が5~100Pa・sであって低粘度であり、当該粘度は好ましくは5~50Pa・s、より好ましくは5~25Pa・s、さらに好ましくは8~20Pa・sである。
(A1)工程は、特に制限されるものではないが、常圧下で実施することができ、また、常圧下で実施することが好ましい。
【0021】
(A1)工程で使用し得る光透過性樹脂としては、前記粘度を有することを前提として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;アクリル系樹脂等の光硬化性樹脂などが挙げられる。光透過性樹脂は、光透過性であって前記粘度の範囲内であればよく、その種類は特に限定されるものではないが、透明骨材と樹脂との濡れ性の関係が同様となる状態にする観点から、実際に製造する予定のFRPに含浸させる樹脂と同種の樹脂、類似した樹脂又は同一の樹脂を用いることが好ましい。もし、使用したい樹脂が前記粘度の範囲内でない場合は、実施形態Bの方を採用することができる。
前記エポキシ樹脂としては、特に制限されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アクリル系樹脂としては、特に制限されるものではなく、アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、メタクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
光透過性樹脂の役割として熱硬化性樹脂を使用する場合、熱硬化性樹脂と共に硬化剤を含有する光透過性樹脂組成物を使用することが好ましい。硬化剤は公知のものを使用することができ、例えば、前記熱硬化性樹脂の役割としてエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ硬化剤としては、フェノール樹脂、アミン化合物、酸無水物、3フッ化ホウ素モノエチルアミン、イソシアネート、ジシアンジアミド、ユリア樹脂等が挙げられる。
光透過性樹脂の役割として光硬化性樹脂を使用する場合、光硬化性樹脂と共に光重合開始剤を含有する光透過性樹脂組成物を使用することが好ましい。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾイン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等が挙げられる。
【0023】
光透過性樹脂組成物は、光透過性を保持する範囲内にて、さらにその他の成分(例えば、有機溶剤、蛍光剤、カップリング剤、充填材等)を含有していてもよい。但し、光透過性樹脂組成物中の充填材の含有量は、固形分全量に対して5体積%以下が好ましく、3体積%以下がより好ましく、1体積%以下がさらに好ましい(いずれも0体積%を含む)。光透過性樹脂組成物中の充填材の含有量がこの範囲内であれば、光透過性を高く維持することができ、光学顕微鏡による観察が容易となる傾向にある。
前記充填材としては、ポリブタジエン、NBR、シリコーンゴム等をコアとし、アクリル酸誘導体をシェルとしたコア-シェルゴム粒子、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸等のカルボン酸との共重合体等のアクリロニトリルブタジエンの共重合物等の有機充填材;シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等の無機充填材が挙げられる。
なお、(A1)工程では、実際に製造する予定のFRPに含浸させる樹脂組成物において、光透過性を喪失させる成分を除いた樹脂組成物を利用することが好ましい態様の1つである。
【0024】
(A1)工程では、含浸時に粘度5~100Pa・sという低粘度の光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を用いることができるため、前述の通り、常圧下で実施することができる。
例えば、常圧下及び温度15~40℃程度で、平板上又は容器内へ光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を好ましくは泡が混入しない方法によって注ぎ、その光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物上に透明骨材を載せ、透明骨材の自重で光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物へ沈ませることで、透明骨材へ光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を含浸させることができる。
【0025】
((A2)工程)
(A2)工程は、前記(A1)工程で透明骨材へ含浸させた光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を硬化させて評価用試験片を作製する工程である。
(A1)工程で透明骨材へ含浸させた光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を硬化させる方法に特に制限はないが、熱硬化性樹脂を用いる場合には、室温で放置することで硬化させたり、例えば80℃以上の有機溶剤が揮発し易い温度に加温することによって、樹脂がべたつかない程度にまで硬化を促進させたりする方法などを採用できる。また、光硬化性樹脂を用いる場合には、例えば紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線を照射することで硬化させる方法を採用できる。いずれの場合も、樹脂がべたつかない程度に硬化されていればよい。
評価用試験片のサイズは、縦20~30mm×横20~30mm程度とすることで、十分に正確に評価できる。
【0026】
((A3)工程)
(A3)工程は、前記(A2)工程で作製した評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程である。
(A3)工程で観察し得るボイドは、前記透明骨材を形成するフィラメント同士が接触することによって形成された間隙に起因するものであり、ボイドが存在する場合、ボイド部位は屈折率が異なるため、例えば図3において矢印部位が示す様に影として観察することができる。そのため、ボイドの大きさは、通常、ガラスフィラメント径の10倍以上の長さとなっており、15倍以上であることもあり、50倍以上であることもあり、100倍以上であることもある。ボイドの大きさに特に上限があるわけではないが、多くは、ガラスフィラメント径の100,000倍以下であり、10,000倍以下であってもよい。
光学顕微鏡での観察は、透過法、反射法のいずれを利用することもできるが、透過法を利用した方が前記ボイドを観察し易い傾向にある。光源としては、一般的に使用されるものを使用することができ、自然光(白色光)、ハロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、LED、赤外線、紫外線等が挙げられる。適宜、観察し易い光源を選択すればよい。
光学顕微鏡での観察は、明視野観察法、位相差観察法、偏光観察法等を利用することができる。これらの中でも、ボイドの観察のし易さの観点から、明視野観察法が好ましい。
【0027】
<実施形態B>
実施形態Bにおける評価対象であるFRP用透明骨材は、実施形態Aの場合と同様に説明される。以下、実施形態Bにおける(B1)工程~(B3)工程について順に詳述する。
【0028】
((B1)工程)
(B1)工程は、FRP用透明骨材に、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物を、温度70~150℃、加圧圧力0.3~3MPa及び真空条件下、粘度50~5,000Pa・sの状態で加熱加圧含浸させる工程である。
(B1)工程で使用する光透過性樹脂及び光透過性樹脂組成物の光透過率は、それぞれ、キャピラリーボイドの有無の確認のし易さの観点から、透明骨材の光透過率は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましい(いずれも100%を含む)。
(B1)工程で使用する光透過性樹脂及び光透過性樹脂組成物は25℃において固体であるか又は高粘度であるが、前記加熱加圧含浸条件下にて骨材への含浸が可能な程度に軟化する性質を有するものである。光透過性樹脂及び光透過性樹脂組成物をFRP用透明骨材に加熱加圧含浸させる際の粘度は、含浸性の観点から、好ましくは50~5,000Pa・sであり、80~3,000Pa・sであってもよく、100~1,500Pa・sであってもよい。
【0029】
(B1)工程における加熱含浸条件は、70~150℃、0.3~3MPa及び真空条件下である。加熱温度としては、80~130℃であってもよいし、80~110℃であってもよいし、85~100℃であってもよい。加圧圧力としては、0.3~1.5MPaであってもよいし、0.4~1.3MPであってもよいし、0.5~1.0MPaであってもよい。真空条件としては、特に制限されるものではないが、好ましくは10~10-5Pa(いわゆる、低真空、中真空及び高真空の範囲)であり、10~10Pa(いわゆる低真空の範囲)であってもよい。
このような加熱含浸条件とすることで、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物が骨材へ十分に含浸される。
【0030】
(B1)工程で使用し得る光透過性樹脂としては、前記粘度を有することを前提として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;パラフィン等の脂肪族飽和炭化水素などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記実施形態Aの(A1)工程の説明で例示したものと同じものが挙げられ、上記粘度条件を満たすものを選択すればよい。パラフィンとしては、n-パラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。
光透過性樹脂組成物は、光透過性を保持する範囲内にて、さらにその他の成分(例えば、蛍光剤、カップリング剤、充填材等)を含有していてもよい。但し、光透過性樹脂組成物中の充填材の含有量は、固形分全量に対して5体積%以下が好ましく、3体積%以下がより好ましく、1体積%以下がさらに好ましい(いずれも0体積%を含む)。光透過性樹脂組成物中の充填材の含有量がこの範囲内であれば、光透過性を高く維持することができ、光学顕微鏡による観察が容易となる傾向にある。充填材の具体例については、前記(A1)工程における説明と同様に説明される。
なお、(B1)工程についても、実際に製造する予定のFRPに含浸させる樹脂組成物において、光透過性を喪失させる成分を除いた樹脂組成物を利用することが好ましい態様の1つである。
【0031】
(B1)工程の実施態様に特に制限はないが、例えば、前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物をガラス板などの平板上で低粘度化(液状化)させてから冷却することによって、表面が略平坦な樹脂層を形成しておき、これを骨材と重ね合わせ、加熱加圧含浸させることによって、樹脂層が骨材へ均一に含浸し易いという利点がある。
【0032】
((B2)工程)
(B2)工程は、35℃以下に冷却することで前記光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物の評価用試験片を作製する工程である。
本工程にて、前記(B1)工程で透明骨材へ加熱加圧含浸させた光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物が硬化していない場合は、前記冷却によって固化される。冷却温度としては35℃以下であれば特に制限はなく、光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物が固化さえすればよいが、0℃以下に冷却する必要性には乏しい。そのため、通常、好ましくは0~35℃、より好ましくは5~30℃、さらに好ましくは10~30℃へ冷却することによて、評価用試験片を作製すればよい。
前記(B1)工程で光透過性樹脂又は光透過性樹脂組成物が硬化している場合もあるが、その場合でも、(B2)工程で35℃以下(好ましくは前記温度範囲)に冷却し、評価用試験片を得る。
評価用試験片のサイズは、縦20~30mm×横20~30mm程度とすることで十分に正確に評価できる。
【0033】
((B3)工程)
(B3)工程は、前記評価用試験片について、光学顕微鏡を用いて、透過法又は反射法によってボイドの有無を観察する工程である。詳細は、前記実施形態Aの(A3)工程の説明と同様に説明される。
【0034】
本実施形態の評価方法で観察し得るキャピラリーボイドは、スルーホール間に存在すると、銅めっき時にキャピラリーボイド部位に銅が析出し、このことが電気的短絡の原因となり得る。本実施形態の評価方法によれば、製造するFRPにこのような不具合が生じ易いか否かについて、実際にFRPを製造する前に、信頼性高く評価することができる。
【実施例
【0035】
次に、下記の実施例により本実施形態をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本実施形態を制限するものではない。
【0036】
下記実施例及び比較例に先立ち、下記評価用ガラスクロスの準備及び製造を行った。
(ガラスクロス1)
IPCスタイル#2116(日東紡績株式会社製のガラスクロス)を準備した。
(ガラスクロス2)
純水に、シランカップリング剤「信越シリコーン(登録商標)KBM-053」(信越化学工業株式会社製、商品名)を濃度1質量%になるように調整して添加した後、室温で60分撹拌した。溶液が透明であることを確認した後、200メッシュでろ過して得られた溶液をシランカップリング処理溶液とした。
次に、このシランカップリング溶液に前記ガラスクロス1を浸漬し、ガラスクロスを引き上げてから120℃の熱風で乾燥することによって得られたガラスクロスをガラスクロス2とした。
(ガラスクロス3)
前記ガラスクロス2の製造において、ガラスクロスをシランカップリング溶液に浸漬してから乾燥させる操作を3回実施することによって得られたガラスクロスを、ガラスクロス3とした。
【0037】
[実施例1]実施形態A
ビスA型エポキシ樹脂(EPICLON(登録商標)840S:DIC株式会社製、商品名)100質量部にトリエチレンテトラミン10質量部を加えて撹拌し、撹拌終了後、真空度680mmHgで脱泡を行い、混合樹脂A(樹脂粘度:11Pa・s/25℃)を得た。
25℃の大気圧条件下で、厚み1mmのガラス板上に約10gの前記混合樹脂Aを泡が入らない様に注意しながら注いだ。その混合樹脂Aの上に約50mm角のガラスクロスを置き、ガラスクロスの自重で樹脂が含浸する様に静置した((A1)工程)。この操作をガラスクロス1~3各々で実施した。
そのまま24時間放置することによってエポキシ樹脂を硬化させ、それぞれ評価用サンプルa1~a3とした((A2)工程)。
得られた評価用サンプルa1~a3を用いて、25.4mm角の範囲内について光学顕微鏡を用いて評価用サンプルの下から光を当てて透過観察した((A3)工程)。フィラメント径の15倍以上の長さのボイドをキャピラリーボイド(図3参照)と認識してカウントした。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]実施形態B
ビスA型エポキシ樹脂「jER(登録商標)1004」(三菱ケミカル株式会社製、商品名)(樹脂粘度:固体/25℃、1,500Pa・s/95℃、50Pa・s/120℃)を準備した。当該ビスA型エポキシ樹脂約10gを厚み1mmのガラス板上に置き、120℃の乾燥機中で樹脂を低粘度化(液状化)した。その後冷却することで、ガラス板上に樹脂(固化状態)が平坦に塗布された状態とした。
次に、ガラス板上の樹脂の上に約50mm角のガラスクロスを置き、その上に汚れ防止用のPETフィルム「ルミラー(登録商標)#75S10」(東レ株式会社製、商品名)を配置し、平板加圧式真空ラミネータ(名機製作所製商品名)で真空化、95℃で30秒、加圧圧力0.5MPaで加圧及び加熱し、ガラスクロスに前記樹脂を含浸させた((B1)工程)。この操作をガラスクロス1~3各々で実施した。
その後、25℃まで冷却することによって固化し、それぞれ評価用サンプルb1~b3とした((B2)工程)。
得られた評価用サンプルb1~b3を用いて、25.4mm角の範囲内について光学顕微鏡を用いて評価用サンプルの下から光を当てて透過観察した((B3)工程)。フィラメント径の15倍以上の長さのボイドをキャピラリーボイドと認識してカウントした。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]ガラスクロスと同程度の屈折率を持つ溶剤に浸漬する方法(特許文献2の方法)
シャーレにベンジルアルコール(粘度6mPa・s/25℃、屈折率:1.5396/20℃)を入れ、前記ガラスクロス1~3をそれぞれ別々に当該ベンジルアルコールへ浸漬し、それぞれ評価用サンプルc1~c3とした。
得られた評価用サンプルc1~c3を用いて、実施例1と同様の方法で透過観察した。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例2]実際にプリプレグを作製した上での評価
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON(登録商標)N-660;DIC株式会社製)100質量部、クレゾールノボラック樹脂(PHENOLITE(登録商標)KA-1165;DIC株式会社製)60質量部に、シクロヘキサン15質量部及びメチルエチルケトン130質量部を加え、良く撹拌することによって溶解させた。そこに、充填材としての水酸化アルミニウム(CL-303;住友化学株式会社製)180質量部、カップリング剤(Silquest A-187;モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ社製)1質量部、及び硬化促進剤としてのソシアネートマスクイミダゾール(G8009L;第一工業製薬株式会社製)2.5質量部を加え、撹拌することによって溶解及び分散を行い、不揮発分70質量%の熱硬化性樹脂ワニスXを調製した。
この熱硬化性樹脂ワニスXを、前記ガラスクロス1~3それぞれに樹脂分58質量%となるように調整して塗布した後、乾燥させ、171℃で加熱することでBステージ化し、プリプレグd1~d3(揮発分1%以下)を作製した。この際、粘度をレオメータ「AR-200ex」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、昇温速度:3℃/分、直径20mm冶具)で測定し、最低溶融粘度が800~1,200Pa・sになるように調整しながら前記プリプレグを作製した。
以上の様にして作製したプリプレグd1~d3を各々5枚ずつ重ね、上下に銅箔「F2-WS-12」(12μm電解銅箔、古河電気工業株式会社製)を配置し、それをSUS製鏡板で挟み、製品圧力3.0MPa、製品温度185℃以上の条件で、90分加熱成型し、両面に銅箔を有した銅付き積層板(評価用サンプルd1~d3)を作製した。
こうして得られた評価用サンプルd1~d3の25.4mm角の範囲について、クロスセクションを走査型電子顕微鏡(SEM:倍率5,000倍)で観察し、フィラメント中のボイドをカウントした。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[ガラスクロス1~3の耐電食性の評価]
前記表1の結果を評価するために、ガラスクロス1~3それぞれがそもそもどの程度の耐電食性を有するのかについて評価を行った。表1中の観察されたキャピラリーボイドの数がこの耐電食性の評価結果と同様の傾向を示していれば、FRP用透明骨材の評価方法として優れていると判断できる。
具体的には、比較例2で作製した評価用サンプルd1~d3を用いて、それぞれに、ドリル穴径0.3mm、ドリルピッチ0.45mm(壁間0.15mm)の穴を1列250で2列分(つまり合計500穴)開け、これを10個配置した評価用パネルd1~d3を作製した。その後、当該評価用パネルd1~3について、デスミア処理-無電解銅めっき処理-電気銅めっき(15μm)を行った後、スルーホール絶縁信頼性試験用の回路を形成した。85℃、85%RHの恒温恒湿槽中、印加電圧50Vで1,000時間、電食試験を行った。各パネルd1~d3について10回、同様の電食試験を実施し、槽内抵抗10Ω以上を「合格」と定義した上で、合格数をカウントした。結果を表2に示す。
【表2】
【0043】
表2の結果から、ガラスクロス1が最も性能が良く、次にガラスクロス2の性能が良く、ガラスクロス3は性能が悪いことが分かる。この傾向が良く表れている表1中の実施例1及び2については、それらの評価方法が優れていると言える。
一方、表1中の比較例1は、評価結果が不安定であり、且つ、実施例と比べてボイドをカウント漏れしていることもわかり、評価手法としては明らかに実施例よりも劣る。また、比較例2ではプリプレグ中に含まれる無機充填材が光の透過を妨げるために光透過法を採用できず、それゆえにクロスセクションでSEM観察しているが、表1中の比較例2の結果から、そもそも評価に時間を要する手法である上に、ボイドをほとんどカウントできておらず、実施例よりも劣る評価方法である。
【符号の説明】
【0044】
1 フィラメント
2 間隙
3 開口部
図1
図2
図3