(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】音波処理システム、端末装置、及び、音波処理方法
(51)【国際特許分類】
G01S 11/14 20060101AFI20241106BHJP
H04M 1/00 20060101ALI20241106BHJP
G01S 7/526 20060101ALI20241106BHJP
G01S 7/54 20060101ALI20241106BHJP
G01S 15/50 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01S11/14
H04M1/00 R
G01S7/526 L
G01S7/54
G01S15/50
(21)【出願番号】P 2020203641
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】武捨 章洋
(72)【発明者】
【氏名】松下 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】淺井 章弘
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0136997(US,A1)
【文献】国際公開第2017/174115(WO,A1)
【文献】特開2018-207239(JP,A)
【文献】特開2017-135447(JP,A)
【文献】特開2019-174230(JP,A)
【文献】特開2015-166685(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 11/00 - 11/16
G01S 7/52 - 7/64
G01S 15/00 - 15/96
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を送信する送信装置、及び、前記音波を受信する端末装置を有する音波処理システムであって、
前記送信装置は、
所定周波数帯で識別情報を示す前記音波を送信する音波送信部を備え、
前記端末装置は、
前記音波を受信する音波受信部と、
前記識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出部と、
前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出部と、
前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算部と、
基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定部と、
前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定部とを備え、
前記音波送信部から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が負の値、かつ、前記基準値より小さい値であると、
前記判定部は、
前記端末装置が前記送信装置に近づいている状態であると判定する音波処理システム。
【請求項2】
音波を送信する送信装置、及び、前記音波を受信する端末装置を有する音波処理システムであって、
前記送信装置は、
所定周波数帯で識別情報を示す前記音波を送信する音波送信部を備え、
前記端末装置は、
前記音波を受信する音波受信部と、
前記識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出部と、
前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出部と、
前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算部と、
基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定部と、
前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定部とを備え、
前記音波送信部から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が正の値、かつ、前記基準値を超える値であると、
前記判定部は、
前記端末装置が前記送信装置から遠ざかっている状態であると判定する音波処理システム。
【請求項3】
前記移動速度検出部は、
前記端末装置にかかる加速度を検出して、前記第1移動速度を検出し、
前記計算部は、
音速、前記音波の周波数、音源における周波数である音源周波数を用いて、前記第2移動速度を計算する請求項1又は2に記載の音波処理システム。
【請求項4】
前記端末装置は、
温度を計測する温度計測部を更に備え、
前記計算部は、
前記温度により、前記第2移動速度の計算における音速を補正する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の音波処理システム。
【請求項5】
前記端末装置は、
風速を計測する風速計測部を更に備え、
前記計算部は、
前記風速により、前記第2移動速度の計算における音速を補正する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の音波処理システム。
【請求項6】
前記音波を送信するエリアを複数に分けて設定し、
前記識別情報は、
前記エリアごとに異なる情報である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の音波処理システム。
【請求項7】
前記判定部は、
前記音波の周波数の計算結果に基づき、前記送信装置、及び、前記端末装置の各々の
移動に関する状態を判定する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の音波処理システム。
【請求項8】
音波を送信する送信装置から音波を受信する端末装置であって、
前記音波を受信する音波受信部と、
前記音波に含まれる識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出部と、
前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出部と、
前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算部と、
基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定部と、
前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定部とを備え、
前記送信装置から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が負の値、かつ、前記基準値より小さい値であると、
前記判定部は、
前記端末装置が前記送信装置に近づいている状態であると判定する端末装置。
【請求項9】
音波を送信する送信装置から音波を受信する端末装置であって、
前記音波を受信する音波受信部と、
前記音波に含まれる識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出部と、
前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出部と、
前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算部と、
基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定部と、
前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定部とを備え、
前記送信装置から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が正の値、かつ、前記基準値を超える値であると、
前記判定部は、
前記端末装置が前記送信装置から遠ざかっている状態であると判定する端末装置。
【請求項10】
音波を送信する送信装置、及び、前記音波を受信する端末装置を有する音波処理システムが行う音波処理方法であって、
前記送信装置が、所定周波数帯で識別情報を示す前記音波を送信する音波送信手順と、
前記端末装置が、前記音波を受信する音波受信手順と、
前記端末装置が、前記識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出手順と、
前記端末装置が、前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出手順と、
前記端末装置が、前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算手順と、
前記端末装置が、基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定手順と、
前記端末装置が、前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定手順とを含み、
前記送信装置から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が負の値、かつ、前記基準値より小さい値であると、
前記判定手順では、
前記端末装置が前記送信装置に近づいている状態であると判定する音波処理方法。
【請求項11】
音波を送信する送信装置、及び、前記音波を受信する端末装置を有する音波処理システムが行う音波処理方法であって、
前記送信装置が、所定周波数帯で識別情報を示す前記音波を送信する音波送信手順と、
前記端末装置が、前記音波を受信する音波受信手順と、
前記端末装置が、前記識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出手順と、
前記端末装置が、前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出手順と、
前記端末装置が、前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算手順と、
前記端末装置が、基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定手順と、
前記端末装置が、前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定手順とを含み、
前記送信装置から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が正の値、かつ、前記基準値を超える値であると、
前記判定手順では、
前記端末装置が前記送信装置から遠ざかっている状態であると判定する音波処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波処理システム、端末装置、及び、音波処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音波を用いて、識別信号等を送受信して通信を行う方法が知られている。特に近年では、音波を出力する出力装置から発信された識別信号を、スマートフォン又はタブレットPC等が有するマイクで受信して情報を取得する技術も知られている。
【0003】
具体的には、出力装置は、まず、識別情報を通知する通知先となる端末装置が移動する方向に応じて、端末装置に送信する音波の周波数を予め定めた周波数だけ変更する。次に、出力装置は、変更した周波数を用いて識別情報を示す音波を生成する。そして、出力装置は、識別情報を示す音波を端末装置に送信する。このようにして、通知先の移動状況に応じて、所定の情報を送る技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、例えば、音波出力装置、及び、情報処理端末を有する情報配信システムにおいて、音波出力装置は、所定の情報が重畳された指向性を有する音波を生成する。さらに、音波出力装置は、生成された音波を出力する。一方で、情報処理端末は、音波を受信し、受信した音波の周波数から特定できる情報処理端末の移動方向に基づいて、所定の情報を受信した旨を情報処理端末の利用者に通知するか否かを判断する。このようにして、情報配信システムに、コンテンツを取得か否かを判断させる技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、音波出力装置は、対象とする端末装置の移動速度を正確に検出できない場合がある。具体的には、音波出力装置は、音波を送受信する音波出力装置と、端末装置との位置関係等によっては、端末装置の移動速度を正確に検出できない場合がある。このように、従来の技術は、位置関係等により、端末装置の移動速度を正確に検出できない課題がある。
【0006】
本発明は、端末装置の移動速度を精度よく検出できる音波処理システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様では、音波処理システムは、音波を送信する送信装置、及び、前記音波を受信する端末装置を有する音波処理システムであって、
前記送信装置は、
所定周波数帯で識別情報を示す前記音波を送信する音波送信部
を備え、
前記端末装置は、
前記音波を受信する音波受信部と、
前記識別情報を周波数分析によって検出する識別情報検出部と、
前記端末装置の第1移動速度を検出する移動速度検出部と、
前記音波の周波数から前記端末装置の第2移動速度を計算する計算部と、
基準値と前記第2移動速度を比較して、前記端末装置の状態を判定する判定部と、
前記第1移動速度で定まる前記基準値を設定する設定部と
を備え、
前記音波送信部から遠ざかる方向を正とし、
前記第2移動速度が負の値、かつ、前記基準値より小さい値であると、
前記判定部は、
前記端末装置が前記送信装置に近づいている状態であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、端末装置の移動速度を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】端末装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図7】停止状態において受信した音波の周波数成分の例を示す図である。
【
図8】ユーザが近づく移動、及び、ユーザが遠ざかる移動を行う例を示す図である。
【
図9】ユーザが近づく移動、及び、ユーザが遠ざかる移動において受信した音波の周波数成分の例を示す図である。
【
図10】斜め位置においてユーザが移動する例を示す図である。
【
図11】横位置においてユーザが移動する例を示す図である。
【
図12】実際移動速度、及び、音源に対する移動速度の関係の例を示す図である。
【
図13】音源に対して近づく方向の例を示す図である。
【
図14】音源に対して遠ざかる方向の例を示す図である。
【
図16】音源に対して近づく移動であるかの第1判定例を示す図である。
【
図17】音源に対して端末装置が近づいているか否かを判定する判定処理の例を示す図である。
【
図19】音源に対して近づく移動であるかの第2判定例を示す図である。
【
図21】音源に対して近づく移動であるかの第3判定例を示す図である。
【
図23】同じ対音源移動速度となる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、添付する図面を参照し、具体例を説明する。なお、実施形態は、図示する例及び以下に説明する具体例に限られない。
【0011】
[全体構成例]
図1は、全体構成例を示す図である。例えば、音波処理システム10は、サーバ1、通信機器3、ビーコン4、及び、端末装置5等を有する構成である。また、音波処理システム10では、例えば、サーバ1、及び、通信機器3は、ネットワーク2等を介して接続する。
【0012】
サーバ1は、情報処理装置である。そして、サーバ1は、音波処理システム10の全体を管理する。
【0013】
通信機器3は、例えば、ゲートウェイ(Gateway)等である。なお、通信機器3は、ゲートウェイ以外の種類であってもよい。
【0014】
ビーコン(Beacon)4は、送信装置の例である。具体的には、ビーコン4は、音波6を端末装置5等へ送信する無線局等である。なお、ビーコン4は、図示するように、複数あってもよいし、単数でもよい。
【0015】
例えば、通信機器3及びビーコン4は、Bluetooth(登録商標)、Wi―Fi(登録商標)、又は、920MHz帯の無線等を用いる無線通信等で接続する。
【0016】
端末装置5は、例えば、スマートフォン等の情報処理装置である。また、端末装置5は、いわゆるモバイル機器が望ましい。そして、端末装置5は、ユーザ7が有する装置である。ゆえに、端末装置5は、ユーザ7の移動により位置が変化する装置である。
【0017】
なお、音波処理システム10は、上記に説明した構成に限られない。例えば、ネットワーク2及び無線による接続は、Universal Serial Bus(USB)、又は、有線Local Area Network(LAN)等の有線通信による接続でもよい。
【0018】
また、装置構成は、上記に説明した構成に限られない。例えば、通信機器3は、サーバ1と一体でもよい。このように、装置は、複数の装置をまとめて1つの装置であってもよいし、又は、上記の例では1つの装置が複数の装置であってもよい。
【0019】
音波処理システム10において、ビーコン4は、識別情報等を含めて音波6を端末装置5等へ送信する。このように、音波6が送信された後、端末装置5は、マイクロフォン等で音波6を受信する。また、端末装置5は、サーバ1と通信することで現在位置を示す位置情報等を取得できる。
【0020】
例えば、識別情報は、事前に設定する識別番号(ID)等である。
【0021】
[ハードウェア構成例]
図2は、端末装置のハードウェア構成例を示す図である。例えば、端末装置5は、Central Processing Unit(以下「CPU51」という。)、記憶装置52、入出力装置53、ネットワークインタフェース54、及び、加速度センサ55等を有する。
【0022】
なお、端末装置5は、風力センサ56、及び、温度センサ57等を更に有するのが望ましい。以下、図示する端末装置5を例にして説明する。
【0023】
CPU51は、演算装置及び制御装置の例である。したがって、CPU51は、プログラム等に基づいて所定の処理を実行する。
【0024】
記憶装置52は、例えば、メモリ等の主記憶装置等である。なお、記憶装置52は、ハードディスク及びSolid State Drive(SSD)等の補助記憶装置を更に有してもよい。
【0025】
入出力装置53は、入力装置及び出力装置の例である。例えば、入出力装置53は、タッチパネル等である。したがって、入出力装置53は、ユーザ7の操作を受け付ける装置である。また、入出力装置53は、画像等をユーザ7に表示する装置である。
【0026】
ネットワークインタフェース54は、ネットワーク等を介して、外部装置とデータを送受信する装置である。例えば、ネットワークインタフェース54は、アンテナ又はコネクタ等である。
【0027】
加速度センサ55は、端末装置5にかかる加速度等を検出するセンサ等である。また、端末装置5は、加速度センサ55が検出する加速度等に基づいて、速度、又は、移動量等を計算して検出してもよい。また、加速度センサ55は、加速度がかかる方向等に基づいて方向を検出してもよい。したがって、加速度センサ55は、端末装置5を有するユーザ7が移動する方向、加速度、速度、移動量、又は、これらの組み合わせを検出する。
【0028】
風力センサ56は、端末装置5の付近に発生する風の風量及び風の吹く方向等を検出するセンサである。
【0029】
温度センサ57は、端末装置5の付近の温度を検出するセンサである。
【0030】
なお、ハードウェア構成は、上記に示す構成に限られない。例えば、端末装置5は、演算装置、記憶装置、制御装置、入力装置、出力装置、及び、インタフェース等の装置を内部又は外部に更に有してもよい。
【0031】
また、情報処理装置は、演算装置、記憶装置、制御装置、入力装置、出力装置、及び、インタフェース等の装置を有し、演算装置、記憶装置、及び、制御装置等の協働によって処理を実行する装置であればよい。
【0032】
[全体処理例]
図3は、全体処理例を示す図である。
【0033】
ステップS0301では、ビーコン4は、音波6を送信する。なお、ビーコン4は、例えば、事前に設定する送信タイミング、音波6を送信する時間、送信強度、及び、周波数等の設定項目に基づいて音波6を送信する。
【0034】
ステップS0302では、端末装置5は、音波6を受信する。
【0035】
ステップS0303では、端末装置5は、受信した音波6を周波数分析して識別情報を検出する。具体的には、端末装置5は、まず、受信した音波6を周波数分析する。例えば、音波6を周波数分析した分析結果は以下のような結果となる。
【0036】
図4は、周波数分析の分析結果例を示す図である。図は、横軸に周波数(例えば、単位はヘルツ(Hz)である。)を示し、かつ、縦軸に音量(例えば、単位はデシベル(dB)である。)を示す。例えば、音波6は、ノイズ成分401、及び、識別情報を示す周波数成分(以下単に「識別情報402」という。)の周波数成分を含む。
【0037】
例えば、高速フーリエ変換(FFT)等の周波数分析を行うと、端末装置5は、所定周波数帯に現れる識別情報402を検出できる。
【0038】
なお、識別情報402の周波数帯は、ノイズ成分401の周波数帯とできるだけ分かれているのが望ましい。すなわち、識別情報402用の所定周波数帯は、ノイズ成分401の周波数帯より高い周波数に設定するのが望ましい。このように、識別情報402の周波数帯がノイズ成分401の周波数帯と分かれていると、識別情報402にノイズ成分401が混じりにくい。
【0039】
例えば、識別情報402用の所定周波数帯は、人間の耳に聞こえにくい周波数等が望ましい。ただし、音波6は、可聴領域の周波数を含んでもよい。
【0040】
ステップS0304では、端末装置5は、加速度センサ55の検出結果等に基づき、移動速度(以下、加速度センサ55の検出結果等に基づいて検出する移動速度を「第1移動速度」という。)を検出する。
【0041】
ステップS0305では、端末装置5は、音波6の周波数等に基づき、移動速度(以下、音波6の周波数等に基づいて検出する移動速度を「第2移動速度」という。)を検出する。第2移動速度等の詳細は後述する。
【0042】
ステップS0306では、端末装置5は、第1移動速度、及び、第2移動速度に基づいて、判定を行う。なお、判定処理の詳細は後述する。
【0043】
ステップS0307では、端末装置5は、例えば、情報提供等を行う。すなわち、ステップS0307では、端末装置5は、ステップS0306で選ばれた移動速度に基づき、事前に定める所定の処理を行う。なお、ステップS0307は、情報提供以外の処理であってもよい。ステップS0307の詳細は後述する。
【0044】
なお、全体処理は、上記に説明する処理に限られない。例えば、全体処理は、上記に示す処理を並列、分散、冗長、又は、上記に説明する順序とは異なる順序で行う処理でもよい。
【0045】
上記に示すステップS0305以降の処理は、例えば、以下のような処理である。
【0046】
図5は、音波を送信する範囲の例を示す図である。まず、ビーコン4は、図示する範囲(図では、ハッチングで示す範囲)に音波6を送信する設定であるとする。
【0047】
具体的には、この例では、ビーコン4は、放射状に約180°の範囲に、音波6を送信する設定であるとする。なお、ビーコン4による音波6を送信する範囲は、設定できてもよい。したがって、ビーコン4は、図示する範囲より広い角度、又は、狭い角度の範囲に音波6を送信できる設定でもよい。以下、図示する範囲を設定した場合を例に説明する。
【0048】
音波6の周波数は、ドップラー効果(Doppler effect)により、端末装置5の移動(以下、端末装置5はユーザ7が有するとし、端末装置5の位置及びユーザ7の位置は一致する。したがって、以下の説明は、ユーザ7の位置のみで説明し、端末装置5の位置を省略する。)により変化する。
【0049】
図6は、停止状態の例を示す図である。例えば、図示する位置(ビーコン4に対してほぼ正面とする。)に、ユーザ7が停止している状態であるとする。このような停止状態で受信した音波6が以下のような周波数成分であるとする。
【0050】
図7は、停止状態において受信した音波の周波数成分の例を示す図である。図は、横軸に周波数を示し、かつ、縦軸に音量を示す。例えば、停止状態では、受信する音波6は、周波数が図示するような周波数を中心とする周波数成分である。以下、このような停止状態における周波数(以下「基準周波数700」という。)を基準に説明する。
【0051】
例えば、ユーザ7は、
図6に示す停止状態から、ビーコン4に対して、以下のように近づく、又は、遠ざかるように移動を行う。
【0052】
図8は、ユーザが近づく移動、及び、ユーザが遠ざかる移動を行う例を示す図である。例えば、ユーザ7は、第1移動71のように移動し、ビーコン4に近づく。一方で、ユーザ7は、第2移動72のように移動し、ビーコン4から遠ざかる。
【0053】
このような第1移動71及び第2移動72を行うと、周波数は、例えば、以下のように変化する。
【0054】
図9は、ユーザが近づく移動、及び、ユーザが遠ざかる移動において受信した音波の周波数成分の例を示す図である。なお、縦軸及び横軸は、
図7と同様である。
【0055】
例えば、第1移動71のように、ビーコン4に対してユーザ7が近づく場合には、周波数は、高い値となる(以下、第1移動71によって変化した後の周波数を「第1周波数701」という)。すなわち、第1周波数701は、基準周波数700と比較して、値が高い周波数である。
【0056】
一方で、例えば、第2移動72のように、ビーコン4に対してユーザ7が遠ざかる場合には、周波数は、低い値となる(以下、第2移動72によって変化した後の周波数を「第2周波数702」という)。すなわち、第2周波数702は、基準周波数700と比較して、値が低い周波数である。
【0057】
図9は、ビーコン4に対して、ユーザ7が正面に位置した状態(
図8におけるX軸上の位置が一致する状態である。)である。一方で、ユーザ7は、ビーコン4に対して、例えば、以下のような位置関係の場合がある。
【0058】
図10は、斜め位置においてユーザが移動する例を示す図である。
図8と比較すると、
図10では、ユーザ7は、ビーコン4に対して、正面ではなく、斜めに位置する位置関係である。以下、
図10に示す位置関係において、
図8に示す第1移動71及び第2移動72と同様に、ユーザが近づく移動(Y軸方向における移動で、図において上へ動く移動をいう。)、及び、ユーザが遠ざかる移動(Y軸方向における移動で、図において下へ動く移動をいう。)を「斜め移動」という。例えば、斜め移動は、第3移動73、及び、第4移動74等である。
【0059】
図11は、横位置においてユーザが移動する例を示す図である。
図10と比較すると、
図11では、ユーザ7は、斜め位置移動の場合より、ビーコン4に対して、更に横方向(図ではX軸方向である。)に離れた位置関係である。以下、
図11に示す位置関係において、
図8に示す第1移動71及び第2移動72と同様に、ユーザが近づく移動(Y軸方向における移動で、図において上へ動く移動をいう。)、及び、ユーザが遠ざかる移動(Y軸方向における移動で、図において下へ動く移動をいう。)を「横移動」という。例えば、横移動は、第5移動75、及び、第6移動76等である。
【0060】
例えば、上記のような移動を行うユーザ7に対して、端末装置5は、下記(1)式に基づく計算により、周波数を検出する。
【0061】
f={(V-v0)/V}×f0 (1)
【0062】
上記(1)式は、ドップラーの式を示す。なお、上記(1)式の計算では、簡略化のため、音源となるビーコン4は、一貫して位置が固定であるとする。
【0063】
上記(1)式において、「f」は端末装置5において検出される周波数である。以下、「検出周波数f」という。上記(1)式において、「f0」は、音源における周波数である。以下、「音源周波数f0」という。また、上記(1)式において、「V」は音速である。以下、単に「音速V」という。さらに、上記(1)式において、「v0」は、音源に対する移動速度である。以下、単に「移動速度v0」という。
【0064】
また、以下の説明では、移動速度v0等の移動速度は、音源に対して遠ざかる速度を「正」の値とし、かつ、音源に対して近づく速度を「負」の値とする。
【0065】
そして、上記(1)式における移動速度v0は、以下のような値である。
【0066】
図12は、実際移動速度、及び、音源に対する移動速度の関係の例を示す図である。例えば、第3移動73は、「実際移動速度va1」であるとする。これに対して、音源に対する移動速度(以下「対音源移動速度va2」という。)は、下記(2)式に示す関係となる。
【0067】
va2=va1×cosθ (2)
【0068】
すなわち、上記(2)式により定まる対音源移動速度va2が、上記(1)式における移動速度v0となる。このように、対音源移動速度va2は、実際移動速度va1に余弦関数を乗じた余弦の値である。
【0069】
上記(2)式において、「θ」は、実際移動速度va1、及び、ユーザ7及び音源を結ぶ直線が成す角度(以下「音源角度θ」という。)である。すなわち、音源角度θは、送信装置を有する音源に対して実際移動速度va1が成す角度である。
【0070】
例えば、以下のような音源角度θであると、端末装置5は音源に対して近づく状態である。
【0071】
図13は、音源に対して近づく方向の例を示す図である。例えば、ユーザ7が、移動速度va11、va12、及び、va13のように移動する場合には、上記(2)式に基づき、対音源移動速度は、移動速度va21、va22、及び、va23となる。なお、移動速度va23は、音源角度θが限りなく「90°」に近い値の場合である。
【0072】
一方で、例えば、以下のような音源角度θであると、端末装置5は音源に対して遠ざかる状態である。
【0073】
図14は、音源に対して遠ざかる方向の例を示す図である。例えば、ユーザ7が、移動速度va14、va15、及び、va16のように移動する場合には、上記(2)式に基づき、対音源移動速度は、移動速度va24、va25、及び、va26となる。
【0074】
図12及び
図13が示すように、上記(2)式により、実際移動速度va1が、移動速度va11乃至va16であっても、対音源移動速度va2は、音源角度θによって実際移動速度va1と異なる値となる場合がある。したがって、ステップS0306による判定は、例えば、以下のような処理であるのが望ましい。
【0075】
図15は、判定の第1例を示す図である。以下、ユーザ7は、第1点1501及び第2点1502を経由して移動する例とする。
【0076】
第1点1501において、上記(2)式における実際移動速度va1は、移動速度vb11であるとする。そして、ユーザ7は、同じ移動速度及び方向で維持し、一定であるとする。すなわち、第2点1502において、上記(2)式における実際移動速度va1は、移動速度vb11であるとする。
【0077】
移動速度vb11が一定であるのに対して、対音源移動速度va2は、音源角度θの変化のため、上記(2)式により、第1点1501及び第2点1502では、移動速度vb21及び移動速度vb22となる。このような移動が音源に対して近づく移動であるか、又は、音源に対して遠ざかる移動であるか等といった状態を端末装置5は例えば以下のように判定する。
【0078】
図16は、音源に対して近づく移動であるかの第1判定例を示す図である。図は、横軸に時間を示し、かつ、縦軸に速度を示す。
【0079】
図15に示す例における移動速度vb11は、図示するように、時間によらず、一定である。すなわち、
図15に示す例では、上記(2)式における実際移動速度va1は、移動速度vb11の値で一定である。
【0080】
一方で、対音源移動速度va2は、例えば、時間に対して、図示するように変化する。具体的には、
図15に示す例では、ユーザ7が移動して位置が変化するため、時間によって音源角度θが異なる。したがって、例えば、第2点1502のように音源角度θが「90°」に近い値となる位置では、対音源移動速度va2は、上記(2)式において「cosθ」の絶対値が「0」に近い値になる。ゆえに、対音源移動速度va2は、上記(2)式による乗算の計算により、移動速度vb22のように、絶対値が小さい速度となる。
【0081】
[判定処理例]
例えば、
図15等のように対音源移動速度va2が変化する状態において、端末装置5は、以下のように移動速度の状態を判定する。以下、このように、端末装置5が音源に対して、相対的にどのような移動を行っているかを単に「状態」という。
【0082】
図17は、音源に対して端末装置が近づいているか否かを判定する判定処理の例を示す図である。以下、
図15等に示す移動により、端末装置5がビーコン4に対して近づいているか否かを判定する場合を例に説明する。また、図示する判定処理は、ステップS0306で行う処理である。
【0083】
ステップS1701では、端末装置5は、判定の基準となる値(以下「第1基準値Vk1」という。)を設定する。なお、第1基準値Vk1となる値の設定方法は後述する。
【0084】
そして、
図16における「+Vk1」及び「-Vk1」のように、第1基準値Vk1は、絶対値が同一の値で、符号を変えて、「正」側及び「負」側に別々に設定される。
【0085】
ステップS1702では、端末装置5は、対音源移動速度が基準値より小さい値か否かを判定する。すなわち、状態は、対音源移動速度va2が「-Vk1」より小さい値であるか否かで判定される。
【0086】
次に、対音源移動速度が基準値より小さい値であると判定する場合(ステップS1702でYES)には、端末装置5は、ステップS1703に進む。一方で、対音源移動速度が基準値より小さい値でないと判定する場合(ステップS1702でNO)には、端末装置5は、ステップS1704に進む。
【0087】
ステップS1703では、端末装置5は、ユーザ7が音源に対して近づいている状態と判定する。
【0088】
ステップS1704では、端末装置5は、ユーザ7が音源に対して近づいていない状態と判定する。
【0089】
例えば、
図15及び
図16の例は、
図16が示すように、対音源移動速度va2が「-Vk1」より小さい値でない例である(ステップS1702でNO)。そのため、この例では、端末装置5は、ステップS1704により、ユーザ7が音源に対して近づいていない状態と判定する。
【0090】
上記の説明は、ユーザ7が音源に対して近づく場合を例にした説明である。なお、判定は、ユーザ7が音源に対して遠ざかる状態を対象にしてもよい。具体的には、ステップS1702において、端末装置5は、対音源移動速度が基準値を超える値か否かを判定する。すなわち、状態が遠ざかるか否かを判定する場合には、端末装置5は、値を「正」にして判定する。
【0091】
一方で、例えば、端末装置5は、以下のような状態となる場合がある。
【0092】
図18は、判定の第2例を示す図である。第1例と比較すると、第2例は、ユーザ7が第1点1501の後に第3点1503を経由する移動である点が異なる。
【0093】
第3点1503は、第2点1502より音源に近い位置である。すなわち、この例では、ユーザ7は、第1点1501を経由した後、第1例より音源に近い位置に向かって移動する。
【0094】
また、この例では、第1点1501において、上記(2)式における実際移動速度va1は、移動速度vb12であるとする。そして、ユーザ7は、第1点1501及び第3点1503のいずれでも同じ移動速度及び方向で維持し、移動速度vb12で一定であるとする。すなわち、第3点1503において、上記(2)式における実際移動速度va1は、移動速度vb12であるとする。また、第1例における移動速度vb11と比較すると、移動速度vb12は、移動速度は同じであり、方向が異なる。
【0095】
第1例と同様に、ユーザ7が移動して位置が変化するため、時間によって音源角度θが異なる。ゆえに、対音源移動速度va2は、第1点1501では移動速度vb23であり、その後、対音源移動速度va2は、第3点1503では移動速度vb24と変化する。このような移動が音源に対して近づく移動であるか否かの状態を端末装置5は例えば以下のように判定する。
【0096】
図19は、音源に対して近づく移動であるかの第2判定例を示す図である。横軸、及び、縦軸は
図16と同様である。
【0097】
第1例と比較すると、第2例は、対音源移動速度va2が「-Vk1」より小さい値となる場合を含む。
【0098】
したがって、
図18及び
図19の例は、対音源移動速度va2が「-Vk1」より小さい値であると判定される例である(ステップS1702でYES)。そのため、この例では、端末装置5は、ステップS1703により、ユーザ7が音源に対して近づいている状態と判定する。
【0099】
このように、基準値を設定して、基準値と比較して端末装置5の状態を判定すると、音波処理システム10は、端末装置5の移動速度を精度よく検出できる。
【0100】
また、基準値は、移動速度に応じて設定するのが望ましい。例えば、設定値は、以下のように設定するのが望ましい。
【0101】
図20は、判定の第3例を示す図である。第2例と比較すると、第3例は、上記(2)式における実際移動速度va1が移動速度vb13である点が異なる。なお、第2例と同様に、第3例では、ユーザ7は、第1点1501及び第3点1503のいずれでも同じ移動速度及び方向で維持し、移動速度vb13で一定であるとする。
【0102】
対音源移動速度は、第1点1501では移動速度vb25とする。そして、移動により、音源角度θが変化するため、第3点1503では、対音源移動速度は、移動速度vb26と変化する。
【0103】
移動速度vb13は、第2例における移動速度vb12より低速である。一方で、移動速度vb13は、移動速度vb12と方向は同じである。
【0104】
このような移動が音源に対して近づく移動であるか否かの状態を端末装置5は例えば以下のように判定する。
【0105】
図21は、音源に対して近づく移動であるかの第3判定例を示す図である。横軸、及び、縦軸は
図16と同様である。
【0106】
第1例及び第2例と比較すると、第3例は、移動速度vb13が移動速度vb11及び移動速度vb12より低い値である。ゆえに、上記(2)式の計算により、対音源移動速度va2は、絶対値が第1例及び第2例の場合より小さい値になる。
【0107】
そこで、端末装置5は、ステップS1701では、端末装置5は、移動速度vb13に基づき、第1基準値Vk1とは異なる判定の基準となる値(以下「第2基準値Vk2」という。)を設定する。
【0108】
第3例のように、移動速度vb13が移動速度vb11及び移動速度vb12より低速である場合には、第2基準値Vk2は、第1基準値Vk1より小さい値である。
【0109】
このように、基準値は、第1移動速度の速度(大きさ)に応じた値を設定するのが望ましい。このように基準値を設定すると、端末装置5は、状態を精度よく判定できる。
【0110】
[基準値の設定及び情報提供の例]
例えば、端末装置5は、下記(表1)のように基準値等を設定する。
【0111】
【表1】
上記(表1)に示す例は、端末装置ごとに異なる設定とする例である。
【0112】
「識別情報」は、音波に含む識別情報である。例えば、「識別情報」は、「1」、「2」、「3」・・・のように、複数の端末装置に対して設定する異なる番号等である。このように、識別情報は設定して各々の端末装置を識別できる番号等である。
【0113】
「基準値」は、基準値を設定する計算方法、又は、基準値となる値を入力した例を示す。具体的には、「識別情報」が「1」の場合において、「基準値」は「第1移動速度×(±0.3)」のように計算方法を入力する。したがって、この場合には、基準値になる値は、「0.3」倍する乗算により設定する。なお、係数である「0.3」は例えば事前に設定する値である。このように、第1移動速度に所定の係数を乗じる計算等を行うように設定すると、端末装置5は、第1基準値Vk1及び第2基準値Vk2のように、第1移動速度に応じて、基準値を切り替えることができる。
【0114】
また、「識別情報」が「2」及び「3」の場合のように、「基準値」に固定値を指定する設定があってもよい。
【0115】
なお、例えば、(表1)に示す「第1移動速度」のように、「基準値」とは別の条件で行う処理を分けるように設定してもよい。例えば、「第1移動速度」は、(表1)における「識別情報」が「1」のように、「1.3m/s以上」、「0.5m/s以上1.3m/s未満」及び「0m/s以上0.5m/s未満」のように3種類に分かれるように設定する。このように設定すると、「情報A」、「情報B」又は「情報C」のうち、どの情報を提供するかを第1速度の値によって切り替えることができる。なお、条件は、「第1移動速度」による区分以外のパラメータで設定してもよい。例えば、方向、速度、及び、「識別情報」等を組み合わせる条件等が設定されてもよい。
【0116】
「提供する情報」は、ステップS0307で行う処理の設定例である。すなわち、この例では、「識別情報」、「基準値」の判定結果、及び、「第1移動速度」により、ユーザ7に提供する情報を「情報A」乃至「情報G」又は情報を提供しない((表1)では「-」で示す。)で切り替える設定である。すなわち、端末装置5は、判定結果等によって、ステップS0307で行う処理が異なる。
【0117】
例えば、店舗等の出入口等で情報の提供を行う場合等がある。この場合では、オペレータは、例えば、出入口付近に、送信装置を設定する。このような場合において、上記(表1)のように設定すると、音波処理システム10は、例えば、来店する人と、退店する人とで異なる情報を音声で提供できる。
【0118】
具体的には、音波処理システム10は、来店する人に対して、「いらっしゃいませ」という情報をスピーカ等で出力して提供する。一方で、音波処理システム10は、退店する人に対して、「ありがとうございました」という情報をスピーカ等で出力して提供する。このように、対象とする人の行動が精度良く推定できるため、音波処理システム10は、精度良く情報を使い分けできる。
【0119】
[温度による音速の補正例]
上記(1)式を計算する上で、音波処理システム10は、音速Vを温度に基づいて補正するのが望ましい。具体的には、音波処理システム10は、下記(3)式により、音速Vを温度に基づいて補正するのが望ましい。
【0120】
V=331.5+0.6T (3)
【0121】
上記(3)式において、「V」は、上記(1)式と同様に音速である。また、上記(3)式において、「T」は、気温(単位は「℃」である。)である。なお、音波処理システム10は、音速Vを気体の状態方程式等に基づいて補正してもよい。このように、音速Vを温度に基づいて補正すると、音波処理システム10は、上記(1)式により、温度Tが変化しても検出周波数fをより精度良く計算できる。
【0122】
[風速による音速の補正例]
音波処理システム10は、音速Vを風速に基づいて補正するのが望ましい。具体的には、音波処理システム10は、下記(4)式により、音速Vを補正して検出周波数fを計算するのが望ましい。
【0123】
f={(V±w-v0)/(V±w)}×f0 (4)
【0124】
上記(4)式は、上記(1)式と比較すると、風速「w」が加わる点が異なる。具体的には、風速wは、音源から端末装置へ向かって吹く風の風速である。このように、音速Vを風速wに基づいて補正すると、音波処理システム10は、上記(1)式により、風が吹いている場合でも検出周波数fをより精度良く計算できる。
【0125】
[エリアを分ける例]
識別情報は、エリアごとに異なる情報であるのが望ましい。まず、例えば、
図5に示すような範囲は、以下のようなエリアに分けるのが望ましい。
【0126】
図22は、エリアの例を示す図である。図示する例は、音波を送信可能な範囲を均等に2つのエリアに分ける例である。具体的には、第1エリア221は、図における左半分のエリアである。一方で、第2エリア222は、図における右半分のエリアである。
【0127】
例えば、第1エリア221は、識別情報を「ID1」とする。一方で、第2エリア222は、識別情報を「ID2」とする。このように、識別情報がエリアごとに異なると、音波処理システム10は、例えば、以下のような状態を精度良く区別できる。
【0128】
図23は、同じ対音源移動速度となる例を示す図である。例えば、右地点2301及び左地点2302において、ユーザ7が、どちらも移動速度vb14であるとする。
【0129】
まず、右地点2301及び左地点2302は、ビーコン4、すなわち、音源からの距離は同一である。さらに、右地点2301及び左地点2302は、音源角度θも同一である。一方で、右地点2301及び左地点2302は、ビーコン4から左右対称の位置(図において、ビーコン4を軸に線対称である。)である。
【0130】
右地点2301における対音源移動速度は、移動速度vb26であるとする。一方で、左地点2302における対音源移動速度は、移動速度vb27であるとする。
【0131】
移動速度vb26及び移動速度vb27は、上記(2)式において同じ音源角度θ、かつ、同じ移動速度vb14であるため、同じ音源角度θ、かつ、同じ速度となる。ただし、移動速度vb26及び移動速度vb27は、エリアが異なる。そこで、このような場合において、音波処理システム10は、エリアごとに異なる識別情報を出力する。このように、エリアごとに異なる識別情報が用いられると、音波処理システム10は、右地点2301及び左地点2302等のような場合であってもエリアを判別できる。
【0132】
なお、エリアは、図示するような分け方に限られない。例えば、エリアは、3つ以上でもよい。また、エリアは、均等に限られず、一方のエリアが他方のエリアより広い等でもよい。
【0133】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態と比較すると、音源が移動する点が異なる。すなわち、第2実施形態は、送信装置及び端末装置の両方が移動する場合である。例えば、第2実施形態は、以下のような場合である。
【0134】
図24は、第2実施形態の第1例を示す図である。例えば、端末装置は、一方のユーザ(以下「第1ユーザ721」という。図では、第1ユーザ721は下に位置する。)が有する。一方で、送信装置は、他方のユーザ(以下「第2ユーザ722」という。図では、第2ユーザ722は上に位置する。)が有する。
【0135】
例えば、第1ユーザ721及び第2ユーザ722は、X軸における同じ位置、すなわち、互いに対向する。そして、第1ユーザ721は、上に向かって移動する。一方で、第2ユーザ722は、下に向かってで移動する。
【0136】
また、送信装置は、音波を送信する。一方で、端末装置は、音波を受信する。このような送受信がされながら、第1ユーザ721及び第2ユーザ722は、近づくように移動する。
【0137】
なお、第2実施形態は、以下のようであってもよい。
【0138】
図25は、第2実施形態の第2例を示す図である。第2例は、第1例と比較すると、第1ユーザ721が有する装置も音波を送信する点が異なる。
【0139】
すなわち、第2例は、第1ユーザ721及び第2ユーザ722が有する各々の装置が互いに送信装置及び端末装置のいずれにもなる構成である。
【0140】
第1例及び第2例では、検出周波数fは、下記(5)式で計算するのが望ましい。
【0141】
f={(V+vs2)/(V-vs1)}×f0 (5)
【0142】
上記(5)式において、「vs1」は、音源、すなわち、音波を送信する装置の移動速度である。以下「音源移動速度vs1」という。また、上記(5)式において、「vs2」は、音波を受信する端末装置の移動速度である。以下「端末装置移動速度vs2」という。なお、上記(5)式において、音源移動速度vs1及び端末装置移動速度vs2以外の変数は上記(1)式と同様である。
【0143】
第2例では、音源移動速度vs1及び端末装置移動速度vs2は、どちらの装置が音波を送信するかにより入れ替わる。
【0144】
そして、上記(5)式において、音源移動速度vs1及び端末装置移動速度vs2は、音源から遠ざかる方向を「正」の値とする。さらに、第2実施形態は、例えば、以下のような場合である。
【0145】
図26は、第2実施形態の第3例を示す図である。第1例と比較すると、第1ユーザ721及び第2ユーザ722がいずれもY軸方向において逆向きである点が異なる。
【0146】
具体的には、第2ユーザ722は、上に向かって移動速度vs22で移動する。一方で、第1ユーザ721は、下に向かって移動速度vs12で移動する。
【0147】
また、送信装置は、音波を送信する。一方で、端末装置は、音波を受信する。このような送受信がされながら、第1ユーザ721及び第2ユーザ722は、遠ざかるように移動する。
【0148】
さらに、第2例と同様に、双方の装置が音波を送信してもよい。
【0149】
図27は、第2実施形態の第4例を示す図である。第4例は、第3例のように第1ユーザ721及び第2ユーザ722は、遠ざかるように移動し、かつ、第2例のように第1ユーザ721及び第2ユーザ722が有する各々の装置が互いに送信装置及び端末装置のいずれにもなる構成である。
【0150】
第3例及び第4例では、検出周波数fは、下記(6)式で計算するのが望ましい。
【0151】
f={(V-vs2)/(V+vs1)}×f0 (6)
【0152】
上記(6)式において、変数は上記(5)式と同様である。
【0153】
第4例では、音源移動速度vs1及び端末装置移動速度vs2は、どちらの装置が音波を送信するかにより入れ替わる。
【0154】
上記(5)式、又は、上記(6)式のような計算を行うと、近づく移動及び遠ざかる移動であるかが推定できる。具体的には、送信側となる装置の移動速度が未知である場合とする。この場合において、受信側だけが移動すると仮定すると、上記(1)式のような計算となり、検出周波数fは、上記(5)式、又は、上記(6)式の場合と異なる値となる。したがって、音波処理システム10は、上記(1)式のような状態と仮定し、計算した場合と比較して異なる計算結果となる場合に、他方の装置が移動していると推定できる。
【0155】
このように、上記(1)式、上記(5)式、及び、上記(6)式等の計算結果に基づき、計算結果を受信した音波の周波数と比較すると、音波処理システムは、送信装置、及び、端末装置の各々が移動している状態か等を判定できる。
【0156】
また、音波処理システムは、周波数の計算結果等から、音波処理システムは、送信装置、及び、端末装置の各々が近づいている移動であるか、遠ざかる移動であるか、又は、停止しているか等の状態を判定できる。
【0157】
第1例乃至第4例のように、双方が移動している場合には、移動速度は、一方の装置から他の装置に通知するのが望ましい。なお、移動速度の通知を音波に含める場合には、通知の頻度は低いのが望ましい。音波に含める情報が多いと、識別の精度が悪化、又は、情報のご認識等が増える場合がある。したがって、移動速度は、低頻度で通知されるのが望ましい。なお、ネットワーク等を介して通知を行うと、ネットワークを用いる通信のリアルタイム性を損なう場合があるため、通知は、リアルタイム性があまり重要でない場面で行うのが望ましい。
【0158】
[機能構成例]
図28は、機能構成例を示す図である。例えば、音波処理システム10は、音波送信部101、音波受信部102、識別情報検出部103、移動速度検出部104、計算部105、判定部106、及び、設定部107等を備える。また、音波処理システム10は、温度計測部108、及び、風速計測部109を更に備えるのが望ましい。
【0159】
音波送信部101は、識別情報402等を示す音波6を送信する音波送信手順を行う。例えば、音波送信部101は、ビーコン4が有する出力装置等で実現する。
【0160】
音波受信部102は、音波6を受信する音波受信手順を行う。例えば、音波受信部102は、端末装置5が有する入力装置等で実現する。
【0161】
識別情報検出部103は、識別情報402等を周波数分析によって検出する識別情報検出手順を行う。例えば、識別情報検出部103は、CPU51等で実現する。
【0162】
移動速度検出部104は、端末装置5の第1移動速度を検出する移動速度検出手順を行う。例えば、移動速度検出部104は、加速度センサ55等で実現する。
【0163】
計算部105は、音波6の周波数等から、第2移動速度を計算する計算手順を行う。例えば、計算部105は、CPU51等で実現する。
【0164】
判定部106は、基準値と第2移動速度を比較して、端末装置5の状態を判定する判定手順を行う。例えば、判定部106は、CPU51等で実現する。
【0165】
設定部107は、第1移動速度で定まる基準値を設定する設定手順を行う。例えば、設定部107は、CPU51等で実現する。
【0166】
温度計測部108は、温度を計測する温度計測手順を行う。例えば、温度計測部108は、温度センサ57等で実現する。
【0167】
風速計測部109は、風速を計測する風速計測手順を行う。例えば、風速計測部109は、風力センサ56等で実現する。
【0168】
[比較例]
例えば、
図10又は
図11等のような位置関係、すなわち、では、斜め位置移動、又は、横移動等では、受信において、周波数は、例えば、以下のように検出される場合がある。
【0169】
図29は、第1比較例を示す図である。例えば、斜め位置移動が行われると、周波数は、第3周波数703及び第4周波数704等のように検出される場合がある。
【0170】
第3周波数703は、第1周波数701より低い周波数である。また、第3周波数703は、第3移動73等のように、斜め位置移動、かつ、近づく場合に検出される。
【0171】
第4周波数704は、第2周波数702より高い周波数である。また、第4周波数704は、第4移動74等のように、斜め位置移動、かつ、遠ざかる場合に検出される。
【0172】
図30は、第2比較例を示す図である。例えば、横移動が行われると、周波数は、第5周波数705及び第6周波数706等のように検出される場合がある。
【0173】
第5周波数705は、基準周波数700とほとんど同じ周波数である。また、第5周波数705は、第5移動75等のように、横位置移動、かつ、近づく場合に検出される。
【0174】
第6周波数706は、基準周波数700とほとんど同じ周波数である。また、第6周波数706は、第6移動76等のように、横位置移動、かつ、遠ざかる場合に検出される。
【0175】
このように、斜め位置移動又は横位置移動のような位置関係であると、周波数は、近づく、又は、遠ざかる移動が行われても周波数の変化量が少ない場合がある。すなわち、実際の移動速度に応じた周波数が検出されない場合がある。その結果、例えば、情報を提供するような場合において、狙う移動速度とは異なる場合に情報を提供してしまう等が起きる。
【0176】
[他の実施形態]
音波処理方法は、例えば、プログラム等で実現してもよい。すなわち、音波処理方法は、プログラムに基づいて、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置、及び、制御装置を協働して動作させて実行されてもよい。
【0177】
なお、本発明は、上記に例示する各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項のすべてが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0178】
1 :サーバ
2 :ネットワーク
3 :通信機器
4 :ビーコン
5 :端末装置
6 :音波
7 :ユーザ
10 :音波処理システム
101 :音波送信部
102 :音波受信部
103 :識別情報検出部
104 :移動速度検出部
105 :計算部
106 :判定部
107 :設定部
108 :温度計測部
109 :風速計測部
221 :第1エリア
222 :第2エリア
401 :ノイズ成分
402 :識別情報
1501 :第1点
1502 :第2点
1503 :第3点
2301 :右地点
2302 :左地点
V :音速
Vk1 :第1基準値
Vk2 :第2基準値
f :検出周波数
f0 :音源周波数
v0 :移動速度
va1 :実際移動速度
va2 :対音源移動速度
vs1 :音源移動速度
vs2 :端末装置移動速度
w :風速
θ :音源角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0179】
【文献】特開2018-207239号公報
【文献】特開2017-135447号公報