(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】位置合わせ装置、位置合わせ方法、および位置合わせプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20241106BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2020205973
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 智弘
(72)【発明者】
【氏名】森 博史
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221391(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0091015(US,A1)
【文献】特開2019-129286(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012300(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0148184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される第1基板と第2基板とを互いに位置合わせする位置合わせ装置であって、
前記第1基板を保持する第1ステージと、
前記第2基板を湾曲させて保持する第2ステージと、
前記第2ステージに
湾曲された状態で保持されている前記第2基板の表面に設けられたアライメントマークの位置を観察する観察部と、
前記第2基板を湾曲させる前の前記アライメントマークの位置と、前記観察部により観察された前記アライメントマークの位置とのずれ量を算出する算出部と、
を備え、
前記算出部の算出結果に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを互いに位置合わせする、位置合わせ装置。
【請求項2】
前記ずれ量は、前記第2基板の前記表面が平面である場合に対するずれ量である、請求項1に記載の位置合わせ装置。
【請求項3】
前記ずれ量は、
前記平面に平行な方向における第1のずれ量を含む、請求項
2に記載の位置合わせ装置。
【請求項4】
前記第2ステージ上に
設けられ、湾曲した保持面を有する保持部材を備え、前記第2基板は、前記保持部材の前記保持面に保持される、請求項3に記載の位置合わせ装置。
【請求項5】
前記
算出部は、前記保持部材の形状に関する情報と、前記保持部材の基準位置からの前記アライメントマークの距離および前記アライメントマークの位置情報の少なくとも一方と、を用いて前記第1のずれ量を算出する、請求項4に記載の位置合わせ装置。
【請求項6】
前記保持部材の形状に関する情報には、前記保持部材の曲率半径、前記保持部材の曲率、前記保持部材の外縁部に対する中心部の高さ、および、前記保持部材の形状の3Dモデルの少なくとも一つが含まれている請求項5に記載の位置合わせ装置。
【請求項7】
前記ずれ量は、前記
平面に直交する方向における第2のずれ量をさらに含む、請求項
2に記載の位置合わせ装置。
【請求項8】
前記第2のずれ量に基づいて前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方の傾斜角度を制御する
制御部を有する、請求項7に記載の位置合わせ装置。
【請求項9】
前記第2ステージ上に設けられ、湾曲した保持面を有する保持部材を備え、
前記第2基板は、前記保持部材の前記保持面に保持され、
前記制御部は、前記第2基板の曲率半径および曲率の少なくとも一方と、
前記保持部材の中心からの前記アライメントマークの距離および前記保持部材の中心を原点とする座標系における前記アライメントマークの座標の少なくとも一方と、を用いて前記第2のずれ量を算出する、請求項
8に記載の位置合わせ装置。
【請求項10】
前記
算出部は、前記第1基板と前記第2基板の位置合わせに用いられるパラメータを前記ずれ量に基づいて設定する、請求項1から9のいずれか1項に記載の位置合わせ装置。
【請求項11】
前記ずれ量が予め定められた閾値以内となるように、前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方を制御する
制御部を有する、請求項1から
7のいずれか1項に記載の位置合わせ装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の位置合わせ装置と、
前記第1基板と前記第2基板とを積層する積層部と、を備える積層装置。
【請求項13】
互いに接合される第1基板と第2基板とを互いに位置合わせする位置合わせ方法であって、
前記第1基板を第1ステージで保持し
、前記第2基板を湾曲させて第2ステージで保持する段階と、
前記第2ステージに
湾曲された状態で保持されている前記第2基板の表面に設けられたアライメントマークの位置を観察する段階と、
前記第2基板を湾曲させる前の前記アライメントマークの位置と、前記観察する段階により観察された前記アライメントマークの位置とのずれ量を算出する段階と、
を含み、
前記算出する段階で算出された結果に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを互いに位置合わせする、位置合わせ方法。
【請求項14】
前記ずれ量は、前記第2基板の前記表面が平面である場合に対するずれ量である、請求項13に記載の位置合わせ方法。
【請求項15】
前記ずれ量は、前記平面に平行な方向における第1のずれ量を含む、請求項14に記載の位置合わせ方法。
【請求項16】
前記ずれ量は、前記平面に直交する方向における第2のずれ量をさらに含む、請求項14または15に記載の位置合わせ方法。
【請求項17】
前記第2のずれ量に基づいて前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方の傾斜角度を制御する制御する段階を含む、請求項16に記載の位置合わせ方法。
【請求項18】
前記ずれ量が予め定められた閾値以内となるように、前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方を制御する段階を含む、請求項13から16のいずれか1項に記載の位置合わせ方法。
【請求項19】
請求項13
から18のいずれか1項に記載の位置合わせ方法で位置合わせされた前記第1基板と前記第2基板とを積層する積層段階を含む積層方法。
【請求項20】
互いに接合される第1基板と第2基板とを互いに位置合わせする位置合わせプログラムであって、
コンピュータに、
前記第1基板を第1ステージで保持し
、前記第2基板を湾曲させて第2ステージで保持する段階と、
前記第2ステージに
湾曲された状態で保持されている前記第2基板の表面に設けられたアライメントマークの位置を観察する段階と、
前記第2基板を湾曲させる前の前記アライメントマークの位置と、前記観察する段階により観察された前記アライメントマークの位置とのずれ量を算出する段階と、
を実行させ、
前記算出する段階で算出された結果に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを互いに位置合わせする、位置合わせプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置合わせ装置、位置合わせ方法、および位置合わせプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に形成されたアライメントマークを顕微鏡で観察して一対の基板を位置合わせする装置が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2005-251972号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、互いに接合される第1基板と第2基板とを互いに位置合わせする位置合わせ装置であって、第1基板を保持する第1ステージと、第2基板が第1基板に対向するように、第2基板を湾曲させて保持する第2ステージと、第2ステージに保持されている第2基板の表面に設けられたアライメントマークの位置を観察する観察部と、観察部により観察されるアライメントマークの位置に基づいて第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、制御部は、湾曲によって生じるアライメントマークの観察上の位置のずれ量に基づいて第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を制御する、位置合わせ装置を提供する。
【0004】
本発明の第2の態様においては、互いに接合される第1基板と第2基板とを互いに位置合わせする位置合わせ方法であって、第1基板を第1ステージで保持し、第2基板が第1基板に対向するように、第2基板を湾曲させて第2ステージで保持する段階と、第2ステージに保持されている第2基板の表面に設けられたアライメントマークの位置を観察する段階と、観察されるアライメントマークの位置に基づいて第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を制御する段階と、を備え、制御する段階において、湾曲によって生じるアライメントマークの観察上の位置のずれ量に基づいて第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を制御する、位置合わせ方法を提供する。
【0005】
本発明の第3の態様においては、互いに接合される第1基板と第2基板とを互いに位置合わせする位置合わせプログラムであって、コンピュータに、第1基板を第1ステージで保持し、第2基板が第1基板に対向するように、第2基板を湾曲させて第2ステージで保持する段階と、第2ステージに保持されている第2基板の表面に設けられたアライメントマークの位置を観察する段階と、観察されるアライメントマークの位置に基づいて第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を制御する段階と、を実行させ、制御する段階において、湾曲によって生じるアライメントマークの観察上の位置のずれ量に基づいて第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を制御する、位置合わせプログラムを提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態における積層装置100の模式的平面図である。
【
図2】積層装置100において積層される基板211,213の模式的平面図である。
【
図3】積層装置100において積層される二つの基板211,213のうち上の基板211を保持する基板ホルダ221の模式的断面図である。
【
図4】積層装置100において積層される二つの基板211,213のうち下の基板213を保持する基板ホルダ223の模式的断面図である。
【
図5】積層装置100において基板211,213を積層して積層体230を作製する手順を示すフローチャートである。
【
図6】積層部300の構造と共に、基板211,213を保持した基板ホルダ221,223が積層部300に搬入された後の様子を示す図である。
【
図7】ステップS03における積層部300の動作を説明する図である。
【
図8】(a)から(c)は、基板ホルダ223の湾曲に起因するXY方向の視差を示す概略図である。
【
図9】(a)は、基板ホルダ223の凸量ごとのアライメントマーク218の位置と視差量との関係を示す図であり、(b)は、基板ホルダ223の凸量ごとのアライメントマーク218の位置と視差起因の倍率変化量との関係を示す図である。
【
図10】基板211,213を位置合わせした状態における積層部300の模式的断面図である。
【
図11】位置合わせされた状態の基板211,213および基板ホルダ221,223の状態を示す図である。
【
図12】基板211,213の接合を開始した状態における積層部300の模式的断面図である。
【
図13】接合が開始された状態の基板211,213および基板ホルダ221,223の状態を示す図である。
【
図14】基板ホルダ221による基板211の保持を解除状態の基板211,213および基板ホルダ221,223の状態を示す図である。
【
図15】(a)から(c)は、第2の実施形態における基板ホルダ223の湾曲に起因するアライメントマーク218のZ方向の視差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態における積層装置100の模式的平面図である。積層装置100は、ひとつの基板211を他の基板213と積層して積層体230を形成する装置であり、筐体110と、筐体110の外側に配された基板カセット120、130と、制御部150と、筐体110の内部に配された搬送部140と、積層部300と、ホルダストッカ400と、プリアライナ500と、活性化装置600とを備える。
【0010】
一方の基板カセット120は、これから積層する基板211,213を収容する。他方の基板カセット130は、基板211,213を積層して形成された複数の積層体230を収容する。基板カセット120を用いることにより、複数の基板211,213を一括して積層装置100に搬入できる。また、基板カセット130を用いることにより、複数の積層体230を一括して積層装置100から搬出できる。
【0011】
搬送部140は、基板211,213、基板ホルダ221,223、基板211,213を保持した基板ホルダ221,223、および基板211,213を積層して形成した積層体230のいずれかを、積層装置100の内部において搬送する。ホルダストッカ400には、複数の基板ホルダ221,223が収容される。
【0012】
基板ホルダ221,223は、保持部材の一例であり、基板211,213よりも一回り大きな寸法を有し、剛性の高い円板状の部材である。基板ホルダ221,223の各々は、静電チャック、真空チャック等の基板吸着機能を有し、積層装置100の内部において基板211,213を個々に保持する。これにより、脆弱の基板211,213を保護しつつ、搬送部140により基板211,213と共に搬送される。
【0013】
プリアライナ500は、基板211,213の中心を検出して、基板ホルダ221,223の中心と一致させた上で保持させる。また、プリアライナ500は、基板211,213と基板ホルダ221,223との相対的な位置および方向を合わせて、後述する積層部300における位置合わせ処理の負荷を低減する。更に、プリアライナ500は、積層部300から搬出された積層体230を基板ホルダ221,223から分離する場合にも使用される。
【0014】
制御部150は、CPU、FPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROM、RAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づき積層装置100の各部を相互に連携させて統括的に制御する。また、制御部150は、外部からのユーザの指示を受け付けて、積層体230を製造する場合の製造条件を設定する。更に、制御部150は、積層装置100の動作状態を外部に向かって表示するユーザインターフェイスも有する。
【0015】
活性化装置600は、基板211の上面を活性化するプラズマを発生する。活性化装置600により活性化された基板211,213は、互いに接触または接近することにより自律的に吸着して接合する。
【0016】
積層部300は、各々が基板211,213を保持して対向する一対のステージを有し、ステージに保持した基板211,213を相互に位置合わせした後、互いに接触させて積層することにより積層体230を形成する。したがって、積層部300は、基板211,213を相互に位置合わせする位置合わせ装置として機能する。積層部300において、基板211,213は、基板ホルダ221,223に保持されたまま搬入されて積層される。
【0017】
上記のような構造を有する積層装置100において形成された積層体230は、最終的に、基板ホルダ221,223から分離されて積層装置100から搬出される。このため、基板211,213または積層体230から分離された基板ホルダ221,223は、積層装置100の内部に留まり、繰り返し使用される。よって、基板ホルダ221,223は、積層装置100の一部であると考えることもできる。
【0018】
積層装置100において積層される基板211,213は、素子、回路、端子等が形成された基板211,213の他に、未加工のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等であってもよい。また、積層する基板211,213の組み合わせは、回路基板と未加工基板であっても、未加工基板同士であってもよい。更に、積層される基板211,213は、それ自体が、既に複数の基板を積層して形成された積層体230であってもよい。
【0019】
図2は、積層装置100において積層される基板211,213の模式的平面図である。基板211,213は、ノッチ214と、複数の回路領域216および複数のアライメントマーク218とを有する。
【0020】
回路領域216は、基板211,213の表面に、基板211,213の面方向に周期的に配される。回路領域216の各々には、フォトリソグラフィ技術等より形成された半導体装置、配線、保護膜等が設けられる。回路領域216には、基板211,213を他の基板211,213、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等の接続部を含む構造物も配される。
【0021】
アライメントマーク218は、基板211,213の表面に形成された構造物の一例であり、回路領域216相互の間に配されたスクライブライン212に重ねて配される。アライメントマーク218は、この基板211,213を積層対象である他の基板211,213と位置合わせする場合に指標として利用される。
【0022】
図3は、積層装置100において積層される二つの基板211,213のうち上の基板211を保持する基板ホルダ221の模式的断面図である。基板ホルダ221は、平坦な保持面225を有し、静電チャック、真空チャック等の、基板211を吸着して保持する機能を有する。
【0023】
二つの基板211,213の一方の基板211は、後述するように、他方の基板213に積層される段階で基板ホルダ221による保持から開放される。本実施形態では、一方の基板211は、平坦な保持面225を有する基板ホルダ221に保持される。
【0024】
図4は、積層装置100において積層される二つの基板211,213のうち下の基板213を保持する基板ホルダ223の模式的断面図である。基板ホルダ223の保持面225は、図示の例では、中央が隆起した形状を有する。これにより、基板ホルダ223の保持面225の中央と縁部との間に高低差Z
_WHが生じている。なお、以降の説明において基板ホルダ223の形状を中凸形状といい、高低差Z
_WHのことを中凸量という。
【0025】
基板ホルダ223は、静電チャック、真空チャック等の、基板211を吸着して保持する機能を有する。このため、基板ホルダ223に保持された基板213は、保持面225の形状に沿って湾曲しており、基板213の中心を頂点として凸変形している。
【0026】
図5は、積層装置100において基板211,213を積層して積層体230を作製する手順を示すフローチャートである。
【0027】
制御部150は、積層する基板211,213における接合面を活性化する(ステップS01)。制御部150は、活性化装置600の生成したプラズマにより基板211,213の表面を走査させる。これにより、基板211,213のそれぞれの表面が清浄化され、化学的な活性が高くなる。このため、基板211,213は、互いに接触または接近することにより自律的に吸着して接合する。
【0028】
なお、基板211,213は、プラズマに暴露する方法の他に、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、高速原子ビーム等、または、研磨等の機械的な処理によりを活性化することもできる。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、積層部300を減圧下において生成することが可能である。また更に、紫外線照射、オゾンアッシャー等により基板211,213を活性化することもできる。更に、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、基板211,213の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。
【0029】
続いて、プリアライナ500において、基板ホルダ221,223に、基板211,213を保持させて、互いに重ね合わされる基板211,213を個別に保持した基板ホルダ221,223を積層部300に搬入する(ステップS02)。
【0030】
図6は、積層部300の構造と共に、基板211,213を保持した基板ホルダ221,223が積層部300に搬入された後の様子を示す図である。積層装置100における積層部300は、枠体310、固定ステージ322および移動ステージ332を備える。
【0031】
枠体310は、床面301に対して平行な底板312および天板316と、床面301に対して垂直な複数の支柱314とを有する。
【0032】
天板316の図中下面に下向きに固定された固定ステージ322は、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有する。図示のように、固定ステージ322には、平坦な保持面225を有する基板ホルダ221と共に基板211が保持されている。
【0033】
天板316の下面には、顕微鏡324が固定されている。顕微鏡324は、固定ステージ322に対向して配置された移動ステージ332に保持された基板213の上面を観察できる。
【0034】
移動ステージ332は、図中に矢印Yで示す方向に移動するY方向駆動部333上に搭載される。Y方向駆動部333は、底板312上に配されたX方向駆動部331に重ねられている。X方向駆動部331は、底板312と平行に、図中に矢印Xで示す方向に移動する。これにより、移動ステージ332は、X-Y方向に二次元的に移動できる。図示の移動ステージ332には、基板ホルダ223に保持された基板211が保持されている。図示していないが、基板ホルダ223は湾曲した保持面225を有し、基板213も保持面225に沿って湾曲された状態で保持されている。
【0035】
なお、基板ホルダ221,223を用いることなく、積層装置100の積層部300において基板211,213が載置される固定ステージ322または移動ステージ332が基板211,213を直接保持してもよい。この場合は、固定ステージ322または移動ステージ332が保持部材となる。
【0036】
また、移動ステージ332は、矢印Zで示す方向に昇降するZ方向駆動部335によりY方向駆動部333に対して昇降する。
【0037】
X方向駆動部331、Y方向駆動部333およびZ方向駆動部335による移動ステージ332の移動量は、干渉計等を用いて精密に計測される。また、X方向駆動部331およびY方向駆動部333は、粗動部と微動部との2段構成としてもよい。これにより、高精度な位置合わせと、高いスループットとを両立させて、移動ステージ332に搭載された基板211の移動を、制御精度を低下させることなく高速に接合できる。
【0038】
Y方向駆動部333には、顕微鏡334が、それぞれ移動ステージ332の側方に更に搭載される。顕微鏡334は、固定ステージ322に保持された下向きの基板211の下面を観察できる。
【0039】
なお、積層部300は、底板312に対して垂直な回転軸の回りに移動ステージ332を回転させる回転駆動部、および、移動ステージ332を揺動させる揺動駆動部を更に備えてもよい。これにより、移動ステージ332の傾斜角度を調整し、移動ステージ332を固定ステージ322に対して平行にすると共に、移動ステージ332に保持された基板213を回転させて、基板211,213の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0040】
制御部150は、顕微鏡324、334の焦点を相互に合わせたり共通の指標を観察させたりすることにより、顕微鏡324、334を相互に予め較正しておく。これにより、積層部300における一対の顕微鏡324、334の相対位置が測定される。次に、再び
図2を参照すると、積層部300においては、基板211,213の各々に形成されたアライメントマーク218を検出する(ステップS03)。
【0041】
図7は、ステップS03における積層部300の動作を説明する図である。ステップS03において、制御部150は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333を動作させて、顕微鏡324、334により基板211,213の各々に設けられたアライメントマーク218を検出させる。
【0042】
こうして、相対位置が既知である顕微鏡324、334で基板211,213のアライメントマーク218の位置を検出することにより、制御部150は、基板211,213の相対位置を算出して、移動ステージ332の移動量を算出する(ステップS04)。すなわち、積層部300においては、対応する回路領域216が互いに重なり合うように、移動ステージ332の移動量を算出する。なお、制御部150は、移動ステージ332が傾斜しており傾斜角度の調整が必要な場合には傾斜角度の調整量も算出する。
【0043】
ステップS04において算出する移動ステージ332の移動量は、基板211,213の複数のアライメントマーク218の位置を多点計測して統計処理する手法を実行することにより算出することができる。上記手法としては、例えば、エンハンストグローバルアライメント法(Enhanced Global Alignment, EGA)が挙げられる。
【0044】
ここで、エンハンストグローバルアライメント法(以下、EGAともいう)による統計処理は、基板211,213が平坦な状態であるときのアライメントマーク218の位置に基づいて行うことが想定されている。しかしながら、
図4に示すように基板213が中凸形状の基板ホルダ223に保持されて湾曲した状態でアライメントマーク218の位置を計測すると、アライメントマーク218の位置が基板213が平坦な位置からずれて観測上のずれ量である視差が発生するので、EGAの処理結果にずれが生じる。したがって、基板ホルダ223の湾曲に起因する視差を補正することが望ましい。
【0045】
図8(a)から(c)は、基板ホルダ223の湾曲に起因するXY方向の視差を示す概略図である。XY方向は、配置された基板213の面に沿った方向である。なお、
図8(a)から(c)ではアライメントマーク218の移動量や、基板ホルダ223の形状などの特徴部分について誇張して描いている。
図8(a)に示すように、基板213が平坦である場合にアライメントマーク218はXY平面における位置F1で観察される。
【0046】
図8(b)に示すように、基板213が中凸形状の基板ホルダ223に保持され湾曲した状態において、アライメントマーク218の観察上の位置はXY平面における位置F2にδxyの距離を移動しており、XY平面における位置F2で観察される。したがって、アライメントマーク218のXY方向の観測上のずれ量δxy(視差量ともいう)が発生している。よって、
図8(c)に示すように、基板213を仮想的に平面に戻した状態における位置F1と位置F2の差分を導出し、その差分についてアライメントマーク218の位置を補正することが望ましい。基板213が平面である状態を仮想状態とせずに、基板213を湾曲させる前の状態を仮想状態としてもよい。なお、便宜上、
図8(b)ではアライメントマーク218がX方向にのみずれているように描いている。
【0047】
図9(a)は、基板ホルダ223の凸量ごとのアライメントマーク218の位置と視差量との関係を示す図である。
図9(a)において、横軸はアライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離を示しており、縦軸はアライメントマーク218のXY方向の視差量を示す。なお、基板ホルダ223の凸中心とは、基板ホルダ223の湾曲によって基板ホルダ223が最も突出している位置をいう。
図9(a)において、基板ホルダ223の凸量は、曲線S1が最も小さく、曲線S5が最も大きい。すなわち、基板ホルダ223の凸量は、S1<S2<S3<S4<S5である。
【0048】
アライメントマーク218の視差量は、当該アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と、基板ホルダ223の凸量に応じて定まる。
図9(a)から、アライメントマーク218の視差量は、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離が大きくなるほど大きくなり、また、基板ホルダ223の凸量が大きくなるほど大きくなることが分かる。
【0049】
ここで、アライメントマーク218の視差に起因して、基板213の倍率も変化しており、EGAの処理結果にずれが生じる可能性がある。ここで、基板213の倍率とは、基板213上のある点(例えば中心)から面方向に放射状に漸増するずれ量をいう。
図9(b)は、基板ホルダ223の凸量ごとのアライメントマーク218の位置と視差起因の倍率変化量との関係を示す図である。ここで、基板213の倍率変化量とは、基板213の倍率の径方向における変化量をいう。
図9(b)において、横軸はアライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離を示しており、縦軸は視差起因の倍率変化量を示す。
図9(b)において、基板ホルダ223の凸量は、曲線S6が最も小さく、曲線S10が最も大きい。すなわち、基板ホルダ223の凸量は、S6<S7<S8<S9<S10である。
【0050】
視差起因の倍率変化量は、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と、基板ホルダ223の凸量に応じて定まる。
図9(b)から、視差起因の倍率変化量は、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離が大きくなるほど大きくなり、また、基板ホルダ223の凸量が大きくなるほど大きくなることがわかる。
【0051】
以上から、アライメントマーク218の視差量および視差起因の倍率変化量は、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と、基板ホルダ223の凸量に応じて定まることが分かる。以降では、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と基板ホルダ223の凸量とを用いて、ずれ量δxyを導出する方法について説明する。以降の説明において、基板ホルダ223の凸中心は基板ホルダ223の中心位置と一致すると仮定する。基板ホルダ223の中心位置は、例えば、基板を載置する面の幾何学的な重心位置である。なお、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離に代えて、基板ホルダ223の凸中心を原点とする座標系におけるアライメントマーク218の座標を用いてずれ量δxyを導出してもよい。なお、視差を算出する場合の基板ホルダ223の凸中心の座標は、基板ホルダ223の設計上の原点としてもよく、基板ホルダ223の凸頂点としてもよく、基板ホルダ223の観察上の原点としてもよい。また、基板ホルダ223の凸中心からの距離の測り方は、凸や自由曲面形状に沿って計測してもよく、装置のXY座標に沿って直線状に計測してもよく、上記それぞれについて、設計座標のみに基づいて計測し、アライメント結果を無視してもよい。
【0052】
基板ホルダ223の中心位置からR[μm]の位置にあると顕微鏡324が測定したアライメントマーク218は、基板211,213の接合時には変形した基板ホルダ223に沿う座標S
_(Z_WH)(R)[mm]の位置に変位する。基板ホルダ223の中凸量をZ
_WH[μm]とする。下記の計算では基板ホルダ223の径は300000[μm]としている。まず接合時の座標S
_(Z_WH)(R)[mm]を算出する。基板ホルダ223の形状を放物線としたとき、垂直方向の高さZは下記の数式1で表される。なお、本実施形態において、基板ホルダ223の形状を放物線に近似して解析を行うが、他の曲線(例えば、円弧など)に近似して解析を行ってもよい。
【数1】
【0053】
数式1において、Mは倍率[ppm]、2tは変形対象の厚さ[μm]である。基板ホルダ223の径を300000[μm]とするため、基板ホルダ223の中凸量Z
_WHはR=150000[μm]のときのZの値であるが、M>0のときZ
_WH>0と定義されているので、符号を反転する必要がある。倍率Mを基板ホルダ223の中凸量Z
_WHで表現すると、下記の数式2が得られる。
【数2】
【0054】
数式1に数式2を代入することで、下記の数式3が得られる。
【数3】
【0055】
アライメントマーク218の接合時の座標S
_(Z_WH)(R)は下記の数式4に示す積分で表現される。
【数4】
【0056】
根号内の微分について、下記の数5で表される。
【数5】
【0057】
ここで、下記数式6に示すように、a
_(Z_WH)は中凸量Z
_WH [μm]で決まる定数である。
【数6】
【0058】
【0059】
数式7における根号及び対数をテーラー展開し、Rの3次までの項を残すと、下記の数式8が得られる。
【数8】
【0060】
S
_(Z_WH) (R)から視差に起因する誤差dR
paraを算出すると、下記の数式9が得られる。
【数9】
【0061】
数式9において、Rは中心からの距離であるので、直交座標を用いた表現に直すと、下記の数式10が得られる。
【数10】
【0062】
ここで、アライメントマーク218の設計座標(設計座標)、アライメントマーク218の、基板ホルダ223がFlat状態にある場合の設計座標からのズレ量(仮想ズレ)、視差量(視差)、アライメントマーク218の、実際に計測した視差量を含む設計座標からのズレ量(実測ズレ)を下記の数式11のように定義する。
【数11】
【0063】
計測時の移動ステージ332の座標と、仮想ズレの和を下記の数式12で表す。これのことも仮想ズレと呼ぶ。
【数12】
【0064】
同様に、計測時の移動ステージ332の座標と、実測ズレの和を下記の数式13で表す。これのことも実測ズレと呼ぶ。
【数13】
【0065】
上記数式11、数式12、数式13の量間の関係は以下のように表わされる。
【数14】
【0066】
上記数式10及び数式13から、中凸WHを使用した際の視差量(dx
i
para、dy
i
para)は、実測ズレ(x
i
WF+Meas、y
i
WF+Meas)を用いて下記の数式15のように与えられる。
【数15】
【0067】
上述したように、上記数式15におけるa
_(Z_WH)は中凸量Z
_WH[μm]で決まる定数である。
【数16】
【0068】
視差補正を行うとアライメントマーク218の仮想ズレ(x
i
WF+Mark,y
i
WF+Mark)は、数式14と数式15から、下記の数式17により表される。
【数17】
【0069】
アライメントマーク218の仮想ズレ(x
i
WF+Mark,y
i
WF+Mark)から、EGAのパラメータにおける、シフト、回転、倍率、直交を算出する。設計座標が(x
i
WF,y
i
WF)[μm]のアライメントマーク218について、シフト(ε
x,ε
y)[μm]、回転θz[rad]、倍率(γ
x,γ
y)[ppm]、直交度ω[rad]、があると、(x
i
WF+Mark,y
i
WF+Mark)は下記の数式18で表される。
【数18】
【0070】
(ε
x,ε
y,θ
z,γ
x,γ
y,ω)が定数と仮定すると、n個のアライメントマーク218を計測した際に、下記の数式19および数式20が成り立つ。
【数19】
【数20】
【0071】
上記数式20に、Bの擬似逆行列B
+(=(B
TB)
(-1)B
T)を作用させることで、下記の数式21が得られる。なお、本実施形態では最小二乗法を解く際に疑似逆行列を直接求めているが、特異値分解を使用する手法を用いてもよく、最小二乗法を解析的あるいは数値的に解く他のアルゴリズムを用いてもよい。
【数21】
【0072】
以上のように、基板ホルダ223の湾曲に起因するXY方向のずれ量δxyからEGAの各パラメータを導出して、移動ステージ332の移動量を算出する(ステップS04)。なお、制御部150は、ずれ量δxyに基づいて基板211,213の間の基板ずれ量がゼロになるように移動ステージ332の移動量を算出してもよく、これとは異なり、ずれ量δxyに基づいて基板211,213の間の基板ずれ量が予め定められた閾値以内となるように、移動ステージ332の移動量を算出してもよい。閾値は、基板211、213の相互の貼り合わせが完了したときに、基板211、213間に電気的な導通が可能となるずれ量であってもよく、基板211、213にそれぞれ設けられた構造物同士が少なくとも一部で接触するときのずれ量であってもよく、接続構造間に所定の接合強度が得られるときのずれ量であってもよい。尚、移動ステージ332の移動量をずれ量δxyに基づいて算出する例を示したが、ずれ量δxyに加えてまたは代えて、接合後の基板211,213間の実測したずれ量を用いて移動量を算出してもよい。
【0073】
再び
図5を参照する。次に、制御部150は、
図10に示すように、ステップS04で算出した移動量に基づいて移動ステージ332を移動させて、基板211,213を位置合わせする(ステップS05)。
図11は、位置合わせされた状態の基板211,213および基板ホルダ221,223の状態を示す図である。
【0074】
再び
図5を参照する。次に、制御部150は、
図12に示すように、Z方向駆動部335により移動ステージ332を上昇させ、位置合わせされた基板211,213を互いに接触させて、基板211,213の接合を開始する(ステップS06)。
図13は、接合が開始された状態の基板211,213および基板ホルダ221,223の状態を示す図である。
【0075】
図13に示すように、ステップS07において接触した時点では、平坦な一方の基板211と、湾曲した他方の基板213は、一部分で接触する。これにより、図中に点線Cで囲って示すように、基板211,213の略中央に、基板211,213が部分的に接合された接合の起点が形成される。
【0076】
続いて、
図14に示すように、基板211,213の一部が接触した後、制御部150は、固定ステージ322における基板ホルダ221による基板211の保持を解除する。これにより自由になった図中上側の基板211は、それ自体の重量と、活性化された基板211,213自体の分子間力とにより、接合された領域を自律的に拡大し、やがて、全面で接合される。こうして、積層部300において、基板211,213による積層体230が形成される。
【0077】
積層体230において、図中下側の基板213は、ステップS103以降の積層過程を通じて、保持面225が湾曲した基板ホルダ223に保持され続けている。よって、基板ホルダ223により補正された状態で基板211に接合されるので、基板211,213相互の倍率差が補正される。
【0078】
なお、上記のように基板211,213の接触領域が拡大していく過程で、制御部150は、基板ホルダ223による基板213の保持の一部または全部を解除してもよい。また、固定ステージ322による基板ホルダ223の保持を解除してもよい。基板213の保持を解除する場合、接触領域の拡大過程で、上側の基板211からの引っ張り力により、下側の基板213が基板ホルダ223から浮き上がって湾曲する。これにより、下側の基板213の表面が伸びるように形状が変化するので、この伸び量の分、上側の基板211の表面の伸び量との差が小さくなる。
【0079】
従って、二つの基板211,213間の異なる変形量に起因する位置ずれが抑制される。基板ホルダ223による保持力を調整することにより、基板ホルダ223からの基板213の浮き上がり量を調整することができるので、複数の基板ホルダ223に予め設定された補正量と実際に必要となる補正量との間に差が生じた場合には、この基板ホルダ223の保持力の調整により、差分を補うことができる。
【0080】
更に、固定ステージ322に保持された基板211を解放せずに、移動ステージ332に保持された基板213を解放することにより、基板211,213の接合を進行させてもよい。更に、固定ステージ322および移動ステージ332の双方において基板211,213を保持したまま、固定ステージ322および移動ステージ332を近づけていくことにより、基板211,213を接合させてもよい。
【0081】
こうして形成された積層体230は、搬送部140により積層部300から搬出され(ステップS07)、基板カセット130に収納される。
【0082】
[評価]
基板ホルダ223の中凸量を予め定められた値とし、基板ホルダ223の径を300000[μm]とし、座標が(+100000, +100000)、(+80000,-80000)、(-90000,-100000)、(-110000,+90000)である4つのアライメントマーク218を測定して、視差補正を行った場合と視差補正を行わなかった場合における、各点での視差、回転、倍率変化、および直交がどのようになるかを計算した。
【0083】
視差補正を行わなかった場合は、視差、回転、倍率変化、および直交について設定値とのずれが生じており、特に、倍率変化が設定値から大きくずれていた。したがって、中凸形状の基板ホルダ223を使用し、視差補正を行わなかった場合には各パラメータにずれが生じることが分かった。これに対して視差補正を行った場合では、上記のずれは解消されており設定値と近い値であった。
【0084】
以上のように、第1の実施形態によれば、基板ホルダ223の湾曲に起因するXY方向のずれ量δxyからEGAの各パラメータを補正する。これにより、基板213が平坦な状態であるときの理想的なアライメントマーク218の位置に基づいてEGAを行うことができ、中凸形状の基板ホルダ223を使用した場合であっても精度の高いEGAを行うことができる。
【0085】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、基板ホルダ223の湾曲によってアライメントマーク218のXY方向の視差に基づくずれ量δxyからEGAの各パラメータを導出した。しかしながら、基板ホルダ223の湾曲によってアライメントマーク218のXY方向の視差だけでなくZ方向の視差も発生する。
【0086】
第2の実施形態では、Z方向の視差に基づいて基板ホルダ223の傾斜角度の調整を行う実施形態について説明する。
図15(a)から(c)は、基板ホルダ223の湾曲に起因するアライメントマーク218のZ方向の視差を示す図である。Z方向は、XY平面に直交する方向である。
【0087】
図15(a)に示すように、基板213が平坦である場合にアライメントマーク218はZ方向の位置F3で観察される。なお、顕微鏡324によりアライメントマーク218のフォーカス位置を測定することにより、アライメントマーク218のZ方向の位置が測定可能である。
図15(b)に示すように、基板213が中凸形状の基板ホルダ223に保持され湾曲した状態において、アライメントマーク218はZ方向の位置F3からδzだけ移動したZ方向の位置F4で観察される。したがって、アライメントマーク218のZ方向の観測上のずれ量δz(視差)が発生している。したがって、
図15(c)に示すように、基板ホルダ223を仮想的に平面に戻して、位置F3と位置F4の差分を調整することが望ましい。
【0088】
上述したアライメントマーク218のXY方向の視差と同様に、アライメントマーク218のZ方向の視差は、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と、基板ホルダ223の凸量に応じて定まる。以降では、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と基板ホルダ223の凸量とを用いて、Z方向のずれ量δzを導出する方法について説明する。
【0089】
アライメントマーク218の、基板ホルダ223がFlat状態にある場合のズレ量(仮想ズレ)、視差量(視差)、アライメントマーク218の実際にフォーカス計測した視差量を含むズレ量(実測ズレ)を下記の数式22のように定義する。
【数22】
上記数式22の量間の関係は以下のように表される。
【数23】
中凸WHを使用した際の視差量dz
i
paraは、中凸量Z
_WH[um]、XY方向の実測ズレ(x
i
WF+Meas、y
i
WF+Meas)で下記の数式24のように与えられる。
【数24】
視差補正を行うとアライメントマーク218の仮想ズレdz
i
Markは、数式23と数式24から、下記の数式25により表される。
【数25】
アライメントマーク218の仮想ズレdz
i
Markから、EGAのパラメータにおける、シフト、チルト量を算出する。設計座標が(x
i
WF, y
i
WF)[μm]のアライメントマーク218について、シフトε
z,[μm]、チルト量θx[rad]、θy[rad]があると、dz
i
Markは下記の数式26で表される。
【数26】
n個のアライメントマーク218の計測時に、θx、θy、εzが一定とすると、下記の数式27の関係が成り立つ。
【数27】
数式27において、Aの擬似逆行列A
+(=(A
TA)
(-1)A
T)を求めて、dz
i
Markベクトルに作用させることで、移動ステージ332のチルト量θx[rad]、θy[rad]とシフト量εz[μm]の値を得る(数式28)。
【数28】
【0090】
制御部150は、得られた移動ステージ332のチルト量θx[rad]、θy[rad]とシフト量εz[μm]の値を用いて移動ステージ332の傾斜角度を調整することができる。移動ステージ332の傾斜角度の調整は、移動ステージ332を揺動させる揺動駆動部を駆動させることで行う。以上のように、アライメントマーク218のZ方向のずれ量δz[μm]を用いて移動ステージ332の傾斜角度を調整することができる。
【0091】
以上のように、第2の実施形態によれば、基板ホルダ223の湾曲に起因するアライメントマーク218のZ方向のずれ量δzから移動ステージ332の傾斜角度を調整することができる。
【0092】
[変形例1]
上記実施の形態では、基板ホルダ223の形状を中凸形状としてアライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離および基板ホルダ223の凸量からXY方向のずれ量δxyおよびZ方向のずれ量δzを算出した。しかしながら、基板ホルダ223の形状は中凸形状でなくてもよく、例えば自由曲面であってもよい。この場合の処理は、下記の通りである。
【0093】
基板ホルダ223の形状に自由曲面を用いる場合、XY方向のずれ量であるずれ量δxyは以下の通り算出する。基板213の中心からアライメントマーク218までの、動径方向に沿った曲線の長さを、解析的もしくは数値的な積分により算出し、XY方向のずれ量であるずれ量δxyを導出する。導出したずれ量δxyを、上記数式15における、中凸の基板ホルダ223を使用した際の視差量(dxi
para、dyi
para)に代入する。以降は、数式16以降における処理と同じである。なお、上記処理の際に使用する基板213の形状は、設計形状でも実測に基づく形状でも良い。
【0094】
基板ホルダ223の形状に自由曲面を用いる場合、Z方向のずれ量であるずれ量δzは以下の通り算出する。基板213のアライメントマーク218の、Flat状態からのZ方向における高さの差(ずれ量δz)を導出する。導出したずれ量δzを、上記数式24における視差量dzi
paraに代入する。以降は、数式25以降における処理と同じである。なお、上記処理の際に使用する基板213の形状は、設計形状でも実測に基づく形状でも良い。
【0095】
なお、自由曲面の一例として、基板211,213の45度、135度、225度、315度方向の高さがその他の角度方向の高さと異なるように基板211,213を変形させた形状を用いてもよい。この場合、基板211,213の45度、135度、225度、315度方向の高さはそれぞれ等しく、その他の角度方向の高さはそれぞれ等しくなるように変形させてもよい。
【0096】
[変形例2]
上記実施の形態では、上の基板ホルダ221を平面ホルダとし、下の基板ホルダ223を中凸ホルダとした。しかしながら、本発明はいずれかの基板ホルダ221,223を中凸ホルダとする場合について適用可能である。したがって、例えば、上の基板ホルダ221を中凸ホルダとし、下の基板ホルダ223を平面ホルダとしてもよく、また、上の基板ホルダ221と下の基板ホルダ223の双方を中凸ホルダとしてもよい。
【0097】
[変形例3]
上記実施の形態では、基板ホルダ221,223により基板211,213を吸着して保持する実施形態を説明した。しかしながら、基板ホルダ221,223を使用せずに中凸形状のステージが基板211,213を保持してもよい。この場合、ステージの形状に基づいてXY方向のずれ量およびZ方向のずれ量を算出してもよい。
【0098】
[変形例4]
上記第1の実施の形態では、制御部150は、アライメントマーク218のXY方向のずれ量δxyを算出して移動ステージ332の制御を行った。上記第2の実施形態では、制御部150は、基板ホルダ223の湾曲に起因するアライメントマーク218のZ方向のずれ量δzから移動ステージ332の傾斜角度を調整した。しかしながら、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせることが可能である。
【0099】
[変形例5]
また、ずれ量を算出するための関連式が予め制御部150に記憶されていてもよい。さらに、ずれ量を算出するための関連式ではなく数値のルックアップテーブルが予め制御部150に記憶されており、制御部150はルックアップテーブルを参照してずれ量を算出してもよい。
【0100】
[変形例6]
上記第1の実施の形態では、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離と基板ホルダ223の凸量とを用いて、ずれ量δxyを導出した。しかしながら、基板ホルダ223の凸量の代わりに、基板ホルダ223の曲率半径を用いてずれ量δxyを導出してもよい。この場合、基板ホルダ223の曲率半径は基板ホルダ223の凸量を用いて近似できることから、基板ホルダ223の曲率半径を基板ホルダ223の凸量に基づいて導出してもよい。また、この場合も、アライメントマーク218の基板ホルダ223の凸中心からの距離に代えて、基板ホルダ223の凸中心を原点とする座標系におけるアライメントマーク218の座標を用いてもよい。
【0101】
[変形例7]
また、上記エンハンストグローバルアライメント法(EGA)による統計処理において、基板ホルダ223の保持面225の勾配、視差量、または、高さが同じ位置(あるいは、差が所定の範囲内)にあるアライメントマーク218、または、基板211,213の中心に対して対象となる位置にあるアライメントマーク218を選んで、上記EGAを行ってもよい。これにより補正量算出時間の短縮が図れる。
【0102】
[変形例8]
また、上記XY視差補正において、視差量が同じで、向きが逆となるアライメントマーク218のマーク組みを選択して測定してもよく、上記Z視差補正において、Z視差量が同じアライメントマーク218を選択して測定してもよい。
【0103】
[変形例9]
なお、上記第1の実施の形態において、ずれ量δxyを導出するために、基板ホルダ223の凸量を用いたが、基板ホルダ223の凸量の代わりに、基板ホルダ223の曲率や、外縁部に対する中心部の高さ、基板ホルダ223の形状の3Dモデル等の他の凸形状に関する情報を用いてもよい。
【0104】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0105】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0106】
100、 積層装置、110 筐体、120、130 基板カセット、140 搬送部、150 制御部、211,213 基板、212 スクライブライン、214 ノッチ、216 回路領域、218 アライメントマーク、221,223 基板ホルダ、225 保持面、230 積層体、300 積層部、301 床面、310 枠体、312 底板、314 支柱、316 天板、322 固定ステージ、324、334 顕微鏡、331 X方向駆動部、332 移動ステージ、333 Y方向駆動部、335 Z方向駆動部、400 ホルダストッカ、500 プリアライナ、600 活性化装置