(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】スパッタリング処理を行う装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20241106BHJP
C23C 14/35 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C23C14/34 T
C23C14/35 B
(21)【出願番号】P 2021027688
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-323371(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152482(WO,A1)
【文献】特開平08-134642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C23C 14/35
H01L 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にスパッタリング処理を行う装置において、
複数の基板を収容するように構成された処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、予め設定された中心位置を囲む円に沿って並ぶように配置され、各々、前記基板が載置される複数の載置台と、
前記複数の載置台の上方位置に配置され、前記処理容器内に形成されるプラズマにより、前記載置台に載置された基板に付着させるターゲット粒子を放出させるためのターゲットと、
前記載置台側から見て、前記ターゲットの背面側に設けられ、前記プラズマの状態を調節するためのマグネットと、
前記ターゲットの背面に沿って前記マグネットを移動させるためのマグネット移動機構と、を備え、
前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記複数の載置台は、前記ターゲットからターゲット粒子が放出される領域である放出領域と、前記複数の載置台に載置された各基板とが重なった状態となる重なり領域が、前記中心位置の周りに回転対称となる位置に配置され
、
前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記放出領域の外縁は円形であり、
前記マグネットは、外縁が円形の前記放出領域の径方向に沿って伸びるように設けられ、前記マグネット移動機構は前記放出領域の周方向に沿って前記マグネットを移動させる、装置。
【請求項2】
前記複数の載置台は、各々、前記載置台に載置された基板の中心を通る鉛直軸回りに、当該載置台を回転させるための回転機構を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中心位置を囲む円の直径は、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記円が前記放出領域を内包する寸法に設定されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記放出領域は、前記処理容器内に露出する前記ターゲットの全面であり、前記マグネット移動機構は、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記マグネットが移動する領域内に前記ターゲットの全面が内包されるように前記マグネットを移動させる、請求項
1ないし3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記放出領域は、前記処理容器内に露出する前記ターゲットの一部領域であり、前記マグネット移動機構は、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記放出領域の形状に対応させて前記マグネットを移動させる、請求項
1ないし3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
外縁が円形である前記放出領域は、円環形状である、請求項
1ないし5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
基板にスパッタリング処理を行う方法において、
処理容器内に複数の基板を収容し、前記処理容器内に設けられ、予め設定された中心位置を囲む円に沿って並ぶように配置された複数の載置台に対して、各々、前記基板を載置する工程と、
前記処理容器内に形成されるプラズマにより、前記複数の載置台の上方位置に配置されたターゲットからターゲット粒子を放出させ、前記基板にターゲット粒子を付着させる工程と、を含み、
前記基板にターゲット粒子を付着させる工程は、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記ターゲットからターゲット粒子が放出される領域である放出領域と、前記複数の載置台に載置された各基板とが重なった状態となる重なり領域が、前記中心位置の周りに回転対称となる位置に配置されている前記複数の載置台を用いて実施され
、
前記基板にターゲット粒子を付着させる工程では、前記載置台側から見て、前記ターゲットの背面側に設けられ、前記プラズマの状態を調節するためのマグネットを、前記ターゲットの背面に沿って移動させる工程を実施し、
前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記放出領域の外縁は円形であり、
前記マグネットは、外縁が円形の前記放出領域の径方向に沿って伸びるように設けられ、前記マグネットを移動させる工程では、前記放出領域の周方向に沿って前記マグネットを移動させる、方法。
【請求項8】
前記基板にターゲット粒子を付着させる工程では、前記載置台に載置された基板の中心を通る鉛直軸回りに、前記複数の載置台を回転させる工程を実施する、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記中心位置を囲む円の直径は、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記円が前記放出領域を内包する寸法に設定されている、請求項
7または
8に記載の方法。
【請求項10】
前記放出領域は、前記処理容器内に露出する前記ターゲットの全面であり、前記マグネットを移動させる工程では、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記マグネットが移動する領域内に前記ターゲットの全面が内包されるように前記マグネットを移動させる、請求項
7ないし9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記放出領域は、前記処理容器内に露出する前記ターゲットの一部領域であり、前記マグネットを移動させる工程では、前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記放出領域の形状に対応させて前記マグネットを移動させる、請求項
7ないし9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
外縁が円形である前記放出領域は、円環形状である、請求項
7ないし11のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スパッタリング処理を行う装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、金属膜などの成膜にマグネトロンスパッタ装置が用いられている。この装置は、真空の処理容器内に成膜する材料からなるターゲットを配置し、処理容器内に磁界と電界とを形成してプラズマを発生させ、プラズマのイオンによりターゲットをスパッタするように構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ベース支持台を回転させる主駆動軸の周りに、副駆動軸を介して回転するホルダーベースを複数組設け、副駆動軸の周りに複数の基板を配置した低圧遠隔スパッタ装置が記載されている。この装置では、ホルダーベースに保持された複数の基板の処理にあたり、ターゲットからスパッタ粒子を放出させると共に、副駆動軸の周りの回転と、主駆動軸の周りの回転とを組み合わせつつ成膜が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、共通の処理容器内に配置された複数の基板に対し、均一にスパッタリング処理を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る基板にスパッタリング処理を行う装置は、
複数の基板を収容するように構成された処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、予め設定された中心位置を囲む円に沿って並ぶように配置され、各々、前記基板が載置される複数の載置台と、
前記複数の載置台の上方位置に配置され、前記処理容器内に形成されるプラズマにより、前記載置台に載置された基板に付着させるターゲット粒子を放出させるためのターゲットと、
前記載置台側から見て、前記ターゲットの背面側に設けられ、前記プラズマの状態を調節するためのマグネットと、
前記ターゲットの背面に沿って前記マグネットを移動させるためのマグネット移動機構と、を備え、
前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記複数の載置台は、前記ターゲットからターゲット粒子が放出される領域である放出領域と、前記複数の載置台に載置された各基板とが重なった状態となる重なり領域が、前記中心位置の周りに回転対称となる位置に配置され、
前記ターゲットの上方側から平面視したとき、前記放出領域の外縁は円形であり、
前記マグネットは、外縁が円形の前記放出領域の径方向に沿って伸びるように設けられ、前記マグネット移動機構は前記放出領域の周方向に沿って前記マグネットを移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、共通の処理容器内に配置された複数の基板に対し、均一にスパッタリング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る基板処理システムの平面図である。
【
図2】前記基板処理システムに設けられているスパッタリング装置の縦断側面図である。
【
図3】前記ターゲットに対するプラズマ調節用のマグネットの移動範囲を示す模式図である。
【
図4】前記スパッタリング装置のターゲットと載置台の配置を示す平面図である。
【
図5】比較形態に係るターゲットと載置台の配置を示す平面図である。
【
図6】ターゲットと載置台の第2の構成例を示す模式図である。
【
図7】ターゲットと載置台の第3の構成例を示す模式図である。
【
図8】ターゲットと載置台の第4の構成例を示す模式図である。
【
図9】ターゲットと載置台の第5の構成例を示す模式図である。
【
図10】マグネットの他の構成例を示す平面図である。
【
図11】ターゲットと載置台の第6の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示に係るスパッタリング装置2を備えた基板処理システム1の構成例を示している。この基板処理システム1は、搬入出ポート11と、搬入出モジュール12と、真空搬送モジュール13と、複数のスパッタリング装置2と、を備えている。
図1において、搬入出ポート11側から基板処理システム1に向かって左右方向をX方向、前後方向をY方向として説明する。搬入出モジュール12の手前側には搬入出ポート11が接続され、搬入出モジュール12の奥手側には真空搬送モジュール13が接続されている。
【0010】
搬入出ポート11には、処理対象の基板を収容した搬送容器であるキャリアCが載置される。キャリアCには、例えば直径が300mmの円形基板である、複数のウエハWが収容されている。搬入出モジュール12は、キャリアCと真空搬送モジュール13との間でウエハWの搬入出を行うための設備である。搬入出モジュール12は、常圧雰囲気中でウエハWの受け渡し及び搬送を行う搬送機構123を備えた大気搬送室121と、ウエハWが置かれる雰囲気を常圧雰囲気と真空雰囲気との間で切り替えるロードロック室122と、を備えている。搬送機構123は、レール124に沿って左右方向に移動自在、及び、昇降・回転・伸縮自在に構成されている。
【0011】
真空搬送モジュール13は、真空雰囲気が形成された真空搬送室14を備え、この真空搬送室14の内部には基板搬送機構15が配置されている。本例の真空搬送室14は、平面視したとき、前後方向に伸びる長辺を有する長方形に構成されている。真空搬送室14の4つの側壁のうち、互いに対向する長辺には、各々、複数、例えば2つのスパッタリング装置2が接続されている。また手前側の短辺にはロードロック室122が接続されている。図中の符号Gは、搬入出モジュール12と真空搬送モジュール13との間、真空搬送モジュール13とスパッタリング装置2との間に夫々介設されたゲートバルブである。このゲートバルブGは、互いに接続されるモジュールに各々設けられるウエハWの搬入出口を開閉する。
【0012】
本例の基板搬送機構15は、搬入出モジュール12と各スパッタリング装置2との間でウエハWの搬送を行うための多関節アームとして構成され、ウエハWを保持するエンドエフェクタ16を備えている。後述するように、この例におけるスパッタリング装置2は、真空雰囲気中で複数枚、例えば4枚のウエハWに対して一括してスパッタリング処理を行うものである。このため基板搬送機構15のエンドエフェクタ16は、スパッタリング装置2に一括してウエハWを受け渡すため、例えば4枚のウエハWを同時に保持することができるように構成されている。
【0013】
エンドエフェクタ16は、基板保持部161及び接続部162を備えている。基板保持部161は、互いに並行して水平に伸びる2つの細長いへら状の部材により構成されている。接続部162は、基板保持部161の伸長方向に対して直交するように水平方向に伸び、2本の基板保持部161の基端を互いに接続する部材である。接続部162の長さ方向の中央部は、基板搬送機構15を構成する多関節アームの先端部に接続されている。基板搬送機構15は旋回及び伸縮自在に構成されている。
【0014】
続いて、ウエハWに対しスパッタリング処理により成膜を行なうスパッタリング装置2の構成について、
図2~
図4を参照しながら説明する。
図2は、スパッタリング装置2の構成を示す縦断側面図、
図3、
図4はターゲット41と載置台31との配置などを示す平面図である。なお、
図2、
図4などには、スパッタリング装置2内の機器の配置関係を説明するための副座標(X’-Y’―Z’座標)を併記してある。副座標は、真空搬送モジュール13と接続ざれる位置を手前側として、X’方向を前後方向、Y’方向を左右方向として設定している。
【0015】
真空搬送モジュール13に接続されている4つのスパッタリング装置2は、互いに同様に構成され、複数のスパッタリング装置2にて、互いに並行してウエハWの処理を行うことができる。
スパッタリング装置2は、平面視矩形の処理容器20を備えている。処理容器20は、内部雰囲気を真空排気することが可能な真空容器として構成されている。処理容器20の手前側の側壁には、ゲートバルブGを介して真空搬送室14に接続される搬入出口21が形成されている。この搬入出口21はゲートバルブGによって開閉される。
【0016】
処理容器20の内部には、エンドエフェクタ16によるウエハWの搬送が行われる位置に対応させて、4つの載置台31が配置される。各載置台31は、円板状の部材により構成されている。本例では、円板状の載置台31の中心と、ウエハWの中心とが揃うように、各載置台31に対してウエハWが載置される。
また、これら複数の載置台31は、後述するターゲット41の平面形状や配置との関係において、特定の位置に配置された状態となっているが、配置の具体的な設定例については、後段で説明する。
【0017】
各載置台31は支柱32によって前記円板の中心位置を下面側から支持されている。支柱32の下部側は、処理容器20の底面を貫通して下方側に突出している。支柱32の下端部には、載置台31に載置されたウエハWの中心を通る鉛直軸回りに、当該載置台31を回転させるための駆動機構33が設けられている。この観点で駆動機構33は、本例の回転機構に相当する。なお、ウエハWを回転させなくても、所望の膜厚分布を有する膜を成膜することができる場合には、駆動機構33を用いて載置台31を回転させることは必須の要件ではない。
図2に示す符号321は、処理容器20内を真空雰囲気に保つために、支柱32が処理容器20の底面を貫通する開口の周囲と、駆動機構33の上面との間に設けられ、支柱32の周囲を囲むカバー部材を示している。
【0018】
また駆動機構33は、ウエハWに対するスパッタリング処理が行われる処理位置と、エンドエフェクタ16との間でウエハWの受け渡しが行われる受け渡し位置との間で載置台31を昇降させる機能も備えている。
図2中に載置台31が配置されている高さ位置が処理位置に相当し、同図中に破線で示す高さ位置が受け渡し位置に相当する。
処理容器20には、その内部空間を上下に分けるシールド板24が配置されている。シールド板24には、円形の開口部241が形成されていて、処理位置に上昇した載置台31は、開口部241の内側に配置された状態となる。
【0019】
処理容器20の底面には、不図示の受け渡しピンが設けられている。受け渡しピンは、載置台31を受け渡し位置に降下させたとき、載置台31に設けられている不図示の貫通孔を通って載置台31の上面に突出する。これにより、受け渡しピンとエンドエフェクタ16との間でウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0020】
載置台31にはヒーター311が埋設されていて、不図示の給電部から供給された電力により発熱して、載置台31に載置されたウエハWの加熱を行う。載置台31によりウエハWを加熱する温度としては、50~450℃の範囲内の温度を例示することができる。
【0021】
処理容器20の上面の中央位置には、円形の開口部201が形成され、この開口部201の内側にターゲット41が設けられている。ターゲット41の上面には、例えば銅(Cu)またはアルミニウム(Al)よりなる導電性のターゲット電極42が接合されている。例えばターゲット電極42は、環状の絶縁部材43を介して処理容器20の上面に配置される。この結果、処理容器20の上面に設けられた既述の開口部201は、ターゲット電極42によって塞がれた状態となる
【0022】
ターゲット41には直流電源部44が接続され、この直流電源部44から直流電力を供給することにより、処理容器20内にプラズマを形成することができる。なお、直流電力に代わり交流電力を印加してプラズマを形成してもよい。
【0023】
ターゲット41は、処理容器20内に形成されたプラズマにより、ウエハWに付着させるターゲット粒子を放出することにより成膜を行う。例えばターゲット41は、Ti(チタン)、Si(ケイ素)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、タングステン(W)、コバルト-鉄-ホウ素合金、コバルト-鉄合金、鉄(Fe)、タンタル(Ta)、ルテニウム(Ru)、マグネシウム(Mg)、イリジウムマンガン(IrMn)、プラチナマンガン(PtMn)などにより構成される。また、ターゲット41として、金属以外に、SiO2などの絶縁体を用いることもできる。
【0024】
載置台31側から見て、ターゲット41の背面側には、処理容器20内に形成されるプラズマの状態を調節するための永久磁石よりなるマグネット5が配置されている。詳細にはマグネット5は、マグネット移動機構50によって保持され、ターゲット41に接合されたターゲット電極42の上面から数ミリメートル程度、離間した高さ位置に配置されている。
図3に模式的に示すように、本例のマグネット5は、平面視したとき、細長い矩形状に構成され、その長辺は、円形に構成されたターゲット41の直径よりも長くなっている。なお、マグネット5は、電磁コイルに電力を供給して磁界を発生させる電磁石によって構成してもよい。
【0025】
例えばマグネット移動機構50は、細長い棒状のマグネット保持部51を備え、当該マグネット保持部51の下面側にマグネット5が保持される。マグネット保持部51の両端部には、各々、当該マグネット保持部51を貫通するボールねじ531が設けられ、各ボールねじ531の両端は、処理容器20の上面に配置された支柱部52によって支持されている。各ボールねじ531は、端部に設けられた駆動モーター53によって回転駆動することが可能であり、回転方向及び回転速度を同期させて両ボールねじ531を回転させることにより、マグネット5を水平移動させることができる。
【0026】
上述の構成により、
図3に矢印を併記したように、本例のマグネット5は、ターゲット41の上面側を往復移動してターゲット41の全面を走査する。この結果、ターゲット41の上方側から平面視したとき、マグネット5が移動する領域内にターゲット41の全面が内包されることになる。そして、マグネット5の往復移動に合わせてプラズマの発生領域が移動することにより、ターゲット41の全面がターゲット粒子の放出される放出領域となる。
なお、図示の便宜上、
図3においては、マグネット移動機構50やターゲット電極42、処理容器20などの記載は省略してある。
【0027】
図2の説明に戻ると、処理容器20の側壁には、シールド板24の上方側の空間(処理空間)に向けて、プラズマ形成用のガスを供給するための供給ポート25が設けられている。供給ポート25には、プラズマガス供給源251が接続されており、このプラズマガス供給源251からは、プラズマ形成用のガスとして例えばアルゴン(Ar)ガスが供給される。
【0028】
以上に説明した構成を備えるスパッタリング装置2において、ターゲット41と載置台31とは、各ウエハWの面内で均一な膜厚を有する膜を成膜するための特別な配置関係となっている。また、この配置関係によれば、処理容器20内でスパッタリング処理される複数のウエハWの面間でも、膜厚の分布が揃った成膜を行うことができる。
【0029】
以下、
図4を参照しながら、本例のスパッタリング装置2におけるターゲット41と載置台31との配置関係について説明する。
図4は、ターゲット41の上方側からスパッタリング装置2を平面視した透視図である。同図においては、マグネット移動機構50やマグネット5、ターゲット電極42などの記載を省略し、ターゲット41と載置台31との配置関係に着目した記載としてある。
【0030】
また既述のように、各載置台31に対しては、円板状の載置台31の中心と、ウエハWの中心とが揃うようにウエハWが載置される。従って、載置台31とウエハWとの直径の違いを無視すると、
図4には、各載置台31に載置されたウエハWの配置位置が示されているともいえる(
図3~
図11において同じ)。
【0031】
このとき、
図4に示す本例のスパッタリング装置2において、複数の載置台31は、各載置台31の中心位置が、予め設定された中心位置Oを囲む円Rに沿って並ぶように配置されている。また、
図4に示す例では、円Rの直径は、ターゲット41の上方側から平面視したとき、円Rがターゲット41の全面を内包する寸法に設定されている。回転するウエハWの全面にターゲット粒子が届く大きさのターゲット41を設ける必要はあるが、上記の構成を採用することにより、ターゲット41の大型化を抑えつつ、効率よくスパッタリング処理を行うことができる。
【0032】
また以下の説明において、ターゲット41の上方側から平面視したとき、ターゲット粒子が放出される領域である放出領域と、複数の載置台31に載置された各ウエハWとが重なった状態となる領域を「重なり領域OR」と呼ぶ。本例では、ターゲット41の全面が放出領域となっている。また
図4及び後述の
図6~
図9、
図11においては、重なり領域ORを灰色に塗りつぶしてある。
【0033】
本例のスパッタリング装置2において、重なり領域ORは、既述の中心位置Oの周りに回転対称となる位置に配置されている。
図4に示す例において、4つの載置台31と1つのターゲット41との間には、4つの重なり領域ORが形成される。そしてこれらの重なり領域ORは、既述の中心位置Oの周りに、90°回転させると重なり合う、4回対称となる位置に形成されている。
【0034】
ここで
図4におけるターゲット41、載置台31の配置の特徴を理解しやすくするため、
図5に示す比較形態に係るスパッタリング装置2aと対比しながら説明を行う。
既述のように、共通の処理容器20内に、複数の載置台31を設け、各載置台31に載置されたウエハWの面内で均一な厚さの膜を成膜するという課題がある。この場合には、
図5に示すように、複数の載置台31(ウエハW)と各々対向するように、複数のターゲット41aを設け、各ターゲット41aから個別のウエハWの全面にターゲット粒子を供給した方が、均一な成膜を行うことが可能なようにも思える。
【0035】
しかしながら、装置のフットプリントに制約がある条件下において、複数の載置台31は、
図5に示すように互いに近接した位置に配置せざるを得ない。この場合において、各載置台31の上方に、各々ターゲット41aを配置すると、ターゲット41a同士も近接した位置に配置せざるを得ない。この結果、1つのターゲット41aから放出されたターゲット粒子が、隣り合う他のターゲット41aの下方側に配置されたウエハWにも到達してしまう場合がある。
【0036】
例えば
図5に示す配置の例では、破線で囲んだ近接領域CRにて、2つのターゲット41aが近接位置に配置されている。このとき、これらのターゲット41aから放出されたターゲット粒子が、互いに隣り合う他のターゲット41aの下方側に配置されたウエハWにも到達してしまうおそれがある。この場合には、駆動機構33を用いてウエハW(載置台31)を回転させたとしても、ウエハWの周縁部で膜が厚く、中央部で膜が薄い凹部状の膜厚分布が形成されてしまうおそれがある。
このような膜厚分布の形成を避けるためには、載置台31同士を十分に離して配置する必要が生じ、スパッタリング装置2や基板処理システム1のフットプリント増大につながるおそれがある。
【0037】
そこで既述のように、本例のスパッタリング装置2は、平面視したとき、載置台31とターゲット41とが重なって見える複数の重なり領域ORが、中心位置Oの周りに回転対称(本例では4回対称)となる配置を採用している。
図5を用いて説明した比較形態と異なり、この構成では、載置台31に載置されたウエハWに対して、1つのターゲット41からターゲット粒子が供給される構成となる。
【0038】
以上、
図1~
図4を用いて説明した構成を備える基板処理システム1、スパッタリング装置2は、制御部6を備えている。この制御部6は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなる。制御部6の記憶部には、搬入出ポート11に載置されたキャリアCと各スパッタリング装置2との間でウエハWの搬送を行う動作や、各スパッタリング装置2にてウエハWへの成膜を行う動作を実行するために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0039】
続いて、上述の基板処理システム1及びスパッタリング装置2の作用について説明する。
処理対象のウエハWを収容したキャリアCが搬入出ポート11に載置されると、搬送機構123がウエハWを受け取り、大気搬送室121を介してロードロック室122内に搬送する。次いで、ロードロック室122内を常圧雰囲気から真空雰囲気に切り替えた後、真空搬送モジュール13の基板搬送機構15がウエハWを受け取り、真空搬送室14を介して、所定のスパッタリング装置2にウエハWを搬送する。既述のように基板搬送機構15は、エンドエフェクタ16に合計4枚のウエハWを保持した状態で処理容器20内に進入する。そして、エンドエフェクタ16から不図示の受け渡しピンにこれらのウエハWを受け渡した後、エンドエフェクタ16を処理容器20から退避させてゲートバルブGを閉じる。しかる後、受け渡し位置に退避していた各載置台31を上昇させて、昇降ピンからこれら4つの載置台31に同時にウエハWを受け渡す。
【0040】
次いで、各載置台31を処理位置に上昇させると共に、供給ポート25からのプラズマ形成用ガスの供給、処理容器20内の圧力調節、ヒーター311によるウエハWの加熱を実施する。また、駆動機構33による載置台31の回転を開始する。
しかる後、直流電源部44からターゲット電極42に直流電力を印加する。これによりターゲット電極42の周囲に電界が生じ、この電界により加速された電子がArガスに衝突することによりArガスが電離することにより、新たな電子が発生する。
【0041】
一方、マグネット移動機構50によるマグネット5の移動を開始すると、マグネット5の配置位置に応じ、ターゲット41の表面に磁界が形成され、ターゲット41近傍の電界と磁界によってArガスから電離した電子が加速される。この加速によってエネルギーを持った電子が、さらにArガスと衝突し、電離を起こす現象が連鎖してプラズマが形成される。このプラズマ中のArイオンがターゲット41をスパッタリングすることにより、ターゲット粒子が放出される。
【0042】
こうして、マグネット5の下方側に位置するターゲット41の表面から載置台31上のウエハWに向けてターゲット粒子が放射状に放出される。この結果、ターゲット粒子がウエハWに到達して付着する。そして、
図3を用いて説明したようにマグネット5を往復移動させることにより、当該ターゲット41の全面を放出領域として、ターゲット粒子の放出を行うことができる。
【0043】
このとき既述のように、本例のスパッタリング装置2は、載置台31とターゲット41との重なり領域ORが、複数の載置台31の中心位置を並べて構成される円Rの中心位置Oの周りに回転対称に配置されている。この構成によると、コンパクトな領域内に複数の載置台31を配置した場合であっても、各載置台31に載置されたウエハWに対しては、1つのターゲット41からターゲット粒子が供給される。この結果、
図5を用いて説明した比較形態に係るスパッタリング装置2aとは異なり、近接した位置に配置された他のターゲット41aからのターゲット粒子の影響を受けずに、均一な膜を形成することができる。
また、各載置台31が円板状のターゲット41に対して回転対称に配置されているので、載置台31の配置位置の違いに伴う膜厚分布の相違も形成されにくく、ウエハWの面間でも膜厚の分布が揃った成膜を行うことができる。
【0044】
そして、所定の時間が経過し、スパッタリング処理による成膜が完了したら、Arガス、直流電力の供給、ウエハWの加熱、載置台31の回転を停止し、処理容器20内の圧力調節を行った後、搬入時とは反対の手順で成膜後の4枚のウエハWを処理容器20から同時に搬出する。
さらに、処理容器20から取り出されたウエハWは、真空搬送モジュール13、ロードロック室122、大気搬送室121の順に、搬入時とは反対の経路を通って搬入出ポート11上のキャリアCへと戻される。
【0045】
本実施の形態に係るスパッタリング装置2によれば、共通の処理容器20内に配置された複数のウエハWに対し、面内及び面間で均一なスパッタリング処理を行うことができる。
【0046】
次いで、
図6~
図11を参照しながら、載置台31の配置やターゲット41の平面形状などのバリエーションについて説明する。なお、これらの図においては、ターゲット41と載置台31との配置位置の関係を中心に記載し、適宜、処理容器20などの記載を省略してある。
【0047】
処理容器20内に設けられる載置台31の数は、
図4を用いて説明した例に限定されない、3つ以下の載置台31を設けてもよいし、5つ以上の載置台31を設けてもよい。
例えば、
図6は円Rに沿って2つの載置台31を設け、重なり領域ORが2回対称となる位置に形成されるように、これらの載置台31の配置位置を設定した例を示している。
【0048】
また、一般に、重なり領域ORがM回対称となるように載置台31を配置するとき、この条件を満たす全ての位置に合計M個の載置台31を配置することは必須の要件ではない。
図7には、円Rを周方向にM分割して、中心位置Oの周りのM回対称となる位置に重なり領域ORを形成するにあたり、分割数Mよりも少ないN個の載置台31を配置した例を示している。
【0049】
このほか、ターゲット41b、41cの形状は円形に限定されない。例えば
図8は、平面形状が正方形のターゲット41bの頂点と載置台31の中心とを揃えて配置した例を示している。この場合には、4回対称となるように重なり領域ORが形成される。また
図9は、正三角形のターゲット41cの各辺の中点と載置台31の中心とを揃えて配置した例を示している。この場合には、3回対称となるように重なり領域ORが形成される。
【0050】
次いで
図10は、
図2、
図3を用いて説明したものとは異なる構成のマグネット5a、マグネット移動機構50aを設けた例である。この例では、4つの載置台31に対応して、円形のターゲット41の径方向に沿って伸びるように構成された、細長い4本のマグネット5aが設けられている。各マグネット5aは、腕部54を介して、ターゲット41の中央部に設けられた回転軸55に接続されている。回転軸55は、不図示の回転駆動部により時計回りの正転方向、反時計回りの反転方向の双方に回転自在に構成されている。腕部54、回転軸55や不図示の回転駆動部は、本例のマグネット移動機構50aを構成している。
【0051】
図10に示すマグネット移動機構50aを用い、各マグネット5aが重なり領域ORを走査するように、正転方向及び反転方向に往復移動させる。この動作により、ターゲット41にはマグネット5aが移動する範囲に対応して、
図10中に一点鎖線で示す扇形の放出領域Dが形成される。本例では、4つの載置台31の配置位置に対応して、4本のマグネット5aを設けているので、これらのマグネット5aを往復移動させることにより、ターゲット41には上方側から平面視したときほぼ円環形状の放出領域D(外縁が円形の放出領域D)が形成されることになる。
【0052】
なお、
図10に示す例では、各マグネット5aにより形成される放出領域Dの形状を明確にする趣旨で扇形の放出領域Dの端部が重なり合わない記載としている。一方で、これらの放出領域Dが重なり合うように、マグネット5aの往復移動範囲を設定してもよい。
また、
図10に示す構成において、重なり領域ORを走査する範囲に限定してマグネット5aを往復移動させることは必須の要件ではない。例えば正転方向または反転方向にマグネット5aを回転移動させてもよい。この場合には、重なり領域ORの数よりも多い、または少ない本数のマグネット5aを用いてスパッタリング処理を行ってもよい。
【0053】
ここで
図3、
図4を用いて説明した例では、ターゲット41の上方側から平面視したとき、マグネット5が移動する領域内にターゲット41の全面が内包されるように、マグネット5の移動範囲を設定した。この設定により、ターゲット粒子が放出される放出領域は、ターゲット41の全面となる。
これに対して
図10を用いて説明した例では、放出領域Dは、処理容器20内に露出するターゲット41の一部領域となっている。このように、ターゲット41の一部領域を放出領域Dとする場合には、当該放出領域Dの形状に対応させてマグネット5aを移動させるとよい。
【0054】
図11は、平面視したとき、任意の平面形状のターゲット41d内に、円形の放出領域Dを形成した例を示している。この例のように、ターゲット41dの輪郭が中心位置Oの周りに回転対称となっていない場合であっても、ターゲット粒子の放出領域Dの外縁形状を円形(放出領域Dの全体の形状は円形であっても、円環であってもよい)にすることで、前記中心位置Oの周りに回転対称に配置された重なり領域ORを形成することができる。
【0055】
円形の放出領域Dを形成する手法としては、
図10に示すマグネット5aを径方向に回転軸55側まで伸ばし、放出領域Dの半径に対応する長さのマグネットを回転させる場合を例示できる。または、放出領域Dに対応する磁界の形成面を有するマグネット(不図示)を固定配置してもよい。
なお、ターゲット41の一部領域として形成する放出領域Dは、円形や円環形状の場合に限定されない。例えば
図8や
図9を用いて説明した例に対応させて、正方形や正三角形などの他の形状の放出領域Dを形成してもよい。
【0056】
さらに
図4、
図6~
図11では、上方側から平面視したとき、ターゲット41、41b~41dが円Rに内包された状態となる場合を例示した。但し、例えばウエハWの全面が重なり領域ORとなるように、円Rよりも大きなターゲット41、41b~41dを設置する場合を否定するものではない。
【0057】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
O 中心位置
OR 重なり領域
R 円
W ウエハ
2 スパッタリング装置
20 処理容器
31 載置台
41、41a~41d
ターゲット