(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】画像形成装置及び管理プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/46 20060101AFI20241106BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241106BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241106BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B41J29/46 Z
H04N1/00 C
G03G21/00 388
B41J29/38 104
(21)【出願番号】P 2021043908
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】松村 豊
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181755(JP,A)
【文献】特開2011-034363(JP,A)
【文献】特開平11-327971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/70
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
G06F 1/26-1/3296
3/09-3/12
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ハードウェアに電力が供給される供給モード、及び前記特定ハードウェアへの電力の供給が制限される制限モードに遷移可能で、前記制限モードから前記供給モードへの遷移を伴うサービスを提供する画像形成装置において、
前記サービスを利用するためのAPIを管理する管理プログラム、前記APIを呼び出し可能な1以上のアプリケーションプログラム、及び前記アプリケーションプログラム毎の前記APIの呼出回数を保持する管理テーブルを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された前記管理プログラム及び前記アプリケーションプログラムを実行するCPUとを備え、
前記CPUによって実行される前記管理プログラムは、
前記制限モードのときに前記アプリケーションプログラムが前記APIを呼び出した場合に、前記管理テーブルの当該アプリケーションプログラムに対応付けられた呼出回数をインクリメントし、
インクリメントした呼出回数が第1閾値未満の場合に、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行し、
インクリメントした呼出回数が前記第1閾値に達した場合に、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行せずに、当該サービスが利用できないことを示す第1通知を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記管理プログラムは、インクリメントした呼出回数が前記第1閾値未満で且つ前記第1閾値より小さい第2閾値以上の場合に、当該サービスの利用制限が近いことを示す第2通知を行ったうえで、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記管理プログラムは、前記第1通知及び前記第2通知として、前記画像形成装置のディスプレイへの表示、通信ネットワークを通じた管理者への電子メールの送信、前記アプリケーションプログラムへのエラー応答、及び前記画像形成装置のOSに対する前記アプリケーションプログラムの強制停止の要求のうちのいずれかを実行することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
オペレータの操作を受け付ける操作部を備え、
前記管理プログラムは、前記第1通知及び前記第2通知の方法を、前記操作部を通じてオペレータに選択させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記管理テーブルには、前記アプリケーションプログラム毎に強制停止の可否が設定されており、
前記管理プログラムは、強制停止が許可された前記アプリケーションプログラムに対してのみ、前記画像形成装置のOSに対する前記アプリケーションプログラムの強制停止の要求を、前記操作部を通じて選択可能にすることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記管理プログラムは、前記アプリケーションプログラムが直前に前記APIを呼び出してから所定の時間が経過した場合に、当該アプリケーションプログラムに対応付けられた呼出回数を初期化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記特定ハードウェアは、ハードディスクドライブであり、
前記サービスは、前記ハードディスクドライブへのアクセスであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記特定ハードウェアは、媒体に画像を形成する画像形成部であり、
前記サービスは、前記画像形成部による画像形成であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
特定ハードウェアに電力が供給される供給モード、及び前記特定ハードウェアへの電力の供給が制限される制限モードに遷移可能で、前記制限モードから前記供給モードへの遷移を伴うサービスを提供する画像形成装置上で動作する管理プログラムにおいて、
前記画像形成装置は、前記サービスを利用するためのAPIを呼び出し可能な1以上のアプリケーションプログラム、及び前記アプリケーション毎の前記APIの呼出回数を保持する管理テーブルを記憶するメモリを備え、
前記管理プログラムは、
前記制限モードのときに前記アプリケーションプログラムが前記APIを呼び出した場合に、前記管理テーブルの当該アプリケーションプログラムに対応付けられた呼出回数をインクリメントする処理と、
インクリメントした呼出回数が第1閾値未満の場合に、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行する処理と、
インクリメントした呼出回数が前記第1閾値に達した場合に、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行せずに、当該サービスが利用できないことを通知する処理とを、前記画像形成装置に実行させることを特徴とする管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成装置上で動作する管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハードウェアに対する電力の供給状態が異なる複数の動作モードを有する画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。動作モードには、例えば、ハードウェアに電力が供給される供給モード、ハードウェアへの電力の供給が制限される制限モードなどがある。
【0003】
また、画像形成装置には、サードベンダーアプリが画像形成装置のハードウェアを容易に利用するためのAPI(Application Programming Interface)が用意されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、制限モードのときにAPIが呼び出されると、画像形成装置の動作モードが制限モードから供給モードに遷移する。そのため、サードベンダーアプリによってAPIが頻繁に呼び出されると、その度にハードウェアに通電するので、当該ハードウェアの寿命を縮めてしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、APIの呼び出しに起因するハードウェアの寿命低下を抑制した画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、特定ハードウェアに電力が供給される供給モード、及び前記特定ハードウェアへの電力の供給が制限される制限モードに遷移可能で、前記制限モードから前記供給モードへの遷移を伴うサービスを提供する画像形成装置において、前記サービスを利用するためのAPIを管理する管理プログラム、前記APIを呼び出し可能な1以上のアプリケーションプログラム、及び前記アプリケーションプログラム毎の前記APIの呼出回数を保持する管理テーブルを記憶するメモリと、前記メモリに記憶された前記管理プログラム及び前記アプリケーションプログラムを実行するCPUとを備え、前記CPUによって実行される前記管理プログラムは、前記制限モードのときに前記アプリケーションプログラムが前記APIを呼び出した場合に、前記管理テーブルの当該アプリケーションプログラムに対応付けられた呼出回数をインクリメントし、インクリメントした呼出回数が第1閾値未満の場合に、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行し、インクリメントした呼出回数が前記第1閾値に達した場合に、前記APIに対応付けられた前記サービスを実行せずに、当該サービスが利用できないことを示す第1通知を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、APIの呼び出しに起因するハードウェアの寿命低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図。
【
図5】APIが呼び出された際の処理を示すシーケンス図。
【
図6】パネル表示(A)及びメール送信(B)のシーケンス図。
【
図7】エラー応答(A)及び強制停止(B)のシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す概略図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、給紙トレイ101と、排紙トレイ102と、搬送部110と、画像形成部120とを主に備える。給紙トレイ101には、画像が形成される前の複数の用紙Pが積層された状態で収容される。排紙トレイ102には、画像が形成された用紙Pが収容される。
【0010】
用紙Pは、搬送部110によって搬送され、画像形成部120によって画像が形成される媒体の一例である。用紙Pは、例えば、予め所定の大きさ(例えば、A4、B5など)にカットされたカット紙でもよいし、帯状の連帳紙でもよい。
【0011】
画像形成装置1の内部には、用紙Pが搬送される空間である主搬送路R1及び反転搬送路R2が形成されている。主搬送路R1は、給紙トレイ101から画像形成部120を経て排紙トレイ102に至る経路である。反転搬送路R2は、搬送ローラ112より搬送方向の下流側の分岐点BPで主搬送路R1から分岐し、画像形成部120より搬送方向の上流側で主搬送路R1に再び合流する経路である。
【0012】
より詳細には、反転搬送路R2は、表面に画像が形成された用紙Pの表裏を反転させて、再び画像形成部120に導く、所謂、スイッチバックパスである。なお、用紙Pは、反転搬送路R2において、搬送方向の前端と後端とが入れ替わるように反転されて、再び画像形成部120に対面する位置に導かれる。
【0013】
搬送部110は、主搬送路R1及び反転搬送路R2に沿って用紙Pを搬送する。具体的には、搬送部110は、給紙トレイ101に収容された用紙Pを、主搬送路R1に沿って画像形成部120に対面する位置まで搬送する。また、搬送部110は、表面に画像が形成された用紙Pを、反転搬送路R2を通じて表裏を反転させた上で再び画像形成部120に対面する位置まで搬送する。さらに、搬送部110は、裏面に画像が形成された用紙Pを、主搬送路R1に沿って排紙トレイ102に排出する。
【0014】
搬送部110は、複数の搬送ローラ111、112を含む。搬送ローラ111、112は、例えば、モータの駆動力が伝達されて回転する駆動ローラと、駆動ローラに当接して従動する従動ローラとで構成される。そして、駆動ローラ及び従動ローラが用紙Pを挟持して回転することによって、搬送路R1、R2に沿って用紙Pが搬送される。
【0015】
搬送ローラ111は、画像形成部120より搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ112は、画像形成部120より搬送方向の下流側で、且つ分岐点BPより搬送方向の上流側に配置されている。但し、搬送部110は、搬送ローラ111、112のみならず、反転搬送路R2に沿って用紙Pを搬送する搬送ローラ等、他の搬送ローラをさらに備える。
【0016】
画像形成部120は、搬送ローラ111、112の間において、主搬送路R1に対面して配置されている。画像形成部120は、搬送部110によって搬送された用紙Pの表面及び裏面それぞれに画像を形成する。本実施形態に係る画像形成部120は、主搬送路R1に沿って搬送される用紙Pに、電子写真方式で画像を形成する。
【0017】
本実施形態に係る画像形成部120は、無端状移動手段である搬送ベルト122に沿って各色の感光体ドラム121Y、121M、121C、121K(以下、これらを総称して、「感光体ドラム121」と表記する。)が並べられた構成を備えるものであり、所謂、タンデムタイプといわれるものである。すなわち、給紙トレイ101から給紙される用紙Pに転写するための中間転写画像が形成される搬送ベルト122に沿って、この搬送ベルト122の搬送方向の上流側から順に、複数の感光体ドラム121Y、121M、121C、121Kが配列されている。
【0018】
各色の感光体ドラム121の表面において着色剤であるトナーにより現像された各色の画像が、搬送ベルト122に重ね合わせられて転写されることによりフルカラーの画像が形成される。このようにして搬送ベルト122上に形成されたフルカラー画像は、主搬送路R1と最も接近する位置において、転写ローラ123の機能により、用紙Pに転写される。
【0019】
さらに、画像形成部120は、転写ローラ123より搬送方向の下流側に配置された定着ユニット124を含む。定着ユニット124は、モータによって駆動される駆動ローラと、駆動ローラに当接して従動する従動ローラと、駆動ローラ及び従動ローラに挟持される用紙Pを加熱するヒータとを含む。そして、駆動ローラ及び従動ローラが用紙Pを挟持して回転する過程において、用紙Pを加熱したり押圧することによって、転写ローラ123によって転写された画像が用紙Pに定着する。
【0020】
図2は、画像形成装置1のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40、及びI/F50が共通バス90を介して接続されている。RAM20、ROM30、及びHDD40は、メモリの一例である。
【0021】
CPU10は演算手段であり、画像形成装置1全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェア等が格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体である。
【0022】
RAM20には、例えば、
図3に示す管理テーブル21が記憶されている。HDD40には、OS(Operating System)41と、設定プログラム42と、管理プログラム43と、アプリケーションプログラム44とが記憶されている。HDD40に記憶された各種プログラム41~44は、単一のプログラムでもよいし、複数のプログラムの集合体でもよい。
【0023】
HDD40に記憶された各種プログラムを、CPU10がRAM20にロードして実行することによって、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、画像形成装置1に搭載されるハードウェア資源との組み合わせによって、画像形成装置1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0024】
OS41は、画像形成装置1の基本的な機能を実現するためのプログラムである。OS41は、例えば、画像形成装置1のハードウェア(例えば、HDD40、搬送部110、画像形成部120等)を他のプログラムに利用させる様々なサービスを提供する。そして、これらのサービスは、API(Application Programming Interface)の形で公開されている。すなわち、画像形成装置1にインストールされたプログラムは、APIを呼び出すことによって、当該APIに対応付けられたサービスを利用することができる。
【0025】
OS41は、例えば、HDD40に対してデータを読み書き(すなわち、アクセス)するサービス、搬送部110に用紙Pを搬送させるサービス、画像形成部120に画像を形成させるサービスを提供する。これらのサービスは、制限モードから供給モードへの遷移を伴うサービスの一例である。なお、サービスは、関数、ライブラリ、サブルーチン、オブジェクトクラス等と呼ばれることもある。
【0026】
設定プログラム42は、管理プログラム43の実行に必要な各種設定を、操作部70を通じてオペレータから受け付けるプログラムである。管理プログラム43は、OS41が公開するAPIを管理(より詳細には、アプリケーションプログラム44によるAPIの呼び出しを制御)するプログラムである。管理プログラム43は、例えば
図5~
図7に示すように、API管理プログラム43a、省エネ管理プログラム43b、イベント管理プログラム43c、表示管理プログラム43d、メール管理プログラム43eを含む。
【0027】
アプリケーションプログラム44は、画像形成装置1の機能を拡張すること等を目的として、サードウェアベンダーによって開発されたプログラムである。アプリケーションプログラム44は、例えば、オンデマンド印刷を実現するプログラム、ユーザ認証を行うプログラム、IDカードの読取認証を行うプログラム等がある。また、アプリケーションプログラム44は、APIを呼び出すことができる。
【0028】
I/F50は、LCD60と、操作部70と、通信I/F80と、搬送部110と、画像形成部120と、読取部130とを、共通バス90に接続するインタフェースである。LCD60は、ユーザに情報を報知するための各種画面を表示させるディスプレイである。操作部70は、ユーザからの各種情報の入力を受け付ける入力インタフェースであって、LCD60に重畳されたタッチパネル、押ボタン等を含む。通信I/F80は、通信ネットワークを通じて外部装置と通信するためのインタフェースである。
【0029】
画像形成装置1は、外部電源から電力の供給を受けて動作する。また、画像形成装置1は、ハードウェアに対する電力の供給状態が異なる複数の動作モードを有する。動作モードは、例えば、供給モードと、制限モードとを含む。供給モードは、画像形成装置1を構成する全てのハードウェアに電力が供給される動作モードである。制限モードは、画像形成装置1を構成する複数のハードウェアのうち、一部のハードウェアに電力が供給され、他の一部のハードウェアへの電力の供給が制限(停止)される動作モードである。
【0030】
図2に示すハードウェアのうち、CPU10、RAM20、ROM30、操作部70、及び通信I/F80は、制限モードでも電力が供給される。一方、HDD40、LCD60、搬送部110、及び画像形成部120(以下、これらを総称して、「特定ハードウェア」と表記する。)は、制限モードのときに電力の供給が制限(停止)される。すなわち、CPU10は、画像形成装置1が制限モードであっても、RAM20にロードされたプログラムを実行することができるし、管理テーブル21にアクセスすることができる。一方、特定ハードウェアは、制限モードのときに電力の供給が停止され、供給モードに復帰したときに電力の供給が再開されるように、電力供給制御が行なわれる種類のハードウェアを指す。特定ハードウェアのように、電力供給の停止及び再開が行なわれるハードウェアは、主に電力供給の再開時に再起動が行なわれることで、単体として正常に動作する期間(製品寿命)が短くなる(寿命が低下する)原因になる。
【0031】
また、供給モードの画像形成装置1は、所定の時間継続して動作しない場合に、供給モードから制限モードに遷移する。一方、制限モードの画像形成装置1は、特定ハードウェアの利用が要求(例えば、特定ハードウェアを利用するAPIの呼び出し)された場合に、制限モードから供給モードに遷移する。画像形成装置1の動作モードの遷移は、例えば、省エネ管理プログラム43bによって制御される。
【0032】
図3は、管理テーブル21のデータ構造を示す図である。
図3に示すように、管理テーブル21は、画像形成装置1にインストールされた1以上のアプリケーションプログラム44それぞれに対応付けられた1以上のレコードを含む。各レコードには、アプリIDと、強制停止の可否と、呼出回数Nと、第1閾値と、第1通知の方法と、第2閾値と、第2通知の方法とが対応付けられている。
【0033】
アプリIDは、画像形成装置1にインストールされたアプリケーションプログラム44を一意に識別する。アプリIDは、例えば、画像形成装置1に新たなアプリケーションプログラム44がインストールされる度に、OS41によって付与される。
【0034】
強制停止の可否は、アプリIDで識別されるアプリケーションプログラム44の強制停止を許可するか否かを示す情報(OK、NG)である。強制停止の可否は、OS41によって設定されてもよいし、操作部70を通じてオペレータが設定してもよい。
【0035】
呼出回数Nは、制限モードから供給モードへの遷移を伴うサービスを利用するためのAPIを、アプリIDで識別されるアプリケーションプログラム44が呼び出した回数を示す。管理プログラム43は、アプリケーションプログラム44によってAPIが呼び出される度に対応する呼出回数Nをインクリメントし、直前にAPIが呼び出されてから所定の時間が経過した場合に対応する呼出回数Nをリセット(0を代入)する。
【0036】
第1閾値及び第2閾値は、呼出回数Nと比較される予め定められた数値である。第1閾値及び第2閾値は、例えば、全てのアプリケーションプログラム44に共通の固定値でもよいし、アプリケーションプログラム44毎に操作部70を通じてオペレータが設定してもよい。但し、第2閾値は、第1閾値未満の値である。
【0037】
第1通知の方法は、呼出回数Nが第1閾値に達したことを通知する方法である。第2通知の方法は、呼出回数Nが第1閾値未満で且つ第2閾値以上になったことを通知する方法である。第1通知及び第2通知の方法は、例えば、LCD60への表示(パネル表示)、通信ネットワークを通じた管理者への電子メールの送信(メール送信)、アプリケーションプログラム44へのエラー応答(エラー応答)、OS41に対するアプリケーションプログラム44の強制停止(強制停止)の要求などがある。
【0038】
第1通知及び第2通知の方法は、全てのアプリケーションプログラム44に共通して予め定められていてもよいし、
図4に示すようにアプリケーションプログラム44毎に操作部70を通じてオペレータが設定してもよい。
図4は、通知設定画面の画面例である。通知設定画面を通じた第1通知及び第2通知の方法の設定は、例えば、設定プログラム42によって実行される。
【0039】
設定プログラム42は、強制停止“OK”が設定されたアプリケーションプログラム44の第1通知及び第2通知の方法を設定させる場合に、
図4(A)に示す通知設定画面をLCD60に表示する。
図4(A)に示す通知設定画面は、第1通知及び第2通知それぞれに対して、[パネル表示]アイコン、[メール送信]アイコン、[エラー応答]アイコン、[強制停止]アイコンを含む。
【0040】
一方、設定プログラム42は、強制停止“NG”が設定されたアプリケーションプログラム44の第1通知及び第2通知の方法を設定させる場合に、
図4(B)に示す通知設定画面をLCD60に表示する。
図4(B)通知設定画面は、[強制停止]アイコンを含まない点で
図4(A)と相違し、その他の点で
図4(A)と共通する。
【0041】
そして、設定プログラム42は、第1通知及び第2通知それぞれに対して、通知設定画面に表示されたアイコンのうちの1つを操作部70を通じてオペレータに選択(タップ)させる。さらに、設定プログラム42は、タップされたアイコンに対応する方法を、第1通知及び第2通知の方法として管理テーブル21に設定する。すなわち、設定プログラム42は、強制停止“OK”が設定されたアプリケーションプログラム44に対して強制停止を選択可能とし、強制停止“NG”が設定されたアプリケーションプログラム44に対して強制停止を選択不能とする。
【0042】
次に、
図5を参照して、管理プログラム43によって実行される処理を説明する。
図5は、アプリケーションプログラム44がAPIを呼び出した際の処理を示すシーケンス図である。より詳細には、
図5は、画像形成装置1が制限モードのときに、制限モードから供給モードへの遷移を伴うサービスを利用するためのAPIが呼び出された場合のシーケンス図である。
【0043】
アプリケーションプログラム44は、例えば、特定ハードウェアの一例としてのHDD40からデータを読み出すサービスに対応付けられたAPI(以下、「HDD読出しAPI」と表記する。)を呼び出す(S501)。アプリケーションプログラム44は、HDD読出しAPIの引数として、当該アプリケーションプログラム44のアプリIDと、HDD40から読み出すデータを識別するデータIDとを含める。そして、HDD読出しAPIが呼び出されたことは、API管理プログラム43aに通知される。
【0044】
次に、API管理プログラム43aは、HDD読出しAPIの引数に設定されたアプリIDを含むレコードを、RAM20の管理テーブル21から読み出す。次に、API管理プログラム43aは、読み出したレコードの呼出回数Nを1だけインクリメントする(S502)。そして、API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nで管理テーブル21のレコードを更新する。
【0045】
次に、API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nと、読み出したレコードの第1閾値とを比較する(S503)。そして、API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nが第1閾値に達した場合に(S503:Yes)、読み出したレコードに設定された方法で第1通知を行い(S504)、ステップS505以降の処理を実行しない。
【0046】
一方、API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nが第1閾値未満の場合に(S503:No)、インクリメントした呼出回数Nと、読み出したレコードの第2閾値とを比較する(S505)。API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nが第1閾値未満で且つ第2閾値以上の場合に(S503:No&S505:Yes)、読み出したレコードに設定された方法で第2通知を行ったうえで(S506)、ステップS507以降の処理を実行する。一方、API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nが第2閾値未満の場合に(S505:No)、ステップS506の処理を実行せずに、ステップS507以降の処理を実行する。
【0047】
すなわち、API管理プログラム43aは、インクリメントした呼出回数Nが第1閾値未満の場合に(S503:No)、省エネ管理プログラム43bにモード遷移要求を通知する(S507)。モード遷移要求は、例えば、省エネ管理プログラム43bが公開するプロシージャを呼び出すことによって実現される。
【0048】
次に、省エネ管理プログラム43bは、API管理プログラム43aからモード遷移要求を受け付けた場合に(S507)、画像形成装置1の動作モードを制限モードから供給モードに遷移させる(S508)。これにより、HDD40を駆動するサーボモータに電力が供給される。また、省エネ管理プログラム43bは、モード遷移の完了をAPI管理プログラム43aに通知する(S509)。モード遷移の完了は、例えば、ステップS507でAPI管理プログラム43aが呼び出したプロシージャの戻り値として、API管理プログラム43aに通知される。
【0049】
次に、API管理プログラム43aは、HDD読出しAPIの引数に設定されたデータIDで識別されるデータを、HDD40から読み出す(S510)。そして、API管理プログラム43aは、HDD40からのデータの読出しが完了したことを、HDD読出しAPIの呼び出し元のアプリケーションプログラム44に通知する(S511)。API管理プログラム43aは、例えば、HDDから読み出したデータをRAM20に記憶させ、その先頭アドレスをHDD読出しAPIの戻り値として通知する。さらに、アプリケーションプログラム44は、HDD読出しAPIの戻り値として設定された先頭アドレスからデータを読み出して、後続の処理を実行する。
【0050】
次に、
図6及び
図7を参照して、第1通知(S504)及び第2通知(S506)の詳細を説明する。
図6は、パネル表示(A)及びメール送信(B)のシーケンス図である。
図7は、エラー応答(A)及び強制停止(B)のシーケンス図である。
【0051】
ステップS504、S506でパネル表示をしようとするAPI管理プログラム43aは、
図6(A)に示すように、エラー表示要求をイベント管理プログラム43cに通知する(S601)。エラー表示要求は、例えば、イベント管理プログラム43cが公開するプロシージャを呼び出すことによって実現される。当該プロシージャの引数には、LCD60に表示させるメッセージが設定される。
【0052】
そして、イベント管理プログラム43cは、エラー表示要求を表示管理プログラム43dに通知する(S602)。ステップS602の処理は、ステップS601と同様の方法で実現できる。そして、表示管理プログラム43dは、プロシージャの引数として設定されたメッセージを、LCD60に表示させる(S603)。
【0053】
ステップS504でLCD60に表示されるメッセージは、例えば、「ハードウェアの寿命を短縮する可能性のあるアプリがいます。管理者に連絡してください。」などである。また、ステップS506でLCD60に表示されるメッセージは、例えば、「APIを呼び出し制限が近づいています。」などである。ステップS605で送信される電子メールの内容も同様である。
【0054】
ステップS504、S506でメール送信をしようとするAPI管理プログラム43aは、
図6(B)に示すように、メール送信要求をメール管理プログラム43eに通知する(S604)。メール送信要求は、例えば、メール管理プログラム43eが公開するプロシージャを呼び出すことによって実現される。当該プロシージャの引数には、電子メールの宛先であるメールアドレスと、電子メールに含めるメッセージとが設定される。そして、メール管理プログラム43eは、プロシージャの引数として設定されたメールアドレス宛に、プロシージャの引数として設定されたメッセージを、電子メールとして通信I/F80を通じて送信する(S605)。
【0055】
ステップS504、S506でエラー応答をしようとするAPI管理プログラム43aは、
図7(A)に示すように、エラー応答をアプリケーションプログラム44に通知する(S701)。エラー応答は、例えば、HDD読出しAPIの戻り値として設定される。そして、アプリケーションプログラム44は、API管理プログラム43aから通知されたエラー応答に対応するエラー処理を実行する(S702)。
【0056】
ステップS504、S506で強制停止をしようとするAPI管理プログラム43aは、
図7(B)に示すように、強制停止要求をOS41に通知する(S703)。強制停止要求は、例えば、OS41が公開するプロシージャを呼び出すことによって実現される。当該プロシージャの引数には、強制停止させるアプリケーションプログラム44のアプリIDが設定される。そして、OS41は、プロシージャの引数として設定されたアプリIDで識別されるアプリケーションプログラム44を強制停止させる(S704)。
【0057】
上記の実施形態によれば、APIの呼出回数Nが第1閾値に達した場合に、当該APIに対応付けられたサービスを実行せずに、当該サービスが利用できないことを示す第1通知を行う。これにより、アプリケーションプログラム44がAPIを繰り返し呼び出すことに起因する特定ハードウェアの寿命低下を抑制することができる。
【0058】
また、上記の実施形態によれば、APIの呼出回数Nが第1閾値未満で且つ第2閾値以上の場合に、当該サービスの利用制限が近いことを示す第2通知を行ったうえで、当該APIに対応付けられたサービスを実行する。これにより、APIの呼出回数Nが第1閾値に達する前に、特定ハードウェアの寿命を低下させる可能性のあるアプリケーションプログラム44が存在することを、画像形成装置1の管理者に認識させることができる。但し、ステップS505-S506の処理は、省略可能である。
【0059】
また、上記の実施形態によれば、第1通知及び第2通知の方法を、複数の方法(パネル表示、メール送信、エラー応答、強制停止)のうちからオペレータに選択させる。これにより、アプリケーションプログラム44の種類に応じた適切な通知を実行することができる。
【0060】
また、上記の実施形態によれば、アプリケーションプログラム44毎に強制停止の可否を設定する。これにより、画像形成装置1の基本的な機能を実現するアプリケーションプログラム44が強制停止されることによって、画像形成装置1が機能不全に陥ることを未然に防止できる。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、アプリケーションプログラム44が直前にAPIを呼び出してから所定の時間が経過した場合に、当該アプリケーションプログラム44に対応付けられた呼出回数Nを初期化する。これにより、短期間にAPIが繰り返し呼び出された場合にのみ、第1通知及び第2通知が実行される。
【0062】
なお、
図5の処理が実行されるのは、HDD読出しAPIが呼び出された場合に限定されない。
図5の処理の対象となるAPIとしては、例えば以下のようなバリエーションが考えられる。
【0063】
他の例として、HDD40にデータを書き込むサービスに対応付けられたHDD書込みAPIが呼び出された場合にも、ステップS502以降の処理が実行される。この場合、HDD40を駆動させるサーボモータに電力が供給される。他の例として、搬送部110に用紙Pを搬送させるサービスに対応付けられた用紙搬送APIが呼び出された場合にも、ステップS502以降の処理が実行される。この場合、搬送ローラ111、112を回転させるサーボモータに電力が供給される。さらに他の例として、画像形成部120に画像を形成させるサービスに対応付けられた画像形成APIが呼び出された場合にも、ステップS502以降の処理が実行される。この場合、画像形成部120を構成するベルト、ドラム、ローラを駆動させるサーボモータ及びヒータに電力が供給される。
【0064】
さらに、画像形成部120の画像形成方式は電子写真方式に限定されず、インクジェット方式でもよい。すなわち、本発明は、画像形成部120が電子写真方式かインクジェット方式かに拘わらず適用することができる。
【0065】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 :画像形成装置
10 :CPU
20 :RAM
21 :管理テーブル
30 :ROM
40 :HDD
41 :OS
42 :設定プログラム
43 :管理プログラム
43a :API管理プログラム
43b :省エネ管理プログラム
43c :イベント管理プログラム
43d :表示管理プログラム
43e :メール管理プログラム
44 :アプリケーションプログラム
50 :I/F
60 :LCD
70 :操作部
80 :通信I/F
90 :共通バス
101 :給紙トレイ
102 :排紙トレイ
110 :搬送部
111,112 :搬送ローラ
120 :画像形成部
121 :感光体ドラム
121C,121K,121M,121Y :感光体ドラム
122 :搬送ベルト
123 :転写ローラ
124 :定着ユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】