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特許7582057シリコンウェーハの洗浄方法及びシリコンウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの洗浄方法及びシリコンウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/308 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021079337
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022138089
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2021037267
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111733(JP,A)
【文献】特開2001-044278(JP,A)
【文献】特開2002-100599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306 - 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハを粗化する洗浄方法であって、
前記シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン水洗浄で、酸化膜を形成し、
前記酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、
水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下の水酸化アンモニウム希釈水溶液、又は
水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下であり、過酸化水素濃度が0.2質量%以下であり且つ前記水酸化アンモニウム濃度の4倍以下である、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む希釈水溶液
のいずれかの水溶液で洗浄することで前記シリコンウェーハの表裏面を粗化すること、及び
予め、前記酸化膜の形成方法ごとに、前記水酸化アンモニウム濃度又は前記水酸化アンモニウム濃度と前記過酸化水素濃度、洗浄温度及び洗浄時間と、前記洗浄後の表面粗さとの関係を求め、
求められた関係に基づき、前記水酸化アンモニウム濃度又は前記水酸化アンモニウム濃度と前記過酸化水素濃度、洗浄温度、及び洗浄時間を選定して、洗浄を行うことを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
請求項に記載のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄されたシリコンウェーハの片方の面に対しCMP研磨を行い、前記片方の面とは反対側の面のみが選択的に粗化されているシリコンウェーハを得ることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
シリコンウェーハを粗化する洗浄方法であって、
前記シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン水洗浄で、酸化膜を形成する第1洗浄工程と
前記酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、
水酸化アンモニウムを含む水溶液、又は
水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む水溶液
のいずれかの水溶液で洗浄することで前記シリコンウェーハの表裏面又は裏面を粗化する第2洗浄工程と
を含み、
前記第2洗浄工程で用いる水溶液として、SiOに対するSiのエッチング選択比が95以上であるものを用いること、及び
予め、前記第1洗浄工程における前記酸化膜の形成方法ごとに、前記SiO に対するSiのエッチング選択比及び洗浄時間と、表面粗さとの関係を求め、
求められた関係に基づき、前記SiO に対するSiのエッチング選択比、洗浄時間を選定して、第2洗浄工程を行うことを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記第2洗浄工程で用いる前記水溶液の前記SiOに対するSiのエッチング選択比を、(Siのエッチング量/SiOのエッチング量)から求め、
前記Siのエッチング量の算出用ウェーハとして、自然酸化膜がないベア面が露出したシリコンウェーハ、エピタキシャルウェーハ、又はSOIウェーハのいずれかを用い、
前記SiOのエッチング量の算出用ウェーハとして、膜厚が3nm以上のシリコン酸化膜付ウェーハを用いることを特徴とする請求項に記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
予め、前記第1洗浄工程における前記酸化膜の形成方法ごとに、前記第2洗浄工程で粗化が進行するために必要なSiOのエッチング量を粗化エッチング量として算出しておき、
前記第2洗浄工程でのSiOのエッチング量が前記粗化エッチング量以上となるように前記第2洗浄工程の洗浄時間を選定する、及び/又は
前記第2洗浄工程前に、前記第1洗浄工程で形成された前記酸化膜の一部が残るように前記酸化膜を薄くする追加洗浄工程を追加し、該追加洗浄工程でのSiOのエッチング量と前記第2洗浄工程でのSiOのエッチング量との合計が前記粗化エッチング量以上となるように、洗浄時間を調整することを特徴とする請求項又はに記載のシリコンウェーハの洗浄方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄され、表裏面が粗化されたシリコンウェーハの片方の面に対し、CMP研磨を行い、前記片方の面とは反対面の面のみが選択的に粗化されているシリコンウェーハを得ることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記CMP研磨の取り代を、前記第2洗浄工程でのSiのエッチング量以上となるように設定することを特徴とする請求項に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記第2洗浄工程でのSiのエッチング量を、前記CMP研磨の取り代以下となるように設定することを特徴とする請求項に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用シリコンウェーハの表裏面を粗化することができるシリコンウェーハの洗浄方法、半導体用シリコンウェーハの表裏面又は裏面を粗化することができるシリコンウェーハの洗浄方法、シリコンウェーハの製造方法及びシリコンウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用のシリコンウェーハの製造工程は、チョクラルスキー(CZ)法等を使用して単結晶インゴットを育成する単結晶製造工程と、この単結晶インゴットをスライスし、鏡面状に加工するウェーハ加工工程とから構成され、さらに付加価値をつけるために、熱処理をするアニール工程やエピタキシャル層を形成するエピタキシャル成長工程を含む場合がある。
【0003】
この鏡面状に加工する工程には、DSP(両面研磨)工程とその後のCMP(片面研磨)工程がある。より具体的には、パーティクル品質や搬送の観点からDSP加工されたウェーハは乾燥させず、必要に応じて洗浄した後、水中保管でCMP工程へ搬送される。したがってCMP工程では水中保管されたウェーハをロボット等でチャックしCMP装置へ搬送する必要がある。また、CMP研磨後も同様に研磨剤や純水などで濡れたウェーハをチャックし、必要に応じて洗浄工程へ搬送する必要がある。
【0004】
このようにウェーハの加工工程では、ドライではなくウェットな環境下でウェーハを搬送することが必須であるが、特にこのようなウェット環境下では、チャックで吸着されたウェーハを脱離させる際に、チャックを解除しても脱離されず、搬送不良を引き起こすことがあった。この原因としてはチャックされるウェーハ面の粗さが影響していると考えられ、チャックされるウェーハ面粗さが良好過ぎると、チャックとの接触面積が増え、チャックを解除してもウェーハが脱離しにくくなると考えられ、対してウェーハの面粗さが悪いと接触面積が減り、ウェーハが脱離しやすくなると考えられる。一般的にチャックされた面は少なからずチャック痕が形成されやすく、品質が低下することからチャック面はシリコンウェーハの裏面であることが多い。したがって、搬送不良低減の観点からは特にシリコンウェーハ裏面のみ粗い方が良く、そのようなウェーハの製造方法が求められている。
【0005】
一般的なシリコンウェーハの洗浄方法として、RCA洗浄と呼ばれる方法がある。このRCA洗浄とはSC1(Standard Cleaning 1)洗浄、SC2(Standard Cleaning 2)洗浄、DHF(Diluted Hydrofluoric Acid)洗浄を、目的に応じて組み合わせて行う洗浄方法である。このSC1洗浄とは、アンモニア水と過酸化水素水を任意の割合で混合し、アルカリ性の洗浄液によるシリコンウェーハ表面のエッチングによって付着パーティクルをリフトオフさせ、さらにシリコンウェーハとパーティクルの静電気的な反発を利用して、シリコンウェーハへの再付着を抑えながらパーティクルを除去する洗浄方法である。また、SC2洗浄とは、塩酸と過酸化水素水を任意の割合で混合した洗浄液で、シリコンウェーハ表面の金属不純物を溶解除去する洗浄方法である。また、DHF洗浄とは、希フッ酸によってシリコンウェーハ表面のケミカル酸化膜を除去する洗浄方法である。さらに、強い酸化力を有するオゾン水洗浄も使用される場合があり、シリコンウェーハ表面に付着している有機物の除去やDHF洗浄後のシリコンウェーハ表面のケミカル酸化膜形成を行っている。シリコンウェーハの洗浄は、目的に応じてこれらの洗浄を組み合わせて行われている。この中でSC1洗浄はエッチングを伴う洗浄であるため、SC1洗浄後はウェーハの面粗さが悪化することが一般的に知られている。
【0006】
また、ウェーハの面粗さを評価する手法としては、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により得られるSa(3次元算出平均高さ)値やパーティクルカウンターにより得られるHaze値を指標とすることができる。Hazeとはいわゆる曇りとして表現されるものであり、シリコン表面の粗さの指標として広く用いられており、このHazeレベルが高いとはウェーハの面が粗いことを示す。
【0007】
特許文献1には水酸化アンモニウムと過酸化水素と水の組成が1:1:5~1:1:2000の範囲の希釈水溶液でシリコンウェーハを洗浄し、異なる厚さの自然酸化膜を形成させる方法が記載されている。特許文献2にはSC1洗浄において、水酸化アンモニウムから電離されたOHの濃度が高いとSiの直接エッチングが優先的に起こり、ウェーハ表面粗さが悪化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平7-66195号公報
【文献】特開2011-82372号公報
【文献】特開平7-240394号公報
【文献】特開平10-242107号公報
【文献】特開平11-121419号公報
【文献】特表2012-523706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、加工工程中の搬送不良低減のために、チャックされる面が粗いシリコンウェーハが必要とされている。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、シリコンウェーハの表裏面を粗化できる洗浄方法、シリコンウェーハの表裏面又は裏面を粗化できる洗浄方法、片側の面のみが選択的に粗化されたシリコンウェーハを得ることができるシリコンウェーハの製造方法、及び加工工程中の搬送不良を低減できるシリコンウェーハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明では、シリコンウェーハを粗化する洗浄方法であって、
前記シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン水洗浄で、酸化膜を形成し、
前記酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、
水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下の水酸化アンモニウム希釈水溶液、又は
水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下であり、過酸化水素濃度が0.2質量%以下であり且つ前記水酸化アンモニウム濃度の4倍以下である、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む希釈水溶液
のいずれかの水溶液で洗浄することで前記シリコンウェーハの表裏面を粗化することを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法を提供する。
【0012】
このようなシリコンウェーハの洗浄方法であれば、自然酸化膜のエッチング時に粗化が生じ、シリコンウェーハの表裏面を粗化することができる。
【0013】
予め、前記酸化膜の形成方法ごとに、前記水酸化アンモニウム濃度又は前記水酸化アンモニウム濃度と前記過酸化水素濃度、洗浄温度及び洗浄時間と、前記洗浄後の表面粗さとの関係を求め、
求められた関係に基づき、前記水酸化アンモニウム濃度又は前記水酸化アンモニウム濃度と前記過酸化水素濃度、洗浄温度、及び洗浄時間を選定して、洗浄を行うことが好ましい。
【0014】
本発明の洗浄方法で形成される粗化度合いは、酸化膜の形成方法、水酸化アンモニウム濃度、又は水酸化アンモニウム濃度と過酸化水素濃度、洗浄温度、及び洗浄時間に依って変化するため、予めこれらの条件と粗化度合いとの関係を求めておくことが有効である。
【0015】
また、本発明では、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄されたシリコンウェーハの片方の面に対しCMP研磨を行い、前記片方の面とは反対側の面のみが選択的に粗化されているシリコンウェーハを得ることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の洗浄方法により粗化した後、シリコンウェーハの片方の面のみ研磨することで、片方の面は良好な面状態で、該片方の面とは反対側の面のみが選択的に粗化されたウェーハを作製することができる。
【0017】
また、本発明では、シリコンウェーハであって、原子間力顕微鏡で測定される粗さ指標Sa値が0.3nm以上、5.5nm以下の粗化された面を有するものであることを特徴とするシリコンウェーハを提供する。
【0018】
このようなシリコンウェーハであれば、粗化された面がチャックによる吸着に適した粗さを示すので、加工工程中の搬送不良を低減することができる。
【0019】
また、本発明では、シリコンウェーハであって、パーティクルカウンターで測定される粗さ指標Haze値が50ppm以上、1900ppm以下の粗化された面を有するものであることを特徴とするシリコンウェーハを提供する。
【0020】
このようなシリコンウェーハであれば、粗化された面がチャックによる吸着に適した粗さを示すので、加工工程中の搬送不良を低減することができる。
【0021】
前記粗化された面とは反対側の面は鏡面であることが好ましい。
【0022】
このようなシリコンウェーハであれば、優れた品質を示すことができる。
【0023】
また、本発明では、シリコンウェーハを粗化する洗浄方法であって、
前記シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン水洗浄で、酸化膜を形成する第1洗浄工程と
前記酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、
水酸化アンモニウムを含む水溶液、又は
水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む水溶液
のいずれかの水溶液で洗浄することで前記シリコンウェーハの表裏面又は裏面を粗化する第2洗浄工程と
を含み、
前記第2洗浄工程で用いる水溶液として、SiOに対するSiのエッチング選択比が95以上であるものを用いることを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法を提供する。
【0024】
このようなシリコンウェーハの洗浄方法であれば、第1洗浄工程で形成した自然酸化膜の第2洗浄工程でのエッチング時に粗化が生じ、粗化されたウェーハの製造が可能となる。
【0025】
また、前記第2洗浄工程で用いる前記水溶液の前記SiOに対するSiのエッチング選択比を、(Siのエッチング量/SiOのエッチング量)から求め、
前記Siのエッチング量の算出用ウェーハとして、自然酸化膜がないベア面が露出したシリコンウェーハ、エピタキシャルウェーハ、又はSOIウェーハのいずれかを用い、
前記SiOのエッチング量の算出用ウェーハとして、膜厚が3nm以上のシリコン酸化膜付ウェーハを用いることが好ましい。
【0026】
このような方法であれば、SiOとSiに対するエッチング挙動を精度良く評価できる。
【0027】
また、予め、前記第1洗浄工程における前記酸化膜の形成方法ごとに、前記第2洗浄工程で粗化が進行するために必要なSiOのエッチング量を粗化エッチング量として算出しておき、
前記第2洗浄工程でのSiOのエッチング量が前記粗化エッチング量以上となるように前記第2洗浄工程の洗浄時間を選定する、及び/又は
前記第2洗浄工程前に、前記第1洗浄工程で形成された前記酸化膜の一部が残るように前記酸化膜を薄くする追加洗浄工程を追加し、該追加洗浄工程でのSiOのエッチング量と前記第2洗浄工程でのSiOのエッチング量との合計が前記粗化エッチング量以上となるように、洗浄時間を調整することが好ましい。
【0028】
本発明の粗化は、洗浄中にSiOを所定量エッチングしてSiを表面に露出させることによって行なわれるため、このような方法で予め粗化に必要なSiOエッチング量を粗化エッチング量として算出することで、より確実に粗化を進行させることができる。
【0029】
また、予め、前記第1洗浄工程における前記酸化膜の形成方法ごとに、前記SiOに対するSiのエッチング選択比及び洗浄時間と、表面粗さとの関係を求め、
求められた関係に基づき、前記SiOに対するSiのエッチング選択比、洗浄時間を選定して、第2洗浄工程を行うことが好ましい。
【0030】
本発明の洗浄方法で形成される粗化度合いは、第1洗浄工程における酸化膜の形成方法、SiOに対するSiのエッチング選択比及び洗浄時間に依って変化するため、予めこれらの条件と粗化度合いとの関係を求めておくことが有効である。
【0031】
また、本発明では、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄され、表裏面が粗化されたシリコンウェーハの片方の面に対し、CMP研磨を行い、前記片方の面とは反対面の面のみが選択的に粗化されているシリコンウェーハを得ることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法を提供する。
【0032】
このように、表裏面を粗化した後、表面側のみ研磨することで、表面は良好な面状態で裏面のみ粗化されたウェーハを作製することができる。
【0033】
また、前記CMP研磨の取り代を、前記第2洗浄工程でのSiのエッチング量以上となるように設定することができる。
【0034】
これによりCMP後にエッチング起因のLLSの残留を防ぎ、良好なLLS品質を保つことができる。
【0035】
また、前記第2洗浄工程でのSiのエッチング量を、前記CMP研磨の取り代以下となるように設定することもできる。
【0036】
これによりCMP後にエッチング起因のLLSの残留を防ぎ、良好なLLS品質を保つことができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の一態様であれば、シリコンウェーハの表裏面を粗化することができる。
【0038】
また、本発明のシリコンウェーハの製造方法であれば、片方の面は良好な面状態で、該片方の面とは反対側の面のみが選択的に粗化されたウェーハを作製することができる。
【0039】
また、本発明のシリコンウェーハは、加工工程中の搬送不良を低減することができる。
【0040】
また、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の他の一態様であれば、シリコンウェーハの表裏面又は裏面を粗化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の第一態様の一例を示すフローチャートである。
図2】ベア面およびO酸化膜面に対し、液組成NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000の3水準で洗浄した後のSEM像とHaze値とを示した図である。
図3】液組成NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000の3水準Siエッチング量を示したグラフである。
図4】液組成NHOH:H:HO=1:1:1000(45℃)における、ベア面及びO酸化膜面のSiエッチング量の違いを示した1つのグラフである。
図5】液組成NHOH:H:HO=1:1:1000(80℃)におけるO酸化膜面のSiエッチング量の違いを示した他の1つのグラフである。
図6】酸化膜形成方法、NHOH濃度、H濃度、洗浄温度、洗浄時間を変えて粗化した後のSEM像、Haze値、AFMのSa値を示した図である。
図7】NHOH濃度、H濃度、洗浄時間を変えて洗浄した場合の洗浄時間に対するHazeの変動を示したグラフである。
図8】本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の第二態様の一例を示すフローチャートである。
図9】ベア面およびO酸化膜面に対し、液組成NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000、1:0.01:10、1:0.05:100の5水準で洗浄した後のSEM像とHaze値とを示した図である。
図10】液組成NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000の3水準のSiエッチング量を示したグラフである。
図11】液組成NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000の3水準のSiOエッチング量を示したグラフである。
図12】液組成NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000の3水準のSi/SiOエッチング選択比を示したグラフである。
図13】酸化膜種及びSi/SiOエッチング選択比を変えて粗化した後のSEM像、Haze値、AFMのSa値を示した図である。
図14】Si/SiOエッチング選択比及び洗浄時間を変えて粗化した場合の洗浄時間に対するHazeの変動を示したグラフである。
図15】Siエッチング量と研磨取り代500nmでCMP研磨後のLLS品質を示したグラフである。
図16】本発明のシリコンウェーハの一例の一部を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
上述のように、加工工程中の搬送不良低減のために、チャックされる面が粗いシリコンウェーハが必要とされていた。
【0043】
本発明者らは、上記課題を達成するために、水酸化アンモニウム、過酸化水素水、水からなる洗浄液を用いたシリコンウェーハのエッチング挙動について、シリコンウェーハ表裏面の酸化膜の有無、酸化膜種類(酸化膜の形成方法)、液組成(特に水酸化アンモニウム濃度及び過酸化水素濃度)、洗浄温度、及び洗浄時間の観点から鋭意検討した。その結果、表裏面に自然酸化膜が存在したシリコンウェーハに対し、水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下の水酸化アンモニウム希釈水溶液、もしくは水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下であり、過酸化水素濃度が0.2質量%以下であり且つ水酸化アンモニウム濃度の4倍以下である、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む希釈水溶液のいずれかの水溶液で洗浄することで、酸化膜が均一にエッチングされずに、粗化されること、及びこの粗化度合いを自然酸化膜の種類(酸化膜の形成方法)、液組成(特に水酸化アンモニウム濃度及び過酸化水素濃度)、洗浄温度、及び洗浄時間を制御することで調整できることを見出し、本発明を完成させた。
【0044】
また、本発明者らは、上記課題を解決するために、水酸化アンモニウム、過酸化水素水、水からなる洗浄液を用いたエッチング挙動について、特にSiOとSiとのエッチング挙動の違いについて鋭意検討した。その結果、表面に自然酸化膜が存在したシリコンウェーハに対し、SiOに対するSiのエッチング選択比が高い洗浄液で洗浄すると、Siが露出した箇所で急激なエッチングが生じ、粗化されること、及びこの粗化挙動について前記選択比を制御することで調整できることを見出し、本発明のもう一つの態様を完成させた。
【0045】
即ち、本発明は、シリコンウェーハを粗化する洗浄方法であって、
前記シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン水洗浄で、酸化膜を形成し、
前記酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、
水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下の水酸化アンモニウム希釈水溶液、又は
水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下であり、過酸化水素濃度が0.2質量%以下であり且つ前記水酸化アンモニウム濃度の4倍以下である、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む希釈水溶液
のいずれかの水溶液で洗浄することで前記シリコンウェーハの表裏面を粗化することを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法である。
【0046】
また、本発明は、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄されたシリコンウェーハの片方の面に対しCMP研磨を行い、前記片方の面とは反対側の面のみが選択的に粗化されているシリコンウェーハを得ることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法である。
【0047】
また、本発明は、シリコンウェーハであって、原子間力顕微鏡で測定される粗さ指標Sa値が0.3nm以上、5.5nm以下の粗化された面を有するものであることを特徴とするシリコンウェーハである。
【0048】
また、本発明は、シリコンウェーハであって、パーティクルカウンターで測定される粗さ指標Haze値が50ppm以上、1900ppm以下の粗化された面を有するものであることを特徴とするシリコンウェーハである。
【0049】
また、本発明は、シリコンウェーハを粗化する洗浄方法であって、
前記シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン水洗浄で、酸化膜を形成する第1洗浄工程と
前記酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、
水酸化アンモニウムを含む水溶液、又は
水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む水溶液
のいずれかの水溶液で洗浄することで前記シリコンウェーハの表裏面又は裏面を粗化する第2洗浄工程と
を含み、
前記第2洗浄工程で用いる水溶液として、SiOに対するSiのエッチング選択比が95以上であるものを用いることを特徴とするシリコンウェーハの洗浄方法である。
【0050】
また、本発明は、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄され、表裏面が粗化されたシリコンウェーハの片方の面に対し、CMP研磨を行い、前記片方の面とは反対面の面のみが選択的に粗化されているシリコンウェーハを得ることを特徴とするシリコンウェーハの製造方法である。
【0051】
なお、特許文献1や特許文献2はウェーハ表裏面に対する面粗さの影響しか言及していない。また、特許文献3~6にも、シリコンウェーハなどの半導体基板の洗浄に関する技術が開示されているが、特許文献1~6では、洗浄前のシリコンウェーハの自然酸化膜の有無の影響や、自然酸化膜の種類、液組成、温度、時間については詳細な検討がなされていなかった。
【0052】
以下、本発明について、実施態様の幾つかの例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
(シリコンウェーハの洗浄方法及びシリコンウェーハの製造方法)
[第一態様]
まず、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の第一態様を説明する。
図1は本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の第一態様の一例を示すフローチャートである。
図1のS1のように、表裏面を粗化したいシリコンウェーハを用意する。ウェーハの導電型や口径に制限はなく、例えばDSP加工後のウェーハなどが挙げられる。
【0054】
次にS2のように、シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄、又はオゾン洗浄で、酸化膜を形成する。洗浄前のウェーハに自然酸化膜が形成されている場合は予めHF洗浄で除去した後、上述の洗浄を行うことが好ましい。本発明では酸化膜の種類、すなわち酸化膜の形成方法によって、エッチング挙動が異なり、形成される粗さが変化するためである。例えば、DSP加工後のようなベア面のウェーハに対してはHF洗浄せずにそのまま酸化膜形成を行うことができる。尚、この際の洗浄条件はSC1、SC2、オゾン水洗浄ともに一般的な条件で構わない。例えばSC1洗浄であれば、水酸化アンモニウムと過酸化水素と水の混合比がNHOH:H:HO=1:1:5~1:1:100の範囲で洗浄温度が60℃以上で洗浄時間を1分~30分とすることができる。例えばSC2洗浄であれば、HClと過酸化水素と水との混合比がHCl:H:HO=1:1:5~1:1:20で洗浄温度が60℃以上で洗浄時間を1分~30分とすることができる。例えばオゾン水洗浄であれば、オゾン濃度3ppm~25ppm、洗浄温度を室温、洗浄時間を1分~30分とすることができる。後述のように、本発明で形成される粗さはS2で形成される酸化膜種(酸化膜の形成方法)に依存し変化することから、目的の粗さに応じて、適宜洗浄液を選定すればよい。
【0055】
続いて、S3のように、水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下の水酸化アンモニウム希釈水溶液、又は水酸化アンモニウム濃度が0.051質量%以下であり、過酸化水素濃度が0.2質量%以下であり且つ前記水酸化アンモニウム濃度の4倍以下である、水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む希釈水溶液で洗浄する。この際、例えば薬液槽が連続するバッチ式洗浄機で洗浄する場合には、S2で洗浄した後にS3の洗浄を行うことにより1バッチで効率よく本発明の洗浄を行うことができる。
【0056】
ここでは本発明で形成される粗さについて、シリコンウェーハ表裏面の酸化膜の有無、酸化膜種類(酸化膜の形成方法)、液組成(水酸化アンモニウム濃度及び過酸化水素濃度)、洗浄温度、及び洗浄時間の観点から詳細に述べる。
【0057】
図2には、DSPウェーハのベア面及びO酸化膜面(S2で形成)に対し、SC1液組成をNHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000の3水準とし、80℃/10分で洗浄した後の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)の表裏面観察結果とパーティクルカウンターで得られたHaze値とを示した。尚、用いた薬液は28質量%のアンモニア水(NHOH)、30質量%の過酸化水素水(H)で、それぞれ重量(wt)%でも表記した。尚、質量%とは洗浄溶液とそれに含まれる溶質(水酸化アンモニウム、過酸化水素)の質量比を百分率で表した濃度で、wt%とも表記する。O酸化膜面に対し液組成1:1:1000で洗浄した水準のみSEM像で大きな凹凸形状が観察され、Haze値も470ppmと他の水準より大きく増加しており、粗化されていることが分かる。液組成1:1:1000で洗浄したベア面も僅かに粗化されているが、その度合いはO酸化膜面よりも小さいことが分かる。これらの結果から、表裏面に酸化膜が堆積していること、及びSC1液組成が低いことが粗化因子であることが分かる。
【0058】
図3には、SC1液組成 NHOH:H:HO=1:1:10、1:1:100、1:1:1000におけるSiのエッチング量を示した。液組成が低いほど、エッチング量が増加する傾向が見られ、これは低液組成ほどエッチング優勢な反応であることを示している。さらに液組成1:1:1000について、面状態をベア面とO酸化膜面の2水準でSiエッチング量を調査した結果を図4及び図5に示す。45℃ではベア面のみエッチングが進行し、O酸化膜面では僅かしか進行していないことが分かる。また、80℃において、80℃/3分ではO酸化膜面はエッチングの進行が小さいが6分以降に急激にエッチングが進行していることが分かる。なお、図5には図示していないが、80℃では、ベア面は、3分以降でエッチング量が55nmを超え、O酸化膜面でも12分以降でエッチング量が55nmを超えた。したがって、低液組成環境下ではSiとSiOのエッチング挙動が大きく異なり、Siはエッチングされやすく、SiOはエッチングされにくいことが分かる。図2の結果と図4及び図5とのエッチング量を併せて考えると、Siエッチング量が多いベア面ではなく、エッチング量が少ないO酸化膜面で粗化が生じていることから、この粗化は低液組成環境下での酸化膜のエッチング挙動に起因していると考えられる。尚、液組成NHOH:H:HO=1:0:1000においても液組成1:1:1000と同様の結果が得られることから、過酸化水素水を含まないアンモニア希釈水溶液でも粗化可能である。
【0059】
続いて、図6には、自然酸化膜の種類(酸化膜の形成方法)、液組成(水酸化アンモニウム濃度及び過酸化水素濃度)、洗浄温度、及び洗浄時間の影響を調査した結果を示した。SEM画像から、酸化膜がO酸化膜であるウェーハを液組成1:2:1000で80℃/4分の条件で洗浄した水準以外の水準では、酸化膜の種類、SC1液組成、洗浄温度、及び洗浄時間によって様々な粗さが形成されていることが分かる。さらにAFMから得られるSa値も0.31~5.5nmまで幅広く変化しており、同様にHaze値も104~1871ppmまで変化している。つまり、予め、酸化膜の形成方法、水酸化アンモニウム濃度、又は水酸化アンモニウム濃度と過酸化水素濃度、洗浄温度、及び洗浄時間に対する洗浄後の粗さを評価し、これらの条件と洗浄後の粗さとの関係を求めておくことで、目的の粗さに応じて洗浄条件を決定することができる。
【0060】
より詳細に温度を80℃に固定し、液組成について調査したところ、図7に示すように、液組成1:1:500、1:1:1000、及び1:3:1000ではHaze値が大きくなったが、液組成1:5:1000の洗浄液では、洗浄時間15分でもHaze値は大きくならず、シリコンウェーハは粗化されなかった。したがって、過酸化水素はエッチングの進行を阻害する効果があり、液組成1:3:1000の重量濃度はNHOHで0.025質量%、Hで0.099質量%であることから、H重量濃度はNHOH重量濃度の4倍以下にする必要がある。本発明の洗浄方法は水酸化アンモニウムによるエッチング作用と過酸化水素水に酸化作用に起因するため、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法は、このような場合に有効である。また、液組成1:1:500のNHOH重量濃度は0.051質量%であることから、NHOHは0.051質量%以下にする必要があり、この範囲内で液組成を変更することが可能となる。
【0061】
次に、酸化膜種(酸化膜形成方法)についても調査を行った。抵抗加熱炉を用いてドライ酸素雰囲気で厚さ5nmの熱酸化膜を作製し、液組成1:1:1000を用い80℃/10分の条件で洗浄したが、Haze値は大きくならず、SEM像からも粗化されている像は見られなかった。この結果から、実際の操業可能な時間内に粗化するには、SC1やSC2、又はオゾン水洗浄で形成される酸化膜が最適であると考えられる。
【0062】
一般的に洗浄で形成される酸化膜厚さは約1nm程度であること、シリコン酸化膜とシリコンとの界面には構造遷移層と呼ばれる不均一で不安的な層が存在すること、酸化膜厚さ5nmの熱酸化膜で粗化が生じないことを併せると、酸化膜のエッチング時に生じる粗化はシリコン酸化膜とシリコンとの界面の構造遷移層近傍から生じると考えられる。厚さ5nmの熱酸化膜の場合は洗浄時間10分では構造遷移層近傍まで酸化膜のエッチングが進行しなかったため、粗化が生じなかったと考えられ、SC1やオゾン洗浄においても僅かに構造遷移層の膜厚や膜質が変化したため、その結果、自然酸化膜種によって粗さが変化したと考えられる。
【0063】
したがって、前述のように、予め酸化膜種(酸化膜形成方法)ごとに、水酸化アンモニウム濃度又は前記水酸化アンモニウム濃度と過酸化水素濃度、洗浄温度及び洗浄時間と、洗浄後の表面粗さとの関係を求め、求められた関係に基づき、水酸化アンモニウム濃度又は水酸化アンモニウム濃度と過酸化水素濃度、洗浄温度、及び洗浄時間を選定して、洗浄を行うことがより好ましい。本発明者らが鋭意調査したところ、図6及び図7のように、例えば、AFMの粗さ指標Sa値は0.3~5.5nmまで、パーティクルカウンターのHazeは50~1871ppmまで幅広く粗さを変化させることが出来る。
【0064】
最後に、一般的にデバイス作製面となるシリコンウェーハ表面側の粗さは良好な方が好ましい場合が多い。例えば本発明の洗浄方法をバッチ式の洗浄機で行うと表裏面共に粗化されてしまうため、その後CMP研磨のような片面研磨を片方の面に対して行い、該片方の面とは反対側の面のみが選択的に粗化されたウェーハを製造することができる。このようなウェーハであれば、ウェット環境下でもチャック不良を引き起こさず、安定した製造が可能となる。
【0065】
[第二態様]
次に、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の第二態様を説明する。
図8は、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の第二態様の一例を示すフローチャートである。
【0066】
初めに、裏面を粗化したいシリコンウェーハを用意する。ウェーハの導電型や口径に制限はなく、例えばDSP加工後のウェーハなどが挙げられる。
【0067】
次に、SA1のように、シリコンウェーハに、SC1洗浄、SC2洗浄又はオゾン洗浄で酸化膜を形成する(第1洗浄工程)。洗浄前のウェーハに自然酸化膜が形成されている場合は、予めHF洗浄で除去した後、上述の第1洗浄工程を行うことが好ましい。本発明では、酸化膜の種類、すなわち第1洗浄工程における酸化膜の形成方法によって、エッチング挙動が異なり、形成される粗さが変化するためである。例えば、DSP加工後のようなベア面のウェーハに対してはHF洗浄せずにそのまま酸化膜形成を行うことができる。尚、この際の洗浄条件はSC1、SC2、オゾン水洗浄ともに一般的な条件で構わない。この一般的条件は、例えば、第一態様で説明した条件とすることができる。
【0068】
図8に示すSA3は、第1洗浄工程SA1の後であって、以下に説明する第2洗浄工程SA2の前に行なうことができる任意工程である。工程SA3については、後段で説明する。
【0069】
続いて、SA2のように、酸化膜が形成されたシリコンウェーハを、SiOに対するSiのエッチング選択比(Si/SiOエッチング選択比)が95以上である、水酸化アンモニウムを含む水溶液又は水酸化アンモニウムと過酸化水素水とを含む水溶液のいずれかの水溶液で洗浄する(第2洗浄工程)。
【0070】
ここでは、本発明の粗化現象について、Si及びSiOのエッチング挙動の観点から詳細に述べる。尚、Si及びSiOのエッチング量の算出方法の詳細は後述する。
【0071】
図9には、DSPウェーハのベア面及びO酸化膜面(第1洗浄工程SA1で形成)に対し、SC1組成(液組成NHOH:H:HO)、洗浄温度及び洗浄時間を変えて洗浄した後のSEM(走査型電子顕微鏡)の表面観察結果とパーティクルカウンターで得られたHaze値とを示した。
【0072】
用いた薬液は28質量%のアンモニア水(NHOH)、30質量%の過酸化水素水(H)で、それぞれ質量(wt)%でも表記した。尚、質量%とは洗浄溶液とそれに含まれる溶質(水酸化アンモニウム、過酸化水素)の質量比を百分率で表した濃度で、wt%とも表記する。また、図9には、後述する算出方法で求めたSiOに対するSiのエッチング選択比も表記した。
【0073】
酸化膜面に対し前記選択比が非常に高い液組成1:1:1000、1:0.01:10、1:0.05:100の水溶液で洗浄した水準のみSEM像で大きな凹凸形状が観察され、Haze値も275~470ppmと他の水準より大きく増加しており、粗化されていることが分かる。前記選択比が非常に高い液組成1:1:1000、1:0.01:10、1:0.05:100の水溶液を用いて洗浄することにより、ベア面も僅かに粗化されているが、その度合いはO酸化膜面よりも小さく、表面に酸化膜が堆積していること、及び第2洗浄工程SA2で用いる洗浄液のSi/SiOエッチング選択比が高いことが粗化因子と分かる。これは、第2洗浄工程SA2中に、第1洗浄工程SA1で形成された酸化膜がエッチングされ、局所的にSiが露出した箇所で急激なSiのエッチングが生じることに起因し、そのため粗化を進行させるにはSi/SiOエッチング選択比が高い、具体的には95以上である洗浄液で洗浄する必要がある。
【0074】
続いて、本発明において指標となるSi/SiOエッチング選択比の算出方法について詳細に述べる。
【0075】
第2洗浄工程SA2で用いる水溶液のSiOに対するSiのエッチング選択比は、(Siのエッチング量/SiOのエッチング量)から求めることができる。
【0076】
Siのエッチング量は、自然酸化膜が存在しない、すなわち自然酸化膜がないベア面が露出したシリコンウェーハ、エピタキシャルウェーハ、又はSOI(Silicon on Insulator)ウェーハのいずれかを用意し、用意したウェーハを任意の液組成の水溶液(Si/SiOエッチング選択比を算出しようとする水溶液)で洗浄した後、洗浄前後の膜厚差を測定し、これをエッチング量とすることができる。
【0077】
例えば自然酸化膜の除去にはHF洗浄等が挙げられる。ウェーハに自然酸化膜が存在していると、自然酸化膜がエッチングされるまでSiのエッチングが生じず、Siのエッチング量を精度良く評価できない。また、自然酸化膜が存在することで上述した粗化現象が進行し、ウェーハ表面が粗化されることで、測定値に影響を与える可能性があるため、Siのエッチング量の算出用ウェーハは、自然酸化膜が存在しないウェーハである必要がある。
【0078】
用いるウェーハの選定はエッチング量から適宜に選定すればよい。一般的にシリコンウェーハの厚さは約775μmであることから、少なくともエッチング量が1μm以上であればその厚み変化量を捉えることができる。例えば一般的な平坦度測定機などで測定されるウェーハ厚みを指標とし、洗浄前後のウェーハ厚みをエッチング量とすることができる。尚、測定機はウェーハの厚みが測定できれば特に限定されない。例えばエッチング量が数十nmでは厚みの変化量が非常に少なくその変化量を捉えることは難しくウェーハ厚みを指標とすることは好ましくない。
【0079】
エッチング量が数十nmから数百nmの場合はエピ厚みが数μmのエピタキシャルウェーハもしくはSi/SiO/Si構造の表面側のSi層厚みが数十nmから数百nmであるSOIウェーハを用いればよく、適宜必要なエッチング量に合わせて選定すればよい。膜厚測定に関しては、例えば、エピタキシャルウェーハの場合はエピ層とサブ層で抵抗率が異なることを利用し、拡がり抵抗測定で洗浄後のエピ厚さを測定することで、膜厚差を算出することができる。SOIウェーハの膜厚測定では、例えば、分光エリプソメトリーを用いることができ、例えばエッチング量が数nnの場合にSi層が100nm以下のSOIウェーハを用いれば、精度よく評価することができる。尚、エピタキシャルウェーハ、SOIウェーハともにエピ層、Si層厚さが評価できれば特に評価方法は限定されない。
【0080】
続いて、SiOのエッチング量の算出用ウェーハとしては、3nm以上のシリコン酸化膜が存在するウェーハを用意することが望ましい。
【0081】
一般的に自然酸化膜が存在するシリコンウェーハに対し、酸化膜のエッチングとシリコンの酸化反応が競合するSC1洗浄を行うと、シリコン酸化膜がエッチングされ薄くなると、酸化種がシリコン酸化膜を拡散しやすくなりシリコンの酸化反応が進行するため、洗浄時間に依らず自然酸化膜厚さは一定の値となる。この場合、洗浄前後の膜厚差を算出してもシリコンの酸化反応により形成されたシリコン酸化膜が存在することでSiOのエッチング量を正確に求めることはできない。さらに通常の自然酸化膜厚さは約1nmであり、この1nmの変化を精度良く測定することも困難である。
【0082】
そこで、例えば熱酸化で3nm以上のシリコン酸化膜を用意し、洗浄前後の酸化膜厚さを測定することで、精度よくSiOのエッチング量を算出することができる。3nm以上の膜厚があれば、酸化種が酸化膜中を拡散できず、シリコンの酸化も生じない。したがって、SiOのエッチングのみが進行するため、精度よくSiOのエッチング量を算出することができる。さらに膜厚も精度よく測定できる。
【0083】
シリコン酸化膜の膜厚はエッチング量から適宜選定すればよく、用意したシリコン酸化膜付ウェーハを、Si/SiOエッチング選択比を算出しようとする水溶液で洗浄し、洗浄前後の膜厚差を算出すればよく、例えば測定手法としては分光エリプソメトリーなどが挙げられる。
【0084】
このようにして、同じ液組成、洗浄温度でSiのエッチング量とSiOのエッチング量とを求めた後、(Siのエッチング量/SiOのエッチング量)からSiOに対するSiのエッチング選択比を算出すればよい。尚、単位時間当たりのエッチングレートを算出し、(Siのエッチングレート/SiOのエッチングレート)からSiOに対するSiのエッチング選択比を算出しても構わない。
【0085】
この指標が一定値以上だと、SiOがエッチングされSiが露出した箇所でSiのみを優先的にエッチングするため、粗化が進行する。尚、SiとSiOのエッチング挙動は洗浄温度に依存し変化することから、組成、洗浄温度別にSi/SiO選択比を求めておくことで、様々な条件で確実に粗化を進行させることができる。本発明者らが調査したところ、前記選択比が95の洗浄液(例えば液組成1:1:1000、洗浄条件45℃)で粗化が進行したことから、Si/SiOエッチング選択比が95以上である必要がある。
【0086】
図10図12には、洗浄時間を3分とし、液組成3水準、洗浄温度3水準で洗浄した際の、Si、SiOの各エッチング量と、算出したSi/SiOエッチング選択比とを示す。図10図12から、Siエッチング量は液組成1:1:1000の水溶液が最も多く、SiOエッチング量は逆に液組成1:1:1000の水溶液が少なく、この結果を反映し、液組成1:1:1000の水溶液でSi/SiOエッチング選択比が高くなっていることが分かる。
【0087】
続いて、粗化を進行させるために必要なSiOエッチング量について詳細を述べる。上述のように、本発明の粗化は、洗浄中に自然酸化膜がエッチングされ、Siが露出した箇所で急激なSiのエッチングが生じることで進行する。言い換えれば、選択比が95以上の洗浄液で洗浄した場合に、Siが露出するのに必要な量のSiOをエッチングすることで、粗化を促進することができる。そこで、第1の洗浄工程SA1における前記酸化膜形成方法ごとに、第2洗浄工程SA2での粗化に必要なSiOのエッチング量を粗化エッチング量として求めておき、第2洗浄工程SA2でのSiOのエッチング量が上記粗化エッチング量以上となるように第2洗浄工程SA2の洗浄時間を選定しておくことで、より確実に粗化することができ、第2洗浄工程SA2の洗浄条件の選定も容易となる。
【0088】
酸化膜のエッチング挙動は酸化膜質に依存し、緻密な膜構造ほどエッチングされにくいことが知られている。第1洗浄工程SA1においてSC1洗浄又はオゾン洗浄で形成した酸化膜に対し、Si/SiOエッチング選択比が高い(95以上)洗浄液で洗浄した結果を、以下の表1に示した。
【0089】
【表1】
【0090】
1槽目の第1洗浄工程SA1においてSC1洗浄で酸化膜を形成した場合(水準1,2)では、2槽目の第2の洗浄工程SA2においてSiOのエッチング量が0.14nm以上で粗化が進行したが、1槽目の第1洗浄工程SA1においてオゾン洗浄で酸化膜を形成した場合(水準3~8)では、2槽目の第2洗浄工程SA2においてSiOのエッチング量が0.2nm以上で粗化が進行した。このように、第1洗浄工程SA1における前記酸化膜形成方法ごとに、粗化に必要なSiOエッチング量を粗化エッチング量として算出しておくことで、確実に粗化を進行させることができる。尚、通常、自然酸化膜厚は1nmと知られており、指標となるエッチング量が1nmより小さいのは本発明ではSiOのエッチング量を非常に緻密でエッチングされにくい熱酸化膜を用いているためである。熱酸化膜のエッチング量を指標とすることで、第1洗浄工程SA1における前記酸化膜形成方法ごとに酸化膜種が異なる場合でも、粗化に必要なエッチング量を粗化エッチング量として予め把握することで、酸化膜種ごとにエッチング量を算出する必要がなく、迅速に洗浄条件を選定することができる。
【0091】
また、この態様の洗浄方法では、図8に示すように、第2洗浄工程SA2の洗浄工程前に、第1洗浄工程SA1で形成された前記酸化膜の一部が残るように前記酸化膜の薄くする追加洗浄工程SA3を追加し、該追加洗浄工程のSiOのエッチング量と前記第2洗浄工程のSiOのエッチング量の合計が上記粗化エッチング量以上となるように洗浄時間を調整することもできる。
【0092】
以下の表2に、1槽目の第1洗浄工程SA1での酸化膜形成、2槽目で酸化膜を薄くする追加洗浄工程SA3を行い、3槽目の第2洗浄工程SA2でSi/SiOエッチング選択比が95の洗浄液で洗浄したウェーハのHaze値と粗化度合いを判定した結果を示す。
【0093】
【表2】
【0094】
水準2、4及び5では、第1槽目の第1洗浄工程SA1後、第2槽目の追加洗浄工程SA3としてSC1による洗浄を行い、次いで第3槽目の第2洗浄工程SA2を行なった。一方、水準1及び3では、追加洗浄工程SA3を行わなかった。
【0095】
第1洗浄工程SA1でのSC1洗浄で形成した酸化膜に対し、Si/SiOエッチング選択比が95の洗浄液(液組成1:1:1000、45℃)で3分洗浄してもSiOのエッチング量が0.12nmで粗化進行の指標となる0.14nm以下であるために粗化が進行しなかった(水準1)。一方、第2洗浄工程SA2前に追加洗浄工程SA3において液組成1:0:100の水酸化アンモニウムを含む水溶液で1分追加洗浄した後、水準1と同じ洗浄を行ったところ、粗化が進行していた。この追加洗浄工程でのエッチング量は0.06nmであることから、SiOの総エッチング量は0.06nm+0.12nm=0.18nmとなり、指標の0.14nm以上となったため粗化が進行したと考えられる。水準3~5のオゾン酸化膜についても指標0.2nm以上となる水準5のみで粗化が進行していた。このように、第2洗浄工程SA2前に粗化を進行しやすくさせる追加洗浄工程SA3を追加させることもできる。
【0096】
このように、第2洗浄工程SA2での洗浄温度、洗浄時間、液組成でSiOのエッチング量を調整しても良いし、追加洗浄工程SA3でSiOのエッチング量を調整しても構わない。尚、追加洗浄工程SA3の薬液としては、シリコン酸化膜を薄くする洗浄液であれば特に制限はなく、例えば水酸化アンモニウムを含む水溶液やフッ酸などが挙げられる。
【0097】
続いて、自然酸化膜の形成方法(自然酸化膜の種類)、Si/SiOエッチング選択比の影響を調査した結果を図13に示した。SEM画像を比較すると、自然酸化膜の種類、Si/SiOエッチング選択比、洗浄時間によって様々な粗さが形成されていることが分かる。KLA社製パーティクルカウンターSP3でのHaze値は88~1871ppmの範囲で、AFMから得られるSa値は0.31~5.5nmまで変化している。つまり、予め、第1洗浄工程における酸化膜の形成方法(酸化膜の種類)、Si/SiOエッチング選択比に対する第2洗浄工程後の粗化(表面粗さ)を評価し、これらの条件と第2洗浄工程後の表面粗さとの関係を求めておくことで、目的の粗さに応じて洗浄条件を決定することができる。例えば、第1洗浄工程SA1における酸化膜の形成方法ごとに、SiOに対するSiのエッチング選択比及び洗浄時間と、表面粗さとの関係を求め、求められた関係に基づき、SiOに対するSiのエッチング選択比、洗浄時間を選定して、第2洗浄工程を行うことが好ましい。尚、Haze値とSa値の大小関係が一致しないのは、両者の検出方法に起因するためであり、適宜必要な指標を使い分ければよい。洗浄時間の影響については図14に示したように、Si/SiOエッチング選択比が異なる2水準において、洗浄時間に依存しHaze値が大きく変化していることから、洗浄時間を調整し目的の粗さを形成することも容易である。このように本発明の粗化方法は第1洗浄工程で形成する酸化膜の種類(第1洗浄工程における酸化膜の形成方法)、Si/SiOエッチング選択比、洗浄時間で柔軟に形成される粗さを変化させることができ、有用である。
【0098】
続いて、本発明の洗浄を実施する際の洗浄方式について述べる。現在、ウェーハの洗浄方式は大半が薬液や純水などの液体を使用するものでウェット洗浄と呼ばれる。その中で主な方式としては一度に多くのウェーハをまとめて洗浄するバッチ方式とウェーハを1枚ずつ処理する枚葉方式に分かれる。バッチ方式は装置構成上ウェーハの表面及び裏面の両方が薬液に浸漬するため、本発明の洗浄を行うと表裏面が粗化される。対して、枚葉方式はウェーハを回転させながら、薬液をスプレーするため、ウェーハの片面のみを洗浄することができる。本発明者らが調査したところ、本発明では、SiOのエッチング量が所定値以上で、Si/SiOエッチング選択比が95以上の水溶液を用いて第2洗浄工程を行えば、バッチ方式及び枚葉方式どちらの方式でも粗化することができる。ウェーハの製造工程を考慮し、適宜方式を選定することができることが分かった。
【0099】
上述のように裏面のみが粗いウェーハを作製するには、枚葉方式の場合は裏面のみを洗浄すればよく、バッチ方式の場合は表裏面両方ともが粗化されてしまうため、後述する研磨工程により表面側の品質を良好にすることが望ましい。
【0100】
例えば、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法をバッチ式の洗浄機で行ってシリコンウェーハの表裏面共に粗化し、その後CMP研磨のような片面研磨を片方の面(すなわち表面)に対して行うことで、該片方の面とは反対側の面(すなわち裏面)のみが選択的に粗化されたウェーハを製造することができる。
【0101】
そこで、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法の後に行なうことができる研磨工程について詳細に述べる。Si/SiOエッチング選択比が95以上の洗浄液で粗化したウェーハに対し、研磨取り代500nm狙いでCMP研磨を行い、KLA製のパーティクルカウンターSP5により19nmUPで19nmよりも大きなLLS数を評価したところ、図15のように、Siのエッチング量が多い水準でLLS数が増加していた。これはエッチング量が多く研磨でエッチング起因の欠陥を除去できなかったためである。対して、Siのエッチング量が少ない水準では非常にLLS数が少なく良好であった。したがって、Siのエッチング量を指標とすることでCMP後のLLS品質を推定することができる。また、LLS数が増加した水準についてもCMPの取り代を増やすことでLLS品質を良好にすることができ、Siエッチング量からCMP研磨取り代を選定することが好ましい。上述のように粗化はSiOがエッチングされ、Siが露出してから生じるため、例えば第2洗浄工程SA2の洗浄時間を3分とした場合に粗化の進行開始時間を2分と見積もった場合には、洗浄時間1分相当のSiエッチング量以上となるように取り代を調整することもできる。これにより必要最低限の取り代とすることもできる。また、製造のスループットの観点から研磨取り代を小さくしたい場合には、Siエッチング量が少ない条件で第2洗浄工程SA2を行うこともでき、エッチング量を制御するか、研磨取り代を制御するかは適宜選定することができる。このような条件で研磨することで、バッチ方式で表裏面を粗化した場合でも、表面LLS品質が良好で裏面のみが選択的に粗化されたウェーハを製造することができる。このようなウェーハであれば、ウェット環境下でもチャック不良を引き起こさず、安定した製造が可能となる。
【0102】
(シリコンウェーハ)
図16は、本発明のシリコンウェーハの一例の一部を示す概略側面図である。
【0103】
図16に示すシリコンウェーハ1は、粗化された面2を有する。粗化された面2の原子間力顕微鏡で測定される粗さ指標Sa値は、0.3nm以上、5.5nm以下である。また、粗化された面2のパーティクルカウンターで測定される粗さ指標Haze値は、50ppm以上、1900ppm以下である。
【0104】
このようなシリコンウェーハ1であれば、粗化された面2がチャックによる吸着に適した粗さを示すので、加工工程中の搬送不良を低減することができる。
【0105】
このような粗化された面2を有するシリコンウェーハ1は、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法でシリコンウェーハの表裏面を粗化することによって得ることができる。
【0106】
図16に示すシリコンウェーハ1は、粗化された面2の反対側の面として、鏡面3を有する。このような鏡面3は、本発明のシリコンウェーハの洗浄方法により洗浄されたシリコンウェーハの片面に対してCMP研磨のような片面研磨を行うことで得ることができる。
【0107】
図16に示すシリコンウェーハ1は、粗化された面2に加え鏡面3を有するので、優れた品質を示すことができる。
【実施例
【0108】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0109】
(実施例1~8)
DSP加工後のベア面のシリコンウェーハを用意し、バッチ式洗浄機にて以下の洗浄を行った。SC1洗浄の薬液は28質量%のアンモニア水(NHOH)、30質量%の過酸化水素水(H)を用いた。1槽目は酸化膜形成を目的にオゾン水洗浄(25ppm、25℃/3分)、もしくはSC1洗浄(NHOH:H:HO=1:1:10、60℃/3分)とし、2槽目は粗化形成を目的に液組成、温度及び時間を振ったSC1洗浄を行った。より具体的な条件は表3に示した。その後、KLA社製パーティクルカウンター SP3にて、Haze評価を行った。粗化しないウェーハのHaze値が20~30ppmであったため、Haze値50ppm以上のウェーハを粗化されたと判定した。結果を以下の表3に示す。なお、請求項1に記載したように、本発明は、シリコンウェーハを粗化するものであるため、最終的に粗化が達成されたものが本来の実施例であるが、参考のために、最終的に粗化に至らなかった水準についても以下の表3の実施例の欄に参考として示している。
【0110】
(比較例1)
液組成NHOH:H:HO=1:5:1000で2槽目でのSC1洗浄を行ったこと以外は実施例2と同様にして、ウェーハの洗浄を行った。結果を以下の表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
オゾン(O)酸化膜面に対し、液組成NHOH:H:HO=1:1:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.033質量%)もしくは液組成NHOH:H:HO=1:1:500(NHOH濃度:0.051質量%;H濃度:0.066質量%)で洗浄した水準(実施例1~3)をみると、液組成1:1:1000では洗浄温度が70℃の場合(実施例1)は4分から、洗浄温度が80℃の場合(実施例2)は3分からHaze値が上昇し、粗化進行していた。80℃の方が酸化膜のエッチングが早く進行したため80℃の方が粗化しやすかったと考えられる。液組成1:1:500、洗浄温度80℃の場合(実施例3)では4分からHaze値が上昇し粗化が進行していた。
【0113】
続いて、オゾン(O)酸化膜面に対し、洗浄温度を80℃とし、液組成NHOH:H:HO=1:2:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.066質量%)、液組成NHOH:H:HO=1:3:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.099質量%)、液組成NHOH:H:HO=1:5:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.165質量%)で洗浄した水準(実施例4及び5、並びに比較例1)を見ると、液組成1:2:1000(実施例4)と1:3:1000(実施例5)では10分のみHaze値の上昇が見られ、3分及び5分では粗化が起きなかった。液組成1:5:1000(比較例1)では10分後もHaze値の上昇は見られず、粗化は起きなかった。これは過酸化水素のみ増やしたことで、エッチングが抑制されたためと考えられる。
【0114】
次にSC1洗浄で形成されたSC1酸化膜面に対し、液組成NHOH:H:HO=1:2:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.066質量%)、液組成NHOH:H:HO=1:3:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.099質量%)、又は液組成NHOH:H:HO=1:1:500(NHOH濃度:0.051質量%、H濃度:0.066質量%)で洗浄した水準(実施例6~8)では、液組成1:2:1000(実施例6)と1:1:500(実施例8)では洗浄時間1.5分で粗化が進行しており、オゾン(O)酸化膜面より粗化が進行しやすかった。これは、オゾン(O)酸化膜とSC1酸化膜との膜厚や膜質が異なるためと考えられる。このように酸化膜種(酸化膜形成方法)ごとに、水酸化アンモニウム濃度、過酸化水素濃度、洗浄温度及び洗浄時間と表面粗さとの関係を求めておけば、この関係に基づいて洗浄条件を選定し洗浄することで、狙い粗さのウェーハを製造することができる。実施例7でも、洗浄時間6分で、ウェーハの表裏面が粗化されていることが確認できた。
【0115】
実施例6の2槽目洗浄時間1.5分の水準で洗浄したシリコンウェーハの片側の面に対しCMP加工を行った後、CMP研磨機にてチャックテストを行った。水中保管したウェーハのCMP加工を行った側とは反対側の粗化された面(裏面)側をチャックし研磨機のステージにウェーハをアンチャックさせる搬送するテストを繰り返し200回行ったところ、200回とも不良なく搬送することができた。
【0116】
(比較例2~6)
実施例と同等のDSP加工後のベア面のシリコンウェーハを用意し、バッチ式洗浄機にて以下の洗浄を行った。1槽目は、オゾン水洗浄による酸化膜形成(比較例2及び3)、もしくは洗浄を行わずベア面のまま(比較例4~6)とした。2槽目は、液組成NHOH:H:HO=1:1:10(NHOH濃度:2.12質量%、H濃度:2.77質量%)、又はNHOH:H:HO=1:1:100(NHOH濃度:0.25質量%、H濃度:0.33質量%)とし、ベア面のみ、これらの他に、液組成NHOH:H:HO=1:1:1000(NHOH濃度:0.025質量%、H濃度:0.033質量%)での洗浄も行った。比較例2~6の洗浄条件及び結果を、以下の表4に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
比較例2~6の全てでHaze値 50ppmを超える水準はなかった。比較例6の2槽目洗浄時間10分では、42ppmと僅かにHaze値の上昇は見られたが、50ppmを超えていないため粗化されていないと判断した。
【0119】
比較例2の2槽目洗浄時間10分の水準で洗浄したシリコンウェーハの片側の面に対し、CMP加工を行った後、CMP研磨機にて実施例と同様のチャックテストを200回行った。その結果、200回中4回でウェーハがチャックから脱離しない不良が発生した。
【0120】
(実施例A1~A12、A19~A33)
DSP研磨加工後のベア面のウェーハを用意し、バッチ式洗浄機にて以下の洗浄を行った。SC1洗浄の薬液は28質量%のアンモニア水(NHOH)、30質量%の過酸化水素水(H)を用いた。1槽目は第1洗浄工程として酸化膜形成を目的にオゾン水洗浄(25ppm、25℃/3分)、もしくはSC1洗浄(NHOH:H:HO=1:1:10、45℃/3分)とし、2槽目は第2洗浄工程として、粗化形成を目的に、以下の表5及び表6に示すように組成、温度、時間を振ったSC1洗浄を行った。その後、KLA社製パーティクルカウンター SP3にてHaze評価を行った。また、同時に、2槽目で用いたそれぞれの水溶液について、先に説明した方法で洗浄前後の膜厚差からSiのエッチング量とSiOのエッチング量とを算出し、Si/SiOエッチング選択比を算出した。尚、Siのエッチング量の算出はHF洗浄後の自然酸化膜がないベア面が露出したシリコンウェーハで行い、平坦度測定機でウェーハ洗浄前後のウェーハ厚みからSiのエッチング量を求めた。SiOのエッチング量の算出は熱酸化で形成した5nm酸化膜付ウェーハで行い、J.A.Woolam社製 分光エリプソメトリー M-2000Vで洗浄前後の酸化膜厚さからSiOのエッチング量を求めた。
【0121】
粗化前のウェーハのHaze値が20ppm程度であったことから、実施例A1~A12、A19~A33は全て粗化されたと判定した。
【0122】
(実施例A13~A18、及びA34)
DSP研磨加工後のベア面のウェーハを用意し、バッチ式洗浄機にて以下の洗浄を行った。SC1洗浄の薬液は28質量%のアンモニア水(NHOH)、30質量%の過酸化水素水(H)を用いた。1槽目は第1洗浄工程として酸化膜形成を目的にオゾン水洗浄(25ppm、25℃/3分)、もしくはSC1洗浄(NHOH:H:HO=1:1:10、45℃/3分)とし、2槽目は酸化膜を薄くするための追加洗浄工程として、組成1:0:100のアンモニア水もしくは0.05wt%のHFで、ベア面が露出しないように、1槽目で形成した酸化膜の一部の除去を行い、3槽目は第2洗浄工程として粗化形成を目的に、以下の表5及び表6に示すように組成、温度、時間を振ったSC1洗浄を行った。また、同時に、3槽目で用いたそれぞれの水溶液について、先に説明した方法で洗浄前後の膜厚差からSiのエッチング量とSiOのエッチング量を算出し、Si/SiOエッチング選択比を算出した。尚、2槽目の追加洗浄工程では事前に5nm酸化膜付ウェーハを用いて、SiOのエッチング量を算出し、1槽目の酸化膜種がオゾン酸化膜の場合は2槽目及び3槽目でのトータルのSiOのエッチング量が0.2nm以上となるように、1槽目の酸化膜種がSC1酸化膜の場合は2槽目及び3槽目のトータルのSiOのエッチング量が1.4nm以上となるように、洗浄条件を調整した。洗浄後のSP3のHaze値から、全て粗化されたと判定した。
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
次に、実施例A19のSiエッチング量が820nm、実施例A22のSiエッチング量が230nmであったことから、実施例A19のシリコンウェーハの表面に対し、研磨取り代1000nmのCMP研磨加工を行い、実施例A22のシリコンウェーハに対し、研磨取り代500nmのCMP研磨加工を行った。CMP加工後の各ウェーハのKLA社製SP5/19nmUpにてLLSを評価したところ、それぞれ12pcs、19pcsとなり良好なLLS品質となった。その後、水中保管したウェーハの裏面側をチャックし研磨機のステージにウェーハをアンチャックさせる搬送するテストを繰り返し200回行ったところ、200回とも不良なく搬送することができた。
【0126】
(比較例A1~A13)
DSP研磨加工後のベア面のウェーハを用意し、バッチ式洗浄機にて以下の洗浄を行った。SC1洗浄の薬液は28質量%のアンモニア水(NHOH)、30質量%の過酸化水素水(H)を用いた。1槽目は第1洗浄工程として酸化膜形成を目的にオゾン水洗浄(25ppm、25℃/3分)とし、2槽目は第2洗浄工程として、粗化形成を目的に、以下の表7に示すように、組成、温度、時間を振ったSC1洗浄を行った。その後、KLA社製パーティクルカウンター SP3にてHaze評価を行った。また、同時に、2槽目で用いたそれぞれの水溶液について、先に説明した方法で洗浄前後の膜厚差からSiエッチング量とSiOエッチング量を算出し、Si/SiO選択比を算出した。尚、Siのエッチング量の算出はHF洗浄後の自然酸化膜がないベア面が露出したシリコンウェーハで行い、平坦度測定機でウェーハ洗浄前後のウェーハ厚みからSiのエッチング量を求めた。SiOのエッチング量の算出は熱酸化で形成した5nm酸化膜付ウェーハで行い、分光エリプソメトリーで洗浄前後の酸化膜厚さからSiOのエッチング量を求めた。
【0127】
表7に示すように、比較例A1~A13では、SP3のHaze値は全て20ppm前後で、粗化していないウェーハと同等となり、粗化されていないと判断した。
【0128】
【表7】
【0129】
比較例A1の水準に対し、研磨取り代500nmのCMP研磨加工を行った後、CMP研磨機にて実施例A19と同様のチャックテストを200回行った。200回中4回でウェーハがチャックから脱離しない不良が発生した。
【0130】
以上の結果から、本発明の実施例A1~34では、第2洗浄工程においてSiOに対するSiのエッチング選択比が95以上であるものを用いることにより、シリコンウェーハの表裏面、特に裏面を、チャックによる吸着に適した粗さを示すのに十分に粗化することができたことが分かる。
【0131】
一方、比較例A1~13では、第2洗浄工程においてSiOに対するSiのエッチング選択比が95以上であるものを用いなかったため、シリコンウェーハの表裏面、特に裏面を、チャックによる吸着に適した粗さを示すのに十分に粗化することができなかった。
【0132】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0133】
1…シリコンウェーハ、 2…粗化された面、 3…鏡面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16