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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】親水性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/34 20060101AFI20241106BHJP
   C08F 220/60 20060101ALI20241106BHJP
   C08F 230/08 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20241106BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20241106BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20241106BHJP
   C07F 7/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20241106BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08F220/34
C08F220/60
C08F230/08
C08K5/29
C08K5/544
C08K5/541
C08F8/42
C07F7/18 U
C07F7/04 N
C08L33/14
C09D133/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021135479
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023030386
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 一憲
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031247(JP,A)
【文献】特開2001-354829(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0111771(KR,A)
【文献】特開平06-001680(JP,A)
【文献】特開2002-060737(JP,A)
【文献】国際公開第2018/097012(WO,A1)
【文献】特開2019-026825(JP,A)
【文献】特開2019-123798(JP,A)
【文献】特開2020-007553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F、C08L33
C09D33
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位(a)と、下記式(2)で表される構成単位(b)とを含み、構成単位(a)の含有率が5~60質量%であり、かつ、構成単位(a)と構成単位(b)の合計含有率が30質量%以上である親水性共重合体の1種以上、ならびに
【化1】
(式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~18のアリール基であり、X1は、-NH-または-O-であり、nは、1~6の整数であり、Y1-は、任意のアニオンであり、
式(2)中、R3は、水素原子またはメチル基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、X2は、-NH-または-O-であり、mは、1~10の整数であり、eは、1~10の整数であり、kは、1~3の整数であり、
アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
ポリイソシアネート化合物、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物、および下記式(4)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
【化2】
(式(3)中、R 6 およびR 7 は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、jは、1~10の整数であり、iは、1~3の整数であり、
式(4)中、R 8 、R 9 、R 10 およびR 11 は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~6の有機基であり、hは、1~20の整数である。)
を含む親水性組成物
【請求項2】
前記親水性共重合体が、さらに、下記式(6)で表される構成単位を含む請求項1記載の親水性組成物
【化3】
(式中、R13は、水素原子またはメチル基であり、X3は、-NH-または-O-であり、Y2は、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシ基および加水分解性シリル基からなる群より選択される基であり、f1は、0~10の整数であり(ただし、f1が0のとき、Y2は、水素原子である。)、アスタリスク*は、上記と同じ意味を示す。)
【請求項3】
前記親水性共重合体が、さらに、下記式(7)で表される構成単位を含む請求項1または2記載の親水性組成物
【化3】
(式中、R14は、水素原子またはメチル基であり、X4は、-NH-または-O-であり、A’は、炭素数1~6のアルキレン基であり、R15は、炭素数1~6のアルキル基であり、f2は、1~10の整数であり、アスタリスク*は、上記と同じ意味を示す。)
【請求項4】
前記親水性共重合体の重量平均分子量が、1,000~50,000である請求項1~3のいずれか1項記載の親水性組成物。
【請求項5】
前記親水性共重合体の含有量が、組成物全体の1~20質量%であり、
前記ポリイソシアネート化合物、前記式(3)で表される有機ケイ素化合物、および前記式(4)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が、前記親水性共重合体100質量部に対して0.05~50質量部である請求項1~4のいずれか1項記載の親水性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項記載の親水性組成物からなるコーティング剤。
【請求項7】
請求項6記載のコーティング剤を硬化させてなる親水性被膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性共重合体および親水性共重合体を含有する親水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック等の有機材料、ガラス等の無機材料で形成された基材の曇りに対する改善要求が高まってきている。
基材の曇りに対する改善は、一般的に、基材の表面上に親水性被膜をコートすることで達成されている。例えば、特許文献1では、基材に親水性を付与することが可能なコーティング剤として、親水性の高い4級アンモニウム塩構造を有する親水性共重合体を添加したコーティング組成物が提案されている。
【0003】
しかしながら、上記コーティング組成物によって形成されたコート膜は、耐水性が十分ではなく、水と接触した際に、親水性、防曇性等の表面特性が劣化する場合があり、更なる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-162431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、親水性、防曇性および耐水性に優れる塗膜を与える親水性共重合体およびこれを含む親水性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の親水性共重合体が、耐水性に優れ、プラスチック等の有機材料、ガラス等の無機材料で形成された基材に、持続性のある親水性、防曇性を付与することができる塗膜を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)で表される構成単位(a)と、下記式(2)で表される構成単位(b)とを含み、構成単位(a)の含有率が5~60質量%であり、かつ、構成単位(a)と構成単位(b)の合計含有率が30質量%以上である親水性共重合体、
【化1】
(式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、それぞれ独立に、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~18のアリール基であり、X1は、-NH-または-O-であり、nは、1~6の整数であり、Y1-は、任意のアニオンであり、
式(2)中、R3は、水素原子またはメチル基であり、R4およびR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、X2は、-NH-または-O-であり、mは、1~10の整数であり、eは、1~10の整数であり、kは、1~3の整数であり、
アスタリスク*は、隣接した構成単位への結合を示す。)
2. さらに、下記式(6)で表される構成単位を含む1記載の親水性共重合体、
【化2】
(式中、R13は、水素原子またはメチル基であり、X3は、-NH-または-O-であり、Y2は、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシ基および加水分解性シリル基からなる群より選択される基であり、f1は、0~10の整数であり(ただし、f1が0のとき、Y2は、水素原子である。)、アスタリスク*は、上記と同じ意味を示す。)
3. さらに、下記式(7)で表される構成単位を含む1または2記載の親水性共重合体、
【化3】
(式中、R14は、水素原子またはメチル基であり、X4は、-NH-または-O-であり、A’は、炭素数1~6のアルキレン基であり、R15は、炭素数1~6のアルキル基であり、f2は、1~10の整数であり、アスタリスク*は、上記と同じ意味を示す。)
4. 1~3のいずれかに記載の親水性共重合体を含む親水性組成物、
5. さらに、ポリイソシアネート化合物、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物、および下記式(4)で表される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む4記載の親水性組成物、
【化4】
(式(3)中、R6およびR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、jは、1~10の整数であり、iは、1~3の整数であり、
式(4)中、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~6の有機基であり、hは、1~20の整数である。)
6. 4または5記載の親水性組成物からなるコーティング剤、
7. 6記載のコーティング剤を硬化させてなる親水性被膜
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の親水性共重合体は、耐水性に優れ、ガラス等の基材に持続性のある親水性、防曇性を付与できる塗膜を形成可能な親水性組成物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
<親水性共重合体>
本発明に係る親水性共重合体(以下、単に「共重合体」とも称する。)は、後述の構成単位(a)および(b)を特定の含量割合で含む。
【0010】
以下、本発明に係る親水性共重合体の各構成単位について説明する。
[構成単位(a)]
本発明の親水性共重合体に含まれる構成単位(a)は、下記式(1)で表される。
構成単位(a)に含まれるアンモニウム基は、親水性が高く、有機溶媒との親和性が低いため、塗膜表面に露呈しやすく、表面に親水性成分が固定化された塗膜を得ることができる。
【0011】
【化5】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0012】
式(1)において、R1は、水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
2は、それぞれ独立に、置換または非置換の炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~18のアリール基である。
2の炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
2の炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル(アントラセニル)、フェナントリル、ピレニル、ナフタセニル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、ターフェニル基等が挙げられる。
また、これらアルキル基、アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよく、それらの具体例としては、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロプロピル、クロロフェニル、ブロモフェニル基;シアノエチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R2は、塗膜の表面親水性向上の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキル基またはフェニル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0013】
1は、-NH-または-O-であり、塗膜の表面親水性および耐加水分解性の向上の観点から、好ましくは-NH-である。
nは、1~6の整数であり、塗膜の表面親水性向上の観点から、好ましくは1~4の整数であり、より好ましくは1~3の整数である。
【0014】
1-は、任意のアニオンであるが、塗膜の表面親水性の向上の観点から、好ましくはハロゲンアニオン、アルキル硫酸アニオン(Ra-OSO3 -)である。
1-のハロゲンアニオンの具体例としては、F-、Cl-、Br-、I-が挙げられる。
1-のアルキル硫酸アニオン(Ra-OSO3 -)は、アルキル基とスルホキシドアニオンとが連結した一価のアニオンであり、Raのアルキル基が、置換または非置換の炭素数1~6のものが好ましく、アルキル基の具体例としては、R2で例示したものと同様のものが挙げられる。
アルキル硫酸アニオンの具体例としては、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン等が挙げられる。
これらの中でも、Cl-、アルキル基の炭素数が1~3のアルキル硫酸アニオンが好ましく、Cl-、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオンがより好ましく、Cl-がさらに好ましい。
【0015】
また、Y1-としては、下記式(5)で表されるアニオンも好ましく用いることができる。
【化6】
【0016】
式(5)中、R12は、置換もしくは非置換の炭素数12~14の直鎖状または分岐状のアルキル基である。
12のアルキル基の具体例としては、ドデシル(n-ドデシル、イソドデシル等)、トリデシル(n-トリデシル、イソトリデシル等)、テトラデシル(n-テトラデシル、イソテトラデシル等)等が挙げられる。
これらのアルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよい。
これらの中でも、入手容易性の観点から、ドデシル基およびトリデシル基が好ましく、トリデシル基がより好ましい。また、本発明の効果を一層向上させる観点から、R12における炭素数12~14のアルキル基は直鎖状が好ましい。したがって、本発明の好ましい一実施形態において、R12は、置換もしくは非置換の直鎖状のトリデシル基であり、非置換の直鎖状のトリデシル基がより好ましい。
【0017】
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分岐状のアルキレン基である。
Aのアルキレン基の具体例としては、エチレン、トリメチレン、プロピレン(-CH2-CH(CH3)-)、テトラメチレン、1-メチルトリメチレン(-CH2-CH2-CH(CH3)-)、2-メチルトリメチレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-)、ジメチルエチレン(-CH2-C(CH32-)、エチルエチレン基(-CH2-CH(CH2CH3)-)等が挙げられる。
【0018】
gは、-(AO)-の平均付加モル数であって、2~50の数であり、塗膜の表面親水性および組成物の粘度低下による作業性向上の観点から、好ましくは2~30の数であり、より好ましくは2~20の数であり、さらにより好ましくは2~10の数である。
【0019】
すなわち、上記式(5)中、-(AO)g-は、ポリオキシアルキレン基を表す。-(AO)g-は、好ましくは2種以上のオキシアルキレン基を含み、より好ましくはオキシブチレン基(-C48O-)を含む。このような基を含むことで、共重合体の親水性が高くなりすぎず、有機溶媒との親和性が良好となる。
なお、オキシブチレン基は、分岐状であってもよく、-CH(CH2CH3)-CH2-O-およびの-CH2-CH2(CH2CH3)-O-のうちの少なくとも一方または両方を含んでもよい。このような基を含むことで、有機溶媒との親和性および塗膜の表面親水性が一層向上する。
さらに、-(AO)g-は、オキシエチレン基(-C24O-)を含むことが好ましい。
【0020】
-(AO)g-におけるオキシブチレン基の割合は、好ましくは3~90モル%であり、より好ましくは10~80モル%であり、さらに好ましくは20~50モル%であり、特に好ましくは30~40モル%である。なお、オキシブチレン基が2種以上の構造を有する場合、上記オキシブチレン基の割合は、各構造の割合(モル%)の合計を表す。
また、-(AO)g-が2種以上のオキシアルキレン基を含む場合、その配列はランダム型、ブロック型のいずれでもよいが、塗膜の表面親水性効果を一層高める観点から、ブロック型が好ましい。なお、ブロック型の場合、配列の順序は問わない。すなわち、スルホン酸基には、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシブチレン鎖の順で連結してもよいし、その逆であってもよい。
【0021】
式(5)で表されるアニオンの具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
CH3(CH211O{(CH24O)}2{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH211O{(CH24O)}3{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH211O{(CH24O)}4{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH211O{(CH24O)}5{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH211O{(CH24O)}10{(CH22O)}15SO3 -
CH3(CH211O{(CH24O)}10{(CH22O)}20SO3 -
CH3(CH212O{(CH24O)}2{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH212O{(CH24O)}3{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH212O{(CH24O)}4{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH212O{(CH24O)}5{(CH22O)}5SO3 -
CH3(CH212O{(CH24O)}10{(CH22O)}15SO3 -
CH3(CH212O{(CH24O)}10{(CH22O)}20SO3 -
【0022】
上記式(1)で表される構成単位(a)の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
【化7】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0024】
[構成単位(b)]
本発明の親水性共重合体に含まれる構成単位(b)は、下記式(2)で表される。
構成単位(b)に含まれる加水分解性シリル基は、本発明の親水性共重合体を含む組成物が硬化剤を含む場合、この硬化剤に含まれる官能基と架橋反応するか、硬化剤を含まない場合であっても、それ自身で架橋反応する(自己架橋する)ことができる。これにより、塗膜中に親水性共重合体を含む架橋構造が形成される。
【0025】
【化8】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0026】
式(2)中、R3は、水素原子またはメチル基であり、好ましくはメチル基である。
4およびR5は、それぞれ独立に、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~10、好ましくは炭素数6~8のアリール基である。
4およびR5のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
4およびR5のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。
これらの中でも、R4は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましく、R5は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
2は、-NH-または-O-であり、好ましくは-O-である。
【0027】
mは、1~10の整数であり、好ましくは1~4の整数であり、より好ましくは2~4の整数である。
eは、1~10の整数であり、好ましくは1~4の整数であり、より好ましくは2~4の整数である。
kは、1~3の整数であり、好ましくは3である。
【0028】
上記式(2)で表される構成単位(b)の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
【化9】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0030】
本発明の親水性共重合体において、構成単位(a)の含有率は、5~60質量%であるが、10~50質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましい。構成単位(a)の含有率が5質量%未満である場合、共重合体の親水性が不十分となり、塗膜化した際の、塗膜の表面親水性が低下する。一方、構成単位(a)の含有率が60質量%を超える場合、共重合体の親水性が高くなりすぎるため、塗膜化した際の、塗膜の耐水性が低下する。
さらに、本発明の親水性共重合体において、構成単位(a)と構成単位(b)との合計含有率は30質量%以上であるが、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。構成単位(a)と構成単位(b)との合計含有率が30質量%未満である場合、構成単位(a)の親水性因子の寄与度が小さくなり、塗膜にした際の、塗膜の表面親水性が低下する。上限は特に制限されず、構成単位(a)と構成単位(b)のみでもよいが、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
[構成単位(c)]
本発明の親水性共重合体は、上記構成単位(a)および(b)に加えて、下記式(6)で表される構成単位(c)を含んでもよい。当該構成単位(c)を含むことで、親水性塗膜の耐水性がさらに向上する。
【0032】
【化10】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0033】
上記式(6)中、R13は、水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。
3は、-NH-または-O-であり、好ましくは-O-である。
2は、水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシ基(-OR)および加水分解性シリル基からなる群より選択される基である。
2のアルコキシ基(-OR)としては、Rのアルキル基が、置換または非置換の炭素数1~6のものが挙げられ、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。また、Rのアルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子や、シアノ基等のその他の置換基で置換されていてもよい。
2の加水分解性シリル基としては、例えば、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジメトキシシリル、ジエトキシシリル、モノメトキシシリル、モノエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;アセトキシシリル基等のカルボキシレートシリル基;トリクロロシリル、ジクロロシリル、モノクロロシリル基等のハロシリル基;アミノシリル基;オキシムシリル基;ヒドロシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、Y2は、水素原子および水酸基が好ましい。
【0034】
f1は、0~10の整数であり、0~6の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、2~4の整数がさらに好ましい。但し、f1が0のとき、Y2は水素原子である。
【0035】
本発明の親水性共重合体が、構成単位(c)を含有する場合、例えば、本発明の共重合体と、構成単位(c)のY2と架橋反応しうる官能基を有する硬化剤とを併用すると、硬化剤と共重合体とで架橋構造を形成することができる。また、例えば、本発明の共重合体と、酸触媒等の硬化触媒とを併用すると、共重合体自身が架橋反応する(自己架橋する)こともできる。ゆえに、本発明の親水性共重合体と硬化剤とを含む組成物から形成される塗膜は、架橋構造を有し、優れた耐水性を発揮することができる。
【0036】
このような点から、上記式(6)において、Y2は、水酸基がより好ましい。本発明の共重合体が、Y2が水酸基である構成単位(c)を含む場合、例えば、本発明の共重合体と、イソシアネート基を有する硬化剤とを組み合わせることで、低温条件下(例えば、110℃以下)でも架橋構造を形成することができる。ゆえに、耐熱性の低い基材上にも本発明に係る組成物による塗膜を形成することができる。
【0037】
上記式(6)で表される構成単位(c)の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
【化11】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0039】
本発明の親水性共重合体が構成単位(c)を含む場合、その含有率は、特に制限されないが、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。
【0040】
[その他の構成単位]
本発明の親水性共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記構成単位に加えて、例えば、下記式(7)で表される構成単位を含んでもよい。
【0041】
【化12】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0042】
上記式(7)中、R14は、水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。
4は、-NH-または-O-であり、好ましくは-O-である。
A’は、炭素数1~6のアルキレン基であり、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
15は、炭素数1~6のアルキル基であり、その具体例としては、R2で例示した基と同様のものが挙げられるが、中でもメチル基が好ましい。
f2は、1~10の整数であり、2~8の整数が好ましく、3~6の整数がより好ましい。
【0043】
本発明の共重合体が、その他の構成単位を含む場合、その合計含有率は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、5~50質量%がさらに好ましい。
【0044】
本発明に係る親水性共重合体に含まれる各構成単位の順序は任意であり、本発明の共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0045】
[親水性共重合体の物性]
本発明の親水性共重合体の重量平均分子量は、有機溶媒との親和性および塗膜の硬度を向上させる観点から、好ましくは1,000~50,000であり、より好ましくは5,000~40,000であり、さらに好ましくは10,000~30,000であり、特に好ましくは15,000~20,000である。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリエチレングリコール・ポリエチレンオキシド)により求めた値である。
【0046】
本発明の親水性共重合体の粘度は、有機溶媒との相溶性や作業性の観点から、0.01~0.5Pa・s(温度25℃)が好ましい。なお、本発明において、粘度は、回転粘度計により測定した値である。
また、本発明の親水性共重合体のガラス転移温度は、-10~50℃が好ましい。なお、本発明において、ガラス転移温度は、JIS K7121に基づいて測定した値である。
【0047】
<親水性共重合体の製造方法>
本発明の親水性共重合体は、例えば、下記スキームに示されるように、上記式(1)で表される構成単位および上記式(6)においてY2が水酸基である構成単位を含む共重合体と、下記式(8)で表される有機ケイ素化合物とを、大気雰囲気下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応させることによって得ることができる。
【0048】
【化13】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R13、X1、X2、X3、Y1、e、f1、k、mおよびnは、上記と同じである。a、bおよびcは、各構成単位の含有率が上記範囲となる値である。)
【0049】
上記式(1)の構成単位および上記式(6)のY2が水酸基である構成単位を含む共重合体としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、大成ファインケミカル(株)製のアクリット1WX等が挙げられる。
【0050】
上記式(8)で表される化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。これらの中でも(9)で表されるものが好ましい。
【0051】
【化14】
(式中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表す。)
【0052】
上記反応は、無溶媒で行うこともできるが、反応を阻害しない範囲で、必要に応じて、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶媒中で行うことができる。
反応温度としては、0℃~各溶媒の沸点が好ましく、0~50℃がより好ましい。反応時間は、1~150時間が好ましく、5~100時間がより好ましい。
反応の際の上記式(1)で表される構成単位および上記式(6)においてY2が水酸基である構成単位を含む共重合体と、上記式(8)で表される有機ケイ素化合物との使用比率は、共重合体中の水酸基1モルに対して、有機ケイ素化合物(8)が0.8~1.2モルが好ましい。
【0053】
上記方法で得られた親水性共重合体は、必要に応じて、固形分濃度を調整したり、溶媒交換したり、濾過処理を施した後、添加剤を配合することもできる。また、重合により生成した親水性共重合体をヘキサン等により沈殿または再沈殿等により精製し、添加剤とともに用途に応じた溶媒に溶解することもできる。
【0054】
<親水性組成物>
本発明の親水性組成物(以下、単に「組成物」とも称する。)は、上記親水性共重合体の1種以上を含有する。本発明の組成物に含まれる親水性共重合体の含有量は、特に限定されないが、親水性の観点から、組成物全体の1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0055】
本発明の親水性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の成分を含んでもよい。以下、組成物の各成分について説明する。
[硬化剤]
本発明の組成物は、さらに、硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤は、上記親水性共重合体の架橋反応を促進し、塗膜内部の架橋構造の形成に寄与する。この際、硬化剤は、架橋構造に組み込まれてもよいし、組み込まれなくてもよい。
【0056】
架橋構造に組み込まれる硬化剤の場合、上記親水性共重合体の側鎖に含まれる官能基(具体的には、構成単位(b)に含まれる加水分解性シリル基または構成単位(c)に含まれる官能基Y2)と架橋反応する官能基または構造を有することが好ましい。この際、架橋の様式は、共有結合、イオン結合、水素結合または配位結合のいずれでもよいが、共有結合が好ましい。
架橋構造に組み込まれる硬化剤としては、分子内に、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリル基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基、シロキサン構造、メラミン構造等の分子構造、金属イオン等を有するものが好ましい。
【0057】
架橋反応しうる親水性共重合体側鎖の官能基と、硬化剤の官能基または構造との好適な組み合わせは、例えば、表1に示すとおりである。
【0058】
【表1】
【0059】
加水分解性シリル基を有する硬化剤としては、加水分解性シリル基、加水分解性シリル基を含むシロキサン構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物の加水分解縮合物等が挙げられる。
【0060】
【化15】
【0061】
上記式(3)中、R6およびR7は、それぞれ独立に、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~10、好ましくは炭素数6~8のアリール基である。
6およびR7のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
6およびR7のアリール基の具体例としては、フェニル、トリル基等が挙げられる。
これらの中でも、R6は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、R7は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記式(3)中、jは、1~10の整数であり、好ましくは1~6の整数であり、より好ましくは1~4の整数であり、さらに好ましくは2~4の整数である。
iは、1~3の整数であり、好ましくは3である。
【0062】
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、N,N,N-トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、N,N,N-トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
上記式(4)中、R8、R9、R10およびR11は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~6の1価の有機基を表す。
式(4)中、R8、R9、R10およびR11で表される炭素数1~6の1価の有機基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基等が挙げられる。
【0064】
炭素数1~6のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数2~6のアルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル基等が挙げられる。
【0065】
式(4)中、R8、R9、R10およびR11で表される炭素数1~6の1価の有機基は、加水分解性の観点から、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0066】
式(4)中、hは、1~20の整数を表し、3~12の整数が好ましく、5~12の整数がより好ましい。hが20以下であると、コーティング液とした場合の粘度が高くなり過ぎず、均一性の高い防曇膜を形成することができる。また、hが1以上であると、式(5)で表される化合物の反応性を制御し易く、親水性に優れた防曇膜を形成することができる。
【0067】
本発明において、「式(4)で表される化合物の縮合物」とは、式(4)で表される化合物中のSi-OR8、Si-OR9、Si-OR10、およびSi-OR11の少なくとも1つにおいて、シロキサン結合(Si-O-Si)が形成された構造を有する化合物を意味する。式(4)で表される化合物の縮合物は、例えば、2分子以上の式(4)で表される化合物が、互いに縮合または加水分解縮合することによって形成され得る。加水分解縮合について、式(4)中のR11がメチル基(-CH3)である場合を例に以下説明する。加水分解縮合の一例においては、Si-OCH3の加水分解によってSi-OHが形成され、次いで、Si-OHの脱水縮合によってSi-O-Siが形成される。
【0068】
式(4)で表される化合物の縮合物の構造としては特に制限されず、例えば、ランダム型、直線型、ラダー型、かご型等が挙げられる。
【0069】
なお、式(4)で表される化合物およびその加水分解縮合物において、R8、R9、R10およびR11に水素原子が含まれる場合、その水素原子は、式(4)の化合物の製造時に原料として添加された化合物に含まれる水素原子であっても、加水分解によって導入された水素原子であってもよい。すなわち、式(4)中、R8、R9、R10およびR11のうちの少なくとも1つが水素原子である場合、式(4)中のSi-OH基の少なくとも1つは、式(4)の化合物の製造時に原料として添加された化合物に含まれるSi-OH基であってもよく、加水分解によって形成されたSi-OH基であってもよい。
【0070】
式(4)で表される化合物は、市販品であってもよい。式(4)で表される化合物は、例えば、三菱ケミカル(株)製のMKC(登録商標)シリケート(例えば、MS51、MS56)として入手可能である。
【0071】
式(4)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)は、300~1,500が好ましく、500~1,200がより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(標準物質:ポリエチレングリコール・ポリエチレンオキシド)により求めた値である。
【0072】
イソシアネート基を有する硬化剤としては、脂肪族、脂環式または芳香族のポリイソシアネート等が挙げられる。
具体的には、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ジイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体等のイソシアネート誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、塗膜の黄変を抑制する観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートが好ましい。
イソシアネート基を有する硬化剤は、市販品として入手でき、旭化成(株)製のデュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、24A-100、22A-75P、P301-75E等;東ソー(株)製のコロネート(登録商標)HX、HK、2715等;三井化学(株)製のタケネート(登録商標)500、600等を用いることができる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
メラミン構造を有する硬化剤としては、メラミン樹脂が好ましく、具体例としては、グアナミン、メラミン、N-ブチルメラミン、N-フェニルメラミン、N,N-ジフェニルメラミン、N,N-ジアリルメラミン、N,N’,N”-トリフェニルメラミン、N,N’,N”-トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メチル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ブチル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ベンジルオキシ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ブトキシ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-シクロヘキシル-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-クロロ-sym-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-sym-トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’-テトラシアノエチルベンゾグアナミン)等のメラミン類と、ホルムアルデヒド、およびアルコール類(例えば、メタノール等)との縮合物等が挙げられる。
メラミン構造を有する硬化剤は、市販品として入手でき、三井化学(株)製のユーバン(登録商標)20SE、225;DIC(株)製のアミディア(登録商標)L-117-60、L-109-65、47-508-60、L-118-60、G821-60、J820-60等を用いることができる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
エポキシ基を有する硬化剤としては、脂肪族、脂環式または芳香族のジエポキシ化合物、トリエポキシ化合物等が挙げられる。
具体的には、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂型エポキシ樹脂、1,5-ヘキサジエンジエポキシド、1,4-ペンタジエンジエポキシド、1,2:6,7-ジエポキシへプタン、1,2:8,9-ジエポキシノナン、2,2’-(1,6-ヘキサンジイル)ビスオキシラン、1,2:7,8-ジエポキシオクタン、1,5-ジエポキシシクロヘキサン、1,2:3,4-ジエポキシシクロヘキサン、1,2:5,6-ジエポキシシクロオクタン、リモネンジオキシド、シス-1,2:4,5-ジエポキシ-p-メンタン、1,6-ジエポキシナフサレン、トリエポキシデカン等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
アミノ基を有する硬化剤としては、第1級アミン、第2級アミンを含有する脂肪族、脂環式または芳香族のジアミン、トリアミン、テトラアミン等が挙げられる。
具体的には、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、3,3-ジメチルブタン-1,2-ジアミン、4-メチルペンタン-1,2-ジアミン、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,4-ジアミノトルエン、2,3-ジアミノトルエン、2,5-ジメチルベンゼン-1,2-ジアミン、3,4-ジメチルベンゼン-1,2-ジアミン、2,6-ジメチルベンゼン-1,4-ジアミン、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジアミン、3,5-ジメチル-1,2-ベンゼンジアミン、4-エチルベンゼン-1,3-ジアミン、2,5-ジメチルベンゼン-1,4-ジアミン、4-メトキシベンゼン-1,3-ジアミン、4-(1,1-ジメチルエチル)-1,2-ベンゼンジアミン、パラフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、N-イソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N-へキシルエチレンジアミン、5-イソプロピルアミノアミルアミン、n-ブチルエチレンジアミン、N-ターシャリーブチルブタン-1,4-ジアミン、N-エチルヘキサン-1,6-ジアミン、n-イソブチルエタン-1,2-ジアミン、N-シクロへキシル-1,2-エタンジアミン、N-1-メチルシクロヘキサン-1,4-ジアミン、N-メチルベンゼン-1,2-ジアミン、N-フェニルエチレンジアミン、n-エチルベンゼン-1,2-ジアミン、N-1-メチルベンゼン-1,3-ジアミン、4-アミノ-N-メチルアニリン、2-アミノジフェニルアミン、4-アミノジフェニルアミン、N-1,4-ジメチルベンゼン-1,2-ジアミン、N-1,5-ジメチルベンゼン-1,2-ジアミン、N-イソプロピル-ベンゼン-1,2-ジアミン、N-(3-アミノフェニル)-N-フェニルアミン、N,N’-ジメチルトリメチレンジアミン、N,N’-ジエチルブチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-2,3-ブタン-ジアミン、N,N’-ジエチル-2-ブテン-1,4-ジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N-プロピル-N’-イソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルブタン-1,4-ジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、(1R,2R)-1-N,2-N-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン、N,N’-ジメチル-1,2-シクロヘキサンジアミン、1-N,4-N-ジメチルシクロヘキサン-1,4-ジアミン、1,4-ベンゼンジアミン、1,2,4-トリアミノベンゼン、2,4,5-トリアミノトルエン、2,4,6-トリアミノトルエン、2,3,4-トリアミノトルエン、3,5,6-トリアミノトルエン、3-N-メチルベンゼン-1,2,3-トリアミン、2-N-メチルベンゼン-1,2,3-トリアミン、4-N-メチルベンゼン-1,2,4-トリアミン、1-N-メチルベンゼン-1,2,4-トリアミン、3-N-メチルベンゼン-1,3,5-トリアミン、1-N’,1-N”-ジエチルプロパン-1,1,1-トリアミン、4-(3,4-ジアミノフェニル)ベンゼン-1,2-ジアミン、1-N,1-N,2-N,2-N,3-N,3-N,4-N,4-N-オクタメチルブタン-1,2,3,4-テトラアミン、4-[3-アミノ-4-(メチルアミノ)フェニル]ベンゼン-1,2-ジアミンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
カルボジイミド基を有する硬化剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t-ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ-t-ブチルカルボジイミド、ジ-β-ナフチルカルボジイミド、N-イソプロピル-N’-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]カルボジイミド等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
オキサゾリン基を有する硬化剤としては、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン、1,4-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼン等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
金属イオンを有する硬化剤としては、アルミニウム有機化合物としてアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート等が挙げられる。
【0079】
これらの中でも、取扱いの容易さの観点から、イソシアネート基またはメラミン構造を有する硬化剤が好ましく、Y2が水酸基である構成単位(c)を含む親水性共重合体と、イソシアネート基またはメラミン構造を有する硬化剤とを組み合わせることがより好ましく、Y2が水酸基である構成単位(c)を含む親水性共重合体と、ポリイソシアネートまたはメラミン樹脂とを組み合わせることがさらに好ましい。
すなわち、本発明の好ましい一実施形態は、本発明の親水性共重合体と、前記硬化剤として、ポリイソシアネートまたはメラミン樹脂とを含む親水性組成物である。中でも、Y2が水酸基である構成単位(c)を含む親水性共重合体と、イソシアネート基を有する硬化剤(ポリイソシアネート)との組み合わせの場合、低温条件下(例えば、110℃以下)でも架橋反応が進行し、耐熱性の低い基材上にも本発明に係る組成物により塗膜を形成できるため、特に好ましい。
【0080】
一方、架橋構造に組み込まれない硬化剤(硬化触媒)としては、無機酸、有機酸、有機金属塩、ルイス酸等が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、過塩素酸、スルファミン酸等が挙げられる。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸等が挙げられる。
有機金属塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、オクチル酸スズ等が挙げられる。
ルイス酸としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化スズ(SnCl4)、塩化チタン(TiCl4)、塩化亜鉛(ZnCl4)等が挙げられる。
また、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジバーサテート等のアルキル錫エステル化合物等も好適に用いることができる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、架橋構造に組み込まれる硬化剤と、組み込まれない硬化剤(硬化触媒)を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0081】
本発明の親水性組成物が硬化剤を含有する場合、その含有量は、上記親水性共重合体100質量部に対して、好ましくは0.05~50質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0082】
[親水性有機ケイ素化合物]
本発明の親水性組成物は、さらに、下記式(10)で表される親水性有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物を含むことが好ましい。
【0083】
【化16】
【0084】
式(10)中、R16およびR17は、それぞれ独立に、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~10、好ましくは炭素数6~8のアリール基であり、これらアルキル基およびアリール基の具体例としては、それぞれR4およびR5で例示した基と同様のものが挙げられるが、これらの中でもメチル基が好ましい。
18は、炭素数6~14、好ましくは炭素数6~10の芳香環を含む2価の有機基であり、芳香族炭化水素環を含む2価の有機基が好ましく、ベンゼン環またはナフタレン環を含む2価の有機基がより好ましく、ベンゼン環またはナフタレン環を含むアリーレン基、アラルキレン基がさらに好ましい。
18のアリーレン基の具体例としては、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフチレン基等が挙げられる。
18のアラルキレン基の具体例としては、メチレンフェニレン、エチレンフェニレン、メチレンフェニレンメチレン、エチレンフェニレンエチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、R18は、フェニレン基が好ましく、1,4-フェニレン基がより好ましい。
19およびR20は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表し、その具体例としては、R4およびR5で例示した基のうち、炭素数1~6のものと同様のものが挙げられるが、これらの中でもメチル基が好ましい。
5は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6のアルキレン基を表す。
5のアルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、シクロへキシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、X5は、メチレン、エチレン、トリメチレン基が好ましく、トリメチレン基がより好ましい。
3は、COO-、SO3 -、または、PO4 -を表すが、得られる塗膜の耐久性の観点から、SO3 -が好ましい。
oは、1~3の整数であるが、3が好ましい。
【0085】
このような親水性有機ケイ素化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。これらの中でも式(11)で表されるものが好ましい。
【0086】
【化17】
(式中、Meは、メチル基を表し、Etは、エチル基を表す。)
【0087】
本発明の親水性組成物における親水性有機ケイ素化合物の含有量は、上記親水性共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~1質量部である。
【0088】
[溶媒]
本発明の親水性組成物は、必要に応じて、溶媒を含んでもよい。溶媒は、親水性共重合体、場合により硬化剤、親水性有機ケイ素化合物およびその他の添加剤を溶解または分散でき、各成分と反応せず、後述の乾燥工程において容易に除去できるものであれば特に制限されない。
溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2-メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸メチル、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。
例えば、ポリイソシアネートを硬化剤として使用する場合、イソシアネート基と反応しない溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒)を用いることが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
[添加剤]
本発明の親水性組成物は、必要に応じて、顔料、成膜助剤、充填剤(フィラー)、トナー、湿潤剤、帯電防止剤、顔料分散剤、可塑剤、酸化防止剤、流れコントロール剤、粘度調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0090】
組成物の固形分濃度は、塗工性および作業性の観点から、好ましくは5~80質量%であり、より好ましくは10~30質量%である。
組成物の粘度は、塗工性および作業性の観点から、好ましくは0.01~0.05Pa・s(温度25℃)である。
本発明の組成物は、1液型であってもよいし、使用前に2液以上を混合して使用する型であってもよい。
【0091】
本発明の組成物は、各種基材に適用することで、これらに親水性を付与することができる。
上記基材を構成する材料の具体例としては、例えば、ガラス;合成樹脂{ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂、エチレン四フッ化エチレン共重合体樹脂、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂等)、ポリブタジエン、ポリイソプロピレン、SBR、ニトリルラバー、EPM、EPDM、エピクロルヒドリンラバー、ネオプレンラバー、ポリサルファイド、ブチルラバー等};金属(鉄、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銅、黄銅、これらの合金等);セルロース、セルロース誘導体、セルロース類似体(キチン、キトサン、ポルフィラン等)、綿、絹、ウール等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ビニロン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアラミド繊維等の合成繊維;これらの繊維の複合繊維(ポリエステル/綿等)等が挙げられ、その形態としては、基板、シート、フィルム、繊維、これらを用いた各種物品等が挙げられる。
【0092】
本発明の組成物は、既知の塗布法を適用して、基板等の表面上に塗膜を形成し、親水性コート膜とすることが可能である。
塗布法としては、例えば、バーコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フロートコート法、刷毛塗り法、グラビアコート法、ロール転写法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スリットコート法、スクリーンコート法、インクジェット法、フレキソ印刷法等が用いられる。これらの中でも、バーコート法が好ましい。
【0093】
基材上に組成物を塗布後、加熱することにより、硬化した塗膜を得ることができる。
加熱温度は、好ましくは40~250℃であり、より好ましくは80~120℃である。乾燥時間は、好ましくは10秒~12時間であり、より好ましくは30秒~3時間である。
なお、上記と同様の条件で予備乾燥を行い、組成物中の溶媒を除去してもよい。
加熱雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0094】
本発明の塗膜の厚さ(乾燥膜厚)は、特に制限されないが、好ましくは0.1~50μmであり、より好ましくは1~10μmである。
【実施例
【0095】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
<1.親水性共重合体の製造>
[実施例1-1]
反応器中に、下記式(12)、(13)、(14)、(15)および(16)で表される構成単位を含む共重合体である、アクリット1WX(大成ファインケミカル(株)製)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度36質量%)7.50g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.51g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)0.02gを加え、25℃で24時間反応させた。
反応後、濾過することにより、親水性共重合体P1(構成単位(a)の含有率25質量%、構成単位(b)の含有率30質量%;重量平均分子量19,000)のメチルエチルケトン溶液7g(固形分濃度41質量%)を得た。
【0097】
【化18】
(式中、アスタリスク*は、上記と同じ意味を表す。)
【0098】
[実施例1-2]
反応器中に、上記式(12)、(13)、(14)、(15)および(16)で表される構成単位を含む共重合体である、アクリット1WX(大成ファインケミカル(株)製)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度36質量%)7.50g、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン0.25g、デュラネート(登録商標、以下同じ)TPA-100(NCO含量23質量%、旭化成(株)製)0.19g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)0.02gを加え、25℃で24時間反応させた。
反応後、濾過することにより、親水性共重合体P2(構成単位(a)の含有率25質量%、構成単位(b)の含有率15質量%;重量平均分子量20,000)のメチルエチルケトン溶液7g(固形分濃度42質量%)を得た。
【0099】
[比較例1-1]
反応器中に、上記式(12)、(13)、(14)、(15)および(16)で表される構成単位を含む共重合体である、アクリット1WX(大成ファインケミカル(株)製)のメチルエチルケトン希釈品(固形分濃度36質量%)7.50g、デュラネート(登録商標、以下同じ)TPA-100(NCO含量23質量%、旭化成(株)製)0.3743g、ジオクチル錫触媒のネオスタンU-830(日東化成(株)製)0.02gを加え、25℃で24時間反応させた。
反応後、濾過することにより、親水性共重合体P3(構成単位(a)の含有率30質量%、構成単位(b)の含有率0%;重量平均分子量18,000)のメチルエチルケトン溶液7g(固形分濃度44質量%)を得た。
【0100】
[合成例1-1]
反応器中に、エタノール92.0g、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマーであるMKC(登録商標)シリケートMS51(三菱ケミカル(株)製)108gを加えた後、イオン交換水200gを徐々に加えた。最後に、酢酸12gを添加し、25℃で24時間撹拌し、シロキサン加水分解物を含む混合物を得た。
1H NMR測定の結果から、得られた混合物において、テトラメトキシシランの部分加水分解オリゴマーは完全に加水分解されたことを確認した。
【0101】
<2.コーティング組成物の製造>
[実施例2-1]
反応器中に、実施例1-1で得た親水性共重合体P1のメチルエチルケトン溶液1.04g、メタノール2.74g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)のメタノール希釈品(0.6質量%希釈)0.38gを加え、25℃で1時間反応させ、黄色透明の液体(C1)を得た。
【0102】
[実施例2-2]
反応器中に、実施例1-1で得た親水性共重合体P1のメチルエチルケトン溶液1.04g、メタノール2.74g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)のメタノール希釈品(0.6質量%希釈)0.38g、合成例1-1で得たシロキサン加水分解物1.62gを加え、25℃で1時間反応させ、黄色透明の液体(C2)を得た。
【0103】
[実施例2-3]
反応器中に、実施例1-1で得た親水性共重合体P1のメチルエチルケトン溶液0.94g、メタノール2.74g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)のメタノール希釈品(0.6質量%希釈)0.38g、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートのメタノール溶液(固形分濃度44質量%)0.10gを加え、25℃で1時間反応させ、黄色透明の液体(C3)を得た。
【0104】
[実施例2-4]
反応器中に、実施例1-2で得た親水性共重合体P2のメチルエチルケトン溶液1.01g、メタノール2.77g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)のメタノール希釈品(0.6質量%希釈)0.38gを加え、25℃で1時間反応させ、黄色透明の液体(C4)を得た。
【0105】
[実施例2-5]
反応器中に、実施例1-2で得た親水性共重合体P2のメチルエチルケトン溶液1.01g、メタノール2.77g、上記式(11)で表される親水性シラン0.019g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)のメタノール希釈品(0.6質量%希釈)0.38gを加え、25℃で1時間反応させ、黄色透明の液体(C5)を得た。
【0106】
[比較例2-1]
反応器中に、比較例1-1で得た親水性共重合体P3のメチルエチルケトン溶液0.98g、メタノール2.80g、上記式(11)で表される親水性シラン0.019g、ジオクチル錫触媒ネオスタンU-830(日東化成(株)製)のメタノール希釈品(0.6質量%希釈)0.38gを加え、25℃で1時間反応させ、黄色透明の液体(C6)を得た。
【0107】
[比較例2-2]
反応器中に、重量平均分子量75,000、水酸基価20mgKOH/g、計算ガラス転移温度85℃の水酸基含有アクリル樹脂のアクリット6BF-100(固形分濃度40質量%、大成ファインケミカル(株)製)10g、デュラネートTPA-100(NCO含量23質量%、旭化成(株)製)0.65g、上記式(12)、(13)、(14)、(15)および(16)で表される構成単位を含む共重合体である、アクリット1WX(大成ファインケミカル(株)製)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度40質量%)1.0g、メチルエチルケトン13.6gを混合し、黄色透明の液体(C7)を得た。
【0108】
<3.塗膜の作製と評価>
[実施例3-1~3-5、比較例3-1,3-2]
実施例2-1~2-5、比較例2-1および比較例2-2で得られたコーティング組成物C1~C7を、それぞれガラス板にバーコーター(No.14)を用いて塗布し、直後に120℃で1時間乾燥させることにより親水性被膜を得た。得られた被膜について、次の各試験を行い、それらの結果を表2に示した。
【0109】
<防曇性の評価>
上記各被膜に呼気を吹きかけ、被膜の表面が曇った場合を×、曇らなかった場合を○とし、さらに、60℃の温水浴上方、水面から3cmの高さに置いて、被膜の表面が曇らなかった場合を◎として、防曇性を評価した。
【0110】
<耐水性の評価>
上記各被膜を、25℃にて5分間上水に浸漬し、紙ワイパーで表面の水を吸い取った後、25℃にて10分間自然乾燥し、上記防曇性の評価を行った。
続いて、各被膜をさらに1時間上水に浸漬し、紙ワイパーで表面の水を吸い取った後、25℃にて10分間自然乾燥し、上記防曇性の評価を行った。
【0111】
<耐湿性の評価>
上記各被膜を、50℃、98%RHに設定した恒温恒湿器(KCL-2000W、東京理化器械(株))中に、24時間静置した。その後、25℃にて10分間自然乾燥し、上記防曇性の評価を行った。
【0112】
【表2】
【0113】
表2に示されるように、実施例3-1~3-5の被膜においては、耐水性試験(5分間水浸漬、1時間水浸漬)後、および、耐湿性試験(50℃、98%RH、24時間)後であっても優れた親水性および防曇性を維持しており、実施例3-5の被膜において、特に耐久性に優れる結果となった。
一方、比較例3-1,3-2の被膜においては、1時間水浸漬後の耐水性が消失しており、耐水性に劣る結果となった。