(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/00 20060101AFI20241106BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20241106BHJP
H01B 11/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01B11/00 B
H01B7/18 D
H01B11/20
(21)【出願番号】P 2021151930
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】渡部 考信
(72)【発明者】
【氏名】矢口 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 紀美香
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-018736(JP,A)
【文献】特開2007-188738(JP,A)
【文献】特開2007-012462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/00
H01B 7/18
H01B 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の第1電線と、前記第1電線よりも外径が大きい複数本の第2電線とを撚り合わせたケーブルコアと、
前記ケーブルコアの周囲を覆うように設けられ、金属素線を螺旋状に巻きつけた横巻きシールドからなるシールド層と、
前記シールド層の周囲を覆うように設けられたシースと、を備え、
前記ケーブルコアは、前記複数本の第1電線を撚り合わせた内層部と、前記内層部の周囲に前記複数本の第2電線を撚り合わせた外層部と、を有し、
前記シースの外径が2.0mm以下であり、
前記シースの厚さが0.20mm未満であり、
前記シールド層を構成する前記金属素線の外径が、前記シースの厚さの1/2倍以上1倍以下である、
ケーブル。
【請求項2】
前記第1電線は、導体と、前記導体の周囲を覆うように設けられた絶縁体と、を有する絶縁電線からなり、
前記第2電線は、内部導体と、前記内部導体の周囲を覆うように設けられた内部絶縁体と、前記内部絶縁体の周囲を覆うように設けられた外部導体と、前記外部導体の周囲を覆うように設けられた外部絶縁体と、を有する同軸線からなる、
請求項
1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記シールド層に用いる金属素線は、銅の純度が99.99%以上である銅合金線からなり、
外径が0.03mm以上0.16mm未満、伸びが5%以上
10%以下、かつ引張強度が350MPa以上である、
請求項
1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記シースは、その外面が周方向に沿って凹凸を有する、
請求項
1乃至3の何れか1項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記ケーブルの一端部を固定部にて固定し、前記固定部から前記シースの外径の150倍以下の捻回長Lの位置に設けた捻回部を±180°以上±270°以下の捻回角度で捻回することを繰り返す捻回試験において、30回/minの捻回速度で10万回捻回を繰り返しても前記シースに亀裂が発生しない、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルとして、例えば、複数の信号線と電源線とが撚り合わせされたケーブルコア(集合コア)と、ケーブルコアの周囲に螺旋状に配置されたテープ部材と、テープ部材の周囲に配置されたシールド層と、シールド層の周囲に配置されたシース(シース)と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、小型の産業用ロボットの内部配線や、内視鏡等の医療用途に用いられるケーブルにおいては、狭いスペースにケーブルを配置する必要があるため、ケーブル外径の細径化が求められており、例えば、ケーブル外径を2.0mm以下とすることが求められている。しかし、ケーブル外径を小さくするために、ケーブル最外層に設けられるシースを薄く(例えば厚さ0.20mm未満に)すると、ケーブルに屈曲や捻回を繰り返し加えた際に、シースに亀裂が生じることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、シースが薄く細径であり、かつ、繰り返し捻回によってシースに亀裂が生じにくいケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数本の電線を撚り合わせたケーブルコアと、前記ケーブルコアの周囲を覆うように設けられ、金属素線を螺旋状に巻きつけた横巻きシールドからなるシールド層と、前記シールド層の周囲を覆うように設けられたシースと、を備え、前記シースの外径が2.0mm以下であり、前記シースの厚さが0.20mm未満であり、前記シールド層を構成する前記金属素線の外径が、前記シースの厚さの1/2倍以上1倍以下である、ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シースが薄く細径であり、かつ、繰り返し捻回によってシースに亀裂が生じにくいケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係るケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。ケーブル1は、例えば、小型の産業用ロボットの内部配線や、内視鏡等の医療用のケーブルとして用いられ、繰り返し屈曲と捻回が加えられる用途に用いられる。
【0011】
ケーブル1は、複数本の電線2を撚り合わせたケーブルコア3と、ケーブルコア3の周囲を覆うように設けられ、金属素線を螺旋状に巻きつけた横巻きシールドからなるシールド層5と、シールド層5の周囲を覆うように設けられたシース6と、を備えている。
【0012】
(電線2)
ケーブルコア3を構成する複数本の電線2は、複数本の第1電線21と、複数本の第1電線21の周囲を囲うように設けられた複数本の第2電線22と、を含んでいる。
【0013】
第1電線21は、導体211と、導体211の周囲を覆うように設けられた絶縁体212と、を有する絶縁電線からなる。本実施の形態では、第1電線21は、電源供給用の電源線として用いられている。なお、
図1に示すケーブル1では、4本の第1電線21のみをケーブル中心に対して略同一円周上に配置させた構造としているが、これに限定されない。例えば、ケーブル1は、複数本の第1電線21と信号伝送用の信号線(例えば第2電線22のような同軸ケーブル)とを、ケーブル中心に対して略同一円周上に配置させた構造としてもよい。この場合、信号線は、第1電線21と同等の外径を有することがよい。これにより、電源線としての第1電線21と信号線とを同一円周上に配置させた構造で、ケーブル1の外径を細径化することができる。
【0014】
第1電線21の導体211は、複数本の素線によって構成される。導体211は、例えば複数本の素線を撚り合わせた撚線導体からなる。導体211に用いる素線としては、例えば外径0.01mm以上0.03mm以下と細径のものを用いることが望ましい。また、導体211に用いる素線は、細径としても強度を維持できるように、Cu-Ag合金等の銅合金線からなるものを用いるとよい。導体211の外径は、0.10mm以上0.30mm以下であるとよい。絶縁体212としては、薄肉で形成可能なPFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂を用いるとよい。
【0015】
第2電線22は、内部導体221と、内部導体221の周囲を覆うように設けられた内部絶縁体222と、内部絶縁体222の周囲を覆うように設けられた外部導体223と、外部導体223の周囲を覆うように設けられた外部絶縁体224と、を有する同軸線からなる。本実施の形態では、第2電線22は、信号伝送用の信号線として用いられる。すなわち、ケーブル1は、複数本の電源線としての第1電線21と、複数本の信号線としての第2電線22とを備えた複合ケーブルである。なお、
図1に示すケーブル1では、8本の第2電線22のみをケーブル中心に対して略同一円周上に配置させた構造としているが、これに限定されない。例えば、ケーブル1は、複数本の第2電線22と電源供給用の電源線(例えば第1電線21のような絶縁電線)とを、ケーブル中心に対して略同一円周上に配置させた構造としてもよい。この場合、電源線は、第2電線22と同等の外径を有することがよい。電源線と第2電線22とが同等の外径を有することにより、信号線としての第2電線22と電源線とをケーブル中心に対して略同一円周上に配置させた構造において、ケーブル1の内部の余分な隙間を低減することができるため、ケーブル1の外径を細径化することができる。
【0016】
第2電線22の内部導体221は、複数本の素線を撚り合わせた撚線導体からなる。また、外部導体223は、素線を内部絶縁体222の周囲に螺旋状に巻きつけた横巻きシールドからなる。内部導体221及び外部導体223に用いる素線としては、例えば外径0.01mm以上0.03mm以下と細径のものを用いることが望ましい。また、内部導体221及び外部導体223は、細径としても強度を維持できるように、Cu-Ag合金、Cu-Sn-In合金等の銅合金線からなるものを用いるとよい。内部絶縁体222及び外部絶縁体224としては、薄肉で形成可能なPFA等のフッ素樹脂を用いるとよい。外部絶縁体224がフッ素樹脂からなると、電線21と電線22との接触による摩耗を低減することができる。
【0017】
(ケーブルコア3)
ケーブルコア3は、複数本(ここでは4本)の第1電線21を撚り合わせた内層部31と、内層部31の周囲に複数本(ここでは8本)の第2電線22を撚り合わせた外層部32と、を有している。本実施の形態では、ケーブルコア3に含まれる電線2の本数は合計で12本である。ただし、ケーブルコア3に含まれる電線2の本数(第1電線21の本数や第2電線22の本数)はこれに限定されず、例えば、合計で8本以上16本以下であるとよい。第2電線22の本数は、第1電線21の本数よりも多くするとよい。より具体的には、第2電線22の本数は、第1電線21の本数の2倍以上3倍以下とするとよい。これにより、隣り合う複数本の第2電線22同士、隣り合う複数本の第1電線21同士、および隣り合う複数本の第2電線22と複数本の第1電線21とが、互いに接触するように配置されるようになる。そのため、ケーブル1では、第2電線22が第1電線22よりも外径が大きい場合に、ケーブルコア3内の余分なスペースを無くすことができ、ケーブル1を細径化することができる。
【0018】
外径の小さい第1電線21を内層部31に、外径の大きい第2電線22を外層部32に配置する構造とすることで、ケーブル1の細径化が可能になり、また耐屈曲性や耐捻回性の向上も図ることができる。なお、例えば、外径の大きい第2電線22を内層部31に、外径の小さい第1電線21を外層部32に配置する構造とすると、屈曲時や捻回時に外径の小さい第1電線21に応力が集中して断線が発生しやすくなり、また、各電線2間(特に第1電線21同士の間)に無駄なスペースが大きくなり、ケーブル1全体の大径化につながってしまう。
【0019】
本実施の形態では、ケーブル中心(ケーブル長手方向に垂直な断面における中心部分)に抗張力繊維7を配置しており、この抗張力繊維7の周囲に複数本の第1電線21を撚り合わせて内層部31を構成している。抗張力繊維7としては、例えば、アラミド繊維からなるものを用いることができる。これにより、本実施の形態では、スフやジュート等の糸状の介在をケーブル中心に配置した構造に比べて、ケーブル1を細径化しやすくなる。
【0020】
(テープ部材4)
ケーブル1は、ケーブルコア3の周囲に螺旋状に巻きつけられたテープ部材4を備えている。テープ部材4は、ケーブルコア3の撚りが解けないように保持する役割を果たす。テープ部材4としては、例えば、ポリイミド等の樹脂からなる樹脂テープ等を用いることができる。
【0021】
(シース6)
テープ部材4の周囲を覆うようにシールド層5が設けられており、そのシールド層5の周囲を覆うようにシース6が設けられている。シールド層5の詳細については、後述する。
【0022】
シース6は、シールド層5やケーブルコア3を保護する役割を果たす。ケーブル1の細径化のため、シース6の厚さはできるだけ薄いことが望ましく、0.20mm未満とされる。より望ましくは、シース6の厚さは、0.06mm以上0.16mm未満であるとよい。シース6の厚さが0.06mm以上であることで、シース6の強度を確保して繰り返し屈曲・捻回した際にシース6に亀裂が生じることを抑制可能となる。また、シース6の厚さが0.16mm未満であることで、ケーブル1の大径化を抑制できる。なお、本発明において、「シース6の厚さ」とは、
図1に示すケーブル1の長手方向の任意箇所の断面において、JISC3005に規定する試験方法によって求められるシース6の厚さの平均値を意味する。
【0023】
シース6の外径、すなわちケーブル1の最大外径(以下、シース6の最大外径ともいう)は、2.0mm以下である。より好ましくは、1.0mm以上2.0mm以下である。これにより、非常に狭いスペースにもケーブル1を配線可能となる。シース6としては、上記したシース6の厚さに形成可能なPFA等のフッ素樹脂を用いるとよい。なお、本発明において、「ケーブル1の最大外径」とは、ケーブル1の長手方向において外径が最も大きい特定の一か所を意味するものではなく、
図1に示すケーブル1の長手方向の任意箇所の断面において、シース6の外径が最大となる部分のケーブル1の外径を意味する。ケーブル1の外径は、JISC3005に規定する試験方法に基づいて求めることができる。
【0024】
なお、本実施の形態ではシース6を1層構成としているが、シース6を内層と外層とからなる2層構成としてもよい。この場合、内層は放熱性を高める層になっているとよく、例えば、放熱フィラーをベース樹脂(フッ素樹脂)に含有させた樹脂組成物からなるとよい。
【0025】
また、ケーブル1は、シース6の外面の所定位置に、円周方向に沿って凹凸を有することがよい。例えば
図1に示すように、ケーブル1の外面には、円周方向の所定位置に凹部61を有することがよい。ケーブル1では、このような凹凸を有することにより、シース6の外面がケーブル円周方向に沿って平滑に湾曲している場合(すなわち、ケーブル長手方向に垂直な断面におけるシース6の外形が円形状である場合)に比べて、省スペースな配線部分への配線がしやすくなる。
【0026】
(シールド層5)
シールド層5は、テープ部材4の周囲に金属素線を螺旋状に巻きつけて構成された横巻きシールドからなる。なお、例えば、金属素線を編み組みした編組シールドでシールド層5を構成した場合、特に細径の金属素線を用いる場合には、ケーブル1の繰り返し屈曲により金属素線同士が擦れて金属素線の断線が発生しやすくなる。これに対して、本実施の形態のようにシールド層5を横巻きシールドで構成することで、ケーブル1の屈曲時における金属素線同士の擦れを抑制することができ、耐屈曲性を向上できる。また、シールド層5を編組シールドで構成した場合、金属素線の重なりの影響によりシールド層5が厚くなりケーブル1が大径となってしまうが、本実施の形態のようにシールド層5を横巻きシールドで構成することで、金属素線の重なりを抑制してシールド層5を薄くし、ケーブル1を細径に維持できる。
【0027】
上述のように、従来のケーブルでは、細径化のため(すなわち、シースの最大外径を2.0mm以下とするため)にケーブルの最外層に設けられるシースを厚さ0.20mm未満と薄くすると、ケーブルに屈曲や捻回を繰り返し加えた際に、シースに亀裂が生じることがあった。本発明者らが検討したところ、ケーブルを繰り返し捻回させた際に、ケーブル長手方向の一部分においてシールド層にうねりが生じ、そのうねった部分においてシールド層を構成する金属素線に断線が生じてしまうことが分かった。そして、そのシールド層における断線部分と当該断線部分に接しているシースとが捻回によって擦れ、シースが摩耗することで、シースに亀裂が生じてしまうことが分かった。本発明者らは、このようなシールド層におけるうねりの発生が、捻回の際に、シールド層を構成する複数本の金属素線の外径が所定の外径を有する場合に、当該シールド層がテープ部材と共にケーブルコア側(
図1では、周方向に隣り合う第2電線22間の谷間)へ落ち込み、テープ部材とシースとの間に隙間が生じること等に起因することを見出し、本発明を成すに至った。
【0028】
そこで、本実施の形態に係るケーブル1では、シースの最大外径を2.0mm以下とする場合において、シールド層5に用いる金属素線の外径を、シース6の厚さの1/2倍以上1倍以下とした。金属素線の外径をシース6の厚さの1/2倍以上とすることで、金属素線の剛性が低くなりすぎることを抑制でき、ケーブル1の捻回を繰り返した際に、金属素線がテープ部材4と共にケーブルコア3側(周方向に隣り合う第2電線22間の谷間)に落ち込んでテープ部材4とシース6との間に隙間が生じてしまうことが抑制される。その結果、シールド層5にうねりが発生することを抑制でき、うねりに起因するシールド層5の断線の発生を抑制することが可能になると共に、シールド層5の断線部分との擦れによるシース6の亀裂発生を抑制することが可能になる。また、金属素線の外径をシース6の厚さの1/2倍以上とすることで、金属素線の強度が低下して断線が発生しやすくなるといった不具合も抑制できる。なお、本発明において、「金属素線の外径」とは、シールド層5を構成する金属素線の直径をJISC3002に規定する試験方法によって測定したときの平均値を意味する。
【0029】
また、例えば金属素線の外径がシース6の厚さの1倍を超える場合、金属素線の剛性が大きくなるため、一方向に捻回して金属素線が伸びた後、他方向に捻回したときに金属素線の伸びを吸収できずにキンクが発生してしまい、金属素線に断線が発生するおそれが生じてしまう。本実施の形態のように、金属素線の外径をシース6の厚さの1倍未満とすることで、このような金属素線の断線の発生を抑制して、シールド層5の断線部分との擦れによるシース6の亀裂発生も抑制可能になる。
【0030】
本実施の形態のようにケーブル1の最大外径(すなわち、シース6の最大外径)を2.0mm以下とする場合、上記のようにシース6の厚さは0.06mm以上0.16mm未満であることが望ましいといえる。よって、これに対応して、シールド層5に用いる金属素線の外径は、0.03mm以上0.16mm未満であることが望ましいといえる。
【0031】
シールド層5に用いる金属素線としては、伸びが5%以上で、かつ引張強度が350MPa以上の銅合金線からなるものを用いるとよい。金属素線の伸び,引張強度は、JISZ2241に規定する試験方法によって求められる破断伸び,引張強さを意味する。なお、本発明者らが検討したところ、伸びが大きすぎると強度が下がり耐屈曲性が低下することが判明したため、シールド層5に用いる金属素線の伸びは10%以下であることがより望ましい。本実施の形態では、外径が0.03mm以下の非常に細い金属素線を用いるため、不純物が多く含まれると、その不純物を起点として断線が発生しやすくなる。そのため、シールド層5に用いる金属素線としては、銅の純度が99.99%以上の銅合金線を用いることがより望ましい。さらに、シールド層5に用いる金属素線は、導電率が85%以上IACS以上であることがより望ましい。これにより、放熱性を向上させることができる。このような条件を満たす銅合金として、例えば、99.99%以上の純銅に2%の銀を含ませ半硬質の状態とした銅合金を用いることができる。
【0032】
(屈曲試験及び捻回試験の結果)
本発明者らは、
図1のケーブル1を試作し、屈曲試験及び捻回試験を行った。屈曲試験は、
図2に示すように、試料となるケーブル1の下端に荷重W=100gfの錘を吊り下げ、ケーブル1の左右に湾曲した形の曲げジグ80を取り付けた状態で、曲げジグ80に沿って左右方向に向けて屈曲角度±90°以上±150°以下の曲げを加えるようにケーブル1を屈曲させる。屈曲半径(曲げ半径)Rは、ケーブル1の外径(外径:約1.6mm)の7.5倍以下とし、屈曲速度は30回/分とし、屈曲回数は左右方向への1往復を1回としてカウントする。そして、ケーブル1の屈曲を繰り返し、適宜回ごとにシース6の外観を観察し、シース6に亀裂が発生しているかどうか確認し、10万回以上屈曲を繰り返してもシース6に亀裂が発生しなければ合格とする。
【0033】
試作したケーブル1に対して、上記した試験条件で屈曲試験を行ったところ、10万回屈曲を行っても、ケーブル1のシース6に亀裂が生じなかった。
【0034】
捻回試験では、
図3に示すように、捻回試験では、ケーブル1の一端部を固定部82にて固定し、固定部82から所定の捻回長Lの位置に設けた捻回部81を所定の捻回角度で捻回することを繰り返す。捻回角度は±180°以上±270°以下とし、捻回長Lはケーブル1の外径(外径:約1.6mm)の150倍以下とする。また、捻回速度は、30回/minとする。そして、ケーブル1の捻回を繰り返し、適宜回ごとにシース6の外観を観察し、シース6に亀裂が発生しているかどうか確認し、10万回以上捻回を繰り返してもシース6に亀裂が発生しなければ合格とする。
【0035】
試作したケーブル1に対して、上記した試験条件で捻回試験を行ったところ、10万回捻回を行っても、ケーブル1のシース6に亀裂が生じなかった。このように、本実施の形態に係るケーブル1は、屈曲試験と捻回試験の両方に合格し、耐屈曲性と耐捻回性に優れていることが確認できた。
【0036】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るケーブル1では、横巻きシールドからなるシールド層5を構成する金属素線の外径を、シース6の厚さの1/2倍以上1倍以下としている。これにより、シース6の最大外径を2.0mm以下とケーブル外径を細くし、シース6の厚さを0.20mm未満と薄くした場合でも、繰り返し捻回によってシールド層5に断線が生じることを抑制して、当該断線部分との擦れによるシース6の亀裂の発生を抑制することが可能になる。すなわち、本実施の形態によれば、シース6が薄く細径であり、かつ、繰り返し捻回によってシース6に亀裂が生じにくいケーブル1を実現できる。
【0037】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0038】
[1]複数本の電線(2)を撚り合わせたケーブルコア(3)と、前記ケーブルコア(3)の周囲を覆うように設けられ、金属素線を螺旋状に巻きつけた横巻きシールドからなるシールド層(5)と、前記シールド層(5)の周囲を覆うように設けられたシース(6)と、を備え、前記シース(6)の外径が2.0mm以下であり、前記シース(6)の厚さが0.20mm未満であり、前記シールド層(5)を構成する前記金属素線の外径が、前記シース(6)の厚さの1/2倍以上1倍以下である、ケーブル(1)。
【0039】
[2]前記ケーブルコア(3)を構成する前記複数本の電線(2)は、複数本の第1電線(21)と、前記第1電線(21)よりも外径が大きい複数本の第2電線(22)と、を含み、前記ケーブルコア(3)は、前記複数本の第1電線(21)を撚り合わせた内層部(31)と、前記内層部(31)の周囲に前記複数本の第2電線(22)を撚り合わせた外層部(32)と、を有する、[1]に記載のケーブル(1)。
【0040】
[3]前記第1電線(21)は、導体(211)と、前記導体(211)の周囲を覆うように設けられた絶縁体(222)と、を有する絶縁電線からなり、前記第2電線(22)は、内部導体(221)と、前記内部導体(221)の周囲を覆うように設けられた内部絶縁体(222)と、前記内部絶縁体(222)の周囲を覆うように設けられた外部導体(223)と、前記外部導体(223)の周囲を覆うように設けられた外部絶縁体(224)と、を有する同軸線からなる、[2]に記載のケーブル(1)。
【0041】
[4]前記シールド層(5)に用いる金属素線は、銅の純度が99.99%以上である銅合金線からなり、伸びが5%以上で、かつ引張強度が350MPa以上である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0042】
[5]前記シース(6)は、その外面が周方向に沿って凹凸を有する、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のケーブル(1)。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…ケーブル
2…電線
21…第1電線
211…導体
212…絶縁体
22…第2電線
221…内部導体
222…内部絶縁体
223…外部導体
224…外部絶縁体
3…ケーブルコア
31…内層部
32…外層部
4…テープ部材
5…シールド層
6…シース
7…抗張力繊維