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特許7582200半導体用接着剤、半導体用接着剤シート、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体用接着剤、半導体用接着剤シート、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241106BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
C09J201/00
C09J11/06
C09J7/35
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021550587
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035122
(87)【国際公開番号】W WO2021065517
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/038631
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】川俣 龍太
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 利泰
(72)【発明者】
【氏名】茶花 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮原 正信
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-211244(JP,A)
【文献】特開2016-139757(JP,A)
【文献】特開2019-019248(JP,A)
【文献】特開2018-145346(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235854(WO,A1)
【文献】特開2017-098309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
C09J 201/00
C09J 11/06
C09J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂、硬化剤、及び酸基を有するフラックス化合物を含む半導体用接着剤であって、
当該半導体用接着剤を10℃/分の昇温速度で加熱する示差走査熱量測定により得られるDSC曲線における60~155℃の発熱量が、20J/g以下であり、
前記DSC曲線において、硬化反応による発熱ピークのオンセット温度が150℃以上である、
半導体用接着剤。
【請求項2】
前記フラックス化合物が、カルボキシル基を有する有機酸である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項3】
前記フラックス化合物の融点が、50~200℃である、請求項1又は2に記載の半導体用接着剤。
【請求項4】
前記硬化剤がイミダゾール系硬化剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項5】
前記イミダゾール系硬化剤が、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体から選ばれるものである、請求項4に記載の半導体用接着剤。
【請求項6】
熱可塑性樹脂を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項7】
半導体チップの複数の接続部及び配線回路基板の複数の接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの複数の接続部が互いに電気的に接続された半導体装置において、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部を封止するために用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項8】
前記半導体チップの複数の前記接続部のうち少なくとも一部が、はんだバンプを含む、請求項に記載の半導体用接着剤。
【請求項9】
支持基材と、該支持基材上に設けられ、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体用接着剤を含む接着剤層と、を備える、半導体用接着剤シート。
【請求項10】
前記支持基材が、プラスチックフィルムと該プラスチックフィルム上に設けられた粘着剤層とを有し、前記接着剤層が前記粘着剤層上に設けられている、請求項に記載の半導体用接着剤シート。
【請求項11】
複数の接続部を有する半導体チップと複数の接続部を有する配線回路基板との間に接着剤を介在させながら、前記半導体チップ、前記配線回路基板、及び前記接着剤を加熱及び加圧することにより、前記半導体チップの前記接続部及び前記配線回路基板の前記接続部が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部が、硬化した前記接着剤によって封止されている、接合体を形成する工程、
複数の接続部を有する複数の半導体チップの間に接着剤を介在させながら、前記半導体チップ、及び前記接着剤を加熱及び加圧することにより、複数の前記半導体チップの前記接続部が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部が、硬化した前記接着剤によって封止されている、接合体を形成する工程、並びに、
複数の接続部を有する半導体チップと複数の接続部を有する半導体ウエハとの間に接着剤を介在させながら、前記半導体チップ、前記半導体ウエハ、及び前記接着剤を加熱することにより、前記半導体チップの前記接続部及び前記半導体ウエハの前記接続部が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部が、硬化した前記接着剤によって封止されている、接合体を形成する工程
から選ばれる少なくとも1つの工程を備え、
前記接着剤が、請求項1~のいずれか一項に記載の半導体用接着剤である、
半導体装置を製造する方法。
【請求項12】
当該方法が、
2つの主面を有するウエハ本体、及び前記ウエハ本体の一方の主面上に設けられた複数の前記接続部を有する半導体ウエハを準備する工程と、
前記ウエハ本体の前記接続部側の主面上に前記接着剤を含む接着剤層を設ける工程と、
前記ウエハ本体の前記接続部とは反対側の主面を研削することにより、前記ウエハ本体を薄化する工程と、
薄化した前記ウエハ本体及び前記接着剤層をダイシングすることにより、前記半導体チップ及び前記接着剤層を有する接着剤付き半導体チップを形成する工程と、
を更に備える、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用接着剤、半導体用接着剤シート、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造のために、接続部としてのバンプを有する半導体チップを、配線回路基板の接続部(電極)にバンプを介して直接接続するフリップチップ接続方式が採用されることがある。フリップチップ接続方式では、一般に、半導体チップと配線回路基板との間隙を充填し、接続部を封止するアンダーフィルが接着剤によって形成される。
【0003】
アンダーフィルを形成する方法として、半導体チップと配線回路基板とを接続した後、液状樹脂を半導体チップと配線回路基板との間隙に注入する方法が知られている(特許文献1参照)。異方導電性接着フィルム(ACF)、又は非導電性接着フィルム(NCF)のような接着フィルムを用いてアンダーフィルが形成されることもある(特許文献2参照)。
【0004】
高機能化及び高速動作のために、半導体チップ間を最短距離で接続する3次元実装技術であるシリコン貫通電極(TSV:Through Silicon Via)が注目されている(非特許文献1参照)。そのために、半導体ウエハを、機械強度を維持しながらできるだけ薄くすることが要求されてきている。半導体ウエハをより薄くするために、半導体ウエハの裏面を研削する、いわゆるバックグラインドが行われることがある。バックグラインドの工程の簡略化のために、半導体ウエハを保持する機能とアンダーフィル材としての機能を兼ね備える樹脂も提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-100862号公報
【文献】特開2003-142529号公報
【文献】特開2001-332520号公報
【文献】特開2005-028734号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】OKIテクニカルレビュー、2007年10月/第211号、Vol.74、No.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体チップの多段化に伴って、半導体チップと配線回路基板又は他の半導体チップとをフリップチップ接続方式によって接続するために用いられる接着剤が、接続のための加熱の前に60℃~80℃の温度域に放置される時間が長くなる傾向がある。熱履歴を受けた接着剤を介在させながら半導体チップと配線回路基板又は他の半導体チップとを接続すると、十分な接続信頼性が得られないことがあった。
【0008】
そこで本発明の一側面は、長時間の熱履歴を受けた後であっても、半導体チップと配線回路基板又は他の半導体チップとをフリップチップ接続方式によって高い信頼性で接続することを可能にする半導体用接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、熱硬化性樹脂、硬化剤及び酸基を有するフラックス化合物を含む半導体用接着剤を提供する。前記半導体用接着剤を10℃/分の昇温速度で加熱する示差走査熱量測定により得られるDSC曲線の60~155℃の発熱量が、20J/g以下である。前記DSC曲線において、硬化反応による発熱ピークのオンセット温度が150℃以上である。
【0010】
本発明の別の一側面は、支持基材と、該支持基材上に設けられ、上記半導体用接着剤からなる接着剤層と、を備える、半導体用接着剤シートを提供する。
【0011】
本発明の更に別の一側面は、複数の接続部を有する半導体チップと複数の接続部を有する配線回路基板との間に接着剤を介在させながら、前記半導体チップ、前記配線回路基板、及び前記接着剤を加熱及び加圧することにより、前記半導体チップの前記接続部及び前記配線回路基板の前記接続部が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部が、硬化した前記接着剤によって封止されている、接合体を形成する工程、
複数の接続部を有する複数の半導体チップの間に接着剤を介在させながら、前記半導体チップ、及び前記接着剤を加熱及び加圧することにより、複数の前記半導体チップの前記接続部が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部が、硬化した前記接着剤によって封止されている、接合体を形成する工程、並びに、
複数の接続部を有する半導体チップと複数の接続部を有する半導体ウエハとの間に接着剤を介在させながら、前記半導体チップ、前記半導体ウエハ、及び前記接着剤を加熱及び加圧することにより、前記半導体チップの前記接続部及び前記半導体ウエハの前記接続部が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された前記接続部のうち少なくとも一部が、硬化した前記接着剤によって封止されている、接合体を形成する工程
から選ばれる少なくとも1つの工程を備える、半導体装置を製造する方法を提供する。前記接着剤が、本発明の一側面に係る上記半導体用接着剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、例えば60~80℃程度の温度で長時間の熱履歴を受けた後であっても、半導体チップと配線回路基板又は他の半導体チップとをフリップチップ接続方式によって高い信頼性で接続することを可能にする半導体用接着剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】接着剤シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図2】DSC曲線からオンセット温度を求める方法を示す模式図である。
図3】DSC曲線から60~155℃の発熱量を求める方法を示す模式図である。
図4】DSC曲線から60~155℃の発熱量を求める方法を示す模式図である。
図5】接着剤シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図6】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図7】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図8】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図9】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図10】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
図11】半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、接着剤シートの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示す接着剤シート10は、支持基材3と、支持基材3上に設けられた接着剤層2と、接着剤層2を被覆する保護フィルム1とを備える半導体用接着剤シートである。
【0016】
接着剤層2は、熱硬化性の接着剤によって形成された層である。接着剤層2を形成する接着剤は、(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤及び(C)酸基を有するフラックス化合物を含む半導体用接着剤である。
【0017】
接着剤を10℃/分の昇温速度で加熱する示差走査熱量測定により得られるDSC曲線の60~155℃の発熱量は、20J/g以下である。DSC曲線において、硬化反応による発熱ピークのオンセット温度が150℃以上である。
【0018】
ここで、示差走査熱量測定は、サンプルとなる半導体用接着剤の重量を10mgとし、測定温度範囲を30~300℃とし、昇温速度を10℃/分として、空気又は窒素雰囲気で接着剤を加熱することにより行う。DSC曲線は、示差走査熱量測定によって得られる、発熱量と温度との関係を示すグラフである。発熱量は、ピーク面積の積分により算出される。
【0019】
熱硬化性樹脂及びフラックス化合物を含む従来の半導体用接着剤は、一般に、DSC曲線の60~155℃の温度領域に発熱ピークを有しており、その温度領域における発熱量は20J/gを超える。この温度領域における発熱は、半導体用接着剤中の熱硬化性樹脂とフラックス化合物の反応に由来する発熱であると推察される。半導体用接着剤が長時間の熱履歴を受けると、熱硬化性樹脂とフラックス化合物との反応が進行し、その結果接着剤の流動性が低下すると考えられる。この流動性の低下が、接続信頼性低下の一因であると考えられる。本実施形態に係る接着剤のようにDSC曲線の60~155℃の発熱量が20J/g以下であり、且つ、硬化反応による発熱ピークのオンセット温度が150℃以上であると、接続前に熱履歴を受けたときであっても、接着剤が充分な流動性を維持し易い。その結果、接着剤が長時間の熱履歴を受けた後であっても、半導体チップと配線回路基板又は他の半導体チップとをフリップチップ接続方式によって高い信頼性で接続できると考えられる。
【0020】
図2は、DSC曲線からオンセット温度を求める方法を示す模式図である。図1に示されるDSC曲線は、60~280℃の温度領域に、ベースラインL0と、ベースラインL0の途中に観測される、接着剤の硬化反応による発熱ピークPとを含む。発熱ピークPの下部におけるベースラインL0の延長線L1と、発熱ピークPにおいてDSC曲線が最大勾配を示す点におけるDSC曲線の接線L2との交点の温度Tが、オンセット温度である。
【0021】
図3及び図4は、DSC曲線から60~155℃の発熱量を求める方法を示す模式図である。図3のように、DSC曲線が、発熱ピークとして、155℃以下の部分を含む発熱ピークPだけを含む場合、発熱ピークPのうち、155℃以下の部分の発熱量Q1が、60~155℃の発熱量である。発熱量Q1は、発熱ピークPとベースラインL0の延長線L1とで囲まれる155℃以下の領域の面積から求められる。図4のように、DSC曲線が、155℃以下の領域に発熱ピークP以外のピークを更に含む場合、そのピークの発熱量Q2と、発熱ピークPの155℃以下における発熱量Q1との合計が、60~155℃の発熱量である。60~155℃以下の領域においてより多くの発熱ピークが観測される場合、それらの発熱ピークの発熱量も全て足し合わせた発熱量が、60~155℃の発熱量である。
【0022】
オンセット温度は、155℃以上、又は160℃以上であってもよく、200℃以下、190℃以下、又は180℃以下であってもよい。60~155℃の発熱量は、15J/g以下、又は10J/g以下であってもよく、0J/gであってもよい。オンセット温度、及び60~155℃の発熱量は、主として、熱硬化性樹脂、硬化剤及びフラックス剤の種類及び含有量によって制御することができる。
【0023】
(A)成分の熱硬化性樹脂は、特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、シアノアクリレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂及びシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。耐熱性及び接着性を向上する観点から、(A)成分が、エポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0024】
上記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂ハンドブック(新保正樹編、日刊工業新聞社)等に記載されるエポキシ樹脂を広く使用することができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂を使用することができる。多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することもできる。
【0025】
接着剤が後述の熱可塑性樹脂を含む場合、(A)成分の含有量は、硬化後の接着剤の耐熱性、接着性を維持し、高信頼性を発現させるため、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して5~88質量部、20~50質量部、20~40質量部、又は15~35質量部であってもよい。(A)成分の含有量が5質量部以上であると、更に高い接続信頼性が得られ易い。(A)成分の含有量が88質量部以下であると、接着剤層が形態を保持し易い。
【0026】
高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下の熱硬化性樹脂を用いてもよい。接続時の温度が300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0027】
(B)成分の硬化剤は、イミダゾール系硬化剤を含んでもよい。イミダゾール系硬化剤は、イミダゾール誘導体である。イミダゾール系硬化剤を適切に選択することにより、60~155℃の発熱量が20J/gで、オンセット温度が150℃以上である接着剤が得られ易い。係る観点から、例えば、210℃以上の融点を有するイミダゾール系硬化剤を用いてもよい。
【0028】
イミダゾール系硬化剤の例としては、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性、オンセット温度の制御の観点から、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾールを用いてもよい。
【0029】
硬化剤(又はイミダゾール系硬化剤)の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~45質量部であってもよい。(A)成分の含有量が0.1質量部以上であると、十分な硬化反応速度が得られ易い。(A)成分の含有量が45質量部以下であると、良好な耐熱性及び接着性が維持され易い。
【0030】
硬化剤(又はイミダゾール系硬化剤)の平均粒径は、分散性及び接着剤層の平坦性確保の観点から、10μm以下、5μm以下、又は2μm以下であってもよい。平均粒径が10μmより大きいと接着剤層を形成するためのワニスにおいて硬化剤が沈降し易い傾向もある。
【0031】
(C)成分のフラックス化合物は、カルボキシル基を有する有機酸であってもよい。
【0032】
(C)成分が溶融すると、接続部を構成する金属表面の酸化物を除去することで、接着剤層2のハンダ濡れ性を向上することができる。そのため、(C)成分は、接続部としてのハンダの融点よりも低い融点を有していてもよい。
【0033】
(C)成分は、通常、樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒に溶解する。その後、接着剤層を形成する工程で、加熱により有機溶媒が気化することで、溶解していた(C)成分が再度析出し、フラックス化合物の微粉末が接着剤層内に均一に存在する。よって、フラックス化合物の比表面積が増え、酸化膜との接触点が多くなる為、酸化膜を除去しやすくなり、ハンダ接続性が向上する。
【0034】
(C)成分の融点は、熱圧着時に微粉末のフラックス化合物が溶融し、液状化することでフラックス性が向上するという観点から、50~200℃であってもよい。フラックス化合物の融点がこの範囲内であると、より高い接続信頼性が得られ易い。
【0035】
フラックス化合物の融点は、一般的な融点測定装置を用いて測定できる。融点を測定する試料は、微粉末に粉砕され且つ微量を用いることで試料内の温度の偏差を少なくすることが求められる。試料の容器としては一方の端を閉じた毛細管が用いられることが多いが、測定装置によっては2枚の顕微鏡用カバーグラスに挟み込んで容器とするものもある。また急激に温度を上昇させると試料と温度計との間に温度勾配が発生して測定誤差を生じるため融点を計測する時点での加温は毎分1℃以下の上昇率で測定することが望ましい。
【0036】
(C)成分の含有量は、接着剤100質量部に対して、0.1~20質量部、又は0.5~10質量部であってもよい。(C)成分の含有量がこの範囲であると、良好なハンダ濡れ性が確保され易い。
【0037】
接着剤層は、例えば(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)フラックス化合物及び有機溶媒を含む樹脂ワニスを用いて形成することができる。樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒は、特に限定されないが、(A)成分と(C)成分を溶解し、接着剤層形成時の揮発性などを沸点から考慮して選択することができる。具体的には、例えば、エタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒を含む樹脂ワニスを用いると、接着剤層を形成する間に接着剤層の硬化が進みにくい。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本実施形態の接着剤は、必要に応じて、熱可塑性樹脂(以下、(D)成分という。)を含有してもよい。(D)成分を含有する接着剤は、耐熱性及びフィルム形成性に一層優れる。
【0039】
(D)成分としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
(D)成分は、接着剤のフィルム形成性を良好にすることができる。フィルム形成性とは、接着剤によってフィルム状の接着剤層を形成したときに、接着剤層が容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性を意味する。通常の状態(例えば、常温)でフィルムとしての取扱いが容易であると、フィルム形成性が良好であるといえる。上述した熱可塑性樹脂の中でも、耐熱性及び機械強度に優れることから、ポリイミド樹脂又はフェノキシ樹脂を使用してもよい。
【0041】
(D)成分の含有量は、(D)成分(熱可塑性樹脂)と(A)成分(熱硬化性樹脂)の合計量100質量部に対して、10~50質量部、15~40質量部、又は20~35質量部であってもよい。(D)成分の含有量がこの範囲にあると、接着剤のフィルム形成性を良好にしつつ、熱圧着時に流動性を示し、バンプと回路電極間の樹脂排除性を良好にできる。
【0042】
(D)成分の重量平均分子量は1万~80万、3万~50万、3.5万~10万、又は4万~8万であってもよい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状とした接着剤層2の強度、可とう性を良好にバランスさせることが容易となるとともに接着剤層2のフロー性が良好となるため、配線の回路充填性(埋込性)を十分確保できる。本明細書において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を意味する。
【0043】
フィルム形成性を維持しつつ、硬化前の接着剤層に粘接着性を付与する観点から、(D)成分のガラス転移温度は、20~170℃、又は25~120℃であってもよい。(D)成分のガラス転移温度が20℃未満では室温でのフィルム形成性が低下し、バックグラインド工程での半導体ウエハの加工中に接着剤層2が変形し易くなる傾向がある。(D)成分のガラス転移温度が170℃以下であると、熱履歴を受けた後の接着剤による接続信頼性向上の効果がより一層顕著に奏され得る。
【0044】
本実施形態の接着剤は、必要に応じて、無機フィラー(以下、(E)成分という。)を含有してもよい。(E)成分によって、接着剤の粘度、接着剤の硬化物の物性等を制御することができる。具体的には、(E)成分によれば、例えば、接続時のボイド発生の抑制、接着剤の硬化物の吸湿率の低減等を図ることができる。
【0045】
接着剤が(E)成分を含むことで、硬化後の接着剤層2の吸湿率及び線膨張係数を低減し、弾性率を高くすることができるため、作製される半導体装置の接続信頼性を向上することができる。(E)成分としては、接着剤層2における可視光の散乱を防止して可視光透過率を向上するために、可視光透過率を低減しない無機フィラーを選択することができる。可視光透過率の低下を抑制可能な(E)成分として、可視光の波長よりも細か粒子径を有する無機フィラーを選択すること、あるいは、接着剤の屈折率に近似の屈折率を有する無機フィラーを選択してもよい。
【0046】
可視光の波長よりも細かい粒子径を有する(E)成分としては、透明性を有するフィラーであれば特にフィラーの組成に制限はない。無機フィラーの平均粒径は0.3μm未満、又は0.1μm以下であってもよい。無機フィラーの屈折率は、1.46~1.7であってもよい。
【0047】
接着剤の屈折率に近似の屈折率を有する(E)成分としては、接着剤を作製し、屈折率を測定した後、該屈折率に近似の屈折率を有する無機フィラーを選定することができる。該無機フィラーとして、接着剤層の半導体チップと配線回路基板との空隙への充填性の観点及び接続工程でのボイドの発生を抑制する観点から、微細なフィラーを用いてもよい。無機フィラーの平均粒径は、0.01~5μm、0.1~2μm、又は0.3~1μmであってもよい。無機フィラーの平均粒径が0.01μm未満であると、粒子の被表面積が大きくなり接着剤の粘度が増加して、突起電極への埋め込み性が悪くなり、ボイドの残留が置きやすくなる。平均粒径が5μmを超えると可視光の散乱が発生し、可視光透過率が低下する傾向がある。
【0048】
接着剤の屈折率に近似の屈折率を有する(E)成分の屈折率は、接着剤の屈折率±0.06の範囲であってもよい。例えば、接着剤の屈折率が1.60であった場合、無機フィラーの屈折率が1.54~1.66であってもよい。屈折率は、アッベ屈折計を用いナトリウムD線(589nm)を光源として測定することができる。
【0049】
無機フィラーの例としては、複合酸化物フィラー、複合水酸化物フィラー、硫酸バリウム及び粘土鉱物が挙げられる。より具体的には、例えば、コージェライト、フォルスイト、ムライト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、バリウム又はシリカチタニアを使用することができる。これらの無機フィラーは2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
接着剤層の弾性率を向上する観点から、(E)成分の線膨張係数が0~700℃の温度範囲で7×10-6/℃以下、又は3×10-6/℃以下であってもよい。
【0051】
(E)成分の含有量は、(E)成分を除く接着剤100質量部に対して、25~200質量部、50~150質量部、又は75~125質量部であってもよい。(E)成分の含有量が25質量部未満では接着剤から形成される接着剤層の線膨張係数の増大と弾性率の低下を招き易くなる。このため、圧着後の半導体チップと配線回路基板との接続信頼性が低下し易く、さらに、接続時のボイド抑制効果も得られ難くなる。(E)成分の含有量が200質量部を超えると、接着剤の溶融粘度が増加し、半導体チップと接着剤層2との界面又は回路基板と接着剤層2との界面の濡れ性が低下することによって、剥離又は埋め込み不足によるボイドの残留が起き易くなる。
【0052】
本実施形態の接着剤は、必要に応じて、有機フィラー(以下、(F)成分という。)を含有してもよい。(F)成分によって、接着剤の接着性等を制御することができる。(F)成分は、一般に有機溶剤に溶解しないことから、粒子形状を維持したままで接着剤中に配合することができる。このため、硬化後の接着剤層2中に(F)成分を島状に分散することができ、接続体の強度を高く保つことができる。それにより、接着剤は応力緩和性を有する耐衝撃緩和剤としての機能を付与することが出来る。
【0053】
(F)成分の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ブタジエンゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、アクリルゴム、ポリスチレン、NBR、SBR、シリコーン変性樹脂等を成分として含む共重合体が挙げられる。
【0054】
接着剤への分散性、応力緩和性、接着性向上の観点から、(F)成分は分子量が100万以上の有機フィラー又は三次元架橋構造を有する有機フィラーであってもよい。係る有機フィラーは、(メタ)アクリル酸アルキル-ブタジエン-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル-シリコーン共重合体、シリコーン-(メタ)アクリル共重合体又は複合体から選ばれる1種類以上を含んでもよい。「分子量が100万以上の有機フィラー又は三次元架橋構造を有する有機フィラー」とは、超高分子量であるが故に溶媒への溶解性が乏しいもの、あるいは三次元網目構造を有しているため溶媒への溶解性が乏しいものである。(E)成分として、コアシェル型の構造を有し、コア層とシェル層で組成が異なる有機フィラーを用いることもきる。コアシェル型の有機フィラーとして、具体的には、シリコーン-アクリルゴムをコアとてアクリル樹脂をガラフトした粒子、アクリル共重合体にアクリル樹脂をグラフトとした粒子が挙げられる。
【0055】
(F)成分の平均粒径が0.1~2μmであってもよい。平均粒径が0.1μm未満であると、ボイド抑制効果が得られ難い傾向にある。
【0056】
(F)成分の含有量は、接続時のボイド抑制と接続後の応力緩和効果を接着剤層に付与させるため、(F)成分を除く接着剤100質量部に対して、5~20質量部であってもよい。
【0057】
接着剤には、フィラーの表面を改質し異種材料間の界面結合を向上させ接着強度を増大するために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系及びアルミニウム系のカップリング剤が挙げられる。効果が高い点でカップリング剤がシラン系カップリング剤であってもよい。
【0058】
シラン系カップリング剤としては、例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシランが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
接着剤には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を向上するために、イオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては特に制限はない。例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤が挙げられる。
【0060】
接着剤は、半導体チップと回路基板とを接続した後の温度変化、又は加熱吸湿による膨張等を抑制し、高接続信頼性を達成するため、硬化後の接着剤層の40~100℃における線膨張係数が60×10-6/℃以下、55×10-6/℃以下、又は50×10-6/℃以下であってもよい。硬化後の接着剤層の線膨張係数が60×10-6/℃以下であると、実装後の温度変化、又は加熱吸湿による膨張によって半導体チップの接続部と配線回路基板の接続部との間での電気的接続が保持できなくなることを効果的に抑制できる。
【0061】
接着剤シート10は、接着剤層2が導電粒子を含有する異方導電性接着フィルム(ACF)であってもよいが、接着剤層2が導電粒子を含有しない非導電性接着フィルム(NCF)であってもよい。
【0062】
接着剤から形成される接着剤層2は、250℃で10秒加熱した後、DSCで測定される反応率が60%以上、又は70%以上であってもよい。接着剤シートを室温で14日間保管した後、DSCで測定される接着剤層2の反応率が10%未満であってもよい。
【0063】
未硬化の接着剤層2の可視光透過率が5%以上、8%以上、又は10%以上であってもよい。可視光透過率が5%未満では位置合わせが困難になる傾向がある。一方、可視光透過率の上限に関しては特に制限はない。
【0064】
可視光透過率は、株式会社日立製作所製U-3310形分光光度計を用いて測定することができる。例えば、膜厚50μmの東洋紡フイルムソリューション株式会社製PETフィルム(ピューレックス、555nmでの透過率86.03%、「ピューレックス」は登録商標)を基準物質としてベースライン補正測定を行った後、PETフィルムに25μmの厚みで接着剤層2を形成した後、400~800nmの可視光領域の透過率を測定する。フリップチップボンダーで使用されるハロゲン光源とライトガイドの波長相対強度において550~600nmが最も強いことから、本明細書においては555nmにおける透過率を用いて接着剤層2の透過率の比較を行っている。
【0065】
接着剤層2は、上述した本実施形態に係る接着剤を溶剤に溶解若しくは分散してワニスとし、このワニスを保護フィルム(以下、場合により「第一のフィルム」という)1上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって形成することができる。その後、接着剤層2に支持基材3を常温~80℃で積層し、本実施形態の接着剤シート10を得ることができる。接着剤層2は、上記ワニスを支持基材3上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって形成することもできる。
【0066】
保護フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることができる。剥離性の観点から、保護フィルム1として、ポリテトラフルオロエチレンフィルムのようなフッ素樹脂からなる表面エネルギーの低いフィルムを用いてもよい。
【0067】
保護フィルム1の剥離性を向上するために、保護フィルム1の接着剤層2を形成する面をシリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で処理してもよい。離型剤で処理された市販の保護フィルムとして、例えば、東洋紡フイルムソリューション株式会社製の「A-63」(離型処理剤:変性シリコーン系)及び「A-31」(離型処理剤:Pt系シリコーン系)を入手することができる。
【0068】
保護フィルム1の厚みが10~100μm、10~75μm、又は25~50μmであってもよい。この厚みが10μm未満では塗工の際、保護フィルムが破れる傾向があり、100μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0069】
上記ワニスを保護フィルム1(又は支持基材3)上に塗布する方法としては、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等、一般に周知の方法が挙げられる。
【0070】
接着剤層2の厚みは、特に制限はないが、5~200μm、7~150μm、又は10~100μmであってもよい。厚みが5μmより小さいと、十分な接着力を確保するのが困難となり、回路基板の凸電極を埋められなくなる傾向がある。厚みが200μmより大きいと経済的でなくなる上に、半導体装置の小型化の要求に応えることが困難となる。
【0071】
支持基材3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。支持基材3は、上記の材料から選ばれる2種以上が混合されたもの、又は、上記のフィルムが複層化されたものでもよい。
【0072】
支持基材3の厚みは、特に制限はないが、5~250μmであってもよい。厚みが5μmより薄いと、半導体ウエハの研削(バックグラインド)時に支持基材が切れる可能性がある。厚さが250μmより大きいと経済的でなくなる傾向がある。
【0073】
支持基材3の500~800nmの波長域における最小光透過率が10%以上であってもよい。
【0074】
支持基材3として、上記プラスチックフィルム(以下、場合により「第二のフィルム」という)上に粘着剤層が積層されたものを用いることができる。
【0075】
図5は、接着剤シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着剤シート11は、プラスチックフィルム3bとプラスチックフィルム3b上に設けられた粘着剤層3aとを有する支持基材3と、粘着剤層3a上に設けられ、本実施形態の接着剤からなる接着剤層2と、接着剤層2を被覆する保護フィルム1とを備えている。
【0076】
プラスチックフィルム3bと粘着剤層3aとの密着性を向上させるために、プラスチックフィルム3bの表面に、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理を施してもよい。
【0077】
粘着剤層3aは、室温で粘着力があり、被着体に対する必要な密着力を有していてもよい。粘着剤層3aが、放射線等の高エネルギー線又は熱によって硬化する(すなわち、粘着力を低下させる)特性を備えていてもよい。粘着剤層3aは、例えば、アクリル系樹脂、各種合成ゴム、天然ゴム、ポリイミド樹脂を用いて形成することができる。粘着剤層3aの厚みは、通常5~20μm程度である。
【0078】
接着剤シート10及び11は、半導体チップの複数の接続部及び配線回路基板の複数の接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの複数の接続部が互いに電気的に接続された半導体装置において、互いに電気的に接続された接続部のうち少なくとも一部を封止するために用いることができる。接着剤シート10及び11は、シリコン貫通電極を用いた積層技術における接着剤として用いることも可能である。
【0079】
以下、接着剤シート10又は11を用いて半導体装置を製造する方法の例について説明する。図6図7図8図9及び図10は、半導体装置を製造する方法の一実施形態を示す模式断面図である。図6~10に示される方法は、2つの主面を有するウエハ本体A、及びウエハ本体Aの一方の主面上に設けられた複数の接続部20を有する半導体ウエハ30を準備する工程と、ウエハ本体Aの接続部20側の主面上に接着剤を含む接着剤層2を設ける工程と、ウエハ本体Aの接続部20とは反対側の主面を研削することにより、ウエハ本体Aを薄化する工程と、薄化したウエハ本体A及び接着剤層2をダイシングすることにより、チップ本体A’及び複数の接続部20を有する半導体チップ30’と、接着剤層2とを有する接着剤付き半導体チップ35を形成する工程と、複数の接続部20を有する半導体チップ30’と複数の接続部22を有する配線回路基板40との間に接着剤層2を介在させながら、半導体チップ30’、配線回路基板40、及び接着剤層2を加熱することにより、半導体チップ30’の接続部20及び配線回路基板40の接続部22が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された接続部20,22が、硬化した接着剤層2aによって封止された接合体50を形成する工程とから構成される。
【0080】
図6に示されるように、ウエハ本体Aの接続部20が設けられている側の主面に支持基材3上の接着剤層2を貼付け、支持基材3/接着剤層2/半導体ウエハ30が積層された積層体を得る。ウエハ本体A上に設けられた複数の接続部20のうち一部又は全部が、はんだ接合用のはんだバンプであってもよい。配線回路基板40の接続部22のうち一部又は全部がはんだバンプであってもよい。
【0081】
支持基材3/接着剤層2/半導体ウエハ30が積層された積層体を得るために、市販のフィルム貼付装置又はラミネータを使用することができる。半導体ウエハ30にボイドの巻き込み無く、接着剤層2を貼り付けるため、貼付装置には加熱機構及び加圧機構が備わっていることが望ましく、真空吸引機構が備わっていることはより望ましい。半導体ウエハ30の外形に合わせて加工された、ロール状又はシート状の接着剤シート10を用いて接着剤層2を半導体ウエハ30に貼り付けてもよい。
【0082】
半導体ウエハ30への接着剤層2の貼り付けは接着剤層2が軟化する温度で行ってもよい。貼り付けのための温度は、40~80℃、50~80℃、又は60~80℃であってもよい。
【0083】
次に、図7に示されるように、ウエハ本体Aの接続部20が設けられている側とは反対側の面をグラインダー4によって研削しウエハ本体Aを薄化する。薄化されたウエハ本体Aの厚みは、例えば、10~300μm、又は20~100μmであってもよい。
【0084】
ウエハ本体Aの研削は一般的なバックグラインド(B/G)装置を用いて行うことができる。B/G工程でウエハ本体Aを厚みムラなく均一に研削するためには、接着剤層2をボイドの巻き込みなく均一に半導体ウエハ30に貼り付けてもよい。
【0085】
図8の(a)に示されるように、積層体の半導体ウエハ30にダイシングテープ5を貼付け、これを所定の装置に配置して支持基材3を剥がす。このとき、図5に示される接着剤シート11のように支持基材3が粘着剤層3aを備え、粘着剤層3aが放射線硬化性である場合、支持基材3側から放射線を照射することにより、粘着剤層3aを硬化させ接着剤層2と支持基材3との間の接着力を低下させることができる。ここで、使用される放射線としては、例えば、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。これにより支持基材3を容易に剥がすことができる。支持基材3の剥離後、図8の(b)に示されるように、半導体ウエハ30のウエハ本体A及び接着剤層2をダイシングソウ6によりダイシングする。こうして、ウエハ本体Aは複数のチップ本体A’に分割され、接着剤層2はチップ本体A’上の複数の部分に分割される。ダイシングにより、チップ本体A’と複数の接続部20とを有する個片化された半導体チップ30’が形成される。
【0086】
次に、図9に示されるように、ダイシングテープ5をエキスパンド(拡張)することにより、半導体チップ30’を互いに離間させつつ、ダイシングテープ5側からニードルで突き上げられた半導体チップ30’及び接着剤層2からなる接着剤付き半導体チップ35を吸引コレット7で吸引してピックアップする。接着剤付き半導体チップ35は、トレー詰めして回収してもよく、そのままフリップチップボンダーで配線回路基板40に実装してもよい。
【0087】
研削されたウエハ本体Aにダイシングテープ5を貼り合わせる作業は、一般的なウエハマウンタを使用して、ダイシングフレームへの固定と同一工程で実施できる。ダイシングテープ5は市販のダイシングテープを適用することができ、UV硬化型であってもよく、感圧型であってもよい。
【0088】
図10に示されるように、半導体チップ30’の接続部20と、配線回路基板40の接続部22とを位置合わせし、接着剤付き半導体チップ35と配線回路基板40とを熱圧着する。この熱圧着により、配線回路基板40、半導体チップ30’及び硬化した接着剤層2aから構成される接合体50が形成される。配線回路基板40は、基材8及び基材8上に設けられた複数の接続部22を有する。接続部20と接続部22とがハンダ接合等により電気的且つ機械的に接続される。半導体チップ30’と配線回路基板40との間に、接続部20,22を封止する硬化した接着剤層2aが形成される。接合体50を形成する工程が、接着剤付き半導体チップ35と配線回路基板40とを、接続部20,22の融点よりも低い温度で熱圧着することによって仮圧着体を形成することと、仮圧着体を接続部20又は22のうち少なくとも一方が溶融する温度で加熱及び加圧することによって接合体50を形成することとを含んでいてもよい。
【0089】
熱圧着時の温度は、ハンダ接合の観点から、200℃以上、又は220~260℃であってもよい。熱圧着時間は、1~20秒間であってよい。熱圧着の圧力は、0.1~5MPaであってよい。
【0090】
フリップチップボンダーを用いた配線回路基板40への実装では、チップ本体A’の回路面に形成されたアライメントマークを参照することにより、接続部20,22を位置合わせすることができる。
【0091】
以上の工程を経て、配線回路基板40と、配線回路基板40上に搭載された半導体チップ30’と、これらの間に介在し、接続部20,22を封止する接着剤層2aとを有する接合体50を備える半導体装置が得られる。
【0092】
図11は、半導体装置を製造する方法の他の一実施形態を示す模式断面図である。図11に示される方法は、複数の接続部20を有する半導体チップ30’と複数の接続部23を有する半導体ウエハ30との間に接着剤からなる接着剤層2を介在させながら、半導体チップ30’、半導体ウエハ30、及び接着剤層2を加熱することにより、半導体チップ30’の接続部20及び半導体ウエハAの接続部23が互いに電気的に接続され、互いに電気的に接続された接続部22,23が、硬化した接着剤からなる接着剤層2aによって封止された接合体50を形成する工程を含む。より詳細には、接合体50を形成する工程は、図11の(a)に示されるようにステージ60上に半導体ウエハ30を配置することと、図11の(b)に示されるように半導体ウエハ30、接着剤層2及び半導体チップ30’から構成される積層体である仮圧着体55を形成することと、図11の(c)に示されるように仮圧着体55を接続部20又は接続部23のうち少なくとも一方が溶融する温度に加熱しながら加圧することによって、図11の(d)に示される、接続部20と接続部23とが電気的に接続された接合体50を形成することと、図11の(e)に示されるように接合体50を加圧オーブン90内で更に加熱及び加圧することとを含む。
【0093】
半導体チップ30’の接続部20は、チップ本体A’上に設けられたピラー又はバンプ20a、及びピラー又はバンプ20a上に設けられたはんだ20bとを有する。半導体ウエハ30は、ウエハ本体Aと、ウエハ本体A上に設けられた配線15と、配線15上に設けられた接続部24と、ウエハ本体A上に設けられ、配線15を覆うパッシベーション膜16とを有する。
【0094】
仮圧着体55は、加熱されたステージ60上で、接着剤付き半導体チップ35を、半導体ウエハ30に対して圧着ツール70によって熱圧着することによって形成される。ステージ60の加熱温度は、接続部20(特にはんだ20b)の融点及び接続部23の融点よりも低い温度であり、例えば60~150℃、又は70~100℃であってもよい。圧着ツール70の温度は、例えば、80~350℃、又は、100~170℃であってもよい。仮圧着体55を形成するための熱圧着の時間は、例えば、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよい。
【0095】
接合体50は、加熱されたステージ60上の仮圧着体55を、圧着ツール80を用いて、接続部20(特にはんだ20b)の融点又は接続部23の融点のうち少なくとも一方の温度以上に加熱しながら加圧することによって形成される。圧着ツール80の温度は、例えば180℃以上、220℃以上、又は250℃以上であってもよく、350℃以下、320℃以下、又は300℃以下であってもよい。接合体50を形成するための熱圧着の間のステージ60の加熱温度は、60~150℃、又は70~100℃であってもよい。接合体50を形成するための圧着ツール80による熱圧着の時間は、例えば、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよい。
【0096】
加圧オーブン90内での加熱及び加圧により、接着剤層2の硬化を十分に進行させる。ただし、接合体60を形成するための加熱及び加圧の過程で接着剤層2の硬化が部分的に進行していてもよい。加圧オーブン90による加熱温度は、接続部20,24の融点未満であって、接着剤層2の硬化が進行する温度であってもよく、例えば170~200℃であってもよい。
【0097】
1枚の半導体ウエハ30上に複数の半導体チップ30’を接着剤層2を介して順次搭載することによって、複数の半導体チップ30’を有する接合体50を形成し、その後、接合体50を加圧オーブン90内で加熱及び加圧してもよい。その場合、初期に半導体ウエハ30上に配置された半導体チップ30’と半導体ウエハ30との間の接着剤層2は、全ての半導体チップ30’の搭載が完了するまでステージ60による熱履歴が与えられ続ける。長時間の熱履歴を受けた後でも、上述の実施形態に係る接着剤を含む接着剤層2は高い信頼性で接合体50を与えることができる。
【0098】
本実施形態に係る製造方法は、複数の接続部を有する複数の半導体チップの間に接着剤を含む接着剤層を介在させながら、半導体チップの接続部、及び接着剤層を加熱することにより、複数の半導体チップの接続部を互いに電気的に接続させるとともに、互いに電気的に接続された接続部のうち少なくとも一部を、硬化した接着剤によって封止する工程を備えてもよい。
【0099】
本実施形態に係る接着剤及びこれから形成される接着剤層は、埋込性及び硬化後の接着力に優れるとともに、短時間でのハンダ接合においてもハンダ表面に形成される酸化皮膜を除去することができハンダ濡れ性を向上することができる。そのため、接合体50は、ボイドの発生が十分抑制され、接続部同士が良好に接合され、半導体チップ30’と配線回路基板40、半導体ウエハ30、又は他の半導体チップとが十分な接着力で接着され、耐リフロークラック性及び接続信頼性に優れたものになり得る。
【実施例
【0100】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0101】
1.原料
各実施例及び比較例で使用した化合物は以下の通りである。
(A)熱硬化性樹脂
・EP1032:
トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「EP1032H60」
・YL983:
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YL983U」)
・YL7175:
柔軟性エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名「YL7175」)
(B)イミダゾール系硬化剤
・2MAOK:
2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成工業株式会社製、商品名「2MAOK-PW」)
・2PHZ:
2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「2PHZ-PW」)
(C)有機酸
・グルタル酸(東京化成工業株式会社製、融点98℃)
・ジフェニル酢酸(東京化成工業株式会社製、融点147℃)
・ベンジル酸(東京化成工業株式会社製、融点149℃)
(D)熱可塑性樹脂
・FX293:フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「FX293」)
(E)無機フィラー
・KE180G-HLA:
シリカフィラー(株式会社アドマテックス製)
(F)有機フィラー
・EXL-2655:
コアシェルタイプ有機微粒子(ロームアンドハースジャパン株式会社製、商品名「EXL-2655」)
【0102】
2.接着剤シートの作製
(実施例1)
45質量部のEP1032、15質量部のYL983、5質量部のYL7175、3質量部の2PHZ、2質量部のグルタル酸、71.5質量部のKE180G-HLA、10質量部のEXL-2655、及びメチルエチルケトンを含む、固形濃度63質量%の混合物と、直径0.8mmのビーズ及び直径2.0mmのビーズとを、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。続いて、20質量部のFX293を加え、混合物及びビーズを再度ビーズミルで30分撹拌した。ビーズをろ過によって除去し、樹脂ワニスを得た。
【0103】
得られた樹脂ワニスを、支持基材としてのプラスチックフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA53」)上に、小型精密塗工装置(株式会社廉井精機製)で塗工し、塗膜をクリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥(70℃/10min)して、支持基材、及び厚さ0.020mmの接着剤層を有する接着剤シートを得た。2枚の接着剤シートを貼り合わせて厚さ0.040mmの接着剤層を形成し、これを熱処理後の接続信頼性評価に使用した。
【0104】
(実施例2、3、比較例1、2)
材料の種類及び配合比を表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2、3及び比較例1、2の接着剤シートを作製した。
【0105】
3.DSC測定
各接着剤シートの接着剤層から採取した10mgの試料について、示差走査熱量計(Thermo plus DSC8235E、株式会社リガク製)を使用し、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲30~300℃の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行った。得られたDSC曲線のうち60~280℃の温度範囲の部分を部分面積の方法によって解析することにより、ベースラインを指定して60~155℃の範囲での発熱量(単位:J/g)を算出した。全面積(JIS法)の解析手法によって60~280℃の温度範囲で解析することにより、DSC曲線におけるベースラインの延長線と、発熱ピークの最大勾配の点におけるDSC曲線の接線との交点を算出し、交点における温度をオンセット温度(単位:℃)とした。
【0106】
4.熱履歴後の接続信頼性評価
各接着剤シートを縦8mm、横8mmのサイズに切り抜き、接着剤層を配線回路基板(ガラスエポキシ基材:420μm厚、銅配線:9μm厚)に貼付した。配線回路基板に貼付された接着剤層に対して、70℃で5時間の熱処理によって熱履歴を与えた。その後、配線回路基板に、はんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:縦7.3mm×横7.3mm×厚さ0.15mm、銅ピラー及びはんだバンプの合計高さ:約40μm、はんだバンプ数:328)を、接着剤層を介在させながら、フリップ実装装置「FCB3」(パナソニック株式会社製、商品名)を用いて実装した(実装条件:圧着ヘッド温度320℃、圧着時間6秒、圧着圧力15N)。これにより、配線回路基板とはんだバンプ付き半導体チップとがデイジーチェーン接続され、接続部(銅配線及びはんだバンプ)が硬化した接着剤によって封止された半導体装置を作製した。
【0107】
得られた半導体装置の接続抵抗値を、マルチメータ(ADVANTEST Corporation製、商品名「R6871E」)を用いて測定した。接続抵抗値の値により、実装後の初期導通を下記の基準で評価した。「A」は、接続信頼性が良好であることを意味する。
A:10.0~13.5Ω
B:13.5~20Ω
C:20Ωより大きい、10.0Ω未満、又は、接続不良によって抵抗値が表示されない
【0108】
【表1】
【0109】
表1に評価結果が示される。実施例1~3の接着剤は、熱履歴を受ける間の硬化開始が抑制され、流動性を担保したことで、熱履歴を受けた後であっても良好な接続信頼性性が維持されることが確認された。
【符号の説明】
【0110】
1…保護フィルム、2…接着剤層、2a…硬化した接着剤、3…支持基材、3a…粘着剤層、3b…プラスチックフィルム、4…グラインダー、5…ダイシングテープ、6…ダイシングソウ、7…吸引コレット、8…基材、10,11…接着剤シート、20…接続部、22…接続部、30…半導体ウエハ、30’…半導体チップ、35…接着剤付き半導体チップ、40…配線回路基板、50…接合体、A…ウエハ本体、A’…チップ本体、P…発熱ピーク、T…オンセット温度。
図1
図2
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図11