(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20241106BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2021556032
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041099
(87)【国際公開番号】W WO2021095593
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2019206332
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】山之内 洋一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏樹
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135464(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080185(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/122936(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044795(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体(a1)及び該ポリイミド前駆体(a1)のイミド化重合体(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(A)を含有する液晶配向剤であって、
前記ポリイミド前駆体(a1)は、下記式(1)においてY
1が下記式(Y1-1)で表される2価の基である構造、及び下記式(1)においてY
1が下記式(Y1-2)で表される2価の基である構造を含むことを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、X
1は4価の有機基であり、Y
1は2価の有機基であり、R
1、R
2、A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基である。ポリイミド前駆体(a1)の分子鎖中で、X
1、R
1、R
2、A
1、およびA
2は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。Y
1は、2種類以上が混在していてもよい。)
【化2】
(式(Y1-1)、式(Y1-2)中、Z
1、Z
2、Z
3、及びZ
4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。nは同一でも異なっていてもよい。nが2以上の整数の場合、Z
1、Z
2、Z
3、及びZ
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記式(Y1-1)で表される2価の基が、下記式(D2-1)~(D2-5)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種類である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化3】
(式(D2-1)~(D2-5)において、*は結合手を表す。)
【請求項3】
前記式(Y1-2)で表される2価の基が、下記式(D4-1)~(D4-5)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種類である、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
【化4】
(式(D4-1)~(D4-5)において、*は結合手を表す。)
【請求項4】
Y
1が式(Y1-1)で表される2価の基である割合が、ポリイミド前駆体(a1)が有する式(1)の構造全体に対して、10~50モル%であり、且つ、Y
1が式(Y1-2)で表される2価の基である割合が、ポリイミド前駆体(a1)が有する式(1)の構造全体に対して、10~50モル%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記ポリイミド前駆体(a1)が、前記式(1)においてY
1が下記式(Y1-3)~式(Y1-10)および式(5-1)~式(5-9)のいずれかで表される2価の基である構造をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化5】
【化6】
(上記式中、Bocは下記で表される基を示す。)
【化7】
【請求項6】
前記式(1)のX
1が、下記式(X1-1)~(X1-14)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種類である、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化8】
【請求項7】
ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレンーマレイミド)誘導体、およびポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体をさらに含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記重合体が、下記重合体(B)である、請求項7に記載の液晶配向剤。
重合体(B):下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体(b1)、及び該ポリイミド前駆体(b1)のイミド化重合体(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であって、前記ポリイミド前駆体(b1)は、下記式(2)においてY
2が(i)芳香族基に結合する窒素原子又は(ii)含窒素芳香族複素環を有する2価の有機基である構造を含む重合体。
【化9】
(式(2)中、X
2は4価の有機基であり、Y
2は2価の有機基であり、A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。ポリイミド前駆体(b1)の分子鎖中で、X
2、Y
2、A
3、およびA
4は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。)
【請求項9】
式(2)中、(i)芳香族基に結合する窒素原子又は(ii)含窒素芳香族複素環を有する2価の有機基が、下記より選ばれる少なくとも1種類である、請求項8に記載の液晶配向剤。
【化10】
【化11】
【請求項10】
前記重合体(A)が、主鎖末端を修飾又は封止した重合体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項11】
誘電体、導電物質、シランカップリング剤、架橋性化合物、およびイミド化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項14】
IPS方式またはFFS方式の液晶表示素子である、請求項13に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、この液晶配向剤によって得られる液晶配向膜、及びそれを用いた液晶配向膜を具備する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、携帯電話、スマートフォン、テレビ等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示素子は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式等の縦電界方式や、IPS方式、FFS方式等の横電界方式が知られている。基板の片側のみに電極を形成させ、基板と平行方向に電界を印加する横電界方式では、従来の上下基板に形成された電極に電圧を印加して液晶を駆動させる縦電界方式と比べ、広い視野角特性を有し、また高品位な表示が可能な液晶表示素子として知られている。
【0003】
横電界方式の液晶セルは視野角特性に優れているものの、基板内に形成される電極部分が少ないために、電圧保持率が低いと液晶に十分な電圧がかからず表示コントラストが低下する。また、液晶配向の安定性が小さいと、液晶を長時間駆動させた際に液晶が初期の状態に戻らなくなり、コントラスト低下や残像の原因となるため、液晶配向の安定性が重要である。更に、静電気が液晶セル内に蓄積されやすく、駆動によって生じる正負非対称電圧の印加によっても液晶セル内に電荷が蓄積され、これらの蓄積された電荷が液晶配向の乱れや残像として表示に影響を与え、液晶素子の表示品位を著しく低下させる。また、駆動直後にバックライト光が液晶セルに照射されることによっても電荷が蓄積され、短時間の駆動でも残像が発生したり駆動中にフリッカー(ちらつき)の大きさが変化する等の問題を生じてしまう。
【0004】
このような横電界方式の液晶表示素子に用いた際、電圧保持率に優れ、かつ電荷蓄積を低減した液晶配向剤として、特許文献1には、特定ジアミンと脂肪族テトラカルボン酸誘導体とを重縮合して得られる重合体を含有する液晶配向剤が開示されている。しかし、液晶表示素子の高性能化に伴い、液晶配向膜に要求される特性も厳しくなってきており、これらの従来の技術では全ての要求特性を十分に満足することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開公報WO2004/021076号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液晶配向の安定性に優れ、駆動中にフリッカー(ちらつき)が起こりにくい液晶配向膜を得ることができる液晶配向剤、この液晶配向剤によって得られる液晶配向膜、及びそれを用いた液晶表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、液晶配向剤に含まれる重合体中に複数の特定構造を導入することで上記の課題が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記を要旨とするものである。
下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体(a1)及び該ポリイミド前駆体(a1)のイミド化重合体(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(A)を含有する液晶配向剤であって、
前記ポリイミド前駆体(a1)は、下記式(1)においてY
1が下記式(Y1-1)で表される2価の基である構造、及び下記式(1)においてY
1が下記式(Y1-2)で表される2価の基である構造を含むことを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(式(1)中、X
1は4価の有機基であり、Y
1は2価の有機基であり、R
1、R
2、A
1、A
2はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基である。ポリイミド前駆体(a1)の分子鎖中で、X
1、R
1、R
2、A
1、およびA
2は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。Y
1は、2種類以上が混在していてもよい。)
【化2】
(式(Y1-1)、式(Y1-2)中、Z
1、Z
2、Z
3、及びZ
4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは、0~4の整数である。nは同一でも異なっていてもよい。nが2以上の整数の場合、Z
1、Z
2、Z
3、及びZ
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶配向剤によれば、液晶配向の安定性に優れ、駆動中にフリッカー(ちらつき)が起こりにくい液晶配向膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液晶配向剤は、以下に述べる重合体(A)を含有するものである。
<重合体(A)>
本発明に用いられる重合体(A)は、前記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリイミド前駆体(a1)及び該ポリイミド前駆体(a1)のイミド化重合体(a2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である。
【0011】
前記式(1)において、Y1は2価の有機基である。前記ポリイミド前駆体(a1)は、前記式(1)においてY1が前記式(Y1-1)で表される2価の基である構造、及び前記式(1)においてY1が前記式(Y1-2)で表される2価の基である構造を含む。
【0012】
式(Y1-1)、式(Y1-2)中、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、好ましくは、それぞれ独立して、フッ素原子又はメチル基であり、nは、好ましくは、0~1の整数である。
【0013】
式(Y1-1)で表される2価の基は、好ましくは、下記式(D2-1)~(D2-5)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種類である。
【化3】
(式(D2-1)~(D2-5)において、*は結合手を表す。)
【0014】
式(Y1-2)で表される2価の基は、好ましくは、下記式(D4-1)~(D4-5)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種類である。
【化4】
(式(D4-1)~(D4-5)において、*は結合手を表す。)
【0015】
前記ポリイミド前駆体(a1)において、Y1が式(Y1-1)で表される2価の基である割合及びY1が式(Y1-2)で表される2価の基である割合は特に限定されないが、ポリイミド前駆体(a1)が有する式(1)の構造全体に対して、Y1が式(Y1-1)である割合が10~50モル%であると好ましく、より好ましくは20~40モル%であり、Y1が式(Y1-2)である割合が10~50モル%であると好ましく、より好ましくは20~40モル%である。
また、Y1が式(Y1-1)である割合及びY1が式(Y1-2)である割合の合計は20~80モル%であると好ましく、より好ましくは40~60モル%である。
【0016】
前記ポリイミド前駆体(a1)の分子鎖中には、前記式(1)においてY1が式(Y1-1)及び式(Y1-2)以外の2価の有機基である構造をさらに含んでいても構わない。また、式(Y1-1)及び式(Y1-2)以外の基であるY1の構造は、ポリイミド前駆体(a1)の分子鎖中に1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。
【0017】
以下に、式(Y1-1)及び式(Y1-2)以外で好ましいY1の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【化5】
また、Y
1は下記のいずれかの基である構造であってもよい。
【0019】
【0020】
【0021】
Y1が前記式(Y1-3)~式(Y1-10)および式(5-1)~(5-9)である合計割合は、ポリイミド前駆体(a1)が有する式(1)の構造全体に対して、10~80モル%であると好ましく、より好ましくは20~60モル%、更に好ましくは40~60モル%である。
【0022】
前記ポリイミド前駆体(a1)において、X1は4価の有機基である。
以下に、ポリイミド前駆体(a1)におけるX1の好ましい構造を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
【0024】
前記ポリイミド前駆体(a1)において、R1、R2、A1、A2はそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基である。R1、R2、A1、A2は、好ましくは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である。
【0025】
本発明に用いられるポリイミド前駆体(a1)は、式(1)のX1の由来となるテトラカルボン酸誘導体を含むテトラカルボン酸誘導体成分と式(1)のY1の由来となるジアミンを含むジアミン成分との重縮合で得ることができる。
ポリイミド前駆体の例としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどが挙げられる。
テトラカルボン酸誘導体の例としては、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジシリルエステル、テトラカルボン酸ジクロライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、テトラカルボン酸ジアルケニルエステル、テトラカルボン酸ジアルキルエステルジクロライドなどが挙げられる。
また、前記ポリイミド前駆体(a1)は、主鎖末端を修飾又は封止した重合体であっても構わない。主鎖末端を修飾又は封止したポリイミド前駆体(a1)は、テトラカルボン酸誘導体成分とジアミン成分との重縮合反応時又は重縮合反応後に、テトラカルボン酸誘導体成分及び/又はジアミン成分に対して単官能である化合物を反応させることにより得ることができる。該単官能の化合物としては、モノアミン、モノイソシアネート、酸無水物基を1個有する化合物、酸クロライド基を1個有する化合物などが挙げられる。
テトラカルボン酸誘導体成分とジアミン成分とを用いてポリイミド前駆体(a1)を合成するための反応条件等は特に限定されず、公知の手法を用いることができる。
【0026】
本発明の重合体(A)に用いられるイミド化重合体(a2)は、上記のポリイミド前駆体(a1)からA1-OR1及び/又はA2-OR2が脱離して閉環(イミド化ともいう)した構造を有する重合体である。この場合の閉環率(イミド化率ともいう)は必要に応じて任意に選択することができる。
なお、本明細書でいうイミド化率とは、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体由来のイミド基とカルボキシル基(またはその誘導体)との合計量に占めるイミド基の割合のことである。イミド化重合体においては、イミド化率は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調製できる。本発明で用いられるイミド化重合体のイミド化率は、20~100%が好ましく、50~99%がより好ましい。
イミド化重合体(a2)は、ポリイミド前駆体(a1)を既知の手段でイミド化させたものであってもよく、式(1)がイミド化した構造を有する原料(例えば特開平9-185064に記載のイミド基含有ジアミン化合物)を用いて合成されたものであっても構わない。
【0027】
本発明における重合体(A)の分子量は、良好な塗膜が形成できる限りにおいて特に限定されないが、例えば重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0028】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)に加えて、重合体(A)以外の重合体を含有していてもよい。重合体(A)以外の重合体の種類は特に限定されないが、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレンーマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。重合体(A)以外の重合体のなかでも以下に示す重合体(B)は本発明の液晶配向剤に含有される成分として好ましい。
【0029】
重合体(B):下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体(b1)、及び該ポリイミド前駆体(b1)のイミド化重合体(b2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であって、前記ポリイミド前駆体(b1)は、下記式(2)においてY2が(i)芳香族基に結合する窒素原子又は(ii)含窒素芳香族複素環を有する2価の有機基である構造を含む重合体。
【0030】
【化9】
(式(2)中、X
2は4価の有機基であり、Y
2は2価の有機基であり、A
3、A
4はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。ポリイミド前駆体(b1)の分子鎖中で、X
2、Y
2、A
3、およびA
4は、それぞれ1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。)
【0031】
重合体(B)は、好ましくは、前記ポリイミド前駆体(b1)から選ばれる少なくとも1種の重合体である。
【0032】
以下に、(i)芳香族基に結合する窒素原子又は(ii)含窒素芳香族複素環を有するY2の構造として特に好ましい例を示す。
【0033】
【0034】
【0035】
重合体(B)は、Y2が上記以外の2価の有機基である構造を含有していてもよい。上記以外の2価の有機基の例としては、重合体(A)で例示したY1の具体的な構造や、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸などのカルボキシ基を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた構造、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレア、1,3-ビス(4-アミノベンジル)ウレア、1,3-ビス(3-アミノベンジル)ウレア、1-(4-アミノベンジル)-3-(4-アミノフェネチル)ウレアなどのウレア結合を有するジアミンから2つのアミノ基を除いた構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
X2の構造の好ましい例としては、重合体(A)で例示したX1の具体的な構造及び下記に示す4価の基などが挙げられる。
【0037】
【0038】
重合体(B)の分子量は、良好な塗膜が形成できる限りにおいて特に限定されないが、例えば重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0039】
本発明の液晶配向剤に、重合体(A)及び重合体(B)を含有する場合は、重合体(A)と重合体(B)との合計に対して重合体(B)の含有量が20~80質量%であると好ましい。
【0040】
本発明の液晶配向剤は、重合体以外の成分を含有していてもよい。重合体以外の成分としては、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリアミック酸のイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等が挙げられる。
【0041】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するために用いられるものであり、均一な薄膜を形成させるという観点から、上記の成分を有機溶媒に溶解させた塗布液であることは好ましい。塗布液の濃度は、使用する塗布装置および得ようとする液晶配向膜の厚みによって適宜変更される。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
液晶配向剤中の重合体(A)の含有量は、液晶配向剤の塗布方法や目的とする液晶配向膜の膜厚によって、適宜変更することができるが、2~10質量%であることが好ましく、特に、3~7質量%が好ましい。
【0042】
上記塗布液に用いられる有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどを挙げることができる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、塗膜形成を目的とした組成物においては、上記のような溶媒に加えて塗布性の向上や塗膜表面の平滑性を向上させる溶媒を加えた混合溶媒を使用することが一般的であり、本発明の液晶配向剤においてもこのような混合溶媒は好適に用いられる。混合する有機溶媒の具体例を下記に挙げるが、これらの例に限定されない。
【0044】
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、下記式[D-1]~[D-3]で表される溶媒などを挙げることができる。
【0045】
【化13】
(式[D-1]及び式[D-2]中のRは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中のRは炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0046】
上記のなかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましい。このような溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。また、これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0047】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記本発明の液晶配向剤から得られる。液晶配向剤から液晶配向膜を得る方法の一例を挙げるなら、塗布液形態の液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥し、焼成して得られた膜に対してラビング処理法又は光配向処理法で配向処理を施す方法が挙げられる。
【0048】
液晶配向剤を塗布する基板としては特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板等を用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極などが形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法などが一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0049】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させ、焼成する。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される溶媒を十分に除去するために、50~120℃で1~10分焼成し、その後、150~300℃で、5~120分焼成する条件が挙げられる。
焼成後の液晶配向膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmであることが好ましく、10~200nmがより好ましい。
本発明の液晶配向膜は、IPS方式やFFS方式などの横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子の液晶配向膜として有用である。
【0050】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して素子としたものである。
以下に、液晶セルの作製方法の一例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
まず、液晶を駆動させるための電極が形成された1組の基板を用意する。この電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。また、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられていてもよい。この基板上に前記のようにして液晶配向膜を形成する。
【0052】
次いで、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外線硬化性のシール剤を配置し、さらに液晶配向膜面上の所定の数カ所に液晶を配置した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて圧着することにより液晶を液晶配向膜前面に押し広げた後、基板の全面に紫外線を照射してシール剤を硬化することで液晶セルを得る。
または、基板の上に液晶配向膜を形成した後の工程として、一方の基板上の所定の場所にシール剤を配置する際に、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておき、液晶を配置しないで基板を貼り合わせた後、シール剤に設けた開口部を通じて液晶セル内に液晶材料を注入し、次いで、この開口部を接着剤で封止して液晶セルを得る。液晶材料の注入には、真空注入法でもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法でもよい。
上記のいずれの方法においても、液晶セル内に液晶材料が充填される空間を確保する為に、一方の基板上に柱状の突起を設けるか、一方の基板上にスペーサーを散布するか、シール剤にスペーサーを混入するか、又はこれらを組み合わせるなどの手段を取ることが好ましい。
【0053】
上記の液晶材料としては、ネマチック液晶、及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料のいずれを用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付けることが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明について実施例等を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、化合物、溶媒の略号は、及び特性評価方法は、以下のとおりである。
【0055】
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
DA-1~DA-10:下記構造式の化合物
CA-1~CA-3:下記構造式の化合物
AD-1およびAD-2:下記構造式の化合物
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
[粘度の測定]
以下の合成例において、ポリマー溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0061】
<重合体の合成>
(合成例1)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA-1(1.980g,8.1mmol)、DA-2(1.471g,5.4mmol)、DA-3(0.876g,8.1mmol)、DA-4(2.152g,5.4mmol)を加えた後、NMP(65.49g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(5.750g,25.7mmol)、及びNMP(24.17g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間攪拌することでポリアミック酸(PAA-A1)のNMP溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は378mPa・sであった。
【0062】
(合成例2)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA-1(2.052g,8.4mmol)、DA-2(1.525g,5.6mmol)、DA-3(0.908g,8.4mmol)、DA-5(1.912g,5.6mmol)を加えた後、NMP(65.23g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(6.026g,26.9mmol)、及びNMP(25.90g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間撹拌することでポリアミック酸(PAA-A2)のNMP溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は408mPa・sであった。
【0063】
(合成例3)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mLの四つ口フラスコに、DA-7(19.925g,100.0mmol)、DA-9(7.460g,25.0mmol)を加えた後、NMP(365.63g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-3(34.939g,118.8mmol)、及びNMP(91.41g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間撹拌することでポリアミック酸(PAA-B1)のNMP溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は398mPa・sであった。
【0064】
(合成例4)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mLの四つ口フラスコに、DA-7(19.925g,100.0mmol)、DA-9(7.460g,25.0mmol)を加えた後、NMP(359.54g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-2(22.552g,115.0mmol)、及びNMP(89.89g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間攪拌することでポリアミック酸(PAA-B2)のNMP溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は135mPa・sであった。
【0065】
(合成例5)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mLの四つ口フラスコに、DA-7(9.963g,50.0mmol)、DA-8(10.664g,50.0mmol)、DA-9(7.460g,25.0mmol)を加えた後、NMP(366.36g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-2(22.797g,116.2mmol)、及びNMP(91.59g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間撹拌することでポリアミック酸(PAA-B3)のNMP溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は91mPa・sであった。
【0066】
(比較合成例1)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mLの四つ口フラスコに、DA-1(9.161g,37.5mmol)、DA-6(12.014g,37.5mmol)、DA-3(2.704g,25.0mmol)、DA-4(9.963g,25.0mmol)を加えた後、NMP(310.37g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(26.620g,118.7mmol)、及びNMP(133.02g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間撹拌することでポリアミック酸(PAA-C1)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は405mPa・sであった。
【0067】
(比較合成例2)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mLの四つ口フラスコに、DA-1(5.863g,24.0mmol)、DA-6(7.689g,24.0mmol)、DA-3(1.730g,16.0mmol)、DA-5(5.463g,16.0mmol)を加えた後、NMP(194.41g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(17.127g,76.4mmol)、及びNMP(83.32g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間撹拌することでポリアミック酸(PAA-C2)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は426mPa・sであった。
【0068】
(比較合成例3)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1000mLの四つ口フラスコに、DA-1(9.161g,37.5mmol)、DA-10(6.458g,25.0mmol)、DA-3(4.055g,37.5mmol)、DA-4(9.963g,25.0mmol)を加えた後、NMP(288.79g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(26.620,118.8mmol)、及びNMP(123.77g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間撹拌することでポリアミック酸(PAA-C3)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は399mPa・sであった。
【0069】
(実施例及び比較例)
合成例1~5及び比較合成例1~3で得られた重合体の溶液、AD-1、AD-2、NMP、BCSを混合し、室温で2時間撹拌することにより下記表1に示す組成の液晶配向剤を得た(括弧内の数字は質量%を表す)。
【0070】
【0071】
以上のようにして得られた液晶配向剤を用いて以下に示す手順でFFS駆動液晶セルを作製し、特性評価を行った。
【0072】
[FFS駆動液晶セルの構成]
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード用の液晶セルは、面形状の共通電極-絶縁層-櫛歯形状の画素電極からなるFOP(Finger on Plate)電極層が表面に形成されている第1のガラス基板と、表面に高さ3.5μmの柱状スペーサーを有し裏面に帯電防止の為のITO膜が形成されている第2のガラス基板とを、一組とした。上記の画素電極は、中央部分が内角160°で屈曲した幅3μmの電極要素が6μmの間隔を開けて平行になるように複数配列された櫛歯形状を有しており、1つの画素は、複数の電極要素の屈曲部を結ぶ線を境に第1領域と第2領域を有している。
なお、第1のガラス基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1の基板上の液晶の配向方向と第2の基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理する。
【0073】
[液晶セルの作製]
液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、上記の電極付き基板と対向基板のそれぞれにスピンコートした。次いで、80℃のホットプレート上で2分間乾燥後、230℃で30分間焼成して膜厚100nmの塗膜として、各基板上にポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を200mJ/cm2照射した。更に、この基板を230℃で30分間焼成して、液晶配向膜付き基板を得た。
次に、上記一組の液晶配向膜付き基板の一方にシール剤を印刷し、もう一方の基板を液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせ、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶(メルク社製、MLC-3019)を常温で真空注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、一晩放置してから各評価に使用した。
【0074】
<液晶配向の安定性評価>
上記で作成したFFS駆動液晶セルに対し、60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±5Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
上記の処理を行った液晶セルに関して、電圧無印加状態における、画素の第1領域の液晶の配向方向と第2領域の液晶の配向方向とのずれを角度として算出した。
具体的には、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に液晶セルを設置し、バックライトを点灯させ、画素の第1領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整し、次に画素の第2領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルを回転させたときに要する回転角度を求めた。
液晶配向の安定性は、この回転角度の値が小さいほど良好であると言える。回転角度の値が0.1°以下である場合には「良好」と、0.1°を超えた場合には「不良」と評価した。
【0075】
<駆動中に起こるフリッカーの評価>
上記で作製した液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でLEDバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように、液晶セルの配置角度を調整した。次に、この液晶セルに周波数30Hzの交流電圧を印加しながらV-Tカーブ(電圧-透過率曲線)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を駆動電圧として算出した。
【0076】
フリッカーの測定では、点灯させておいたLEDバックライトを一旦消灯して72時間遮光放置した後に、LEDバックライトを再度点灯し、バックライト点灯開始と同時に相対透過率が23%となる周波数30Hzの交流電圧を印加して、液晶セルを60分間駆動させてフリッカー振幅を追跡した。フリッカー振幅は、2枚の偏光板及びその間の液晶セルを通過したLEDバックライトの透過光を、フォトダイオード及びI-V変換アンプを介して接続されたデータ収集/データロガースイッチユニット34970A(Agilent technologies社製)で読み取った。このデータを基に以下の数式を用いて算出した値をフリッカーレベルとした。
フリッカーレベル(%)={フリッカー振幅/(2×z)}×100
【0077】
上記式中、zは相対透過率が23%となる周波数30Hzの交流電圧で駆動した際の輝度をデータ収集/データロガースイッチユニット34970Aで読み取った値である。
フリッカーの評価は、LEDバックライトの点灯及び交流電圧の印加を開始した時点から60分間が経過するまでに、フリッカーレベルが3.0%以下を維持した場合に、「○」と定義して評価を行った。60分間でフリッカーレベルが3.0%を超えた場合には、「×」と定義して評価した。
上述した方法に従うフリッカーレベルの評価は、液晶セルの温度が23℃の状態の温度条件下で行った。
【0078】
<評価結果>
上記実施例及び比較例の各液晶配向剤を使用する液晶表示素子に関して実施した液晶配向の安定性、及び駆動中に起こるフリッカーの評価結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
実施例1~5によれば、液晶配向の安定性に優れ、且つ、フリッカーが起こりにくい液晶配向膜を得ることができた。
一方、比較例1~3によって得られた液晶配向膜では、液晶配向の安定性は「良好」であったが、フリッカーレベルは「×」であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の液晶配向剤は、TN方式、VA方式等の縦電界方式やIPS方式、FFS方式等の横電界方式の液晶表示素子、特に、IPS方式、FFS方式等の横電界方式の液晶表示素子に広く用いられる。
【0082】
なお、2019年11月14日に出願された日本特許出願2019-206332号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。