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特許7582254プレススルーパッケージ包装体、プレススルーパッケージ用蓋材及びプレススルーパッケージ用ヒートシール剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】プレススルーパッケージ包装体、プレススルーパッケージ用蓋材及びプレススルーパッケージ用ヒートシール剤
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/04 20060101AFI20241106BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B65D83/04 D
B32B27/28 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022085920
(22)【出願日】2022-05-26
(65)【公開番号】P2023117349
(43)【公開日】2023-08-23
【審査請求日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2022019445
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】藤野 浩二
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216331(JP,A)
【文献】特開2021-146519(JP,A)
【文献】特開2018-002922(JP,A)
【文献】特開2016-204047(JP,A)
【文献】特開2020-001726(JP,A)
【文献】特開平08-112880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/04
B65D 65/40
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と
前記基材上に設けられたヒートシール層を有し、
前記ヒートシール層はαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するヒートシール剤の塗工層であるプレススルーパッケージ用蓋材であり、
前記ヒートシール層は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成される容器のいずれに対してもヒートシール性を有し、
前記ヒートシール層を介して前記プレススルーパッケージ用蓋材と前記容器が接着したプレススルーパッケージ包装体として用いられることを特徴とする、プレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項2】
前記基材が金属箔又は金属層を有するシートである請求項1に記載のプレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項3】
前記金属箔がアルミニウム箔である請求項2に記載のプレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項4】
前記ヒートシール層が、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の樹脂を実質的に含まない請求項1又は2に記載のプレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項5】
前記基材のヒートシール層が設けられた面と反対側の面に、オーバーコート層を有する請求項1又は2に記載のプレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項6】
前記オーバーコート層がオーバーコーティング剤の塗工層であり、前記オーバーコーティング剤が、ポリビニルブチラール樹脂と、ポリイソシアネート化合物を含有する請求項5に記載のプレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項7】
前記αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、該共重合体中のエチレンの割合が、50質量%以上であり、
前記αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、共重合体全体の30質量%以下であり、
前記αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、20万以上100万以下であり、
前記αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度が、-70℃以上20℃以下である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用蓋材。
【請求項8】
請求項1に記載のプレススルーパッケージ用蓋材を用いたプレススルーパッケージ包装体。
【請求項9】
基材上に塗工され、基材と容器とを被着させるためのヒートシール層を形成するプレススルーパッケージ用ヒートシール剤であり、
前記ヒートシール剤はαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有し、
前記容器は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成され
前記ヒートシール層は前記容器のいずれに対してもヒートシール性を有することを特徴とする、プレススルーパッケージ用ヒートシール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用、食品用、日用品等に使用可能なプレススルーパッケージ包装体(PTP:Press Through Package)、プレススルーパッケージ用蓋材及びプレススルーパッケージ用ヒートシール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるPTP包装体が知られている。PTP包装体は、内容物を収容する容器に、蓋材を熱圧で貼り合わせて接着(ヒートシール)するものであり、各種のヒートシール剤が使用されている。
【0003】
PTP包装体の蓋材は、アルミニウム箔(アルミ箔ともいう)等の金属箔、プラスチックフィルム、蒸着フィルム、紙、不織布等の基材、ヒートシール層及びコーティング層で構成される。例えば薬剤包装用の場合はアルミ箔やプラスチックフィルムが主流である。
【0004】
一方、PTP包装体の容器は、包装材の用途に応じて各種材料が選択されるが、例えば薬剤包装用の場合はポリ塩化ビニルを用いたものが主流である。近年は、ポリ塩化ビニル燃焼時のダイオキシン発生問題による脱塩素の動きに伴い、無延延ポリプロピレン(CPP)や非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)を用いるものも増加している。
【0005】
このように、PTP包装体には各種材料が使用されるため、包装材の材料や用途毎に適したヒートシール剤が選択される。特に、薬剤包装用の場合、長期にわたって内容物の変質を防止する必要があることから、最適なヒートシール剤の選択は重要である。
【0006】
例えば、特許文献1には食品包装バッグまたは医薬品のブリスター包装に用いられるヒートシールコーティングとして、特定のガラス転移温度および軟化点を有するポリエステルと、粘着防止添加剤と、有機溶媒を含むものが、PETフィルム、BOPPフィルムに適していることが示されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂と、塩素化ポリプロピレン樹脂と、有機溶剤とを含むヒートシール剤が、アルミ箔とポリプロピレンシート間のヒートシール性に優れることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2017-512724号公報
【文献】特開く昭55-92778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、用途に応じて種々のヒートシール剤が提供されてはいるものの、作業性の観点からは1種のヒートシール剤が種々の基材に適用できることが好ましい。特に近年は、環境負荷の観点から容器材料の見直しと共に容器材料の多様化が進んでいることから、あらゆる材料に対して優れたヒートシール性を有するヒートシール剤の要求が大きい。
【0009】
また、特許文献2に記載のヒートシール剤のように、従来のヒートシール剤はハロゲンを含有しているものが多く、安全性の観点からハロゲンフリーの材料が求められている。更に、環境安全性の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いない材料であることが好ましい。
【0010】
本発明はこのような課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであって、種々の容器に対して優れたヒートシール性を有するプレススルーパッケージ包装体、プレススルーパッケージ用蓋材及びプレススルーパッケージ用ヒートシール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材と該基材上に設けられたヒートシール層を有する蓋材と、ヒートシール層により被着された容器とを有し、ヒヒートシール層はαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するヒートシール剤の塗工層であり、容器は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成されるプレススルーパッケージ包装体である。
【0012】
また、本発明は、基材と基材上に設けられたヒートシール層を有し、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するヒートシール剤の塗工層であるプレススルーパッケージ用蓋材であり、容器は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成されるプレススルーパッケージ用蓋材である。
【0013】
また、本発明は、基材上に塗工され、基材と容器とを被着させるためのヒートシール層を形成するプレススルーパッケージ用ヒートシール剤であり、ヒートシール剤はヒートシール剤はαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有し、容器は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成されるプレススルーパッケージ用ヒートシール剤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、種々の容器に対して優れたヒートシール性を有し、且つ、環境負荷が少ないプレススルーパッケージ包装体、プレススルーパッケージ用蓋材及びプレススルーパッケージ用ヒートシール剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプレススルーパッケージ包装体は、基材と該基材上に設けられたヒートシール層を有する蓋材と、ヒートシール層により被着された容器とを有する。以下、本発明の包装体の各構成について説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
<ヒートシール層>
本発明のヒートシール層は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含有するヒートシール剤を基材に塗布することにより設けられる。尚、本発明において(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルの総称を表す。
【0017】
αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、αオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルが共重合した共重合体である。
【0018】
αオレフィンとしては、特に限定なく公知のαオレフィンを使用できるが、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエンなどが挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。中でもαオレフィンとしてエチレン又はプロピレンを主体とするものが好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定なく公知の(メタ)アクリル酸エステルを使用できるが、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル等を使用することができる。例えば具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-メトキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nプロピル、メタクリル酸nブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸nへキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸nラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-エトキシエチルなどのメタクリル酸エステルを例示することができる。これらは1種又は2種以上組合せて使用することができる。中でも、(メタ)アクリル酸エステルとして(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸nプロピル、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルを1種または2種以上用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを主体として用い、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルを組み合わせて用いることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルの総量のうち、(メタ)アクリル酸メチルが60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましい。
【0020】
また、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、他のモノマーがさらに共重合されていてもよいが、他のモノマーに由来する構成単位の含有量は、共重合体全体の好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である。
【0021】
αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体中のエチレンの割合は特に制限はないが、共重合体中のエチレンの割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であることが好ましい。一方、共重合体中の(メタ)アクリル酸エステル共重合体の割合が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であることが好ましい。
【0022】
αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、特に制限はないが、耐ブロッキング性の観点から、20万以上であることが好ましい。一方、密着性や低温ヒートシール性の観点から、重量平均分子量は100万以下であることが好ましく、50万以下であることがより好ましい。
【0023】
また、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度は、低温でのヒートシール性が良好になることから、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。一方、ガラス転移温度の下限は、好ましくは-70℃以上、より好ましくは-60℃以上、さらに好ましくは-50℃以上である。
【0024】
本発明で用いるαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は公知のものを用いることができ、市販品を使用することができる。
【0025】
本発明のヒートシール剤は、上述したαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体及び有機溶剤を含有する。ヒートシール剤において、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、固形分濃度が20~70重量%に調整することが好ましい。
【0026】
使用できる希釈溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらの中でも、アルコール系、メチルエチルケトン等のケトン系や、これらの混合物を使用するのが好ましい。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0027】
本発明のヒートシール剤は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、有機溶剤に加え、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ワックス、フィラー、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、防錆剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、硬化触媒、光安定剤、紫外線吸収剤、光触媒性化合物、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。中でも、ブロッキング性を防止するために、シリカ等のフィラー、ワックス等のブロッキング防止剤を含有することが好ましい。
【0028】
一方、本発明のヒートシール剤は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の他の樹脂を実質的に含まず、ヒートシール剤中に含まれる樹脂成分がαオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなること好ましい。すなわち、本発明のヒートシール剤は、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなるシンプルな構成であることが好ましい。
【0029】
なお、「実質的に含まない」とは、αオレフィン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体以外の他の樹脂を意図的に含有させないことを意味する。
【0030】
<基材>
プレススルーパッケージ包装体の蓋材として用いられる基材としては特に限定されず、通常包装材で使用されるような公知のフィルム、紙、金属箔などが好適に用いられる。薬剤包装用の場合は、アルミニウム箔等の金属箔やフィルムを用いることが好ましい。
【0031】
金属箔としては、アルミニウム箔等が挙げられる。
【0032】
フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、BOPP(2軸延伸ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、Ny(ナイロン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等を原料とするものが挙げられる。これらのフィルムはアルミなどの金属蒸着層、シリカやアルミナ、これらの二元蒸着等の金属酸化物の蒸着層を有するものであってもよい。蓋材の基材フィルムと容器とを同じ材料で構成する場合は、モノマテリアル化によりリサイクル性を向上させることができる。
【0033】
紙としては、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるものが挙げられる。抄紙条件は特に規定されない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
【0034】
より具体的には各種印刷用紙、グラビア用紙、クラフト紙、ケント紙、コピー紙、更紙、新聞紙などの非塗工紙;微塗工紙;アート紙、片アート紙、コート紙、片コート紙、軽量コート紙などの塗工紙;上質紙;重量用、一般用、特殊用の両更クラフト紙;筋入りクラフト紙、片艶クラフト紙などの未ざらし包装紙;純白ロール紙;両更さらしクラフト紙、片艶さらしクラフト紙などのさらしクラフト紙;その他さらし包装紙;パラフィン紙などの樹脂含侵紙、ボール紙や板紙、これら紙にアルミニウム等の金属を蒸着した蒸着紙、これら紙とアルミニウム箔等の金属箔を貼り合わせた貼合紙などが挙げられるがこれに限定されない。
【0035】
これら基材には印刷層が設けられていてもよい。印刷層はグラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来ポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。印刷層は、基材のヒートシール層側の面に設けられていてもよいし、他の面に設けられていてもよい。
【0036】
また、基材には、ヒートシール層が設けられる面と反対側の面、すなわち、容器と接着しない側の外側となる面に、オーバーコート層を有することが好ましい。オーバーコート層は、基材にオーバーコーティング剤を塗布することにより設けられる。包装体をヒートシールする際、300℃近くもの熱がかかるため、印刷層がにじんだり、例えば基材として金属箔を用いた場合には金属層にクラックが生じたりする問題が生じやすいが、コーティング剤を設けることにより、耐熱性や耐擦性等の機能性を向上できる。
【0037】
コーティング剤は公知のものを使用できるが、ポリビニルブチラール樹脂を含有するものが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂を含有するコーティング剤は、密着性、耐熱性、耐擦性に優れ、金属箔又は金属層を保護する機能も高い。
【0038】
コーティング剤に使用されるポリビニルブチラール樹脂の重量平均分子量は、5000~150000であることが好ましく、6000~100000であることがより好ましく、7000~50000であることが更に好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の重量平均分子量を上記範囲にすることにより、コーティング組成物の流動性と分散性、及び塗膜の強度のバランスに優れたコーティング剤を得ることができる。
【0039】
ポリビニルブチラール樹脂のガラス転移温度(以下Tgと称する場合がある)は、50℃~120℃の範囲であることが好ましく、中でも55℃~115℃の範囲が好ましく、60~90℃の範囲がより好ましい。本発明においてガラス転移温度は、示差走査熱量計による測定により得られるものである。
【0040】
ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価は10~50mol/%の範囲にあることが好ましく、30~40mol/%であることがより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価を上記範囲にすることにより、架橋剤と反応させたときの硬化性に優れ、塗膜の強度と適度な柔軟性を両立させることができる。
【0041】
ポリビニルブチラール樹脂含有量(ポリビニルブチラール樹脂の固形分含有量)は、コーティング剤100質量%に対して10~50質量%含有することが好ましく、より好ましくは15~40質量%であり、最も好ましくは20~30質量%である。
【0042】
コーティング剤に含有されるポリビニルブチラール樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用して用いてもよい。
【0043】
コーティング剤は、ポリビニルブチラール樹脂と共にポリイソシアネート化合物を含有することが好ましい。ポリビニルブチラールとポリイソシアネート化合物を含有することにより、これらの硬化反応によって架橋状態の樹脂を形成できる。そのため、密着性、耐擦性及び耐熱性を向上させることができる。
【0044】
ポリイソシアネートは、特に限定なくポリビニルブチラールと反応しうるイソシアネート基を複数有するイソシアネート化合物であれば特に限定されない。例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネート化合物は、硬化剤として作用し適宜選択して用いることができるが、芳香族系であっても脂肪族系であってもよい。本発明で好ましく用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のポリイソシアネート、を挙げることができる。
【0046】
中でもキシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)が好ましい。
【0047】
〔イソシアネート基含有率(当量)〕
ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量)は0.1~5.0の範囲であることが好ましく、0.2~4.0の範囲であることがより好ましく、0.3~3.0の範囲であることが更に好ましい。この範囲とすることで、金属箔や金属層に対する密着性と耐擦性とを両立させることができる。なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価に対するポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(当量)は次の方法により算出した。

ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価:A(mgKOH/g)
ポリビニルブチラール樹脂の質量:B(g)
ポリイソシアネートのNCO%:C(%)
ポリイソシアネートの質量:D(g)

NCO/OH比=C×D×561/(A×B×42)
D(g)=((A×B)/C)×(42/561)×NCO/OH(当量比)
コーティング剤は、ポリビニルブチラール樹脂とポリイソシアネート以外に、汎用の樹脂を含有することもできる。例えば、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂等があげられる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。医薬品や食品用途の場合は、安全衛生の観点から、エポキシ樹脂や塩素系樹脂を用いないことが好ましい。
【0048】
また、耐摩性を上げる為、耐摩剤、滑り剤等を配合しても良い。脂肪酸アミド、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE等を単独で、または2種類以上を混合して用いることができる。
【0049】
また、硬化性を上げる為、触媒を添加しても良い。前記触媒としては、有機系スズ化合物、三級アミン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0050】
必要に応じて上記以外の例えば、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪酸等の有機化合物系ブロッキング防止剤を使用することが好ましい。これら有機化合物系ブロッキング防止剤は、ヒートシール層表面にブリードアウトすることでブロッキングを防止する。そのため、粒子系ブロッキング防止剤と有機化合物系ブロッキング防止剤を併用してもよい。有機化合物系ブロッキング防止剤は多量に配合すると接着性を阻害し、接着不良を起こし易いので、少量添加に留めることが好ましい。
【0051】
実際にコーティング剤を基材に塗布するに当っては、その塗布性能を上げるべく、各種有機溶剤で固形分20%質量となる様に溶解して使用することが好ましい。
【0052】
使用できる希釈溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらの中でも、アルコール系、メチルエチルケトン等のケトン系や、これらの混合物を使用するのが好ましい。近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤やケトン系溶剤を用いないことがより好ましい。
【0053】
基材への塗工法としては、例えば、バーコーター、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法で塗工することができる。本発明の効果を最大限発揮するためには、金属箔や金属層への塗膜量としては0.5~5g/mが好ましく、乾燥条件は120~200℃で5~100秒の範囲が好ましい。
【0054】
[蓋材]
本発明の蓋材は、基材にヒートシール剤を塗布、乾燥させて得られる。基材上に直接ヒートシール層(本発明のヒートシール剤の乾燥塗膜)を設けてもよいし、基材上に一層以上のプライマー層が設けられていてもよい。プライマー層を設ける場合、プライマー層の形成に用いられるプライマーは特に制限されず、公知のものを用いることができる。
【0055】
ヒートシール剤の塗工方法としては公知の方法が使用できる。例えばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を使用できる。また塗工後オーブン等で乾燥工程を設けてもよい。
【0056】
乾燥方法としては、熱風、電熱、赤外線、電子線等の従来公知の手段を用いる事ができる。この時の加熱温度は50~250℃、加熱時間は0.1~30秒が好ましい。
【0057】
ヒートシール剤の塗布量は目的とするシール強度や基材により適宜調整されるが、一例として1.0g/m~5.0g/mである。
【0058】
[容器]
プレススルーパッケージ包装体の容器は、内容物を収容するポケット状の凹部を有し、容器の端部に設けられたフランジ部と蓋材がヒートシール層を介して接着し、内容物を密閉状態で収容できる。容器のフランジ部に、ヒートシール層を設けてもよい。
【0059】
容器は、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成された、透明熱可塑性樹脂シートが使用される。これらの熱可塑性樹脂シートを2以上積層した積層シートでもよい。
【0060】
また、公知のPTP用の容器や熱可塑性樹脂シートに、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂をラミネートまたはコーティングしたシートを使用してもよい。ヒートシール層と直接接触する層が、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンからなる群の少なくとも1種を含む樹脂により形成されていればよい。
【0061】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0062】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂を使用した容器は、本発明のヒートシール剤とのヒートシール性に優れているため好ましく、中でもポリプロピレンを含む樹脂が好ましい。
【0063】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。
【0064】
中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)が好ましい。ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)は、水蒸気バリア性及び酸素バリア性に優れていることから、容器の箔肉化・軽量化が可能であり、よりサステナビリティの高いパッケージを提供できる。PCTFEのようにフッ素を含有する材料は、一般的にヒートシール性が弱いが、本発明のヒートシール剤を用いることにより、フッ素系の材料を用いた場合にも優れたヒートシール性を有する容器を実現できる。
これらのシートを用いて、加熱真空成形、圧空成形等により所定の形状に成形して、プレススルーパッケージ包装体の容器を得られる。
【0065】
[プレススルーパッケージ包装体]
本発明のプレススルーパッケージ包装体は、上述した蓋材及び容器をヒートシール層により接着して用いられる。すなわち、容器の凹部に薬剤等の内容物を収容し、該容器に蓋材を、ヒートシール層を容器側に向けて重ねて熱接着する方法により、プレススルーパッケージ包装体を製造できる。
【0066】
本発明のプレススルーパッケージ包装体は、薬、タブレット、キャンディーやチョコレート等の食品等の包材として使用することができる。また、歯ブラシ、乾電池、おもちゃ等のブリスターパック用の包材としても使用することができる。
【実施例
【0067】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
【0068】
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量、及び重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40
℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃
度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0069】
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲-8
0~450℃、昇温温度10℃/分の条件下、DMA法で実施した。
【0070】
〔ヒートシール剤の作製〕
(ヒートシール剤1)
市販のエチレン-メタクリル酸共重合樹脂(固形分45%)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルの混交溶剤で固形分25%となるように溶解し、ヒートシール剤1を調整した。混交溶剤におけるメチルエチルケトンと酢酸エチルは、メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の質量割合である。
【0071】
(ヒートシール剤2)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(重量平均分子量5万、塩化ビニル割合85%、ガラス転移点(Tg)75℃、ISO1628-2により測定されるK値45)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルの混交溶剤で固形分25%となるように溶解し、ヒートシール剤2を調整した。混交溶剤におけるメチルエチルケトンと酢酸エチルは、メチルエチルケトン/酢酸エチル=50/50の質量割合である。
【0072】
(ヒートシール剤3)
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(重量平均分子量5万、塩化ビニル割合85%、ガラス転移点(Tg)75℃、ISO1628-2により測定されるK値45)とポリエステル樹脂(数平均分子量3万、ガラス転移点(Tg)-20℃)を、メチルエチルケトンと酢酸エチルの混交溶剤で固形分16%となるように溶解し、ヒートシール剤3を調整した。塩化-酢酸ビニル共重合体樹脂とポリエステル樹脂の比率は、質量比で1:1である。また、混交溶剤におけるメチルエチルケトンと酢酸エチルは、メチルエチルケトン/酢酸エチル=60/40の質量割合である。
【0073】
〔蓋材の作製〕
(実施例1)
ヒートシール剤1を硬質アルミ箔(東洋アルミニウム(株)社製)にバーコーターにて塗工(塗布量4g/m)し、塗工後、180℃/10秒にて乾燥してヒートシール層を形成して、蓋材1を作製した。
【0074】
(比較例1,2)
ヒートシール剤2,3をそれぞれ用いて、実施例1と同様の硬質アルミ箔にバーコーターにて塗工(塗布量4g/m)し、塗工後、180℃/10秒にて乾燥してヒートシール層を形成して、蓋材2、3を作製した。
【0075】
作成した蓋材1~3について、以下の評価を行った。
【0076】
〔評価基準1:基材への密着性〕
作製した蓋材をヒートシール層が上側になるようにして平らな台に置き、ヒートシール層が設けられた面にニチバンの24mm幅セロファンテープを貼り、セロファンテープが塗膜に完全に接着する様に、布等でセロファンテープの上から擦りつける。貼り付けたセロファンテープより2mm程大きい枠を、セロファンテープの外側の塗膜に強く押し当てながら、塗膜に貼り付けたセロファンテープを上方に、勢い良く剥がし、塗膜のアルミ箔への密着度合を目視判定する。
【0077】
(評価基準)
5:セロファンテープ接着部分の塗膜の剥離は見られない。
4:セロファンテープ接着部分の塗膜の10%未満が剥離した
3:セロファンテープ接着部分の塗膜の10%以上30%未満が剥離した
2:セロファンテープ接着部分の塗膜の30%以上50%未満が剥離した。
1:簡単に:セロファンテープ接着部分の塗膜の50%以上が剥離した。
【0078】
〔評価基準2:ブロッキング性〕
作製した蓋材のヒートシール剤の塗工面と未塗工の硬質アルミ光沢面を、40℃の雰囲気下、0.5MPa(5.0kgf/cm2)の圧力で24時間重ね合わせた後、剥離したときのブロッキングの状態を手で剥離したときの感触で評価する。テストは各々3回行い評価した。
【0079】
○:全くブロッキングしていない。
△:ややブロッキングしている。
×:強力にブロッキングしている。
【0080】
結果を表1に示す
【0081】
【表1】
【0082】
続いて、蓋材1~3を用いて以下のようにテストピースを作製した。
【0083】
(実施例2~5、8)
蓋材1を表に記載の各種シートと、ヒートシール層を介して重ね合わせた。エンボス加工用のヒートシール部を有するヒートシールテスターを用い、各々100℃、140℃、及び180℃(何れも0.3MPa1秒)でヒートシールし、テストピースを作製した。
【0084】
(実施例6)
ポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量15000、水酸基価約35mol/%、ガラス転移点70℃)を、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールが質量比で45:55の混合溶剤で固形分が25%となるように溶解しポリビニルブチラール溶液とした。
【0085】
続いて、ポリビニルブチラール樹脂の水酸基価に対して、イソシアネートのNCO基含有率(当量)が0.5~2.5となる様に、ポリビニルブチラール溶液100部に対して、ポリイソシアネートとして、タケネートD-110NB(キシリレンジイソシアネート(XDI)を12部、混合攪拌し、オーバーコーティング剤を作製した。
【0086】
作製したオーバーコーティング剤を蓋材1のヒートシール層の反対側に、硬質アルミ箔へ焼き付け後の塗膜量が2g/mとなるようにグラビアコーターを使用して塗工し、180℃10秒で乾燥させて、蓋材4とした。
蓋材4を用いて実施例2~5と同様にして実施例6のテストピースを作製した。
【0087】
(実施例7)
市販の工業用硝化綿(固形分70%)と、市販のアクリル樹脂(固形分50%)と、市販のメラミン樹脂(固形分98%)と、混合溶剤と、添加剤として酸触媒を、質量比で15:11:4:69:1になるように混合し、固形分20%のオーバーコーティング剤を作製した。混合溶剤は、メチルエチルケトンと酢酸エチルとイソプロピルアルコールを質量比で50:30:20になるよう混合したものを用いた。
【0088】
作製したオーバーコーティング剤を蓋材1のヒートシール層の反対側に、硬質アルミ箔へ焼き付け後の塗膜量が2g/mとなるようにグラビアコーターを使用して塗工し、180℃10秒で乾燥させて、蓋材5とした。
蓋材5を用いて実施例2~6と同様にして実施例7のテストピースを作製した。
【0089】
(比較例2~9)
蓋材2、蓋材3をそれぞれ用いて、表に記載の各種フィルムと、ヒートシール層を介して重ね合わせ、実施例1~4と同様にしてテストピースを作製した。
作製したテストピースについて、以下の評価を行った。
【0090】
〔評価基準3:ヒートシール性〕
120℃、160℃、及び200℃でヒートシールした各々のテストピースについて、(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ testを用い、剥離速度100mm/分、剥離方向180度剥離、剥離幅15mmにおける接着力の測定を行った。評価基準は以下のとおり5段階評価とした。
【0091】
5:9(N/15mm)以上
4:6(N/15mm)以上9(N/15mm)未満
3:3(N/15mm)以上6(N/15mm)未満
2:3(N/15mm)未満
1:全く接着しない
【0092】
〔評価基準3:耐湿熱性〕
200℃でヒートシールした各々のテストピースを、40℃/75%環境下の恒温槽内に放置し、3か月後のヒートシール性を(株)島津製作所製小型卓上試験機EZ testを用い、剥離速度100mm/分、剥離方向180度剥離、剥離幅15mmにおける接着力の測定を行った。評価基準は以下のとおり5段階評価とした。
5:初期の接着力に対し、90%以上保持
4:初期の接着力に対し、70%以上90%未満保持
3:初期の接着力に対し、50%以上70%未満保持
2:初期の接着力の対し、30%以上50%未満保持
1:初期の接着力に対し、30%未満保持
結果を表2~4に示す
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
【表4】
【0096】
表中の「PET」は、ポリエチレンテレフタレートシート(膜厚250μm)
「CPP」は無延伸ポリプロピレンシート(膜厚250μm)
「PVC」は、硬質ポリ塩化ビニルシート(膜厚250μm)、
「PVDC」は、硬質ポリ塩化ビニルシートにポリフッ化ビニリデン(PVDC)をコートしたシート(膜厚225μm)
「PCTFE」は、ポリクロロ三フッ化エチレン(膜厚350μm)の複合シート(ヒートシール面はPCTFE側)
を表す。
また、表中の「-」は評価を行っていないことを意味する。
【0097】
表より、本発明の包装体は、種々の容器に対して優れたヒートシール性を有することがわかった。また、100℃という比較的低温においても優れたヒートシール性を発現できることから、ヒートシール時に高温にさらされることにより、包装体や内容物が受けるダメージの影響を小さくすることができる。
【0098】
また、実施例6、7に示すように、オーバーコート層を設けた構成においても優れた特性を有することを確認した。特に、実施例6のオーバーコート層は、ヒートシール後においても塗膜表面に変色や膨れが全く見られず、耐熱性に優れることがわかった。