(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】仮固定用積層体及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241106BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241106BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241106BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20241106BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241106BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20241106BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241106BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20241106BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20241106BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/78 N
C08L101/00
B24B41/06 L
C09J7/30
C09J11/04
C09J9/02
C09J201/00
B32B17/06
B32B15/04 B
B32B15/08 U
B32B27/06
(21)【出願番号】P 2022198692
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2019557331の分割
【原出願日】2018-11-29
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/043363
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 笑
(72)【発明者】
【氏名】早坂 剛
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
(72)【発明者】
【氏名】須方 振一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 貴一
(72)【発明者】
【氏名】西戸 圭祐
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-109538(JP,A)
【文献】特開2003-174153(JP,A)
【文献】特開2005-159155(JP,A)
【文献】特開2004-064040(JP,A)
【文献】特開2016-011361(JP,A)
【文献】特開2015-013977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C08L 101/00
B24B 41/06
C09J 7/30
C09J 11/04
C09J 9/02
C09J 201/00
B32B 17/06
B32B 15/04
B32B 15/08
B32B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、前記支持部材上に設けられた、光を吸収して熱を発生する導電体からなる導電体層とを備え、
前記支持部材が、ガラス基板であり、
前記導電体が、チタン及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含
み、
前記導電体層が、前記支持部材上に設けられた、第1の導電体からなる第1の導電体層と、前記第1の導電体層の前記支持部材の反対側の面上に設けられた、第2の導電体からなる第2の導電体層とから構成され、
前記第1の導電体が、チタンを含み、
前記第2の導電体が、銅、アルミニウム、銀、金、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、仮固定用積層体。
【請求項2】
前記導電体層上に設けられた、硬化性樹脂成分を含む樹脂層をさらに備える、請求項
1に記載の仮固定用積層体。
【請求項3】
支持部材と、仮固定材前駆体層とを備え、前記仮固定材前駆体層が、光を吸収して熱を発生する導電体からなる導電体層と、硬化性樹脂成分を含む樹脂層とを前記支持部材側からこの順に有する、仮固定用積層体を準備する工程と、
前記仮固定用積層体の前記仮固定材前駆体層を介して前記支持部材上に半導体部材を配置する工程と、
前記仮固定材前駆体層おける前記硬化性樹脂成分を硬化させ、前記支持部材と、前記導電体層、及び、前記硬化性樹脂成分の硬化物を含む樹脂硬化物層を有する仮固定材層と、前記半導体部材とがこの順に積層された積層体を作製する工程と、
前記積層体における前記仮固定材層にインコヒーレント光を照射して、前記支持部材から前記半導体部材を分離する工程と、
を備え、
前記支持部材が、ガラス基板であり、
前記導電体が、チタン及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種を含
み、
前記導電体層が、前記支持部材上に設けられた、第1の導電体からなる第1の導電体層と、前記第1の導電体層の前記支持部材の反対側の面上に設けられた、第2の導電体からなる第2の導電体層とから構成され、
前記第1の導電体が、チタンを含み、
前記第2の導電体が、銅、アルミニウム、銀、金、及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、仮固定材用硬化性樹脂組成物、仮固定材用フィルム、及び仮固定材用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の分野では、近年、複数の半導体素子を積層したSIP(System in Package)と呼ばれるパッケージに関する技術が著しく成長している。SIP型のパッケージでは半導体素子が多数積層されるため、半導体素子には、薄厚化が要求される。この要求に応じて、半導体素子には、半導体部材(例えば、半導体ウェハ)に集積回路を組み入れた後に、例えば、半導体部材の裏面を研削する薄厚化、半導体ウェハをダイシングする個別化等の加工処理が施される。これら半導体部材の加工処理は、通常、仮固定材層によって、半導体部材を支持部材に仮固定して行われる(例えば、特許文献1~3を参照。)。
【0003】
加工処理が施された半導体部材は、仮固定材層を介して支持部材と強固に固定されている。そのため、半導体装置の製造方法においては、半導体部材のダメージ等を防ぎつつ、加工処理後の半導体部材を支持部材から分離できることが求められる。特許文献1には、このような半導体部材を分離する方法として、仮固定材層を加熱しながら物理的に分離する方法が開示されている。また、特許文献2、3には、仮固定材層にレーザー光(コヒーレント光)を照射することによって、半導体部材を分離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-126803号公報
【文献】特開2016-138182号公報
【文献】特開2013-033814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている方法では、熱履歴によるダメージ等が半導体ウェハに発生し、歩留まりが低下してしまう問題がある。一方で、特許文献2、3に開示されている方法では、レーザー光がコヒーレント光であることから、照射面積が狭く、半導体部材全体に対して何度も繰り返して照射する必要があることから時間がかかってしまうこと、レーザー光の焦点を制御してスキャン照射することから工程が複雑になってしまうこと、及び高価な装置を要することの問題がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、仮固定された半導体部材を、支持部材から容易に分離することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、仮固定材として有用な仮固定材用硬化性樹脂組成物、仮固定材用フィルム、及び仮固定材用積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、支持部材と、光を吸収して熱を発生する仮固定材層と、半導体部材とがこの順に積層された積層体を準備する準備工程と、積層体における仮固定材層にインコヒーレント光を照射して、支持部材から半導体部材を分離する分離工程とを備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【0008】
分離工程におけるインコヒーレント光の光源は、キセノンランプであってよい。分離工程におけるインコヒーレント光は、少なくとも赤外光を含む光であってよい。
【0009】
分離工程は、支持部材を介して仮固定材層にインコヒーレント光を照射する工程であってよい。
【0010】
一態様として、仮固定材層は、光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含む硬化性樹脂組成物の硬化物を含有していてもよい。
【0011】
導電性粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、30~90質量部であってよい。
【0012】
硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。硬化性樹脂組成物は、重合性モノマー及び重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
【0013】
他の態様として、仮固定材層は、光を吸収して熱を発生する光吸収層と、硬化性樹脂成分の硬化物を含む樹脂硬化物層とを有していてもよい。
【0014】
光吸収層は、スパッタリング又は真空蒸着によって形成されていてもよい。
【0015】
別の側面において、本発明は、半導体部材を支持部材に仮固定するための仮固定材用硬化性樹脂組成物であって、光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含む、仮固定材用硬化性樹脂組成物を提供する。
【0016】
導電性粒子の含有量は、仮固定材用硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、30~90質量部であってよい。
【0017】
仮固定材用硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。また、仮固定材用硬化性樹脂組成物は、重合性モノマー及び重合開始剤をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明はさらに、光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含有する硬化性樹脂組成物の、仮固定材としての応用又は仮固定材の製造のための応用に関してもよい。
【0019】
別の側面において、本発明は、半導体部材を支持部材に仮固定するための仮固定材用フィルムであって、上述の仮固定材用硬化性樹脂組成物を含む、仮固定材用フィルムを提供する。
【0020】
また、別の側面において、本発明は、半導体部材を支持部材に仮固定するための仮固定材用積層フィルムであって、光を吸収して熱を発生する光吸収層と、硬化性樹脂成分を含む樹脂層とを有する、仮固定材用積層フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、仮固定された半導体部材を、支持部材から容易に分離することが可能な半導体装置の製造方法が提供される。また、本発明によれば、仮固定材として有用な仮固定材用硬化性樹脂組成物、仮固定材用フィルム、及び仮固定材用積層フィルムが提供される。いくつかの形態における仮固定材用硬化性樹脂組成物は、耐熱性に優れる仮固定材層を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図1(a)及び(b)は、各工程を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、仮固定材前駆体層の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図3(a)、(b)、(c)、及び(d)は、
図2に示す仮固定材前駆体層を用いて形成される積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、
図3(d)に示す積層体を用いた本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図4(a)及び(b)は、各工程を示す模式断面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)、及び(c)は、仮固定材前駆体層の他の実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】
図6(a)、(b)、(c)、及び(d)は、
図5(a)に示す仮固定材前駆体層を用いて形成される積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、
図6(d)に示す積層体を用いた本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図7(a)及び(b)は、各工程を示す模式断面図である。
【
図8】
図8は、
図1(a)に示す積層体の製造方法の他の実施形態を説明するための模式断面図であり、
図8(a)、(b)、及び(c)は、各工程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0024】
本明細書における数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0025】
本明細書において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基等の他の類似表現についても同様である。
【0026】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、支持部材と、光を吸収して熱を発生する仮固定材層(以下、単に「仮固定材層」という場合がある。)と、半導体部材とがこの順に積層された積層体を準備する準備工程と、積層体における仮固定材層にインコヒーレント光を照射して、支持部材から半導体部材を分離する分離工程とを備える。
【0027】
<積層体の準備工程>
図1は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図1(a)及び(b)は、各工程を示す模式断面図である。
図1(a)に示すとおり、積層体の準備工程においては、支持部材10と、仮固定材層20c又は30cと、半導体部材40とがこの順に積層された積層体100を準備する。
【0028】
支持部材10は、特に制限されないが、例えば、ガラス基板、樹脂基板、シリコンウェハ、金属薄膜等であってよい。支持部材10は、光の透過を妨げない基板であってよく、ガラス基板であってよい。
【0029】
支持部材10の厚みは、例えば、0.1~2.0mmであってよい。厚みが0.1mm以上であると、ハンドリングが容易となる傾向にあり、厚みが2.0mm以下であると、材料費を抑制することができる傾向にある。
【0030】
仮固定材層20c又は30cは、支持部材10と半導体部材40とを仮固定するための層であって、光を照射したときに、光を吸収して熱を発生する層である。仮固定材層20c又は30cにおける吸収の対象となる光は、赤外光、可視光、又は紫外光のいずれかを含む光であってよい。仮固定材層20c又は30cは、後述のとおり、光を吸収して熱を発生する導電性粒子(以下、単に「導電性粒子」という場合がある。)を含むものであってよく、光を吸収して熱を発生する光吸収層(以下、単に「光吸収層」という場合がある。)を有するものであってよい。導電性粒子及び光吸収層が熱を効率よく発生させることができることから、仮固定材層20c又は30cにおける吸収の対象となる光は、少なくとも赤外光を含む光であってよい。また、仮固定材層20c又は30cは、赤外光を含む光を照射したときに、赤外光を吸収して熱を発生する層であってよい。
【0031】
図1(a)に示す積層体100は、例えば、支持部材上に硬化性樹脂成分を含む仮固定材前駆体層を形成し、仮固定材前駆体層上に半導体部材を配置し、仮固定材前駆体層における硬化性樹脂成分を硬化させ、硬化性樹脂成分の硬化物を含む仮固定材層を形成することによって作製することができる。
【0032】
(仮固定材前駆体層:第1の実施形態)
一実施形態として、仮固定材前駆体層は、光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含む硬化性樹脂組成物を含有する。
図2は、仮固定材前駆体層の一実施形態を示す模式断面図である。仮固定材前駆体層20は、
図2に示すとおり、導電性粒子22と硬化性樹脂成分24とから構成され得る。すなわち、硬化性樹脂組成物は、導電性粒子及び硬化性樹脂成分を含有するものであってよい。硬化性樹脂成分24は、熱又は光によって硬化する硬化性樹脂成分であり得る。
【0033】
導電性粒子22は、光を吸収して熱を発生するものであれば特に制限されないが、赤外光を吸収して熱を発生するものであってよい。導電性粒子22は、例えば、銀粉、銅粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、クロム粉、鉄粉、真鋳粉、スズ粉、チタン合金、金粉、合金銅粉、酸化銅粉、酸化銀粉、酸化スズ粉、及び導電性カーボン(炭素)粉からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。導電性粒子22は、取扱性及び安全性の観点から、銀粉、銅粉、酸化銀粉、酸化銅粉、及びカーボン(炭素)粉からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。また、導電性粒子22は、樹脂又は金属をコアとし、当該コアをニッケル、金、銀等の金属でめっきした粒子であってもよい。さらに、導電性粒子22は、溶剤との分散性の観点から、その表面が表面処理剤で処理された粒子であってもよい。
【0034】
表面処理剤は、例えば、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
導電性粒子22の形状は、特に制限されず、粒状、扁平状等であってよい。導電性粒子22が、カーボン(炭素)粉である場合、粒状、チューブ状、ワイヤ状等であってもよい。
【0036】
導電性粒子22の平均粒径は、例えば、0.1~5.0μmであってよい。ここで、平均粒径は、導電性粒子22全体の体積に対する比率(体積分率)が50%のときの粒径(D50)である。導電性粒子22の平均粒径(D50)は、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて、レーザー散乱法により水中に正極活物質を懸濁させた懸濁液を測定することで得られる。
【0037】
導電性粒子22の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、30~90質量部であってよい。なお、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分には、後述の溶剤は包含されない。導電性粒子22の含有量は、35質量部以上、40質量部以上、又は45質量部以上であってもよい。導電性粒子22の含有量が、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、30質量部以上であると、より低エネルギーのインコヒーレント光の照射で支持部材から分離できる傾向にある。導電性粒子22の含有量は、80質量部以下、70質量部以下、又は60質量部以下であってもよい。導電性粒子22の含有量が、仮固定材層の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、90質量部以下であると、仮固定材層の平坦性が確保され易い傾向にある。
【0038】
硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、重合性モノマー及び重合開始剤を含有していてもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有する樹脂、又は少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であってよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エラストマー、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、石油樹脂、ノボラック樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、バンプ埋め込み性及び低温貼付性の観点から、熱可塑性樹脂は、エラストマーであってよい。
【0040】
エラストマーの具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー、エチレン・1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン・1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン・スチレン共重合体エラストマー、エチレン・ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン・1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体エラストマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2-ポリブタジエン、水酸基末端1,2-ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ-ε-カプロラクトン等が挙げられる。これらのエラストマーは、水添処理が施されていてもよい。これらのうち、エラストマーは、スチレンに由来するモノマー単位を含むエラストマーであってよい。
【0041】
熱可塑性樹脂のTgは、-100~500℃、-50~300℃、又は-50~50℃であってよい。熱可塑性樹脂のTgが500℃以下であると、フィルム状の仮固定材を形成したときに、柔軟性を確保し易く、低温貼付性を向上させることができる傾向にある。熱可塑性樹脂のTgが-100℃以上であると、フィルム状の仮固定材を形成したときに、柔軟性が高くなり過ぎることによる取扱性及び剥離性の低下を抑制できる傾向にある。
【0042】
熱可塑性樹脂のTgは、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる中間点ガラス転移温度である。熱可塑性樹脂のTgは、具体的には、昇温速度10℃/分、測定温度:-80~80℃の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。
【0043】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~500万又は10万~200万であってよい。重量平均分子量が1万以上であると、形成される仮固定材層の耐熱性を確保し易くなる傾向にある。重量平均分子量が500万以下であると、フィルム状の仮固定材層を形成したときに、フローの低下及び貼付性の低下を抑制し易い傾向にある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0044】
熱可塑性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、30質量部以上、50質量部以上、又は70質量部以上であってよく、88質量部以下、85質量部以下、又は82質量部以下であってよい。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲にあると、仮固定材層の薄膜形成性及び平坦性により優れる傾向にある。
【0045】
重合性モノマーは、加熱又は紫外光等の照射によって重合するものであれば特に制限されない。重合性モノマーは、材料の選択性及び入手の容易さの観点から、例えば、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有する化合物であってよい。重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルピリジン、ビニルアミド、アリール化ビニル等が挙げられる。これらのうち、重合性モノマーは、(メタ)アクリレートであってよい。(メタ)アクリレートは、単官能(1官能)、2官能、又は3官能以上のいずれであってもよいが、充分な硬化性を得る観点から、2官能以上の(メタ)アクリレートであってよい。
【0046】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0047】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0048】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;フェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等の芳香族エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0049】
これらの(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、これらの(メタ)アクリレートを、その他の重合性モノマーと組み合わせて用いてもよい。
【0050】
重合性モノマーの含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。重合性モノマーの含有量は、12質量部以上、15質量部以上、又は18質量部以上であってもよい。重合性モノマーの含有量が、仮固定材層の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10質量部以上であると、仮固定材層の耐熱性に優れる傾向にある。重合性モノマーの含有量は、70質量部以下、50質量部以下、又は30質量部以下であってもよい。重合性モノマーの含有量が、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、90質量部以下であると、プロセス中の剥離、破損等を抑制できる傾向にある。
【0051】
重合開始剤は、加熱又は紫外光等の照射によって重合を開始させるものであれば特に制限されない。例えば、重合性モノマーとして、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いる場合、重合性開始剤は熱ラジカル重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤であってもよい。
【0052】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2’-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0053】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0054】
これらの熱及び光ラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
重合開始剤の含有量は、重合性モノマーの総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。重合開始剤の含有量は、0.03質量部以上、又は0.05質量部以上であってもよい。重合開始剤の含有量が、重合性モノマー総量100質量部に対して、0.01質量部以上であると、硬化性が向上し、耐熱性がより良好となる傾向にある。重合開始剤の含有量は、3質量部以下、1質量部以下、又は0.1質量部以下であってもよい。重合開始剤の含有量が、重合性モノマー総量100質量部に対して、5質量部以下であると、プロセス中のガス発生を抑制できる傾向にある。
【0056】
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、熱硬化性樹脂、硬化促進剤、絶縁性フィラー、増感剤、酸化防止剤等をさらに含有していてもよい。
【0057】
熱硬化性樹脂は、熱により硬化する樹脂であれば特に制限されない。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、熱硬化性樹脂は、耐熱性、作業性、及び信頼性により優れることから、エポキシ樹脂であってよい。熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いる場合、エポキシ樹脂硬化剤と組み合わせて用いてもよい。
【0058】
エポキシ樹脂は、硬化して耐熱作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂は、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、又は脂環式エポキシ樹脂であってもよい。
【0059】
エポキシ樹脂硬化剤は、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0060】
熱硬化性樹脂及び硬化剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。熱硬化性樹脂及び硬化剤の含有量が上記範囲内であると、耐熱性がより良好になる傾向にある。
【0061】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール-テトラフェニルボレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂及び硬化剤の総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性が向上し、耐熱性がより良好となる傾向にある。
【0063】
絶縁性フィラーは、樹脂組成物に低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加される。絶縁性フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、セラミック等の非金属無機フィラーなどが挙げられる。これらの絶縁性フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。絶縁性フィラーは、溶剤との分散性の観点から、その表面が表面処理剤で処理された粒子であってよい。表面処理剤は、上述のシランカップリング剤と同様のものを用いることができる。
【0064】
絶縁性フィラーの含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、5~20質量部であってよい。絶縁性フィラーの含有量が上記範囲内であると、光透過を妨げることなく耐熱性をより向上する傾向にある。また、軽剥離性にも寄与する可能性がある。
【0065】
増感剤としては、例えば、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンゾピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダンスレン、チオキサンテン-9-オン、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、1-クロロ-4‐プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0066】
増感剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、0.01~10質量部であってよい。増感剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性樹脂成分の特性及び薄膜性への影響が少ない傾向にある。
【0067】
酸化防止剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。
【0068】
酸化防止剤の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部であってよい。酸化防止剤の含有量が上記範囲内であると、硬化性樹脂成分の分解を抑制し、汚染を防ぐことができる傾向にある。
【0069】
仮固定材前駆体層20は、導電性粒子22及び硬化性樹脂成分24(熱可塑性樹脂、重合性モノマー、重合開始剤等)を含有する硬化性樹脂組成物から形成することができる。
【0070】
硬化性樹脂組成物は、溶剤で希釈された硬化性樹脂組成物のワニスとして用いてもよい。溶剤は、導電性粒子22及び絶縁性フィラー以外の成分を溶解できるものであれば特に制限されない。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;メチルシクロヘキサンなどの環状アルカン;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、トルエン、キシレン、ヘプタン、又はシクロヘキサンであってよい。
【0071】
ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0072】
硬化性樹脂組成物は、導電性粒子22及び硬化性樹脂成分24(熱可塑性樹脂、重合性モノマー、重合開始剤等)を混合、混練することによって調製することができる。混合及び混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ビーズミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0073】
硬化性樹脂組成物は、フィルム状に形成されていてもよい。フィルム状に形成された硬化性樹脂組成物(以下、「仮固定材用フィルム」という場合がある。)は、硬化性樹脂組成物を支持フィルムに塗布することによって形成することができる。溶剤で希釈された硬化性樹脂組成物のワニスを用いる場合、硬化性樹脂組成物を支持フィルムに塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによって形成することができる。
【0074】
仮固定材用フィルムの厚みは、所望の仮固定材層の厚みに合わせて調整することができる。仮固定材用フィルムの厚みは、応力緩和の観点から、0.1~2000μm(2mm)又は10~500μmであってよい。
【0075】
支持フィルムとしては、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、液晶ポリマのフィルム等が挙げられる。これらは、離型処理が施されていてもよい。支持フィルムの厚みは、例えば、3~250μmであってよい。
【0076】
硬化性樹脂組成物を支持フィルムに塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フィルム転写法、スリットコート法、スキャン塗布法、インクジェット法等が挙げられる。
【0077】
支持フィルム上に設けられた仮固定材用フィルムは、必要に応じて、保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどが挙げられる。保護フィルムの厚みは、例えば、10~250μmであってよい。
【0078】
仮固定材用フィルムは、例えば、ロール状に巻き取ることによって容易に保存することができる。また、ロール状の仮固定材用フィルムを好適なサイズに切り出して、シート状にして保存することもできる。
【0079】
仮固定材前駆体層20は、硬化性樹脂組成物を、支持部材10に直接塗布することによって形成することができる。溶剤で希釈された硬化性樹脂組成物のワニスを用いる場合、硬化性樹脂組成物を支持部材10に塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによって形成することができる。
【0080】
硬化性樹脂組成物を支持部材10に直接塗布する方法は、硬化性樹脂組成物を支持フィルムに塗布する方法と同様であってもよい。
【0081】
仮固定材前駆体層20は、予め作製した仮固定材用フィルムを支持部材10にラミネートすることによっても形成することができる。ラミネートは、ロールラミネーター、真空ラミネーター等を用いて、所定条件(例えば、室温(20℃)又は加熱状態)で行うことができる。
【0082】
仮固定材前駆体層20の厚みは、応力緩和の観点から、0.1~2000μm(0.0001~2mm)又は10~500μmであってよい。
【0083】
(仮固定材前駆体層:第2の実施形態)
他の実施形態として、仮固定材前駆体層は、光を吸収して熱を発生する光吸収層と硬化性樹脂成分を含む樹脂層とを有する。
図5(a)、(b)、及び(c)は、仮固定材前駆体層の他の実施形態を示す模式断面図である。仮固定材前駆体層30としては、光吸収層32と樹脂層34とを有しているのであれば、その構成に特に制限されないが、例えば、光吸収層32と樹脂層34とを支持部材10側からこの順に有する構成(
図5(a))、樹脂層34と光吸収層32とを支持部材10側からこの順に有する構成(
図5(b))、光吸収層32と樹脂層34と光吸収層32とをこの順に有する構成(
図5(c))等が挙げられる。これらのうち、仮固定材前駆体層30は、光吸収層32と樹脂層34とを支持部材10側からこの順に有する構成(
図5(a))であってよい。以下では、主に
図5(a)で示す構成の仮固定材前駆体層30を用いた態様について詳細に説明する。
【0084】
光吸収層32の一態様は、光を吸収して熱を発生する導電体(以下、単に「導電体」という場合がある。)からなる層(以下、「導電体層」という場合がある。)である。このような導電体層を構成する導電体は、光を吸収して熱を発生する導電体であれば特に制限されないが、赤外光を吸収して熱を発生する導電体であってよい。導電体としては、例えば、クロム、銅、チタン、銀、白金、金等の金属、ニッケル-クロム、ステンレス鋼、銅-亜鉛等の合金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛、酸化ニオブ等の金属酸化物、導電性カーボン等のカーボン材料などが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、導電体は、クロム、チタン、銅、アルミニウム、銀、金、白金、又はカーボンであってよい。
【0085】
光吸収層32は、複数の導電体層から構成されていてもよい。このような光吸収層としては、例えば、支持部材10上に設けられる第1の導電体層と第1の導電体層の支持部材10の反対側の面上に設けられる第2の導電体層とから構成される光吸収層等が挙げられる。第1の導電体層における導電体は、支持部材(例えば、ガラス)との密着性、成膜性、熱伝導性、低熱容量等の観点から、チタンであってよい。第2の導電体層における導電体は、高膨張係数、高熱伝導等の観点から、銅、アルミニウム、銀、金、又は白金であってよく、これらの中でも、銅又はアルミニウムであることが好ましい。
【0086】
光吸収層32は、これらの導電体を、真空蒸着、スパッタリング等の物理気相成長(PVD)、電解めっき、無電解めっき、プラズマ化学蒸着等の化学気相成長(CVD)によって、支持部材10に直接形成することができる。これらのうち、導電体層は、大面積に導電体層を形成できることから、物理気相成長を用いて形成してもよく、スパッタリング又は真空蒸着を用いて形成してもよい。
【0087】
光吸収層32の一態様の厚みは、軽剥離性の観点から、1~5000nm(0.001~5μm)又は50~3000nm(0.05~3μm)であってよい。光吸収層32が、第1の導電体層と第2の導電体層とから構成される場合、第1の導電体層の厚みは、1~1000nm、5~500nm、又は10~100nmであってよく、第2の導電体層の厚みは、1~5000nm、10~500nm、又は50~200nmであってよい。
【0088】
光吸収層32の他の態様は、光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含む硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する層である。硬化性樹脂組成物は、導電性粒子及び硬化性樹脂成分を含有するものであってよい。硬化性樹脂成分は、熱又は光によって硬化する硬化性樹脂成分であり得る。導電性粒子は、上述の導電性粒子22として例示したものと同様であってよい。硬化性樹脂成分としては、特に制限されないが、例えば、上述の仮固定材前駆体層の第1の実施形態における硬化性樹脂成分で例示したもの等が挙げられる。
【0089】
導電性粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。なお、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分には、後述の有機溶剤は包含されない。導電性粒子の含有量は、15質量部以上、20質量部以上、又は25質量部以上であってもよい。導電性粒子の含有量は、80質量部以下又は50質量部以下であってもよい。
【0090】
硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、及び硬化促進剤を含有していてもよい。熱硬化性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。硬化剤及び硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってよい。
【0091】
光吸収層32は、光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含む硬化性樹脂組成物から形成することができる。硬化性樹脂組成物は、有機溶剤で希釈された硬化性樹脂組成物のワニスとして用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いていてもよい。ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0092】
光吸収層32は、硬化性樹脂組成物を、支持部材10に直接塗布することによって形成することができる。有機溶剤で希釈された硬化性樹脂組成物のワニスを用いる場合、硬化性樹脂組成物を支持部材10に塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによって形成することができる。
【0093】
光吸収層32の他の態様の厚みは、軽剥離性の観点から、1~5000nm(0.001~5μm)又は50~3000nm(0.05~3μm)であってよい。
【0094】
続いて、光吸収層32上に樹脂層34を形成する。
【0095】
樹脂層34は、導電性粒子を含有しない層であって、熱又は光によって硬化する硬化性樹脂成分を含む層である。樹脂層34は、硬化性樹脂成分からなる層であってもよい。硬化性樹脂成分としては、特に制限されないが、例えば、上述の仮固定材前駆体層の第1の実施形態における硬化性樹脂成分で例示したもの等が挙げられる。樹脂層34は、硬化性樹脂成分(導電性粒子を含まない硬化性樹脂組成物)から形成することができる。硬化性樹脂成分は、溶剤で希釈され硬化性樹脂成分のワニスとして用いてもよい。ワニス中の固形成分濃度は、ワニスの全質量を基準として、10~80質量%であってよい。
【0096】
樹脂層34は、硬化性樹脂成分を、光吸収層32に直接塗布することによって形成することができる。溶剤で希釈された硬化性樹脂成分のワニスを用いる場合、硬化性樹脂成分を光吸収層32に塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによって形成することができる。また、樹脂層34は、硬化性樹脂成分からなる硬化性樹脂成分フィルムを作製することによっても形成することができる。
【0097】
樹脂層34の厚みは、応力緩和の観点から、0.1~2000μm(0.0001~2mm)又は10~150μmであってよい。
【0098】
仮固定材前駆体層30は、光吸収層32と樹脂層34とを有する積層フィルム(以下、「仮固定材用積層フィルム」という場合がある。)を予め作製し、これを光吸収層32と支持部材10とが接するようにラミネートすることによっても作製することができる。
【0099】
仮固定材用積層フィルムにおける光吸収層32及び樹脂層34の構成は、光吸収層32と樹脂層34とを有しているのであれば、その構成に特に制限されないが、例えば、光吸収層32と樹脂層34とを有する構成、光吸収層32と樹脂層34と光吸収層32とをこの順に有する構成等が挙げられる。これらのうち、仮固定材用積層フィルムは、光吸収層32と樹脂層34とを有する構成であってよい。光吸収層32は、導電体からなる層(導電体層)であっても、導電性粒子を含有する層であってもよい。仮固定材用積層フィルムは、支持フィルム上に設けられていてもよく、支持フィルムとは反対側の表面上に、必要に応じて、保護フィルムが設けられていてもよい。
【0100】
仮固定材用積層フィルムにおける光吸収層32の厚みは、軽剥離性の観点から、1~5000nm(0.001~5μm)又は50~3000nm(0.05~3μm)であってよい。
【0101】
仮固定材用積層フィルムにおける樹脂層34の厚みは、応力緩和の観点から、0.1~2000μm(0.0001~2mm)又は10~150μmであってよい。
【0102】
仮固定材用積層フィルムの厚みは、所望の仮固定材層の厚みに合わせて調整することができる。仮固定材用積層フィルムの厚みは、応力緩和の観点から、0.1~2000μm(0.0001~2mm)又は10~150μmであってよい。
【0103】
図5(b)で示す構成の仮固定材前駆体層30は、例えば、支持部材10上に樹脂層34を形成し、続いて、光吸収層32を形成することによって作製することができる。
図5(c)で示す構成の仮固定材前駆体層30は、例えば、支持部材10上に光吸収層32、樹脂層34、及び光吸収層32を交互に形成することによって作製することができる。これらの仮固定材前駆体層30は、予め上記構成の仮固定材用積層フィルムを作製し、支持部材10にラミネートすることによって作製してもよい。
【0104】
次いで、作製した仮固定材前駆体層上に半導体部材を配置し、仮固定材前駆体層における硬化性樹脂成分を硬化させ、導電性粒子を含む硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する仮固定材層、又は、光吸収層と、硬化性樹脂成分の硬化物を含む樹脂硬化物層とを有する仮固定材層を形成することによって、支持部材10と仮固定材層20c又は30cと半導体部材40とがこの順に積層された積層体を作製する(
図1(a))。
図3(a)、(b)、(c)、及び(d)は、
図2に示す仮固定材前駆体層を用いて形成される積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
図6(a)、(b)、(c)、及び(d)は、
図5(a)に示す仮固定材前駆体層を用いて形成される積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【0105】
半導体部材40は、半導体ウェハ又は半導体ウェハを所定サイズに切断してチップ状に個片化した半導体チップであってよい。半導体部材40として、半導体チップを用いる場合、通常、複数の半導体チップが用いられる。半導体部材40の厚みは、半導体装置の小型化、薄型化に加えて、搬送時、加工工程等の際の割れ抑制の観点から、1~1000μm、10~500μm、又は20~200μmであってよい。半導体ウェハ又は半導体チップには、再配線層、パターン層、又は外部接続端子を有する外部接続部材が備えられていてもよい。
【0106】
作製した仮固定材前駆体層20又は30を設けた支持部材10を、真空プレス機又は真空ラミネーター上に設置し、半導体部材40をプレスで圧着して配置することができる。
【0107】
真空プレス機を用いる場合は、例えば、気圧1hPa以下、圧着圧力1MPa、圧着温度120~200℃、保持時間100~300秒間で、仮固定材前駆体層20又は30に半導体部材40を圧着する。
【0108】
真空ラミネーターを用いる場合は、例えば、気圧1hPa以下、圧着温度60~180℃又は80~150℃、ラミネート圧力0.01~0.5MPa又は0.1~0.5MPa、保持時間1~600秒間又は30~300秒間で、仮固定材前駆体層20又は30に半導体部材40を圧着する。
【0109】
仮固定材前駆体層20又は30を介して支持部材10上に半導体部材40を配置した後、仮固定材前駆体層20又は30における硬化性樹脂成分を所定条件で熱硬化又は光硬化させる。熱硬化の条件は、例えば、300℃以下又は100~200℃で、1~180分間又は1~60分間であってよい。このようにして、硬化性樹脂成分の硬化物が形成され、半導体部材40は、支持部材10に硬化性樹脂成分の硬化物を含む仮固定材層20c又は30cを介して仮固定され、積層体200又は300が得られる。仮固定材層20cは、
図3(a)に示すとおり、導電性粒子22と硬化性樹脂成分の硬化物24cとから構成され得る。仮固定材層30cは、
図6(a)に示すとおり、光吸収層32と硬化性樹脂成分の硬化物を含む樹脂硬化物層34cとから構成され得る。
【0110】
積層体は、例えば、仮固定材層を形成した後に、半導体部材を配置することによっても作製することができる。
図8は、
図1(a)に示す積層体の製造方法の他の実施形態を説明するための模式断面図であり、
図8(a)、(b)、及び(c)は、各工程を示す模式断面図である。
図8の各工程は、
図5(a)に示す仮固定材前駆体層を使用するものである。積層体は、支持部材10上に硬化性樹脂成分を含む仮固定材前駆体層30を形成し(
図8(a))、仮固定材前駆体層30における硬化性樹脂成分を硬化させて硬化性樹脂成分の硬化物を含む仮固定材層30cを形成し(
図8(b))、形成した仮固定材層30c上に半導体部材40を配置することによって作製することができる(
図8(c))。このような製造方法では、半導体部材40を配置する前に、仮固定材層30c上に再配線層、パターン層等の配線層41を設けることができるため、配線層41上に半導体部材40を配置することによって、配線層41を有する半導体部材40を形成することができる。
【0111】
積層体100における半導体部材40(支持部材10に仮固定された半導体部材40)は、さらに加工されていてもよい。
図3(a)に示す積層体200における半導体部材40を加工することによって、積層体210(
図3(b))、220(
図3(c))、230(
図3(d))等が得られる。
図6(a)に示す積層体300における半導体部材40を加工することによって、積層体310(
図6(b))、320(
図6(c))、330(
図6(d))等が得られる。半導体部材の加工は、特に制限されないが、例えば、半導体部材の薄化、貫通電極の作製、再配線層、パターン層等の配線層の形成、エッチング処理、めっきリフロー処理、スパッタリング処理等が挙げられる。
【0112】
半導体部材の薄化は、グラインダー等で、半導体部材40の仮固定材層20c又は30cに接している面とは反対側の面を研削することによって行うことができる。薄化された半導体部材の厚みは、例えば、100μm以下であってよい。
【0113】
研削条件は、所望の半導体部材の厚み、研削状態等に応じて任意に設定することができる。
【0114】
貫通電極の作製は、薄化した半導体部材40の仮固定材層20c又は30cに接している面とは反対側の面に、ドライイオンエッチング、ボッシュプロセス等の加工を行い、貫通孔を形成した後、銅めっき等の処理することによって行うことができる。
【0115】
このようにして半導体部材40に加工が施され、例えば、半導体部材40が薄化され、貫通電極44が設けられた積層体210(
図3(b))又は積層体310(
図6(b))を得ることができる。
【0116】
図3(b)で示す積層体210又は
図6(b)で示す積層体310は、
図3(c)及び
図6(c)に示すように、封止層50で覆われていてもよい。封止層50の材質には特に制限はないが、耐熱性、その他の信頼性等の観点から、熱硬化性樹脂組成物であってよい。封止層50に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルジエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。封止層50を形成するための組成物には、フィラー及び/又はブロム化合物等の難燃性物質等の添加剤が添加されていてもよい。
【0117】
封止層50の供給形態は、特に制限されないが、固形材、液状材、細粒材、フィルム材等であってよい。
【0118】
封止フィルムから形成される封止層50による加工半導体部材42の封止には、例えば、コンプレッション封止成形機、真空ラミネート装置等が用いられる。上記装置を使用して、例えば、40~180℃(又は60~150℃)、0.1~10MPa(又は0.5~8MPa)、かつ0.5~10分間の条件で熱溶融させた封止フィルムにて加工半導体部材42を覆うことによって、封止層50を形成することができる。封止フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の剥離ライナー上に積層された状態で準備されてもよい。この場合、封止フィルムを加工半導体部材42上に配置し、加工半導体部材42を埋め込んだ後、剥離ライナーを剥離することによって封止層50を形成することができる。このようにして、
図3(c)で示す積層体220又は
図6(c)で示す積層体320を得ることができる。
【0119】
封止フィルムの厚みは、封止層50が加工半導体部材42の厚み以上になるように調整する。封止フィルムの厚みは、50~2000μm、70~1500μm、又は100~1000μmであってよい。
【0120】
封止層50を有する加工半導体部材42は、
図3(d)及び
図6(d)に示すように、ダイシングによって個片化されていてもよい。このようにして、
図3(d)で示す積層体230又は
図6(d)で示す積層体330を得ることができる。なお、ダイシングによる個片化は、後述の半導体部材の分離工程後に実施されてもよい。
【0121】
<半導体部材の分離工程>
図1(b)に示すとおり、半導体部材の分離工程においては、積層体100における仮固定材層20c又は30cにインコヒーレント光を照射して、支持部材10から半導体部材40を分離する。
【0122】
図4は、
図3(d)に示す積層体を用いた本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図4(a)及び(b)は、各工程を示す模式断面図である。
図7は、
図6(d)に示す積層体を用いた本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図7(a)及び(b)は、各工程を示す模式断面図である。
【0123】
仮固定材層20c又は30cは、インコヒーレント光を照射することによって、導電性粒子22又は光吸収層32が光を吸収して熱を瞬間的に発生し、界面又はバルクにおいて、熱による硬化性樹脂成分の硬化物24c又は樹脂硬化物層34cの溶融、支持部材10と半導体部材40(加工半導体部材42)との応力、導電性粒子22又は光吸収層32の飛散等が発生し得る。このような現象の発生によって、仮固定されている加工半導体部材42を、支持部材10から容易に分離(剥離)することができる。なお、分離工程においては、インコヒーレント光の照射とともに、加工半導体部材42に対して、支持部材10の主面に対して平行な方向に応力をわずかに加えてもよい。
【0124】
インコヒーレント光は、干渉縞が発生しない、可干渉性が低い、指向性が低いといった性質を有する電磁波であり、光路長が長くなるほど、減衰する傾向にある。インコヒーレント光は、コヒーレント光でない光である。レーザー光は、一般にコヒーレント光であるのに対して、太陽光、蛍光灯の光等の光は、インコヒーレント光である。インコヒーレント光は、レーザー光を除く光ということもできる。インコヒーレント光の照射面積は、コヒーレント光(すなわち、レーザー光)よりも圧倒的に広いため、照射回数を少なくすること(例えば、1回)が可能である。
【0125】
分離工程におけるインコヒーレント光は、少なくとも赤外光を含む光であってよい。分離工程におけるインコヒーレント光の光源は、特に制限されないが、キセノンランプであってよい。キセノンランプは、キセノンガスを封入した発光管での印加・放電による発光を利用したランプである。キセノンランプは、電離及び励起を繰り返しながら放電するため、紫外光領域から赤外光領域までの連続波長を安定的に有する。キセノンランプは、メタルハライドランプ等のランプと比較して始動に要する時間が短いため、工程に係る時間を大幅に短縮することができる。また、発光には、高電圧を印加する必要があるため、高熱が瞬間的に生じるが、冷却時間が短く、連続的な作業が可能である。また、キセノンランプの照射面積は、レーザーよりも圧倒的に広いため、照射回数を少なくすること(例えば、1回)が可能である。
【0126】
キセノンランプによる照射条件は、印加電圧、パルス幅、照射時間、照射距離(光源と仮固定材層との距離)、照射エネルギー等を任意に設定することができる。キセノンランプによる照射条件は、1回の照射で分離できる条件を設定してもよく、2回以上の照射で分離できる条件を設定してもよいが、加工半導体部材42のダメージを低減する観点から、キセノンランプによる照射条件は、1回の照射で分離できる条件を設定してもよい。
【0127】
分離工程は、支持部材10を介して仮固定材層20c又は30cにインコヒーレント光を照射する工程であってよい(
図4(a)及び
図7(a)の方向A)。すなわち、仮固定材層20c又は30cに対するインコヒーレント光による照射は、支持部材10側からの照射であってよい。支持部材10を介して仮固定材層20c又は30cにインコヒーレント光を照射することによって、仮固定材層20c全体又は仮固定材層30c全体を照射することが可能となる。
【0128】
支持部材10から半導体部材40又は加工半導体部材42を分離したときに、半導体部材40又は加工半導体部材42に仮固定材層の残さ20c’(
図4(a)、(b))又は30c’(
図7(a)、(b))が付着している場合、これらは、溶剤で洗浄することができる。溶剤としては、特に制限されないが、エタノール、メタノール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら溶剤に浸漬させてもよく、超音波洗浄を行ってもよい。さらに、100℃以下の範囲で、加熱してもよい。
【0129】
このように支持部材から半導体部材を分離することによって、半導体部材40又は加工半導体部材42を備える半導体素子60が得られる(
図4(b)及び
図7(b))。得られた半導体素子60を他の半導体素子又は半導体素子搭載用基板に接続することにより半導体装置を製造することができる。
【0130】
[仮固定材用硬化性樹脂組成物]
上述の光を吸収して熱を発生する導電性粒子を含む硬化性樹脂組成物は、半導体部材を支持部材に仮固定するための仮固定材として好適に用いることができる。
【0131】
導電性粒子の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、30~90質量部であってよい。なお、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分には、溶剤は包含されない。導電性粒子の含有量は、35質量部以上、40質量部以上、又は45質量部以上であってもよい。導電性粒子の含有量は、80質量部以下、70質量部以下、又は60質量部以下であってもよい。
【0132】
硬化性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。熱可塑性樹脂の含有量は、30質量部以上、50質量部以上、又は70質量部以上であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、88質量部以下、85質量部以下、又は82質量部以下であってもよい。
【0133】
硬化性樹脂組成物は、重合性モノマー及び重合開始剤をさらに含んでいてもよい。重合性モノマーの含有量は、硬化性樹脂組成物の導電性粒子以外の成分の総量100質量部に対して、10~90質量部であってよい。重合性モノマーの含有量は、12質量部以上、15質量部以上、又は18質量部以上であってもよい。重合性モノマーの含有量は、70質量部以下、50質量部以下、又は30質量部以下であってもよい。重合開始剤の含有量は、重合性モノマーの総量100質量部に対して、0.01~5質量部であってもよい。重合開始剤の含有量は、0.03質量部以上又は0.05質量部以上であってもよい。重合開始剤の含有量は、3質量部以下、1質量部以下、又は0.1質量部以下であってもよい。
【0134】
硬化性樹脂組成物は、フィルム状に形成されていてもよい。
【0135】
[仮固定材用フィルム]
上述の仮固定材用硬化性樹脂組成物を含むフィルムは、半導体部材を支持部材に仮固定するための仮固定材として好適に用いることができる。
【0136】
[仮固定材用積層フィルム]
上述の光吸収層と硬化性樹脂成分を含む樹脂層とを有する積層フィルムは、半導体部材を支持部材に仮固定するための仮固定材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0137】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0138】
[実施例1-1~1-4及び比較例1-1]
(製造例1-1)
<仮固定材用硬化性樹脂組成物の調製>
熱可塑性樹脂として、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(商品名:ダイナロン2324P、JSR株式会社、Tg:-50℃)80質量部、重合性モノマーとして、1,9-ノナンジオールジアクリレ-ト(商品名:FA-129AS、日立化成株式会社)20質量部、及び重合開始剤として、パーオキシエステル(商品名:パーヘキサ25O、日油株式会社)1質量部を混合した。なお、水添スチレン・ブタジエンエラストマーはトルエンで固形分40質量%に希釈して用いた。これに、導電性粒子A(銅粉、商品名:1300Y、三井金属鉱業株式会社、形状:粒状、平均粒径(D50):3.5μm、タップ密度:5.0g/cm3)50質量部を添加した。得られた混合物を、自動撹拌装置を用いて、2200回転/分で10分間撹拌することによって、溶剤としてトルエンを含む仮固定材用硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
【0139】
<仮固定材用フィルムの作製>
得られた仮固定材用硬化性樹脂組成物のワニスを、精密塗工機を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚み:38μm)の離型処理面に塗工し、80℃で10分間溶剤を乾燥除去し、約100μmの製造例1-1の仮固定材用フィルムを作製した。
【0140】
<積層体(評価サンプル)の作製>
上記で作製した製造例1-1の仮固定材用フィルムを5mm×5mmで切り出した。支持部材として、スライドガラス(サイズ:15mm×20mm、厚み:1mm)及び半導体部材として、シリコンウェハ(サイズ:8mm×10mm、厚み:750μm)を用い、製造例1-1の仮固定材用フィルムをシリコンウェハとスライドガラスとの間に挟み込み、熱圧着機を用いて、90℃、5秒間、1MPaの条件で仮熱圧着を行った。その後、防爆乾燥機で150℃、1時間の条件で熱硬化させて仮固定材層を形成することによって、製造例1-1の積層体を作製した。
【0141】
(製造例1-2)
導電性粒子Aを導電性粒子B(銀粉、商品名:K0082P、Metalor社、形状:粒状、平均粒径(D50):1.5μm、タップ密度:5.0g/cm3)に変更した以外は、製造例1-1と同様にして、製造例1-2の仮固定材用フィルム及び積層体を作製した。
【0142】
(製造例1-3)
導電性粒子Aを導電性粒子C(銀粉、商品名:AgC-239、福田金属箔粉工業株式会社、形状:扁平状、平均粒径(D50):2.0~3.4μm、タップ密度:4.2~6.1g/cm3)に変更した以外は、製造例1-1と同様にして、製造例1-3の仮固定材用フィルム及び積層体を作製した。
【0143】
(製造例1-4)
導電性粒子Aを導電性粒子D(カーボン(炭素)粉、商品名:MA600、三菱ケミカル株式会社製、形状:粒状)に変更した以外は、製造例1-1と同様にして、製造例1-4の仮固定材用フィルム及び積層体を作製した。
【0144】
(製造例1-5)
導電性粒子Aを加えなかった以外は、製造例1-1と同様にして、製造例1-5の積層体を作製した。
【0145】
(実施例1-1~1-4及び比較例1-1)
<剥離性試験>
インコヒーレント光の光源として、キセノンランプを用いた。表1に示す照射条件で、製造例1-1~1-5の積層体をキセノンランプで照射し、支持部材からの剥離性を評価した。キセノンランプとして、Xenon社製のS2300(波長範囲:270nm~近赤外領域、単位面積あたりの照射エネルギー:17J/cm2)を用い、積層体の支持部材(スライドガラス)を介して仮固定材層を照射した。照射距離は、光源とスライドガラスを設置したステージとの距離である。剥離性試験の評価は、キセノンランプによる照射後、自然にシリコンウェハがスライドガラスから剥離したものを「A」と評価し、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、シリコンウェハが破損することなく、分離できたものを「B」と評価し、分離できなかったものを「C」と評価した。結果を表1に示す。
【0146】
【0147】
<耐熱性試験>
製造例1-1~1-5の積層体を加熱し、加熱処理後の支持部材と半導体部材との接着性及び支持部材からの剥離性を耐熱性として評価した。加熱は、製造例1-1~1-5の積層体を260℃に加熱したホットプレートに1時間放置することで行った。加熱処理後の接着性は、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、分離しなかったものを「A」と評価し、分離したものを「B」と評価した。加熱処理後のスライドガラスからの剥離性は、上記剥離性試験と同様に評価した。キセノンランプ照射は、上記剥離性試験と同様のキセノンランプを用い、印加電圧3000V、パルス幅5000μs、照射距離10mm、照射回数1回、及び照射時間5000μsで行った。結果を表2に示す。
【0148】
【0149】
実施例1-1~1-4と比較例1-1との対比から、実施例1-1~1-4が、比較例1-1よりも支持部材からの剥離性の点で優れていることが判明した。また、本発明の仮固定用硬化性樹脂組成物は、耐熱性に優れる仮固定材層を形成することが可能であることが判明した。
【0150】
[実施例2-1、2-2及び比較例2-1]
(製造例2-1)
<硬化性樹脂成分の調製>
熱可塑性樹脂として、水添スチレン・ブタジエンエラストマー(商品名:ダイナロン2324P、JSR株式会社)80質量部、重合性モノマーとして、1,9-ノナンジオールジアクリレ-ト(商品名:FA-129AS、日立化成株式会社)20質量部、及び重合開始剤として、パーオキシエステル(商品名:パーヘキサ25O、日油株式会社)1質量部を混合した。なお、水添スチレン・ブタジエンエラストマーはトルエンで固形分40質量%に希釈して用いた。このようにして、溶剤としてトルエンを含む硬化性樹脂成分のワニスを調製した。
【0151】
<硬化性樹脂組成物の調製>
エポキシ樹脂(商品名:EPICLON EXA-4816、DIC株式会社)14質量部、硬化剤(商品名:キュアゾール1B2MZ、四国化成工業株式会社)1質量部、導電性粒子E(銀コート銅粉、商品名:Ag1400YP、三井金属鉱業株式会社、形状:扁平状)60質量部、及び有機溶剤(酢酸エチル)25質量部を混合して、硬化性樹脂組成物のワニスを調製した。
【0152】
<仮固定材用積層フィルムの作製>
得られた硬化性樹脂成分のワニスを、精密塗工機を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚み:38μm)の離型処理面に塗工し、80℃で10分間溶剤を乾燥除去し、約100μmの樹脂層を作製した。
【0153】
次いで、硬化性樹脂組成物のワニスを、精密塗工機を用いて、樹脂層上に塗工し、80℃で10分間有機溶剤を乾燥除去することによって、1000nmの光吸収層を作製した。これによって、約100μmの製造例2-1の仮固定材用積層フィルムを得た。
【0154】
<積層体(評価サンプル)の作製>
上記で作製した製造例2-1の仮固定材用積層フィルムを5mm×5mmで切り出した。支持部材として、スライドガラス(サイズ:20mm×15mm、厚み:1mm)及び半導体部材として、シリコンウェハ(サイズ:8mm×10mm、厚み:750μm)を用い、製造例2-1の仮固定材用積層フィルムをシリコンウェハとスライドガラスとの間に、光吸収層がスライドガラスに接するように挟み込み(
図5(a)に示す構成)、熱圧着機を用いて、90℃、5秒間、1MPaの条件で仮熱圧着を行った。その後、防爆乾燥機で150℃、1時間の条件で熱硬化させることによって、製造例2-1の積層体を作製した。
【0155】
(製造例2-2)
光吸収層を、2層の導電体層(第1の導電体層:チタン、第2の導電体層:銅)から構成される層に変更した以外は、製造例2-1と同様にして、製造例2-2の仮固定材用積層フィルム及び積層体を得た。なお、当該光吸収層は、逆スパッタリングによる前処理(Ar流速:1.2×10-2Pa・m3/s(70sccm)、RF電力:300W、時間:300秒間)後、表3に示す処理条件でRFスパッタリングを行い、チタン(第1の導電体層)/銅(第2の導電体層)の厚みを50nm/200nmとした。
【0156】
【0157】
(製造例2-3)
光吸収層を設けなかった(すなわち、樹脂層のみとした)以外は、製造例2-1と同様にして、製造例2-3の積層体を作製した。
【0158】
(実施例2-1、2-2及び比較例2-1)
<剥離性試験>
インコヒーレント光の光源として、キセノンランプを用いた。表4に示す照射条件で、製造例2-1~2-3の積層体をキセノンランプで照射し、支持部材からの剥離性を評価した。キセノンランプとして、Xenon社製のS2300(波長範囲:270nm~近赤外領域、単位面積あたりの照射エネルギー:17J/cm2)を用い、積層体の支持部材(スライドガラス)を介して仮固定材層を照射した。照射距離は、光源とスライドガラスを設置したステージとの距離である。剥離性試験の評価は、キセノンランプによる照射後、自然にシリコンウェハがスライドガラスから剥離したものを「A」と評価し、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、シリコンウェハが破損することなく、分離できたものを「B」と評価し、分離できなかったものを「C」と評価した。結果を表4に示す。
【0159】
【0160】
実施例2-1、2-2と比較例2-1との対比から、実施例2-1、2-2が、比較例2-1よりも支持部材からの剥離性の点で優れていることが判明した。
【0161】
[実施例3-1~3-3及び比較例3-1~3-3]
(製造例3-1)
<評価サンプルの作製>
上記で作製した実施例2-2の仮固定材用積層フィルムを5mm×5mmで切り出した。支持部材として、スライドガラス(サイズ:20mm×15mm、厚み:1mm)及び半導体部材として、シリコンウェハ(サイズ:8mm×10mm、厚み:750μm)を用い、実施例2-2の仮固定材用積層フィルムをシリコンウェハとスライドガラスとの間に、光吸収層がスライドガラスに接するように(
図5(a)に示す構成になるように)挟み込み、熱圧着機を用いて、90℃、5秒間、1MPaの条件で仮熱圧着を行った。その後、防爆乾燥機で150℃、1時間の条件で熱硬化させることによって、製造例3-1の積層体を作製した。
【0162】
(製造例3-2)
実施例2-2の仮固定材用積層フィルムをシリコンウェハとスライドガラスとの間に、光吸収層がシリコンウェハに接するように(
図5(b)に示す構成になるように)挟み込んだ以外は、製造例3-1と同様にして、製造例3-2の積層体を作製した。
【0163】
(製造例3-3)
実施例2-2の仮固定材用積層フィルムの光吸収層が設けられていない面上に、さらに第2の光吸収層(銅)及び第1の光吸収層(チタン)をこの順に積層して、仮固定材用積層フィルムを作製した。なお、当該光吸収層は、実施例2-2と同様に、逆スパッタリングによる前処理(Ar流速:1.2×10
-2Pa・m
3/s(70sccm)、RF電力:300W、時間:300秒間)後、表3に示す処理条件でRFスパッタリングを行い、チタン/銅の厚みを50nm/200nmとした。このように作製した仮固定材用積層フィルムを、
図5(c)に示す構成になるように、シリコンウェハとスライドガラスとの間に挟み込んだ以外は、製造例3-1と同様にして、製造例3-3の積層体を作製した。
【0164】
(実施例3-1~3-3)
<剥離性試験>
インコヒーレント光の光源として、キセノンランプを用いた。表5に示す照射条件で、製造例3-1~3-3の積層体をキセノンランプで照射し、支持部材からの剥離性を評価した。キセノンランプとして、Xenon社製のS2300(波長範囲:270nm~近赤外領域、単位面積あたりの照射エネルギー:17J/cm2)を用い、積層体の支持部材(スライドガラス)を介して仮固定材層を照射した。照射距離は、光源とスライドガラスを設置したステージとの距離である。剥離性試験の評価は、キセノンランプによる照射後、自然にシリコンウェハがスライドガラスから剥離したものを「A」と評価し、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、シリコンウェハが破損することなく、分離できたものを「B」と評価し、分離できなかったものを「C」と評価した。結果を表5に示す。
【0165】
【0166】
(比較例3-1~3-3)
<剥離性試験>
コヒーレント光の光源として、YAGレーザーを用いた。製造例3-1~3-3の積層体をYAGレーザーで照射し、支持部材からの剥離性を評価した。YAGレーザーとして、株式会社キーエンス社製のMD-H(波長:1064nm、出力:10W、走査速度:1000mm/s)を用い、積層体の支持部材(スライドガラス)を介して仮固定材層を照射した。剥離性試験の評価は、YAGレーザーによる照射後、自然にシリコンウェハがスライドガラスから剥離したものを「A」と評価し、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、シリコンウェハが破損することなく、分離できたものを「B」と評価し、分離できなかったものを「C」と評価した。結果を表6に示す。
【0167】
【0168】
実施例3-1~3-3と比較例3-1~3-3との対比から、インコヒーレント光であるキセノンランプを用いた実施例3-1~3-3が、コヒーレント光であるYAGレーザーを用いた比較例3-1~3-3よりも剥離性の点で優れていることが判明した。
【0169】
[実施例4-1~4-6]
(製造例4-1~4-6)
<硬化性樹脂成分の調製>
熱可塑性樹脂として、水添スチレン系エラストマー(商品名:FG1924、クレイトンポリマージャパン株式会社)70質量部、エポキシ樹脂として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:HP-7200H、DIC株式会社)30質量部、及び硬化促進剤として、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(商品名:キュアゾール2PZ-CN、四国化成株式会社)2質量部を混合した。なお、水添スチレン系エラストマーはトルエンで固形分25質量%に、エポキシ樹脂はトルエンで固形分50質量%に、それぞれ希釈して用いた。ミックスロータを用いて混合し、50回転/分で24時間撹拌することによって、溶剤としてトルエンを含む硬化性樹脂成分のワニスを調製した。
【0170】
<硬化性樹脂成分フィルムの作製>
得られた硬化性樹脂成分のワニスを、精密塗工機を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚み:38μm)の離型処理面に塗工し、80℃で10分間溶剤を乾燥除去し、約20μmの硬化性樹脂成分フィルム(樹脂層)を作製した。
【0171】
<積層体(評価サンプル)の作製>
支持部材として、スライドガラス(サイズ:20mm×15mm、厚み:1mm)を用意し、金属蒸着装置を用いて表7に示す金属種及び厚みで導電体層を作製し、これを光吸収層とした。なお、光吸収層においては、支持部材、第1の導電体層、及び第2の導電体層がこの順になるように積層した。次いで、上述の硬化性樹脂成分フィルムを50mm×50mmで切り出し、半導体部材として、シリコンウェハ(サイズ:8mm×10mm、厚み:750μm)を用意した。切り出した硬化性樹脂成分フィルムを光吸収層とスライドガラスとの間に、
図5(a)に示す構成となるように挟み込み、熱圧着機を用いて、90℃、5秒間、1MPaの条件で仮熱圧着を行った。その後、防爆乾燥機で150℃、1時間の条件で熱硬化させることによって、製造例4-1~4-6の積層体を作製した。
【0172】
(実施例4-1~4-6)
<剥離性試験>
インコヒーレント光の光源として、キセノンランプを用いた。表7に示す照射条件で、製造例4-1~4-6の積層体をキセノンランプで照射し、支持部材からの剥離性を評価した。キセノンランプとして、Xenon社製のS2300(波長範囲:270nm~近赤外領域、単位面積あたりの照射エネルギー:17J/cm2)を用い、積層体の支持部材(スライドガラス)を介して仮固定材層を照射した。照射距離は、光源とスライドガラスを設置したステージとの距離である。剥離性試験の評価は、キセノンランプによる照射後、自然にシリコンウェハがスライドガラスから剥離したものを「A」と評価し、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、シリコンウェハが破損することなく、分離できたものを「B」と評価し、分離できなかったものを「C」と評価した。結果を表7に示す。
【0173】
【0174】
実施例4-1~4-6は、いずれも支持部材からの剥離性の点で優れていることが判明した。
【0175】
[実施例5-1~5-7]
(製造例5-1~5-7)
<硬化性樹脂成分の調製>
熱可塑性樹脂として、水添スチレン系エラストマー(商品名:FG1924、クレイトンポリマージャパン株式会社)70質量部、エポキシ樹脂として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(商品名:HP-7200H、DIC株式会社)30質量部、及び硬化促進剤として、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(商品名:キュアゾール2PZ-CN、四国化成株式会社)2質量部を混合した。なお、水添スチレン系エラストマーはトルエンで固形分25質量%に、エポキシ樹脂はトルエンで固形分50質量%に、それぞれ希釈して用いた。ミックスロータを用いて混合し、50回転/分で24時間撹拌することによって、溶剤としてトルエンを含む硬化性樹脂成分のワニスを調製した。
【0176】
<硬化性樹脂成分フィルムの作製>
得られた硬化性樹脂成分のワニスを、精密塗工機を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム株式会社、厚み:38μm)の離型処理面に塗工し、80℃で10分間溶剤を乾燥除去し、約20μmの硬化性樹脂成分フィルム(樹脂層)を作製した。
【0177】
<積層体(評価サンプル)の作製>
支持部材として、スライドガラス(サイズ:20mm×15mm、厚み:1mm)を用意し、スパッタリングによって表8に示す金属種及び厚みで導電体層を作製し、これを光吸収層とした。なお、当該光吸収層は、実施例2-2と同様に、逆スパッタリングによる前処理(Ar流速:1.2×10
-2Pa・m
3/s(70sccm)、RF電力:300W、時間:300秒間)後、表3に示す処理条件でRFスパッタリングを行った。2層の導電体層を有する光吸収層においては、支持部材、第1の導電体層、及び第2の導電体層がこの順になるように積層した。次いで、上述の硬化性樹脂成分フィルムを50mm×50mmで切り出し、半導体部材として、シリコンウェハ(サイズ:8mm×10mm、厚み:750μm)を用意した。切り出した硬化性樹脂成分フィルムを光吸収層とスライドガラスとの間に、
図5(a)に示す構成となるように挟み込み、熱圧着機を用いて、90℃、5秒間、1MPaの条件で仮熱圧着を行った。その後、防爆乾燥機で150℃、1時間の条件で熱硬化させることによって、実施例5-1~5-7の積層体を作製した。
【0178】
(実施例5-1~5-7)
<剥離性試験>
インコヒーレント光の光源として、キセノンランプを用いた。表8に示す照射条件で、製造例5-1~5-7の積層体をキセノンランプで照射し、支持部材からの剥離性を評価した。キセノンランプとして、Xenon社製のS2300(波長範囲:270nm~近赤外領域、単位面積あたりの照射エネルギー:17J/cm2)を用い、積層体の支持部材(スライドガラス)を介して仮固定材層を照射した。照射距離は、光源とスライドガラスを設置したステージとの距離である。剥離性試験の評価は、キセノンランプによる照射後、自然にシリコンウェハがスライドガラスから剥離したものを「A」と評価し、シリコンウェハとスライドガラスとの間にピンセットを差し込んだときに、シリコンウェハが破損することなく、分離できたものを「B」と評価し、分離できなかったものを「C」と評価した。結果を表8に示す。
【0179】
【0180】
実施例5-1~5-7は、いずれも支持部材からの剥離性の点で優れていることが判明した。
【0181】
以上の結果から、本発明の半導体装置の製造方法が、仮固定された半導体部材を、支持部材から容易に分離できることが確認された。
【符号の説明】
【0182】
10…支持部材、20…仮固定材前駆体層、20c…仮固定材層、20c’…仮固定材層の残さ、22…導電性粒子、24…硬化性樹脂成分、24c…硬化性樹脂成分の硬化物、30…仮固定材前駆体層、30c…仮固定材層、30c’…仮固定材層の残さ、32…光吸収層、34…樹脂層、34c…樹脂硬化物層、40…半導体部材、41…配線層、42…加工半導体部材、44…貫通電極、50…封止層、60…半導体素子、100,200,210,220,230,300,310,320,330…積層体。